特許第6978022号(P6978022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978022
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】安全機構付き停止装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/02 20060101AFI20211125BHJP
   E05F 5/00 20170101ALI20211125BHJP
【FI】
   E05F5/02 D
   E05F5/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-551044(P2020-551044)
(86)(22)【出願日】2018年10月4日
(86)【国際出願番号】JP2018037269
(87)【国際公開番号】WO2020070865
(87)【国際公開日】20200409
【審査請求日】2021年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110206
【氏名又は名称】株式会社TOK
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大輔
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−32787(JP,A)
【文献】 特開2006−144419(JP,A)
【文献】 特開平10−159432(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1876388(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 3/14
E05F 5/00−5/02
E06B 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体に対して可動体が所定の相対位置にあるときに前記可動体の動きを停止させる停止装置において、
前記固定体または前記可動体に取り付けられる筐体と、
前記可動体の可動方向にスライド自在に前記筐体に設けられる第1ラックと、
前記可動方向に直交する直交方向において前記第1ラックのスライド方向と交差する交差位置までスライド自在に前記筐体に設けられる第2ラックと、
前記交差位置よりも前記第2ラックから離れた第1ラック初期位置に向けて前記第1ラックを付勢する第1弾性部材と、
前記交差位置から離れた第2ラック初期位置に向けて前記第2ラックを付勢する第2弾性部材と、
前記可動体または前記固定体に係合する端部が前記筐体から突出して前記第2ラック側の前記第1ラックの端部に前記第1ラックと別体にまたは前記第1ラックと一体に設けられるレバーと、
前記第1ラックおよび前記第2ラック間に設けられ、前記第1弾性部材の付勢力に抗して前記第1ラックを前記交差位置に向けてスライドさせる外力によって移動する前記レバーの移動速度が所定の速さを超えるとその速さに応じて前記外力を減衰させて前記第1ラックから前記第2ラックに伝達し、前記外力によって前記第1ラックが前記交差位置にスライドする際に、前記第2弾性部材の付勢力に抗して前記第2ラックを前記交差位置にスライドさせる力を前記第2ラックに伝達する外力伝達機構と、
前記第2ラックが前記交差位置に位置して前記レバーが衝突する箇所の前記第2ラックに前記第2ラックと別体にまたは前記第2ラックと一体に設けられるストッパと
を備えることを特徴とする安全機構付き停止装置。
【請求項2】
前記外力伝達機構は、前記第1ラックに歯合する入力側ギヤと、この入力側ギヤに入力される前記外力が伝えられる出力側ギヤと、前記入力側ギヤと前記出力側ギヤとの間に設けられる粘性流体とを備えるロータリーダンパから構成されることを特徴とする請求項1に記載の安全機構付き停止装置。
【請求項3】
前記外力伝達機構は、前記第1ラックに歯合する入力側ギヤと、この入力側ギヤに入力される前記外力が伝えられる出力側ギヤと、前記入力側ギヤと前記出力側ギヤとの間に設けられる遠心クラッチまたは遠心ブレーキとを備えて構成されることを特徴とする請求項1に記載の安全機構付き停止装置。
【請求項4】
前記出力側ギヤと前記第2ラックとの間に前記出力側ギヤおよび前記第2ラックに歯合する伝達調整ギヤ機構を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の安全機構付き停止装置。
【請求項5】
前記外力伝達機構は、前記第2弾性部材の付勢力によって前記第2ラックが前記第2ラック初期位置に戻る際に前記第2ラック側から伝わる回転力を前記第1ラック側へ伝達しないワンウエイクラッチを備えて構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の安全機構付き停止装置。
【請求項6】
前記レバーは金属により形成され、前記ストッパは金属または弾性材により形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の安全機構付き停止装置。
【請求項7】
前記第2弾性部材の付勢力を調整する付勢力調整機構を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の安全機構付き停止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定体に対して可動体が所定の相対位置にあるときに可動体の動きを安全に停止させる安全機構付き停止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の安全機構付き停止装置としては、例えば、特許文献1に開示された引き戸の戸先での指挟み防止機構がある。この指挟み防止機構は、サッシの側に設けられる進退作動体と、サッシ枠の縦枠に設けられる永久磁石とから構成される。進退作動体は、上下のリンクから構成され、その一端部同士が第1ピンにより枢結される。また、下リンクの他端部がサッシの側に第2ピンにより枢結され、上リンクに設けられた第1軸部がサッシの側に設けられた長穴に挿入保持される。サッシが開かれていくと、永久磁石が上下のリンク同士の枢結部を吸引して、進退作動体が縦枠の側に進出する。上下のリンクの背後には後退ストッパーが設けられ、この後退ストッパーにより進退作動体の後退が阻止される。開いたサッシを閉じる際、サッシの戸先と縦枠との間に人の指が存在しても、縦枠の側に進出した進退作動体がサッシの戸先と縦枠との間に介在して、指挟み事故の発生が防がれる。サッシを閉め切るときには後退ストッパーを操作して、進退作動体をサッシの側に後退させる。
【0003】
また、従来この種の安全機構付き停止装置として、特許文献2に開示された減速装置もある。この減速装置は引き戸に取り付けられる戸車装置に設けられ、引き戸は下枠に設けられた案内レールに沿って移動する。案内レールの縦枠から所定距離に位置する縦枠近傍区間の案内レールには、凹の段差が設けられている。戸車装置はハウジングに主戸車が取り付けられて構成され、主戸車の外周には、アダプターに取り付けられたロータリーダンパと歯合する歯車が形成されている。このアダプターには、案内レールを滑動するローラーが回転自在に設けられている。ローラーは、主戸車が縦枠近傍区間を通過するとき、凹の段差によってその位置が下がり、アダプターが回動する。アダプターが回動すると、ロータリーダンパが主戸車と歯合し、主戸車の回転が制動される。このため、引き戸は、ある程度閉められると、縦枠に当接する直前に徐々に減速され、開閉力が増大して、引き戸の跳ね返りや指挟み等が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−225105号公報
【特許文献2】特開平7−139241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示された停止装置は、サッシを閉め切る度に後退ストッパーを操作して、進退作動体をサッシの側に一々後退させる必要がある。すなわち、上記従来の特許文献1に開示された停止装置は、進退作動体の作動状態から作動解除状態への切り替え操作が煩雑で、スムーズに動作し難い。
【0006】
また、上記従来の特許文献2に開示された停止装置は、アルミニウム等の金属からなる掃き出しサッシのように引き戸の重量が大きい場合、ロータリーダンパによって引き戸の制動効果を効かせ難い。
【0007】
また、上記従来の特許文献1および特許文献2に開示された各停止装置は、いずれも、サッシや引き戸等が設けられる可動側と、縦枠や下枠等が設けられる固定側との双方に装置の取り付けおよび施工が必要とされる。このため、取り付けに手間を要し、また、装置構成を簡略にできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
固定体に対して可動体が所定の相対位置にあるときに可動体の動きを停止させる停止装置において、
固定体または可動体に取り付けられる筐体と、
可動体の可動方向にスライド自在に筐体に設けられる第1ラックと、
可動方向に直交する直交方向において第1ラックのスライド方向と交差する交差位置までスライド自在に筐体に設けられる第2ラックと、
交差位置よりも第2ラックから離れた第1ラック初期位置に向けて第1ラックを付勢する第1弾性部材と、
交差位置から離れた第2ラック初期位置に向けて第2ラックを付勢する第2弾性部材と、
可動体または固定体に係合する端部が筐体から突出して第2ラック側の第1ラックの端部に第1ラックと別体にまたは第1ラックと一体に設けられるレバーと、
第1ラックおよび第2ラック間に設けられ、第1弾性部材の付勢力に抗して第1ラックを交差位置に向けてスライドさせる外力によって移動するレバーの移動速度が所定の速さを超えるとその速さに応じて外力を減衰させて第1ラックから第2ラックに伝達し、外力によって第1ラックが交差位置にスライドする際に、第2弾性部材の付勢力に抗して第2ラックを交差位置にスライドさせる力を第2ラックに伝達する外力伝達機構と、
第2ラックが交差位置に位置してレバーが衝突する箇所の第2ラックに第2ラックと別体にまたは第2ラックと一体に設けられるストッパと
を備えることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、可動体が固定体に対して相対的に移動して可動体が固定体に対して所定の相対位置に位置すると、固定体または可動体に取り付けられる筐体から突出するレバーの端部が可動体または固定体に係合する。さらに、可動体が固定体に対して相対的に移動すると、レバーが第1弾性部材の付勢力に抗して可動体の可動方向に移動する。したがって、レバーに設けられた第1ラックもレバーと共に移動し、第1ラックから外力伝達機構にレバーに加えられる外力が伝達される。外力によって移動するレバーの移動速度が所定の速さを超えると、外力伝達機構によって外力がその速さに応じて減衰させられて第1ラックから第2ラックに伝達される。したがって、第2ラックは、第2弾性部材の付勢力に抗して交差位置までスライドする。この結果、交差位置において、第2ラック側の第1ラックの端部に設けられるレバーと、第2ラックに設けられるストッパとが衝突し、可動体の動きが強制的に停止させられる。
【0010】
本構成による安全機構付き停止装置が引き戸等の停止用に用いられ、可動体が引き戸等、固定体が引き戸等をスライド自在に支持する支持枠等とされる場合、引き戸等が閉まる直前にレバーの端部が支持枠または引き戸等に係合する相対位置に、停止装置が取り付けられることで、引き戸等は閉まる直前に外力伝達機構によって制動されてから、レバーとストッパとによって強制的に停止させられる。したがって、引き戸等は、速い速度で閉められる際、外力伝達機構に全て頼ることなく、レバーとストッパとの衝突によって引き戸等の閉まる前の所定位置にて、引き戸等の戸先に所定の隙間を確保して確実に停止する。このため、引き戸等の重量が大きくて速度がつく場合であっても、引き戸等の停止は確実に行われるようになる。
【0011】
また、可動体が停止した後、所定の速さを超えない移動速度でレバーが外力によって同じ方向に移動させられると、外力伝達機構による第1ラックから第2ラックへの外力の伝達は行われず、第2ラックは第2弾性部材によって第2ラック初期位置に戻り、第1ラックは第1弾性部材の付勢力に抗して交差位置を超えて移動する。したがって、可動体は停止する前の方向と同じ方向に移動する。
【0012】
このため、本構成による安全機構付き停止装置が引き戸等の停止用に用いられる場合、引き戸等の停止後、引き戸等を閉め切るときに、従来の、進退作動体の作動状態から作動解除状態への切り替え操作のような、特別の操作を行う必要は無い。よって、本構成による安全機構付き停止装置はスムーズに動作し、引き戸等を速やかに開け閉めすることができる。
【0013】
また、本構成による安全機構付き停止装置は、筐体が固定体または可動体の一方に取り付けられることで、その機能を発揮する。このため、従来の停止装置のように、サッシや引き戸等が設けられる可動側と、縦枠や下枠等が設けられる固定側との双方に、装置の取り付けや施工をする必要は無い。このため、停止装置の取り付けに手間を要さず、また、装置構成を簡略化することが可能になる。
【0014】
また、本発明は、外力伝達機構が、第1ラックに歯合する入力側ギヤと、この入力側ギヤに入力される外力が伝えられる出力側ギヤと、入力側ギヤと出力側ギヤとの間に設けられる粘性流体とを備えるロータリーダンパから構成されることを特徴とする。
【0015】
本構成によれば、レバーの端部から第1ラックを介して外力伝達機構に加わる外力は入力側ギヤに伝えられ、入力側ギヤはレバーの移動速度に応じて回転する。入力側ギヤに生じる回転トルクは、ロータリーダンパが備える粘性流体に入力側ギヤの回転速度の大きさに応じて生じる剪断抵抗により減衰させられ、可動体の動きに制動がかけられる。この際、レバーの移動速度が遅く、入力側ギヤの回転速度が低い場合には、粘性流体の剪断抵抗が上がらないので、入力側ギヤから出力側ギヤへ回転トルクは伝達されない。したがって、第2ラックは第2ラック初期位置にとどまる。一方、レバーの移動速度が所定の速さを超え、入力側ギヤの回転速度が高くなる場合には、粘性流体の剪断抵抗が上がって大きくなるので、入力側ギヤから出力側ギヤへ回転トルクが伝達されるようになる。したがって、出力側ギヤの回転トルクが伝達される第2ラックは、第2弾性部材の付勢力に抗して交差位置まで移動し、ストッパにレバーが衝突して可動体の動きを停止させる。
【0016】
また、本発明は、外力伝達機構が、第1ラックに歯合する入力側ギヤと、この入力側ギヤに入力される外力が伝えられる出力側ギヤと、入力側ギヤと出力側ギヤとの間に設けられる遠心クラッチまたは遠心ブレーキとを備えて構成されることを特徴とする。
【0017】
本構成によっても、レバーの端部から第1ラックを介して外力伝達機構に加わる外力は入力側ギヤに伝えられ、入力側ギヤはレバーの移動速度に応じて回転する。入力側ギヤに生じる回転トルクは、遠心クラッチまたは遠心ブレーキにおけるシューが入力側ギヤの回転速度に応じてドラムに押し付けられることで生じる摩擦抵抗により減衰させられ、可動体の動きに制動がかけられる。この際、レバーの移動速度が遅く、入力側ギヤの回転速度が低い場合には、シューとドラムとの間の摩擦抵抗が上がらないので、入力側ギヤから出力側ギヤへ回転トルクは伝達されない。したがって、第2ラックは第2ラック初期位置にとどまる。一方、レバーの移動速度が所定の速さを超え、入力側ギヤの回転速度が高くなってシューに大きな遠心力が与えられる場合には、シューとドラムとの間の摩擦抵抗が上がって大きくなるので、入力側ギヤから出力側ギヤへ回転トルクが伝達されるようになる。したがって、出力側ギヤの回転トルクが伝達される第2ラックは、第2弾性部材の付勢力に抗して交差位置まで移動し、ストッパにレバーが衝突して可動体の動きを停止させる。
【0018】
また、本発明は、出力側ギヤと第2ラックとの間に出力側ギヤおよび第2ラックに歯合する伝達調整ギヤ機構を備えることを特徴とする。
【0019】
本構成によれば、外力伝達機構の出力側ギヤから出力される回転トルクは、伝達調整ギヤ機構により遅延されて、第2ラックへ伝達される。したがって、外力伝達機構において、可動体を制動し得る制動力を生じさせる作動期間が確保され、制動力が確実に可動体に与えられてから、第2ラックが移動して可動体を停止させるようになる。
【0020】
また、本発明は、外力伝達機構が、第2弾性部材の付勢力によって第2ラックが第2ラック初期位置に戻る際に第2ラック側から伝わる回転力を第1ラック側へ伝達しないワンウエイクラッチを備えて構成されることを特徴とする。
【0021】
本構成によれば、第2ラックが交差位置に移動した後、第2弾性部材の付勢力によって第2ラックが第2ラック初期位置に戻る際、第2ラック側から外力伝達機構に伝わる回転力は、ワンウエイクラッチによって第1ラック側への伝達が断たれる。このため、第1ラックは、外力伝達機構の制動力を受けないフリー状態になり、第1弾性部材の付勢力によって速やかに第1ラック初期位置に復帰する。
【0022】
また、本発明は、レバーが金属により形成され、ストッパが金属または弾性材により形成されることを特徴とする。
【0023】
本構成によれば、第1ラックおよび第2ラックが交差位置に移動してレバーとストッパとが衝突する際、金属同士または金属と弾性材とが衝突することとなる。金属同士が衝突する場合には、レバーおよびストッパの摩耗や欠けといった損傷が防止される。また、金属製レバーと弾性材からなるストッパとが衝突する場合には、各部材の損傷が防止されると共に、衝突音の発生が防止される。
【0024】
また、本発明は、第2弾性部材の付勢力を調整する付勢力調整機構を備えることを特徴とする。
【0025】
本構成によれば、付勢力調整機構によって第2弾性部材の付勢力が調整されることで、第2ラックが第2弾性部材の付勢力に抗して交差位置に移動するのに要する力が適宜調整される。したがって、第2ラックに設けられるストッパの、外力の入力に対する応答速度が容易に可変される。例えば、付勢力調整機構によって第2弾性部材の付勢力が強く調整されると、レバーの移動速度が速くて外力伝達機構によって大きな回転トルクが第2ラックに伝達される場合に、ストッパが第2弾性部材の強い付勢力に抗して交差位置に素速く移動し、ストッパにレバーが衝突する。また、第2弾性部材の付勢力が弱く調整されると、レバーの移動速度が遅くて外力伝達機構によって小さな回転トルクが第2ラックに伝達される場合に、ストッパが第2弾性部材の弱い付勢力に抗して交差位置にゆっくり移動し、ストッパにレバーが衝突する。このため、付勢力調整機構によって第2弾性部材の付勢力を調整することで、レバーとストッパとが衝突するレバーの移動速度を容易に調整することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、引き戸等の重量が大きくて速度がつく場合であっても、確実に引き戸等を停止させられ、また、特別の操作を行う必要無く、スムーズに動作して引き戸等を速やかに開け閉めすることができ、また、取り付けに手間を要さず、装置構成を簡略化することが可能な安全機構付き停止装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る安全機構付き停止装置の概略構成を示す透視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る安全機構付き停止装置の分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る安全機構付き停止装置のカバーを外した状態の斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る安全機構付き停止装置の筐体を構成するケースの斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る安全機構付き停止装置の筐体を構成するカバーの斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る安全機構付き停止装置を構成する無限角回転ダンパの側面、正面および断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明による安全機構付き停止装置を実施するための形態について説明する。
【0029】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る安全機構付き停止装置1の概略構成を示す透視正面図、図1(b)は透視平面図である。また、図2は停止装置1の分解斜視図、図3(a)は、カバー2bを外して停止装置1を斜め右上方から見下ろした右側正面斜視図、図3(b)は、斜め左上方から見下ろした左側正面斜視図を示している。
【0030】
停止装置1は、ケース2aおよびカバー2bからなる直方体状の筐体2内に、第1ラック3、第2ラック4、第1弾性部材5、第2弾性部材6、無限角ロータリーダンパ7および中間ギヤ8,9,10の各部品が取り付けられて、構成される。第1ラック3にはレバー11、第2ラック4にはストッパ12が設けられる。ケース2aは、図4(a)に、斜め左上方から見下ろした左側正面斜視図、図4(b)に、斜め右上方から見下ろした右側正面斜視図が示される。カバー2bは、図5(a)に、斜め右下方から表側を見上げた表面斜視図、図5(b)に、斜め右下方から裏側を見上げた裏面斜視図が示される。
【0031】
筐体2は、3本のネジ13によってケース2aにカバー2bが取り付けられることで、ケース2a正面の開口面がカバー2bで蓋をされる。この状態で、筐体2の正面の左方下部にはレバー11の端部が突出する。筐体2は、サッシ枠や支持枠等の固定体、またはサッシ枠や支持枠にスライド自在に設けられるサッシや引き戸等の可動体に、その長手方向が可動体の可動方向に一致させられて取り付けられる。停止装置1は、固定体に対して可動体が所定の相対位置にあるときに、例えば、サッシ等の可動体がサッシ枠の縦枠等の固定体近傍にあるときに、筐体2から突出するレバー11の端部が可動体または固定体に係合することで、次述するように可動体の動きを安全に停止させる。
【0032】
ケース2aの正面下方には図4(a),(b)に示すようにケース側第1案内溝2a1、カバー2bの裏面下方には図5(b)に示すようにカバー側第1案内溝2b1が、筐体2の長手方向に形成されている。また、第1ラック3の両側面には図2に示すようにスライド凸部3a,3aが形成されている。第1ラック3は、各スライド凸部3a,3aがケース側第1案内溝2a1およびカバー側第1案内溝2b1に挿入されることで、可動体の可動方向つまり筐体2の長手方向にスライド自在に、筐体2に設けられる。この第1ラック3には、可動体の可動方向に垂直な方向に、歯3bが切られている。
【0033】
また、ケース2aの正面左方には、図4(a),(b)に示すようにケース側第2案内溝2a2が、カバー2bの裏面右方には、図5(b)に示すようにカバー側第2案内溝2b2が、筐体2の短手方向に形成されている。また、第2ラック4の両側面には、図2および図3(a),(b)に示すようにスライド凸部4a,4aが形成されている。第2ラック4は、各スライド凸部4a,4aがケース側第2案内溝2a2およびカバー側第2案内溝2b2に挿入されることで、可動体の可動方向に直交する直交方向、つまり筐体2の短手方向において、第1ラック3のスライド方向と交差する交差位置までスライド自在に、筐体2に設けられる。本実施形態では、第2ラック4がその下方のケース2aの内壁面に当接し、レバー11がストッパ12に当接する位置が、第1ラック3と第2ラック4の交差位置に設定されている。この第2ラック4には、可動体の可動方向に直交する直交方向、つまり筐体2の短手方向に垂直な方向に、図3(a)に示すように歯4bが切られている。
【0034】
また、第2ラック4から離れる側の第1ラック3の端部には、図2に示すようにピン3cが立設されている。また、ケース2aの正面右下隅には、図4に示すようにピン2a3が立設されている。第1ラック3がケース2aに取り付けられると、各ピン3c,2a3は図3に示すように平行に並んで位置する。これら各ピン3c,2a3間には第1弾性部材5がかけられる。この第1弾性部材5は、第1ラック3と第2ラック4の交差位置よりも第2ラック4から離れた第1ラック初期位置に向けて、第1ラック3を付勢する。図1および図3は、第1ラック3が第1ラック初期位置に位置する状態を示している。第1弾性部材5は、本実施形態では引っ張りコイルバネにより構成され、第1ラック3を第2ラック4から離れる側に引っ張る引っ張り力を発揮する。しかし、第1弾性部材5は、必ずしも引っ張りコイルバネに限定されるものでなく、同様な引っ張り力を発揮するものであればよい。
【0035】
また、ケース2aの正面左方中央には、図4(a),(b)に示すように、壁2a4がケース側第2案内溝2a2に垂直に立設されている。側面視コの字状をした第2ラック4は、図3に示すように、コの字が壁2a4を挟むようにケース2aに取り付けられる。第2ラック4の上壁下面と壁2a4の上面との間には第2弾性部材6が取り付けられ、第2ラック4は、第2弾性部材6に付勢されてその上壁上面がケース2aの内壁天面に当接する。第2ラック4のこの位置は第2ラック初期位置となる。第2弾性部材6は、交差位置から離れた第2ラック初期位置に向けて、第2ラック4を付勢する。第2弾性部材6は、本実施形態では圧縮コイルバネにより構成され、第2ラック4をケース2aの内壁天面に押し付ける弾性力を発揮する。しかし、第2弾性部材6は、必ずしも圧縮コイルバネに限定されるものでなく、同様な弾性力を発揮するものであればよい。
【0036】
第2ラック4側の第1ラック3の端部には、図2および図3に示すようにレバー11が取り付けられている。レバー11は本実施形態では金属からなり、第1ラック3への取付側の端部が短く直角に曲がったL字型をしている。第1ラック3とレバー11とは、第1ラック3に設けられた穴3dに通されるネジがレバー11のL字型取付側端部に締結されることで、相互に固定される。カバー2bには、図5(a),(b)に示すように、筐体2の長手方向に延びる長穴2b3が形成されており、レバー11の端部はこの長穴2b3を通って筐体2の外部に突出する。また、第2ラック4に設けられるストッパ12は、第2ラック4が交差位置に位置してレバー11が衝突する箇所に設けられている。ストッパ12は金属または弾性材により形成される。
【0037】
第1ラック3および第2ラック4間には外力伝達機構が設けられている。本実施形態では、この外力伝達機構は無限角回転ダンパ7から構成される。外力伝達機構は、第1弾性部材5の付勢力に抗して第1ラック3を交差位置に向けてスライドさせる外力によって移動するレバー11の移動速度が所定の速さを超えると、その速さに応じて外力を減衰させて、第1ラック3から第2ラック4に伝達する。そして、その外力によって第1ラック3が交差位置にスライドする際に、第2弾性部材6の付勢力に抗して第2ラック4を交差位置にスライドさせる力を、第2ラック4に伝達する。
【0038】
無限角ロータリーダンパ7は、図6(a)に側面図、図6(b)に正面図、図6(c)に図6(b)におけるc−c線破断矢視断面図が示される。無限角ロータリーダンパ7は、第1ラック3に歯合する入力側ギヤ7aと、この入力側ギヤ7aに入力される外力が伝えられる出力側ギヤ7bと、入力側ギヤ7aと出力側ギヤ7bとの間に設けられる図示しない粘性流体とから構成される。出力側ギヤ7bの側面の凸部7b1がケース2aに形成された円筒溝2a5(図4参照)、軸7dの端部がケース2aに形成された穴2a6(図4参照)に挿入されると共に、入力側ギヤ7aの側面の凸部7a1がカバー2bの裏面に形成された円筒溝2b4および穴2b5(図5参照)に挿入されて、無限角ロータリーダンパ7の両側がケース2aおよびカバー2bに挟持されることで、無限角ロータリーダンパ7は筐体2に回転自在に支持される。
【0039】
本実施形態の無限角ロータリーダンパ7は、ワンウエイクラッチ7cを備えて構成される。ワンウエイクラッチ7cは入力側ギヤ7aに囲まれており、ワンウエイクラッチ7cの内輪7c1は、出力側ギヤ7bと共に軸7dに固定されており、外輪7c2に覆われている。粘性流体は、出力側ギヤ7bの側に設けられるこの外輪7c2と入力側ギヤ7aとの隙間に充填されており、Oリング7eおよびシール部材7fによって漏れが防がれている。
【0040】
レバー11の端部から第1ラック3を介して外力伝達機構に加わる外力は入力側ギヤ7aに伝えられ、入力側ギヤ7aはレバー11の移動速度に応じて回転する。入力側ギヤ7aに生じる回転トルクは、無限角ロータリーダンパ7が備える粘性流体に入力側ギヤ7aの回転速度の大きさに応じて生じる剪断抵抗により減衰させられ、可動体の動きに制動がかけられる。この際、レバー11の移動速度が遅く、入力側ギヤ7aの回転速度が低い場合には、粘性流体の剪断抵抗が上がらないので、入力側ギヤ7aから出力側ギヤ7bへ回転トルクは伝達されない。したがって、第2ラック4は第2ラック初期位置にとどまる。一方、レバー11の移動速度が所定の速さを超え、入力側ギヤ7aの回転速度が高くなる場合には、粘性流体の剪断抵抗が上がって大きくなるので、入力側ギヤ7aから出力側ギヤ7bへ回転トルクが伝達されるようになる。したがって、出力側ギヤ7bの回転トルクが伝達される第2ラック4は、第2弾性部材6の付勢力に抗して交差位置まで移動し、ストッパ12にレバー11が衝突して可動体の動きを停止させる。
【0041】
本実施形態では、出力側ギヤ7bと第2ラック4との間に、出力側ギヤ7bおよび第2ラック4に歯合する伝達調整ギヤ機構として、中間ギヤ8,9,10を備える。各中間ギヤ8,9,10は、それらの軸の一方の端部がケース2aに並んで形成された各円筒溝2a7,2a8,2a9(図4参照)に挿入されると共に、他方の端部がカバー2bの裏面に並んで形成された円筒溝2b6,2b7,2b8(図5参照)に挿入されて、それらの両側がケース2aおよびカバー2bに挟持されることで、それぞれ筐体2に回転自在に支持される。移動速度が所定の速さを超える外力がレバー11に加えられて、無限角ロータリーダンパ7が図1(a)の矢印に示すように時計方向に回転すると、右側の中間ギヤ8は反時計方向、真ん中の中間ギヤ9は時計方向、左側の中間ギヤ10は反時計方向に回転して、第2ラック4に外力が伝達される。
【0042】
無限角ロータリーダンパ7の出力側ギヤ7bから出力される回転トルクは、中間ギヤ8,9,10により遅延されて、第2ラック4へ伝達される。したがって、無限角ロータリーダンパ7において、可動体を制動し得る制動力を生じさせる作動期間が確保され、入力側ギヤ7aがある程度回転して粘性流体との間に生じる剪断抵抗が確保されて、制動力が確実に可動体に与えられてから、第2ラック4が移動して可動体を停止させるようになる。
【0043】
また、ワンウエイクラッチ7cにより、外力伝達機構は、第2弾性部材6の付勢力によって第2ラック4が第2ラック初期位置に戻る際に、第2ラック4側から伝わる回転力を第1ラック3側へ伝達しない。つまり、第2ラック4が交差位置に移動した後、第2弾性部材6の付勢力によって第2ラック4が第2ラック初期位置に戻る際、第2ラック4側から外力伝達機構に伝わる回転力は、ワンウエイクラッチ7cによって第1ラック3側への伝達が断たれる。このため、第1ラック3は、無限角ロータリーダンパ7の制動力を受けないフリー状態になり、第1弾性部材5の付勢力によって速やかに第1ラック初期位置に復帰する。
【0044】
このような本実施形態による安全機構付き停止装置1によれば、可動体が固定体に対して相対的に移動して、可動体が固定体に対して所定の相対位置に位置すると、固定体または可動体に取り付けられる筐体2から突出するレバー11の端部が可動体または固定体に係合する。さらに、可動体が固定体に対して相対的に移動すると、レバー11が第1弾性部材5の付勢力に抗して可動体の可動方向に移動する。したがって、レバー11に設けられた第1ラック3もレバー11と共に移動し、第1ラック3に歯合する無限角ロータリーダンパ7にレバー11に加えられる外力が伝達される。外力によって移動するレバー11の移動速度が所定の速さを超えると、無限角ロータリーダンパ7によって外力がその速さに応じて減衰させられて第1ラック3から第2ラック4に伝達される。したがって、第2ラック4は、第2弾性部材6の付勢力に抗して交差位置までスライドする。この結果、交差位置において、第2ラック4側の第1ラック3の端部に設けられるレバー11と、第2ラック4に設けられるストッパ12とが衝突し、可動体の動きが強制的に停止させられる。
【0045】
本実施形態による安全機構付き停止装置1が引き戸等の停止用に用いられ、可動体が引き戸等、固定体が引き戸等をスライド自在に支持する支持枠等とされる場合、引き戸等が閉まる直前にレバー11の端部が支持枠または引き戸等に係合する相対位置に停止装置1が取り付けられることで、引き戸等は閉まる直前に無限角ロータリーダンパ7によって制動されてから、レバー11とストッパ12とによって強制的に停止させられる。したがって、引き戸等は、速い速度で閉められる際、無限角ロータリーダンパ7に全て頼ることなく、レバー11とストッパ12との衝突によって引き戸等の閉まる前の所定位置にて、引き戸等の戸先に所定の隙間を確保して確実に停止する。このため、引き戸等の重量が大きくて速度がつく場合であっても、引き戸等の停止は確実に行われるようになる。
【0046】
また、可動体が停止した後、所定の速さを超えない移動速度でレバー11が外力によって同じ方向に移動させられると、無限角ロータリーダンパ7による第1ラック3から第2ラック4への外力の伝達は行われず、第2ラック4は第2弾性部材6によって第2ラック初期位置に戻り、第1ラック3は第1弾性部材5の付勢力に抗して交差位置を超えて移動し、ケース2aの内壁に衝突する。したがって、可動体は停止する前の方向と同じ方向に移動する。
【0047】
このため、本実施形態による安全機構付き停止装置1が引き戸等の停止用に用いられる場合、引き戸等の停止後、引き戸等を閉め切るときに、従来の、進退作動体の作動状態から作動解除状態への切り替え操作のような、特別の操作を行う必要は無い。よって、本実施形態による安全機構付き停止装置1はスムーズに動作し、引き戸等を速やかに開け閉めすることができる。
【0048】
また、本実施形態による安全機構付き停止装置1は、筐体2が固定体または可動体の一方に取り付けられることで、その機能を発揮する。このため、従来の停止装置のように、サッシや引き戸等が設けられる可動側と、縦枠や下枠等が設けられる固定側との双方に、装置の取り付けや施工をする必要は無い。このため、停止装置1の取り付けに手間を要さず、また、装置構成を簡略化することが可能になる。
【0049】
また、本実施形態による安全機構付き停止装置1は、レバー11が金属からなり、ストッパ12が金属または弾性材により形成される。したがって、第1ラック3および第2ラック4が交差位置に移動してレバー11とストッパ12とが衝突する際、金属同士または金属と弾性材とが衝突することとなる。金属同士が衝突する場合には、レバー11およびストッパ12の摩耗や欠けといった損傷が防止される。また、金属製レバー11と弾性材からなるストッパ12とが衝突する場合には、各部材の損傷が防止されると共に、衝突音の発生が防止される。
【0050】
なお、上記実施形態による停止装置1において、第2弾性部材6の付勢力を調整する付勢力調整機構を備えるように構成してもよい。この付勢力調整機構は、例えば、第2弾性部材6の初期長をネジで可変させたり、第2弾性部材6を支持する壁2a4などの位置を第2弾性部材6の伸縮方向に移動自在にして、第2弾性部材6の初期長を可変にする機構などにより構成され、第2弾性部材6の初期テンションを調整することができる。
【0051】
本構成によれば、付勢力調整機構によって第2弾性部材6の付勢力が調整されることで、第2ラック4が第2弾性部材6の付勢力に抗して交差位置に移動するのに要する力が適宜調整される。したがって、第2ラック4に設けられるストッパ12の、外力の入力に対する応答速度が容易に可変される。例えば、付勢力調整機構によって第2弾性部材6の付勢力が強く調整されると、レバー11の移動速度が速くて無限角ロータリーダンパ7によって大きな回転トルクが第2ラック4に伝達される場合に、ストッパ12が第2弾性部材6の強い付勢力に抗して交差位置に素速く移動し、ストッパ12にレバー11が衝突する。また、第2弾性部材6の付勢力が弱く調整されると、レバー11の移動速度が遅くて無限角ロータリーダンパ7によって小さな回転トルクが第2ラック4に伝達される場合に、ストッパ12が第2弾性部材6の弱い付勢力に抗して交差位置にゆっくり移動し、ストッパ12にレバー11が衝突する。このため、付勢力調整機構によって第2弾性部材6の付勢力を調整することで、レバー11とストッパ12とが衝突するレバー11の移動速度を容易に調整することが可能になる。
【0052】
また、上記実施形態による停止装置1においては、外力伝達機構を無限角ロータリーダンパ7を用いて構成した場合について、説明した。しかし、外力伝達機構は、第1ラックに歯合する入力側ギヤ7aと、この入力側ギヤ7aに入力される外力が伝えられる出力側ギヤ7bと、入力側ギヤ7aと出力側ギヤ7bとの間に設けられる図示しない遠心クラッチまたは遠心ブレーキとを備えて、構成されるようにしてもよい。
【0053】
本構成によっても、レバー11の端部から第1ラック3を介して外力伝達機構に加わる外力は入力側ギヤ7aに伝えられ、入力側ギヤ7aはレバー11の移動速度に応じて回転する。入力側ギヤ7aに生じる回転トルクは、遠心クラッチまたは遠心ブレーキにおけるシューが入力側ギヤ7aの回転速度に応じてドラムに押し付けられることで生じる摩擦抵抗により減衰させられ、可動体の動きに制動がかけられる。この際、レバー11の移動速度が遅く、入力側ギヤ7aの回転速度が低い場合には、シューとドラムとの間の摩擦抵抗が上がらないので、入力側ギヤ7aから出力側ギヤ7bへ回転トルクは伝達されない。したがって、第2ラック4は第2ラック初期位置にとどまる。一方、レバー11の移動速度が所定の速さを超え、入力側ギヤ7aの回転速度が高くなってシューに大きな遠心力が与えられる場合には、シューとドラムとの間の摩擦抵抗が上がって大きくなるので、入力側ギヤ7aから出力側ギヤ7bへ回転トルクが伝達されるようになる。したがって、出力側ギヤ7bの回転トルクが伝達される第2ラック4は、第2弾性部材6の付勢力に抗して交差位置まで移動し、ストッパ12にレバー11が衝突して可動体の動きを停止させる。このため、本構成によっても上記の実施形態と同様な作用効果が奏される。
【0054】
また、上記実施形態による停止装置1においては、レバー11がL字型をしている場合について、説明した。しかし、レバー11の形状はL字型に限らず、ブロック形状等にして、ストッパ12との衝突時における強度が高まる形状にしてもよい。また、上記実施形態による停止装置1においては、レバー11が第1ラック3と別体に、ストッパ12が第2ラック4と別体に構成される場合について、説明した。しかし、レバー11は第1ラック3と一体に、ストッパ12は第2ラック4と一体に構成するようにしてもよい。これらの構成によっても上記の実施形態と同様な作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0055】
1…安全機構付き停止装置、2…筐体、2a…ケース、2a1…ケース側第1案内溝、2a2…ケース側第2案内溝、2a3…ピン、2a4…壁、2a5,2a7,2a8,2a9…円筒溝、2a6…穴、2b…カバー、2b1…カバー側第1案内溝、2b2…カバー側第2案内溝、2b3…長穴、2b4,2b6,2b7,2b8…円筒溝、2b5…穴、3…第1ラック、3a…スライド凸部、3b…歯、3c…ピン、3d…穴、4…第2ラック、4a…スライド凸部、5…第1弾性部材、6…第2弾性部材、7…無限角回転ダンパ(外力伝達機構)、7a…入力側ギヤ、7b…出力側ギヤ、7c…ワンウエイクラッチ、7c1…内輪、7c2…外輪、7d…軸、7e…Oリング、7f…シール部材、8,9,10…中間ギヤ(伝達調整機構)、11…レバー、12…ストッパ、13…ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6