特許第6978137号(P6978137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6978137
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/49 20210101AFI20211125BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20211125BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20211125BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20211125BHJP
   B22F 12/47 20210101ALI20211125BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20211125BHJP
【FI】
   B22F12/49
   B22F3/105
   B22F3/16
   B22F10/28
   B22F12/47
   B33Y30/00
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-117435(P2021-117435)
(22)【出願日】2021年7月15日
【審査請求日】2021年7月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146087
【氏名又は名称】株式会社松浦機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光慶
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔太
【審査官】 中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−006509(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0270750(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0281067(US,A1)
【文献】 国際公開第2019/219739(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0136458(US,A1)
【文献】 特開2021−066922(JP,A)
【文献】 特開2021−066059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 12/49
B22F 3/105
B22F 3/16
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を走行を介してテーブル上に積層するスキージ、当該粉末層に対しレーザビーム又は電子ビームを走査するガルバノスキャナーを複数個備えた三次元造形装置であって、各ガルバノスキャナーは、ダイナミックフォーカスレンズを透過したレーザビーム又は電子ビームに対し、当該透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラーからの反射によって、レーザビーム又は電子ビームの直交座標を基準とする二次元方向の走査を実現している各ガルバノスキャナーにおいて、レーザビーム又は電子ビームの発振源を収容している後端側から、第1ミラーを収容している先端側に至る方向と直交する方向にて各第1ミラーの回動中心軸の中央位置から各第2ミラーにおける回動中心軸の中央位置Qに向かう突設方向を、造形対象である三次元造形物のベースとなる下方側領域の中心位置と一致しているテーブル面の中心位置から前記後端側から前記先端側に至る寸法の1/2以下の距離にて配置され、かつ前記三次元造形物の全領域の水平方向に即した中心位置と一致している位置に対し、当該位置任意の方向にて通過する概念上のラインによって区分された片側領域から向かうような放射状態に設定した上で、前記放射状態を形成している領域において、前記概念上のラインに沿った方向を基準として、前記位置Pから最も離れた位置にある外側端2か所のガルバノスキャナーの前記後端側から前記先端側に至る領域を、前記放射状態を形成する領域のうち最も外側に配列している三次元造形装置。
【請求項2】
第2ミラーの回動中心軸の中央位置を、前記位置を基準として水平方向に即して等距離にて配列している請求項1記載の三次元造形装置。
【請求項3】
複数個のガルバノスキャナーの高さ方向の位置が同一であることを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
隣り合うガルバノスキャナーの高さ方向の位置が相違していることを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項5】
隣り合うガルバノスキャナーにおける各第2ミラーが水平方向に即して部分的に重複していることを特徴とする請求項4記載の三次元造形装置。
【請求項6】
各ガルバノスキャナーにおける第1ミラーがテーブル面と直交する鉛直方向の回動中心軸を介して回動することを特徴とする請求項1、2、3、4、5の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項7】
各ガルバノスキャナーの前記後端側から前記先端側に至る方向が、当該方向に沿って順次上側に傾斜すると共に、各ガルバノスキャナーにおける前記突設方向が、順次上側に傾斜していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項8】
第2ミラーの反射の中心位置が回動中心軸及びその近傍の位置であり、かつ反射の領域が、回動段階における上端及び下端の範囲内にあることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項9】
前記外側端2か所のガルバノスキャナーにおける前記突設方向を、水平方向に即して180°よりも小さな交差角度に設定し、かつ当該2か所のガルバノスキャナーのみを配置していることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項10】
前記外側端2か所のガルバノスキャナーにおける前記突設方向を、水平方向に即して180°よりも小さな交差角度に設定し、かつ残1個のガルバノスキャナーにおける前記突設方向を前記交差角度を2等分する方向を形成するように設定した上で、3個の各ガルバノスキャナーにおいて、前記のように配置された位置を基準として、各第2ミラーの回動中心軸の中央位置を水平方向に即して等角度方向に配置していることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項11】
前記外側端2か所のガルバノスキャナーにおける前記突設方向を、水平方向に即して180°よりも小さな交差角度に設定し、かつ残2個のガルバノスキャナーにおける前記突設方向を前記交差角度を3等分する方向を形成するように設定した上で、4個の各ガルバノスキャナーにおいて、前記のように配置された位置を基準として、各第2ミラーの回動中心軸の中央位置を水平方向に即して等角度方向に配置していることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項12】
前記外側端2か所のガルバノスキャナーにおける前記突設方向を、水平方向に即して180°よりも小さな交差角度に設定し、かつ残3個のガルバノスキャナーにおける前記突設方向を前記交差角度を4等分する方向を形成するように設定した上で、5個の各ガルバノスキャナーにおいて、前記のように配置された位置を基準として、各第2ミラーの回動中心軸の中央位置を水平方向に即して等角度方向に配置していることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項13】
前記外側端2か所のガルバノスキャナーにおける前記突設方向を、水平方向に即して180°よりも小さな交差角度に設定し、かつ残4個のガルバノスキャナーにおける前記突設方向を前記交差角度を5等分する方向を形成するように設定した上で、6個の各ガルバノスキャナーにおいて、前記のように配置された位置を基準として、各第2ミラーの回動中心軸の中央位置を水平方向に即して等角度方向に配置していることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナミックフォーカスレンズを透過して順次集束するレーザビーム又は電子ビームを、二次元方向に走査するガルバノスキャナーを複数個採用している三次元造形装置を対象としている。
【背景技術】
【0002】
テーブル面上に積層した粉末層に対するレーザビーム又は電子ビームの照射によって焼結面を形成する三次元造形においては、焦点距離を調整し得るダイナミックフォーカスレンズを透過したレーザビーム又は電子ビームをガルバノスキャナーによって焼結面又はその近傍に集束するような走査(スキャニング)が行われている。
【0003】
前記走査を実現するガルバノスキャナーを、2個又は4個採用することによって効率的な走査を実現する三次元造形方法は、特許文献1記載の発明(以下「先願発明1」と称する。)として開示されている。
【0004】
しかも、先願発明1においては、水平方向にて向かい合う位置にある第2ミラーにおける反射位置の距離を150mm以下又は100mm以下とすることを要件としており、2個又は4個のガルバノスキャナーをコンパクトな配置とする説明が行われている。
【0005】
しかしながら、2個又は4個のガルバノスキャナーをテーブル面の如何なる位置に配置すべきかにつき、特許文献1は格別の説明を行っている訳ではない。
【0006】
現に、特許文献1の図5図6には、2個のガルバノスキャナー32、43が筐体14内のテーブル面の中心位置から外れて配置されているが、当該配置の基準は全く不明である。
【0007】
但し、特許文献1の図13には、4個のガルバノスキャナー32、42、52、62が筐体114内のテーブル面の中心位置を囲む状態にて配置されており、このような配置状態は、複数個のガルバノスキャナーを、前記中心位置を基準として点対称にて配置することを提示しているが如くである。
【0008】
確かに、三次元造形の対象物において、ベースとなる下方側領域の水平方向の中心位置及び全体の水平方向の中心位置が同一である場合には、前記図13に提示するように、テーブル面の中心位置を基準とする配置が極めて妥当であると評価することができる。
【0009】
しかしながら、三次元造形の対象物においては、ベースとなる下方側領域の水平方向に即した中心位置と頂部に至る全領域の水平方向に即した中心位置とは必ずしも一致する訳ではなく、双方の中心位置が偏差する状態が少なからず発生する。
【0010】
このような全領域の水平方向に即した場合には、前記図13に示すような複数のガルバノスキャナーがテーブル面の中心位置を囲む配置状態は決して効率的な作業を保証しない。
【0011】
先願発明1においては、2個の第2ミラー(X軸ガルバノミラー32a、42a)のレーザ光に対する各反射位置の距離を150mm以下又は100mm以下とする要件が設定されている。
【0012】
しかしながら、相向かう第2ミラーの距離は、当該第2ミラーの回動方向に即した寸法によって左右されるにも拘らず、上記説明においては、各第2ミラーの上記寸法について全く説明されていない点において、上記150mm及び100mmの最大値は技術的に無意味である。
【0013】
のみならず、先願発明1においては、テーブル(造形テーブル5)の水平方向のスペースを有効に活用することについては全く開示されていない。
【0014】
現に、前記図5、6及び図13において、ガルバノスキャナー(ガルバノスキャナ32、42、52、62)が筐体14又は114内において占める領域の割合は極めて僅少である。
【0015】
このように、先願発明1を含む公知技術においては、ベースとなる下方側領域の中心位置と全領域の中心位置が偏差している場合に、複数個のガルバノスキャナーを適切に配置するような構成を提唱している訳ではなく、況してや、テーブル面のスペースの有効活用については、格別の技術的事項を開示及び示唆している訳ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】日本国特許第6,793,806号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、三次元造形物においてベースとなる下方側領域の水平方向に即した中心位置と、全領域の水平方向に即した中心位置が偏差している場合に、複数のガルバノスキャナーによって効率的な三次元造形を実現する一方、テーブル面のスペースを有効に活用し、かつ均一な照射を実現するような三次元造形装置の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を達成するため、本発明の基本構成は、
(1)粉末を走行を介してテーブル上に積層するスキージ、当該粉末層に対しレーザビーム又は電子ビームを走査するガルバノスキャナーを複数個備えた三次元造形装置であって、各ガルバノスキャナーは、ダイナミックフォーカスレンズを透過したレーザビーム又は電子ビームに対し、当該透過方向と直交する方向の回動中心軸を介して回動する第1ミラー及び第1ミラーの回動と独立した状態にて前記第1ミラーにおける回動中心軸の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸を介して回動する第2ミラーからの反射によって、レーザビーム又は電子ビームの直交座標を基準とする二次元方向の走査を実現している各ガルバノスキャナーにおいて、レーザビーム又は電子ビームの発振源を収容している後端側から、第1ミラーを収容している先端側に至る方向と直交する方向にて各第1ミラーの回動中心軸の中央位置から各第2ミラーにおける回動中心軸の中央位置Qに向かう突設方向を、造形対象である三次元造形物のベースとなる下方側領域の中心位置と一致しているテーブル面の中心位置から前記後端側から前記先端側に至る寸法の1/2以下の距離にて配置され、かつ前記三次元造形物の全領域の水平方向に即した中心位置と一致している位置に対し、当該位置任意の方向にて通過する概念上のラインによって区分された片側領域から向かうような放射状態に設定した上で、前記放射状態を形成している領域において、前記概念上のラインに沿った方向を基準として、前記位置Pから最も離れた位置にある外側端2か所のガルバノスキャナーの前記後端側から前記先端側に至る領域を、前記放射状態を形成する領域のうち最も外側に配列している三次元造形装置、
(2)第2ミラーの回動中心軸の中央位置を、前記位置を基準として水平方向に即して等距離にて配列している基本構成(1)の三次元造形装置、
からなる。
【発明の効果】
【0019】
基本構成(1)においては、ガルバノスキャナーの後端側から先端側に至る方向と直交する方向にて各第1ミラーの回動中心軸の中央位置から第2ミラーの回動中心軸の中央位置Qに向かう突設方向基準位置を、テーブル面の中心位置に限定せずに、当該中心位置から前記後端側から前記先端側に至る寸法の1/2以下の距離に配置されている位置Pが配置されている。
【0020】
このような配置を可能としている基本構成(1)においては、造形の対象となる三次元造形物のベースとなる下方側領域の水平方向に即した中心位置につき、テーブル面の中心位置と一致させたうえで、当該三次元造形物の全領域の水平方向に即した中心位置については、前記位置Pと一致させることによって、当該造形対象物の造形に必要なレーザビーム又は電子ビームの照射を効率的に推進することができる。
【0021】
何故ならば、上記の一致によって、ベースとなる下方側領域を焼結する領域を特定する一方、下方側領域の中心位置と全領域の中心位置との偏差による距離と、テーブル面の中心位置と前記のように配置された位置との距離を一致させることによって、複数個のガルバノスキャナーの効率的な照射を可能とする基準位置を設定することに帰するからである。
【0022】
更には、各ガルバノスキャナーにおける前記突設方向を、前記のように配置された位置に対し、当該位置任意の方向にて通過する概念上のラインによって区分された片側領域から向かうような放射状態に設定していることから、各ガルバノスキャナーにおける前記後端側から前記先端側に至る方向もまたテーブル面のスペースにおいて放射状態に設定されていることに帰し、テーブル面のスペースを有効に活用することができる。
尚、前記の「概念上のライン」とは、現実にレーザビーム又は電子ビームによって当該ラインを照射するという趣旨ではなく、あくまでCADシステム又はCAMシステムにおけるコンピュータが設定する計算上のラインの趣旨である。
【0023】
しかも、前記放射状態を形成している領域において、前記概念上のラインに沿った方向を基準として、前記位置Pから最も離れた位置にある外側端2か所のガルバノスキャナーの前記後端側から前記先端側に至る領域を、前記放射状態を形成する領域のうち最も外側に配列することによって、テーブル面のスペースの有効な活用を更に一層助長している。
【0024】
前記のように配置された位置として、テーブル面の中心位置Oからガルバノスキャナーの前記後端側から前記先端側に至る方向の寸法の1/2以下の距離とする根拠は、現実に造形の対象となる三次元造形物において、ベースとなる下方側領域の水平方向に即した中心位置に対し、全領域の水平方向に即した中心位置の偏差する程度がガルバノスキャナーの前記後端側から前記先端側に至る寸法の1/2を超えるような偏差の場合が極めて少ないこと、及びこのように配置された位置によって、テーブル面のスペースの有効な活用が十分達成し得ることにある。
【0025】
基本構成(2)においては、第2ミラーの回動中心軸の中央位置を、前記位置を基準として水平方向に即して等距離にて配列することを要件としている。
【0026】
このような要件に基づき、前記位置を基準として、各第2ミラーの照射領域を均等に区分した場合、又は各第2ミラーの照射領域を共通とした場合の何れにおいても、シンプルな制御によって、均一な照射状態を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】基本構成(1)及び(2)において、2個のガルバノスキャナーを配置した実施例1の平面図である。 但し、基本構成(2)の平面図を示しており、この点は、図2図5においても同様である。 他方、Oは、テーブル面の中心位置を示しており、Pは、各第2ミラーが放射のために向かい合う基準となる位置を示しており、Qは、第2ミラーの回動中心軸の中央位置を示しており、この点は、図2図8においても同様である。 尚、一点鎖線は、基本構成(1)における前記突設方向が向かう基準位置Pを任意の方向にて通過する概念上のラインであって、かつこの点は、図2図8においても同様である。
図2】基本構成(1)及び(2)において、3個のガルバノスキャナーを配置した実施例2の平面図である。
図3】基本構成(1)及び(2)において、4個のガルバノスキャナーを配置した実施例3の平面図である。
図4】基本構成(1)及び(2)において、5個のガルバノスキャナーを採用した実施例4の平面図である。
図5】基本構成(1)及び(2)において、6個のガルバノスキャナーを採用した実施例5の平面図である。
図6】基本構成(1)及び(2)のアウトラインを示す平面図であり、(a)は、基本構成(1)の全体の構成を示し、(b)は、基本構成(2)の全体の構成を示し、(c)は、各ガルバノスキャナーにおける各構成要素の配置状態を示す。
図7】隣り合うガルバノスキャナーの高さ方向の位置が相違する実施形態を示す平面図及び側面図であって、(a)は、2個のガルバノスキャナーにつき2段の異なる高さを設定した場合を示し、(b)は、3個のガルバノスキャナーにつき3段の異なる高さを設定した場合を示す。
図8】隣接し合う2個の第2ミラーが水平方向に即して部分的に重複することを示す平面図及び側面図である。
図9】第2ミラーの反射領域が回動中心軸の位置及びその近傍であると共に、回動段階における上端及び下端の範囲内にあることを特徴とする実施形態を示す側面図である。
図10】第1ミラーの回動中心軸の設定方向が選択可能であることを示す側面図であって、(a)は、回動中心軸が、テーブル面に対し斜交している実施形態を示し、(b)は、回動中心軸が、テーブル面に対し直交する実施形態を示す。 尚、(Q)は、第2ミラーの回動中心軸内に中心位置が存在していることを示しており、この点は、図11においても同様である。
図11】第1ミラーの回動中心軸を鉛直方向に設定した上で、ガルバノスキャナーが後端側から先端側に至る方向が順次上側に傾斜すると共に、第1ミラーの回動中心軸から第2ミラーの回動中心軸の中央位置Qに向かう突設方向が順次上側に傾斜する実施形態を示すガルバノスキャナーの後端側から先端側に至る方向に沿った側面図(左側)及び前記方向と直交する方向に沿った側面図(右側)であり、(a)は、第1ミラーの回動中心軸がテーブル面に対し斜交している実施形態の場合を示し、(b)は、第1ミラーの回動中心軸がテーブル面に対し直交している実施形態の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
基本構成(1)は、図6(a)に示すように、粉末を走行を介してテーブル4上に積層するスキージ、当該粉末層に対しレーザビーム又は電子ビーム7を走査するガルバノスキャナー3を複数個備えた三次元造形装置であって、各ガルバノスキャナー3は、ダイナミックフォーカスレンズ2を透過したレーザビーム又は電子ビーム7に対し、当該透過方向と直交する方向の回動中心軸30を介して駆動装置310の駆動によって回動する第1ミラー31及び第1ミラー31の回動と独立した状態にて前記第1ミラー31における回動中心軸30の方向と直交状態にあり、かつ水平方向の回動中心軸30を介して駆動装置320の駆動によって回動する第2ミラー32からの反射によって、レーザビーム又は電子ビーム7の直交座標を基準とする二次元方向の走査を実現している各ガルバノスキャナー3において、レーザビーム又は電子ビーム7の発振源1を収容している後端側から、第1ミラー31を収容している先端側に至る方向と直交する方向にて各第1ミラー31の回動中心軸30の中央位置から各第2ミラー32における回動中心軸30の中央位置Qに向かう突設方向を、造形対象である三次元造形物のベースとなる下方側領域の中心位置と一致しているテーブル4の面の中心位置から前記後端側から前記先端側に至る寸法の1/2以下の距離にて配置され、かつ前記三次元造形物の全領域の水平方向に即した中心位置と一致している位置に対し、当該位置任意の方向にて通過する概念上のラインによって区分された片側領域から向かうような放射状態に設定した上で、前記放射状態を形成している領域において、前記概念上のラインに沿った方向を基準として、前記位置Pから最も離れた位置にある外側端2か所のガルバノスキャナー3の前記後端側から前記先端側に至る領域を、前記放射状態を形成する領域のうち最も外側に配列している三次元造形装置である。
【0029】
基本構成(1)に基づく効果及びその根拠については、既に発明の効果の項において説明した通りである。
【0030】
基本構成(2)は、図6(b)に示すように、第2ミラー32の回動中心軸30の中央位置Qを、前記位置Pを基準として水平方向に即して等距離にて配列している三次元造形装置である。
【0031】
基本構成(2)に基づく効果及びその根拠については、既に発明の効果の項において説明した通りである。
【0032】
基本構成(1)及び(2)においては、複数個のガルバノスキャナー3の高さ方向の位置が同一である実施形態を通常採用している。
【0033】
このような同一の高さ位置とする実施形態の場合には、構成がシンプルである一方、各ガルバノスキャナー3の機能分担によって、均一な照射状態を効率的に実現することができる。
【0034】
但し、基本構成(1)及び(2)においては、図7(a)、(b)に示すように、隣り合うガルバノスキャナー3の高さ方向の位置が相違していることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0035】
第2ミラー32からの照射位置が遠方となるに従って、照射角度は小さくなることから、仮に第1ミラー31及び第2ミラー32の各回動速度が前記照射位置の遠近に拘らず変化しない場合には、遠方の領域における単位時間及び単位面積当たりの照射の程度が減少し、均一な照射及び焼結を実現することができない。
【0036】
このような不均一な照射及び焼結を避けるため、通常、第1ミラー31及び第2ミラー32の回動速度については、照射位置が遠方となるに従って、順次減少するような制御が行われている。
【0037】
しかしながら、このような制御は二次元であって、煩雑であると共に、十分な制度を保証し得る訳ではない。
【0038】
このような場合、前記のように配置された位置Pから遠い領域につき、高い位置に配置されたガルバノスキャナー3によって照射し、前記のように配置された位置Pから近い領域を、低い位置に配置されたガルバノスキャナー3によって照射することによって、照射による傾斜角度の変化を緩和し、ひいては第2ミラー32からの距離の遠近に伴う第1ミラー31及び第2ミラー32の回動速度に関する制御の精度を向上することができる。
【0039】
特に、図7(a)、(b)に示すように、それぞれ2段及び3段の異なる高さを設定した場合には、前記のように配置された位置Pを基準として、2区分又は3区分とした上で、各段に配置されたガルバノスキャナー3による照射を行う場合には、上記二次元の制御の精度の向上を確実に保証することができる。
【0040】
更には、図8に示すように、上記実施形態において、特に、隣り合うガルバノスキャナー3における各第2ミラー32が水平方向に即して部分的に重複していることを特徴とする実施形態を採用した場合には、第2ミラー32の突設領域につき、水平方向に即してコンパクトな構成とすることができる。
【0041】
基本構成(1)及び(2)においては、図10(a)に示すように、各ガルバノスキャナー3における第1ミラー31の回動中心軸30がテーブル4の面と斜交する実施形態、及び図10(b)に示すように、各ガルバノスキャナー3における第1ミラー31の回動中心軸30がテーブル4の面と直交する実施形態の何れをも選択することができる。
【0042】
図10(a)に示す実施形態は、第1ミラー31の上下方向の幅を小さく設定することによって、コンパクトな構成を実現することができる。
【0043】
これに対し、図10(b)に示す実施形態は、技術常識に合致する一方、シンプルな構成を実現することができる。
【0044】
基本構成(1)及び(2)においては、図9に示すように、第2ミラー32の反射の中心位置が回動中心軸30及びその近傍の位置であり、かつ反射の領域が、回動段階における上端及び下端の範囲内にあることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0045】
第2ミラー32の回動中心軸30の位置は固定されているが、第2ミラー32における反射領域は回動中心軸30の下側又は上側に限定される場合がある。
【0046】
これに対し、図9に示す実施形態の場合には、反射の中心位置を回動中心軸30及びその近傍の位置とすることによって、正確な反射を実現する一方、反射の領域を回動段階における上端及び下端の範囲内にすることによって、第2ミラー32をコンパクトな構成とすることができる。
【0047】
通常、ガルバノスキャナー3は、水平方向に配置されている。
【0048】
しかしながら、ガルバノスキャナー3の配置は水平方向に限定される訳ではない。
【0049】
即ち、図11(a)、(b)に示すように、第1ミラー31の回動中心軸30がテーブル4の面に直交する鉛直方向である実施形態に立脚した上で、各ガルバノスキャナー3の前記後端側から前記先端側に至る方向が、当該方向に沿って順次上側に傾斜すると共に、各ガルバノスキャナー3において第1ミラー31の回動中心軸30の中央位置から第2ミラー32の回動中心軸30の中央位置Qに向かう突設方向が、順次上側に傾斜していることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0050】
上記実施形態の場合には、第1ミラー31の回動中心軸30の方向が図11(a)に示すように、テーブル4の面に対して斜交する場合であろうと、図11(b)に示すように、テーブル4の面に対し直交する場合であろうと、第2ミラー32の回動中心軸30の方向を、前記後端側から前記先端側に至る方向及び前記突方向が水平方向である場合と同様に水平方向に維持した上で、ガルバノスキャナー3の前記後端側から前記先端側に至る方向の傾斜状態及び第1ミラー31の回動中心軸30の中央位置から第2ミラー32の回動中心軸30の中央位置Qに向かう突設方向の傾斜状態を実現することができる。
【0051】
しかも、前記実施形態においては、ガルバノスキャナー3の水平方向に即したスペースを小さく設定し、全体としてコンパクトな配置を実現することができる。
【0052】
テーブル4の面上における複数のガルバノスキャナー3の数は、通常、以下の基本構成(1)及び(2)に即した実施例に示すように、2〜6個である。
尚、既に説明したように、以下の実施例においては、基本構成(2)に立脚した平面図を示すが、その根拠は、以下の実施例においては、基本構成(2)を採用する場合が圧倒的に多いことにある。
【実施例1】
【0053】
実施例1は、図1に示すように、放射状態を形成する領域の外側端2か所のガルバノスキャナー3における前記突設方向を、水平方向に即して180°よりも小さな交差角度に設定し、かつ当該2か所のガルバノスキャナー3のみを配置していることを特徴としている。
【0054】
実施例1は、2個のガルバノスキャナー3によるシンプルな構成でありながら、基本構成(1)及び(2)、就中基本構成(2)の特徴点を実現している。
【実施例2】
【0055】
実施例2は、図2に示すように、放射状態を形成する領域の外側端2か所のガルバノスキャナー3における前記突設方向を、水平方向に即して180°よりも小さな交差角度に設定し、かつ残1個のガルバノスキャナー3における前記突設方向を前記交差角度を2等分する方向を形成するように設定した上で、3個の各ガルバノスキャナー3において、前記のように配置された位置Pを基準として、各第2ミラー32の回動中心軸30の中央位置Qを水平方向に即して等角度方向に配置していることを特徴としている。
【0056】
実施例2は、3個のガルバノスキャナー3を等角度に配置することによって、3個の第2ミラー32からの均等な照射に基づき、基本構成(1)及び(2)、就中基本構成(2)の特徴点を実現している。
【実施例3】
【0057】
実施例3は、図3に示すように、放射状態を形成する領域の外側端2か所のガルバノスキャナー3における前記突設方向を、水平方向に即して180°よりも小さな交差角度に設定し、かつ残2個のガルバノスキャナー3における前記突設方向を前記交差角度を3等分する方向を形成するように設定した上で、4個の各ガルバノスキャナー3において、前記のように配置された位置Pを基準として、各第2ミラー32の回動中心軸30の中央位置Qを水平方向に即して等角度方向に配置していることを特徴としている。
【0058】
実施例3は、4個のガルバノスキャナー3を等角度に配置することによって、4個の第2ミラー32からの均等な照射に基づき、基本構成(1)及び(2)、就中基本構成(2)の特徴点を実現している。
【実施例4】
【0059】
実施例4は、図4に示すように、放射状態を形成する領域の外側端2か所のガルバノスキャナー3における前記突設方向を、水平方向に即して180°よりも小さな交差角度に設定し、かつ残3個のガルバノスキャナー3における前記突設方向を前記交差角度を4等分する方向を形成するように設定した上で、5個の各ガルバノスキャナー3において、前記のように配置された位置Pを基準として、各第2ミラー32の回動中心軸30の中央位置Qを水平方向に即して等角度方向に配置していることを特徴としている。
【0060】
実施例4は、5個のガルバノスキャナー3を等角度に配置することによって、5個の第2ミラー32からの均等な照射に基づき、基本構成(1)及び(2)、就中基本構成(2)の特徴点を実現している。
【実施例5】
【0061】
実施例5は、図5に示すように、放射状態を形成する領域の外側端2か所のガルバノスキャナー3における前記突設方向を、水平方向に即して180°よりも小さな交差角度に設定し、かつ残4個のガルバノスキャナー3における前記突設方向を前記交差角度を5等分する方向を形成するように設定した上で、6個の各ガルバノスキャナー3において、前記のように配置された位置Pを基準として、各第2ミラー32の回動中心軸30の中央位置Qを水平方向に即して等角度方向に配置していることを特徴としている。
【0062】
実施例5は、6個のガルバノスキャナー3を等角度に配置することによって、6個の第2ミラー32からの均等な照射に基づき、基本構成(1)及び(2)、就中基本構成(2)の特徴点を実現している。
【産業上の利用可能性】
【0063】
このように、基本構成(1)及び(2)に立脚している本発明においては、ベースとなる下方側領域の水平方向に即した中心位置がテーブル面の中心位置に該当する場合であっても、全領域における水平方向に即した中心位置が当該中心位置よりも偏差しているような三次元造形における効率的な適用を実現する一方、テーブル面のスペースを有効に活用しながら、各第2ミラーの適切な配列によって、均一な第2ミラーによる照射を実現することにおいて画期的であって、その利用範囲は広範である。
【符号の説明】
【0064】
1 レーザビーム又は電子ビームの発振源
2 ダイナミックフォーカスレンズ
3 ガルバノスキャナー
30 回動中心軸
31 第1ミラー
310 第1ミラーに対する駆動装置
32 第2ミラー
320 第2ミラーに対する駆動装置
4 テーブル
7 レーザビーム又は電子ビーム
O テーブル面の中心位置
第1ミラーの回動中心軸の中央位置から第2ミラーの回動中心軸の中央位置Qに向かう突設方向が向かう基準位置
第2ミラーの回動中心軸30における中央位置
【要約】
【課題】ベースとなる中心位置と全領域の中心位置とが偏差している三次元造形物を、複数のガルバノスキャナーによって効率的に造形し、かつテーブル面を有効に活用し得る三次元造形装置の提供。
【解決手段】
複数のガルバノスキャナー3による三次元造形装置であってガルバノスキャナー3の後端から先端に至る方向と直交する方向である第2ミラー32の回動中心軸30の中央位置Qの突設方向を、テーブル4面の中位置からガルバノスキャナー3の前記方向による寸法の1/2以下距離に配置され、三次元造形物の水平方向の中心位置と一致している位置Pかっている放射状に設定し、前記Pを通過し、かつテーブル4面を区分する概念上のアンダーラインの方向を基準として、前記Pから最も離れた位置にある放射状のスキャナーを外側端2か所のガルバノスキャナー3の領域を、前記放射状領域の外側に配列し、かつ前記課題を達成している三次元造形装置。
【選択図】図6
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11