特許第6978002号(P6978002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6978002チエノ−ピリミジン誘導体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978002
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】チエノ−ピリミジン誘導体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20211125BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211125BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211125BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20211125BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   C07D495/04 105Z
   C07D495/04CSP
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K31/519
【請求項の数】15
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-526149(P2018-526149)
(86)(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公表番号】特表2018-535980(P2018-535980A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】US2016064502
(87)【国際公開番号】WO2017096095
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年11月15日
(31)【優先権主張番号】62/262,386
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518170077
【氏名又は名称】チョーチアン チアンフェン−イエン バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チャイ、ハイシャオ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ファン
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2019−501889(JP,A)
【文献】 特表2013−544273(JP,A)
【文献】 特表2013−529630(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/084815(WO,A2)
【文献】 特表2005−523251(JP,A)
【文献】 特表2004−517898(JP,A)
【文献】 Eman Z. Elrazaz et al.,Thieno[2,3-d]pyrimidine based derivatives as kinase inhibitors and anticancer agents,Future Journal of Pharmaceutical Sciences,2015年,1,pp. 33-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、
【化1】
または式(III)、
【化2】
によって表される化合物、またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、および薬学的に許容可能な塩、およびそれらの溶媒和化合物であり、
式中、
Rが、H、ハロゲン、SH、OH、NO、CN、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシカルボニル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルカルボニル、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、ジC1〜6アルキルアミノ、カルバモイル、C1〜6アルキルカルバモイル、ジ(C1〜6アルキル)カルバモイル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルカルバモイル、スルファモイル、C1〜6アルキルスルホニル、C1〜6アルキルスルフィニル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルスルファモイル、ジC1〜6アルキルホスホニルC1〜6アルキル、ヒドロキシC2〜6アルコキシ、ヒドロキシカルボニルC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルアミノ、置換ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルアミノ、アミノC1〜6アルキル、ジC1〜6アルキルアミノアセチル、ヒドロキシジC2〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノC2〜6アルコキシ、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルコキシ、ヘテロアリール、複素環、複素環式オキシ、複素環式チオ、複素環式スルフィニル、複素環式スルホニル、複素環式スルファモイル、複素環式C1〜6アルキル、複素環式C1〜6アルコキシ、複素環式アミノ、複素環式C1〜6アルキルアミノ、複素環式カルボニル、または複素環式C1〜6アルキルカルボニルであり;式中、複素環が、1つまたは複数のN、O、S、SO、およびSOを有する、飽和または部分不飽和3〜8員環のまたは二環式のヘテロ環であり、その中でCまたはヘテロ原子が、C1〜6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルカルボニル、C1〜6アルキルアミノ、およびジC1〜6アルキルアミノからなる群から選択される、1つまたは複数の置換基を有してもよく、
が、ハロゲン、SH、OH、NO、CN、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシカルボニル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルカルボニル、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、ジC1〜6アルキルアミノ、カルバモイル、C1〜6アルキルカルバモイル、ジ(C1〜6アルキル)カルバモイル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルカルバモイル、スルファモイル、C1〜6アルキルスルホニル、C1〜6アルキルスルフィニル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルスルファモイル、ジC1〜6アルキルホスホニルC1〜6アルキル、ヒドロキシC2〜6アルコキシ、ヒドロキシカルボニルC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルアミノ、置換ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルアミノ、アミノC1〜6アルキル、ジC1〜6アルキルアミノアセチル、ヒドロキシジC2〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノC2〜6アルコキシ、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルコキシ、ヘテロアリール、複素環、複素環式オキシ、複素環式チオ、複素環式スルフィニル、複素環式スルホニル、複素環式スルファモイル、複素環式C1〜6アルキル、複素環式C1〜6アルコキシ、複素環式アミノ、複素環式C1〜6アルキルアミノ、複素環式カルボニル、または複素環式C1〜6アルキルカルボニルであり;式中、複素環が、1つまたは複数のN、O、S、SO、およびSOを有する、飽和または部分不飽和3〜8員環のまたは二環式のヘテロ環であり、その中でCまたはヘテロ原子が、C1〜6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルカルボニル、C1〜6アルキルアミノ、およびジC1〜6アルキルアミノからなる群から選択される、1つまたは複数の置換基を有してもよい、化合物。
【請求項2】
式(II)、
【化3】
によって表わされる請求項1に記載の化合物、またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容可能な塩、およびそれらの溶媒和化合物。
【請求項3】
式(III)、
【化4】
によって表わされる請求項1に記載の化合物、またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容可能な塩、およびそれらの溶媒和化合物。
【請求項4】
式(IV)、
【化5】
によって表示される請求項1に記載の化合物、またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容可能な塩、およびそれらの溶媒和化合物。
【請求項5】
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−5−[[4−(1−メチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−5−[[4−(1−エチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−5−[[4−(1−イソプロピルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[5−[[4−(1−tert−ブチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−5−[[4−(1,5−ジメチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−5−[[4−(5−メトキシ−1−メチル−インドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−5−[[4−(6−メトキシ−1−メチル−インドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−5−[[4−(1,6−ジメチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド、および
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−5−[[4−(1−メチルインドール−3−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]フェニル]プロプ−2−エナミド
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容可能な塩、または溶媒和化合物の有効量と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項7】
上皮成長因子受容体(EGFR)を過剰発現するがん細胞の増殖を阻害する目的で用いられる請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記がん細胞によって発現されるEGFRが変異体EGFRである、請求項7に記載医薬組成物。
【請求項9】
前記変異体EGFRが、T790M変異体、L858R変異体またはdelE746−A750変異体である、請求項8に記載医薬組成物。
【請求項10】
必要とする対象に投与するために用いられる、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記対象がヒトであり、異常な細胞増殖によって引き起こされた疾患に罹患している、請求項10に記載医薬組成物。
【請求項12】
前記異常な細胞増殖がEGFRの過剰発現によって引き起こされる、請求項11に記載医薬組成物。
【請求項13】
前記異常な細胞増殖が、ErbB1、ErbB2、ErbB3、およびErbB4からなる群から選択されるEGFRの過剰発現によって引き起こされる、請求項11または12に記載医薬組成物。
【請求項14】
前記疾患が再発性または獲得耐性悪性疾患である、請求項11から13のいずれか一項に記載医薬組成物。
【請求項15】
前記対象がNSCLCに罹患しているヒトである、請求項10に記載医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療に関し、特にがん細胞上皮成長因子受容体を阻害する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子受容体(EGFR、Erbb1)は、正常および悪性細胞の増殖に関与する。EGFRの過剰発現は、肺がん、乳がん、頭頸部がん、および膀胱がんなどのがんに関係することが判明している。
【0003】
EGFRのファミリーには、EGFR(ErbB1)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2、ErbB2)、HER3(ErbB3)、およびHER4(ErbB4)の4つの受容体チロシンキナーゼがある。チロシンキナーゼは、シグナルトランスダクター(Signal transductor)として機能する。リガンドは、細胞外では、受容体のリガンド結合ドメインに結合し、活性ホモまたはヘテロ二量体形成、EGFR自己リン酸化、およびドッキングタンパク質の活性化をもたらす(Greulich H.Chen,PLoS Med,2005,2,e313;Olayioye MA,EMBO J,2000,19,3159−3167)。これらのシグナルは、増殖、タンパク質合成、血管新生、細胞増殖、および生存などの細胞過程を促進する。
【0004】
EGFRの過剰発現は、がん患者の約70%に存在する(Seymour,L.K.,Curr Drug Targets,2001,2,117−133)。EGFRチロシンキナーゼは治療標的であり、FDA認可済みのタルセバ(Tarceva)、イレッサ(Irressa)、およびジオトリフ(全て4−アミノ−キナゾリンベース阻害剤)など、ATP競合相手として、キナーゼの活性を阻害しそれらのシグナル伝達経路を遮断する、いくつかの薬物が開発されている。これらの薬剤は、野生型および活性化変異体患者をはじめとする、EGFR過剰発現非小細胞肺がん(NSCLC)患者において広く使用されている(W.Pao,Nat.Rev.Cancer,2010,10,760−774;R.Rosell,Lancet Oncol,2012,13,239−246;N.U.Lin,Breast Cancer Res,2004,6,204−210)。
【0005】
患者において、L858RおよびdelE746−A750の2つの共通の活性化変異体がある。機構研究は、活性化変異体患者に対するタルセバ(Tarceva)およびイレッサの臨床活性が、変異体キナーゼに対する阻害剤結合親和性の増強と、発がん遺伝子に対する腫瘍細胞への突然変異細胞の常習癖(addiction)の併用効果の結果かもしれないことを実証した(JA.Engelman,Science,2007,316,1039−1043)。
【0006】
しかし、4−アミノ−キナゾリンベースのコア構造を有するこれらの第1および第2世代阻害剤は、NSCLCなどの再発性および獲得耐性疾患を有する患者の約50%では、良好に機能しない。獲得耐性は、T790Mのゲートキーパー残基の変異によって引き起こされる(LV.Sequist,Sci Transl Med,2011,3,75ra26;S.Kobayashi,N Engl J Med,2005,352,786−792;W.Pao,PLoS Med,2005,2,373;JA.Engelman,Semin Respir Crit Care Med,2005,26,314−322)。この変異(第2の変異)は、EGFRチロシンキナーゼに対するATP結合親和性を増加させ、これらの阻害剤の熱力学および動態結合特性に影響を及ぼす(CH.Yun,Proc Natl Acad Sci USA,2008,105,2070−2075;Cancer Cell,2007,11,217−227;M.Azam,Nat Struct Mol Biol,2008,15,1109−1118;TA.Carter,Proc Natl Acad Sci USA,2005,102,11011−11016)。ゲートキーパー領域中の嵩高いメチオニン側鎖は、これらの薬物分子が、臨床的に達成可能な濃度でATP結合ポケットと相互作用するのを妨げる。
【0007】
FDA認可済みのジオトリフなどの第2世代共有結合のEGFR阻害剤、および臨床試験中の化合物HKI−272は、T790M変異体患者に対して有効である。しかしジオトリフは、野生型EGFRの阻害の原因であるその用量制限毒性のために、変異体患者の活性化における使用に限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって野生型EGFRに影響を及ぼすことなく、変異体EGFRを選択的に阻害する治療薬を見いだす必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の融合ピリミジン誘導体は上記の必要性を満たし、変異体上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼの選択的かつ有効な阻害剤であるにもかかわらず、野生型EGFRに影響を及ぼさず低い副作用をもたらす。本発明の化合物は、治療標的に対して活性であり、がんなどのEGFRの異常活性、HER2活性に関連する疾患を治療するのに有効である。
【0010】
本発明は、変異体上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼを有するがんまたは腫瘍を選択的かつ有効に阻害する一方で、野生型EGFRに影響を及ぼさす副作用を低下させる、融合ピリミジン誘導体に関する。
【0011】
本発明の化合物は、一般式(I)または一般式(III)
【化1】
を有し、またはそれらの幾何異性体および薬学的に許容可能な塩、それらのプロドラッグおよび溶媒和化合物であり、
式中、
RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、SH、OH、NO、CN、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシカルボニル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルカルボニル、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、ジC1〜6アルキルアミノ、カルバモイル、C1〜6アルキルカルバモイル、ジ(C1〜6アルキル)カルバモイル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルカルバモイル、スルファモイル、C1〜6アルキルスルホニル、C1〜6アルキルスルフィニル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルスルファモイル、ジC1〜6アルキルホスホニルC1〜6アルキル、ヒドロキシC2〜6アルコキシ、ヒドロキシカルボニルC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルアミノ、置換ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルアミノ、アミノC1〜6アルキル、ジC1〜6アルキルアミノアセチル、ヒドロキシジC2〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノC2〜6アルコキシ、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルコキシ、ヘテロアリール、複素環、複素環式オキシ、複素環式チオ、複素環式スルフィニル、複素環式スルホニル、複素環式スルファモイル、複素環式C1〜6アルキル、複素環式C1〜6アルコキシ、複素環式アミノ、複素環式C1〜6アルキルアミノ、複素環式カルボニル、または複素環式C1〜6アルキルカルボニルであり;式中、複素環は、1つまたは複数のN、O、S、SO、およびSOを有する、飽和または部分不飽和3〜8員環のまたは二環式のヘテロ環であり、その中でCまたはヘテロ原子は、C1〜6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルカルボニル、C1〜6アルキルアミノ、およびジC1〜6アルキルアミノからなる群から選択される、1つまたは複数の置換基を有してもよい。
【0012】
一実施形態では、本発明は、上記の化合物と薬学的に許容可能な賦形剤とを含んでなる医薬組成物、および本発明の医薬組成物を使用してがんを治療する方法をさらに開示する。
【0013】
一実施形態では、本発明の化合物は、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−5−[[4−(1−メチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−5−[[4−(1−エチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−5−[[4−(1−イソプロピルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[5−[[4−(1−tert−ブチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−5−[[4−(1,5−ジメチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−5−[[4−(5−メトキシ−1−メチル−インドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−5−[[4−(6−メトキシ−1−メチル−インドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]フェニル]プロプ−2−エナミド、
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−5−[[4−(1,6−ジメチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド、および
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−5−[[4−(1−メチルインドール−3−イル)チエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]フェニル]プロプ−2−エナミド
からなる群から選択される。
【0014】
本発明の化合物を選択的変異体上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ(EGFR−TK)阻害剤として使用して、がんなどのEGFR関連疾患および障害を治療する方法もまた開示される。本発明の医薬組成物を使用して、上皮成長因子受容体(EGFR)を過剰発現するがん細胞の増殖が阻害され得て、請求項1に記載の化合物の有効量を細胞に投与するステップを含んでなる。一実施形態では、がん細胞によって発現されるEGFRは、変異体EGFRである。例えば、変異体EGFRは、T709M変異体、L858R変異体またはdelE746−A750変異体である。
【0015】
本発明は、本発明の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与するステップを含んでなる、対象を治療する方法をさらに提供する。一実施形態では、対象は、例えば、EGFRの過剰発現によって引き起こされた異常な細胞増殖などの異常な細胞増殖によって引き起こされた疾患に罹患しているヒトである。一実施形態では、異常な細胞増殖は、ErbB1、ErbB32、ErbB3、およびErbB4からなる群から選択されるEGFRの過剰発現によって引き起こされる。一実施形態では、対象は、再発性または獲得耐性悪性疾患に罹患している。一実施形態では、対象は、NSCLCに罹患しているヒトである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の実施形態では、本発明の化合物は、式(I)、
【化2】
を有し、またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、およびそれらの溶媒和化合物であり;
RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、SH、OH、NO、CN、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C1〜6アルコキシカルボニル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルカルボニル、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、ジC1〜6アルキルアミノ、カルバモイル、C1〜6アルキルカルバモイル、ジ(C1〜6アルキル)カルバモイル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルカルバモイル、スルファモイル、C1〜6アルキルスルホニル、C1〜6アルキルスルフィニル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルスルファモイル、ジC1〜6アルキルホスホニルC1〜6アルキル、ヒドロキシC2〜6アルコキシ、ヒドロキシカルボニルC1〜6アルキル、C1〜6アルコキシC1〜6アルキル、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルアミノ、置換ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルキルアミノ、アミノC1〜6アルキル、ジC1〜6アルキルアミノアセチル、ヒドロキシジC2〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキルアミノC2〜6アルコキシ、ジC1〜6アルキルアミノC2〜6アルコキシ、ヘテロアリール、複素環、複素環式オキシ、複素環式チオ、複素環式スルフィニル、複素環式スルホニル、複素環式スルファモイル、複素環式C1〜6アルキル、複素環式C1〜6アルコキシ、複素環式アミノ、複素環式C1〜6アルキルアミノ、複素環式カルボニル、または複素環式C1〜6アルキルカルボニルであり;式中、複素環は、1つまたは複数のN、O、S、SO、およびSOを有する、飽和または部分不飽和3〜8員環のまたは二環式のヘテロ環であり、その中でCまたはヘテロ原子は、C1〜6アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシC1〜6アルキル、C1〜6アルキルカルボニル、C1〜6アルキルアミノ、およびジC1〜6アルキルアミノからなる群から選択される、1つまたは複数の置換基を有してもよい。
【0017】
第2の実施形態では、化合物は、式(II)、
【化3】
を有し、またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、およびそれらの溶媒和化合物であり;
式中、Rは、先に定義した通りである。
【0018】
第3の実施形態では、化合物は、式(III)、
【化4】
を有し、またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、およびそれらの溶媒和化合物であり;
式中、RおよびRは、先に定義した通りである。
【0019】
第4の実施形態では、化合物は、式(IV)、
【化5】
を有し、またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、およびそれらの溶媒和化合物であり;
式中、Rは、先に定義した通りである。
【0020】
本発明の代表的な化合物としてはまた、下の表Iに列挙される化合物またはその幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、およびそれらの溶媒和化合物も挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
本発明は、細胞の異常増殖、分化または生存を伴う疾患または病状を予防または治療する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、細胞の異常増殖、分化または生存を伴う疾患を停止させまたは減少させるための薬剤の製造における、1つまたは複数の発明の化合物の使用をさらに提供する。好ましい実施形態では、疾患はがんである。一実施形態では、本発明は、本発明の化合物の治療有効量を治療を必要とする対象に投与するステップを含んでなる、対象においてがんを治療する方法に関する。
【0024】
その他の既知のEGFR阻害剤と比較して、本発明の化合物は、より良好な活性/有効性、および/または好ましい毒性プロファイル、および/または水溶性、透過性プロファイル、およびタンパク質結合などのより良好な物理特性、および/または好ましい代謝プロファイルを示す。したがって、本発明の化合物は、EGFRおよび/またはEGFRの活性化変異体および/またはEGFRの耐性変異体が関与する疾患の治療において有用である。
【0025】
本明細書に記載される化合物および組成物は、野生型EGFRと比較して、変異体EGFRを阻害するのに概して有用である。いくつかの実施例では、EGFRの変異体はT790Mであり、EGFRのその他の変異体はL858RまたはT790Mである。別の例では、それはEGFRの欠失変異体、delE746−A750、EGFRの活性化変異体であってもよい。
【0026】
本発明における選択的阻害剤としての化合物の活性は、生体外、細胞株内または生体内でアッセイされてもよい。生体外アッセイは、リン酸化活性の阻害と引き続く機能性結果、または活性化EGFRのATPアーゼ活性を判定する。
【0027】
「がん」という用語は、腫瘍、新生物、がん腫、肉腫、白血病、リンパ腫などの悪性新生物細胞の増殖によって引き起こされる、あらゆるがんを指す。例えば、がんとしては、中皮腫、白血病、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)や非皮膚性抹消T細胞リンパ腫などのリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などのヒトT細胞リンパ増殖性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、B細胞リンパ腫、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ管白血病(ALL)、慢性リンパ管白血病(CLL)、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、成人T細胞白血病リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、または肝細胞がんが挙げられるが、これに限定されるものではない。さらなる例としては、骨髄異形成症候群、脳腫瘍などの小児固形腫瘍、神経芽腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍、および軟組織肉腫、頭頸部がん(例えば、口腔がん、喉頭がん、鼻咽頭がん、および食道がん)などの成人の一般的固形腫瘍、泌尿生殖器がん(例えば、前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、子宮がん、卵巣がん、精巣がん)、肺がん(例えば、小細胞がんおよび非小細胞がん)、乳がん、膵臓がん、黒色腫とその他の皮膚がん、胃がん、脳腫瘍、ゴーリン症候群に関連する腫瘍(例えば、髄芽腫、髄膜腫など)、および肝臓がんが挙げられる。対象化合物によって治療されてもよいがんの追加的な例示的形態としては、骨または平滑筋のがん、胃がん、小腸がん、直腸がん、唾液腺がん、子宮内膜がん、副腎がん、肛門がん、直腸がん、副甲状腺がん、および下垂体がんが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本明細書に記載の化合物が予防、治療および研究において有用であってもよい追加的ながんは、例えば、例えば、大腸がん、家族性腺腫様ポリポーシスがん、および遺伝性非ポリポーシス結腸直腸がん、または黒色腫である。さらに、がんとしては、陰唇がん、喉頭がん、下咽頭がん、舌がん、唾液腺がん、胃がん、腺がん、甲状腺がん(髄質および乳頭状甲状腺がん)、腎臓がん、腎臓実質がん、子宮頸がん、子宮体がん、子宮内膜がん、絨毛膜がん、精巣がん、尿路がん、黒色腫、神経膠芽腫などの脳腫瘍、星状細胞腫、髄膜腫、髄芽腫、および末梢神経外胚葉性腫瘍、胆嚢がん、気管支がん、多発性骨髄腫、基底細胞腫、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、セミノーマ、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyngeoma)、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、ユーイング肉腫、および形質細胞腫が挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明の一態様では、本発明は、がんを治療するための薬剤の製造における、1つまたは複数の本発明の化合物の使用を提供する。
【0029】
一実施形態では、本発明は、細胞のさらなる異常増殖、分化、または生存を予防する薬剤の製造における、1つまたは複数の本発明の化合物の使用を含む。例えば、本発明の化合物は、腫瘍の大きさが増加しまたは転移状態に達するのを防ぐのに有用であってもよい。対象化合物は、がんの進行または発達を停止させるために、または腫瘍アポトーシスを誘導するために、または腫瘍血管新生を阻害するために、投与されてもよい。さらに、本発明は、がんの再発を予防するための対象化合物の使用を含む。
【0030】
本発明は、肥大、異形成、および前がん性病変などの細胞増殖性疾患の治療または予防をさらに包含する。異形成は、病理学者による生検で認識可能な前がん病変の最初期形態である。対象化合物は、前記肥大、異形成または前がん病変が、増殖を継続するまたはがん化するのを予防する目的で、投与されてもよい。前がん病変の例は、皮膚、食道組織、乳房、および子宮頸部上皮組織で発生してもよい。
【0031】
「併用療法」としては、その他の生物学的に活性な成分(第2のおよび異なる抗新生物薬などであるが、これに限定されるものではない)と、非薬物治療(外科手術または放射線治療などであるが、これに限定されるものではない)とのさらなる組み合わせにおける、対象化合物の投与が挙げられる。例えば、本発明の化合物は、その他の薬学的に活性な化合物、好ましくは本発明の化合物の効果を高められる化合物と組み合わせて使用され得る。本発明の化合物は、(単一の製剤または別個の製剤として)同時にまたは他の薬物療法に連続して投与され得る。一般に、併用療法は、単一サイクルまたは治療過程の間における、2種以上の薬物の投与を想定している。
【0032】
「併用療法」としては、その他の生物学的に活性な成分(第2のおよび異なる抗新生物薬などであるが、これに限定されるものではない)と、非薬物治療(外科手術または放射線治療などであるが、これに限定されるものではない)とのさらなる組み合わせにおける、対象化合物の投与が挙げられる。例えば、本発明の化合物は、その他の薬学的に活性な化合物、好ましくは本発明の化合物の効果を高められる化合物と組み合わせて使用され得る。本発明の化合物は、(単一の製剤または別個の製剤として)同時にまたは他の薬物療法に連続して投与され得る。一般に、併用療法は、単一サイクルまたは治療過程の間における、2種以上の薬物の投与を想定している。
【0033】
本発明の一態様では、対象化合物は、様々な病態に関与するタンパク質キナーゼを調節する、1つまたは複数の別の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。このようなキナーゼの例としては、セリン/スレオニン特異的キナーゼ、受容体チロシン特異的キナーゼ、および非受容体チロシン特異的キナーゼが挙げられるが、これに限定されるものではない。セリン/スレオニンキナーゼとしては、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、減数分裂特異的キナーゼ(オーロラ)、RAF、およびオーロラキナーゼが挙げられる。受容体キナーゼファミリーの例としては、上皮成長因子受容体(EGFR)(例えば、HER2/neu、HER3、HER4、ErbB、ErbB2、ErbB3、ErbB4、Xmrk、DER、Let23);線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体(例えば、FGF−R1,GFF−R2/BEK/CEK3、FGF−R3/CEK2、FGF−R4/TKF、KGF−R);肝細胞増殖/分散因子受容体(HGFR)(例えば、MET、RON、SEA、SEX);インスリン受容体(例えば、IGFI−R);Eph(例えば、CEK5、CEK8、EBK、ECK、EEK、EHK−1、EHK−2、ELK、EPH、ERK、HEK、MDK2、MDK5、SEK);Axl(例えば、Mer/Nyk、Rse);RET;および血小板由来成長因子受容体(PDGFR)(例えば、PDGFα−R、PDGβ−R、CSF1−R/FMS、SCF−R/C−キット、VEGF−R/FLT、NEK/FLK1、FLT3/FLK2/STK−1)が挙げられる。非受容体チロシンキナーゼファミリーとしては、BCR−ABL(例えば、p43abl、ARG);BTK(例えば、ITK/EMT、TEC);CSK、FAK、FPS、JAK、SRC、BMX、FER、CDK、およびSYKが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
好ましい実施形態では、対象化合物は、1つまたは複数の生物学的標的を阻害する、Zolinza、Tykerb、Gleevec、Sutent、Sprycel、Nexavar、Sorafinib、CNF2024、RG108、BMS387032、Affinitak、Avastin、Herceptin、Erbitux、AG24322、PD325901、ZD6474、PD184322、Obatodax、ABT737、およびAEE788などの抗新生物薬(例えば、小分子、モノクローナル抗体、アンチセンスRNA、および融合タンパク質)と組み合わされてもよい。このような組み合わせは、いずれかの薬剤単独によって達成される効力よりも治療有効性を高めてもよく、耐性変異変異型の出現を防止しまたは遅延させてもよい。
【0035】
特定の好ましい実施形態では、本発明の化合物は、化学療法剤と組み合わせて投与される。化学療法剤は、腫瘍学の分野における広範囲の治療的処置を包含する。これらの薬剤は、腫瘍を縮小させ、手術後に残った残留がん細胞を破壊し、寛解を誘導し、寛解を維持し、および/またはがんまたはその治療に関連する症状を緩和する目的で、疾患の様々な段階において投与される。このような薬剤の例としては、マスタードガス誘導体(メクロレタミン、シクロホスファミド、クロランブシル、メルファラン、イホスファミド)、エチレンイミン(チオテパ、ヘキサメチルメラミン)、アルキルスルホン酸塩(ブスルファン)、ヒドラジンおよびトリアジ(アルトレタミン、プロカルバジン、ダカルバジンおよびテモゾロマイド)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチンおよびストレプトゾシン)、イホスファミド、および金属塩(カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチン)などのアルキル化剤;ポドフィロトキシン(エトポシドおよびテニポシド(Teniposide))、タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)、およびカンプトテシン(Camptothecan)類似体(イリノテカンおよびトポテカン)などの植物アルカロイド;クロモマイシン(ダクチノマイシンおよびプリカマイシン)、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン、およびイダルビシン)、およびマイトマイシン、アクチノマイシン、およびブレオマイシンなどの種々雑多な抗生物質などの抗腫瘍抗生物質;葉酸拮抗薬(メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、アミノプテリン)、ピリミジン拮抗薬(5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、カペシタビン、およびゲムシタビン)、プリン拮抗薬(6−メルカプトプリンおよび6−チオグアニン)およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤(クラドリビン、フルダラビン、メルカプトプリン、クロファラビン、チオグアニン、ネララビン、およびペントスタチン)などの代謝拮抗薬;トポイソメラーゼI阻害剤(イリノテカン(Irinotecan)、トポテカン)およびトポイソメラーゼII阻害剤(アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスフェート、テニポシド)などのトポイソメラーゼ阻害剤;モノクローナル抗体(アレムツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、リツキシマブ、トラスツズマブ、イブリツモマブチウキセタン(Tiuxetan)、セツキシマブ、パニツマブ、トシツモマブ、ベバシズマブ);およびリボヌクレオチド還元酵素阻害剤(ヒドロキシ尿素)などの種々雑多な抗悪性腫瘍剤;副腎皮質ステロイド阻害剤(ミトタン);酵素(アスパラギナーゼおよびペグアスパラガーゼ);微小管阻害作用剤(エストラムスチン);およびレチノイド(ベキサロテン、イソトレチノイン、トレチノイン(ATRA))が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
特定の好ましい実施形態では、本発明の化合物は、化学保護剤と組み合わせて投与される。化学保護剤は、身体を保護するか、または化学療法の副作用を最小化するように作用する。このような薬剤の例としては、アミホスチン(amifostine)、メスナ、およびデクスラゾキサンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明の一態様では、対象化合物は、放射線療法と組み合わせて投与される。放射線は、通常、内的に(がん部位付近への放射性物質の埋め込み)、または光子(X線またはガンマ線)または粒子線を用いる装置から外的に送達される。併用療法が放射線治療をさらに含んでなる場合、放射線治療は、治療薬と放射線治療の組み合わせの相互作用からの有益な効果が達成される限り、任意の適切な時間に行われてもよい。例えば、適切な場合には、放射線治療が治療薬の投与から、おそらく数日または数週間、時間的に離れていても、有益な効果が依然として達成される。
【0038】
本発明の化合物は、免疫療法剤と組み合わせて使用され得ることが理解されるであろう。免疫療法の一形態は、腫瘍から離れた部位にワクチン組成物を投与することによる、宿主起源の能動的全身性腫瘍特異的免疫応答の生成である。単離された腫瘍抗原ワクチンおよび抗イディオタイプワクチンをはじめとする、様々なタイプのワクチンが提案されている。別のアプローチは、治療される対象の腫瘍細胞またはそのような細胞の誘導体を使用することである(Schirrmacher et al.(1995)J.Cancer Res.Clin.Oncol.121:487によるレビュー)。米国特許第5,484,596号明細書において、Hanna Jr. et al.は、腫瘍を外科的に除去するステップと、細胞をコラゲナーゼで分散させるステップと、細胞を照射するステップと、約10個の細胞の少なくとも3回の連続投与で患者にワクチン接種するステップとを含んでなる、切除可能がん腫を治療して再発または転移を予防する方法を特許請求している。
【0039】
一実施形態では、本発明の化合物を使用して、正常な発達および恒常性にとって重要な生理学的細胞死過程であるアポトーシスが、誘導または阻害され得る。アポトーシス経路の変化は、様々なヒト疾患の病因に寄与する。本発明の化合物は、アポトーシスの修飾因子として、がん(特に、濾胞性リンパ腫、p53変異を有するがん、乳房および前立腺および卵巣のホルモン依存性腫瘍、および家族性腺腫様ポリポーシスなどの前がん性病変であるが、これに限定されるものではない)、ウイルス感染症(ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、シンドビスウイルス、およびアデノウイルスをはじめとするが、これに限定されるものではない)、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、紅斑性狼蒼、免疫媒介糸球体腎炎、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、および自己免疫性糖尿病をはじめとするが、これに限定されるものではない)、血液学的疾患(慢性貧血および再生不良性貧血をはじめとするが、これに限定されるものではない)、およびがん疼痛をはじめとするアポトーシスに異常を有する様々なヒト疾患の治療に有用であろう。
【0040】
本発明は、上記のような本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩を含んでなる医薬組成物を包含する。本発明はまた、本発明の化合物の水和物を含んでなる医薬組成物も包含する。「水和物」という用語は、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などを含むが、これに限定されるものではない。本発明は、本発明の化合物の任意の固体または液体の物理的形態を含んでなる医薬組成物をさらに包含する。例えば、化合物は、結晶形態、非晶質形態であって、任意の粒径を有し得る。粒子は、微粉化されていてもよく、または凝集、微粒子顆粒、粉末、油、油性懸濁液または任意のその他の形態の固体または液体の物理的形態であってもよい。
【0041】
本発明の化合物、およびそれらの誘導体、断片、類似体、相同体、薬学的に許容可能な塩または水和物は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共に、投与に適した医薬組成物に組み込まれ得る。このような組成物は、典型的に、上記化合物のいずれかの治療有効量と、薬学的に許容できる担体とを含んでなる。好ましくは、がんを治療する場合、有効量は、適切な新生物細胞の最終分化を選択的に誘導するのに有効な量であり、患者において毒性を引き起こす量より少ない量である。
【0042】
本発明の化合物は、限定されるものではないが、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、埋め込み、口腔、舌下、バッカル、経鼻、肺、経皮、局所、膣、直腸、および経粘膜投与などをはじめとする、任意の適切な手段によって投与されてもよい。局所投与はまた、経皮パッチまたはイオン導入器具のような経皮投与の使用を伴い得る。医薬品としては、選択された投与様式に適し、活性成分として本発明の化合物を含有する、固体、半固体または液体製剤(錠剤、ペレット、トローチ、カプセル、坐薬、クリーム、軟膏、エアロゾル、粉末、液体、エマルション、懸濁液、シロップ、注射剤など)が挙げられる。一実施形態では、医薬組成物は経口投与され、したがって経口投与に適した形態、すなわち、固体または液体製剤として調合される。適切な固体経口製剤としては、錠剤、カプセル、丸薬、顆粒、ペレット、サシェ剤、および発泡性、粉末などが挙げられる。適切な液体経口製剤としては、溶液、懸濁液、分散体、エマルション、油などが挙げられる。本発明の一実施形態では、組成物は、カプセルに調合される。この実施形態に従って、本発明の組成物は、活性化合物および不活性担体または希釈剤に加えて、硬質ゼラチンカプセルを含んでなる。
【0043】
例えば、ガム、デンプン、砂糖、セルロース系材料、アクリル酸、またはそれらの混合物などの担体または希釈剤として一般的に使用されるあらゆる不活性賦形剤が、本発明の製剤で使用されてもよい。好ましい希釈剤は、微結晶セルロースである。組成物は、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)および潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)をさらに含んでなってもよく、結合体、緩衝液、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、乳化剤、安定剤、増粘剤、甘味料、皮膜形成剤、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、1つまたは複数の添加剤をさらに含んでなってもよい。さらに、本発明の組成物は、制御放出または即時放出製剤の形態であってもよい。
【0044】
液体製剤では、薬学的に許容可能な担体は、水性または非水溶液、懸濁液、エマルションまたは油であってもよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、そしてオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体としては、生理食塩水および緩衝媒体をはじめとする、水、アルコール性/水性溶液、エマルションまたは懸濁液が挙げられる。油の例は、例えば、落花生油、大豆油、鉱物油、オリーブ油、ヒマワリ油、および魚類肝油などの鉱油、動物性、植物性、または合成起源のものである。溶液または懸濁液は、注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶剤などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化剤;酢酸、クエン酸またはリン酸などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧を調節するための薬剤などの成分もまた含み得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によって調節され得る。
【0045】
投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、投与単位形態で経口組成物を調合することが特に有利である。投与単位形態は、本明細書の用法では、治療される対象のための単位投薬量として適切な物理的に不連続な単位を指し;各単位は、必要とされる薬学的担体と共に、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態の規格は、活性化合物の独特な特性および達成すべき特定の治療効果、および個人の治療のためのこのような活性化合物を調合する技術に固有の制限により決定され、それに直接左右される。
【0046】
医薬組成物は、投与のための使用説明と共に、容器、パック、またはディスペンサーに含まれ得る。
【0047】
毎日の投与は、数日間から数年間継続して繰り返されてもよい。経口治療は、1週間から患者の生涯にわたり継続されてもよい。好ましくは、投与は5日間連続して行われ、その後、患者を評価して、さらなる投与が必要かどうかが判断され得る。投与は、例えば、連続した数日間の治療とそれに続く休息期間など、連続的または断続的であり得る。本発明の化合物は、治療の初日に静脈内投与されて、2日目およびそれ以降の連続した全ての日に経口投与されてもよい。
【0048】
例えば、混合、顆粒化または錠剤形成工程による、活性成分を含有する医薬組成物の調製は、当該技術分野において良く知られている。活性治療成分は、薬学的に許容可能で活性成分と適合する、賦形剤と混合されることが多い。経口投与では、活性薬剤は、ビヒクル、安定剤、または不活性希釈剤などのこの目的のために常用される添加剤と混合され、上で詳述されるような錠剤、コーティング錠剤、硬質または軟質ゼラチンカプセル、水性、アルコール性または油性溶液などの投与に適した形態に、慣習的な方法によって変換される。
【0049】
患者に投与される化合物の量は、患者において毒性を引き起こすであろう量より少ない。特定の実施形態では、患者に投与される化合物の量は、化合物の毒性レベルに等しいかまたはそれを超える化合物濃度を患者の血漿中で引き起こす量より少ない。本発明の実施において、患者に投与されるべき化合物の最適量は、使用される特定の化合物および治療されるがんのタイプに左右される。
【0050】
本明細書および特許請求の範囲を通じて本発明を説明するために使用される様々な用語は、特定の場合に特に限定されない限り、以下の意味を有する。
【0051】
「脂肪族基」または「脂肪族」は、飽和(例えば、単結合)であっても、または1つまたは複数の不飽和単位(例えば、二重および/または三重結合)を含有してもよい、非芳香族部分である。脂肪族基は、炭素、水素、または任意選択的に1つまたは複数のヘテロ原子を含有する、直鎖、分岐または環式であってもよく、置換または非置換であってもよい。脂肪族基は、好ましくは約1〜約24個の原子、より好ましくは約4〜約24個の原子、より好ましくは約4〜12個の原子、より典型的には約4〜約8個の原子を含有する。
【0052】
「アルキル」という用語は、1〜約20個の炭素原子または好ましくは、1〜約12個の炭素原子を有する、直鎖または分岐ラジカルを包含する。より好ましいアルキルラジカルは、1〜約10個の炭素原子を有する「低級アルキル」ラジカルである。最も好ましいのは、1〜約8個の炭素原子を有する低級アルキルラジカルである。このようなラジカルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0053】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、2〜約20個の炭素原子または好ましくは、2〜約12個の炭素原子の直鎖または分岐ラジカルを包含する。より好ましいアルケニルラジカルは、2〜約10個の炭素原子、より好ましくは約2〜約8個の炭素原子を有する「低級アルケニル」ラジカルである。アルケニルラジカルの例としては、エテニル、アリル、プロペニル、ブテニル、および4−メチルブテニルが挙げられる。「アルケニル」および「低級アルケニル」という用語は、「シス」および「トランス」配向、または代案としては「E」および「Z」配向を有するラジカルを包含する。
【0054】
「アルキニル」という用語は少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する、2〜約20個の炭素原子または好ましくは、2〜約12個の炭素原子の直鎖または分岐ラジカルを包含する。より好ましいアルキニルラジカルは、2〜約10個の炭素原子、より好ましくは約2〜約8個の炭素原子を有する「低級アルキニル」ラジカルである。アルキニルラジカルの例としては、プロパルギル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、および1−ペンチニルが挙げられる。
【0055】
「シクロアルキル」という用語は、3〜約12個の炭素原子を有する飽和炭素環式ラジカルを包含する。「シクロアルキル」という用語は、3〜約12個の炭素原子を有する飽和炭素環式ラジカルを包含する。より好ましいシクロアルキルラジカルは、3〜約8個の炭素原子を有する「低級シクロアルキル」ラジカルである。このようなラジカルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。
【0056】
「シクロアルケニル」という用語は、3〜12個の炭素原子を有する部分不飽和炭素環式ラジカルを包含する。二重結合(コンジュゲートされていてもいなくてもよい)を含有する部分不飽和炭素環式ラジカルであるシクロアルケニルラジカルは、「シクロアルキルジエニル」と称され得る。より好ましいシクロアルケニルラジカルは、4〜約8個の炭素原子を有する「低級シクロアルケニル」である。このようなラジカルの例としては、シクロブテニル、シクロペンテニル、およびシクロヘキセニルが挙げられる。
【0057】
「アルコキシ」という用語は、1〜約20個の炭素原子または好ましくは1〜約12個の炭素原子のアルキル部分をそれぞれ有する、直鎖または分岐オキシ含有ラジカルを包含する。より好ましいアルコキシラジカルは、1〜約10個の炭素原子を有しより好ましくは1〜約8個の炭素原子を有する、「低級アルコキシ」ラジカルである。このようなラジカルの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびtert−ブトキシが挙げられる。
【0058】
「アルコキシアルキル」という用語は、アルキルラジカルに付着しモノアルコキシアルキルおよびジアルコキシアルキルラジカルを形成する、1つまたは複数のアルコキシラジカルを有するアルキルラジカルを包含する。
【0059】
「アリール」という用語は、単独または組み合わせで、単環、二環または三環を含有する炭素環式芳香族系を意味し、その中ではこのような環は、ペンダント様式で共に付着してもよく、または融合してもよい。「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダン、およびビフェニルなどの芳香族ラジカルを包含する。
【0060】
「ヘテロシクリル」、「複素環」、「複素環式」、または「ヘテロシクロ」という用語は、飽和、部分不飽和、および不飽和ヘテロ原子含有環状ラジカルを包含し、それはまた対応して「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロアルケニル」、および「ヘテロアリール」と称され得て、ヘテロ原子は、窒素、イオウ、および酸素から選択されてもよい。飽和ヘテロシクリルラジカルの例としては、1〜4個の窒素原子を含有する、飽和3〜6員環ヘテロ単環基(例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニルなど);1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する、飽和3〜6員環ヘテロ単環基(例えば、モルホリニルなど);1〜2個のイオウ原子および1〜3個の窒素原子を含有する、飽和3〜6員環ヘテロ単環基(例えば、チアゾリジニルなど)が挙げられる。部分不飽和ヘテロシクリルラジカルの例としては、ジヒドロチオフェン、ジヒドロピラン、ジヒドロフラン、およびジヒドロチアゾールが挙げられる。ヘテロシクリルラジカルは、テトラゾリウムおよびピリジニウムラジカル中などに、五価の窒素を含んでもよい。「複素環」という用語は、ヘテロシクリルラジカルがアリールまたはシクロアルキルラジカルと融合したラジカルもまた包含する。このような融合二環式ラジカルの例としては、ベンゾフラン、ベンゾチオフェンなどが挙げられる。
【0061】
「ヘテロアリール」という用語は、不飽和ヘテロシクリルラジカルを包含する。ヘテロアリールラジカルの例としては、例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル(例えば、4H−1,2,4−トリアゾリル、1H−1,2,3−トリアゾリル、2H−1,2,3−トリアゾリルなど)、テトラゾリル(例えば、1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリルなど)などの1〜4個の窒素原子を含有する不飽和3〜6員環ヘテロ単環基;例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニルなどの1〜5個の窒素原子を含有する不飽和濃縮ヘテロシクリル基;酸素原子を含有する不飽和3〜6員環ヘテロ単環基;イオウ原子を含有する不飽和3〜6員環ヘテロ単環基;1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子などを含有する不飽和3〜6員環ヘテロ単環基;1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和濃縮ヘテロシクリル基;例えば、チアゾリル、チアジアゾリルなどの1〜2個のイオウ原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和3〜6員環ヘテロ単環基;1〜2個のイオウ原子および1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合ヘテロシクリル基などが挙げられる。
【0062】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、ヘテロシクロ置換アルキルラジカルを包含する。より好ましいヘテロシクロアルキルラジカルは、ヘテロシクロラジカル中に1〜6個の炭素原子を有する「低級ヘテロシクロアルキル」ラジカルである。
【0063】
「アラルキル」または「アリールアルキル」という用語は、ベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、フェニルエチル、およびジフェニルエチルなどのアリール置換アルキルラジカルを包含する。
【0064】
「アリールオキシ」という用語は、酸素原子を介して他のラジカルに付着するアリールラジカルを包含する。
【0065】
「アラルコキシ」または「アリールアルコキシ」という用語は、酸素原子を介して他のラジカルに付着するアラルキルラジカルを包含する。
【0066】
「アミノアルキル」という用語は、アミノラジカルで置換されたアルキルラジカルを包含する。好ましいアミノアルキルラジカルは、約1〜約20個の炭素原子または好ましくは1〜約12個の炭素原子を有するアルキルラジカルを有する。より好ましいアミノアルキルラジカルは、1〜約10個の炭素原子を有するアルキルラジカルを有する「低級アミノアルキル」である。最も好ましくはアミノアルキルラジカルは、1〜8個の炭素原子を有する低級アルキルラジカルを有する。このようなラジカルの例としては、アミノメチル、アミノエチルなどが挙げられる。
【0067】
「アルキルアミノ」という用語は、1つまたは2つのアルキルラジカルで置換されたアミノ基を意味する。好ましいアルキルアミノラジカルは、約1〜約20個の炭素原子または好ましくは、1〜約12個の炭素原子を有するアルキルラジカルを有する。より好ましいアルキルアミノラジカルは、1〜約10個の炭素原子を有するアルキルラジカルを有する「低級アルキルアミノ」である。最も好ましくはアルキルアミノラジカルは、1〜約8個の炭素原子を有する低級アルキルラジカルを有する。適切な低級アルキルアミノは、N−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノなどの一置換N−アルキルアミノまたは二置換N,N−アルキルアミノであってもよい。
【0068】
簡潔さのために、全体を通じて定義され言及される化学的部分は、当業者には明らかな適切な構造的状況の下で、一価の化学的部分(例えば、アルキル、アリールなど)または多価部分であり得る。例えば、「アルキル」部分は、一価のラジカル(例えば、CH−CH−)に言及し得て、または他の場合には、二価の連結部分は「アルキル」であり得て、その場合、当業者は、アルキルが、用語「アルキレン」と同等である二価のラジカル(例えば、−CH−CH−)であることを理解するであろう。同様に、二価の部分が必要な状況であり、「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、「アリールオキシ」、「アルキルチオ」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「複素環式」、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「脂肪族」、または「シクロアルキル」であると記載される場合、当業者は、「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、「アリールオキシ」、「アルキルチオ」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「複素環式」、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「脂肪族」、または「シクロアルキル」という用語が、対応する二価の部分を指すことを理解するであろう。
【0069】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、本明細書の用法では、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択される原子を指す。
【0070】
本明細書の用法では、「異常増殖」という用語は、異常な細胞増殖を指す。
【0071】
「補助的療法」という語句は、例えば、骨吸収阻害剤、心保護剤などの抗がん剤の毒性効果を低減する;化学療法、放射線療法または手術に関連する悪心および嘔吐の発生を予防または低減する;または骨髄抑制性抗がん剤の投与に関連する感染症の発生を低減する薬剤をはじめとするが、これに限定されるものではない、本発明の併用療法に関連する副作用を低減または回避する薬剤による、対象の治療を包含する。
【0072】
「アポトーシス」という用語は、本明細書の用法では、年齢または細胞健康状態および状態が指示した場合に、正常に機能しているヒトおよび動物細胞内の核によってシグナル伝達されるプログラム細胞死を指す。「アポトーシス誘導剤」は、プログラム細胞死の過程を引き起こす。
【0073】
「がん」という用語は、本明細書の用法では、細胞の制御されない分裂と、これらの細胞が、隣接する組織内への浸潤を通じた直接的増殖、または転移による遠位部位への移植のどちらかによって、その他の組織に侵入する能力によって特徴付けられる、疾患または障害のクラスを意味する。
【0074】
「化合物」という用語は、本明細書に記載される式を有する化合物の薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、水和物、多形体、鏡像異性体、ジアステレオアイソマー、ラセミ体などを含むとして本明細書で定義される。
【0075】
「装置」という用語は、特定の機能を実行するように設計された、通常は機械的または電気的なあらゆる器具を指す。
【0076】
本明細書の用法では、「対象化合物」の有効量という用語は、所望の投与計画の一部として送達されると、例えば、臨床的に許容される標準への、細胞増殖速度および/または分化状態および/または細胞生存の変化をもたらす、対象化合物の量を指す。この量は、1)がん細胞数の減少;2)腫瘍サイズの減少;3)末梢器官へのがん細胞の浸潤の阻害(すなわち、ある程度の減速、好ましくは停止);4)腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速、好ましくは停止);5)ある程度の腫瘍増殖の阻害;6)障害に関連する1つまたは複数の症状のある程度の緩和または軽減;および/または7)抗がん剤の投与に伴う副作用の軽減または軽減をはじめとするが、これに限定されるものではない、新生物障害の1つまたは複数の症状をさらにある程度緩和してもよい。
【0077】
「肥大」という用語は、本明細書の用法では、過剰な細胞分裂または増殖を指す。
【0078】
「免疫療法剤」という語句は、例えば、接種によって、別の個人または動物などの免疫供与者の免疫を宿主に移入するのに使用される薬剤を指す。用語は、別の個人または動物によって産生された抗体を含有する血清またはγグロブリン;非特異的全身性刺激;アジュバント;能動的特異的免疫療法;および養子免疫療法の使用を包含する。養子免疫療法は、感作リンパ球、トランスファー因子、免疫RNA、または血清中抗体またはγグロブリンの宿主接種をはじめとする、治療法または薬剤による疾患の治療を指す。
【0079】
新生物、腫瘍増殖または腫瘍細胞増殖の文脈における「阻害」という用語は、特に、原発性または続発性腫瘍の出現の遅延、原発性または続発性腫瘍の発達の遅延、原発性または続発性腫瘍の発生の減少、疾患の副次的影響の遅延または重症度の低下、腫瘍増殖の停止および腫瘍の退行によって評価されてもよい。極端な場合、完全な阻害は、本明細書では予防または化学的予防と称される。
【0080】
「転移」という用語は、本明細書の用法では、原発腫瘍部位から血液およびリンパ管を通じてその他の組織中にがんを生じるがん細胞の移動を指す。転移はまた、遠位部位で増殖する二次的ながんに対して使用される用語である。
【0081】
「新生物」という用語は、本明細書の用法では、過剰な細胞分裂に起因する異常な組織塊を指す。新生物は、良性(がん性でない)または悪性(がん性)であってもよく、また腫瘍と称されてもよい。「新生物」という用語は、腫瘍形成をもたらす病理過程である。
【0082】
本明細書の用法では、「前がん性」という用語は、悪性ではないが未治療のままであると悪性になる可能性のある状態を指す。
【0083】
「増殖」という用語は、有糸分裂している細胞を指す。
【0084】
「放射線治療薬」という語句は、新生物の治療における電磁または粒子放射線の使用を指す。
【0085】
「再発」という用語は、本明細書の用法では、寛解期間後のがんの再来を指す。これは、初期がんからの細胞の不完全な除去に起因してもよく、局所的(初期がんと同じ部位)に、領域性に(初期がんの近傍、おそらくはリンパ節または組織中)に、および/または転移の結果として遠位に発生してもよい。
【0086】
「治療」という用語は、ヒトをはじめとする哺乳類が、哺乳類の病状を直接的または間接的に改善する目的で医療救護を受ける、任意のプロセス、作用、適用、治療などを指す。
【0087】
本明細書の用法では、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答などがなく、ヒトおよび下等動物の組織と接触させる使用に適し、利点/リスクの比率が妥当に釣り合った塩を指す。薬学的に許容可能な塩類は、当該技術分野で周知である。例えば、S.M.Berge,et al.は、J.Pharmaceutical Sciences,66:1−19(1977)で、薬学的に許容可能な塩について詳述する。塩類は、本発明の化合物の最終的単離および精製中に原位置で調製され得て、または遊離塩基官能基を適切な有機酸または無機酸と反応させることによって別途調製され得る。薬学的に許容可能な無毒の酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、ラクトビオン酸またはマロン酸などの有機酸を用いて、またはイオン交換などの当該技術分野で使用される方法によって形成される、アミノ基の塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。その他の薬学的に許容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、ラクトビオン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸、チオシアン酸塩、P−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられるが、これに限定されるものではない。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらなる薬学的に許容可能な塩としては、適切な場合、ハロゲン化物などの対イオン、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、スルホネート、およびアリールスルホネートを使用して形成される、無毒のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンが挙げられる。
【0088】
「薬学的に許容される担体」は、本明細書の用法では、発熱性物質非含有滅菌水などの、医薬投与に適合する、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。適切な担体は、参照により本明細書に援用される、当該分野の標準的な参考教科書であるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載される。このような担体または希釈剤の好ましい例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これに限定されるものではない。リポソームや、不揮発性油などの非水性ビヒクルもまた、使用されてもよい。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が、活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるその使用が想定される。補足の活性化合物もまた、組成物に組み込み得る。
【0089】
本明細書の用法では、「前がん性」という用語は、悪性ではないが未治療のままであると悪性になる可能性のある状態を指す。
【0090】
「対象」という用語は、本明細書の用法では動物を指す。好ましくは、動物は哺乳類である。より好ましくは、哺乳類はヒトである。対象はまた、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、モルモット、魚類、鳥類なども指す。
【0091】
本発明の化合物は、適切な官能基を付加することによって修飾されて、選択的な生物学的特性が増強されてもよい。このような修飾は、当技術分野で公知であり、所与の生物系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透を増加させ、経口利用能を高め、溶解度を増加させて注射による投与を可能にし、代謝を変化させ、排泄速度を変化させるものを含んでもよい。
【0092】
合成された化合物は、反応混合物から分離され、カラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィーまたは再結晶化などの方法によってさらに精製され得る。当業者には理解され得るように、本明細書の式の化合物を合成するさらなる方法は、当業者には明らかであろう。さらに、様々な合成工程が交互の順序または順序で実施されて、所望の化合物が得られてもよい。本明細書に記載の化合物を合成するのに有用な合成化学変換および保護基手法(保護および脱保護)は、当技術分野で公知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2d.Ed.,John Wiley and Sons(1991);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);およびL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、および後続の版に記載されるものなどが挙げられる。
【0093】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共に調合された、本発明の化合物の治療有効量を含んでなる。
【0094】
本明細書の用法では、「薬学的に許容可能な担体または賦形剤」という用語は、あらゆるタイプの無毒で不活性の固体、半固体または液体増量剤、希釈剤、封入材料または製剤助剤を意味する。
【0095】
本発明の医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸内に、経鼻的に、口腔内に、膣内に、または埋め込み式リザバーを介して、好ましくは経口投与によって、または注射によって投与されてもよい。本発明の医薬組成物は、任意の従来の無毒で薬理的に許容可能な担体、アジュバントまたはビヒクルを含有してもよい。場合によっては、製剤のpHを薬学的に許容可能な酸、塩基または緩衝液によって調節し、化合物またはその送達形態の安定性を高めてもよい。非経口という用語は、本明細書の用法では、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、クモ膜下腔内、病巣内、および頭蓋内注射または輸液技術を含む。
【0096】
経口投与のための液体剤形としては、薬学的に許容可能なエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水またはその他の溶媒や、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(具体的には、綿実、ラッカセイ、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、および脂肪酸のエステルソルビタンなどの可溶化剤および乳化剤、およびそれらの混合物などの当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含有してもよい。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、例えば、湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味剤、着香料、および芳香剤などのアジュバントもまた含み得る。
【0097】
注射用製剤、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液は、適当な分散剤、または湿潤剤、および懸濁剤を使用して、公知の技術に従って調合されてもよい。無菌注射用製剤はまた、例えば1,3−ブタンジオール溶液などの無毒の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液、懸濁液またはエマルションであってもよい。用いられてもよい許容できるビヒクルおよび溶媒は、水、米国薬局方リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液である。これに加えて、無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒として従来法で用いられる。この目的で、合成モノまたはジグリセリドをはじめとする、あらゆる無刺激不揮発性油が用いられ得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製で使用される。
【0098】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通過させる濾過によって、または使用前に滅菌水またはその他の無菌注射用培地中に溶解または分散され得る、無菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。
【0099】
薬物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることがしばしば望ましい。これは、水溶性が劣る結晶性または非晶質物質の液体懸濁液の使用によって、達成されてもよい。次に薬物の吸収速度は、その溶出速度に左右され、それは次に結晶サイズおよび結晶形態に左右されてもよい。代案としては、非経口的に投与される剤形の遅延性の吸収は、薬物をオイルビヒクルに溶解または懸濁することによって達成される。注射用デポー製剤は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー内に、薬物の微小カプセル化マトリックスを形成することで製造される。薬物とポリマーの比率および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度は調節され得る。その他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤はまた、薬物を身体組織適合性のリポソームまたはマイクロエマルション中に封入することでも調製される。
【0100】
直腸内または膣内投与のための組成物は、好ましくは坐薬であり、それは環境温度で固体であるが体温では液体であり、したがって直腸または膣窩洞内で溶融して活性化合物を放出する、カカオ脂、ポリエチレングリコールまたは坐薬ワックスなどの適切な非刺激性の賦形剤または担体に、本発明の化合物を混合することで、調製され得る。
【0101】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、および顆粒が挙げられる。このような固体剤形中では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの、少なくとも1つの不活性の薬学的に許容可能な賦形剤または担体、および/またはa)デンプン、乳糖、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの湿潤剤、b)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)四級アンモニウム塩などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリンなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、およびi)滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤と混合される。カプセル、錠剤、および丸薬の場合、剤形は、緩衝剤もまた含んでなってもよい。
【0102】
類似タイプの固体組成物はまた、乳糖または乳糖類、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用する、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いられてもよい。
【0103】
錠剤、糖衣丸、カプセル、丸薬、および顆粒の固体剤形は、腸内コーティングおよび製剤処方技術分野で周知のその他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製され得る。それらは任意選択的に不透明剤を含有してもよく、それらは腸管の特定部分のみでまたは優先的に、活性成分を任意選択的に遅延様式で放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質、およびワックスが挙げられる。
【0104】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容可能な担体と、必要に応じて任意の必要な保存料または緩衝液と混合される。点眼剤、点耳薬、眼軟膏、粉末、および溶液もまた、本発明の範囲内として想定される。
【0105】
軟膏、ペースト、クリーム、およびゲルは、本発明の活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、滑石、および酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含有してもよい。
【0106】
粉末およびスプレーは、本発明の化合物に加えて、乳糖、滑石、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有し得る。スプレーは、クロロフルオロヒドロ炭素などの通例の噴霧剤をさらに含有し得る。
【0107】
肺送達のためには、本発明の治療用組成物は、固体または液体の微粒子形態で調合され、例えば、呼吸器系への吸入などの直接投与によって、患者に投与される。本発明を実施するために調製される活性化合物の固体または液体微粒子形態としては、呼吸に適したサイズの粒子、すなわち、吸入時に口および喉頭を通過して、気管支および肺胞に入るのに十分に小さなサイズの粒子が挙げられる。エアロゾル化した治療薬、特にエアロゾル化した抗生物質の送達は、当該技術分野で公知である(例えば、全て参照により本明細書に援用される、VanDevanter et al.,に付与された米国特許第5,767,068号明細書、Smith et al.,に付与された米国特許第5,508,269号明細書、およびMontgomeryによる国際公開第98/43,650号パンフレットを参照されたい)。抗生物質の肺送達の考察はまた、参照により本明細書に援用される、米国特許第6,014,969号明細書にもある。
【0108】
本発明の化合物の「治療有効量」とは、任意の薬物療法に適用可能な妥当な利点/リスク比で、治療される対象に治療効果をもたらす化合物の量を意味する。治療効果は、客観的(すなわち、いくつかの検定またはマーカーによって測定可能)または主観的(すなわち、対象が効果を示すか、または感じる)であってもよい。上述の化合物の有効量は、約0.1mg/Kg〜約500mg/Kg、好ましくは約1〜約50mg/Kgの範囲であってもよい。有効用量はまた、投与経路、ならびにその他の薬剤との同時使用の可能性次第で変動する。しかし、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で、主治医によって決定されることが理解されるであろう。任意の特定の患者に対する特定の治療有効用量レベルは、治療される障害および障害の重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物;患者の年齢、体重、総体的な健康、性別、および食生活;投与時間、投与経路、および用いられる特定の化合物の排泄速度;治療の持続時間;用いられる特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;および医学分野で周知の同様の要因をはじめとする様々な要因に左右される。
【0109】
ヒトまたはその他の動物に、単回用量または分割用量で投与される本発明の化合物の総1日用量は、例えば、0.01〜50mg/kg体重、またはより通常には0.1〜25mg/kg体重の量であり得る。単回用量組成物は、このような量を含有し、または1日用量を構成するその約数を含有してもよい。一般に、本発明による治療レジメンは、単回または複数回用量中で、1日当たり約10mg〜約1000mgの本発明の化合物をこのような治療を必要とする患者に投与することを含んでなる。
【0110】
本明細書に記載の式の化合物は、例えば、静脈内、動脈内、真皮下、腹腔内、筋肉内、または皮下注射によって;または経口的、口腔内、経鼻的、経粘膜的、局所的に、点眼薬中で、または吸入によって、約0.1〜約500mg/kg体重の範囲の用量で、代案としては1mg〜1000mg/回の用量で、4〜120時間毎に、または特定の薬物の要件に従って、投与され得る。本明細書の方法は、所望のまたは規定の効果を達成するための化合物または化合物組成物の有効量の投与を検討する。典型的に、本発明の医薬組成物は、1日当たり約1〜約6回、あるいは代案としては持続注入として投与される。このような投与は、長期または救急治療として使用され得る。単回投与剤形を製造するために、医薬用賦形剤または担体と組み合わされてもよい活性成分の量は、治療される宿主次第および特定の投与様式で変動する。典型的な製剤は、約5%〜約95%の活性化合物(w/w)を含有する。代案としては、このような調製物は、約20%〜約80%の活性化合物を含有してもよい。
【0111】
上に列挙されたものより低いまたは高い用量が、要求されてもよい。任意の特定の患者に対する特定の投与および治療レジメンは、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食生活、投与時間、排出速度、合剤、疾患または病状または症状の重症度および経過、疾患または病状または症状に対する患者の傾向、および主治医の判断をはじめとする様々な要因に左右される。
【0112】
ひとたび患者の状態が改善されたなら、必要に応じて、本発明の化合物、組成物または組み合わせの維持用量が投与されてもよい。引き続いて、症状が所望のレベルまで軽減された場合に、改善された状態が維持されるレベルまで、症状に応じて投与量または投与頻度またはその双方が低下されてもよい。しかし、患者は、疾患症状のあらゆる再発時に、長期的な断続的治療を必要としてもよい。
【0113】
合成法
式Iのピリミジン誘導体またはその薬理的に許容可能な塩は、化学的に関連する化合物の調製に適用可能であることが知られている任意の工程によって調製されてもよい。特定の中間体を製造するのに適した工程、必要な出発原料は、有機化学の標準手順によって得られてもよい。このような出発原料の調製は、添付の非限定的な実施例内に記載される。代案としては必要な出発原料は、示されるものに類似した、化学者の通常の技能内である手順によって得られる。
【0114】
本明細書に記載の化合物は、例示としてのみ意図され、本発明の範囲を限定するものではない、本発明の化合物がそれによって調製されてもよい方法を例示する、以下の代表的な合成スキームに関連してより良く理解されるであろう。
スキーム1
【化6】
Urea:尿素
【実施例】
【0115】
化合物および本発明の方法は、例示としてのみ意図され、本発明の範囲を限定するものではない、以下の実施例に関連してより良く理解されるであろう。開示された実施形態に対する様々な変更および修正は、当業者には明らかであり、限定されるものではないが、化学構造、置換基、誘導体、調合物および/または本発明の方法に関するものをはじめとする、このような変更および修正が、本発明の精神と添付の特許請求の範囲を逸脱することなく加えられてもよい。
【0116】
実施例1:N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−5−[[4−(1H−インドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]−4−メトキシ−フェニル]プロプ−2−エナミド(化合物1)の合成:
【化7】
チエノ[3,2−d]ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン(化合物102)の合成
メチル3−アミノ−2−チオフェンカルボン酸(13.48g、85.85mmol)および尿素(29.75g、0.43mol)の混合物を190℃で2時間加熱した。次に熱い反応混合物を水酸化ナトリウム溶液に注ぎ入れ、不溶性物質を濾過により除去した。次に混合物を2NのHCl溶液で酸性化し、濾過により収集して風乾し、表題化合物(9.62g、67%)を白色沈殿物として得た。
【0117】
2,4−ジクロロチエノ[3,2−d]ピリミジン(化合物103)の合成
化合物102(8.5g)をオキシ塩化リン(130mL)に懸濁した。混合物を100℃で10時間加熱した。POCl3を減圧下で除去した。混合物をジクロロメタンに溶解し、氷でクエンチした。生成物をジクロロメタンで抽出して収集した。合わせた有機層をMgSO4上で乾燥させて濃縮し、生成物103を白色固体として得た。LCMS:205[M+1]H NMR(400MHz,CDCl):δ7.48(d,J=5.6Hz,1H),8.05(d,J=5.6Hz,1H).
【0118】
2−クロロ−4−インドール−3−イルチオフェノ[3、2−d]ピリミジン(化合物104)の合成
乾燥THF(60mL)中のインドール(14g、120mmol、2当量)の溶液に、5℃未満で、THF中のメチルマグネシウム臭化物(60mL、120mmol、2N、2当量)の混合物を滴下して添加し、次に混合物をこの温度で30分間撹拌した。次に混合物に、5℃未満で、50mLのTHF中の2,4−ジクロロチオフェノ[3,2−d]ピリミジン(12.4g、60mmol、1当量)の懸濁液を添加し、混合物を1時間撹拌して、次に60℃で一晩加熱した。反応物を酢酸(8mL、13mmol)でクエンチし、水(100mL)の添加がそれに続いた。沈殿した固体を濾過によって収集し、水洗し、真空乾燥して生成物(9g、53%)を得た。
H NMR(300MHz,DMSO−d6):δ12.22(br,1H),8.59−8.66(m,1H),8.51−8.53(m,1H),8.42(m,1H),7.50−7.61(m,2H),7.23−7.38(m,2H);MS理論値:285.0;MS実測値:286.0([M+H]).
【0119】
2−クロロ−4−(1−メチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン(化合物105)の合成:
THF(200mL)中の化合物104(20.52mmol)に、0℃および窒素下で、水素化ナトリウム(鉱物油中の60%分散体、0.862g、21.54mmol)を添加した。得られた溶液を0℃で15分間撹拌した。ヨウ化メチル(1.347mL、21.54mmol)を添加して、反応物を室温になるまで放置して2時間撹拌した。反応は不完全であったので、反応混合物を再び氷浴で冷却し、さらなる水素化ナトリウム(0.862g、21.54mmol)を添加して、懸濁液を0℃で10分間撹拌した。次にヨウ化メチル(1.347mL、21.54mmol)を添加して、反応物をさらに1時間撹拌した。反応混合物を水(100mL)で希釈し、EtOAc(100mL)で抽出した。有機物を水洗し(75mL)、溶媒境界面にいくらかの固体が形成したので、液体を濾過して水および酢酸エチルで洗浄し、得られた固体を乾燥させて105を白色固体として得た(72%収率)。MS理論値:298.09;MS実測値:299.9([M+H])。
【0120】
N−(4−フルオロ−2−メトキシ−5−ニトロ−フェニル)−4−(1−メチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−アミン(化合物106)の合成
2−ペンタノール(50mL)中の化合物105(2g、7mmol、1当量)および4−フルオロ−2−メトキシ−5−ニトロアニリン(1.3g、7mmol、1当量)の混合物に、P−トルエンスルホン酸水和物(1.4g、8.4mmol、1.2当量)を一度に添加した。混合物を130℃で一晩撹拌し、次に室温に冷却した。沈殿物を濾過によって収集し、2−ペンタノール(5mL)で洗浄して真空乾燥し、所望の生成物の一部を黄色固体として得た。固体をMeOHでリサイクルして、0.9gの標的化合物106を得た。MS理論値:449.09;MS実測値:449.9([M+H])。
【0121】
N4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−N4−メチル−N1−[4−(1−メチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]−5−ニトロ−ベンゼン−1,4−ジアミン(化合物107)の合成:
DMF(4ml)中の化合物106(300mg)およびN1,N1,N1−トリメチルエタン−1,2−ジアミン(75mg)の溶液に、DIPEA(185mg)を添加した。混合物を140℃で4時間加熱した。得られた混合物を室温に冷却し、水(10ml)に注ぎ入れて、酢酸エチル(20ml×3)で抽出した。合わせた有機相を水、鹹水で洗浄し、NaSOで乾燥させて、濾過して濃縮した。残渣をフラッシュカラムによって精製し、赤みがかった固体(260mg、74%収率)を得た。MS理論値:531.2;MS実測値:532.1([M+H])。
【0122】
N1−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−5−メトキシ−N1−メチル−N4−[4−(1−メチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]ベンゼン−1,2,4−トリアミン(化合物108)の合成:
化合物107(180mg、0.35mmol)、鉄(78mg、1.4mmol)、およびNHCl(1.4mmol)の混合物に、エタノール(4ml)と水(2ml)の混合溶液を添加した。得られた混合物を2時間還流させた。混合物を室温に冷却し、濾過して濃縮した。残渣をDCMと水の間で分配させた。有機相を水、鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過して濃縮し、粗生成物を得て、それをさらに精製することなく続く工程で直接使用した。MS理論値:501.1;MS実測値:502.1([M+H])。
【0123】
N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エチル−メチル−アミノ]−4−メトキシ−5−[[4−(1−メチルインドール−3−イル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]アミノ]フェニル]プロプ−2−エナミド(化合物1)の合成:
DCM(2ml)中の化合物108(90mg、0.18mmol)の溶液に、0℃でDIPEA(0.22mmol)を添加し、塩化アクリロイル(0.22mmol)の添加がそれに続いた。混合物を1時間撹拌した。混合物をDCM(4ml)で希釈し、NaHCOで処理し、DCM(3ml×2)で抽出した。合わせた有機相を水、鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて、濾過して濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、DCM/メタノール=40/1で溶出して所望の生成物を得た(30mg、33%収率)。
H NMR(400MHz,CDCl3):δ10.1(s,1H),9.82(s,1H),8.63(m,1H),8.21(s,1H),7.83(m,1H),7.71(s,1H),7.50(m,1H),7.42(m,1H),7.32−7.37(m,2H),6.83(s,1H),6.30−6.41(m,2H),5.69−5.73(m,1H),3.98(s,3H),3.93(s,3H),2.92(m,2H),2.74(s,3H),2.33(m,2H),2.29(s,6H).MS理論値:555.1;MS実測値:556.1([M+H]).
【0124】
生物学的アッセイ
前述のように、本発明で定義される誘導体は、抗増殖活性を有する。これらの特性は、例えば、下に記載する手順の1つまたは複数用いて評価されてもよい。
【0125】
1.EGFR酵素アッセイ
以下の表IIは、本発明を代表する化合物およびEGFRアッセイにおけるそれらの活性を列挙する。これらのアッセイでは、以下の格付けを使用した:A:<0.1μM;B:0.1〜10μM。
【0126】
【表3】
【0127】
2.腫瘍を有するマウスにおける有効性試験:
50%マトリゲル中の1×10個のNCI−H1975細胞をメスのnu/nuマウスの側腹部に皮下移植した。腫瘍は、10匹のマウスの群の大きさで対合させた。試験化合物は、40mg/kg日で経口投与した。
【0128】
選択された化合物の腫瘍阻害の値は、表IIIに示される。
【0129】
【表4】
【0130】
本発明は、上記の説明および実施例によって例示されている。実施例は、どのようにも限定を意図するものではない。全体を通して使用されているように、範囲は、その範囲内の各値を記述するための省略表現として使用される。範囲内の任意の値が、範囲の終点として選択され得る。調合物が記載されるとき、当業界で一般的であるように、これらの成分が製造、保存、使用時に実際の調合物中で互いに反応してもよいにもかかわらず、それらはそれらの成分に関して記載されてもよいものと理解され、このような製品は、記載された調合物によって網羅されることが意図される。さらに、本明細書中に引用される全ての参考文献は、その全体が本明細書に参照により援用される。