特許第6978145号(P6978145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6978145
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 17/06 20060101AFI20211125BHJP
   B05B 15/00 20180101ALI20211125BHJP
【FI】
   B05B17/06
   B05B15/00
【請求項の数】3
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2021-167535(P2021-167535)
(22)【出願日】2021年10月12日
【審査請求日】2021年10月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520088498
【氏名又は名称】株式会社空間除菌
(74)【代理人】
【識別番号】100209129
【弁理士】
【氏名又は名称】山城 正機
(72)【発明者】
【氏名】森久 康彦
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−131530(JP,A)
【文献】 特開昭63−49682(JP,A)
【文献】 特開平8−309248(JP,A)
【文献】 実開昭58−74023(JP,U)
【文献】 特開2006−136873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−17/08
B05D 1/00− 7/26
F24F 6/00− 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤を貯留可能な霧化タンク、
前記霧化タンク内で液剤を霧化して微粒子を生成する超音波振動子が配設された霧化デバイス、
所定の回転数を保持可能な送風部材を備え、搬送エアを前記霧化タンクに設けられた送風口から前記霧化タンク内に押し込む送風機、
前記霧化タンクに設けられ、前記微粒子を前記搬送エアとともに送出する送出口、
及び、前記霧化タンク内において前記超音波振動子によって発生する液剤の液柱を受けるよう配設されるバッフルプレートを備え、
前記バッフルプレートは前記送風口から供給される搬送エアを遮る向きに配置され、
前記送風機の吸込口にHEPAフィルタが装着される、
噴霧装置。
【請求項2】
前記送風口は前記霧化タンクの天面に設けられるとともに、
前記送風機は、略水平方向に延設される前記送風部材の回転軸に直交する吸い込み面を有する吸込口と、前記送風口に接続され下方に前記搬送エアを吐出する吐出口とを備える
請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記霧化タンクから液剤を排出するドレン排出機構を有する、
請求項1又は2に記載の噴霧装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液剤を空間に噴霧する噴霧装置において、微粒子を生成するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水や所定の効果を奏する液剤を霧化して、空間に噴霧する種々の噴霧装置が開発されている。
【0003】
このような噴霧装置において、噴霧された微粒子を隅々まで、かつ均等に空間内に拡散するためには、所望の粒径、特に、微粒子が空気中でブラウン運動を起こすことができる程度に小さな粒径を有する微粒子を安定して生成することが要求される。
【0004】
このような噴霧装置の一例として、例えば、コンサートホール、ライブハウス、劇場ないしは映画館などの広いスペースにおいて、除菌作用を有する液剤を大量に噴霧する必要が生じる場合がある。そのような場合において、粒子の粒径が大きいと空間の隅々まで至る前に床面に落下してしまうとともに、床面や壁面、各種電気機器を湿らせてしまうこととなり、滑りやカビ、機器の故障の原因となるため好ましくない。そのため、空気中を長時間浮遊して除菌効果を発揮するよう、ブラウン運動を起こすことができる程度の小さな粒径を有する微粒子を発生させる必要がある。
【0005】
一般的に、液剤を霧化して噴霧するためには、液剤が貯留されている霧化ユニットにおいて、超音波振動子等の振動子を用いて発生させた液柱をセパレータに衝突させて大きな液滴と小さな霧滴とに分離し、霧滴のみを送風機などから供給される搬送媒体を用いて搬送して空気中に拡散する技術が採用されている。(特許文献1、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−309248号公報
【特許文献2】実開昭60−50728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に開示された技術によると、液滴から分離された霧滴を選択的に噴霧することが可能な噴霧装置を得ることができる。しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示された技術は、超音波振動子によって霧化した粒子を空気中に噴霧することができるものの、霧化ユニットにおける細菌の繁殖の危険性については対応がなされていない。
【0008】
つまり、ファンから吸い込んだ大気を霧化ユニット内に吹き込み、霧化された粒子を吹き込まれた大気によって押し出すことで噴霧を行うものであるが、大気中には雑菌や細菌が存在しており、それら大気中の雑菌や細菌はファンを通じて霧化ユニット内に吸い込まれる。
【0009】
ところが、特許文献1や特許文献2に開示された技術では、雑菌や細菌を除去する手段がないため、吸い込まれた雑菌や細菌は霧化ユニット内で増殖し、タンク等に付着してカビの生成や汚染の原因となる。
【0010】
このような霧化ユニット内のカビや汚染を除去するためには、霧化ユニットをいったん取り外して清掃する必要があるが、そのためには専門的な知識や工具が必要であり、手間がかかる。
【0011】
本発明は、これらの課題に鑑み、霧化ユニットを取り外すことなく内部の汚染を防止することが可能であるとともに、ブラウン運動を起こすことができる程度微細な粒径を有する微粒子を生成することが可能な噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0013】
第1の特徴に係る噴霧装置は、液剤を貯留可能な霧化タンク、霧化タンク内で液剤を霧化して微粒子を生成する超音波振動子が配設された霧化デバイス、所定の回転数を保持可能な送風部材を備え、搬送エアを霧化タンクに設けられた送風口から霧化タンク内に押し込む送風機、霧化タンクに設けられ、微粒子を搬送エアとともに送出する送出口、及び、霧化タンク内において超音波振動子によって発生する液剤の液柱を受けるよう配設されるバッフルプレートを備え、バッフルプレートは送風口から供給される搬送エアを遮る向きに配置され、送風機の吸込口にHEPAフィルタが装着される。
【0014】
第1の特徴に係る発明によれば、バッフルプレートは送風口から供給される搬送エアを遮る向きに配置されているため、送風機により供給される搬送エアがバッフルプレートに衝突することで圧力損失を引き起こして搬送圧力が低下し、ブラウン運動ができる程度の微細な微粒子のみを搬送ることが可能となる。そして、バッフルプレートは搬送エアが直接吹き付けられるものの、送風機の吸込口に設置されたHEPAフィルタにより、吸い込んだ大気中に存在する細菌や雑菌が除去されるため、バッフルプレートやその周囲に細菌を付着させることなく、霧化タンク内の汚染やカビの繁殖を防止することが可能な噴霧装置を提供することができる。
【0015】
第2の特徴に係る噴霧装置は、第1の特徴に係る噴霧装置であって、送風口は霧化タンクの天面に設けられるとともに、送風機は、略水平方向に延設される送風部材の回転軸に直交する吸い込み面を有する吸込口と、送風口に接続され下方に搬送エアを吐出する吐出口とを備える。
【0016】
第2の特徴に係る発明によれば、略水平方向に延設される回転軸に直交する吸込口を有し水平方向から搬送エアを吸い込むとともに、吸込口から略直角方向に変位した下方に搬送エアを吐出する形式であるため、送風機への吸込み圧力を強く維持することができる。そのため、風量を維持しつつ大きな圧力損失を引き起こすことができ、低圧力かつ大流量の搬送エアを発生させ、ブラウン運動ができる程度の微細な微粒子を大量に生成することができる。
【0017】
このとき、強い吸引力により空気中の雑菌や細菌が送風機に吸い込まれることになるが、それら細菌類は吸込口に設置したHEPAフィルタによって除去される。特に、吸引力が強いため、吸引したエアに含まれる細菌類を確実にHEPAフィルタで捕捉することができる。
【0018】
しかも、送風部材の回転軸に直交する吸い込み面を持ち略水平方向に空気を吸い込む吸込口にHEPAフィルタが装着されているため、HEPAフィルタの設置面積を広く取ることができ、効果的に、しかも少ない圧力損失で空気中の細菌や雑菌を捕捉することが可能となる。
【0019】
第3の特徴に係る噴霧装置は、第1又は第2の特徴に係る噴霧装置であって、霧化タンクから液剤を排出するドレン排出機構を有する。
【0020】
第3の特徴に係る発明によれば、霧化タンク内に残留する液剤をドレン排出機構によって排出するだけで、霧化タンク内を清浄に保つことができる。特に、送風機の吸い込み口にHEPAフィルタを設置しているため、外気から雑菌や細菌が流入することがない。そのため、霧化タンクを取り外して清掃する必要もなく、専門知識や専用の工具がなくとも、残留液剤の排出作業のみで、霧化タンク内を清浄に維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、霧化ユニットを取り外すことなく内部の汚染を防止することが可能であるとともに、ブラウン運動を起こすことができる程度微細な粒径を有する微粒子を生成することが可能な噴霧装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A図1Aは、本実施形態に係る噴霧装置1の斜視図である。
図1B図1Bは、本実施形態に係る噴霧装置1のカバー部材80を外した状態の正面図である。
図1C図1Cは、本実施形態に係る噴霧装置1のカバー部材80を外した状態の右側面図である。
図1D図1Dは、本実施形態に係る噴霧装置1のカバー部材80を外した状態の背面図である。
図2A図2Aは、本実施形態に係る霧化ユニット10の部分拡大斜視図である。
図2B図2Bは、本実施形態に係る霧化ユニット10の使用時の状態における模式図である。
図3A図3Aは、本実施形態に係る噴霧装置1の吹き出しユニット30の斜視図である。
図3B図3Bは、本実施形態に係る噴霧装置1の吹き出しユニット30の平面図である。
図3C図3Cは、本実施形態に係る噴霧装置1の吹き出しユニット30の正面図である。
図3D図3Dは、本実施形態に係る噴霧装置1の吹き出しユニット30の底面図である。
図4A図4Aは、本実施形態に係る据付ユニット60の正面図である。
図4B図4Bは、図4AのA−A断面図である。
図4C図4Cは、本実施形態に係るベース部材61の底面図である。
図5A図5Aは、本実施形態に係るトップ部材63の、トップ部材カバー63gを外した状態における平面図である。
図5B図5Bは、図4DのA−A断面図である。
図5C図5Cは、本実施形態に係るトップ部材63の底面図である。
図5D図5Dは、本実施形態に係るトップ部材カバー63gの平面図である。
図5E図5Eは、液剤補給時におけるトップ部材63と吹き出しユニット30の斜視図である。
図6図6は、本実施形態に係る霧化装置1を使用した液剤の霧化方法のフローチャートである。
図7A図7Aは、変形例2に係る霧化ユニット10の使用時の状態における模式図を示す。
図7B図7Bは、変形例3に係る霧化ユニット10の使用時の状態における模式図を示す。
図7C図7Cは、変形例3に係る霧化ユニット10の使用時の状態における模式図を示す。
図7D図7Dは、変形例3に係る霧化ユニット10の使用時の状態における模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0024】
[噴霧装置の全体構成]
図1を用いて、本実施形態に係る噴霧装置1の全体構成を説明する。図1Aは斜視図を示し、図1Bはカバー部材80を外した状態の正面図を示し、図1Cはカバー部材80を外した状態の右側面図を示し、図1Dはカバー部材80を外した状態の背面図を示す。なお、図1Bにおいては、液位センサ15、制御ユニット50及び電源ユニット70は省略して図示し、図1Cにおいては、電源ユニット70は省略して図示する。
【0025】
図1A図1Dに示すように、本実施形態の噴霧装置1は、水や液剤を霧化して微粒子を生成し搬送する霧化ユニット10と、霧化ユニットに供給するための液剤を貯留するタンクユニット20と、霧化ユニット10で生成された微粒子を吹き出す吹き出しユニット30と、霧化ユニット10で生成された微粒子の送出及び霧化ユニット10への液剤の供給を行う供給ユニット40と、各機器の制御を行う制御ユニット50と、それぞれのユニット同士を固定する据付ユニット60と、各機器に電力を供給する電源ユニット70と、それぞれのユニットを覆うカバー部材80によって構成される。
【0026】
また、本実施形態においては、液剤として、除菌効果のある亜塩素酸水溶液を使用することを想定し、噴霧装置1は、空気中に浮遊するウィルスや細菌を死滅させる除菌装置として使用される。
【0027】
[霧化ユニット10の構成]
図1及び図2を使用して、本実施形態に係る霧化ユニット10について説明する。図2Aは霧化ユニット10の部分拡大斜視図を示し、図2Bは霧化ユニット10の使用時の様子を示す模式図である。なお、図2Aにおいては、送風機13及びHEPAフィルタ13fの図示を省略している。
【0028】
図2Aに示すように、霧化ユニット10は、所定の幅を有し液剤を貯留可能な霧化タンク11と、霧化タンク11内において液剤を霧化して微粒子を生成する超音波振動子12a、12b、12c・・・が幅方向及び奥行き方向に複数配設された霧化デバイス12と、所定の回転数を保持可能な図示しない送風部材を備え、液剤の微粒子を搬送するための搬送エアを、霧化タンク11に設けられた送風口11bから霧化タンク11内に押し出して供給する送風機13と、超音波振動子12a、12b、12c・・・によって発生する液剤の液柱を受けるよう配設される二枚のバッフルプレート14a、14bと、霧化タンク11内の液位を検知する液位センサ15とを備える。
【0029】
霧化タンク11は、タンクユニット20から供給される液剤を貯留して霧化するためのものであり、所定の幅を有する略直方体の形状を呈する。霧化タンク11の天面11dには供給口11aが形成されており、後述する供給ユニット40の液剤供給ポンプ41を介してタンクユニット20から供給された液剤が供給口11aを介して霧化タンク11内に流入する。また、霧化タンク11の天面11dには送風口11bが形成されており、送風機13からの搬送エアが送風口11bを通じて霧化タンク11内に流入する。さらに、霧化タンク11の天面11dには送出口11cが形成されており、霧化タンク11内で霧化された微粒子が搬送エアとともに送出口11cから送出される。霧化タンク11は後述する据付ユニット60の下部ベース61に、例えばねじ止めなどの周知の手段によって固定される。このとき、霧化タンク11は、据付ユニット60の六本の柱状部材62によって画定される領域の内側に配設される。なお、霧化タンク11はポリエチレンテレフタラート(PET)によって形成される。また、本実施形態においては、霧化タンク11の天面11dは、霧化タンク11の本体部分に装着される天面部材によって形成される。
【0030】
また、霧化タンク11は図示しないドレン排出機構を備える。ドレン排出機構は、霧化タンク11の側面下部に穿設された排出口と、排出口に接続されるとともに略下方に屈曲した流路と、流路途中に設けられる排出弁とによって構成される。通常の使用時においては排出弁を閉として締め切っているが、排出弁を開として解放することで、霧化タンク11内に残留する液剤を流路を経由して排出することができる。なお、霧化タンク11に接続される流路は、カバー部材80を貫通するよう構成し、流路の略下方に屈曲した部位と排出弁をカバー部材80の外方に位置させるようにしてもよい。このようにすれば、カバー部材80を取り外すことなく、残留した液剤の排出作業を行うことができる。
【0031】
霧化デバイス12は霧化タンク11内の底部に配設された複数の超音波振動子12a、12b、12c・・・を備えるデバイスであり、電源ユニット70から供給される電力によって作動して超音波を発する。本実施形態に係る霧化デバイス12は、霧化タンク11の奥行き方向にわたって2列、幅方向にわたって3列の超音波振動子12a、12b、12c、12d、12e、12fが平面状に配設されており、霧化タンク11内の広範囲にわたって液剤を霧化して微粒子を発生させる。霧化デバイス12を作動させると、液面からは配列された超音波振動子12a、12b、12c・・・ごとに、それぞれの超音波振動子12a、12b、12c・・・の上方に向けて液柱が発生する。
【0032】
送風機13は、制御ユニット50からの信号に応じて回転数を制御可能な図示しない送風部材を備えており、霧化された液剤を搬送するための搬送エアを送風口11bを通じて霧化タンク11内に供給するものであり、搬送エアを吐出する図示しない吐出口が霧化タンク11の送風口11bに接続され、下方に向けて送風可能に配設される。本実施形態において、送風機13は電源ユニット70から供給される電力によって駆動され、制御ユニット50からの信号に応じて印加電圧を変化させることで回転数を制御する。
【0033】
また、図2Bに示すように、送風機13は、略鉛直下向きの吐出口と、吐出口に直交する吸込口を有し、回転軸の軸方向から吸い込んだ空気を径方向へ吹き出す遠心ファンとして形成される。つまり、略水平に配設された図示しない送風部材の回転軸の軸方向から水平方向に空気を吸い込み、送風部材によって圧力が印可されて略鉛直下向きの吐出口から径方向に空気が押し出されて霧化タンク11内に供給される。
【0034】
本実施形態における送風機13は、略水平方向に延設される回転軸に直交する吸込口を有し水平方向から搬送エアを吸い込むとともに、吸込口から略直角方向に変位した下方に搬送エアを吐出する形式であるため、送風機への吸込み圧力を強く維持することができる。そのため、風量を維持しつつ大きな圧力損失を引き起こすことができ、低圧力かつ大流量の搬送エアを発生させ、ブラウン運動ができる程度の微細な微粒子を大量に生成することができる。
【0035】
また、このとき、送風部材の回転軸に直交する吸い込み面を持ち略水平方向に空気を吸い込む吸込口にHEPAフィルタ13fが装着されているため、HEPAフィルタ13fの設置面積を広く取ることができ、効果的に空気中の細菌や雑菌を捕捉することが可能となる。しかも、本実施形態における送風機13は送風部材の回転軸の軸方向から吸い込み径方向から吐出する遠心ファンの形式を有し吸引力が強いため、吸引したエアに含まれる細菌類を確実にHEPAフィルタで捕捉することができる。
【0036】
また、同じ細菌の除去効率を発揮するにしても、HEPAフィルタ13fの設置面積を広く取ることによって少ない圧力損失で効果を発揮することができるため、過大な送風機を設置する必要はない。特に、本発明の噴霧装置においては、後述するように、霧化タンク11に吹き込む搬送エアをバッフルプレート14a、14bに衝突させることで霧化タンク11内で圧力損失を引き起こし、ブラウン運動をすることができる小さな微粒子のみを搬送するものであるから、霧化タンク11内に供給されるよりも前に大きな圧力損失が発生することは避けなければならない。
【0037】
なお、吸込口に装着するHEPAフィルタ13fは着脱可能に形成し、定期的に洗浄できるようにすることが好ましい。
【0038】
次に、二枚のバッフルプレート14a、14bについて説明する。バッフルプレート14a、14bはステンレス鋼によって形成された平板状の部材であり、その基本的機能は、霧化デバイス12の超音波振動によって発生した液滴を大きな液滴と小さな微粒子とに分けることである。つまり、それぞれの超音波振動子12a、12b、12c・・・の上方に液柱が発生すると、液柱に含まれる粒径の大きな液滴はバッフルプレート14a、14bに衝突して下方に流れ霧化タンク11に貯留される液層に還流する。一方、液柱に含まれる粒径の小さな霧滴は、バッフルプレート14a、14b近傍に浮遊した状態となり、送風機13によって供給される搬送エアに伴い送出口11cへ搬送される。このように、バッフルプレート14a、14bの働きによって、超音波振動によって発生した粒径の大きな液滴と粒径の小さな霧滴とを分離することができる。
【0039】
このような基本的機能に加え、本実施形態に係るバッフルプレート14a、14bは、さらに、後述する機能を発揮できるよう、下記のように配設される。
【0040】
本実施形態に係るバッフルプレート14a(本発明における第一バッフルプレート)は、送風口11bの下方であって、超音波振動子のうち霧化タンク11の幅方向一端側に配設された超音波振動子12a、12dの上方に配設される。
【0041】
また、バッフルプレート14aは、一端が霧化タンク11の天面11dに接続される接続部14ac(本発明における第一接続部)を有するとともに、他端が霧化タンク11の幅方向一端側の側面と所定の間隔を隔てて配設されるエッジ部14ae(本発明における第一エッジ部)を有するよう、霧化タンク11の幅方向一端側に向けて斜め下方に傾斜して配設される。
【0042】
バッフルプレート14b(本発明における第二バッフルプレート)は、供給口11a及び送出口11cの下方であって、超音波振動子のうち霧化タンク11の幅方向他端側に配設された超音波振動子12c、12fの上方に配設される。
【0043】
また、バッフルプレート14bは、一端が霧化タンク11の天面に接続される接続部14bc(本発明における第二接続部)を有するとともに、他端が霧化タンク11の幅方向他端側、つまり、バッフルプレート14aが配設される側とは逆側の側面と所定の間隔を隔てて配設されるエッジ部14be(本発明における第二エッジ部)を有するよう、バッフルプレート14aとは逆方向、つまり、霧化タンク11の幅方向他端側に向けて斜め下方に傾斜して配設される。
【0044】
つまり、バッフルプレート14aの端部は霧化タンク11の幅方向一端側の側面と所定の間隔を隔てるよう配設され、バッフルプレート14bの端部は霧化タンク11の幅方向他端側の側面と所定の間隔を隔てるよう配設される。
【0045】
そして、送風口11bはバッフルプレート14aの接続部14acよりも幅方向一端側に設けられるとともに、送出口11cはバッフルプレート14bの接続部14bcよりも幅方向他端側に設けられる。
【0046】
液位センサ15は霧化タンク11内に貯留されている液剤の液位を検知するためのものであり、本実施形態においては霧化タンク11の外部に配設されたフロート式のものが使用される。この場合、霧化タンク11には、適宜の高さに図示しない流通孔が設けられており、流通孔を通じて液位センサ15に液剤が流入する。流通孔を通じて接続された霧化タンク11と液位センサ15は同じ圧力下におかれるため、液位センサ15内の液位と霧化タンク11内の液位は同じ値となる。このようにして、外付けの液位センサ15によって霧化タンク11の液位が検知されるが、液位を計測できるものであればこれに限ったものではない。本実施形態における液位センサ15は、所定の第一液位h1、及び、第一液位h1よりも高い第二液位h2を検知するために使用される。
【0047】
停止センサ16は、液位センサ15と同様に、霧化タンク11内に貯留されている液剤の液位を検知するためのものであるが、後述するように、噴霧装置1の運転を強制的に停止することを判別するための液位を検知するものである。
【0048】
上述の通り、霧化タンク11は、据付ユニット60の六本の柱状部材62によって画定される領域の内側に配設されるが、同様に、霧化ユニット10を構成する各機器も、六本の柱状部材62によって画定される領域の内側に配設される。言い換えると、平面で見たときに、複数の柱状部材62が最も外側に位置し、複数の柱状部材62に囲まれる領域の内側に各機器が位置するように配設される。
【0049】
[タンクユニット20の構成]
タンクユニット20は、霧化タンク11に供給する液剤を一時的に貯留しておくためのものであり、霧化ユニット10の上方に配置される。タンクユニット20は略直方体の形状を呈しており、上面には、後述するトップ部材63の液剤補給口63eに連通する流入口が開口する。また、底面には、供給ユニット40の液剤供給管42に接続される接続口が開口する。タンクユニット20は後述する据付ユニット60の六本の柱状部材62によって画定される領域の内側に配設されるよう、例えばねじ止め等の周知の手段によって柱状部材62に固定される。このとき、タンクユニット20の外面にフランジ部を設け、フランジ部において柱状部材62との接続を行うようにしてよい。タンクユニット20の略中央部には、上下方向に凹部20aが形成されており、霧化タンク11から吹き出しユニット30に微粒子と搬送エアを供給する供給パイプ43が当該凹部20aを通ることができるよう構成される。タンクユニット20の容量は、霧化タンク11の容量よりも大きく、タンクユニット20への一回の液剤の補給によって、霧化タンク11への液剤の供給を複数回にわたって行うことができるため、長時間にわたって運転を継続することが可能である。なお、タンクユニット20は、霧化タンク11と同様に、ポリエチレンテレフタラート(PET)によって形成される。
【0050】
[吹き出しユニット30の構成]
図3を用いて、吹き出しユニット30について説明する。図3Aは吹き出しユニット30の斜視図を、図3Bは吹き出しユニット30の平面図を、図3Cは吹き出しユニット30の正面図を、図3Dは吹き出しユニット30の底面図を示す。
【0051】
吹き出しユニット30は、霧化ユニット10で生成された微粒子を搬送エアとともに吹き出すためのものであり、据付ユニット60の最上部に配設されるトップ部材63から上方に突出するように設置される。吹き出しユニット30は、所定の幅、奥行き及び高さを有する無底の略筒状の吹き出し部材31によって形成され、上端には斜め上方に傾斜し、幅方向にスリット状に形成された噴霧口32を有する。吹き出し部材31の下端には、後述するトップ部材63の係止凹部63bに挿入可能な複数の図示しない係止爪部が形成される。
【0052】
吹き出し部材31の内部には、天面の内側から区画壁33が突設され、区画壁33に囲まれる領域に供給ユニット40の供給パイプ43を接続することで、霧化ユニット10からの微粒子と搬送エアが吹き出しユニット30内に流入するようになっている。この点について、図5Aに示すトップ部材63の、トップ部材カバー63gを外した状態における平面図を参照して説明すると、トップ部材63の天面には、供給ユニット40の供給パイプ43に接続される接続口63aが開口する。同時に、トップ部材63の天面には、吹き出しユニット30の下端部に形成される図示しない係止爪部が係止される係止凹部63bが形成される。そして、吹き出しユニット30の係止爪部がトップ部材63の係止凹部63bに係止されると、区画壁33の下端がトップ部材63における接続口63aの周囲にシールして密着され、区画壁33の内側領域と供給ユニット40の供給パイプ43が接続口63aを介して接続される。
【0053】
そして、区画壁33の内側領域の上端には、斜め上方に傾斜したスリット状の噴霧口32が形成され、接続口63aから区画壁33の内側領域に流入した微粒子及び搬送エアが、噴霧口32から噴霧される。
【0054】
[供給ユニット40の構成]
図1に戻り、供給ユニット40の構成について説明する。
【0055】
図1B図1Dに示すように、供給ユニット40は、タンクユニット20に貯留された液剤を霧化ユニット10に供給するための液剤供給ポンプ41と、液剤供給ポンプ41に接続されタンクユニット20と霧化ユニット10の間で液剤を流通させる液剤供給管42と、霧化ユニット10で生成された微粒子と搬送エアを噴霧ユニットに供給する供給パイプ43によって構成される。
【0056】
液剤供給管42は、タンクユニット20の底面に形成された図示しない接続口と液剤供給ポンプ41の入口とを接続するとともに、液剤供給ポンプ41の出口と霧化タンク11の天面に形成された供給口11aとを接続する。
【0057】
つまり、液剤供給ポンプ41と液剤供給管42を用いることで、タンクユニット20に貯留される液剤を、必要に応じて供給口11aから霧化タンク11内に供給することができる。
【0058】
なお、本実施形態においては、液剤供給ポンプ41としてチューブポンプが使用されるが、これに限ったものではない。
【0059】
供給パイプ43は、霧化タンク11の天面に形成された送出口11cとトップ部材63の接続口63aとを接続する。
【0060】
つまり、霧化タンク11で生成された微粒子は、搬送エアとともに送出口11cから送出され、供給パイプ43を流通してトップ部材63の接続口63aから吹き出しユニット30に形成される区画壁32の内側領域に流入した後、噴霧口31から噴霧される。
【0061】
本実施形態においては、供給パイプ43は蛇腹状のフレキシブルチューブによって構成されるが、これに限ったものではない。また、供給パイプ43はタンクユニット20の略中央部に形成された上下方向の凹部を通り、送出口11cと接続口63aとを接続する。
【0062】
[制御ユニット50の構成]
制御ユニット50は、送風機13の駆動や液剤供給ポンプ41の駆動を制御するものであり、周知の回路やスイッチ等によって構成される。
【0063】
[据付ユニット60の構成]
図4を用いて据付ユニット60について説明する。図4Aは、据付ユニット60の正面図を、図4B図4AのA−A断面図を、図4Cはベース部材61の底面図を示す。
【0064】
据付ユニット60は、上記各ユニットや部材を固定するためのものであり、下部ベース61と、複数の柱状部材62と、トップ部材63と、複数の脚部64とによって構成される。
【0065】
下部ベース61は、据付ユニット60の下端に位置する平面矩形状の板状の部材であり、霧化タンク11を固定するとともに、複数の柱状部材62下端部を固定する。本実施形態においては、下部ベース61の四辺に上方に突出する立ち上がり部61aを備え、各立ち上がり部61aにおいて、複数の柱状部材62の下端部が図示しないねじ止めによって固定されている。また、下部ベース61の四つの隅部には、噴霧装置1を床面に設置するための脚部64を接続する接続口61bが設けられる。接続口61bには雌ねじが形成されており、脚部64に形成される雄ねじ部が回動可能に接続される。
【0066】
柱状部材62は、略鉛直方向に配設される複数の柱状の部材であり、複数の柱状部材で画定される領域の内側の領域を各ユニットが配設される領域として画定するとともに、各ユニットを固定する部材である。図4Bに示すように、本実施形態においては、六本の柱状部材62を用いて各ユニットが配設される内側領域を画定する。各柱状部材62の下端部は下部ベース61の立ち上がり部61aに固定されるとともに、上端部はトップ部材63に、図示しないねじ止めによって固定される。つまり、六本の柱状部材62は、下部ベース61とトップ部材63とを接続する。なお、図4A及び図4Bにおいては、理解を補助するために、立ち上がり部61a及び柱状部材62の厚みを大きく描いている。
【0067】
そして、柱状部材62の中間部分においては、タンクユニット20や制御ユニット50等を固定するための図示しない固定部が配置される。
【0068】
特に、柱状部材62の上方においては、タンクユニット20を固定するための固定部の一つとして機能するボルトを挿通可能な図示しない挿通孔が同一高さに複数配置されており、タンクユニット20の所定高さに配設された雌ねじ部に当該ボルトをねじ止めすることで、タンクユニット20を柱状部材62に固定することができるようになっている。
【0069】
このようにして、鉛直方向に配設される複数の柱状部材62によって囲まれる領域に各機器を配設することで、各機器は縦方向に積み重なるように配設される。そして、平面で見たときに柱状部材62が最も外側に配置される部材であるため、後述するカバー部材80を柱状部材62に巻き付けるように配設することが可能となる。このとき、カバー部材80は凹凸のない形状を呈するため、カバー部材80を装着した噴霧装置1は、様々な環境に適合するすっきりとした印象を与える外観を得ることができる。
【0070】
次に、トップ部材63について、図5を用いて説明する。図5Aはトップ部材63の、トップ部材カバー63gを外した状態における平面図を、図5B図5AのA−A断面図を、図5Cはトップ部材63の底面図を、図5Dはトップ部材カバー63gの平面図を、図5Eは液剤補給時におけるトップ部材63と吹き出しユニット30の斜視図を示す。
【0071】
トップ部材63は据付ユニット60の最上部に位置する部材であり、各柱状部材62の上端部に固定されるとともに、噴霧装置1全体の最上部において吹き出しユニット30を固定する部材である。トップ部材63は、図5B及び図5Eに示すように、側壁を有する、角部に丸みを帯びた無底の平面略矩形状の筒状部材からなる。
【0072】
図5A及び図5Cに示すように、トップ部材63の天面には、供給ユニット40の供給パイプ43に接続される接続口63aが開口する。同時に、トップ部材63の天面には、吹き出し部材31の下端部に形成される図示しない係止爪部が係止される係止凹部63bが形成される。
【0073】
さらに、トップ部材63の天面には、下方に向けて局所的に高さが低くなる天面凹部63cと、天面凹部63cを覆う開閉可能な扉部63dとを備えるとともに、天面凹部63cには、タンクユニット20の上面に形成された図示しない流入口に接続される液剤補給口63eを備える。液剤補給口63eの内面には雌ねじが形成されており、雄ねじ部を有する図示しないキャップ部材が螺着されるよう構成される。
【0074】
トップ部材63と複数の柱状部材62との接続は、天面に設けられた複数のネジ穴63fから図示しないボルトを挿通し、当該ボルトを各柱状部材62の上端に設けられた図示しない雌ねじ部にねじ止めすることによって行われる。あるいは、柱状部材62に雌ねじ部を設ける代わりに、ボルトとナットを用いて接続してもよい。トップ部材63と柱状部材62を接続した後、トップ部材63の天面は、図5Eに示すように、図5Dに示すトップ部材カバー63gによって覆われる。
【0075】
[電源ユニット70の構成]
電源ユニット70は、家庭用や商用の電源に接続し、各機器に電力を供給するユニットである。具体的には、電源タップに接続するケーブルや、噴霧装置1自体の電源スイッチ71等が電源ユニット70に含まれる。
【0076】
[カバー部材80の構成]
カバー部材80は、複数の柱状部材62の周囲に配設され、各機器を覆う部材である。
【0077】
具体的には、図1Aに示すように、トップ部材63の下方から下部ベース61までの高さを覆うように複数の柱状部材62の周囲に巻き付けられて配設される。カバー部材80は弾性を有するステンレス鋼の板状部材を、曲げ加工によって屈曲することによって形成される。
【0078】
ここで、噴霧装置1を構成するにあたり、鉛直方向に配設される複数の柱状部材62によって囲まれる領域に霧化ユニット10やタンクユニット20等の各機器を配設しているため、平面で見たときに柱状部材62が最も外側に配置される。そのため、カバー部材80を柱状部材62に巻き付けるように配設することが可能となる。このとき、カバー部材80は凹凸のない形状を呈するため、カバー部材80を装着した噴霧装置1は、様々な環境に適合するすっきりとした印象を与える外観を得ることができる。
【0079】
[噴霧装置1を使用した噴霧方法]
次に、図6に示すフローチャートを用いて、本実施形態に係る霧化装置1を使用した液剤の霧化方法について説明する。
【0080】
〔ステップS100:液剤の補給〕
まず、霧化装置1を始動するに先立ち、タンクユニット20に液剤を補給する(ステップS100)。
【0081】
タンクユニット20に液剤を補給する際には、ユーザはトップ部材63の天面に設けられた開閉可能な扉部63dを開け、液剤補給口63eに装着された図示しないキャップを取り外し、天面凹部63cに形成される液剤補給口63eに液剤を流し込む。液剤を補給し終えたらキャップを締め、扉部63dを閉める。
【0082】
このように、液剤補給口63eが開閉可能な扉部63dに覆われているため、使用しないときには液剤補給口63eを扉部63で覆うことができ、すっきりとした外観を保持することができる。特に、液剤補給口63eは天面凹部63cに形成されているため、扉部63dを閉めるとトップ部材63の天面は吹き出しユニット30を除けば同一平面を有するため、とりわけ優れた外観性を発揮できる。
【0083】
〔ステップS110:液剤の供給開始〕
ステップS100においてタンクユニット20に液剤が補給されると、ユーザは電源ユニット70を構成する図示しない電源コードを一般家庭用又は商業用の電源に接続した上で、同様に電源ユニット70を構成する電源スイッチ71を入れる。電源スイッチ71を入れると、制御ユニット50は液剤供給ポンプ41を作動し、タンクユニット20に投入された液剤の、霧化タンク11への供給を開始する(ステップS110)。
【0084】
タンクユニット20に貯留された液剤の霧化タンク11への供給は下記のように行われる。つまり、制御ユニット50からの信号によって液剤供給ポンプ41が駆動し、それに伴いタンクユニット20底面に形成された図示しない接続口から液剤が流出し、液剤供給管42と液剤供給ポンプ41を通って、霧化タンク11の上面に形成された供給口11aから霧化タンク11内に流入する。
【0085】
〔ステップS120〜S130:第二液位の判定〜液剤の供給停止〕
ステップS110において液剤の供給が開始されると同時に、制御ユニット50は液位センサ15による液位の判定を開始し、霧化タンク11内の液位が所定の第二液位h2に達したかを判定する(ステップS120)。
【0086】
液位センサ15によって検知した液位が第二液位h2に達しない場合、すなわちステップS120においてNの場合、制御ユニット50は液剤供給ポンプ41による供給を継続し、第二液位h2に達した場合、すなわちステップS120においてYになると、制御ユニット50は液剤供給ポンプ41による供給を停止する(ステップS130)。
【0087】
〔ステップS140:液剤の霧化〕
ステップS130において液剤の供給が停止されると、制御ユニット50は霧化ユニット10における液剤の霧化を開始する(ステップS140)。なお、ステップS140における霧化運転の開始は、液位センサ15によって検知した液位が第一液位h1に達したことをトリガーとして行うよう制御しても構わない。その場合、霧化運転と液剤の供給が同時に行われることとなるが、早期に霧化運転を開始することができて好ましい。
【0088】
霧化ユニット10において液剤の霧化を行うに際し、制御ユニット50は送風機13による搬送エアの送風を開始するとともに、霧化デバイス12による液剤の霧化を開始する。
【0089】
霧化デバイス12の作動に伴い、図2Bに示すように、各超音波振動子12a、12b、12c・・・の上方には液柱が立ち上がる。液柱には大小様々な粒径を有する粒子が含まれるが、液柱が接触するように超音波振動子の上方において斜め下方に傾斜して配設されたバッフルプレート14a、14bに対し、液柱に含まれる粒径の大きな液滴が接触して下方に流れ、貯留されている液層に還流するとともに、粒径の小さな霧滴のみが空中に浮遊する。
【0090】
また、送風機13の作動に伴い、搬送エアが送風口11bから下方に向けて供給され、空中に浮遊する粒径の小さな霧滴を搬送して、送出口11cから送出させる。
【0091】
このとき、霧化タンク11の幅方向一端側に設けられたバッフルプレート14aは、送風口11bの下方で、かつ、幅方向一端側の超音波振動子12a、12dの上方に配設されているため、送風機13から供給される搬送エアが直接液面や液柱に到達することが防止されるとともに、液面から立ち上がる液柱や液滴が送風口11bから流入し直接送風機13に到達することが防止される。そのため、液剤の霧化や搬送エアの供給がお互いを妨げることなく機能し、それにより、粒子の粒径の選別の性能が担保される。
【0092】
また、送風機13から供給された搬送エアはバッフルプレート14aの一側の面に衝突し、バッフルプレート14aの一側の面に沿って流動するため、その際に圧力損失が発生し、粒子を搬送するための圧力が低下する。搬送エアの圧力が低下するため、バッフルプレート14a、14bに衝突することで液滴と小さな粒子とに分離された液剤から、通常搬送できる程度の大きさの粒子よりもさらに小さな微粒子のみが搬送エアによって搬送される。
【0093】
また、バッフルプレート14aの一側の面に沿って流動した搬送エアが、エッジ部14aeと霧化タンク11の一端側の面の間から流出する際に、バッフルプレート14aの他側の面、つまり液柱が接触する領域には負圧の領域が形成されるが、その負圧領域においては搬送エアの圧力が一層低下するため、粒径の非常に小さな微粒子以外は搬送することができず、下方の液面に落下することになる。そのため、ブラウン運動を起こすことができる程度に粒径の小さな微粒子のみが搬送エアによって下流側に搬送される。
【0094】
このようなメカニズムによって、単にバッフルプレートで液柱を受けるよりも微細な粒子を搬送エアによって搬送することができ、ブラウン運動を起こすことができる程度に小さな微粒子のみを選択的に噴霧することが可能な噴霧装置を提供することができる。
【0095】
また、バッフルプレート14aは、一端が霧化タンク11の天面11dに接続される接続部14ac(第一接続部)を有するとともに、他端が霧化タンク11の幅方向一端側の側面と所定の間隔を隔てるエッジ部14ae(第一エッジ部)を有するよう、斜め下方に傾斜して配設される。そして、送風機13から供給される搬送エアを霧化タンク11内の外周側を通過させるべく、内方から外方に向けて突出して配設されている。
【0096】
バッフルプレート14aのこのような構造により、送風口11bから下向きに供給された搬送エアは、バッフルプレート14aの配設方向にしたがって流れの向きを斜め下方に変化させ、霧化タンク11の一端側の側面とバッフルプレート14aのエッジ部14aeとの間に形成される間隙を通過して霧化タンク11の液層付近の底部に至る。底部に至った搬送エアは他端側の側面に向かって方向を転換し、液面近傍を霧化タンク11の他端側の側面に向かって流通する。そして、霧化タンク11の他端側の側面近傍で向きを上方に転換し、天面11dに形成された送出口11cに向けて流れる。また、一部の搬送エアは、霧化タンク11の一端側の側面とバッフルプレート14aの他端部との間に形成される間隙を通過した後、バッフルプレート14a液柱を受ける側の面に回り込んでから、霧化タンク11内に旋回流を形成し、送出口11cから流出する。
【0097】
このようにして、送風口11bから下向きに供給された搬送エアは、バッフルプレート14aの配設方向にしたがって霧化タンク11の内部でゆるやかな旋回流を形成し、一部は液柱を受ける側の面に回り込んでから、一部は霧化タンク11内の外周側を通過したうえで、送出口11bから送出される。
【0098】
そして、送風口11bから供給された搬送エアが霧化タンク11内の外周側を通過してゆるやかな旋回流を形成するため、旋回流の発生に伴う遠心力の効果によって、微細な粒子とさらに微細な微粒子とに分離され、微粒子のみが搬送エアに搬送される。
【0099】
さらに、本実施形態においては、送風口11bと送出口11cとが、霧化タンク11の天面11dであってバッフルプレート14aを挟んで互いに逆側における箇所に設けられる。
【0100】
そのため、バッフルプレート14aを挟んだ旋回流を形成することができ、旋回流による遠心分離の効果を高めることができる。
【0101】
このようにして、本実施形態における霧化ユニット10は、送風機13とバッフルプレート14aが協働することによって、ブラウン運動を起こすことができる程度に小さな微粒子のみを選択的に生成して送出することができる。
【0102】
また、本実施形態においては、バッフルプレート14bは、一端が霧化タンク11の天面に接続される接続部14bc(第二接続部)を有するとともに、他端が霧化タンク11の幅方向他端側、つまり、バッフルプレート14aが配設される側とは逆側の側面と所定の間隔を隔てるエッジ部14be(第二エッジ部)を備えるよう、バッフルプレート14aとは逆方向の斜め下方に向けて配設される。
【0103】
そして、バッフルプレート14bは送出口11cの下方で、かつ、幅方向他端側の超音波振動子12c、12fの上方に配設されている。そのため、超音波振動子12c、12fによって発生した液柱に含まれる粒径の大きな液滴がバッフルプレート14bの下面に接触して下方に流れ、貯留されている液層に還流するとともに、粒径の小さな霧滴のみが空中に浮遊する。
【0104】
このとき、搬送エアの圧力はバッフルプレート14aとの接触によって低下しているため、通常搬送できる程度の大きさの粒子よりもさらに小さな微粒子のみが搬送エアによって搬送される。このようにして、バッフルプレート14b近傍で発生した粒子に関しても、粒径の小さな微粒子のみを選別して搬送することができる。
【0105】
また、送風口11bは霧化タンク11の天面11dにおいてバッフルプレート14aの接続部14acよりも幅方向一端側に設けられるとともに、送出口11cはバッフルプレート14bの接続部14bcよりも幅方向他端側に設けられることにより、霧化タンク11内に形成される旋回流はバッフルプレート14a及びバッフルプレート14bを挟んで霧化タンク11内全体にわたって形成される大きなものとなる。そのため、搬送エアの遠心力による微粒子の選定がより強化され、ブラウン運動を起こすことができる程度に微細な微粒子のみを確実に選別して噴霧することができる。
【0106】
また、送風機13からは、吸込口に設置されたHEPAフィルタ13fで細菌や雑菌が除去された搬送エアが霧化タンク11内に押し込まれる。そのため、霧化タンク11内や供給ユニット30内などにおける雑菌や細菌による汚染を抑制することができ、頻繁な清掃やメンテナンスを実施しなくとも、霧化タンク11内や供給ユニット30内などの清潔を維持することが可能となる。
【0107】
特に、送風部材の回転軸に直交する面を持ち略水平方向に空気を吸い込む吸込口にHEPAフィルタ13fが装着されているため、HEPAフィルタ13fの設置面積を広く取ることができ、効果的に、しかも少ない圧力損失で空気中の細菌や雑菌を捕捉することが可能となる。
【0108】
ところで、バッフルプレート14aは送風口11bから供給される搬送エアを遮る向きに配置されているため、送風機13により供給される搬送エアがバッフルプレート14aに衝突することで圧力損失を引き起こして搬送圧力が低下し、ブラウン運動ができる程度の微細な微粒子のみを搬送ることが可能となる。そして、バッフルプレート14aは搬送エアが直接吹き付けられるものの、送風機13の吸込口に設置されたHEPAフィルタ13fにより、吸い込んだ大気中に存在する細菌や雑菌が除去されるため、バッフルプレート14aやその周囲に細菌を付着させることなく、霧化タンク11内の汚染やカビの繁殖を防止することが可能となる。
【0109】
また、送風機13は略水平方向に延設される回転軸に直交する吸込口を有し水平方向から搬送エアを吸い込むとともに、吸込口から略直角方向に変位した下方に搬送エアを吐出する形式であるため、送風機13への吸込み圧力を強く維持することができる。そのため、風量を維持しつつ大きな圧力損失を引き起こすことができ、低圧力かつ大流量の搬送エアを発生させ、ブラウン運動ができる程度の微細な微粒子を大量に生成することができる。
【0110】
このとき、強い吸引力により空気中の雑菌や細菌が送風機13に吸い込まれることになるが、それら細菌類は吸込口に設置したHEPAフィルタ13fによって除去される。特に、吸引力が強いため、吸引したエアに含まれる細菌類を確実にHEPAフィルタ13fで捕捉することができる。
【0111】
しかも、送風部材の回転軸に直交する吸い込み面を持ち略水平方向に空気を吸い込む吸込口にHEPAフィルタ13fが装着されているため、HEPAフィルタ13fの設置面積を広く取ることができ、効果的に、しかも少ない圧力損失で空気中の細菌や雑菌を捕捉することが可能となる。
【0112】
〔ステップS150〜S160:第一液位の判定〜液剤の補充開始〕
図6のフローチャートに戻る。ステップS140において液剤の霧化が開始されると、制御ユニット50は液位センサ15による液位の判定を開始し、霧化タンク11内の液位が、第一液位h1を下回ったかどうかを判定する(ステップS150)。
【0113】
液位センサ15によって検知した液位が第一液位h1を確保できている場合、すなわちステップS150においてNの場合、制御ユニット50はそのまま霧化を継続し、第一液位h1を下回った場合、すなわちステップS150においてYになると、制御ユニット50は液剤供給ポンプ41による液剤の補充を開始する(ステップS160)。
【0114】
ステップS160における液剤の補充は、ステップS110と同様に、液剤供給ポンプ41を作動することによって行われる。この場合、霧化運転を継続しながら、液剤供給ポンプ41による液剤の霧化タンク11への補充を同時に行うことができる。
【0115】
特に、供給口11aがバッフルプレート11bの上方に形成されているため、供給口11aから供給される液剤はバッフルプレート11bを伝って液体の状態で霧化タンク11内に貯留される液層に落下する。つまり、供給口11aから供給される液剤は超音波振動の影響を受けることなく、液層に補充される。そのため、本実施形態における微粒子の選別性能に影響を与えることなく、液剤を補充することができる。
【0116】
〔ステップS170〜S180:第二液位の判定〜液剤の供給停止〕
ステップS160において液剤の補充が開始されると同時に、制御ユニット50は液位センサ15による液位の判定を開始し、霧化タンク11内の液位が所定の第一液位h1よりも高い第二液位h2に達したかを判定する(ステップS170)。
【0117】
液位センサ15によって検知した液位が第二液位h2に達しない場合、すなわちステップS170においてNの場合、制御ユニット50は液剤供給ポンプ41による供給を継続し、第二液位h2に達した場合、すなわちステップS170においてYの場合、制御ユニット50は液剤供給ポンプ41による供給を停止する(ステップS180)。
【0118】
その後は、ユーザにより電源スイッチ71が切られるまで、再びステップS150に戻り、第一液位の判定から液剤の供給までを繰り返し行うよう制御してもよい。
【0119】
このようにすることで、霧化タンク11内の液剤の液位を第一液位h1と第二液位h2の間に保持することができ、ユーザが液位の増減を気にすることなく、自動で長時間にわたって運転を継続することができる。
【0120】
また、制御ユニット50は常時、停止センサ16を用いて、第一液位h1よりも低い第3液位h3を下回ったかどうかを判定するよう構成してもよい。停止センサ16が第3液位h3を下回ったことを検知した場合、制御ユニット50は送風機13及び霧化デバイス12の動作を直ちに停止する。
【0121】
このようにすることで、液剤が極端に少ない状況における霧化デバイス12の作動を抑制し、いわゆる空焚きを防止することができる。
【0122】
また、このとき、制御ユニット50は運転を停止すると同時に、警報音を鳴らすか、あるいは、警告灯を点灯させることで、ユーザに空焚き状態となったことを通知させるよう構成してもよい。このようにすることで、ユーザは空焚き状態になったことを認知することができる。
【0123】
[噴霧装置1を使用した粒径の調整]
次に、本実施形態における噴霧装置1を使用して噴霧する微粒子の粒径を所望の値に調整する方法について説明する。
【0124】
上述の通り、制御ユニット50は送風機13に印加する電圧を制御することによって、送風機13の送風部材の回転数を制御することができる。そして、送風部材の回転数を上げることで、噴霧口32から噴霧される微粒子の粒径を小さくすることができる。逆に、送風部材の回転数を下げることで、噴霧口から噴霧される微粒子の粒径を大きくすることができる。この送風部材の回転数変化に伴って噴霧される粒子の粒径を変化させることができるメカニズムについて、以下に説明する。
【0125】
一般には、送風部材の回転数を制御すると、回転数の変化に伴って風量が変化する。例えば、送風部材の回転数を上げると風量が増加し、回転数を下げると風量が減少する。しかしながら、風圧自体は変化しないため、搬送エアによる搬送の能力は変化せず、回転数を変化させることにより搬送可能な粒子の粒径を変化させることはできない。
【0126】
一方、本発明においては、送風機13から供給される搬送空気の送風口11bがバッフルプレート14aの上方に配設されているため、送風口11bから供給される搬送エアがバッフルプレート14aの一側の面に衝突し、圧力損失が生じる。
【0127】
搬送エアの圧力損失を引き起こした状態で送風部材の回転数を制御すると、搬送エアの風量変化に対して風圧の変化を大きくすることができる。例えば、送風部材の回転数を上げると、搬送エアの風量が増加することで、バッフルプレート14aへの接触に伴って発生する圧力損失が増加するため、搬送エアの圧力が低下し、粒子を搬送する能力が低減する。そのため、回転数を変化させる前と比して、粒径の小さな粒子を搬送することとなる。
【0128】
逆に、送風部材の回転数を下げると、搬送エアの風量は減少し、バッフルプレート14aへの接触に伴って発生する圧力損失が減少するため、搬送エアの圧力が上昇し、粒子を搬送する能力が向上する。そのため、回転数を変化させる前と比して、粒径の大きな粒子を搬送することとなる。
【0129】
このようにして、圧力損失の増減を利用して、搬送できる粒子の粒径を変化させることができる。
【0130】
また、本実施形態においては、搬送エアはバッフルプレート14aのエッジ部14aeと霧化タンク11との間に形成される間隔を通った後、バッフルプレート14aにおける液柱を受ける側の面に回り込んでから送出口11cに至るため、バッフルプレート14aの周りに送出口に向けた搬送エアの緩やかな旋回流が形成される。
【0131】
そして、送風部材の回転数を制御することによって、風量が変化するため、霧化された粒子に印加する遠心力が変化し、つまり、搬送可能な粒子の粒径を変化させることができる。例えば、送風部材の回転数を上げると、搬送エアの風量が増加することで、旋回流に随伴される粒子に印加される遠心力が増加し、粒径の比較的小さな粒子が分離されるため、粒径の非常に小さな粒子のみを搬送することとなる。
【0132】
逆に、送風部材の回転数を下げると、搬送エアの風量は減少し、旋回流に随伴される粒子に印加される遠心力が低下するため、粒子を分離する能力が弱まり、粒径の大きな粒子も搬送できるようになる。
【0133】
このようにして、制御ユニット50によって送風機13の送風部材の回転数を制御することで、所望の粒径の微粒子を噴霧口32から噴霧することが可能となる。
【0134】
<変形例1>
図6に示すフローチャートのステップS110において、液剤供給ポンプ41を用いてタンクユニット20から霧化タンク11に液剤を供給するようにしたが、液剤供給ポンプ41に代えて電磁弁を使用して液剤を供給するよう構成することも可能である。
【0135】
つまり、液剤供給管42の途中に、制御ユニット50からの信号によって開閉可能な電磁弁を配設し、制御ユニット50から開信号が発せられると電磁弁を開放して液剤を供給する。このとき、タンクユニット20が霧化タンク11の上方に配設されているため、重力を用いて液剤を供給することができ、液剤供給ポンプ41を使用するよりも迅速に、かつ、消費電力も必要なく液剤を供給することができる。特に、始動時において液剤を霧化タンク11に供給する際に重力を用いて供給することで、電源スイッチ71を入れてから霧化開始までの時間を短縮することができ、使い勝手の良い噴霧装置1を提供することができる。
【0136】
<変形例2>
図7を用いて、霧化ユニット10の構成の変形例について説明する。バッフルプレート14a、14bを、斜め下方に傾斜させて配設する代わりに、天面から鉛直下方に配設したのち霧化タンク11の側面に向けて水平方向に屈曲させて配設することができる。
【0137】
特に、図7Aに示すように、バッフルプレート14aを天面11dから鉛直下方に垂下させたのち霧化タンク11の幅方向一端側の側面に向けて水平方向に屈曲させ、エッジ部14aeを霧化タンク11の幅方向一端側の側面と所定の間隔を隔てて配置する。このようにすることで、上記と同様に、バッフルプレート14aの一側の面に送風機13からの搬送エアを接触させて圧力損失を引き起こすことができる。その結果、バッフルプレート14aの他側の面に接触した液柱から微粒子だけを搬送することができ、ブラウン運動を起こすことができる程度に小さな微粒子のみを選択的に噴霧することが可能な噴霧装置1を提供することができる。
【0138】
また、バッフルプレート14aをこのような構成にしても、搬送エアがエッジ部14aeと霧化タンク11の幅方向一端側の側面との間を通りバッフルプレート14aの下方を通るため、霧化タンク11内に旋回流を形成することができる。その結果、遠心力による分離の効果を利用して、バッフルプレート14aの他側の面に接触した液柱から微粒子だけを搬送することができ、ブラウン運動を起こすことができる程度に小さな微粒子のみを選択的に噴霧することが可能な噴霧装置1を提供することができる。
【0139】
<変形例3>
送風口11bや送出口11cを、霧化タンク11の天面11dではなく、側面に配設することができる。
【0140】
図7Bに示すように、送風口11bを霧化タンク11の幅方向一端側の側面に配設した場合であっても、エッジ部14aeの位置よりも上方に配設されれば、送風口11bから流入した搬送空気はバッフルプレート14aに接触するため、搬送エアの圧力損失を引き起こすことができ、上記と同様の効果を得ることができる。
【0141】
また、図7Cに示すように、送出口11cを霧化タンク11の幅方向他端側の側面に配設した場合であっても、エッジ部14bcの位置よりも上方に配設されれば、霧化タンク11内に旋回流を形成することができ、上記と同様の効果を得ることができる。
【0142】
また、図7Dに示すように、送風口11bを配設する位置を、吹き込んだ搬送エアがバッフルプレート14aに接触しない位置に配設するようにしてもよい。このような場合であっても、搬送エアが霧化タンク11の幅方向一端側の側面とエッジ部14aeとの間を通りバッフルプレート14aの下方を通るため、霧化タンク11内に旋回流を形成することができ、上記と同様の効果を得ることができる。
【0143】
このようにして、バッフルプレート14a、14bの配置や形状を変更したもの、あるいは、送風口11bや送出口11cの配置を変更したものであっても、本発明で説明した現象を起こすことができるものであれば、本発明の範囲に含まれる。
【0144】
以上説明された本発明の効果についてまとめると、以下のようになる。
【0145】
本発明の噴霧装置1は、液剤を貯留可能な霧化タンク11、霧化タンク11内で液剤を霧化して微粒子を生成する超音波振動子12a、12b、12c・・・が配設された霧化デバイス12、所定の回転数を保持可能な送風部材を備え、搬送エアを霧化タンクに設けられた送風口から霧化タンク内に押し込む送風機、霧化タンクに設けられ、微粒子を搬送エアとともに送出する送出口、及び、霧化タンク内において超音波振動子によって発生する液剤の液柱を受けるよう配設されるバッフルプレートを備え、バッフルプレートは送風口から供給される搬送エアを遮る向きに配置され、送風機の吸込口にHEPAフィルタが装着される。
【0146】
本発明によれば、バッフルプレートは送風口から供給される搬送エアを遮る向きに配置されているため、送風機により供給される搬送エアがバッフルプレートに衝突することで圧力損失を引き起こして搬送圧力が低下し、ブラウン運動ができる程度の微細な微粒子のみを搬送ることが可能となる。そして、バッフルプレートは搬送エアが直接吹き付けられるものの、送風機の吸込口に設置されたHEPAフィルタにより、吸い込んだ大気中に存在する細菌や雑菌が除去されるため、バッフルプレートやその周囲に細菌を付着させることなく、霧化タンク内の汚染やカビの繁殖を防止することが可能な噴霧装置を提供することができる。
【0147】
また、本発明は、送風口は霧化タンクの天面に設けられるとともに、送風機は、略水平方向に延設される送風部材の回転軸に直交する吸い込み面を有する吸込口と、送風口に接続され下方に搬送エアを吐出する吐出口とを備える。
【0148】
上記事項によれば、略水平方向に延設される回転軸に直交する吸込口を有し水平方向から搬送エアを吸い込むとともに、吸込口から略直角方向に変位した下方に搬送エアを吐出する形式であるため、送風機への吸込み圧力を強く維持することができる。そのため、風量を維持しつつ大きな圧力損失を引き起こすことができ、低圧力かつ大流量の搬送エアを発生させ、ブラウン運動ができる程度の微細な微粒子を大量に生成することができる。
【0149】
このとき、強い吸引力により空気中の雑菌や細菌が送風機に吸い込まれることになるが、それら細菌類は吸込口に設置したHEPAフィルタによって除去される。特に、吸引力が強いため、吸引したエアに含まれる細菌類を確実にHEPAフィルタで捕捉することができる。
【0150】
しかも、送風部材の回転軸に直交する吸い込み面を持ち略水平方向に空気を吸い込む吸込口にHEPAフィルタが装着されているため、HEPAフィルタの設置面積を広く取ることができ、効果的に、しかも少ない圧力損失で空気中の細菌や雑菌を捕捉することが可能となる。
【0151】
さらに、本発明は、霧化タンクから液剤を排出するドレン排出機構を有する。
【0152】
上記事項によれば、霧化タンク内に残留する液剤をドレン排出機構によって排出するだけで、霧化タンク内を清浄に保つことができる。特に、送風機の吸い込み口にHEPAフィルタを設置しているため、外気から雑菌や細菌が流入することがない。そのため、霧化タンクを取り外して清掃する必要もなく、専門知識や専用の工具がなくとも、残留液剤の排出作業のみで、霧化タンク内を清浄に維持することができる。
【0153】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0154】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0155】
例えば、HEPAフィルタだけでなく、ULPAフィルタを使用したものも、本発明の概念に含みうる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
この発明の噴霧装置は、様々な種類の液体を噴霧する、種々の噴霧装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0157】
1 噴霧装置
10 霧化ユニット
11 霧化タンク
11a 流入口
11b 送風口
11c 送出口
11d 天面
12 霧化デバイス
12a、b・・・ 超音波振動子
13 送風機
13f HEPAフィルタ
14a、b バッフルプレート
15 液位センサ
16 停止センサ
20 タンクユニット
30 吹き出しユニット
31 吹き出し部材
32 噴霧口
40 供給ユニット
50 制御ユニット
60 据付ユニット
61 下部ベース
62 柱状部材
63 トップ部材
64 脚部
70 電源ユニット
80 カバー部材

【要約】
【課題】霧化ユニットを取り外すことなく内部の汚染を防止することが可能であるとともに、ブラウン運動を起こすことができる程度微細な粒径を有する微粒子を生成することが可能な噴霧装置を提供する。
【解決手段】本発明の噴霧装置は、液剤を貯留可能な霧化タンク、霧化タンク内で液剤を霧化して微粒子を生成する超音波振動子が配設された霧化デバイス、所定の回転数を保持可能な送風部材を備え、搬送エアを霧化タンクに設けられた送風口から霧化タンク内に押し込む送風機、霧化タンクに設けられ、微粒子を搬送エアとともに送出する送出口、及び、霧化タンク内において超音波振動子によって発生する液剤の液柱を受けるよう配設されるバッフルプレートを備え、バッフルプレートは送風口から供給される搬送エアを遮る向きに配置され、送風機の吸込口にHEPAフィルタが装着される。
【選択図】図2B
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図7C
図7D