(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の動物用履物を実現する形態を、図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1Aおよび
図1Bは実施の形態1における動物用履物としてのシューズSを示す斜視図であり、
図1Aは、斜め前方(挿入する足Fのつま先の方向を前方(矢印RR方向)とする)から見た図であり、
図1Bは斜め後方から見た図である。また、
図2は、シューズSの縦断面図である。なお、図において矢印FRの方向を前方、矢印RRの方向を後方、矢印UPの方向を上方、矢印LSの方向を左方向、矢印RSの方向を右方向とする。また、
図1A,
図1Bを含み、各図に表された細線は、いずれも立体表面の形状を特定するためのものである。
【0011】
図1A,
図1B、
図2に示すように、シューズSは、ソール部10とアッパ部20とを備え、弾性体により一体に形成されている。なお、弾性体の詳細については後述する。
【0012】
ソール部10は、動物D(例えば、犬)の足Fの足裏Fa(
図2参照)を覆う部分であり、
図6に示すように、下面11の形状が略小判状に形成されている。なお、
図6は、シューズSの底面図である。
【0013】
図1A,
図1B、
図2に示すように、アッパ部20は、キャップ部21と胴部22とを備える。
キャップ部21は、動物Dの足Fの足先FTの上面および左右側面を覆うもので略半円アーチ状に形成されている。
【0014】
胴部22は、キャップ部21およびソール部10の後端部に連続して一体に形成され、かつ、足Fの周囲を覆う円筒状に形成され、上端部に、略円形の着脱用開口部22aが設けられている。なお、本実施の形態1にて示すシューズSは、相対的に大型の動物D用のもので、前後方向の全長が120〜150mm程度、横幅が40〜50mm程度の寸法に形成されている。また、着脱用開口部22aは、半径(
図3参照)が10〜15mm程度の寸法に形成されている。
【0015】
そして、胴部22は、その中心軸が、ソール部10の先端部近傍を通るような角度で傾斜され、かつ、キャップ部21の上面の傾斜角度と胴部22の傾斜角度とが略等しい角度に形成されている。これにより、着脱用開口部22aは、ソール部10の先端部であり、シューズ内部空間30の最奥端部31の略正面に臨んで配置されている。なお、胴部22の上部には、断面半円形状で帯状のプルストラップ22bが一体に設けられている。
【0016】
また、ソール部10は、
図2に示すように、前後方向で前側底部10aの厚さよりも後側底部10bの厚さの方が厚く形成されている。これにより、ソール部10の上面12には、前側底部10aと後側底部10bとの間に、後ろ上がりに傾斜した段差部10cが形成されている。
【0017】
さらに、ソール部10の下面11は、
図6に示すように、ソール部10を横切る複数の爪部11aと、溝部11bとが前後方向に交互に並設されている。
爪部11aは、それぞれ、前後方向の切断面での断面形状が下方に凸の山形状に形成され、前側底部10aに配置された爪部11aは、後側底部10bに配置された爪部11aよりも、左右方向の幅が狭く形成され、かつ、前後方向の間隔が広く確保されている。
【0018】
ソール部10の後側底部10bには、通気孔13と、クッション用孔14とが前後に並設されている。
通気孔13は、
図7、
図9に示すように、横孔部13aと縦孔部13bとを備える。
横孔部13aは、左右方向にソール部10を横切って貫通され、ソール部10の左右両側面に外側開口部13c,13cを備える。また、横孔部13aは、ソール部10の左右の幅方向の中央から外側開口部13cに向かうに連れて、前後方向寸法および上下方向寸法が徐々に大きくなる形状に形成されている。
【0019】
縦孔部13bは、横孔部13aの左右方向中央から上方に延在されて、ソール部10の上面12に開口された内側開口部13dを有するもので、左右方向寸法よりも前後方向寸法が大きな略長方形断面形状に形成されている。なお、左右方向寸法、前後方向寸法は、4〜6mm程度の寸法に形成されている。
【0020】
クッション用孔14は、通気孔13の後方位置に形成されており、左右方向の中央に設けられた遮断壁14aを挟んで、左右対称に、左側孔14bと右側孔14cとを備える。
【0021】
次に、シューズSを形成する弾性体について説明する。
シューズSは、ゴム弾性を有するとともに、常温で液体の炭化水素油50を含有した
図11に示すエラストマー60によって形成されている。なお、
図11はシューズSのソール部10の成分を模式的に示す拡大断面図である。
【0022】
エラストマー60としては、本実施の形態1では、シリコーンエラストマーが用いられている。このシリコーンエラストマーは、ケイ素化合物を主成分とし、オルガノポリシロキサンを主鎖として含むエラストマーである。シリコーンエラストマーは、他の有機系ポリマーと比べて化学的安定性があり、分子間力が小さくてコイル形成能が大きいため、弾力性に富み圧縮性が高いという性質を有している。また、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐水性、耐スチーム性、電気導電性、電気絶縁性、熱伝導性、難燃性、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、耐摩耗性、耐放射線性を有している。さらに、引張り強度、引裂き強度が他の有機ポリマーと比べて高く、また、もともとは透明性であるが任意の色に着色する着色性は高いという性質も有している。
【0023】
炭化水素油50は、炭素と水素との化合物および各種の当該化合物の混合物である炭化水素を主成分とし、温度15度および1気圧において液状を呈するものであり、実施の形態1ではスクワランを用いている。スクワランは、不飽和炭化水素であるスクワレンに水素添加を施して飽和炭化水素とした炭化水素油である。ここでは、イソプレンより合成して得られる合成スクワランも含まれる。そして、スクワランは、皮脂からの水分蒸散を防止するエモリエント効果に優れ、保湿作用、収れん作用、柔軟作用を奏することができる。また、新陳代謝を活発にし、肌のターンオーバを整える作用もある。さらに、もともとスクワレンが人や動物の体内に存在するため、皮脂に塗布した際にスクワランも異物とは認識されず、体内に浸透されやすいという特徴がある。そのため、天然の皮脂膜と同様に皮脂のバリアとしても働きかけることが可能であり、スクワランを皮膚に塗布することで、雑菌などから肌を保護することができる。
【0024】
そして、このスクワランである炭化水素油50は、エラストマー60を構成する多数の分子の間に浸透することで、エラストマー60に含有される。なお、炭化水素油50のエラストマー60への含有量は、例えば2%程度とする。
【0025】
(実施の形態1の作用)
次に、実施の形態1のシューズSの作用を説明する。
まず、着脱のスムーズ性の必要性、通気性の必要性、足裏の保湿および保護の必要性について説明する。そして、実施の形態1のシューズSの作用を「着脱のスムーズ性」「シューズの通気性」「足裏保湿作用」、「足裏保護作用」に分けて説明する。
【0026】
「シューズの着脱のスムーズ性の必要性」
多くの動物Dは足Fを触られることを嫌がるものであり、特に、初めてシューズSを履かせる場合には、これを嫌がることが多い。
したがって、動物DにシューズSを履かせる場合、短時間でスムーズに履かせることが可能なものが好ましい。
【0027】
「シューズの通気性の必要性」
犬や猫などは、肉球にエクリン腺と呼ばれる体温調節を行う汗腺を有する。したがって、犬や猫などの動物は、体温が上昇すると肉球から汗をかく場合がある。
よって、シューズSの装着時に、肉球から汗をかいた場合、シューズSの外部に円滑に湿気および熱を排出可能なものが好ましい。
【0028】
「足裏の保湿および保護の必要性」
犬や猫などの動物Dの足先FTは、一般的に爪を有する指部と、肉球と呼ばれる皮膚が露出した部分からなり、足先FTの接地面(足裏)のほとんどは肉球である。この肉球は、運動時のクッション的な役割を担い、運動時の衝撃を吸収して足Fの骨や関節などを守ったり、汗によって肉球を湿らせてすべり止めの役割を果たしたりする。
【0029】
一方、肉球は、毎日の散歩でアスファルトを歩くことや、フローリングの化学薬剤などが原因となって乾燥し、硬化・角質化していく。そして、硬くなった肉球は、滑りやすく、関節トラブルやヘルニア、転倒による骨折の原因になることもある。
【0030】
また、シニア期になると、肉球に角質の厚い層ができ、肉球が白っぽくなってガサガサになることがある。この状態を放置するとあかぎれのような切り傷ができ、そこから出血したり、雑菌が入り込んだりして思わぬ病気に感染することもある。さらに、肉球の乾燥によって歩行時に滑ることが多いと、骨格の形成にも悪影響を与える可能性がある。
【0031】
このように、動物Dの足裏Faの乾燥は肉球を傷つけ、思わぬトラブルを引き起こすため、足裏Faを保湿することが好ましい。
よって、足裏Faの乾燥を防ぎ、かつ、保護することが重要となる。
【0032】
以下に、実施の形態1のシューズによる「着脱のスムーズ性」「シューズの通気性」「足裏保湿作用」、「足裏保護作用」を説明する。
「着脱のスムーズ性」
シューズSは、キャップ部21の上面に対して胴部22が、略一直線上に傾斜し、着脱用開口部22aが、シューズ内部空間30の最奥端部31と、ほぼ一直線上に配置されて着脱用開口部22aが最奥端部31の正面に臨んで配置されている。
【0033】
このため、動物Dの足FにシューズSを履かせる場合に、足先FTを着脱用開口部22aから最奥端部31まで直線状に挿入させることができる。よって、例えば、キャップ部21と胴部22とが、特許文献1に記載のように略直角を成すものと比較して、直線的にスムーズに短時間で装着することが可能である。
【0034】
しかも、胴部22の上部にプルストラップを22b設けているため、胴部22を足Fに沿って引き上げやすく、これによっても、短時間でスムーズにシューズSを履かせることが可能となる。
【0035】
ところで、動物Dの足FにシューズSを履かせる場合、足Fを、ある程度、胴部22に差し込むと、着脱用開口部22aが足で塞がる。
実施の形態1のシューズSは、伸縮性に富むため、足Fに対して小さめのサイズのシューズSを選び、足Fに対する密着性(フィット性)を高めた状態で履かせるのが好ましい。つまり、密着性(フィット性)を高く履かせることにより、歩行時に、足Fに対してシューズSが相対移動しにくく、歩行性に優れる。
【0036】
このように、密着性(フィット性)を高くした場合、特に、上記のように、シューズSを履かせる場合に、履かせる途中で着脱用開口部22aが足Fにより塞がれやすい。
本実施の形態1のシューズSは、シューズ内部空間30は、通気孔13を介してシューズ外部と連通しているため、着脱用開口部22aが塞がれた場合でも、足Fをシューズ内部空間30に挿入した体積分の空気は、通気孔13からスムーズにシューズ外部に抜ける。
【0037】
よって、着脱用開口部22aが塞がれても、足Fをシューズ内部空間30に進入させるのに伴ってシューズ内部空間30が高圧となることが無く、短時間にスムーズにシューズSを足Fに履かせることができる。
【0038】
また、シューズSを脱がせる場合も、着脱用開口部22aが塞がれてもいて、胴部22から引き抜いた足Fの体積分の空気を、通気孔13からシューズ内部空間30に円滑に導入することができる。よって、シューズ内部空間30が負圧になってシューズSが足Fに密着することが無く、スムーズに脱がせることができる。
【0039】
「走行時・歩行時」
次に、シューズSを履いての走行時・歩行時について説明する。
シューズSのソール部10は、前側底部10aと後側底部10bとの間に段差部10cを有する。このため、シューズSを履いての動物Dの走行時・歩行時には、動物Dの足先FTが前後に移動しにくく、走行性、歩行性に優れる。詳細には、動物Dの肉球のうち掌球部分の後端が、段差部10cの前に配置されるサイズのシューズSを履かせることで、掌球部分が段差部10cに引っ掛かり、足先FTがソール部10に対して前後移動するのを抑制できる。
【0040】
次に、走行時・歩行時の通気性について説明する。
シューズSを履いての動物Dの走行時・歩行時には、アッパ部20がソール部10に対して、前後方向に弾性変形し、この弾性変形に伴って、シューズ内部空間30の容積変化が生じる。そして、この容積変化分の空気が、通気孔13を介して、シューズ内部空間30とシューズ外部とで出入りし、シューズ内部空間30の換気が行われる。
【0041】
したがって、動物Dが足裏Faの肉球部分で汗をかいても、シューズ内部空間30の湿度、温度が上昇するのを抑制できる。
【0042】
加えて、通気孔13の内側開口部13dを、ソール部10の上面12に開口し、装着時に肉球に近い位置に配置されるため、例えば、シューズSのアッパ部20に開口を設けた場合と比較して、肉球の汗による湿気を効率良く排出することができる。
【0043】
さらに、通気孔13は、内側開口部13dをソール部10の上面12に設けているのに対し、外側開口部13cをソール部10の側面に設けている。このため、通気孔13を介して換気する際に、外側開口部13cが、地面に接して塞がれることが無く、円滑な換気が可能である。
【0044】
なお、外側開口部13cを有することで、雨天時などには、通気孔13を介して水がシューズ内部空間30に浸入するおそれがある。
しかしながら、本実施の形態1では、通気孔13の外側開口部13cを、ソール部10の側面に設けているため、内側開口部13dから真下のソール部10の下面11に開口したものと比較すると、シューズ内部空間30への水の浸入を抑制することができる。
【0045】
また、ソール部10の上面12に内側開口部13dを設けているため、仮に、シューズ内部空間30に水が浸入した場合、通気孔13による換気に伴って、水を排出しやすく、シューズ内部空間30に水が溜まるのを抑制できる。この場合も、外側開口部13cをソール部10の側面に設けているため、水の排出時に外側開口部13cが塞がれること無く、円滑に水の排出を行うことができる。
【0046】
「足裏保湿作用」
実施の形態1のシューズSに動物Dの足Fを差し込み、このシューズSを動物Dの足Fに装着すると、
図2に示すように、足裏Faの肉球がソール部10の上面12に接触する。そして、動物Dは、走行時・歩行時に、足裏Fa(肉球)によってソール部10の上面12を踏みしめることになる。
【0047】
実施の形態1のシューズSでは、ソール部10が、ゴム弾性を有すると共に、スクワランである炭化水素油50を含有したエラストマー(シリコーンエラストマー)60によって形成されている。さらに、炭化水素油50は、常温で液体であり、エラストマー60を構成する多数のエラストマー分子の間に浸透している。
【0048】
そのため、この炭化水素油50は、時間の経過と共にエラストマー分子の間を通って、例えばソール部10の上面12に次第に浸み出し、上面12に、炭化水素油50の被膜が常時形成される。一方、ソール部10の上面12に浸み出した炭化水素油50は、動物Dの足裏Faに付着し、足裏Faの表面に被膜を形成する。
【0049】
ここで、スクワランである炭化水素油50は、皮脂からの水分蒸散を防止するエモリエント効果や保湿作用を奏することができ、体内に浸透して皮脂のバリアとしても作用することができる。そのため、足裏Faに炭化水素油50が付着したことで、この足裏Faの肉球から水分が失われることを防止でき、保湿することができる。
【0050】
また、この炭化水素油50は、徐々にソール部10の上面12に浸み出していくため、このソール部10の上面12に常時被膜を形成することができる。そのため、シューズSを履くたびに動物Dの足裏Faに炭化水素油50を付着させることができ、手間がかかることがない。さらに、足裏Faの状態を目視で確認することができなくても、炭化水素油50がエラストマー60から浸み出すため、常時保湿することが可能になり、足裏状態の確認を不要とすることができる。
【0051】
よって、シューズSを動物Dに履かせておくことで、動物Dの足裏Faの保湿を容易に行うことができる。
【0052】
[足裏保護作用]
実施の形態1のシューズSでは、ソール部10が、炭化水素油50を含有したエラストマー60によって形成されている。ここで、エラストマー60は、弾力性に富み圧縮性が高いという性質を有している。そのため、容易に変形が可能であり、足裏Faへの衝撃を吸収することができて足裏Faを保護することができる。
【0053】
加えて、通気孔13、クッション用孔14を有していることで、これらの孔を有しないものと比較して、ソール部10の上下方向の弾性変形量が多くなり、衝撃吸収性能が、さらに高まる。しかも、上記の通気性能を得るための通気孔13に加え、クッション用孔14を並列に形成しているため、ソール部10の柔軟性がさらに高いものとなり、衝撃吸収性能を向上できる。
【0054】
そして、走行時・歩行時に、このソール部10、および、アッパ部20が弾性変形した際に、元の形状に戻ろうとする復元力が作用し、この復元力が走行および歩行の補助にもなる。よって、老犬など、歩行能力が落ちた動物Dが歩行する際には、シューズSの弾性変形時の復元力で走行・歩行をアシストし、走行・歩行時の負担を軽減することが可能である。
【0055】
また、エラストマー60がシリコーンエラストマーであることから、耐熱性、耐寒性、耐水性、耐スチーム性などを有しており、熱や寒さ、水や汚れなどから動物Dの足裏Faを保護することができる。よって、シューズSを動物Dに履かせておくことで、動物Dの足裏Faを保護することができる。
【0056】
エラストマー60に含有された炭化水素油50は、エラストマー60から浸み出した後、ソール部10の下面11に浸み出していくことができる。これにより、下面11にも炭化水素油50の被膜が形成されることになり、この炭化水素油50の被膜が滑り止めとなって、ソール部10の下面11の滑りを防止することができる。
【0057】
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1の動物用履物としてのシューズSが奏する効果を列挙する。
(1) 実施の形態1のシューズSは、
弾性体により形成されて、動物Dの足裏Faを支持するソール部10と、ソール部10の周縁部に連続して形成され、足Fを包み込むアッパ部20と、を有したシューズSであって、
ソール部10に、ソール部10の側面に開口された外側開口部13cと、ソール部10の上面12に開口された内側開口部13dとを有する通気孔13が設けられているシューズである。
したがって、走行時・歩行時のシューズSの弾性変形に伴う、シューズ内部空間30の容積変化に伴い、シューズ内部空間30の空気が、通気孔13を介して出入し換気を行う。これにより、シューズSを装着した動物Dが、足裏Faの肉球部分に汗をかいても、シューズ内部空間30の湿度、温度が高くなりにくい。
よって、良好なシューズ内部空間30の環境を得ることができる。
加えて、内側開口部13dをソール部10の上面12に設けているため、肉球部分で汗をかいた場合の湿気の排出性能に優れる。
さらに、内側開口部13dをソール部10の上面12に設けているにも関わらず、外側開口部13cはソール部10の側面に設けている。このため、この外側開口部13cをソール部10の下面11に設けた場合のように、走行時・歩行時に、外側開口部13cが塞がることが無く、通気性を良好に保つことができる。
【0058】
(2)実施の形態1のシューズSは、
通気孔13は、ソール部10を横方向に貫通し、両端に外側開口部13cを有する横孔部13aと、横孔部13aから上方に延在されて上面12に内側開口部13dを有する縦孔部13bと、を備える。
したがって、内側開口部13dを上面12に設け、外側開口部13cをソール部10の側面に設けた複雑な形状であるにもかかわらず、通気孔13を直線的な2方向からの孔で形成することができ、型成形を容易に行うことができる。
【0059】
(3)実施の形態1のシューズSは、
ソール部10は、通気孔13とは別に、ソール部10を横方向に延在されて、ソール部10の側面に開口を有し、ソール部10の内部とは遮断されたクッション用孔14を備える。
したがって、クッション用孔14を備えないものと比較して、ソール部10の柔軟性を高くでき、動物Dの保護性能を高めることができる。
【0060】
(4)実施の形態1のシューズSは、
ソール部10は、つま先側の前側底部10aの厚さよりも、つま先とは反対側のウシと後側底部10bの厚さが厚く形成されて、ソール部10の上面12を横断して段差部10cが形成されている。
したがって、走行時・歩行時に、動物Dの足Fの裏面が、段差部10cに対して前後方向に係合することで、ソール部10の上面12に対して、前後方向に移動しにくい。よって、走行時・歩行時に、足Fがソール部10の上面12に対して足が前後に移動するものと比較して、走行時・歩行時の安定性に優れる。
【0061】
(5)実施の形態1のシューズSは、
通気孔13およびクッション用孔14は、後側底部10bに形成されている。
通気孔13およびクッション用孔14を、相対的に厚さの厚い後側底部10bに設けたため、通気孔13およびクッション用孔14の断面積を確保し、通気性およびクッション性を確保しやすい。
【0062】
(6)実施の形態1のシューズSは、
アッパ部20は、ソール部10のつま先側を覆うキャップ部21と、このキャップ部21に連続してソール部10の後部から筒状に延在され、先端に着脱用開口部22aを有する胴部22と、を備え、
胴部22は、着脱用開口部22aが、シューズ内部空間30の最奥端部31に臨むように傾斜されている。
胴部22の着脱用開口部22aからシューズ内部空間30の最奥端部31とが、直線状に配置されるため、動物Dの足Fを、着脱用開口部22aから最奥端部31まで直線的に移動させることができ、シューズSの着脱操作性に優れる。
【0063】
(7)実施の形態1のシューズSは、
胴部22に、プルストラップ22bを備える。
したがって、シューズSを動物Dの足Fに着脱する際に、胴部22の引き上げ操作、引き下げ操作が容易であり、着脱操作性に優れる。
【0064】
(8)実施の形態1のシューズSは、
弾性体としてエラストマー60が用いられている。
したがって、シューズSの柔軟性を確保でき、動物Dの足Fへの密着性を確保しやすい。そして、このように、密着性が高い場合、通気性の確保が課題となるが、上記(1)に記載したように良好な通気性を得ることができる。
【0065】
(9)実施の形態1のシューズSは、
エラストマー60には、常温で液体の炭化水素油50が含有されている。
これにより、動物Dの体表面(足裏Fa)を保護しつつ、容易に保湿することができる。
また、エラストマー60から浸み出した炭化水素油50によって、ソール部10の下面11の滑りを防止することができる
【0066】
(10) 実施の形態1のシューズSは、
エラストマー60は、天然ゴム、スチレンエラストマー、オレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、アクリルエラストマーおよびシリコーンエラストマーからなる群から選択される少なくとも一種である構成とした。
これにより、エラストマー60がゴム弾性を有し、動物Dへの衝撃を吸収して、適切に保護することができる。
【0067】
(11) 実施の形態1のシューズSは、
炭化水素油50は、流動パラフィン、スクワランおよびスクワレンからなる群から選択される少なくとも一種である構成とした。
これにより、炭化水素油50が常温で液体状を保ち、保湿機能を有することで、エラストマー60から徐々に浸み出して動物Dの体表面の保湿を適切に行うことができる。
【0068】
(他の実施の形態)
次に、本開示の他の実施の形態について説明する。
なお、他の実施の形態を説明するのにあたり、共通する構成物には共通する符号を付して説明を省略する。
【0069】
(実施の形態2)
図13〜
図15に示す実施の形態2のシューズSBについて説明する。
このシューズSBは、実施の形態1のシューズSとは大きさが異なり、相対的に小さな動物用のものである。
【0070】
このシューズSBは、実施の形態1と同様に、ソール部210およびアッパ部220を備える。また、ソール部210には、通気孔213およびクッション用孔214を備える。
【0071】
また、アッパ部220は、キャップ部221および胴部222を備える。なお、胴部222は、着脱用開口部(不図示)およびプルストラップ222bを備える。
【0072】
このシューズSBの実施の形態1のシューズSとの相違点は、前後方向の全長、左右方向の横幅が、シューズSの全長、横幅と比較して、2/3程度の寸法に形成されている。また、例えば、全長は、90mm程度、横幅は25mm程度の寸法とする。
【0073】
また、ソール部210に形成された通気孔213の形状が、実施の形態1の通気孔13と異なり、横孔213aが、一定の断面積形状に形成されている。なお、この通気孔213の形状のものを実施の形態1のシューズSに適用してもよいし、実施の形態1で示した通気孔13を実施の形態2のシューズSBに適用してもよい。
【0074】
以上、説明した実施の形態2のシューズSBにあっても、上記(1)〜 (11)に記載の効果を奏する。
【0075】
以上、本開示の実施の形態を図面に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0076】
なお、この実施の形態1では、動物用履物(シューズS)を形成する弾性体としてエラストマーを示したが、これに限定されず、弾性変形可能な他の素材を用いてもよい。また、実施の形態では、エラストマー60がシリコーンエラストマーである例を示した。しかしながら、エラストマー60としてはこれに限定されず、ゴム弾性を有するものであればよい。例えば、天然ゴム、スチレンエラストマー、オレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、アクリルエラストマーであってもよい。これらは、いずれもゴム弾性を有すると共に、それぞれ耐熱性、耐寒性、耐水性、機械的強度、耐摩擦性、対候性、耐油性などのいずれかの性質を有している。
【0077】
また、天然ゴムは、天然のゴムノキの樹液に含まれる(乳液)から精製され、その成分は、化学的には高シスポリイソプレンである。また、スチレンエラストマーは、ポリスチレンからなるハードセグメントと、ポリエチレン・ポリブチレンからなるソフトセグメントをブロック状に共重合させた基本単位構造を持つ。また、オレフィンエラストマーは、一般的にポリプロピレンの中にエチレン−プロピレンゴムを微分散させた熱可塑性エラストマーである。ウレタンエラストマーは、低分子ジオールおよびジイソシアネートから生成するハードセグメントと、高分子ジオールおよびジイソシアネートから生成するソフトセグメントとを有する。ポリエステルエラストマーは、ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体とを重縮合して得られる。アクリルエラストマーは、アクリル酸エステルとエポキシ基を有する単重体並びにビニル系単重体とを共重合して得られる。
【0078】
また、実施の形態では、弾性体が、常温で液体の炭化水素油50を含有するものを示し、炭化水素油50としてスクワランを用いた例を示した。しかしながら、炭化水素油50としては、常温で液体状を保ち、保湿機能を有するとともに、エラストマー60に含有可能であれば、スクワランに限定されない。例えば、この炭化水素油50は、流動パラフィン、或いはスクワレンであってもよい。
【0079】
ここで、流動パラフィンは、石油の比較的粘度の低い潤滑油留分を、高度に精製した無味、無臭、無色透明の油状液体である。また、スクワレンは、深海産の魚類、特にサメ類の肝油中に存在し、あるいはオリーブ油、コメヌカ油、小麦胚芽油、ゴマ油、綿実油などの植物油中にも存在し、さらに、人の皮脂の中にも存在する。これらより抽出することでスクワレンを得ることができる。そして、これらは、いずれも常温で液体であり、皮膚に塗布した際、高い保湿作用を奏することができる。
【0080】
また、実施の形態では、クッション用孔14は、途中に遮断壁14aを有する例を示したがこれに限定されず、全長で貫通されていてもよい。
さらに、アッパ部20は、胴部22の着脱用開口部22aが、シューズ内部空間30の最奥端部(先端部)31に臨むように傾斜した例を示したが、その形状はこれに限定されず、特許文献1に記載のもののように、ソール部に対して胴部が直立、あるいはそれに近い角度としてもよい。