(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
スリット圧延は、圧延機に上下1対の圧延ロール(スリットロール)を設置し、各圧延ロールに形成してあって互いに突き合っている圧延ロール溝(ロールカリバー)間に被圧延材を通過させながらこの被圧延材を長手方向に複数条、例えば2条に分割して2本の被圧延材に形成するものである(例えば特開平7−185611号公報等)。このスリット圧延では、分割した被圧延材毎の単位重量や長さを均一にする必要がある。被圧延材毎の単位重量の調整方法としては、圧延機の入り口側にガイドを設置して、このガイドを上記圧延機の圧延ロールの軸方向に移動させて調整するものや、特開2002−35833号公報に開示されているように、入口ガイドの下部にスリット形成位置の調整を行なう位置調整装置を設け、この位置調整装置を通じて、例えば入口ガイドを圧延機の軸方向に移動させて調整する方法が提案されている。
また、本出願人はスリット圧延等に適用することができる特開平11−108144号公報に係るガイド装置の位置制御装置を提案した。この位置制御装置は、スクリューシャフト、このスクリューシャフトに回転力を付与する駆動手段、上記スクリューシャフトの回転に伴ってスクリューシャフトの軸心方向に移動可能である移動体、この移動体が固定される固定部を有するレストバー及びこのレストバーに取付けられかつ上記スクリューシャフトの軸心方向に沿って長い位置決め固定部材を具備し、上記移動体の上部に上記ガイド装置を設置するためのシフトベース及びこのシフトベースの下部にシフトブラケットをそれぞれ備え、このシフトブラケットにクランプを設けているものである。そして、上記ガイド装置の位置調整は、移動体の高速移動時にはクランプによる固定を解除してから、スクリューシャフトの高速回転により位置移動をし、ついで上記スクリューシャフトの低速回転により微速移動による位置微調整するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は特開平11−108144号公報に係るガイド装置の位置制御装置及び一部を改良した位置制御装置を被圧延材の圧延に適用し、スリット圧延においては、例えば2分割後の被圧延材の重量測定や冷却床での長さを測定してから、0.05mmずつ圧延機入側のガイド装置を段階的に横移動させ被圧延材の芯合わせを行なっていた。被圧延材の芯合わせのための0.05mmずつのガイド装置の横移動量は、モーター等の駆動手段を駆動源とし、ロータリーエンコーダーを用いて送りねじであるスクリューシャフトの回転を制御していた。
スリット圧延及びスリット圧延以外でも、圧延中に熱膨張による圧延ロール溝の位置“ズレ”が発生するので、圧延中に手動操作によってガイド装置における対のガイドローラーを平行移動させて“ズレ”を調整していた。
このように、スリット圧延では、被圧延材の2分割後の計測でガイド装置の調整を行なっているが、連続的な調整ではないため、段階的な調整分だけ、歩留まりが低下していた。また、シフトベースであるサドルの動きにおいて、その移動方向が逆転したときの遊びが有り、正確な調整ができなかった。また、スリット圧延以外でも、温度上昇によるロールの膨張による圧延ロール溝のズレにより、ロールの入り口側に設置されているガイド装置で誘導している進入被圧延材の芯と、設定されている芯とのずれが発生し、製品の寸法精度が落ちていた。
通材中に手動操作にて調整を行なうこともあり、このような場合には被圧延材及びガイド装置は可動しているので、可動状態にあるこれらが作業者などに接触する可能性があって危険を招き、作業の負担となっていた。
この発明の目的は、被圧延材の芯合わせを自動制御により連続的にかつ精度良く行うことを可能にすると共に、作業者の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、
被圧延材のガイドの位置調整装置を用いて圧延におけるガイドの芯合わせする方法であり、
上記位置調整装置は、ガイドを搭載可能であってかつサドル保持軸に対してその軸方向である圧延ロールの軸方向に沿って移動可能にねじ結合しているサドル、このサドルを移動させると共に上記サドル保持軸に平行に配置されている送りねじ及び上記サドルの位置を検知する手段になると共にサドルに取り付けられているリニア位置計測センサーをそれぞれ設け、上記送りねじがスラスト方向に上記サドルをモーター駆動により移動させてサドルの位置を調整するものであり、上記サドルと上記送りねじとの結合部分にバックラッシュ防止用ばねを介在してあり、
圧延開始から温度が定常になるまでの間で、圧延ロールの温度上昇に伴う上記圧延ロールのスラスト方向の熱膨張による圧延ロール溝の芯ずれの計測値及び上記送りねじの温度上昇に伴う上記送りねじのスラスト方向の熱膨張による対のガイドローラーの通り芯であるガイドの芯ずれの測定値のそれぞれをデータとして取得しておいてから、上記各データに基づいて芯ずれ量を予測し、制御部におけるプログラムによりガイドの必要な移動量を計算して上記圧延ロール溝に対するガイドの位置を自動制御し、上記圧延ロール溝の芯とガイドの芯との双方を一致させる方法である。
圧延にはスリット圧延及びその他の圧延が含まれる。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、定常圧延までの熱膨張による圧延ロールなどのスラスト方向のずれを予測して自動的に芯合わせし、定常圧延状態になるまでの被圧延材の精度の維持のためのガイドの位置を調整するので、スリット圧延にあっては例えば2分割した後の被圧延材の重量の確認又は冷却床での長さの確認が不要となり、上記各被圧延材を均等とすることができ、圧延作業の省力化ができ、歩留まりが良くなって生産性の向上となる。スリット圧延以外でも、自動化による連続微調整が可能となるので作業者の負担を軽減することができて、製品寸法精度の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】この発明に係るスリット圧延におけるガイドの芯合わせ方法を実施するために用いる被圧延材のガイドの位置調整装置を示す正面図である。
【
図2】
図1における被圧延材のガイドの位置調整装置を示す拡大右側面図である。
【
図3】
図1の拡大平面図であって、圧延ロール及びスタンドのそれぞれの一部を省略している図である。
【
図4】被圧延材のガイドの位置調整装置の主要部を示す一部切欠及び一部を断面にしている拡大平面図である。
【
図5】サドル、サドル保持軸及びガイドクランプの相互の関係を示す拡大断面図である。
【
図6】サドル、サドル保持軸及びサドルクランプ用のシリンダーの相互の関係を示す拡大断面図である。
【
図7】
図1に示すスリット圧延におけるガイドの芯合わせ方法の実施過程での圧延ロール溝の芯とガイドの芯とのずれ量の調整に関する説明図であって、(i)はガイドの芯と圧延ロール溝の芯とが一致している状態を示す説明図であり、(ii)は圧延ロール溝の芯に対してガイドの芯が熱膨張により軸方向にずれている状態を示すと共に、そのずれ量を示す説明図である。
【
図8】
図1に示すスリット圧延以外の圧延の場合におけるガイドの芯合わせ方法の実施する過程での圧延ロール溝の芯と被圧延材の芯とのずれを示し、熱膨張による軸方向のずれ量を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、被圧延材のガイドの位置調整装置の実施形態を図面に基づいて説明してから、この位置調整装置を使用してスリット圧延におけるガイドの芯合わせ方法について説明する。
図1〜
図4において、ガイドの位置調整装置1は、圧延機MRにおける圧延ロールRの入り口側(
図2左側)に配置され、ガイドGの位置を圧延ロールの軸方向に移動させて、調整するものである。被圧延材は、ガイドGにおける対のガイドローラーGaの面間で抱合されながら圧延ロールRの入り口に誘導される。
ガイドの位置調整装置1は、上部の載置部2a上で被圧延材のガイドGを搭載可能に保持するサドル2を設けている。ガイドGは、サドル2の載置部2a上でサドルに取り付けられているガイドクランプ3を通じて固定される。
また、サドル2は、
図1及び
図3に示すように、幅方向の両側に配置されている取付け部材4,5の間に設けられている。取付け部材4,5として、図示の例では左右対称的に配置されている対のL形のレストバーが使用されている。サドル2は、
図5に示すように、これを幅方向(紙面に垂直方向)に貫通するサドル保持軸6により保持されている。このサドル保持軸は、両取付け部材4,5間に渡されて両端部が取付け部材に軸受けされている。サドル2はサドル保持軸6に対してその軸方向(
図1横方向)に沿って移動可能にかつねじ結合されている。
図1及び
図3において、Sはスタンドである。
【0009】
図6に示すようにサドルクランプ用のシリンダー7はサドル2に取り付けてあって、シリンダーのロッドの先端には固定部7aを設けてある。固定部7aは、サドル保持軸6の外周部に設けてある溝状の受け部6aに嵌合可能及び受け部から離脱可能である。シリンダー7の作動により、固定部7aが前進してサドル保持軸6の外周部に設けてある受け部6aに嵌合されると、サドル2はサドル保持軸6と一体となって固定されると共に移動が阻止され、反対に固定部が後退して受け部との嵌合が解かれると、固定が解除され移動が可能となる。
【0010】
サドル2を移動させるための作動手段8について、主に
図4に基づいて説明する。
作動手段8は送りねじであるスクリューシャフト9を有している。スクリューシャフト9は、サドル保持軸6に平行して配置されている。
スクリューシャフト9の一側(
図4右側)であるガイドクランプ3側は、サドル2の側面から内部にスクリューシャフトの直径より広く開けられた収納穴2b内を挿通し、その端部はサドル2に開けられかつ収納穴に連通している受け孔2cに回転可能に差し込まれている。スクリューシャフト9であってかつ収納穴2b内に位置している部分の外周部にナット10がねじ結合されている。ナット10は、一側で収納穴2bに圧入されている固定部材11に当接され、他側に設けてあるコイル状のばね12を介してスクリューシャフト9を囲む複数のボルト13により固定されている。ばね12は固定部材11と各ボルト13の頭部との間にスクリューシャフト9に巻かれている状態で配置されている。ばね12は各ボルト13の締付け力に応じて、ナット10に対してばね力を付与している。
また、スクリューシャフト9の他端側(
図4左端側)は、他方の取付け部材5に軸受け14を通じて回転自在に取り付けられている。そして、スクリューシャフト9の他端部は減速機15に接続されている。減速機15は作動手段8の駆動源となる油圧モーター16に接続されている。
したがって、油圧モーター16の駆動により減速機15を通じて駆動力がスクリューシャフト9に伝えられ、このスクリューシャフトが軸心を中心として回転される。この回転に伴ってナット10はスクリューシャフト9を軸心方向に横移動(
図4左右方向に移動)するので、同時にサドル2も同一方向に、換言すればサドル保持軸6の軸方向に移動可能となる。
また、ボルト13が予めばね12をナット10側に押圧し、押圧力がスクリューシャフト9及びこれにねじ結合しているナットの双方に対して圧縮力として作用するので、ねじの緩みであるバックラッシュ(又はバックラッシ)の発生を抑えることができる。
【0011】
ガイドの位置調整装置1は、サドル2の位置を検知する手段となる位置計測センサー17を設けてある。
位置計測センサー17として、
図4に示す例ではリニア位置計測センサーを使用している。このリニア位置計測センサーにおいて、サドル2から伸びている連結部材18にこのサドルの幅方向に長い円筒体19が保持されている。この円筒体の一端側が閉塞され、他端側が開口されている。円筒体19の開口部端内周には環状のマグネット20を装着してある。円筒体19内には、棒体21が開口部に位置しているマグネット20の軸心を貫通している。そして、棒体21は、サドル2との相互関係において円筒体19内を軸方向に相対的に移動可能に挿入されている。棒体21は、サドル2の移動方向に移動可能である。棒体21の相対的移動に伴って、マグネット20の磁気作用を介して棒体の変量を軸端部における検出器(図示せず。)が検出可能である。
なお、サドル2の位置確認をするための位置計測センサー17について後述するが、リニア位置計測センサーに限られず、例えばレーザーによる距離測定に基づいてサドルの位置を確認することができるセンサー等であっても良い。
【0012】
図1に示す上下対の圧延ロールRに関して述べると、
図7(i)における対の圧延ロールRの外周には圧延ロールの軸心である軸方向(図横方向)に沿って間隔を置いて断面の外形がM形及び逆M形の圧延ロール溝rがそれぞれ設けられている。上下で対向している対の圧延ロール溝rは、図では眼鏡形(又は横8形)の孔を形成している。
上下の対の圧延ロールRは、対の圧延ロール溝rを通じて対のガイドローラーGaで抱合されている被圧延材Mをスリット圧延することができる。
スリット圧延の開始に際しては、圧延ロール溝rの芯P1とガイドの芯G1となる対のガイドローラーGaの通り芯とは一致するように調整しておく。すなわち、芯P1を通る中心線Yr1と芯G1を通る中心線Yg1は
図7(i)に示すように互いに重なって位置するように調整しておく。
【0013】
スリット圧延におけるガイドの芯合わせ方法を説明する。
このガイドの芯合わせ方法を要約すれば、圧延開始から温度が定常となるまでの熱膨張による圧延ロールRなどの熱膨張による軸方向のずれを予測して自動的に芯合わせをして、定常状態になるまでに圧延製造する被圧延材の品質維持を図ろうとするものである。
具体的にスリット圧延におけるガイドの芯合わせ方法について
図7を参照して説明する。
図7(i)において、上述したように予め、上下の対の圧延ロールRの入り口側に配置されているガイドG(
図2)の芯G1を圧延ロール溝rの芯P1に対して一致するようにしておいてから、圧延を開始する。
圧延開始から温度が定常となるまでの間に、圧延ロールRの温度上昇及びスクリューシャフト9の温度上昇の各計測データ並びに上記圧延ロールのスラスト方向の熱膨張による圧延ロール溝rの芯P1のずれ及び上記スクリューシャフトの熱膨張によるガイドGの芯G1のずれについてのそれぞれのデータを得て、データの調整をしてから、ガイドの位置をリニア位置計測センサー17にて検知し、検知値に応じて上記各データに基づいて制御部におけるプログラムにより必要移動量を計算し、自動で圧延ロール溝rに対するガイドGの位置を制御し、上記圧延ロール溝の芯P1とガイドの芯G1との双方を一致するようにする。
ガイドGの
図7(i)の横移動であるスラスト方向の移動を伴う自動制御は、圧延の間ピッチ(被圧延材Mの後端がガイドのガイドローラーGa間を抜けて、次の被圧延材の先端がガイドに進入してくる間)に行う。間ピッチは通常3秒程度であるが、この極めて短い間に各種のデータに基づいて自動制御がされる。
図4において、圧延ロールRのスラスト方向の固定位置h1から圧延ロール溝rの芯P1を通る中心線Yr1{
図7(i)参照}までの距離をAとすれば、熱膨張による芯のずれ量δ1は上昇温度×熱膨張率×Aとなる。一方、スクリューシャフト9のスラスト方向の固定位置h2から連結部材18までの距離をBとすれば、熱膨張によるガイドGの芯のずれ量δ2は上昇温度×熱膨張率×Bとなる。
この結果、スリット圧延の場合、
図7(ii)に示すように熱膨張によるスラスト方向の芯ずれ量はδ1+δ2となる。
図7(ii)に示すように、熱膨張に伴って実線で示す被圧延材Mの芯となるガイドの芯G1に対して、圧延ロール溝rの芯P1が変量δ1+δ2分だけ軸方向にずれる。
そこで、ずれ量δ1+δ2を0にするための、芯P1と芯G1とを合わせる作業として、圧延開始から温度が定常となるまでの間に、入手済みのデータに基づいてガイドの位置調整装置1による調整をしてから、定常になるまで自動制御を繰り返す。
【0014】
図8を参照してスリット圧延を除く圧延におけるガイドの芯合わせ方法を説明する。
図7を参照して説明したガイドの芯合わせ方法と同様である。
図示の例では、上下に対向する圧延ロールR11の圧延ロール溝r11は対向して円形の孔を形成している。対のガイドローラー(図示せず。)の面間ではラクビー形の被圧延材M1を抱持する。
熱膨張によりガイドの芯G11と圧延ロール溝r11の芯P11との間に熱膨張によるスラスト方向の芯ずれ量δ11+δ12が生じている。
圧延開始から温度が定常となるまでの間に、圧延ロールR11の温度上昇及びスクリューシャフト9の温度上昇の各計測データ並びに上記圧延ロールのスラスト方向の熱膨張による圧延ロール溝r11の芯P11のずれ及び上記スクリューシャフトの熱膨張によるガイドの芯G11のずれについての取得した各データと、位置計測センサーによりガイドの位置を検知し、検知値に応じて上記取得した各データに基づいてガイドの必要移動量を計算し、自動で圧延ロール溝r11に対するガイドの位置を制御し、圧延ロール溝r11の芯P11とガイドの芯G11との双方を一致するように自動制御する。
【0015】
このように、圧延開始から温度が定常となるまでの間に、圧延ロール溝r,r11の芯P1,P11に対して、ガイドGの芯G1,G11が一致するように、作動手段8を通じてサドル2を介してガイドGを横移動させ、移動量を位置計測センサー17が検知して、検知信号に基づいてガイドの位置調整をし、この調整結果などのデータに基づいて圧延の間ピッチで、管理室からの遠隔操作により、サドル2を通じてガイドを自動横移動調整(軸方向移動による調整)する。
スリット圧延では例えば2分割後の被圧延材Mを均等することができ、また、スリット圧延以外の圧延では偏りが無く寸法精度が向上した製品となる被圧延材を実現することができる。
具体的な芯合わせ方法として、圧延開始からの圧延ロールR,R11、送りねじ9の温度上昇計測及び熱膨張による芯P1,P11及び芯G1,G11の双方の芯合わせ調整結果をデータに取り、そのデータを元に各圧延ロール溝r,r11に対しガイドGの位置を、例えば0.05mmずつ位置制御する。
上述したように、ガイドGを乗せているサドル2をリニア位置計測センサー17などで直接ガイドの位置を計測し、正しいガイドの位置を検知し、検知信号に基づいてガイドGの位置を制御しても良い。位置計測センサーの他の例として、ガイドGに搭載したレーザー測定器等を用い圧延ロール溝r,r11のずれを測定し、ガイドGの位置を制御しても良い。