特許第6978102号(P6978102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978102
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】電解質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20211125BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20211125BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20211125BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   H01M10/0565
   H01M10/052
   H01M4/139
   H01M4/62 Z
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-563252(P2019-563252)
(86)(22)【出願日】2018年5月15日
(65)【公表番号】特表2020-520540(P2020-520540A)
(43)【公表日】2020年7月9日
(86)【国際出願番号】US2018032812
(87)【国際公開番号】WO2018213339
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2019年12月23日
(31)【優先権主張番号】15/926,422
(32)【優先日】2018年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/506,332
(32)【優先日】2017年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519401365
【氏名又は名称】ミリバット,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Millibatt,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】スミス,レランド
(72)【発明者】
【氏名】ホー,ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】リム,チョルン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,グアンギ
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−1519278(KR,B1)
【文献】 特開2007−048761(JP,A)
【文献】 国際公開第00/072399(WO,A1)
【文献】 特開2004−027195(JP,A)
【文献】 特開平09−067405(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/142311(WO,A1)
【文献】 特開2004−356044(JP,A)
【文献】 特開2011−053670(JP,A)
【文献】 特開2016−046251(JP,A)
【文献】 特表2017−508249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00〜10/0587
H01M 4/00〜 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の製造方法において:
アノードを含む基板上に電解質材料を被覆させるステップであって、前記電解質材料が、第1体積の溶媒に混和性のモノマー、当該モノマーに半混和性であり前記第1体積の溶媒に混和性のポリマー、および光開始剤を含む、ステップと:
前記電解質材料を電磁放射に曝露して、前記光開始剤を、前記モノマーを架橋して、電解質構造から相分離した前記ポリマーを有する電解質構造を形成する反応性サブスピーシーに解離させるステップと;
第2体積の溶媒で前記電解質構造から前記ポリマーを溶出させて、前記電解質構造内にオープンセル細孔ネットワークを形成するステップと;
前記電解質構造を第3体積の溶媒とイオンに曝露して、前記オープンセル細孔ネットワークを溶媒和イオンで満たすステップと;
前記アノードに対向する前記電解質構造上にカソード材料を被覆させるステップであって、前記カソード材料がリチウム貯蔵材料を含むものであるステップと;
前記カソード材料を前記第3体積の溶媒で湿潤させて、
溶媒和リチウムイオンを前記カソード材料から、前記電解質構造内のオープンセル細孔ネットワーク内に引き込み、
前記オープンセル細孔ネットワークを溶媒和イオンで満たす、ステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において:
前記電解質材料を電磁放射に曝露するステップが、前記電解質材料を電磁放射に選択的に曝露して前記モノマーを架橋し、前記電解質構造から相分離して絡み合ったポリマーを有する電解質構造を形成し、前記モノマーの局所架橋を前記電解質材料全体にわたって阻害する懸濁液を形成するステップを具え;
前記電解質構造から前記ポリマーを溶出するステップが、前記電解質構造を前記第2体積の溶媒ですすぎ、前記懸濁液中のポリマーを前記電解質構造から溶出させて、前記電解質構造内に、断面寸法における上側の結合によって特徴づけられる、前記オープンセル細孔ネットワークを提供するステップを具え;
ここで、前記電解質構造上に前記カソード材料を被覆するステップが、前記電解質構造上に、前記カソード材料を被覆させるステップを具え、当該カソード材料が:
第1割合のリチウム貯蔵材料と;
前記第1割合より小さい第2割合の導電性粒子であって、前記電解質構造内のオープンセル細孔の断面寸法の上限のサイズより大きい下限のサイズを示す、導電性粒子と;
を具える:
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において:
当該方法がさらに、前記基板をエッチングしてセルセットを形成するステップであって、当該セルセット内の各セルが、連続壁に囲まれたベースと、ベースに垂直に延びるポストのセットとを具える、ステップを具え、
前記基板上に前記電解質材料を被覆させるステップが、前記電解質材料を、前記セルセット内および前記セルセット内の各セル内の各ポストの周りに被覆させるステップを具え;
前記電解質材料を電磁放射に曝露するステップが、薄い体積の前記電解質材料を、前記連続壁の垂直面および前記セルのセット内の各セルのポストセットの近傍で、電磁放射に選択的に曝露して、前記モノマーを、前記セルのセット内の各セルの連続壁とポストのセットの周りに適合する電解質構造内へ選択的に架橋させて、前記ポリマーを前記電解質構造から相分離させるステップを具え;
前記第2体積の溶媒で前記電解質構造からポリマーを溶出するステップが、前記電解質構造を前記第2体積の溶媒ですすぎ、前記電解質構造の周りから未架橋モノマーを除去し、前記電解質構造からポリマーを溶出するステップを具える;
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記電解質材料を電磁放射に曝露するステップが:
前記セルセット内の各セル内のポストセット内の各ポストの位置にウィンドウを規定するフォトマスクを作成するステップであって、各ウィンドウが、ほぼ目標厚さの前記電解質構造だけ、対応するポストから外側にオフセットさせるステップと;
前記セルセット内の各セルを前記電解質材料で満たす、ステップと;。
セルのセット内の各セルの対応するポストに整列した第2のフォトマスク内の窓がある基板上に前記フォトマスクを配置する、ステップと;
前記フォトマスクを介して前記電解質材料を電磁放射に曝露して、前記光開始剤を、前記セルのセット内の各セルの垂直面の周囲の反応性サブスピーシーに選択的に解離するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において:
前記基板上に前記電解質材料を被覆させるステップが、前記第1体積の溶媒に溶解させた第1割合のモノマーと第2割合のポリマーを含む電解質材料を被覆させるステップを具え;
前記電解質構造体から前記ポリマーを溶出するステップが、前記電解質構造体を前記第2体積の溶媒ですすいで、前記電解質構造内にほぼ第2割合のオープンセル体積を提供するステップを具える;
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において:
前記基板上に前記電解質材料を被覆するステップが:
55体積%から65体積%エポキシベースのネガ型フォトレジストを含むモノマーを含み;
有機化合物の合成ポリマーを含むポリマーを35体積%か45体積%含み;
有機環状ケトン溶媒を含む前記第1体積の溶媒に溶かした;
電解質材料を被覆するステップを具え、
前記電解質構造からポリマーを溶出させるステップが、前記電解質構造を有機環状ケトン溶媒ですすぎ、前記電解質構造からポリマーを溶出させるステップを具える、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において:
前記基板上に前記電解質材料を被覆させるステップが、前記基板上に前記電解質材料をドクターブレードするステップを具え;
前記方法がさらに:
前記電解質材料を電磁放射に曝露する前に、前記電解質材料と前記基板とをソフトベークするステップと;
前記電解質材料を電磁放射に曝露した後に、前記電解質材料と前記基板を焼き付けて、電磁放射への選択的な曝露に反応した前記光開始剤を含む、局所体積中の前記電解質材料のモノマーを架橋するステップと;を具え、
前記第2体積の溶媒でポリマーを電解質構造から溶出させるステップが、前記第2体積の溶媒で前記電解質構造をすすぎ、当該電解質構造からポリマーを溶出し、前記電解質構造からの電磁放射に曝露されない電解質材料を溶出するステップと;
を具えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法がさらに、前記電解質材料を電磁放射に曝露する前に:
前記電解質材料と基板を第1の温度に加熱するステップと;
前記電解質材料と基板を、前記第1の温度で第1の時間、浸漬して、前記モノマーと前記ポリマーのクラスターから非リンクポリマーネットワークへの前記ポリマーの相分離を促進するステップと;
前記電解質材料と基板を冷却して、前記モノマー内の未結合ポリマーネットワークを凍結するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項9】
電解質の製造方法において:
アノードを作製するステップと;
アノード上に電解質材料を被覆させるステップであって、前記電解質材料が、第1体積の溶媒に混和性であるモノマーと、当該モノマーに半混和性で前記第1体積の溶媒に混和性のポリマーと、光開始剤を含む、ステップと;
前記電解質材料を電磁放射に曝露して、前記光開始剤を、前記モノマーを架橋して前記アノード上に電解質構造から相分離させたポリマーを有する電解質構造を形成する反応性サブスピーシーに解離させるステップと;
第2体積の溶媒で前記電解質構造からポリマーを溶解させて、前記電解質構造内にオープンセル細孔ネットワークを提供するステップと;
前記アノードと反対側の電解質構造上にカソード材料を被覆させるステップであって、当該カソード材料がリチウム貯蔵材料を含む、ステップと;
第3体積の溶媒で前記カソード材料を湿潤させ、当該カソード材料から溶媒和リチウムイオンを前記電解質構造内のオープンセル細孔ネットワークに引き込むステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において:
前記電解質材料を電磁放射に曝露させるステップが、前記電解質材料を電磁放射に選択的に曝露させてモノマーを架橋し、前記電解質構造から相分離し、絡み合わせたポリマーを有する電解質材料を形成して、前記電解質構造全体に分布するオープンセル細孔ネットワークを規定するコロイド懸濁液を形成するステップと;
前記電解質構造からポリマーを溶出させるステップが、前記電解質構造を第2体積の溶媒ですすいで、コロイド懸濁液中のポリマーを前記電解質構造から溶出させ、前記電解質構造中に断面において上側が結合することによって特徴づけられる、オープンセル細孔ネットワークを提供するステップと;
前記電解質構造上にカソード材料を被覆するステップが、前記電解質構造上に:
第1割合のリチウム貯蔵材料と;
前記第1割合よりも小さい第2割合で、前記電解質構造内の連続オープンセル細孔の断面寸法の上限に近い下限サイズを示す導電性粒子と;
を含むカソード材料を被覆するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において:
前記電解質構造上にカソード材料を被覆するステップが、前記電解質構造上に、リチウム貯蔵材料、導電性粒子、および第4体積の溶媒に混合されたバインダーを含むカソード材料を被覆するステップを具え;
前記方法がさらに、前記カソード材料を乾燥させて、前記電解質構造上に多孔質カソードを形成するステップを具え;
前記カソード材料を第3体積の溶媒で湿潤させるステップが、前記第3体積の溶媒を前記多孔質カソード上に分配して多孔質カソードを湿潤させ、前記溶媒和リチウムイオンを前記多孔質カソードから前記電解質構造中の連続オープンセル気泡ネットワーク内に引き込むステップを具える;
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において:
前記アノードを製造するステップが、基板をエッチングしてセルセットを形成するステップであって、当該セルセット内の各セルが、連続壁に囲まれたベースと、当該ベースに垂直に延在するポストセットとを具える、ステップと;
前記アノード上に前記電解質材料を被覆させるステップが、前記電解質材料を前記セルセット内へ、および前記セルセット内の各セルの各ポストの周りに被覆させるステップを具え;
前記電解質材料を電磁放射に曝露させるステップが、前記連続壁の垂直面と前記セルセット内の各セルのポストセットとの近傍の、薄い体積の前記電解質材料を電磁放射に曝露させて、前記連続壁の周りおよび前記セルセット内の各セルのポストセットの周りに適合する電解質構造内に、前記モノマーを選択的に架橋させ、前記ポリマーを電解質構造から相分離する、ステップと;
前記第2体積の溶媒で前記電解質構造からポリマーを溶出させるステップが、前記電解質構造を前記第2体積の溶媒ですすぎ、前記電解質構造の周りから未架橋モノマーを除去し、前記電解質構造から前記ポリマーを溶出させるステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
電解質の製造方法において:
基板上に電解質材料を被覆させるステップであって、前記電解質材料が、第1体積の溶媒に混和性のモノマー、当該モノマーに半混和性であり前記第1体積の溶媒に混和性のポリマー、および光開始剤を含む、ステップと:
前記電解質材料を電磁放射に曝露する前に、前記電解質材料と前記基板とをソフトベークするステップと;
前記電解質材料を電磁放射に曝露して、前記光開始剤を、前記モノマーを架橋して、電解質構造を形成する反応性サブスピーシーに解離させるステップであって、前記電解質構造が当該電解質構造から相分離した前記ポリマーを有するものであるステップと
前記電解質材料を電磁放射に曝露した後に、前記電解質材料と前記基板を焼き付けて、電磁放射への選択的な曝露に反応した前記光開始剤を含む、局所体積中の前記電解質材料のモノマーを架橋するステップと;
第2体積の溶媒で前記電解質構造をすすぎ、当該電解質構造からポリマーを溶出し、前記電解質構造からの電磁放射に曝露されない電解質材料を溶出して、前記電解質構造内にオープンセル細孔ネットワークを提供するステップと
前記電解質構造を第3体積の溶媒とイオンに曝露して、前記オープンセル細孔ネットワークを溶媒和イオンで満たすステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記基板上に電解質材料を被覆させるステップが、アノードを含む基板上に前記電解質材料を被覆させるステップを具え;
前記方法がさらに、前記アノードに対向する前記電解質構造上にカソード材料を被覆させるステップを具え、当該カソード材料がリチウム貯蔵材料を含んでおり;
前記電解質構造を前記第3体積の溶媒とイオンに曝露するステップが、前記カソード材料を前記第3体積の溶媒で湿潤させ、溶媒和リチウムイオンを前記カソード材料から、前記電解質構造内のオープンセル細孔ネットワーク内に引き込むステップを具える;
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
電解質の製造方法において:
基板上に電解質材料を被覆させるステップであって、前記電解質材料が、第1体積の溶媒に混和性のモノマー、当該モノマーに半混和性であり前記第1体積の溶媒に混和性のポリマー、および光開始剤を含む、ステップと:
前記電解質材料と基板を第1の温度に加熱するステップと;
前記電解質材料と基板を、前記第1の温度で第1の時間、浸漬して、前記モノマーと前記ポリマーのクラスターから非リンクポリマーネットワークへの前記ポリマーの相分離を促進するステップと;
前記電解質材料と基板を冷却して、前記モノマー内の未結合ポリマーネットワークを凍結するステップと;
前記電解質材料を電磁放射に曝露して、前記光開始剤を、前記モノマーを架橋して、電解質構造を形成する反応性サブスピーシーに解離させるステップであって、前記電解質構造が当該電解質構造から相分離した前記ポリマーを有するものであるステップと
第2体積の溶媒で前記電解質構造から前記ポリマーを溶出させて、前記電解質構造内にオープンセル細孔ネットワークを形成するステップと;
前記電解質構造を第3体積の溶媒とイオンに曝露して、前記オープンセル細孔ネットワークを溶媒和イオンで満たすステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願のクロスリファレンス]
本出願は、2017年5月15日に出願された米国仮出願第62/506,332号の利益を主張する。この出願は全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本出願は、2018年3月20日に出願された米国特許出願第15/926,422号に関連する。この出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0003】
本発明は、一般的に、電池技術の分野に関し、より具体的には、電池技術の分野における新規かつ有用な電解質材料、電池アセンブリ、およびその製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、方法、電解質材料、および電池アセンブリのフローチャート表示である。
図2図2は、方法、電解質材料、および電池アセンブリの一変形例を示すフローチャートである。
図3図3は、方法、電解質材料、および電池アセンブリの一変形例を示すフローチャートである。
図4図4は、方法、電解質材料、および電池アセンブリの一変形例を示すフローチャートである。
図5図5A、5B、および5Cは、電解質材料と方法の一変形例を示す概略図である。
図6図6は、電解質材料の一変形例のグラフ表示である。
図7図7は、電解質材料の一変形例のグラフ表示である。
図8図8Aおよび8Bは、電解質材料と方法の一変形例のグラフ表示である。
図9図9は、電解質材料の一変形例のグラフ表示である。
図10図10は、電解質材料と電池アセンブリの一変形例の概略図である。
図11図11は、電解質材料と電池アセンブリの一変形例の概略図である。
図12図12は、電解質材料と電池アセンブリの一変形例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の実施形態の以下の説明は、本発明をこれらの実施形態に限定することを意図するものではなく、むしろ当業者が本発明を製造および使用できるようにすることを意図するものである。本明細書で説明されている変形、構成、実施形態、実装例、および実施例はオプションであり、本明細書で説明する変形、構成、実施形態、実装例、および実施例に限定されない。本明細書で説明する発明は、これらの変形、構成、実施形態、実装例、および実施例のあらゆる順列を含む。
【0006】
1.方法
図1、2、3、および4に示すように、電池を製造する方法S100は:ブロックS120において、電解質材料100であって、第1体積の溶媒に混和するモノマーと、このモノマー110に半混和性であり第1体積の溶媒に混和するポリマーと、光開始剤130とを含む電解質材料100を基板210上に被覆させるステップと;ブロックS122において、電解質材料100を電磁放射に曝露させて、モノマー110を架橋して、電解質構造102から相分離したポリマー120を有する電解質構造102を形成する反応性サブスピーシーに光開始剤130を解離させるステップと;ブロックS130において、第2体積の溶媒で電解質構造102からポリマー120を分離して、電解質構造102内にオープンセル細孔ネットワークを形成するステップと;ブロックS142において、電解質構造102を第3体積の溶媒とイオンに曝露させて、オープンセル細孔ネットワークを溶媒和イオンで満たすステップと;を具える。
【0007】
図1および図2に示すように、方法S100の一変形例は:ブロックS110でアノードを作成するステップと;ブロックS120で、第1体積の溶媒に混和性のモノマーと、このモノマー110に半混和性で第1体積の溶媒に混和性のポリマーと、光開始剤130とを含む電解質材料100をアノードの上に被覆するステップと;ブロック122で、電解質材料100を電磁放射線に曝露させて、光開始剤130を、モノマー110を架橋する反応性サブスピーシーに解離して、アノード上に電解質構造102から相分離したポリマー120を有する電解質構造102を形成するステップと;ブロックS130において、ポリマー120を第2体積の溶媒で電解質構造102から分離して、電解質構造102内にオープンセル細孔ネットワークを形成するステップと;ブロックS140で、アノードに対向する電解質構造102上に、リチウム貯蔵材料を含むカソード材料230を被覆するステップと;ブロックS142で、カソード材料230を第3体積の溶媒で湿潤させ、溶媒和リチウムイオンをカソード材料230から電解質構造102のオープンセル細孔ネットワークに引き込むステップと;を具える。
【0008】
1.1 電解質材料
図1図7図8A、および図8Bに示すように、方法S100は、第1の形態において、溶媒に混和性の第1割合のモノマー110と;モノマー110に半混和性であり、溶媒に混和性の第2割合のポリマー120と;電磁放射線への曝露に反応して反応性サブスピーシーに分離するように構成された光開始剤130と;を含む電解質材料100を用いて実行することができる。第2の形態においては、電解質材料100は:反応性サブスピーシーで架橋され、溶媒と混和しない電解質構造102を形成する第1割合のモノマー110と;溶媒に混和性であり、電解質構造102中の架橋モノマーから相分離した第2割合のポリマー120と;を含む。
【0009】
1.2 バッテリーアセンブリ
図1、2、3、および4に示すように、方法S100を実行して、アノードと;アノードの第1面上に配置された電解質であって、光開始剤130で架橋されて電解質構造102を形成するモノマーと、モノマー110から相分離して電解質構造102全体にオープンセル細孔ネットワークを形成するポリマーを含み、オープンセル細孔ネットワークを占める溶媒和リチウムイオンで湿潤させた電解質と;アノードの反対側の電解質上に配置され、活性リチウム貯蔵材料と、モノマー中のオープンセル細孔の寸法上界に近い寸法下界を示す導電性粒子と、リチウム塩と、バインダーと、電解質中の連続オープンセル細孔ネットワークを介して、カソードとアノードの間でリチウムイオンを輸送するように構成された溶媒とを含むカソードと;を具える電池アセンブリ200を作成することができる。
【0010】
図2、11、および12に示すように、電池アセンブリ200の一変形例は:セルセット212であって、各セルが、第1方向に延在し、連続壁216に囲まれているセルセットを画定するシリコンベースの基板210と;各セルの底部、各ポストの側面と上部、および各壁216の側面をコーティングする電解質であって、各セルのポストの周囲に適合し、光開始剤130により架橋した電解質構造102を形成するモノマーを含み、モノマー110から相分離して、電解質構造102全体にわたってオープンセル細孔ネットワークを形成し、オープンセル細孔ネットワークを占める溶媒和リチウムイオンで湿潤したポリマーを含む、電解質と;電解質上の各セルを満たし、活性リチウム貯蔵材料、バインダー、リチウム塩、および電解質のオープンセル細孔ネットワークを通してカソードと電極の間でリチウムイオンを輸送するように構成された溶媒を含むカソード230と;を具える。
【0011】
2.アプリケーション
方法S100を実行して、アノードとカソード間に比較的密度の高い連続した空隙(または「オープンセル細孔」または「チャネル」)を示し、アノードとカソード間を流れる高導電性イオンを示す電解質104を含む二次元(「2D」)または三次元(「3D」)電池であって、図5B、5C、および11に示すようにこれらのチャネルが溶媒和イオンで満たされている電池を製造することができる。特に、方法S100を実行して、剛性のある多孔質電解質を含むバッテリーであって、高電気抵抗を示し;分布が制御された断面開口領域を有するとともに、アノードとカソード間の溶媒和イオン(例えば、リチウムイオン)の輸送に対して低い抵抗を示すが、電解質を介してカソード中のその他の粒子のアノードへの移行、またはその逆を防ぐ、高密度の細孔ネットワークを規定する;剛性のある多孔質電解質を含むバッテリーを製造できる。2Dまたは3Dバッテリーに組み込むと、この電解質は:バッテリー内のイオンの流れに対して低い内部抵抗を示し、それによってバッテリーの電力密度が高くなり;一方で高い内部電気抵抗を示し、自己放電率を低減するとともにバッテリーの電荷保持を向上させることができる。
【0012】
電解質材料100は:電磁放射線(例えば、紫外線)の存在下で「活性化」(例えば、モノマーを架橋(又は「重合」)する反応性サブスピーシー内に解離する)するように構成された光開始剤130と;第1の溶媒140に混和性であり、活性化された光開始剤の存在下で架橋(例えば、「重合」)して、弾性のある電気絶縁構造を形成するように構成されたモノマーと;第1の溶媒140に混和性であり、このモノマーに半混和性であり、モノマー110が架橋する際にモノマー110から相分離するように構成されたポリマーと;を含む。したがって、ある体積の電解質材料100が電磁放射にさらされると、この量の電解質材料100中の光開始剤130は、モノマーを架橋する反応性サブスピーシーに解離し;ポリマー120は、架橋したモノマーから相分離して、モノマー全体にわたって実質的に均一な密度のポリマー鎖のネットワーク(例えば、コロイド懸濁液)を形成し;第1の溶媒がこの量の電解質材料100から蒸発するにつれてポリマー120とモノマー110との間の相分離ドメインのサイズが大きくなり;この量の電解質材料100中のモノマー110が、反応性サブスピーシーの存在下で、相分離したポリマー120の周りで架橋する。
【0013】
したがって、結果として生じる電解質構造102は、第1の溶媒140に不混和性であり、剛性構造全体に分布するポリマー鎖のネットワークを含む架橋モノマーの剛性構造(例えば、固体構造または高粘度液体構造)を画定する。ポリマー120は、光開始剤130によるモノマー110の架橋(例えば、「重合」)に対して不活性であるため、ポリマー120は、第1の溶媒140および第2の溶媒150中で混和性のままである。したがって、ポリマー120を第2の溶媒150ですすぐ、または洗浄して、電解質構造102から溶出させ、それにより、電解質構造102全体に分布するオープンセル細孔ネットワークが提供される。次いで、電解質構造102を、イオン貯蔵材料およびリチウム塩の存在下で第3の溶媒160で湿潤させて、この電解質構造102のオープンセル細孔ネットワークに、溶媒と溶媒和イオンを引き込む。電解質構造102、溶媒、および溶媒和イオンは、オープンセル細孔ネットワークを介して、一方の側のアノードと反対側のカソードの間でイオンを輸送できる剛性電解質を形成できる。
【0014】
したがって、モノマー110およびポリマーは両方共、第1の溶媒140に混和性であり、表面上を流れる均質な低粘度混合物(例えば、2Dまたは3Dアノード)を形成できる。例えば、電解質材料100は最初に50重量%の第1の溶媒140を含み、電解質材料110を基板210へ被覆した後に(例えば、100℃で)ソフトベークして、電解質材料100中の第1の溶媒140の割合を10%未満まで減らし、それにより、電磁放射に選択的曝露する前に、モノマー全体にわたって相分離したポリマードメインのサイズを大きくすることができる。一緒に混合すると、第1の溶媒140、モノマー、およびポリマー120は、光開始剤130を解離する電磁放射(例えば、X線、電子ビーム、または350〜400ナノメートルの「活性化波長」の紫外線)の波長に対して実質的に透明な「透明」電解質材料100を形成できる。さらに、モノマー110およびポリマー120は両方とも、同様の屈折率を示し得る。ポリマー120も、モノマーから相分離して、平均して光開始剤130の活性化波長よりも小さいサイズ(例えば、任意の原子対間の最大距離を示す)のポリマードメインをつくって、電解質材料100が、活性化波長での入射電磁放射の光散乱を最小にすることができる。電解質材料100は透明であり、活性化波長での入射電磁放射の光散乱が最小であるため、ある体積の電解質材料100は、比較的高い深さ(例えば、数百ミクロン)までの高い体積選択性で光パターン化できる。したがって、電解質材料100は、固相3Dアノード上に被覆され、選択的に光パターン化されて、3Dアノード上に薄く剛性の共形3D電解質構造102を形成することができる。しかしながら、ポリマー120は溶媒には混和性であるがモノマーには半混和性であるだけなので、ソフトベークサイクルの後などにポリマー120がモノマー110から相分離して、ある体積の被覆電解質材料100の全体にわたって実質的に均一な密度の非結合ナノ構造ネットワーク(例えば、コロイド懸濁液)を形成できる。次いで、入射電磁放射線に応答する光開始剤130によって生成された反応性サブスピーシーが、モノマー110を架橋させ、この非結合ポリマーナノ構造の周りに電解質構造102を形成することができる。このように、光パターニングと第2の焼成サイクルの後に電解質構造102に残ったポリマー120は、電解質構造102を第2の溶媒150で洗浄することによって除去することができ、それによって、電解質104を完成させるための溶媒和イオンの導入準備中に、この共形電解質構造102に空孔ができる。
【0015】
したがって、モノマー、ポリマー、第1の溶媒140、および光開始剤130は、光パターン化および後処理を行って剛性の共形2Dまたは3D電解質を生成できる電解質材料100として機能する。さらに、この剛性の共形電解質は、比較的高い多孔性(例えば、より大きな自由体積、より大きなオープン細孔体積)を示し、隣接するアノードと隣接するカソード間の溶媒和イオンに対する内部抵抗を低くすることができる。電解質材料100中のポリマー120のドメインサイズ(例えば、平均幅)は、隣接するアノードおよび隣接するカソード中の導電性粒子のサイズより小さいかまたはこれより実質的に大きくないため、この剛性の共形電解質も電解質を横切る隣接するアノードおよび隣接するカソードからのその他の導電性粒子の輸送に対して高い抵抗を示し、それによりアノードとカソード間の電気的短絡(例えば、アノードから電解質への樹枝状結晶成長による)を抑制する。
【0016】
特に、図5Aに示すように、ネイティブフォトポリマーの電磁放射への曝露から生じるフォトポリマー構造の自然な多孔性に依存するのではなく、この電解質材料100は:ネイティブフォトポリマー(すなわち、モノマー110および光開始剤130)と;ネイティブフォトポリマーから相分離して、電磁放射線への曝露時に架橋したある体積のネイティブフォトポリマーの全体にわたって制御された寸法のボイドの連続ネットワークを作る添加剤(すなわち、ポリマー120)と;の両方を含んでいてもよいは。この添加剤がネイティブフォトポリマー構造から溶解すると、図5Bおよび5Cに示すように、結果として得られる連続解放気泡のネットワークは大きな断面寸法を示し、したがって、電解質を通る溶媒和イオンのより大きなフラックスを支持しながら、カソードからアノードに向かうその他の導電性粒子の伝導、およびその逆も防止することができる。
【0017】
図7、8A、および8Bに示す一例では、第1の溶媒140はシクロペンタノンまたはガンマブチロラクトンを含み;モノマー110は、ビスフェノールノボラックエポキシ(例えば、「SU−8」)などのエポキシベースのネガ型フォトレジストを含み;光開始剤130は、トリアリールスルホニウム/ヘキサフルオロアンチモネート塩などの光酸発生剤を含み;ポリマー120は、ポリ(メチルメタクリレート)を含み;第2の溶媒150は、シクロペンタノンまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む。本例では、電解質材料100をシリコンベースのアノード上に被覆して、後処理を行って、アノードの上に直接、剛性の共形電解質構造102を形成することができ;カソード材料230(例えば、活性リチウム貯蔵材料、炭素(例えば、グラファイトカーボンまたはカーボンブラック)、および炭酸プロピレンを伴う溶液中のリチウム塩を含む)を、電解質構造102上に直接被覆して、剛性の共形カソードを形成するとともに、電解質構造102を溶媒和イオンで満たしてバッテリーセルをつくることができる。
【0018】
方法S100は、図1、3、および4に示すように:電解質材料100を剛性の3Dアノード上に光パターン化し;電解質材料100を後処理して、多孔質で剛性の共形3D電解質を生成し;インサイチューで3D電解質上に多孔質で剛性の3Dカソードを製造すると、以下に説明されている。しかしながら、方法S100は、同様に、2D電解質を生成し、カソード上に直接電解質を生成し、および/または個別に分散した電解質構造102またはアノードおよびカソードを有するサブシーケンスアセンブリ用の電解質を生成して電池を形成するように実装できる。
【0019】
3.用語
上述のように、電解質材料100は、電磁放射線に曝露されると光開始剤130により生成される反応性サブスピーシーの存在下で架橋(例えば、重合)するモノマーを含む。したがって、モノマー110は、電解質材料100内ではネイティブな非架橋形態(以下、モノマー)で存在し、電解質構造102内では架橋形態(以下、「架橋モノマー」という)で存在できる。天然の非架橋形態のモノマー110と架橋形態のモノマー110(すなわち「ポリマー」)は両方共、以下において「モノマー110」という。
【0020】
ネイティブな非架橋形態のモノマー110と、ポリマーと、反応性サブスピーシーに解離する前の光開始剤130との組み合わせは、ここでは電解質材料100と呼ばれる。電解質材料100は、第1の溶媒140を含んでいてもよい。
【0021】
モノマー110は、電磁放射線への曝露に続いて光開始剤130により生成される反応性サブスピーシーの存在下で架橋し、最初に架橋モノマーから相分離したポリマー120の非結合ナノ構造ネットワークを含む電解質構造102を形成する。電解質構造102は、可視光に対して実質的に透明であり、剛性の固体構造または高粘度の液体構造を規定することができる。電解質構造102は、その後、溶媒で洗浄またはすすいで、電解質構造102からポリマー120を除去し、それにより電解質構造102内にオープンセル細孔ネットワークができる。電解質構造102は、その体積全体にわたってほぼ均一な密度でオープンセル細孔ネットワークを画定することができ、これらのオープンセル細孔は、電解質構造102の一方の表面から電解質構造102の反対側の表面まで延在している。
【0022】
ポリマー120が電解質構造102から除去されると、多孔質電解質構造102を溶媒和イオンで湿潤させて電解質104を形成することができる。例えば、リチウムイオン導電性溶液(例えば、プロピレンカーボネートおよびLiPF)を電解質構造102に導入して、電解質構造102のオープンセル細孔を溶媒和リチウムイオンで満たし、リチウムイオン電池用のリチウムイオン担持電解質を形成することができる。別の例では、水素イオン伝導水溶液を電解質構造102に導入して、電解質構造102のオープンセル細孔を溶媒和水素イオンで満たし、水素燃料電池用の水素イオン担持電解質を形成することができる。さらに別の例では、水酸化カリウム水溶液を電解質構造102に導入して、電解質構造102のオープンセル細孔を溶媒和イオンで満たし、ニッケル金属水素化物電池用のイオン担持電解質を形成することができる。
【0023】
4.バッテリーの製造
2Dまたは3Dの単一セルまたはマルチセル電池アセンブリ200の製造中に方法S100を実行して、硬質電解質を製造することができる。例えば、バルクマイクロマシニングおよびフォトリソグラフィプロセスを実装して:ブロックS110でシリコンウェーハ上にアノードを作成し;ブロックS120、S122、およびS130において、アノード上に電解質材料100を被覆し処理して、硬質多孔質電解質構造102を形成し;ブロックS140およびS142において、この電解質上にカソードを形成して、バッテリーアセンブリ200を製造することができる。次いで、ダイスとパッケージにウェハ処理手順を実装して、バッテリーアセンブリ200を、数の個別セル、単一セルまたはマルチセルの2Dまたは3Dバッテリーユニット202にダイシングおよびパッケージ化することができる。この例では、方法S100にしたがって既存のバルクマイクロマシニングおよびフォトリソグラフィ技術を実施して、1枚のシリコンウェハを、多数の(例えば、数百の)個別の密閉された単一セル電池を含むバッテリーアセンブリ200に変換し;次いで図2および3に示すように、これらの単一セル電池を既存のウェーハ処理技術を用いて電池アセンブリ200から分離して、数多くの電池ユニット202を形成することができる。
【0024】
このようにシリコンウエハ上(すなわち、アノード全体)に作ったイオン伝導性が高く、電気抵抗特性が高い電解質は、これらの単一の各セルバッテリにおいて、比較的高い電力密度、低い自己放電率、および強化された電荷保持率を提供する。シリコンウェーハ上に作製しこの多孔電解質構造102は、さらに、第3の溶媒160に溶解したリチウムイオンで湿潤され、ブロックS142で電解質が完成する。この第3の溶媒160(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、2,5,8,11,14−ペンタオキサペンタデカン)は、高沸点(例えば、プロピレンカーボネートでは242℃以上)と低燃焼性を示し、バッテリアセンブリ200から分離した単一セル電池を高温で後処理することができる。
【0025】
したがって、例えば、単一セル電池または分散単一セル電池アセンブリ(電池アセンブリ200から分離している)は、SMTに、あるいはスルーホールパッケージに入れて、プリント回路基板に直接設置するように構成されたバッテリーユニット202を形成することができる。たとえば、このSMTまたはスルーホールバッテリーユニット202は、その他の回路部品とともにはんだペーストでPCBに接着でき、その後、このPCBアセンブリをリフローオーブンに通して、回路部品とバッテリーユニットの両方をPCBに同時に固定することができ、PCBアセンブリを単一のピックアンドプレースおよびリフローサイクルができる。
【0026】
5.アノード
図1、2、3、および4に示す方法S100の一変形例は、アノードの製造について記載したブロックS110を具える。一般的に、この変形例では、電解質材料100は、2Dまたは3Dアノードを規定する基板210の上に直接被覆されている。
【0027】
一実施形態では、電池アセンブリ200は、セルセット212を画定するドープされたシリコンベース基板210を含む3D電池を画定し、各セルは、図1及び2に示すように、第1方向に延在し、連続壁に囲まれた平行ポストセットを具える。したがって、基板210は、それぞれが複数のアノードポストを有する複数のセルを直接エッチングするアノード材料を画定できる。この実施例において、各セルは、共通のアノード電流コレクタから延在し、すべての側面が壁216によって境界付けられた複数のアノードポストを具えており、それらのすべてが単一基板210(例えば、単結晶シリコンウェーハ)から製造される。このように基板210上に製造された各セルは、以下に説明するように、電解質材料100で被覆して電解質104を形成できる。次に、この電解質をカソード材料230で被覆して、以下に説明するように、より大きなバッテリーアセンブリ200内に多くのバッテリーセルを形成することができる。
【0028】
図1、2、および3に示すように、基板210は、直径4インチ、6インチ、または8インチのシリコンウエハといった、シリコンウエハを具えており、このウエハを処理して、連続壁216により分離され、アノードポストを具える複数の個別のセルを基板210の一方の側に直接形成することができる。例えば、深層反応性イオンエッチング(例えば、「DRIE」)プロセスを実施して、エッチングレジストでマスクされていない基板210から材料を除去し、シリコンウエハに複数のセルを形成することができる。各セルはすべての側面が壁216によって境界付けられており、隣接する壁216の上まで延在する複数の平行なオフセットポストを具える。
【0029】
別の変形例では、電池アセンブリ200は2D電池を画定しており、アノードは、p型またはn型のドープシリコンウエハなどの平面基板210を具えている。しかしながら、アノード(または基板210)は、その他の材料のものでもよく、米国特許出願第15/926,422号に記載されているように、その他の方法で作成してもよい。
【0030】
6.電解質材料
図7に示す第1の形態(例えば、「非架橋状態」)では、電解質材料100は:第1の溶媒140と;第1の溶媒140に混和性のモノマーと;第1の溶媒140に混和性であり、モノマー110に半混和性のポリマーと;電磁放射線に曝露すると反応性サブスピーシーに解離して、モノマー110を架橋させる光開始剤130と;を具える。この第1の形態では、電解質材料100は、以下に説明するように、電池アセンブリ200の製造中に電解質材料100が基板210上を流れる(例えば、スピンコート、またはドクターブレードによりセルを充填し、3Dアノードのポストの周りを流れる)のに十分に低い粘度を示す。第1の形態では、モノマー110とポリマー120を第1の溶媒140(例えば、50重量%の第1の溶媒140)に混合して、光開始剤130を活性化するスペクトル内の電磁放射に対して実質的に透明な均質混合物を形成することもできる。
【0031】
次いで、電解質材料100をソフトベークして、第1の溶媒140を蒸発させて電解質材料100中の第1の溶媒の割合を10重量%未満に減らし、ポリマー120を非架橋モノマーから相分離させる。
【0032】
図1図8A、および図8Bに示す第2の形態(例えば、「未処理電解質構造102」として)では、次いで光開始剤130が、電磁放射への曝露によって活性化される。活性化されると、光開始剤130がモノマー110を架橋し、相分離ポリマー120の周りに硬質電解質構造102を形成する。この構造はモノマー110と活性化した光開始剤130 間の反応に対して不活性である。例えば、ポリマ120は、モノマー110から相分離され、絡み合って、電解質構造102全体にコロイド懸濁液を形成する。第2の形態では、モノマーは、このコロイド懸濁液の周りで反応性サブスピーシーによって架橋される。
【0033】
図1、5B、および5Cに示す第3の形態(例えば、「多孔質電解質構造102」として)では、電解質構造102を形成する電解質材料100を焼成し、次いで溶媒ですすぐまたは洗浄してポリマー120を電解質構造102から溶出させ、それにより電解質構造102全体にオープンセル細孔ネットワークをつくる。特に、第3の形態では、電解質構造体102の懸濁液中のポリマー120が、電解質構造体102から溶出し、電解質構造体102中のオープンセル細孔ネットワークを形成する。例えば、第1の形態では、電解質材料100はモノマー110(例えば、エポキシ系ネガ型フォトレジスト)の55〜65容量%、およびポリマー120(例えば、有機化合物の合成ポリマー)の35〜45容量%であり;第3の形態では、ポリマー120は溶媒(例えば、有機環状ケトン)によって電解質構造102から溶出され、電解質構造102中に35〜45容量%のオープンセル細孔体積を提供できる。さらに、ポリマー120の分子量は、ポリマー120の除去後に第3の形態で電解質構造102内に残されたオープンセル細孔ネットワークが溶媒和イオンの幅よりも大きい平均断面幅によって特徴付けられるようなサイズにできる。
【0034】
図1および図10に示す第4の形態(例えば、「電解質104」)では、電解質構造102内のオープンセル細孔ネットワークは、ある量の溶媒和イオンおよび溶媒で満たされて、電解質を形成している。したがって、この完成した電解質104は隣接するアノードと隣接するカソードとの間に溶媒和イオンを導くことができ、それにより、図11に示すように、アノードとカソード間で外部電気回路にエネルギーを送達できる化学反応を促進している。
【0035】
(追加でまたは代替的に、電解質構造102はアノードとカソードの間のバッファまたは電極セパレータとして機能し、電池ユニット202内のアノードとカソード間の電子の流れを防ぐ(すなわち、電気的短絡を防ぐ)ことができる)。
【0036】
6.1 モノマー、光開始剤、および第1の溶媒
図7に示す一実施形態では:モノマー110は、高分子エポキシ樹脂(例えば、SU−8)を含み;光開始剤130は、(例えば、トリアリリウム−スルホニウム塩のファミリーからの)光酸発生剤を含む。電解質材料100の第1の形態では、モノマー110および光開始剤130を第1の溶媒140と組み合わせて、十分に低い粘度を示し電解質材料100を表面全体にスピンコートまたはドクターブレードできるようにした均質な混合物を形成することもできる。例えば、第1の溶媒140はシクロペンタノンまたはγ−ブチロラクトンを含んでいてもよく、電解質材料100は、基板上に被覆したときに約50質量%のシクロペンタノンを含み、ソフトベークを行って電磁放射に選択的に曝露する前は10%未満のシクロペンタノンを含む。
【0037】
電磁放射線(例えば、UV光)に曝露されると、光開始剤130が光酸などの反応性サブスピーシー内に解離する。次いで、電解質材料100を加熱して(例えば、露光後のベークサイクル中にガラス転移温度以上に)、モノマー末端の光酸とエポキシド環との間の反応を促進し、それにより体積がより大きい被覆した電解質材料100全体に光酸が拡散する前に、これらのモノマーを局所的に架橋(すなわち、重合、または硬化」)させて、モノマーの架橋を高度に選択的なものにすることができる。
【0038】
特に、光開始剤130は、電磁放射線に曝露された場合にのみ、(実質的に)反応性サブスピーシー中に選択的に解離できる。ある体積の被覆した電解質材料100の各モノマー分子中のエポキシ基は、光開始剤130が反応性サブスピーシー内に解離する(すなわち、電解質材料100が電磁放射線に曝露され、反応サブスピーシーが存在する)電解質材料100中の同じモノマー分子または他のモノマー分子中のエポキシ基と反応して共有結合するが、反応性サブスピーシーが存在しない場合(すなわち、電解質材料100が、電磁放射線に曝露されていない場合)は、共有結合しない。したがって、電解質材料100中の架橋モノマー分子は、密度の高いポリマーネットワークを形成でき:このネットワークは、第1、第2、および/または第3の溶媒140、150、160と非混和性であり;電気的に絶縁されている。
【0039】
このようにして架橋モノマー分子により形成された高密度ポリマーネットワーク(すなわち電解質構造102)は、図5Aに示すように、ある程度の多孔性を自然に示し、その厚さを通るイオンの伝播を支援する。しかし、電解質構造102全体にわたるより大きなイオン束を支援し、したがって電解質材料100で作成された電解質104を含むバッテリにより低い内部抵抗と高電力密度を達成するには、図5B、5C、および6に示すように、電解質材料100は添加剤(すなわちポリマー120)を含んでいてもよく、この添加剤は:第1の溶媒140と混和性であり;モノマー110から相分離して基板へ被覆した後、第1の溶媒140が電解質材料100から蒸発するときに、モノマー110に相分離ドメインを形成し;電解質材料100が選択的に電磁放射に曝露され、添加剤が電解質構造102から溶出すると、電解質構造102内の制御可能な経路を通じてより大きな多孔性、より均一な多孔性、および/またはより大きな孔径となる。
【0040】
6.2 ポリマー
一般に、ポリマー120は:電解質材料100の第1の形態では、第1の溶媒140、モノマー、および光開始剤130と混合して均質な混合物を形成し;電解質材料100の第2の形態では、図1、5Aおよび5Bに示すように、活性化光開始剤130の存在下でモノマー110が架橋すると、モノマー110全体にほぼ均一に分散したままでモノマー110から相分離するよう、機能する。特に、第2の形態では、ポリマー120は、架橋モノマーによって形成された電解質構造102全体にわたって実質的に均一な空隙ネットワークを形成することができる。
【0041】
また、ポリマー120は、活性化した光開始剤130によりモノマー110を架橋させた後、第1および第2の溶媒140、150と混和性のままであり;ブロックS130で電解質構造102を第2の溶媒150ですすぐと、第2の溶媒150が電解質構造102からポリマー120を溶出させて、それによってほぼ均一な密度と断面のオープンセル細孔ネットワークが電解質構造102全体に生じる。次いで、ブロックS142でこれらの空隙に溶媒和リチウムイオンを充填して、電極を完成させることができる。
【0042】
6.2.1 第1の溶媒に混和性でありモノマーに半混和性であるポリマー
ポリマー120は、第1の溶媒140(例えば、シクロペンタノン、ガンマブチロラクトン)に混和性であり:第1の形態では電解質材料100の第1の溶媒140中に均質な混合物を形成し;第2の形態では電解質材料100の第2の溶媒150によって電解質構造102から溶出される。
【0043】
また、ポリマー120は、モノマー110に半混和性(例えば半溶解性)であり、ポリマー120とモノマー110が第1の形態の電解質材料100の第1の溶媒140中に均質な混合物を形成することができる。しかしながら、ポリマー120は、以下に述べるように、特定の温度、圧力、組成、および濃度条件下といった、小さいスケール(例えば、10ナノメートル)でモノマー110から相分離して、モノマー110が電解質構造102に架橋する際に、モノマー110全体に非結合ポリマー鎖の別個のネットワークを形成することもできる。例えば、ポリマー分子は、モノマー110およびクラスター(例えば、絡み合い、凝集、または「塊」)から相分離して、モノマー全体に非結合ナノ構造ネットワーク(例えば、コロイド懸濁液または浸透ネットワーク)を形成することができる。
【0044】
一例においては、モノマー110は、エポキシ系ネガ型フォトレジストのモノマーを含み;ポリマー120は、モノマーの分子量と同じ分子量のポリ(メチルメタクリレート)(または「PMMA」)分子を含む。これは、電解質材料100中に20ナノメートルのオーダーで小さな制御された相分離ドメインを生成し、モノマー110が架橋するにつれて電解質材料100の体積全体に実質的に均一にポリマーを分布させ、したがって、結果として生じる電解質構造102の全体積に実質的に均一な密度のオープンセル細孔ネットワークを生成する。
【0045】
6.2.2 光学特性
ポリマー120およびモノマー110は溶媒と混合して、光開始剤130による波長以外の活性化波長で最小の光散乱および最小の電磁放射吸収を示す混合物を形成し、電解質材料100を比較的大きな深さまたは膜厚(例えば、500ミクロン以上)にして、電解質材料を高い体積選択性で光パターン化することができる。特に、ポリマー、モノマー、および第1の溶媒140は、光開始剤130の活性化波長では電磁放射に対して光学的にほぼ透明(例えば、95%以上の光透過性)である。例えば、電解質材料100による光開始剤130の活性化波長での電磁放射の吸収および散乱を制限するために、ポリマー120はモノマーから相分離して、平均して、光開始剤130の活性化波長よりも小さいサイズのポリマードメインを生成することができる。ポリマー120とモノマー110は、活性化波長で同様の屈折率を示すことで、電解質材料100による活性化波長での電磁放射の光散乱を制限することもできる。
【0046】
本例において:光開始剤130は、活性化波長(例えば、350から400ナノメートル)での入射電磁放射線に応答して反応性サブスピーシーに局所的に解離し;電解質材料100である第1の形態でのモノマー110は、第1のモル質量、および活性化波長における第1の屈折率で特徴付けられ;電解質材料100である第1および第2の形態でのポリマー120は、第1のモル質量に近い第2の平均モル質量と、第1の屈折率に近い活性化波長での第2の屈折率とで特徴づけることができる。
【0047】
このように、光開始剤130による波長以外の活性化波長での電磁放射の最小散乱と最小吸収を示すことにより、基板210上に被覆した電解質材料100の層は、この電解質材料100の層の全厚を通して電磁放射が活性化波長で伝播するようにして、これによってこの電磁放射が光開始剤130を活性化し、この電解質材料100の層の全厚までモノマー110を架橋することが可能になる。さらに、光開始剤130による波長以外の活性化波長で最小の散乱を示すことにより、電解質材料100のこの層に投影される電磁放射のパターンは、この電解質材料100の層の厚さ全体にわたって高解像度で保存され、それによってこの電解質材料100の層を高い体積選択性で光パターン化することができる。
【0048】
6.2.3 モノマーの架橋に対するポリマーの不活性
ポリマー120は、電解質材料100中でモノマー分子を架橋(例えば、重合)する反応に関与せず(すなわち、「不活性」)、さもなければ活性化した光開始剤130の存在下でモノマー110が架橋する際に、電解質材料100内の空間を占める。また、ポリマー120は、活性化した光開始剤130によって110モノマー110を架橋した後は、第1及び第2の溶媒150、140において混和性のままである。特に、ポリマーは:モノマーの架橋にほんのわずかに影響するかまたは全く影響せず; 光開始剤130、反応性サブスピーシー、またはモノマーの存在下ではそれ自体が架橋またはさらなる架橋を行わず、第2の溶媒150によってポリマー120が電解質構造102から溶出して、電解質の厚さ全体にわたってオープンセル細孔ネットワークを提供することができる。
【0049】
6.2.4 ポリマーサイズ
ポリマー120のサイズは、モノマー110中に、ポリマー分子が溶媒和イオンの平均断面寸法よりわずかに大きい(例えば、50%から1000%)相分離ドメインを形成するように選択することができる。このようにしてブロックS130でポリマー120が電解質構造102 から除去されると、電解質構造102にできたオープンセル細孔が:図5B図5C図6、および図10に示すように、この電解質を含む電池ユニット202の内部イオン伝導性を増加させる可能性がある、完全に溶媒和したイオンが電解質構造102の厚さを通過する(例えば、片側のアノードと反対側のカソードの間)のに十分であり;アノードおよびカソードからの導電性粒子が電解質を通って移動するのを防ぐのに十分に小さく、このバッテリーユニット202内部の電気的短絡を防ぐ;ようなジオメトリを規定することができる。
【0050】
図1、5B、および5Cに示すように、モノマー110は反応性サブスピーシーの存在下で架橋するため、形成されたポリマー分子の非連結ネットワークが、モノマー分子の局所的な架橋を物理的に妨害することがある。したがって、電磁放射線にさらされるある量の電解質材料100は、第2の形態においてこの量の電解質材料100のポリマー分子の非結合ネットワークの周りで架橋し、これにより、これらの空隙にポリマー分子が閉じ込められた架橋モノマーの高密度ポリマーネットワーク中にオープンセルネットワーク(または「細孔」)が生じる。次いで、これらのポリマー分子は、後述するようにブロックS130の第2溶媒150での洗浄またはすすぎなどにより、第2溶媒150によって電解質構造102のこのオープンセル孔ネットワークから取り除かれ、第3の形態の電解質材料100である多孔質で空の電解質構造102を形成できる。
【0051】
例えば、ポリマー120のサイズは、電解質構造102から溶出したときに、電解質構造102にオープンセル細孔を生じる相分離ドメインを生成するように選択することができる。この電解質構造は、溶媒和イオンの最大サイズより大きい短幅;およびカソード内の導電性粒子の最小サイズよりも小さい(または最小でもそれよりも大きい)長幅を示す。本例では、電解質構造102のオープンセル細孔は、10ナノメートルの平均幅(例えば、8ナノメートルの平均短幅と12ナノメートルの平均長幅)を示しており、これにより約1ナノメートルのサイズの完全に溶媒和されたリチウムイオンが電解質を通って自由に流れ、20ナノメートルほどのサイズのカーボンブラック粒子がカソードから電解質に流れるのを防ぐことができる。本例では、電解質構造102は、シリコンベースのアノード上で1ミクロンの最小厚さを規定している。したがって、電解質構造102全体の平均幅(または直径)約10ナノメートルの細孔の場合、電解質構造102は、最小厚さ対細孔サイズが約100:1のアスペクト比を規定して、アノードから電解質構造102へのシリコンの伝播に抵抗して、電解質構造102を含むバッテリユニット202内のシリコン樹状突起の形成によって生じる電気的短絡を防止することができる。
【0052】
6.2.5 機械的完全性
一般的に、電解質材料100中のポリマーの割合が大きいほど、電解質構造102内により大きな多孔率とより緻密なオープンセル細孔ネットワークが生じ、結果として生じる電解質を通るイオンの流れに対する抵抗を減らすことができる。しかしながら、電解質構造102の多孔度が大きいと、電解質構造102の機械的強度が低下し、機械的故障が生じる可能性が高くなる。例えば、電解質材料100をアノード上に被覆させて処理することができ、得られた電解質上にカソードを製造して、カソード集電体250をカソード材料230上に押し込んで、電解質に応力を誘発できる。したがって、電解質材料100は、得られた電解質構造102における最大の多孔率と少なくとも最小の強度をもたらす比率のポリマーを閾値までを含みうる。
【0053】
例えば、電解質材料100は、40重量%(または体積%)のポリマー、55重量%(または体積%)のモノマー、および5重量%(または体積%)の光開始剤130を含む。第1の形態の電解質材料100は第1の溶媒140と混合して、電解質材料100をアノード上に被覆する前に、二液型電解液材料100対一液型溶媒の比などにすることができる。このある体積の電解質材料100中のモノマー分子が、電解質材料100への曝露後に活性化光開始剤130により架橋され、ポリマー120が得られた電解質構造102から溶出すると、電解質構造102は約40体積%のオープンセル細孔を示し、続くバッテリーユニット202の組み立て中に加えられる力に耐えるのに十分な機械的強度が得られる。
【0054】
6.3 電解質材料の例
図7、8A、8B、および9に示す例では、電解質材料100は:SU−8のモノマーなど約55重量%のモノマーと;PMMAなどの約40重量%のポリマーと;トリアリールスルホニウム/ヘキサフルオロアンチモネート塩などの約5重量%の光開始剤130を含む。第1の溶媒140はシクロペンタノンを含み、SU−8モノマー分子とPMMAポリマー分子は、両方共シクロペンタノンと混和性である。さらに、PMMAポリマーは、SU−8モノマーと化学的に類似しており、したがって、SU−8モノマーに半混和性である。
【0055】
一般的に、PMMAは、1モル当たり約500グラム(すなわち、5つの繰り返しメチルメタクリレート単位を有する短いポリマー)から1モル当たり約35000グラム(例えば、350の繰り返しメチルメタクリレート単位を含むより長いポリマー)までといった分子量の範囲で入手可能である。ポリマー120は、モノマーとのより大きな混和性、光開始剤130の活性化波長での電磁放射に対するより大きな透明性、およびSU−8モノマーの屈折率と同様の屈折率を示し、電解質構造102中により断面積の小さい細孔を生じさせる低分子量PMMAを含んでいてもよい。代替的に、電解質材料100は、モノマー110との混和性が低く、モノマー110と混合したときに活性化波長での電磁放射への透明性が低いが、電解質構造体102により大きな断面積の細孔を生じさせる高分子量PMMAを含んでいてもよい。
【0056】
電解質材料100はまた、ある割合の分子量のPMMAポリマーを含むものでもよい。すなわち、1)PMMAポリマーが、断面積がアノードとカソード間の短絡を防ぐためのターゲット幅の範囲を超える(たとえば、カソード中の最小導電性粒子よりも大幅に大きい)チャネルを有する非結合ポリマーナノ構造(例えば、コロイド懸濁液または浸透ネットワーク)に凝集するのを防ぐのに十分低く;2)電解質の上下の境界で終端するのではなく、電解質の全厚にまたがる非結合ナノ構造ネットワークへのPMMAポリマーの相分離とクラスター化を支援して、架橋したSU−8内へのPMMAポリマーの閉じ込め(すなわち、PMMAポリマーの分離されたサブボリューム)を防止して、第2の溶媒150が電解質構造102のこれらの空隙に到達し、溶出し、PMMAポリマーを除去できるようにする;分子量のPMMAポリマーを含むものでもよい。
【0057】
例えば、電解質材料100は、モル当たり15000グラムを中心とする狭い帯域の分子量のPMMAを含んでいてもよく(例えば、モル当たり+/−1,000グラム)、これは:ある体積の電解質材料100全体にわたってポリマー120をほぼ均一に分散させる十分な混和性と;電磁放射が最大深さ500ミクロンまで電解質材料100へ浸透可能になる十分な透明性と;得られた電解質構造102内に5ナノメートルから20ナノメートルの目標幅範囲内の細孔;を提供する。
【0058】
代替的に、第1の形態では、ポリマー120の第2割合が、第1の狭帯域の低分子量PMMA分子と第2の狭帯域の高分子量PMMA分子といった、異なる分子量のPMMA分子のブレンドを含んでいてもよい。例えば、電解質材料100は、分子量5,000グラム/モル(例えば、+/−500グラム/モル)のPMMAを70%と、分子量3,000グラム/モル(例えば、+/−1000グラム/モル)のPMMAを30%といった分子量の組み合わせまたは範囲のPMMAを含んでいてもよい。このように、2つの別個の分子量のポリマーを組み込むことにより、電解質材料100などで形成された電解質構造102の多孔度を調整することができる。より具体的には、より高い分子量のポリマーは、より大きな相分離ドメインを形成し、したがって、電解質構造102内により大きな細孔が生じ、逆もまた同様であり;このように2つの分子量のポリマーを組み込むことにより、これらのポリマーは、10〜50ナノメートルの細孔の集まりなど、電解質構造102に階層的な多孔度を形成することができる。
【0059】
しかしながら、電解質材料100は、一またはそれ以上のその他の範囲の分子量のPMMAをその他の割合で含んでいてもよく、電解質材料100は、その他の組成および/またはタイプのモノマー、ポリマー、および光開始剤130を含み、その他のタイプの第1溶媒140と混合してもよい。例えば、ポリマー120は、ポリ(エチルメタクリレート);ポリ(メタクリル酸ベンジル);ポリカーボネート;ポリスルホン;および/または様々なコポリマー、を含んでいてもよい。
【0060】
7. 電解質の製造
図1、2、3、および4に示すように、ブロックS110でアノードが形成されると、ブロックS120で電解質材料100がアノードの第1の側に被覆され、ブロックS122で選択的に電磁放射に曝露されて、モノマー110が、電解質構造102から相分離し、絡み合って、電解質構造102または架橋モノマー全体に分布した空隙ネットワークを規定するコロイド懸濁液を形成するポリマー120と架橋する。
【0061】
上述した一変形例では、ブロックS110で基板210をエッチングしてセル212のセットを形成する。セル212のセット内の各セルは、連続壁216と、ベースに垂直に延在するポスト214のセットで囲まれたベースを具える。ブロックS120では、電解質材料100をセル212のセット内およびセル212のセット内の各セル内の各ポストの周りに被覆して、基板210を完全に覆う。連続壁216とセルのセット212の各セルのポスト214の近傍にある薄い体積の電解質材料100は、したがって、ブロックS122で電磁放射に選択的に曝露されて、連続壁216とセルセット212内の各セル内のポストセット214の連続壁の周りに適合する電解質構造102にモノマー110を選択的に架橋することができ;このプロセスの間に、ポリマー120は、電解質構造102中の架橋モノマーから相分離することができる。次いで、電解質構造102を第2の溶媒150ですすぎ、または洗浄して、電解質構造102の周囲から未架橋モノマーを除去するとともに、ブロックS130において、電解質構造102からポリマー120を溶出させることができる。
【0062】
7.1 フォトマスク
電池アセンブリ200が3D電池を規定している上述の変形例では、各セルの底部、各ポストの側面および上面、およびアノードによって画定される各壁216の側面が、実質的に均一な厚さの電解質材料100でコーティングされている。一実施形態では、基板210を均一な厚さの電解質材料100でコーティングする準備として、ブロックS122は、各セル内のポスト214セット内の各ポスト位置であり、セル212セット内の各セルを取り囲む各壁216の位置に窓を画定するフォトマスクを作成するステップを具え、各窓は対応するポストまたは壁216から外側に向けて、電解質構造102のほぼ目標の厚さだけオフセットしている。特に、フォトマスクは、図1、3、および4に示すように、各ポストの指定された位置および各壁216の指定された位置に窓(または「開口」)を規定できる。
【0063】
例えば、フォトマスクは、各指定されたセル領域にわたって延在するが指定されたポストおよび壁領域からは除外されているクロム金属吸収膜で覆われた透明な溶融シリカブランクを具えている。本例では、クロム金属吸収フィルムは:各々が対応するポストの位置と同軸であり、対応するポストのフットプリントから外側に電解質の目標厚さ(例えば10、ミクロンなど)だけオフセットしている窓セットと;図4に示すように、各々が対応する壁の位置と同軸であり、対応する壁216のフットプリントから外側に電解質の目標厚さだけオフセットしている直線窓セットと;を規定できる。
【0064】
7.2 電解質の被覆
次いで、ブロックS120で、電解質材料100がアノードの第1の側面にわたって被覆され、それによって各セルを、アノードの第1の側面にわたってパターン化された壁216の上面の均一で平坦な表面オフセットまで電解質材料100で満たす。例えば、電解質材料100の過剰分をアノードの第1の側に分配し、次いでドクターブレードをアノードの第1の側部の上に均一な高さでアノードを通し、図1に示すように電解質材料100をアノードの上の均一な目標厚さまで切り落とすことができる。代替的に、電解質材料100をアノード上にスピンコーティングしてもよい。
【0065】
7.3 相分離とソフトベーク
電解質材料100を電磁放射に曝露する前に、ブロックS122において、電解質材料100および基板210をソフトベークすることができる。一実施形態では、電解質材料100がアノード上に被覆されると、ソフトベークサイクル中にアノードと電解質材料100が加熱されて、露出用の非架橋モノマーが調製される。
【0066】
ソフトベークサイクルの時間および温度パラメータは、モノマーからのポリマー120の相分離を制御するように設定できる。例えば、ソフトベークサイクル中に、アノードと電解質材料100は:高温(例えば95℃)に加熱され;電解質材料100の厚さおよび/または電解質材料100中の第1の溶媒140の割合に比例する時間、高温で保持して、第1の溶媒140を電解質材料100から蒸発させ(例えば、第1の溶媒140によって約50重量%から10重量%未満に);次いで、露出温度までゆっくり冷却して、モノマー110からのポリマー120の相分離を進め、粗くすることができる。特に、電解質材料100から第1の溶媒140を除去すると、ポリマー120がモノマー110により近接するため、モノマー110からポリマー120の相分離が始まる。高温への曝露、長時間の浸漬、および長い冷却期間は、ポリマー120がモノマー110を通ってより大きく移動することにより、モノマー110からのポリマー120の相分離をより大きくすることができる。これが、モノマーの架橋の前に、モノマー110内のより厚い非結合ナノ構造ネットワークへのポリマー分子のより完全なクラスター化をもたらす。
【0067】
図1に示す別の例では、アノードと電解質材料100は、ソフトベークサイクル中に:アノードと電解質材料100を目標温度に加熱する;アノードと電解質材料100をプリセット期間、目標温度で浸漬させて、モノマー110からのポリマー分子の相分離およびポリマー分子の非連結ナノ構造ネットワークへのクラスター化を可能にする;次いで、アノードおよび電解質材料100の温度を急速に低下させて、モノマーの架橋前に、モノマー110中の非結合ポリマーナノ構造を凍らせる;ことにより、ソフトベークサイクル中に急冷することができる。これらの例では、ソフトベークサイクルでの加熱、浸漬、冷却の期間と温度を、目標の相分離とクラスター化を達成するように設定して、ポリマー120目標密度と厚さを達成することができ、電池アセンブリ200が完成すると、電解質の目標多孔度および細孔サイズが完成する。
【0068】
しかしながら、電解質材料100は、その他の時間または温度のソフトベークサイクル中に処理することができる。
【0069】
7.4 曝露
次に、ブロックS122において:セルセット212内の各セル内の対応するポストに整列させたフォトマスク内の窓を有する基板210上にフォトマスクを配置し;電解質材料100を、フォトマスクを通して電磁放射に露出させ、光開始剤130をセルセット212の各セルの垂直面の周りの反応性サブスピーシーに選択的に解離させる。
【0070】
特に、ブロックS122では、フォトマスクを基板210の上に配置し、基板210に整列させ;次いで、電解質材料100をフォトマスクを通して放射線に曝露させて、電解質をポストおよび壁216の上部およびポストと壁216の垂直面上で選択的に硬化させ、隣接するポスト間およびほぼ架橋されていない壁216とポストの間に電解質材料100を残す。フォトマスクは、目標厚さ(または処理装置の光学倍率で補正された同様のジオメトリ)の電解質によって、ポストおよび壁216の垂直面を超えてオフセットされているウィンドウ(開口部)を規定しているため、フォトマスクは電解質材料100に向けて放射線を通過させて、ブロックS122において、基板210の各セルのポストおよび壁216の上部および垂直表面にわたって、目標厚さの局所体積の電解質材料100中で光開始剤130を活性化できる。さらに、セル内のこれらの表面からさらにオフセットした電解質材料100への光の到達をブロックすることにより、フォトマスクはその他の局所体積の電解質材料100を放射線曝露から保護し、これによって光開始剤130がこれらのその他の局所体積の電解質材料100中の反応性サブスピーシーに解離するのを防ぐことができ、したがってブロックS122におけるこれらのその他の局所体積内でのモノマー110の局所架橋を防止できる。
【0071】
7.5 曝露後の焼成と展開
電解質材料100を電磁放射に曝露させた後、電解質材料100と基板210を、ブロックS122で焼成して、反応性サブスピーシーを含む局所体積の電解質材料100のモノマーを架橋することができる。一実施形態では、選択された体積の電解質材料100が電磁放射に曝露されると、図1に示すように、露光後のベークサイクル中にアノードと電解質材料100が加熱され、電解質材料100のこれらの曝露された体積中の、ポリマー120のネットワークの周りのモノマーがさらに架橋される。
【0072】
7.6 ポリマー除去
次いで、ブロックS130では、ポリマー120がある量の溶媒で電解質構造102から溶出して、電解質構造102内にオープンセル細孔ネットワークを形成することができる。一般に、ブロックS130では、電解質構造102および架橋した電解質材料100を溶媒で洗浄またはすすぎ、電解質構造102からポリマー120を溶出させ、図1および2に示すように、電解質構造102から残りの電解質材料100(電磁放射に曝されていない)を溶出させることができる。
【0073】
ポリマー120がPMMAを含む上記の実施態様では、電解質構造102を、第2の溶媒150(例えば、シクロペンタノンまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)または、電解質構造102を完全に膨潤させる別の有機溶媒(例えば、ジメトキシエタンとN−メチル−2−ピロリドンの混合物)で洗浄して、電解質構造102の細孔からポリマー120を溶出させ、電解質構造102を通るイオン輸送用の開チャネルを形成し、電解質構造102を通して輸送用イオンを溶媒和させる。例えば、電解質構造102およびアノードを含む電池アセンブリ200を、加熱した第2の溶媒150バスに浸漬させ、一定時間攪拌して、バスから取り出し、乾燥させて、電解質構造102上にカソードを作製する前に電解質構造102からポリマー120を除去する。
【0074】
さらに、バッテリアセンブリ200(またはバッテリアセンブリ200から分離されたバッテリユニット202)は、パッケージ化してPCB上のはんだペーストに配置し、次いで、その他の表面に装着したまたはスルーマウントさせた電気部品とともにリフローオーブンで処理して、前述したように、バッテリーアセンブリ200(またはユニット)をPCBに固定される。しかしながら、リフロー温度はSU−8のガラス転移温度を超えてもよく、これにより、特に追加の光開始剤130または反応性サブスピーシーの存在下で、SU−8モノマー分子間のさらなる架橋が引き起こされる。モノマー110にボイドをつくるPMMA分子は、電解質材料100が架橋し、バッテリアッセンブリ200が完成すると、第3の溶媒160と(主に)溶媒和イオンに置き換えられるため、電解質材料100の空隙を横切る未架橋SU−8モノマー分子のさらなる架橋が、これらの空隙を狭めるかまたは完全に閉じることがあり、それによって電池の内部伝導率を低下させ、したがって電池アセンブリ200性能を低下させる。したがって、電池アセンブリ200製造後のそのような架橋を防ぐために、電解質構造102の材料は、ブロックS130で光開始剤130を溶出さる溶媒中で完全に洗浄して、電解質構造102に残っている光開始剤130を除去することができる。
【0075】
7.7 溶媒和イオンの紹介
ブロックS142では、多孔質電解質構造102を溶媒およびイオンに曝露して、電解質構造102のオープンセル細孔ネットワークを溶媒和イオンで満たし、それによって電解質を完成させる。一般的に、ブロックS142では、図1および10に示すように、溶媒和イオンが電解質構造102に導入されてオープンセル細孔ネットワークを埋め、したがってこの電解質構造102がイオン搬送(例えば、リチウムイオン搬送)電解質として機能する。
【0076】
一実施形態では、ブロックS130に続いて電解質構造102を乾燥させると、電解質構造102は、ブロックS142において、メータに軽量された体積の第3の溶媒160(例えば、炭酸プロピレンおよび/またはその他の溶媒)を、溶媒和リチウムイオンを上述の3Dアノードの各セルに分配するなどして、第3の溶媒中に溶出したリチウムイオンで直接再湿潤される。第3の溶媒160および溶媒和リチウムイオンは、次いで、多孔質電解質構造102に吸い上げられ、電解質が完成する。
【0077】
以下に説明する別の実施形態では、ブロックS130に続いて電解質構造102を乾燥させて、リチウム貯蔵材料、導電性粒子、および多量の溶媒と混合したバインダーを含むカソード材料230が、ブロックS140で3Dアノードの各セルといった電解質構造102上に被覆される。次いで、カソード材料230を乾燥させて、電解質構造102上に多孔質カソードを形成する。最後に、ブロックS142で、その体積の溶媒を多孔質カソードに(例えば、各セルに)分配して、多孔質カソードを濡らし、溶媒和リチウムイオンを、多孔性カソードから隣接する電解質構造102のオープンセル細孔ネットワークに引き入れることができる。
【0078】
8.カソード
図1、2、3、および4に示す方法S100の一変形例は、リチウム貯蔵材料を含むカソード材料230をアノードの反対側の電解質構造102上に被覆させるステップを記載したブロックS140を具える。この変形例では、ブロックS140は、上述したように、カソード材料230をある量の溶媒で濡らして、溶媒和リチウムイオンをカソード材料230から電解質構造102のオープンセル細孔ネットワークに引き込むステップを具えている。
【0079】
一実施形態では、カソード材料230は:活性リチウム貯蔵材料;導電性のカーボン(例えば、グラファイトカーボンまたはカーボンブラック);バインダー;及び、第3の溶媒160に溶解し、電解質を通るリチウムイオンの輸送を支援するリチウム塩;を含む。カソード材料230は、第3の溶媒160に可溶であるリチウム塩を含んでいてもよい。したがって、第3の溶媒160は、カソード材料230に含まれるリチウムイオンを溶出して、これらのリチウムイオンを電解質に導くように機能し;したがって、カソード材料230中のリチウム塩と組み合わされると、第3の溶媒160が二次電解質相として機能できる。
【0080】
例えば、活性リチウム貯蔵材料は:第3の溶媒160(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、等)に分散したLiNiMnCO;およびLiPfおよび/またはLiBF(すなわち、リチウム塩);を含む。本例では、カソード材料230は:約90%の活性リチウム貯蔵材料と;約10%の導電性粒子(カーボンブラックなど)と;約1%のバインダー;を含む。カソード材料230を溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド)に分散させて、電解質構造102上にカソード材料230を流すのに十分な低粘度を実現し、乾燥時に細孔率約40%といった、ある程度の多孔性を自然に達成することができる。
【0081】
電解質構造102上に被覆されると、カソード材料230からのカソード処理溶媒を乾燥させることにより、カソード材料230を固め(または「硬化」)させ、それによりバインダーを固化させて、セル内のポストの側面と上部にわたり、セルのベース、セルの壁216から電解液によって分離されている可撓性カソードを形成する。
【0082】
一実施形態では、ある量のカソード材料230が第3の溶媒160に分散され、その後、基板210上の各セルに予め作製された電解質構造102上に分配される。例えば、カソード材料230は、カソード材料230が自動ドロッパーまたはディスペンサーで各セルに流れ込み、リチウム塩をイオンに溶かすのに十分な第3の溶媒160の割合(例えば、70〜80%)で分散される。次いで、このバッテリーアセンブリ200を攪拌し、真空チャンバーおよび/または圧力チャンバーに入れて、第3の溶媒160および溶媒和イオンを電解質構造102のオープンセル孔に押し込み、カソード材料230内および電解質構造102の内側に閉じ込められたガスを除去することができる。
【0083】
さらに、カソード材料230がターゲット期間にセル内に被覆されると、アセンブリを加熱して、カソード材料230から第3の溶媒160を例えばカソード中の5質量%まで蒸発させ、カソード材料230を「硬化」させて、目標の電池アセンブリ200の組成を達成することができる。カソード硬化サイクルの終わりにカソード材料230中の第3の溶媒160の最小割合を維持することにより、カソード材料230は:流動性および/または柔軟性を維持し、したがって、再湿潤を必要とすることなくカソード上に設置された電流コレクタに対してより容易に変形して、これによって、カソード材料230と電流コレクタとの間の機械的および電気的結合が改善される。硬化したカソードに残る第3の溶媒160は、カソード中のリチウムイオンを溶媒和し、電解質の空隙を介してこれらの溶媒和リチウムイオンをアノードとカソードとの間で輸送する機能も果たす。
【0084】
代替的に、カソード材料230が電解質構造102上に被覆されると、カソード材料230および電解質構造102を完全に乾燥させ;次いで、既知の体積の溶媒を各セルのカソード材料230に被覆させて、これらの体積のカソード材料230にリチウム塩を溶解させ、溶媒和リチウムイオンを電池アセンブリ200の隣接する電解質構造102内に引き込むことができる。
【0085】
しかしながら、カソードは、ブロックS140においてその他の方法で形成することができ、電解質構造102は、ブロックS142においてその他の方法で、溶媒和イオンを満たすことができる。
【0086】
したがって、完成した電解質は、電池アセンブリ202から切り離された電池ユニット202を充電する際に、カソードからアノードへと溶媒和イオンが伝わり、電池ユニット202が放電されると、カソードをアノードから電気的に絶縁する。
【0087】
8.4 ポリマーの勾配
図10に示す一変形例では、上述の活性リチウム貯蔵材料、導電性粒子、およびリチウム塩に加えて、カソード材料230は、第2体積のポリマーも含む。カソード材料230は、電解質構造102上への被覆時に、ある体積の第3の溶媒160と混合することができる。この体積の第3の溶媒160は、電解質構造102に吸い上げられ、ポリマー120を溶解させ、次いでポリマー120を電解質構造102からカソードに向かって引き出して、これによって電解質からカソードへのポリマー120の密度がなだらかに変化する。これにより、電解質構造102の細孔からポリマー120を除去しながら電池の性能を改善して、少ない数の生産ステップでカソードからの溶媒和イオンのスペースを作ることができる。
【0088】
特に、カソードが電解質上に作製されるときに電解質構造102の空隙にポリマーを残して、カソード材料230と混合した第3の溶媒160は電解質構造102を完全に湿潤させ、電解質構造102に残るポリマー分子を溶かすことができる。これらの溶解したポリマー分子は、電解質構造102からカソード(ポリマー120も含むことがある)に経時的に移動して、それによって溶媒和イオン用の電解質構造102内のオープンセル細孔ネットワークがきれいになり、同時に、電解質とカソードの境界にわたってポリマーの密度に比較的滑らかな勾配が生じ、これにより、バッテリー性能とバッテリー寿命が改善される。
【0089】
この変形例では、カソード内のポリマーは、カソードを一緒に結合するコロイドまたはゲル化剤としても機能する。
【0090】
9.処理
ブロックS140に続いて、電池アセンブリ200は、このように、電解質構造体102材料で被覆され、硬化したカソード材料で満たされたセルセット212を規定する基盤210を具えている。したがって、電流コレクタは、カソード上に取り付けて密封することができ、バッテリーアセンブリ200は、個々のセルまたはセルのグループにダイシングすることができ、図2および12に示すように、これらの個々のセルまたはセルのグループは、パッケージ化して複数の個別のバッテリーを形成できる。例えば、セルセット212は、SMTまたはスルーホールバッテリーに入れて、PCBに直接インストールすることができる。次いで、各SMTまたはスルーホールパッケージは、その他の回路部品とともに、はんだペーストでPCBに取り付けて、約225℃の温度でリフローオーブンに通してはんだペーストをリフローさせ、これによって、各回路構成部品とバッテリの両方を同時にPCBに固定し、1回のピックアンドプレースとリフローサイクルでPCBを完成させることができる。この実施例では、上述したとおり、第3の溶媒160は、高沸点(例えば、242℃)および低可燃性の炭酸プロピレンを含んでいてもよい。第3の溶媒160の沸点ははんだペーストのリフロー温度よりも高いため、溶媒はSMTまたはスルーホール電池内では液相のままであり、電池内の圧力を十分に低く保って断裂または破裂を防ぐことができる。第3の溶媒160の低い可燃性が、リフローオーブンを通過するときでも、SMTまたはスルーホールバッテリーの火災または爆発のリスクを下げることができる。
【0091】
10.その他の電解質用途
方法S100は、一般に、シリコンウェーハ上に3D電池を製造するという状況で順応性のある硬質電解質を製造するステップが記載されている。しかしながら、平面アノードに均一な厚さの電解質フィルムを作成し、電解質フィルム上に平面カソードを被覆または組み立てることによるなどして、2Dバッテリー内で適合性のある硬質電解質を生成する同様の方法と手法を実装することができる。同様に、これらの方法、技術、および材料を実装して、燃料電池を通る水素イオン伝導の改善を可能にする比較的大きな細孔の制御された密度と分布を定義する電解質膜を含む、2Dまたは3D水素燃料電池を製造できる。さらに、これらの方法、技術、および材料を実装して、ニッケル金属−水素化物バッテリーを通る水素イオン伝導を改善できる比較的大きな細孔の制御された密度と分布を定義する電解質膜を含む、2Dまたは3Dニッケル金属水素化物電池を製造できる。
【0092】
しかしながら、電解質材料100は、他の任意の方法で適用し、処理して、適合性のある硬質電解質を形成することができる。同様に、方法S100はその他の方法で実装して、電極上に直接または電極とは別に、順応性のある硬質電解質を製造することができる。
【0093】
当業者は前述の詳細な説明および図面および特許請求の範囲から認識するように、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態に修正および変更を加えることができる。
図1
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図10
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図12