(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(実施の形態1)
[振動アクチュエータの全体構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータを示す外観斜視図であり、
図2は、本発明の実施の形態1に係る振動アクチュエータを示す縦断面図であり、
図3は、同振動アクチュエータの分解斜視図である。また、
図4は、同振動アクチュエータの可動体と弾性支持部とを示す斜視図である。なお、本実施の形態における「上」側、「下」側は、理解しやすくするために便宜上付与したものであり、振動アクチュエータ10における可動体20の振動方向の一方、他方を意味する。すなわち、振動アクチュエータ10が電子機器(
図16及び
図17参照)に搭載される際には上下が逆になっても左右になっても構わない。
【0018】
図1〜
図4に示す振動アクチュエータ10は、電子機器、具体的には、携帯型ゲーム端末機器(例えば、
図16に示すゲームコントローラGC)、或いはスマートフォン等の携帯機器(例えば、
図17に示す携帯端末M)に振動発生源として実装され、各機器の振動機能を実現する。また、振動アクチュエータ10は、振動により音を発生する機能を有してもよい。振動アクチュエータ10は、例えば、ユーザに対して着信を通知したり、操作感や臨場感を与えたりする場合に駆動される。
【0019】
本実施の形態の振動アクチュエータ10は、
図1に示すように、円柱状の固定体50内に、可動体20(
図2参照)を、円柱状の軸方向で振動可能に収容しており、可動体20が可動することに振動アクチュエータ10自体が振動体となる。
振動アクチュエータ10は、
図2〜
図4に示すように、マグネット30及び可動体コア41、42を有する可動体20と、コイル61、62を有する固定体50と、可動体20を固定体50に対して往復動自在に支持させる板状の弾性支持部81、82と、を有する。
【0020】
振動アクチュエータ10においてコイル61、62、マグネット30及び可動体コア41、42は、可動体20を振動させる磁気回路を構成する。振動アクチュエータ10では、電源供給部(例えば、
図16及び
図17に示す駆動制御部203)の給電によりコイル61、62が通電されることで、コイル61、62とマグネット30とが協働して、可動体20が固定体50に対して振動方向に往復振動する。
【0021】
本実施の形態の振動アクチュエータ10では、可動体20は、コイル保持部52に保持されたコイル61、62の内側で、コイル61、62の軸方向、つまり、振動方向で往復移動する。具体的には、可動体20は、コイル61、62と可動体20との間に配置される内側本体部(コイル保護壁部)522の内側で、往復移動可能である。内側本体部522はコイル保持部52の一部であり、コイル保持部52についての詳細は後述する。また、コイル61、62の軸方向は、可動体20の振動方向であるとともに、マグネット30の着磁方向或いは、コイル保持部52の軸方向でもある。
【0022】
振動アクチュエータ10では、可動体20は、可動していない非振動時において、弾性支持部81、82を介して固定体50(具体的には、コイル保持部52)の振動方向の長さの中心で、且つ、可動体20の軸方向と直交する方向で、固定体50(より具体的には、コイル保持部52の内側本体部522)の内側で、所定間隔をあけて配置される。このとき、可動体20は、コイル保持部52の内側本体部522に接触しないように、コイル61、62との間で釣り合う位置に位置することが望ましい。具体的には、マグネット30および可動体コア41、42における振動方向の長さの中心が、コイル61、62間の振動方向の長さの中心と、振動方向と直交する方向で対向するように配置されることが好ましい。
【0023】
可動時(振動時)において可動体20は、内側本体部522の内周面522aに沿って振動方向に往復移動する。なお、内側本体部522と可動体20の間に、磁性流体が介在するようにしてもよい。
【0024】
<可動体20>
可動体20は、
図2〜
図4に示すように、固定体50の筒状のコイル保持部52の内側で、且つ、弾性支持部81、82により内側本体部522の内周面522aに沿って往復移動可能に支持される。この往復移動可能な方向は、コイル保持部52の開口を塞ぐケース(便宜上、以下「上ケース」という)54及びケース(便宜上、以下「下ケース」という)56が対向する方向である。
【0025】
可動体20は、マグネット30、可動体コア41、42、及びばね止め部22、24を有する。本実施の形態では、マグネット30を中心に振動方向の両側に向かって可動体コア41、42,ばね止め部22,24が連設されている。可動体20では、マグネット30及び可動体コア41、42の外周面20aが内側本体部522の内周面522aの内側で所定間隔を空けて対向されている。
可動体20が振動方向に移動する際には、外周面20aが内周面522aに沿って接触することなく往復移動する。
【0026】
マグネット30は、コイル61、62の径方向内側に、コイル61、62の径方向と直交する振動方向に相対移動可能に配置される。マグネット30は、コイル61、62に対して、コイル61、62の径方向内側で間隔を空けて位置するように配置される。ここで、「径方向」とは、コイル61、62の軸に直交する方向であり、振動方向と直交する方向でもある。この径方向における「間隔」は、内側本体部522を含むマグネット30とコイル61,62との間の間隔であり、可動体20の振動方向に互いに接触することなく移動可能な間隔である。本実施の形態では、コイル61、62とマグネット30との間隔は、コイル61、62側の内側本体部522と、マグネット30との間隔を意味している。
【0027】
また、マグネット30は、本実施の形態では、マグネット30の径方向外側で、内側本体部522の中心と、対向するように配置されている。なお、マグネット30は、コイル61、62の内側で、コイル61、62の軸の延在方向に2つの着磁面をそれぞれ向けて配置されるものであれば、筒状、板形状等のように円盤状以外の形状であってもよい。
【0028】
マグネット30は、本実施の形態では、円盤状のマグネットであり、軸方向が振動方向であるとともに、着磁方向である。マグネット30の軸方向の中心が、可動体20の軸方向の中心と一致することが望ましい。
【0029】
マグネット30は、振動方向に着磁され、振動方向で離間する表裏面30a、30bがそれぞれ異なる極性を有している。
【0030】
マグネット30の表裏面30a、30bには、それぞれ可動体コア41、42が設けられている。
【0031】
可動体コア41、42は、磁性体であり、マグネット30、コイル61、62ともに磁気回路を構成するものであり、ヨークとして機能する。可動体コア41、42は、マグネット30の磁束を集中させて、漏らすことなく効率良く流し、マグネット30とコイル61、62間に流れる磁束を効果的に分布させる。
【0032】
また、可動体コア41、42は、磁気回路の一部としての機能の他、可動体20において、可動体20の本体部分としての機能及びウェイトとしての機能を有する。
可動体コア41、42は、本実施の形態では、円環平板状に形成され、外周面をマグネット30の外周面と面一となるように配置され、マグネット30の外周面とともに可動体20の外周面20aを構成する。
【0033】
可動体コア41、42は、それぞれ積層コアであり、例えば、ケイ素鋼板を積層してなる。可動体コア41、42は、本実施の形態では同様に形成された同じ部材であり、マグネット30を中心に対称に設けられている。なお、可動体コア41、42は、マグネット30に吸引されるとともに、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化型接着剤もしくは嫌気性接着剤によりマグネット30に固定される。
【0034】
可動体コア41、42のそれぞれの中央部に形成された開口部412、422は、可動体20の軸位置を示すとともに、ばね止め部22、24との接合部として用いられる。
本実施の形態では、可動体コア41、42は、可動体20の非振動時において、コイル61、62の内側(径方向内側)で、コイル61、62の軸方向と直交する方向で、コイル61、62に対向するように位置する。
なお、可動体コア41、42は、マグネット30とともに磁気回路における可動体側磁気回路部を構成している。
【0035】
ばね止め部22、24は、可動体側磁気回路部を弾性支持部81、82に固定する機能を有する。また、ばね止め部22、24は、錘部でもあり、可動体20のウェイトとしての機能を有し、可動体20の振動出力を増加させる。
【0036】
ばね止め部22、24は、本実施の形態では、可動体コア41、42に接合する接合部222、242と、錘本体部224、244、ばね固定部226、246を有する。
【0037】
ばね止め部22、24は、本実施の形態では、接合部222、242と、錘本体部224、244及びばね固定部226、246を、それぞれ振動方向に連設し、且つ振動方向に開口する貫通孔を有した円筒形状に形成されている。なお、この貫通孔内には錘を追加することができ、これにより貫通孔は錘とともに重量調整部としての機能を有することができる。貫通孔内に錘を追加することにより可動体20を重くして、可動体20の振動出力を大きくすることができる。
【0038】
接合部222、242は、それぞれ可動体コア41、42に接合される。具体的には、接合部222、242は可動体コア41、42の開口部412、422にそれぞれ挿入されて内嵌する。接合部222、242は、開口部412、422内で、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化型接着剤や嫌気性接着剤を用いた接着により固定される。
錘本体部224、244は、接合部222、242及びばね固定部226、246よりも外径が大きい筒体であり質量も大きい。
【0039】
また、錘本体部224、244は、可動体20の振動方向で離間する両端部に設けられており、可動体20の外周側に設けられていない。これにより、錘本体部224、244が、可動体20の外周側に位置するコイルの配置スペースを限定することがなく、電磁変換の効率は低下しない。よって、好適に可動体20の重量を増加でき、高振動出力を実現できる。
【0040】
ばね固定部226は、可動体20の振動方向の一方の端部、つまり、可動体20の上側の端部で、弾性支持部81である上側板ばねの内径側の端部である内周部802(
図4参照)が接合されている。一方、ばね固定部246は、可動体の振動方向の他方の端部、つまり、可動体20の下側の端部で、弾性支持部82である下側板ばねの内径側の端部である内周部802(
図4参照)が接合されている。なお、弾性支持部81、82についての詳細な説明は後述する。
【0041】
ばね固定部226、246は、それぞれ錘本体部224、244から振動方向に突出し、その先端で、弾性支持部81、82の内周部802、802にそれぞれ接合されている。よって、弾性支持部81、82は、錘本体部224、244から突出し、錘本体部224、244に対して段差が形成されたばね固定部226、246の先端で固定されることになる。この段差により、内周部802、802から外周方向外側に延出する弾性支持部81、82の振動方向への弾性変形領域としてのクリアランスが確保されている。
【0042】
ばね止め部22、24は、錘(ウエイト)又はばねを固定するための固定部になりえる。すなわち、ばね止め部22、24は、錘(ウェイト)機能と、弾性支持部81、82を固定する機能であるばね固定機能をそれぞれ有するので、それぞれの機能を有する部材を組み立てる必要が無い。ばね止め部22、24を可動体側磁気回路部に設けるだけで、弾性支持部81、82である上側板ばね、下側板ばねを、錘機能とばね固定機能を有した状態の可動体20に、容易に組み付けることができ、組立性を高めることができる。
【0043】
なお、ばね止め部22、24は、磁性材料により構成されてもよいが、非磁性材料により構成されることが望ましい。ばね止め部22、24が非磁性材料であれば、可動体コア41からの磁束が上方に流れることがないとともに、可動体コア42からの磁束が下方に流れることがなく、効率良く可動体コア41、42の外周側に位置するコイル61、62側に流すことができる。
【0044】
また、ばね止め部22、24は、ケイ素鋼板(鋼板の比重は7.70〜7.98)等の材料よりも比重の高い材料(例えば、比重が16〜19程度)により形成されるものが好ましい。ばね止め部22、24の材料には、例えば、タングステンを適用できる。これにより、設計等において可動体20の外形寸法が設定された場合でも、可動体20の質量を比較的容易に増加させることができ、ユーザに対する十分な体感振動となる所望の振動出力を実現することができる。
【0045】
<固定体50>
固定体50は、コイル61、62の内側で、弾性支持部81、82を介して可動体20を振動方向(コイル軸方向、着磁方向と同方向)に移動自在に支持する。
固定体50は、本実施の形態では、コイル61、62の他、コイル保持部52、上ケース(「第1ケース」と称してもよい)54、下ケース(「第2ケース」と称してもよい)56及び電磁シールド部58を有する。
【0046】
コイル保持部52は、マグネット30を囲むように、所定間隔を空けて配置したコイル61、62を保持するとともに、可動体20の移動をガイドする。
コイル保持部52は、樹脂等により形成された筒状体であり、コイル61、62の径方向内側に配置され、コイル61、62とマグネット30との間に介設される内側本体部522を有する。内側本体部522は、コイル61、62の内径側でマグネット30から間隔をあけて、配置される。内側本体部522は、マグネット30とコイル61、62との接触を阻害する。
【0047】
コイル保持部52は、内側本体部522の他、内側本体部522の外周側に離間して囲むむように配置される同心の筒状体である外側本体部524と、内側本体部522と外側本体部524とを連結する中央円環部526とを有する。
【0048】
外側本体部524は、内側本体部522の外周面に配置されたコイル61,62を囲むように配置され、外側本体部524の外周面は、筒状の電磁シールド部58により覆われている。外側本体部524では、開口する両端部(上下端部)で、上下ケース54、56とともに弾性支持部81、82の外周部806を挟持しつつ、上下ケース54、56によりそれぞれ閉塞されている。外側本体部524の両端を、上下ケース54、56によりそれぞれ閉塞することにより、中空の振動アクチュエータの筐体を構成している。
【0049】
中央円環部526は、内側本体部522と外側本体部524間に、軸方向(振動方向)の中心位置で架設された円盤状をなしている。
すなわち、外側本体部524、内側本体部522及び中央円環部526は、コイル保持部52において、軸方向の両端側でそれぞれ円状に開口する断面凹状のポケット(コイル挿入部)を形成している。中央円環部526はポケットの底部を構成する。この凹状のポケット内にコイル61、62が、それぞれ収容された状態で固定されている。
【0050】
内側本体部522は筒状体であり、内周側で可動体20が軸方向に往復移動可能に配置され、内側本体部522の外周面を囲むようにコイル61、62が、軸方向(コイル軸方向)に並んで配置されている。
内側本体部522の内周面522aは、可動体20の外周面と所定間隔を空けて対向して配置されている。この所定間隔は、可動体20が、振動方向に移動する際に、内周面522aと接触することなく振動方向である軸方向に移動可能な間隔である。可動体20は、内周面522aに沿って接触することなく移動する。
【0051】
内側本体部522の厚みは、外側本体部524の厚みよりも薄い方が好ましく、移動する可動体20が接触しても、外周側のコイル61、62に何ら影響を与えない強度をする厚みである。すなわち、コイル61,62を保持するコイル保持部52としての耐久性は主に、内側本体部522の径方向の厚みと、中央円環部526の軸方向の長さと、外側本体部524の径方向の厚みとにより確保する。
【0052】
なお、コイル保持部52により、軸方向に離間して保持されるコイル61、62同士を連結するコイル線は、コイル保持部52に設けられ、断面凹状のポケット(スリット)間を連通させる案内溝(図示省略)により案内される。コイル61、62は、コイル保持部52の下部のコイル接続部521を回して外部と接続される。コイル接続部521は下ケース56の突起564上に位置する。なお、案内溝は、例えば中央円環部526の外周部に設けられる。
【0053】
コイル保持部52では、コイル61、62を、内側本体部522、外側本体部524及び中央円環部526とで形成され、軸方向の両側で開口する断面凹状のポケット(スリット)に挿入されて接着、或いは封止により、固定される。本実施の形態ではコイル61、62は、内側本体部522、外側本体部524及び中央円環部526の全てに接着により固定される。よって、コイル61、62はコイル保持部52との接合強度を大きくすることができ、大きな衝撃が加わる場合でも、可動体がコイルと直接接触する構成と比較して、コイル61、62が破損することがない。
【0054】
コイル61、62は、振動アクチュエータ10において、コイル61,62の軸方向(マグネット30の着磁方向)を振動方向として、マグネット30及び可動体コア41、42とともに、振動アクチュエータ10の駆動源の発生に用いられる。コイル61、62は、駆動時に通電され、マグネット30とともにボイスコイルモータを構成する。
【0055】
コイル61,62は、本実施の形態では自己融着線コイルにより構成されている。これにより、コイル保持部52に組み付ける際に、円筒状のまま、スリットである断面凹状のポケットに挿入して保持させることができるので、コイル線が解けることがなく、振動アクチュエータ10の組み立て性の向上が図られている。
【0056】
コイル61、62のコイル軸は、コイル保持部52の軸、或いは、マグネット30の軸と同軸上に配置されることが好ましい。
【0057】
コイル61、62は、コイル保持部52に、コイル軸方向(振動方向)の長さの中心位置が、可動体20の振動方向(具体的には、マグネット30の振動方向)の長さの中心位置と、振動方向で略同じ位置(同じ位置も含む)となるように、保持されている。なお、本実施の形態のコイル61,62は、互いに逆方向に巻回されて構成され、通電時に逆方向に電流が流れるように構成されている。
【0058】
コイル61、62の両端部は、電源供給部(例えば、
図16及び
図17に示す駆動制御部203)に接続される。例えば、コイル61、62の両端部は、交流供給部に接続され、交流供給部からコイル61、62に交流電源(交流電圧)が供給される。これにより、コイル61、62は、マグネットとの間に、互いの軸方向で互いに接離方向に移動可能な推力を発生できる。
【0059】
マグネット30において着磁方向の一方側(本実施の形態では上側)の表面30a側がN極、着磁方向の他方側(本実施の形態では下側)の裏面30b側がS極となるように着磁されている場合、マグネット30の表面30a側の可動体コア41から放射されてマグネット30の裏面30b側の可動体コア42に入射する磁束が、形成される。具体的には、マグネット30の表面側から出射し、マグネット30の上側の可動体コア41からコイル61側に放射され、電磁シールド部58を通り、コイル62を介してマグネット30の下側の可動体コア42からマグネット30へ入射する磁束の流れが形成される。このように、マグネット30及び可動体コア41、42を囲むように配置されるコイル61、62のどの部分に対しても、コイル61、62を径方向で磁束が横切る。これにより、コイル61、62に通電したときに着磁方向に沿って同じ方向(例えば、
図11で示す−f方向)にローレンツ力が作用する。
【0060】
上ケース54及び下ケース56は、それぞれ有底筒状に形成され、それぞれの底部541、561は、本実施の形態における振動アクチュエータ10の天面、底面を構成する。なお、上ケース54、下ケース56は、絞り加工により金属板を凹状に成形されてもよい。
【0061】
電磁シールド部58は、コイル保持部52の外周を覆うように配置される筒状の磁性体である。電磁シールド部58は、電磁シールドとして機能し、振動アクチュエータ10の外部への磁束漏れを防止する。この電磁シールド部58の電磁シールドの効果により、振動アクチュエータの外側への漏えい磁束の低減を図ることができる。
また、電磁シールド部58は、コイル61、62、マグネット30、可動体コア41,42とともに磁気回路としても機能するため、推力定数を大きくして電磁変換効率を高めることができる。電磁シールド部58は、マグネット30の磁気吸引力を利用して、マグネット30とともに磁気ばねとしての機能を有する。
【0062】
電磁シールド部58の内側には、電磁シールド部58の振動方向の長さの中心に、マグネット30の振動方向の中心が位置するように配置されている。これにより、
図12に示すように、非駆動時においては、マグネット30と、電磁シールド部58との間に磁気吸引力F1がそれぞれ働く。これより、
図13に示すように、可動体20が振動方向の一方に移動しすぎた場合でも、マグネット30と電磁シールド部58との間に磁気吸引力F2が発生し、可動体20は、推力F3の力により、元の位置に戻る。
【0063】
全体のばね定数は、弾性支持部81、82としての板ばねのばね定数に加え、マグネット30と電磁シールド部58による磁気ばねのばね定数が合算される。これにより、板ばねのばね定数を下げることが可能となり、結果として、板ばねの応力が低下し寿命への悪影響が抑制され、振動アクチュエータ10としての信頼性を高めることができる。
【0064】
上ケース54の底部541及び下ケース56の底部561は、円盤状体であり、それぞれの底部541、561の外周縁部から立ちあがる筒状の周壁部542、562の内側には、開口縁部よりも底部541、561に近い位置で周方向に延在する環状の段差部が設けられている(
図2参照)。
なお、本実施の形態では、周壁部542、562の外面は、コイル61、62を囲む電磁シールド部58の外面と面一となるように設けられている。これにより、振動アクチュエータ10は、フラットな外周面を有する略円柱状(樽状)に形成されており、小さく簡易な形状であるので、その設置のスペースを円柱状の簡易な形状で構成できる。
【0065】
上ケース54及び下ケース56は、それぞれ段差部でコイル保持部52の両開口端部と嵌合するとともに、開口端部とで弾性支持部81、82の外周部806を挟持して固定する。この底部541、561から段差部までの長さは、それぞれ、可動体20の可動範囲を規定できる。この可動体20の可動範囲は、弾性支持部81、82の変形により、この可動範囲内で可動体20は振動するように構成されている。
【0066】
底部541、561から、弾性支持部81、82が固定される段差部までの長さの可動体空間を介して、固定体50の上ケース54及び下ケース56は、ハードストップ(可動範囲限定)HSとなる可動範囲抑制機構としての機能を有する。すなわち、可動体空間は、弾性支持部81、82が塑性変形しない範囲の長さに規定されている。これにより、可動体20に、可動範囲を超える力が加わる場合でも、弾性支持部81、82は、塑性変形することなく、固定体50に接触するので、弾性支持部81、82が破損することなく、信頼性が高めることができる。
【0067】
<弾性支持部81、82>
弾性支持部81、82は、可動体20の振動方向で、可動体20を挟み、且つ、可動体20と固定体50との双方に振動方向と直交するように架設されており、可動体20を固定体50に対して振動方向に往復移動自在に支持する。
【0068】
弾性支持部81、82は、本実施の形態では、
図2〜
図4に示すように、可動体20において振動方向で離間する両端部で互いに離間して固定体50と接続する。
弾性支持部81、82では、可動体20の軸方向(振動方向)で離れる両端部(ばね固定部226、246)にそれぞれ対応して内周部802が嵌合され、可動体20に、外周部806側が径方向外側(放射方向)に張り出すように取り付けられる。
【0069】
弾性支持部81、82は、可動体20を、可動体20の非振動時及び振動時において、固定体50に接触しないように支持する。なお、弾性支持部81、82は、駆動時において、可動体20の内側本体部522の内周面522aに接触しても、磁気回路、具体的には、コイル61、62が損傷することはない。弾性支持部81、82は、可動体20を可動自在に弾性支持するものであれば、どのようなもので構成されてもよい。
【0070】
弾性支持部81、82は、非磁性体であってもよいし磁性体(具体的には、強磁性体)であってもよい。弾性支持部81、82は、非磁性体の板ばねであれば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼板を用いて構成されてもよい。また、弾性支持部81、82が磁性体であれば、SUS301等のステンレス鋼板を適用可能である。
【0071】
弾性支持部81、82が、振動アクチュエータにおいて、可動体20における磁気回路の磁界影響を受けにくい位置に配置されている場合では、弾性支持部81、82の材料は、非磁性材料であってもよく、磁性材料であってもよい。また、弾性支持部81、82が、可動体20における磁気回路の磁界影響を受けやすい位置に配置されている場合では、弾性支持部81、82の材料は非磁性材料であり、非磁性体とすることが好ましい。
弾性支持部81、82の材料としては、例えば、非磁性材料(例えばSUS304、SUS316)に比べて、磁性材料(例えば、SUS301)の方が、耐久性が高く、安価であることが知られている。
【0072】
本実施の形態の振動アクチュエータ10では、可動体20における磁気回路の磁界影響を受けにくい位置に、弾性支持部81、82が配置されているため、弾性支持部81、82の材料は、例えば、SUS301等の磁性材料(強磁性材料)を使用している。よって、本実施の形態では、弾性支持部81、82は、非磁性材料を用いた場合と比べて、耐久性が高く安価であり、耐久性に優れた振動アクチュエータ10を低コストで実現可能としている。
【0073】
弾性支持部81、82は、
図4に示すように、それぞれ平面状の複数の板ばねである。可動体20は、複数の弾性支持部81、82を3つ以上の板ばねとしてもよい。これら複数の板ばねは、振動方向と直交する方向に沿って取り付けられる。
【0074】
板ばねである弾性支持部81、82は、内側のばね端部である環状の内周部802と外側のばね端部である外周部806とが弾性変形する円弧状の変形アーム804により接合された形状を有する。変形アーム804の変形により、内周部802と外周部806とが、軸方向での相対的に変位する。
【0075】
弾性支持部81、82は、外周部806が固定体50に接合され、内周部802が可動体20に接合される。
弾性支持部81、82としての板ばねは、本実施の形態では、ステンレス鋼板を用いて板金加工により形成されており、より具体的には、薄い平板円盤状の渦巻型ばねとしている。弾性支持部81、82は平板状であるので、円錐状のばねよりも位置精度の向上、つまり加工精度の向上を図ることできる。
【0076】
複数の弾性支持部81、82は、本実施の形態では、渦巻きの向きが同一となる向きで、それぞれ外周側の一端である外周部806が固定体50に固定されるとともに、内周側の他端である内周部802が可動体20に固定されている。
【0077】
このように、本実施の形態では、複数の弾性支持部81、82として、渦巻き形状の板ばねを複数用いて、板ばねが、可動体20において振動方向で離間する両端部にそれぞれ取り付けられている。これにより、振動アクチュエータ10では、固定体50に対して可動体20を弾性支持する場合、可動体20の移動量が大きくなると、可動体20は、僅かではあるが回転しながら並進方向(ここでは、振動方向に対して垂直な面上の方向)に移動する。複数の板ばねの渦の方向が反対向きであれば、複数の板ばねは、互いに座屈方向ないし引っ張り方向に動くことになり、円滑な動きが妨げられることになる。
【0078】
本実施の形態の弾性支持部81、82は、渦巻きの向きが同一となるように可動体20に固定されているので、可動体20の移動量が大きくなったとしても、円滑に動く、つまり、変形することができ、より大きな振幅となり、振動出力を高めることが可能である。
【0079】
弾性支持部81、82は、可動体20において、可動体20の振動方向(本実施の形態では、上下方向)で離間する端部で、錘本体部224、244から外周部分に段差が形成されるように突出したばね固定部226、246の先端に固定されている。弾性支持部81、82は、ばね固定部226、246の先端から振動方向と直交する方向に延在するように配置されるので、段差により弾性変形領域が確保される。よって、弾性支持部として低コストで作成でき、これを用いる振動アクチュエータ自体の信頼性の向上を図ることができる。
【0080】
本実施の形態では、弾性支持部81、82と可動体20とは、可動体20の振動により外れないようにそれぞれ固定ピン26、28を介して強固に接合されている。
図2〜
図4に示す固定ピン26、28は、それぞれ、ばね固定部226、246に圧入可能な円筒状のピン本体262、282の一端側の開口縁部に、フランジ264、284を有する。
【0081】
図5A、
図5Bは、弾性支持部81、82と可動体20との結合状態を示す図である。
図5Aに示すように、板状の弾性支持部81、82を可動体20に固定する際に、弾性支持部81、82のそれぞれの内周部802を、可動体20の振動方向の端部を構成するばね固定部226、246に重ねる。次いで、固定ピン26、28のそれぞれのピン本体262、282を、板状の弾性支持部81、82の内周部802、802の開口を介してばね固定部226、246で開口する貫通孔に圧入する。
【0082】
これにより、フランジ264、284は、
図5Bに示すように、弾性支持部81、82の内周部802を、ばね固定部226、246とで挟持して、弾性支持部81、82はばね固定部226、246に強固に接合する。
【0083】
可動体20の往復移動時において、ばね固定部226、246に大きな力が加わっても、外れることがない。また、例えば、接着のみでの固定した場合よりも、繰り返しの振動に耐えることができる。
【0084】
また、弾性支持部81、82の内周部802と、ばね固定部226、246とは、溶接、接着、または、カシメ等により、更には溶接、接着、または、カシメを組み合わせて接合されてもよい。
【0085】
図6A、
図6Bは、弾性支持部81、82と可動体20との結合状態の変形例を示す図である。
図6A、
図6Bに示す可動体20は、可動体20の構成と比較して、ばね止め部22、24と同様に構成されるばね止め部22A、24Aのばね固定部226、246が、振動方向側に開口する貫通孔の周囲から突出する筒状のカシメ部228、248を有する。
カシメ部228、248は、
図6Aに示すように、弾性支持部81、82の内周部802の開口内に挿入される。筒状のカシメ部228、248の外周は、弾性支持部81、82の内周部802に内嵌する径を有することが望ましい。また、カシメ部228、248の内周部802を載置する面からの突出長は、弾性支持部81、82の厚みより長い。
【0086】
図6Aに示すように、カシメ部228、248に、内周部802、802を挿入して、カシメ部228、248を潰す等してカシメることにより、弾性支持部81、82とばね固定部226、246とは強固に接合される。この構成は、
図5に示す固定ピン26、28を用いる構成と比較して、部品点数を少なくでき,組み立て工数を減さすことができ、製作が容易になる。また、弾性支持部81、82とばね固定部226、246との接合は、カシメ接合ととともに溶接或いは接着してもよい。
【0087】
一方、弾性支持部81の外周部806は、
図2で上述したように、径方向外側で、上ケース54の周壁部542における開口部の内周側部分(内周側の段差部)と、コイル保持部52における外側本体部524の開口端とにより挟持されて固定体50に固定されている。
弾性支持部82の外周部806は、
図2に示すように、径方向外側で、コイル保持部52における外側本体部524の開口端と、下ケース56の周壁部562における開口部内側の段差部とに挟持されて固定体50に固定されている。
【0088】
このように弾性支持部81、82は、コイル保持部52の外側本体部524の上下の開口端と、これら開口端を嵌合して閉塞する上下ケース54、56とにより、振動方向と直交する方向に配置された状態で挟持されている。
【0089】
弾性支持部81、82は、本実施の形態では、変形アーム804或いは変形アーム804と外周部806に、弾性支持部81、82において発生する振動を減衰させる減衰手段としての減衰部(ダンパー)72が取り付けられている。減衰手段は、弾性支持部81、82において、共振峰を抑え、且つ、広範囲にわたる安定した振動を発生させる。
【0090】
図7は、減衰部を備えた弾性支持部81の平面図であり、
図8は、減衰部72を備えた弾性支持部の部分断面図である。なお、弾性支持部82も減衰部72を備えているが、弾性支持部81と同様に構成されているので、説明は省略する。
【0091】
本実施の形態の減衰部72は、
図7及び
図8に示すように、平行に対向して配置される一対のフランジ722の中央部同士をリブ(押し込み部)724で連結した断面H型形状のエラストマー等の弾性部材である。減衰部72は、エラストマーを板ばねである弾性支持部81のブリッジ部分、本実施の形態では、外周部806と変形アーム804との間に挿入することで双方に接触しつつ配置されている。減衰部72は、弾性支持部81に固着せずに複数取り付けられている。
【0092】
減衰手段としての減衰部72は、弾性支持部81における鋭いばね共振を減衰して、共振周波数付近での振動が著しく大きくなることで周波数による振動の差が大きくことを防止する。これにより、可動体20は、塑性変形する前に、底部541、561に接触しないように振動し、接触により異音が生じることがない。
減衰部72は、弾性支持部81(82)における鋭い振動の発生を防止するものであれば、どのような形状、材料等で形成されてもよい。
【0093】
図9及び
図10は、変形例としての減衰部72Aを備えた弾性支持部の平面図と部分断面図である。
図9及び
図10に示す減衰部72Aは、断面T型形状のエラストマーであり、板状のフランジ722と、フランジ722の中央部から突出して設けられた押し込み部724Aとを有する。
【0094】
減衰部72Aは、押し込み部724Aを弾性支持部81の一方の面側からばね部分間、具体的には外周部806と変形アーム804との間に挿入して、フランジ722を、ばね部分間に架け渡して位置させている。取付部73は、熱硬化樹脂或いは弾性支持部81に固着しない接着剤等であり、弾性支持部81の裏面側で、押し込み部724Aがばね部分間から外れないような形状で、押し込み部724Aに固定されている。
この構成により、減衰部72Aは、断面H型形状の減衰部72よりも部品コストを低減でき、減衰部72と同等の減衰効果を実現して、共振峰を抑え、広範囲にわたり安定した振動を発生できる。
【0095】
すなわち、振動アクチュエータ10では、可動体20は、ばね−マス系の振動モデルにおけるマス部に相当すると考えられるので、共振が鋭い(急峻なピークを有する)場合、振動を減衰することにより、急峻なピークを抑制する。振動を減数することにより共振が急峻では無くなり、共振時の可動体20の最大振幅値、最大移動量がばらつくことがなく、好適な安定した最大移動量による振動が出力される。
【0096】
振動アクチュエータ10では、
図11に示す磁気回路が形成される。また、振動アクチュエータ10において、コイル61、62は、コイル軸がマグネット30を振動方向で挟む可動体コア41、42らの磁束に直交するように、配置されている。したがって、
図11に示すようにコイル61、62に通電が行われると、マグネット30の磁界とコイル61、62に流れる電流との相互作用により、フレミング左手の法則に従ってコイル61、62に−f方向のローレンツ力が生じる。
【0097】
−f方向のローレンツ力は、磁界の方向とコイル61、62に流れる電流の方向に直交する方向である。コイル61、62は固定体50(コイル保持部52)に固定されているので、作用反作用の法則に則り、この−f方向のローレンツ力と反対の力が、マグネット30を有する可動体20にF方向の推力として発生する。これにより、マグネット30を有する可動体20側がF方向、つまり上ケース54の底部541側に移動する。
【0098】
また、コイル61、62の通電方向が逆方向に切り替わり、コイル61、62に通電が行われると、逆向きのF方向のローレンツ力が生じる。このF方向のローレンツ力の発生により、作用反作用の法則に則り、このF方向のローレンツ力と反対の力が、可動体20に推力(−F方向の推力)として発生し、可動体20は、−F方向、つまり、固定体50の下ケース56の底部561側に移動する。
【0099】
振動アクチュエータ10は、コイル61、62を有する固定体50と、コイル61、62の軸方向に磁化され、コイル61、62の径方向内側に配置されるマグネット30を有する可動体20と、可動体20を振動方向に移動自在に弾性保持する平板状の弾性支持部81、82と、を備える。
【0100】
また、可動体20の外周面30aとコイル61、62との間に内側本体部522が設けられており、弾性支持部81、82は、可動体20を、可動体20の非振動時及び振動時に接触しないように支持している。
【0101】
これにより、可動体20は、固定体50に対して、可動しない状態の非振動時と、可動中つまり振動時では、内側本体部522との間に隙間を空けて支持されるので、可動体20は可動中、つまり、振動中に、固定体50への接触が発生することがない。
【0102】
また、振動アクチュエータ10を落下した場合等、振動アクチュエータ10自体に衝撃が加わる場合にのみ、可動体20は、内側本体部522に接触する。すなわち、衝撃がある場合にのみ、可動体20と内側本体部522とは、可動体20の外周面20aと内側本体部522の内周面522aとの間の範囲で相対移動し、可動体20は、内側本体部522に接触して、その移動が規制される。
【0103】
このように、振動アクチュエータ10によれば、従来の振動アクチュエータと異なり、振動アクチュエータ10に衝撃が加わることで可動体20が変位して固定体の内壁に接触し、衝撃を与えることがない。つまり、衝撃により、固定体50のコイル61、62が破損することがない。また、衝撃に伴い内側本体部522により可動体20の移動が規制され、衝撃で弾性支持部81、82自体が変形することもなく、弾性支持部81、82の変形により生じる可動体20の可動不能等の不具合を解消できる。また、振動アクチュエータ10は、可動体20をシャフトに摺動させることなく往復移動させる構造であるので、可動体20の移動の際のシャフトとの摺動音は発生しないことは勿論である。
【0104】
このように振動アクチュエータ10によれば、耐衝撃性を有するとともに、振動表現力の高い好適な体感振動を出力できる。
【0105】
ここで、振動アクチュエータ10は、電源供給部(例えば、
図16及び
図17に示す駆動制御部203)からコイル61、62へ入力される交流波によって駆動される。つまり、コイル61、62の通電方向は周期的に切り替わり、可動体20には、上ケース54の底部541側のF方向の推力と下ケース56の底部561側の−F方向の推力が交互に作用する。これにより、可動体20は、振動方向(コイル61、62の径方向と直交する巻回軸方向、或いは、マグネット30の着磁方向)に振動する。
【0106】
以下に、振動アクチュエータ10の駆動原理について簡単に説明する。本実施の形態の振動アクチュエータ10では、可動体20の質量をm[kg]、ばね(ばねである弾性支持部81、82)のばね定数をK
spとした場合、可動体20は、固定体50に対して、下式(1)によって算出される共振周波数f
r[Hz]で振動する。
【0108】
可動体20は、ばね−マス系の振動モデルにおけるマス部を構成すると考えられるので、コイル61、62に可動体20の共振周波数f
rに等しい周波数の交流波が入力されると、可動体20は共振状態となる。すなわち、電源供給部からコイル61、62に対して、可動体20の共振周波数f
rと略等しい周波数の交流波を入力することにより、可動体20を効率良く振動させることができる。
【0109】
振動アクチュエータ10の駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。振動アクチュエータ10は、下式(2)で示す運動方程式及び下式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0112】
すなわち、振動アクチュエータ10における質量m[kg]、変位x(t)[m]、推力定数K
f[N/A]、電流i(t)[A]、ばね定数K
sp[N/m]、減衰係数D[N/(m/s)]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数K
e[V/(rad/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0113】
このように、振動アクチュエータ10では、可動体20の質量mと板ばねである弾性支持部81、82のばね定数K
spにより決まる共振周波数f
rに対応する交流波によりコイル61、62への通電を行った場合に、効率的に大きな振動出力を得ることができる。
【0114】
また、振動アクチュエータ10は、式(2)、(3)を満たし、式(1)で示す共振周波数を用いた共振現象により駆動する。これにより、振動アクチュエータ10では、定常状態において消費される電力は減衰部72による損失だけとなり、低消費電力で駆動、つまり、可動体20を低消費電力で直線往復振動させることができる。
【0115】
本実施の形態によれば、可動体20の上下(振動方向)に板状の弾性支持部81、82を配置しているので、可動体20を上下方向に安定して駆動すると同時に、マグネット30の上下の弾性支持部81、82から効率的にコイル61、62の磁束を分布できる。これにより、振動モータとして、高出力の振動を実現することができる。
【0116】
また、固定体50は、コイル61、62の保持機能、可動体20に対するコイル61、62の保護機能を兼ねたコイル保持部52を有する。これにより、振動アクチュエータ10が衝撃を受けた場合でも、固定体50は、その衝撃に耐えるとともに、弾性支持部81、82に変形などのダメージを与えることがない。加えて、コイル61、62に対しても、樹脂製の内側本体部522を介して衝撃が伝わるため、ダメージを抑制することができ、信頼性の高い振動アクチュエータ10となっている。
【0117】
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータを示す縦断面図であり、
図15は、本発明の実施の形態2に係る振動アクチュエータの分解斜視図である。
【0118】
図14及び
図15に示す振動アクチュエータ10Aは、
図1〜
図13に示す実施の形態1に対応する振動アクチュエータ10と同様の基本的構成を有しており、振動アクチュエータ10の構成において、コイル保持部52Aのみ変更したものである。振動アクチュエータ10Aは、振動アクチュエータ10と同様の構成については同様の作用効果を有する。以下では、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
すなわち、
図14及び
図15示す振動アクチュエータ10Aは、円柱状の固定体50A内に、可動体20Aを、円柱状の軸方向で振動可能に収容している。可動体20Aが可動することに振動アクチュエータ10A自体が振動体となる。
【0119】
振動アクチュエータ10Aは、マグネット30及び可動体コア41、42を有する可動体20Aと、コイル61、62を有する固定体50Aと、可動体20Aを固定体50Aに対して往復動自在に支持させる板状の弾性支持部81、82と、を有する。
振動アクチュエータ10Aは、マグネット30の外周を囲むように配置される筒状のコイル保持部52Aにおいて、コイル61、62をコイル保持部52Aの外周側で保持させている。
【0120】
コイル保持部52Aは、筒状をなしており、外周側に径方向外方に開口し、且つ、コイル61、62を配置する凹状のコイル取付部522Aを有する。コイル取付部522Aは、筒状部の外面から軸方向で間隔を空けて突出するリブ528A、528A、526Aにより形成されている。コイル取付部522A内に配置されたコイル61、62は、コイル保持部52Aの外周面を囲む電磁シールド部58により囲まれ、封止された状態で、コイル取付部内に接着等により固定される。なお、コイル取付部522Aは、コイル保持部52Aの外周において、周方向に延在して径方向外方に開口する凹状に形成されているので、径方向外方からコイル61、62を挿入可能なコイル挿入部としても機能する。
【0121】
コイル61、62は、コイル保持部52Aの外側からコイル線を巻線して、コイル保持部52Aに巻き付けて配置されている。よって、円筒状のコイル61、62を維持するために、自己融着線を用いずに組み立てることができ、実施の形態1と同様の作用効果を奏するとともに、コイル61、62自体の低コスト化、ひいては、振動アクチュエータ10A全体を低コスト化できる。
【0122】
(電子機器例)
図16及び
図17は、振動アクチュエータ10、10Aの実装形態の一例を示す図である。
図16は、振動アクチュエータ10をゲームコントローラGCに実装した例を示し、
図17は、振動アクチュエータ10を携帯端末Mに実装した例を示す。
【0123】
ゲームコントローラGCは、例えば、無線通信によりゲーム機本体に接続され、ユーザが握ったり把持したりすることにより使用される。ゲームコントローラGCは、ここでは矩形板状を有し、ユーザが両手でゲームコントローラGCの左右側を掴み操作するものとしている。
【0124】
ゲームコントローラGCは、振動により、ゲーム機本体からの指令をユーザに通知する。なお、ゲームコントローラGCは、図示しないが、指令通知以外の機能、例えば、ゲーム機本体に対する入力操作部を備える。
【0125】
携帯端末Mは、例えば、携帯電話やスマートフォン等の携帯通信端末である。携帯端末Mは、振動により、外部の通信装置からの着信をユーザに通知するとともに、携帯端末Mの各機能(例えば、操作感や臨場感を与える機能)を実現する。
【0126】
図16及び
図17に示すように、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mは、それぞれ、通信部201、処理部202、駆動制御部203、及び駆動部としての振動アクチュエータ10である振動アクチュエータ10B、10C、10Dを有する。なお、ゲームコントローラGCでは、複数の振動アクチュエータ10B、10Cが実装される。
【0127】
ゲームコントローラGC及び携帯端末Mにおいて、振動アクチュエータ10B、10C、10Dは、例えば、端末の主面と振動アクチュエータ10B、10C、10Dの振動方向と直交する面、ここでは下ケース56の底面とが平行となるように、実装される。端末の主面とは、ユーザの体表面に接触する面であり、本実施の形態では、ユーザの体表面に接触して振動を伝達する振動伝達面を意味する。
【0128】
具体的には、ゲームコントローラGCでは、操作するユーザの指先、指の腹、手の平等が接触する面、或いは、操作部が設けられた面と、振動方向が直交するように振動アクチュエータ10B、10Cが実装される。また、携帯端末Mの場合は、表示画面(タッチパネル面)と振動方向が直交するように振動アクチュエータ10Dが実装される。これにより、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mの主面に対して垂直な方向の振動が、ユーザに伝達される。
【0129】
通信部201は、外部の通信装置と無線通信により接続され、通信装置からの信号を受信して処理部202に出力する。ゲームコントローラGCの場合、外部の通信装置は、情報通信端末としてのゲーム機本体であり、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格に従って通信が行われる。携帯端末Mの場合、外部の通信装置は、例えば基地局であり、移動体通信規格に従って通信が行われる。
【0130】
処理部202は、入力された信号を、変換回路部(図示省略)により振動アクチュエータ10B、10C、10Dを駆動するための駆動信号に変換して駆動制御部203に出力する。なお、携帯端末Mにおいては、処理部202は、通信部201から入力される信号の他、各種機能部(図示略、例えばタッチパネル等の操作部)から入力される信号に基づいて、駆動信号を生成する。
【0131】
駆動制御部203は、振動アクチュエータ10B、10C、10Dに接続されており、振動アクチュエータ10B、10C、10Dを駆動するための回路が実装されている。駆動制御部203は、振動アクチュエータ10B、10C、10Dに対して駆動信号を供給する。
【0132】
振動アクチュエータ10B、10C、10Dは、駆動制御部203からの駆動信号に従って駆動する。具体的には、振動アクチュエータ10B、10C、10Dにおいて、可動体20は、ゲームコントローラGC及び携帯端末Mの主面に直交する方向に振動する。
【0133】
可動体20は、振動する度に、上ケース54の底部541又は下ケース56の底部561にダンパーを介して接触するようにしてもよい。この場合、可動体20の振動に伴う上ケース54の底部541又は下ケース56の底部561への衝撃、つまり、筐体への衝撃が、ダイレクトにユーザに振動として伝達される。特に、ゲームコントローラGCでは、複数の振動アクチュエータ10B、10Cが実装されているため、入力される駆動信号に応じて、複数の振動アクチュエータ10B、10Cのうちの一方、または双方を同時に駆動させることができる。
【0134】
ゲームコントローラGC又は携帯端末Mに接触するユーザの体表面には、体表面に垂直な方向の振動が伝達されるので、ユーザに対して十分な体感振動を与えることができる。ゲームコントローラGCでは、ユーザに対する体感振動を、振動アクチュエータ10B、10Cのうちの一方、または双方で付与でき、少なくとも強弱の振動を選択的に付与するといった表現力の高い振動を付与できる。
【0135】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0136】
また、例えば、本発明に係る振動アクチュエータ10、10Aは、実施の形態で示したゲームコントローラGC及び携帯端末M以外の携帯機器(例えば、タブレットPCなどの携帯情報端末、携帯型ゲーム端末、ユーザが身につけて使用するウェアラブル端末)に適用する場合に好適である。また、本発明に係る振動アクチュエータ10、10Aは、振動により音を出す振動デバイスであるエキサイタとして用いてもよい。エキサイタは、例えば、コーンを用いることなく、振動面を対象物に接触させて音を出す機能を有する振動スピーカーである。また、本発明に係る振動アクチュエータ10、10Aは、音を出すことで、外部のノイズ、例えば、ロードノイズを相殺して低減させるエキサイタとしてもよい。また、本発明に係る振動アクチュエータ10、10Aは、振動発生器として使用しても構わない。また、本実施の形態の振動アクチュエータ10、10Aは、上述した携帯機器の他、振動を必要とする美顔マッサージ器等の電動理美容器具にも用いることができる。
【0137】
2018年8月28日出願の特願2018−159790の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。