特許第6978086号(P6978086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978086
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】圧縮機および圧縮機用支持部材
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20211125BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20211125BHJP
   F16F 1/377 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   F04B39/00 102Q
   F16F15/08 V
   F16F1/377
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-56741(P2019-56741)
(22)【出願日】2019年3月25日
(65)【公開番号】特開2020-159224(P2020-159224A)
(43)【公開日】2020年10月1日
【審査請求日】2020年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114710
【氏名又は名称】ヤマウチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 利夫
【審査官】 大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第106089638(CN,A)
【文献】 登録実用新案第3043655(JP,U)
【文献】 特開昭63−038732(JP,A)
【文献】 特開2007−292187(JP,A)
【文献】 特開平09−203192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F16F 15/08
F16F 1/377
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体と、
前記圧縮機本体をベース上に弾性的に支持するゴム製の支持部材とを備え、
前記支持部材は、
胴部と、
前記胴部の上方端部に位置し、前記圧縮機本体の底面部に下方から当接する上部当接部と、
前記胴部の下方端部に位置し、前記ベースの上面部に上方から当接する下部当接部とを備え、
前記上部当接部は、前記胴部の上面から第1の高さを有する第1突出部と、前記胴部の上面から前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2突出部とを有し、
前記支持部材は、前記胴部の中央部分から上方に延び、前記圧縮機本体の底面部を貫通する首部をさらに備え、
前記胴部及び首部は、その中心部分に固定棒を貫通させる中央孔を有し、
前記第1突出部および前記第2突出部は、それぞれ、複数設けられ、
前記第1突出部と前記第2突出部とは、前記胴部の中心軸線を取り囲んで交互に設けられ、
前記第1突出部と前記第2突出部とは、互いに異なった形状の横断面を有し、
前記第1突出部はその横断面形状がほぼ楕円形であり、前記第2突出部はその横断面形状がほぼ扇形である、圧縮機。
【請求項2】
圧縮機本体をベース上に弾性的に支持するゴム製の支持部材であって、
胴部と、
前記胴部の上方端部に位置し、前記圧縮機本体の底面部に下方から当接する上部当接部と、
前記胴部の下方端部に位置し、前記ベースの上面部に上方から当接する下部当接部とを備え、
前記上部当接部は、前記胴部の上面から第1の高さを有する第1突出部と、前記胴部の上面から前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2突出部とを有し、
前記支持部材は、前記胴部の中央部分から上方に延び、前記圧縮機本体の底面部を貫通する首部をさらに備え、
前記胴部及び首部は、その中心部分に固定棒を貫通させる中央孔を有し、
前記第1突出部および前記第2突出部は、それぞれ、複数設けられ、
前記第1突出部と前記第2突出部とは、前記胴部の中心軸線を取り囲んで交互に設けられ、
前記第1突出部と前記第2突出部とは、互いに異なった形状の横断面を有し、
前記第1突出部はその横断面形状がほぼ楕円形であり、前記第2突出部はその横断面形状がほぼ扇形である、圧縮機用支持部材。
【請求項3】
前記第2の高さは、前記第1の高さの30%〜70%である、請求項2に記載の圧縮機用支持部材。
【請求項4】
前記下部当接部は、前記胴部の底面から第1の高さを有する第3突出部と、前記胴部の底面から前記第1の高さよりも低い第2の高さを有する第4突出部とを有し、
前記第3突出部および前記第4突出部は、それぞれ、複数設けられ、
前記第3突出部と前記第4突出部とは、前記胴部の中心軸線を取り囲んで交互に設けられ、
前記第3突出部と前記第4突出部とは、互いに異なった形状の横断面を有し、
前記第3突出部はその横断面形状がほぼ楕円形であり、前記第4突出部はその横断面形状がほぼ扇形である、請求項2または3に記載の圧縮機用支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動を発生する圧縮機本体をベース上に弾性的に支持するゴム製の圧縮機用支持部材およびこの支持部材を備える圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧縮機用支持ゴムの一例が、特開2002−235665号公報(特許文献1)に開示されている。図5は、この特許文献1に記載の発明の要部を示している。
【0003】
図5に示す圧縮機の支持装置は、圧縮機1の下部周辺に設けられた取付脚2と、この取付脚2に対向してベース3上に立設された複数のボルト4と、上部を取付脚2に取り付けてボルト4を通し圧縮機1を弾性支持する複数の支持体5と、ボルト4の上部に取り付けるナット6とを備える。
【0004】
支持体5は、ゴム系の弾性体であり、上部外周に取付脚2の取付孔2a周辺を挟持する環状の挟持部5aを設けている。支持体5の下部は、取付脚2とベース3間を弾性支持する胴体部5bとなっている。支持体5の底面部5dには、放射状の扇形をした複数の凸部5eが形成されている。
【0005】
特許文献1に記載の発明によれば、支持体5の底面部5dに複数の凸部5eを形成することにより、ベース3と支持体5との接触面積を少なくでき、圧縮機1からの振動をベース3へ伝わり難くすることができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−235665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された圧縮機用支持ゴム(支持体5)では、底面部に複数の凸部を形成することにより、荷重に対する剛性を低減(低剛性化)し、ベース3へ伝達する振動の低減を図っている。
【0008】
ところで、圧縮機を内包する冷蔵庫や空調機の室外機等においては、通常運転時の振動は振幅が小さく、圧縮機用支持ゴムの変形量も比較的小さい。他方、圧縮機の輸送時や据え付け作業時には、大きな上下動や落下衝撃により圧縮機用支持ゴムに大きな振幅を伴う大きな振動が加わることがあり、圧縮機用支持ゴムの変形量も比較的大きい。そのため、圧縮機用支持ゴムには、振動発生部による振動の減衰機能と、輸送中における振動や衝撃による変位抑制機能とが要求される。
【0009】
支持ゴムを低剛性化すれば、通常運転時の比較的小さな振幅の振動を効果的に減衰するが、輸送時や据え付け時に生じる比較的大きな振幅の振動や衝撃に対応し難くなり、圧縮機が大きく変位することになる。これによって、圧縮機に接続されている配管に大きな応力が発生し、配管の亀裂および破損の原因となるため信頼性が低下するおそれがある。逆に、支持ゴムを高剛性化すれば、輸送時や据え付け時の振動や衝撃を効果的に抑え圧縮機の変位を抑制するが、通常運転時に振動を効果的に減衰できなくなる。
【0010】
この発明の目的は、比較的小さな振幅の振動(通常運転時の振動)を減衰できるとともに、比較的大きな振幅の振動(例えば、輸送時や据え付け時の振動や衝撃)による圧縮機の変位も抑制できる圧縮機用支持部材およびそれを備えた圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る圧縮機は、圧縮機本体と、この圧縮機本体をベース上に弾性的に支持するゴム製の支持部材とを備える。支持部材は、胴部と、胴部の上方端部に位置し、圧縮機本体の底面部に下方から当接する上部当接部と、胴部の下方端部に位置し、ベースの上面部に上方から当接する下部当接部とを備える。上部当接部および下部当接部のうちの少なくともいずれか一方は、胴部の上面または底面から第1の高さを有する第1突出部と、胴部の上面または底面から第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2突出部とを有する。
【0012】
この発明に係るゴム製の圧縮機用支持部材は、圧縮機本体をベース上に弾性的に支持するものであって、胴部と、胴部の上方端部に位置し、圧縮機本体の底面部に下方から当接する上部当接部と、胴部の下方端部に位置し、ベースの上面部に上方から当接する下部当接部とを備える。上部当接部および下部当接部のうちの少なくともいずれか一方は、胴部の上面または底面から第1の高さを有する第1突出部と、胴部の上面または底面から第1の高さよりも低い第2の高さを有する第2突出部とを有する。
【0013】
一つの実施形態では、第1突出部および第2突出部は、それぞれ、複数設けられている。この場合、好ましくは、第1突出部と第2突出部とは、胴部の中心軸線を取り囲んで交互に設けられている。
【0014】
1つの実施形態では、第1突出部と第2突出部とは、互いに異なった形状の横断面を有する。
【0015】
第2の高さは、例えば、第1の高さの30%〜70%である。
【0016】
1つの実施形態では、上部当接部および下部当接部の両者が、第1突出部および第2突出部を有している。
【0017】
ゴム製の圧縮機用支持部材は、好ましくは、胴部の中央部分から上方に延び、圧縮機本体の底面部を貫通する首部をさらに備える。この場合、防振ゴムの胴部及び首部は、その中心部分に固定棒を貫通させる中央孔を有する。
【発明の効果】
【0018】
本願発明に係る圧縮機用支持部材によれば、比較的小さな振幅の振動(例えば、通常運転時の振動)に対しては第1の高さを有する第1突出部が弾性的に圧縮変形することにより振動を減衰し、比較的大きな振幅の振動(例えば、輸送時や据え付け時の振動や衝撃)に対しては第1突出部とともに第2突出部も弾性的に圧縮変形して振動を抑え、圧縮機の変位を抑制するので、小さな振幅の振動および大きな振幅の振動の両者に対して効果的に振動減衰および変位抑制機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るゴム製の圧縮機用支持部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
図2図1の線A−Aに沿って見た断面図である。
図3】比較例のゴム製圧縮機用支持部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は線A−Bに沿って見た断面図、(c)は底面図である。
図4図3(b)の線C−Cに沿って見た断面図である。
図5】特開2002−235665号公報に開示された圧縮機の支持装置を示す図であり、(A)は支持装置の垂直断面図、(B)は支持体の要部斜視図、(C)は支持体の底面部を示す斜視図である。
図6】比較例のゴム製圧縮機用支持部材についての荷重と変位との関係を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態に係るゴム製圧縮機用支持部材についての荷重と変位との関係を示すグラフである。
図8】本発明の他の実施形態に係るゴム製圧縮機用支持部材の正面図である。
図9】本発明のさらに他の実施形態に係るゴム製圧縮機用支持部材の正面図である。
図10】本発明のさらに他の実施形態に係るゴム製圧縮機用支持部材の部分断面平面図である。
図11】本発明のさらに他の実施形態に係るゴム製圧縮機用支持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1および図2は、本発明の一実施形態に係るゴム製の圧縮機用支持部材(圧縮機用支持ゴム)を示している。この支持ゴムは、圧縮機本体をベース上に弾性的に支持し、振動を減衰する。支持ゴムの使用方法は、特開2002−235665号公報(特許文献1)に記載された方法と同様である。
【0021】
図1および図2に示す圧縮機用支持ゴム10は、上面21および底面22を有する円柱形状の胴部20と、胴部20の上方端部(上面21)に位置し、圧縮機本体の底面部に下方から当接する上部当接部30と、胴部20の下方端部(底面22)に位置し、ベースの上面部に上方から当接する下部当接部40とを備える。圧縮機本体が支持ゴムを取り付けるための取付脚を有する場合、「圧縮機本体の底面部」は取付脚の底面部となる。ベースは、圧縮機本体を下から支えるものであればどのような形態のものであってもよい。
【0022】
支持ゴム10は、胴部20の中央部分から上方に延び、圧縮機本体の底面部を貫通する首部50を備えている。図2に示すように、胴部20および首部50は、その中心部分にボルト等の固定具を貫通させる中央孔60を有している。首部50は、圧縮機本体の例えば取付脚のゴム取付部位に上方から係止する顎51を有する。
【0023】
図示した実施形態では、圧縮機本体の底面部に下方から当接する上部当接部30は、胴部20の上面21から上方に突出して延びる複数の第1突出部31と複数の第2突出部32とを有している。第1突出部31は例えばその横断面形状がほぼ楕円形であり、第2突出部32は例えばその凹断面形状がほぼ扇形である。第1突出部31は所定の高さ(第1高さ)を有しており、第2突出部32は第1高さよりも低い第2の高さを有している。好ましくは、第2突出部32の第2の高さは、第1突出部31の第1の高さの30%〜70%であり、より好ましくは30%〜50%である。一つの実施形態では、第1突出部31の高さ(第1の高さ)は1.2mmであり、第2突出部32の高さ(第2の高さ)は0.6mmである。
【0024】
図1(a)に示すように、第1突出部31と第2突出部32とは、胴部20の中心軸線を取り囲んで交互に設けられている。
【0025】
ベースの上面部に上方から当接する下部当接部40も、胴部20の底面22から下方に突出して延びる複数の第1突出部41と複数の第2突出部42とを有している。第1突出部41は例えばその横断面形状がほぼ楕円形であり、第2突出部41は例えばその横断面形状がほぼ扇形である。第1突出部41は所定の高さ(第1高さ)を有しており、第2突出部42は第1高さよりも低い第2の高さを有している。好ましくは、第2突出部42の第2の高さは、第1突出部41の第1の高さの30%〜70%である。一つの実施形態では、第1突出部41の高さ(第1の高さ)は1.2mmであり、第2突出部42の高さ(第2の高さ)は0.6mmである。
【0026】
大きな高さを有する第1突出部41が圧縮変形した際に小さな高さの第2突出部42に接触しないようにするために、第1突出部41と第2突出部42との間隔を少なくとも0.5mm以上にするのが良く、より好ましくは1mm以上の間隔を空けるのが良い。
【0027】
図1(c)に示すように、第1突出部41と第2突出部42とは、胴部20の中心軸線を取り囲んで交互に設けられている。図示した実施形態では、上部当接部30の第1突出部31および第2突出部32は、それぞれ、下部当接部40の第1突出部41および第2突出部42と同じ形状で同じ大きさである。また、軸方向に見て、上部当接部30の第1突出部31と下部当接部40の第2突出部42とが整列した位置関係にあり、上部当接部30の第2突出部32と下部当接部40の第1突出部41とが整列した位置関係になっている。
【0028】
図示する支持ゴム10が圧縮機本体に取り付けられた後の振動減衰および圧縮機の変位抑制動作を説明する。比較的小さな振幅の振動が支持ゴム10に加わった場合、まず、上部当接部30の第1突出部31および下部当接部40の第1突出部41が弾性的に圧縮変形し振動を減衰する。小さな振幅の振動であれば、第1突出部31、41のみが弾性的に圧縮変形する。その際、突出高さの小さい第2突出部32、42は、圧縮機本体の底面部およびベースの上面部に当接しておらず、圧縮変形をしていない。
【0029】
比較的大きな振幅の振動や衝撃が支持ゴム10に加わった場合には、第1突出部31、41が圧縮変形して第2突出部32,42と同じ高さになった時点で、第1突出部31、41と共に第2突出部32、42も弾性的に圧縮変形して、支持ゴムの剛性が高まり、圧縮機の変位を抑制する。さらに大きな荷重が加わって第1突出部31、41及び第2突出部32,42が潰れて突出高さがゼロに近づくと、支持ゴムの剛性がさらに高まり、大きな荷重の振動を抑制する。
【0030】
本願の発明者は、比較例として、図3および図4に示す支持ゴム70を作製した。上部当接部および下部当接部を除いて、比較例の支持ゴム70は、図1および図2に示した支持ゴムとほぼ同じ形状を有している。
【0031】
図3および図4に示すように、比較例の支持ゴム70の上部当接部は、胴部の上面から上方に突出する複数の突出部71を有している。複数の突出部71は全て同じ高さであり、その横断面形状はほぼ四角形である。比較例の支持ゴム70の下部当接部は胴部の底面であり、下方に突出する突出部が形成されていない。
【0032】
図1および図2に示す本発明の実施形態に係る支持ゴム10、ならびに図3および図4に示す比較例の支持ゴム70について、荷重と変位との関係を調べた。本発明の実施形態に係る支持ゴム10の第1突出部31,41の高さはいずれも1.2mm、第2突出部32、42の高さはいずれも0.6mmであった。第1突出部31、41の数はいずれも8個であり、第2突出部32、42の数はいずれも8個であった。比較例の支持ゴム70の突出部71の高さは1.5mmであり、その数は6個であった。
【0033】
図6は、比較例の支持ゴム70についての荷重と変位との関係を示すグラフである。荷重が比較的小さな領域(0〜約0.04kN)では、荷重の増加とともに支持ゴム70の変位量が直線的に増加している。他方、荷重が比較的大きな領域(約0.04kN以上)では、突出部71が完全に潰れ、胴部の圧縮変形によって荷重を受けるようになっている。そのため、突出部71の高さがゼロに近づくにつれて、支持ゴムの荷重に対する耐性が高まり、変位−荷重曲線が連続的に急上昇する。比較例の支持ゴム70では、低剛性領域(変位量が1.5mm程度以下)と高剛性領域(変位量が1.5mm程度以上)との境界が不明確である。
【0034】
図7は、本発明の実施形態に係る支持ゴム10についての荷重と変位との関係を示すグラフである。荷重が比較的小さな領域(0〜約0.03kN)では、高さが1.2mmの第1突出部31、41(合計高さは2.4mm)の圧縮変形によって荷重を受けている。この低剛性領域では、荷重の増加とともに支持ゴム10の変位量が直線的に増加している。
【0035】
荷重の増加に伴って圧縮変形する第1突出部31、41の高さが0.6mm(合計で1.2mm)になると、0.6mmの高さの第2突出部32,42(合計高さは1.2mm)も圧縮変形を開始する。したがって、荷重が比較的大きな領域(約0.03kN以上)では、第1突出部31、41の圧縮変形に加えて第2突出部32、42も圧縮変形して荷重を受けるようになる。そのため、高剛性領域(第1および第2突出部の両者が同時に圧縮変形する領域)においても、荷重と変位量との関係はほぼ直線的である。また、低剛性領域(第1突出部31、41のみが圧縮変形する領域)と、高剛性領域(第1突出部31、41および第2突出部32、42の両者が圧縮変形する領域)との間に、比較的明確な境界が現れる。低剛性領域における変位−荷重直線の勾配は小さいが、高剛性領域における変位−荷重直線の勾配は大きい。
【0036】
本発明の実施形態に係る支持ゴム10であれば、振動に対する低剛性領域と高剛性領域との境界を明確に定めることが出来るので製品設計が容易になる。低剛性領域における振動減衰特性は、第1突出部31、41の形状や大きさ等を変えることによって容易に調整できる。また、高剛性領域における圧縮機の変位抑制特性は、第2突出部32、42の形状や大きさ等を変えることによって容易に調整できる。
【0037】
図1および図2に示した支持ゴム10は、本発明の一実施形態であり、本発明に係るゴム製圧縮機用支持部材の一例である。他の実施形態に係る圧縮機用支持ゴムの例を図8図11を用いて説明する。
【0038】
図8に示す実施形態では、胴部の上方端部に位置する上部当接部のみが第1突出部31および第2突出部32を備え、胴部の下方端部に位置する下部当接部が突出部のないフラットな形状のものである。その逆に、図9に示す実施形態では、下部当接部のみが第1突出部31および第2突出部32を備え、上部当接部が突出部のないフラットな形状のものである。図8および図9に示す実施形態の第1突出部31の先端部は、フラットな形状ではなく球面凸状になっている。
【0039】
図10に示す実施形態では、第1突出部31の数が4個で、その横断面形状が円形であり、第2突出部32の数が4個でその断面形状が湾曲した台形である。
【0040】
図11に示す実施形態は、図1に示した実施形態における扇形形状の第2突出部32、42の面積を大きくしたものである。各扇形形状の第2突出部32、42は、胴部20の外周面に連続的に連なる外周面を有し、その内周面が首部50に当接している。
【0041】
図11に示す実施形態では、隣接する第2突出部32、42間に段差凹部が形成されており、この段差凹部内に第1突出部31、41が形成されている。第1突出部31、41および第2突出部32、42の高さの基準となる基準面、すなわち「胴部の上面または底面」は、段差凹部の底面である。第1突出部31、41は胴部の上面または底面から第1の高さを有し、第2突出部32、42は、第1の高さよりも低い第2の高さを有している。
【0042】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明はここに記載した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明と同一または均等な範囲内において種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、圧縮機本体を弾性的に支持するゴム製の圧縮機用支持部材として有利に利用され得る。
【符号の説明】
【0044】
1 圧縮機、2 取付脚、2a 取付孔、3 ベース、4 ボルト、5 支持体、5a 挟持部、5b 胴体部、5c 孔、5d 底面部、5e 凸部、6 ナット、10 圧縮機用支持ゴム、20 胴部、21 上面、22 底面、30 上部当接部、31 第1突出部、32 第2突出部、40 下部当接部、41 第1突出部、42 第2突出部、50 首部、51 顎、60 中央孔、70 比較例の支持ゴム、71 突出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11