【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
固定体に対して可動体が所定の相対位置にあるときに可動体の動きを停止させる停止装置において、
固定体または可動体に取り付けられる筐体と、
可動体の可動方向にスライド自在に筐体に設けられる第1ラックと、
可動方向に直交する直交方向において第1ラックのスライド方向と交差する交差位置までスライド自在に筐体に設けられる第2ラックと、
交差位置よりも第2ラックから離れた第1ラック初期位置に向けて第1ラックを付勢する第1弾性部材と、
交差位置から離れた第2ラック初期位置に向けて第2ラックを付勢する第2弾性部材と、
可動体または固定体に係合する端部が筐体から突出して第2ラック側の第1ラックの端部に第1ラックと別体にまたは第1ラックと一体に設けられるレバーと、
第1ラックおよび第2ラック間に設けられ、第1弾性部材の付勢力に抗して第1ラックを交差位置に向けてスライドさせる外力によって移動するレバーの移動速度が所定の速さを超えるとその速さに応じて外力を減衰させて第1ラックから第2ラックに伝達し、外力によって第1ラックが交差位置にスライドする際に、第2弾性部材の付勢力に抗して第2ラックを交差位置にスライドさせる力を第2ラックに伝達する外力伝達機構と、
第2ラックが交差位置に位置してレバーが衝突する箇所の第2ラックに第2ラックと別体にまたは第2ラックと一体に設けられるストッパと
を備えることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、可動体が固定体に対して相対的に移動して可動体が固定体に対して所定の相対位置に位置すると、固定体または可動体に取り付けられる筐体から突出するレバーの端部が可動体または固定体に係合する。さらに、可動体が固定体に対して相対的に移動すると、レバーが第1弾性部材の付勢力に抗して可動体の可動方向に移動する。したがって、レバーに設けられた第1ラックもレバーと共に移動し、第1ラックから外力伝達機構にレバーに加えられる外力が伝達される。外力によって移動するレバーの移動速度が所定の速さを超えると、外力伝達機構によって外力がその速さに応じて減衰させられて第1ラックから第2ラックに伝達される。したがって、第2ラックは、第2弾性部材の付勢力に抗して交差位置までスライドする。この結果、交差位置において、第2ラック側の第1ラックの端部に設けられるレバーと、第2ラックに設けられるストッパとが衝突し、可動体の動きが強制的に停止させられる。
【0010】
本構成による安全機構付き停止装置が引き戸等の停止用に用いられ、可動体が引き戸等、固定体が引き戸等をスライド自在に支持する支持枠等とされる場合、引き戸等が閉まる直前にレバーの端部が支持枠または引き戸等に係合する相対位置に、停止装置が取り付けられることで、引き戸等は閉まる直前に外力伝達機構によって制動されてから、レバーとストッパとによって強制的に停止させられる。したがって、引き戸等は、速い速度で閉められる際、外力伝達機構に全て頼ることなく、レバーとストッパとの衝突によって引き戸等の閉まる前の所定位置にて、引き戸等の戸先に所定の隙間を確保して確実に停止する。このため、引き戸等の重量が大きくて速度がつく場合であっても、引き戸等の停止は確実に行われるようになる。
【0011】
また、可動体が停止した後、所定の速さを超えない移動速度でレバーが外力によって同じ方向に移動させられると、外力伝達機構による第1ラックから第2ラックへの外力の伝達は行われず、第2ラックは第2弾性部材によって第2ラック初期位置に戻り、第1ラックは第1弾性部材の付勢力に抗して交差位置を超えて移動する。したがって、可動体は停止する前の方向と同じ方向に移動する。
【0012】
このため、本構成による安全機構付き停止装置が引き戸等の停止用に用いられる場合、引き戸等の停止後、引き戸等を閉め切るときに、従来の、進退作動体の作動状態から作動解除状態への切り替え操作のような、特別の操作を行う必要は無い。よって、本構成による安全機構付き停止装置はスムーズに動作し、引き戸等を速やかに開け閉めすることができる。
【0013】
また、本構成による安全機構付き停止装置は、筐体が固定体または可動体の一方に取り付けられることで、その機能を発揮する。このため、従来の停止装置のように、サッシや引き戸等が設けられる可動側と、縦枠や下枠等が設けられる固定側との双方に、装置の取り付けや施工をする必要は無い。このため、停止装置の取り付けに手間を要さず、また、装置構成を簡略化することが可能になる。
【0014】
また、本発明は、外力伝達機構が、第1ラックに歯合する入力側ギヤと、この入力側ギヤに入力される外力が伝えられる出力側ギヤと、入力側ギヤと出力側ギヤとの間に設けられる粘性流体とを備えるロータリーダンパから構成されることを特徴とする。
【0015】
本構成によれば、レバーの端部から第1ラックを介して外力伝達機構に加わる外力は入力側ギヤに伝えられ、入力側ギヤはレバーの移動速度に応じて回転する。入力側ギヤに生じる回転トルクは、ロータリーダンパが備える粘性流体に入力側ギヤの回転速度の大きさに応じて生じる剪断抵抗により減衰させられ、可動体の動きに制動がかけられる。この際、レバーの移動速度が遅く、入力側ギヤの回転速度が低い場合には、粘性流体の剪断抵抗が上がらないので、入力側ギヤから出力側ギヤへ回転トルクは伝達されない。したがって、第2ラックは第2ラック初期位置にとどまる。一方、レバーの移動速度が所定の速さを超え、入力側ギヤの回転速度が高くなる場合には、粘性流体の剪断抵抗が上がって大きくなるので、入力側ギヤから出力側ギヤへ回転トルクが伝達されるようになる。したがって、出力側ギヤの回転トルクが伝達される第2ラックは、第2弾性部材の付勢力に抗して交差位置まで移動し、ストッパにレバーが衝突して可動体の動きを停止させる。
【0016】
また、本発明は、外力伝達機構が、第1ラックに歯合する入力側ギヤと、この入力側ギヤに入力される外力が伝えられる出力側ギヤと、入力側ギヤと出力側ギヤとの間に設けられる遠心クラッチまたは遠心ブレーキとを備えて構成されることを特徴とする。
【0017】
本構成によっても、レバーの端部から第1ラックを介して外力伝達機構に加わる外力は入力側ギヤに伝えられ、入力側ギヤはレバーの移動速度に応じて回転する。入力側ギヤに生じる回転トルクは、遠心クラッチまたは遠心ブレーキにおけるシューが入力側ギヤの回転速度に応じてドラムに押し付けられることで生じる摩擦抵抗により減衰させられ、可動体の動きに制動がかけられる。この際、レバーの移動速度が遅く、入力側ギヤの回転速度が低い場合には、シューとドラムとの間の摩擦抵抗が上がらないので、入力側ギヤから出力側ギヤへ回転トルクは伝達されない。したがって、第2ラックは第2ラック初期位置にとどまる。一方、レバーの移動速度が所定の速さを超え、入力側ギヤの回転速度が高くなってシューに大きな遠心力が与えられる場合には、シューとドラムとの間の摩擦抵抗が上がって大きくなるので、入力側ギヤから出力側ギヤへ回転トルクが伝達されるようになる。したがって、出力側ギヤの回転トルクが伝達される第2ラックは、第2弾性部材の付勢力に抗して交差位置まで移動し、ストッパにレバーが衝突して可動体の動きを停止させる。
【0018】
また、本発明は、出力側ギヤと第2ラックとの間に出力側ギヤおよび第2ラックに歯合する伝達調整ギヤ機構を備えることを特徴とする。
【0019】
本構成によれば、外力伝達機構の出力側ギヤから出力される回転トルクは、伝達調整ギヤ機構により遅延されて、第2ラックへ伝達される。したがって、外力伝達機構において、可動体を制動し得る制動力を生じさせる作動期間が確保され、制動力が確実に可動体に与えられてから、第2ラックが移動して可動体を停止させるようになる。
【0020】
また、本発明は、外力伝達機構が、第2弾性部材の付勢力によって第2ラックが第2ラック初期位置に戻る際に第2ラック側から伝わる回転力を第1ラック側へ伝達しないワンウエイクラッチを備えて構成されることを特徴とする。
【0021】
本構成によれば、第2ラックが交差位置に移動した後、第2弾性部材の付勢力によって第2ラックが第2ラック初期位置に戻る際、第2ラック側から外力伝達機構に伝わる回転力は、ワンウエイクラッチによって第1ラック側への伝達が断たれる。このため、第1ラックは、外力伝達機構の制動力を受けないフリー状態になり、第1弾性部材の付勢力によって速やかに第1ラック初期位置に復帰する。
【0022】
また、本発明は、レバーが金属により形成され、ストッパが金属または弾性材により形成されることを特徴とする。
【0023】
本構成によれば、第1ラックおよび第2ラックが交差位置に移動してレバーとストッパとが衝突する際、金属同士または金属と弾性材とが衝突することとなる。金属同士が衝突する場合には、レバーおよびストッパの摩耗や欠けといった損傷が防止される。また、金属製レバーと弾性材からなるストッパとが衝突する場合には、各部材の損傷が防止されると共に、衝突音の発生が防止される。
【0024】
また、本発明は、第2弾性部材の付勢力を調整する付勢力調整機構を備えることを特徴とする。
【0025】
本構成によれば、付勢力調整機構によって第2弾性部材の付勢力が調整されることで、第2ラックが第2弾性部材の付勢力に抗して交差位置に移動するのに要する力が適宜調整される。したがって、第2ラックに設けられるストッパの、外力の入力に対する応答速度が容易に可変される。例えば、付勢力調整機構によって第2弾性部材の付勢力が強く調整されると、レバーの移動速度が速くて外力伝達機構によって大きな回転トルクが第2ラックに伝達される場合に、ストッパが第2弾性部材の強い付勢力に抗して交差位置に素速く移動し、ストッパにレバーが衝突する。また、第2弾性部材の付勢力が弱く調整されると、レバーの移動速度が遅くて外力伝達機構によって小さな回転トルクが第2ラックに伝達される場合に、ストッパが第2弾性部材の弱い付勢力に抗して交差位置にゆっくり移動し、ストッパにレバーが衝突する。このため、付勢力調整機構によって第2弾性部材の付勢力を調整することで、レバーとストッパとが衝突するレバーの移動速度を容易に調整することが可能になる。