(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱材が、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性カーボン、黒鉛、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、鋼、銅、及び青銅からなる群から選択される1種又は複数種の材料を含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の装置。
前記平坦なスパイラルコイルのうちの少なくとも一つの動作を、前記平坦なスパイラルコイルのうちの少なくとも一つの他のものとは独立して制御するためのコントローラを備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様は、喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく喫煙材を加熱するための装置に用いる誘導コイル構成体であって、誘導コイル構成体が、
互いに反対向きの第1の面及び第2の面を有するプレートと、
プレートの第1の面に設置された導電材料の第1の平坦なスパイラルコイルと、
プレートの第2の面に設置された導電材料の第2の平坦なスパイラルコイルと
を備える、誘導コイル構成体を提供する。
【0004】
例示的な一実施形態では、誘導コイル構成体は、第1の平坦なスパイラルコイルを第2の平坦なスパイラルコイルに電気的に接続する導電コネクタを備える。例示的な一実施形態では、導電コネクタは第1の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部から第2の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部へ延びる。
【0005】
例示的な一実施形態では、誘導コイル構成体の一方の側から観察した場合に、第1の平坦なスパイラルコイルは第1の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部から時計回りの経路をたどり、第2の平坦なスパイラルコイルは第2の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部から反時計回りの経路をたどる。
【0006】
例示的な一実施形態では、誘導コイル構成体は積層体を備え、この積層体は、第1の平坦なスパイラルコイルを含む第1の層、及び第2の平坦なスパイラルコイルを含む第2の層を有する。第1及び第2の層は、積層体の中間層等によって、離間されていてもよい。中間層が設けられているときには、中間層は電気絶縁性であるべきである。例示的な一実施形態では、積層体はプリント回路板であるか、又はそれを含む。
【0007】
例示的な一実施形態では、第1及び第2の平坦なスパイラルコイルの各々は、方形等の矩形コイルである。別の例示的な実施形態では、第1及び第2の平坦なスパイラルコイルの各々は円形コイルである。
【0008】
例示的な一実施形態では、第1及び第2の平坦なスパイラルコイルは互いに軸線方向に整列している。
【0009】
例示的な一実施形態では、プレートは平坦状であるか、又は実質的に平坦状である。
【0010】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に係る複数の誘導コイル構成体と、誘導コイル構成体を互いに対して所定の位置に固定するために誘導コイル構成体の対応のプレートが接続される保持器とを備える構造体を提供する。
【0011】
例示的な一実施形態では、保持器は、平坦なスパイラルコイルの動作を制御するためのコントローラを含むか、又は収容する。例示的な一実施形態では、コントローラは、平坦なスパイラルコイルのうちの少なくとも一つの動作を、平坦なスパイラルコイルのうちの少なくとも一つの他のものとは独立して制御するためのものである。
【0012】
本発明の第3の態様は、喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく喫煙材を加熱するための装置を提供するものであり、この装置は、本発明の第1の態様による誘導コイル構成体、又は本発明の第2の態様による構造体を備える。
【0013】
例示的な一実施形態では、装置はタバコ加熱製品である。
【0014】
本発明の第4の態様は、喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく喫煙材を加熱するための装置であって、
喫煙材を含む一つ以上の物品を受容するための加熱ゾーンと、
使用時に加熱ゾーンの対応の長手方向部分に侵入する変動磁場を発生するための磁場発生器と
を備え、磁場発生器が、導電材料の複数の平坦なスパイラルコイルを含み、スパイラルコイルが、加熱ゾーンの長手方向軸線に沿って連続的に、それぞれ対応の平面に配置されている装置を提供する。
【0015】
例示的な一実施形態では、平面は互いに平行であるか、又は実質的に平行である。
【0016】
例示的な一実施形態では、加熱ゾーンは複数の平坦なスパイラルコイルの各々の内部の孔を貫いて延びる。
【0017】
例示的な一実施形態では、装置は、喫煙材を含む物品を平坦なスパイラルコイル内の孔内において支持するための、細長い支持体等の、支持体を有する。例示的な一実施形態では、支持体は管状であり、加熱ゾーンを取り囲む。他の実施形態では、支持体は非管状である。
【0018】
例示的な一実施形態では、装置は、加熱ゾーンを加熱するための変動磁場のうちの一つ以上の侵入によって加熱可能である加熱材を含む加熱要素を有する。例示的な一実施形態では、支持体は加熱要素であるか、又はそれを含む。
【0019】
例示的な一実施形態では、加熱材は、導電材料、磁性材料、及び磁性導電材料からなる群から選択される1種又は複数種の材料を含む。
【0020】
例示的な一実施形態では、加熱材は金属又は金属合金を含む。
【0021】
例示的な一実施形態では、加熱材は、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性カーボン、黒鉛、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、鋼、銅、及び青銅からなる群から選択される1種又は複数種の材料を含む。
【0022】
例示的な一実施形態では、装置は、平坦なスパイラルコイルのうちの少なくとも一つの動作を、平坦なスパイラルコイルのうちの少なくとも一つの他のものとは独立して制御するためのコントローラを備える。
【0023】
例示的な一実施形態では、磁場発生器は本発明の第1の態様の誘導コイル構成体を含む。したがって、磁場発生器の導電材料の複数の平坦なスパイラルコイルは誘導コイル構成体の導電材料の第1及び第2の平坦なスパイラルコイルを含む。
【0024】
例示的な一実施形態では、磁場発生器は本発明の第2の態様の構造体を含む。
【0025】
例示的な一実施形態では、装置は、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく喫煙材を加熱するためのものである。
【0026】
例示的な一実施形態では、装置はタバコ加熱製品である。
【0027】
本発明の第5の態様は、喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく喫煙材を加熱するためのシステムであって、
本発明の第4の態様に係る装置と、
喫煙材を含み、装置の加熱ゾーン内に配置するための物品と
を備えるシステムを提供する。
【0028】
例示的な一実施形態では、物品は細長い。
【0029】
次に、添付の図面を参照して本発明の実施形態を単なる例として説明する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本書で使用するとき、用語「喫煙材」は、加熱時に、通例、蒸気又はエアロゾルの形態で揮発成分を提供する材料を含む。「喫煙材」は非タバコ含有材料であってもよいし、タバコ含有材料であってもよい。「喫煙材」は、例えば、タバコ自体、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコ、タバコ抽出物、均質化タバコ、又はタバコ代替品のうちの一つ以上を含んでもよい。喫煙材は、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生喫煙材、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊、或いは同様のものの形態とすることが可能である。「喫煙材」はまた他の非タバコ製品を含んでもよく、この非タバコ製品は、製品に依存して、ニコチンを含有してもよいし、含有しなくてもよい。「喫煙材」は、グリセロール又はプロピレングリコール等の1種又は複数種の保湿剤を含んでもよい。
【0032】
本書で使用するとき、用語「ヒータ材」又は「加熱材」は、変動磁場の侵入によって加熱可能である材料を指す。
【0033】
誘導加熱は、導電物体が、物体に変動磁場を侵入させることによって加熱されるプロセスである。このプロセスは、ファラデーの誘導の法則及びオームの法則によって説明される。誘導ヒータは、電磁石と、交番電流等の変動電流を電磁石に流すためのデバイスとを備えることができる。電磁石と、加熱されるべき物体とは、電磁石によって生成された合成変動磁場が物体に侵入するよう、適切に相対的に位置付けられると、一つ以上の渦電流が物体の内部で発生する。物体は電流の流れに対する抵抗を有する。したがって、このような渦電流が物体内で発生すると、渦電流が物体の電気抵抗に抗して流れ、それによって物体は加熱される。このプロセスは、ジュール加熱、オーム加熱、又は抵抗加熱と呼ばれる。誘導加熱することができる物体はサセプタとして知られている。
【0034】
サセプタが、閉じた電気回路の形になっている時には、使用時におけるサセプタと電磁石との間の磁気結合が強くなり、その結果、ジュール加熱が増大し、又は改善されることが分かっている。
【0035】
磁気ヒステリシス加熱は、磁性材料で作製された物体に変動磁場が侵入することによって物体を加熱するプロセスである。磁性材料は、原子スケールの磁石、すなわち磁気双極子を多く含むと考えることができる。磁場がこのような材料に侵入すると、磁気双極子は磁場に沿って整列する。したがって、例えば、電磁石によって生成された時の、交番磁場等の変動磁場が磁性材料に侵入すると、磁気双極子の配向は、変動する印加磁場に応じて変化する。このような磁気双極子の再配向によって、熱が磁性材料内に発生する。
【0036】
物体が導電性及び磁性の両方を有するときには、物体に変動磁場を侵入させると、ジュール加熱及び磁気ヒステリシス加熱の両方を物体内に生じさせることができる。さらに、磁性材料の使用は磁場を強めることができ、これがジュール加熱及び磁気ヒステリシス加熱を強めることができる。
【0037】
上述のプロセスの各々において、熱は、外部熱源によって熱伝導によって発生するのではなく、物体自体の内部で発生するため、特に、好適な物体材料及び幾何形状、並びに好適な変動磁場の大きさ及び物体に対する配向の選択を通じて、物体内における急速な温度上昇、及びより均一な熱分布を達成することができる。さらに、誘導加熱及び磁気ヒステリシス加熱は、変動磁場の源と物体との間に物理的な接続部を設ける必要がないため、設計の自由度が広がり、加熱プロファイルをよりよく制御でき、コストをより低くすることができる。
【0038】
図1及び
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る誘導コイル構成体の一例の概略斜視図及び断面図が示されている。誘導コイル構成体10は、
図5に示され、以下で述べる装置100等の、喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく喫煙材を加熱するための装置に用いるものである。
【0039】
誘導コイル構成体1は、基板、パネル又はプレート10と、銅等の導電材料の二つの平坦なスパイラルコイル21、22とを備える。使用時には、以下でより詳細に説明するように、加熱要素に侵入し、加熱要素を加熱せるために利用可能である変動(例えば、交番)磁場を作り出すべく、変動(例えば、交番)電流がコイル21、22の各々に流される。
【0040】
プレート10は、第1の面11と、その反対側の第2の面12とを有する。プレート10の第1の面11及び第2の面12は互いに背を向けている。本実施形態では、プレート10は実質的に平坦状であり、第1及び第2の面11、12はプレート10の主面である。プレート10は、コイル21、22を互いに電気的に絶縁するために、プラスチック材料等の非導電材料から作製されるべきである。本実施形態では、プレート10は、難燃性であるエポキシ樹脂バインダを有するガラス繊維織布で構成された複合材料であるFR−4から作製されている。導電材料からなる複数の平坦なスパイラルコイルのうちの第1のもの21はプレート10の第1の面11に設置されており、導電材料からなる複数の平坦なスパイラルコイルのうちの第2のもの22はプレート10の第2の面12に設置されている。したがって、プレート10はコイル21、22の間に位置する。
【0041】
コイル21、22は任意の好適な方法でプレート10に付着され得る。本実施形態では、誘導コイル構成体1はプリント回路板(printed circuit board、PCB)から形成され、したがって、第1及び第2の平坦なスパイラルコイル21、22は、PCBの作製中に導電材料を基板又はプレート10のそれぞれの第1及び第2の面11、12に印刷し、次に、第1及び第2の平坦なスパイラルコイル21、22の形の導電材料のパターンがプレート10上に残るよう、導電材料の選択部分を(エッチング等によって)除去することによって形成されている。したがって、第1及び第2の平坦なスパイラルコイル21、22は、プレート10上の導電材料の薄いフィルム又はコーティングである。
【0042】
したがって、本実施形態の誘導コイル構成体1は、第1の層(第1の平坦なスパイラルコイル21を含む)、第2の層(第2の平坦なスパイラルコイル22を含む)、及び第1と第2の層との間の中間の第3の層(プレート10)を有する積層体を備える。このため、プレート10は第1及び第2の層を離間している。プレート10が非導電材料で作製されているため、コイル21、22は(後で説明する導電コネクタ30以外は)互いに電気的に絶縁されている。すなわち、コイル21、22は互いに接触していない。他の実施形態では、コイル21、22は、コイル21、22の間の空隙等によって、異なる様態で互いに電気的に絶縁されてもよい。実施形態によっては、コイル21、22は、前もって形成され、その後、プレート10に付着させること等によって、任意の他の好適な態様でプレート10上に設けられ得る。
【0043】
いくつかの実施形態においては、プレート10はPCBの層以外であり場合がある。例えば、プレート10は、乾燥、硬化、又は凝固した、樹脂又は接着剤等の材料の層又はシートであり得る。
【0044】
上述したとおりの薄い印刷された導電材料から形成されたコイルの使用は、リッツ線の必要性をなくす。後者は、より高い励起周波数において減少する表皮深さの影響を克服するために、組紐状に寄せ集められたきわめて薄いワイヤの多数の素線で構成されたものである。PCB上の線路が薄いため(通例、1Oz Cuの場合には、厚さ38um前後、及び2Oz Cuの場合には、厚さ76um前後)、高い周波数におけるそれらの性能は、同等の断面積のリッツ線に匹敵することができ、しかも、脆性、リッツ線を整形すること、又はリッツ線を他の構成要素に接続することに関連して生じる問題を有しない。
【0045】
第1及び第2の平坦なスパイラルコイル21、22はプレート10上で露出しており、これは、使用時にコイル21、22内で発生した任意の熱の放散を可能にすることを助ける。しかし、他の実施形態では、第1及び第2の平坦なスパイラルコイル21、22は、代わりに、輸送時、保管時、及び使用時にコイル21、22を損傷から保護するのを助けるために、プレート10を形成する材料内に埋め込まれていてもよい。
【0046】
本実施形態では、誘導コイル構成体1は、第1の平坦なスパイラルコイル21を第2の平坦なスパイラルコイル22に電気的に接続する導電コネクタ30を有する。より具体的には、導電コネクタ30は第1の平坦なスパイラルコイル21の半径方向内側端部21aから第2の平坦なスパイラルコイル22の半径方向内側端部22aへ延び、以て、コイル21、22を直列接続する。本実施形態では、導電コネクタ30は、当業者によって理解されるであろう態様で、PCBのプレート10を貫く「ビア」として形成されている。他の実施形態では、導電コネクタ30は、プレート10の内部又は外部にある導電リード又はワイヤ等の、異なる形態を取り得る。
【0047】
本実施形態では、平坦なスパイラルコイル21、22は、それぞれの実質的に平行な平面内に配置されている。すなわち、平坦なスパイラルコイル21、22の各々は、コイル21、22が存在する平面と直交する(変化する)半径を有する。さらに、平坦なスパイラルコイル21、22は互いに軸線方向に整列している。すなわち、コイル21、22のうちの一方の経路が発出する仮想点は、コイル21、22のうちの他方の経路が発出する仮想点と同じ軸線上に載っており、軸線は、コイル21、22が存在するそれぞれの平面の各々と直交する。さらに、本実施形態では、誘導コイル構成体1の一方の側から観察されると、第1の平坦なスパイラルコイル21は第1の平坦なスパイラルコイル21の半径方向内側端部21aから時計回りの経路をたどり、第2の平坦なスパイラルコイル22は第2の平坦なスパイラルコイル22の半径方向内側端部22aから反時計回りの経路をたどる。この構成では、使用時にコイル21、22によって発生される磁場は互いを強化し合い、コイル21、22のインダクタンスを実効的に2倍にし、コイル軸線に沿った磁場を2倍にする。
【0048】
図1及び
図2に示されるように、穴13がプレート10の第1の面11からプレート10の第2の面12へプレート10を完全に貫いて延びている。さらに、平坦なスパイラルコイル21、22の各々は、プレート10を貫く穴13と実質的に整列した孔の周りに巻回されている。すなわち、平坦なスパイラルコイル21、22の各々の中心に孔が存在する。穴13及び孔の各々は貫通孔である。使用時にコイル21、22によって発生される変動磁場は、以下においてより詳細に説明されるように、穴13内、及び/又は孔の一方若しくは両方内に位置する加熱要素に侵入させるために用いることができる。
【0049】
プレート10の第1及び第2の面11、12から測定した時の、第1及び第2の平坦なスパイラルコイル21、22の各々の厚さは、例えば、約70マイクロメートル、約100マイクロメートル、又は約140マイクロメートルのように、50マイクロメートルよりも大きく200マイクロメートルよりも小さいものであり得る。他の実施形態では、コイル21、22のうちの一方又は各々は、50マイクロメートルよりも小さく、又は200マイクロメートルよりも大きな厚さを有し得る。選定される厚さは、コイル21、22の抵抗、及びコイル21、22が使用時に自己加熱する程度を決定するのを助けることになる。プレート10の第1及び第2の面11、12の間で測定した時のプレート10の厚さは、例えば、1ミリメートル未満等、2ミリメートル未満であり得る。
【0050】
原理上は、3本以上の平坦なスパイラルコイルをPCBのそれぞれの層内に設けることができるであろうが、熱伝導のゆえに、PCBの外側の層は、PCBのいずれの内側の層よりも2〜3倍大きい電流容量を有する。したがって、上述されたもの等の二重コイル構造体は性能と複雑さとの間のバランスをもたらす。さらに、本実施形態では、コイル21、22の各々は、丸い、又は円形の平坦なスパイラルコイルである。他の実施形態では、コイル21、22のうちの一つ又は各々は、代わりに、矩形(例えば、方形)の平坦なスパイラルコイルとすることができるであろう。矩形プロファイルのコイルは、所与のプロファイルについて若干高いインダクタンスを有するが、円形コイルはより容易に交互配置することができ、及び/又はコイル間に構成要素を挿入することができ、PCB領域の利用の全体的な増大をもたらす。矩形プロファイルはまた、コイル軸線に沿った所与の磁場強度のためにより長い線路長を必要とする。これは、同様の幅の円形コイルと比べて、抵抗を増大させ、Q値を低下させる。
【0051】
いくつかの実施形態では、上述の誘導コイル構成体のうちの二つ以上は、誘導コイル構成体が接続される保持器、又は取り付けられる保持器も含む構造体の一部分として提供される。保持器は、誘導コイル構成体を、互いに対して、保持器に対して、及び/又は保持器に固定された任意の他の構成要素に対して、固定された位置に保持し得る。
【0052】
例えば、
図3及び
図4は、本発明の一実施形態に係る構造体の一例の概略斜視図及び断面図を示す。構造体50は、
図5に示され、以下で述べる装置100等の、喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく喫煙材を加熱するための装置に用いるものである。
【0053】
本実施形態の構造体50は、各々、
図1及び
図2に示される誘導コイル構成体1と同一である、第1〜第5の誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eを備える。構造体50は、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eを互いに対して所定の位置に固定するために誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eのそれぞれのプレート10が取り付けられる保持器52をさらに備える。本実施形態では、保持器52は、3D印刷されたSLS(selective laser sintering、選択的レーザー焼結)ナイロンである。他の実施形態では、保持器2は、PCBから、又は任意の他の好適な材料から形成される等、任意の他の好適な方法で形成され得る。本実施形態では、保持器52は基部54を含み、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eは、基部54の表面と直交する方向又は垂直な方向に、基部54から離れるよう延びている。
【0054】
本実施形態では、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eは保持器52とは別個の構成要素であり、構造体50の形成中に保持器52とともに一体に組み立てられる。誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eの各々は、コイル21、22を電気回路に電気的に接続すると同時に、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eを保持器52に固定するための電気コネクタ23を備える。他の実施形態では、構成体1a、1b、1c、1d、1eの各々は、コイル21、22を電気回路に接続するための電気コネクタと、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eを保持器52に固定するための一つ以上の追加の構造コネクタ(単数又は複数)とを備え得る。本実施形態のなおさらなる変形形態では、保持器52は、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eのプレート10と(場合によっては、コイル21、22とも)一体に形成され得る。
【0055】
図3及び
図4に示されるように、保持器52は、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eの平坦なスパイラルコイル21、22が軸線A−Aに沿って連続的にそれぞれの平面内に配置されるよう、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eを互いに対して保持する。本実施形態では、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eの平坦なスパイラルコイル21、22は、各々、軸線A−Aと直交するそれぞれの実質的に平行な平面内にある。さらに、コイル21、22の経路が発出するそれぞれの仮想点が全て、共通の軸線、この場合には、軸線A−A上にあるため、平坦なスパイラルコイル21、22は全て、互いに軸線方向に整列している。加えて、それぞれのプレート10を貫く孔13は全て、互いに軸線方向に整列しており、全て、コイル21、22の経路が発出するそれぞれの仮想点と同じ軸線A−A上にある。
【0056】
本実施形態では、構造体50は、平坦なスパイラルコイル21、22の動作を制御するためのコントローラ(図示せず)を備える。コントローラは保持器52内に収容されており、集積回路(IC)を含むが、他の実施形態では、コントローラは異なる形態を取り得る。実施形態によっては、コントローラは、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eのうちの少なくとも一つの動作を、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eのうちの少なくとも一つの他のものとは独立して制御するためのものである。例えば、コントローラは、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eの各々のコイル21、22に、他の誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eのコイル21、22とは独立して電力を供給し得る。実施形態によっては、コントローラは、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eの各々のコイル21、22に電力を順次供給し得る。或いはまた、少なくとも一つの動作モードにおいて、コントローラは、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eの全ての動作を同時に制御するためのものとしてもよい。
【0057】
保持器52は、基部54の表面と直交する方向又は垂直な方向で且つ誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eと実質的に平行な方向に、基部54から離れるよう延びる三つのアーム55、56、57をさらに含む。本実施形態では、アーム55、56、57は、3D印刷されたSLS(選択的レーザー焼結)ナイロンであり、基部52と一体になっている。他の実施形態では、アーム55、56、57は、基部54とともに一体に組み立てられる、基部54とは別個の構成要素としてもよい。
【0058】
アーム55、56、57の各々は、アームを貫く開口部55a、56a、57aを有し、開口部55a、56a、57aの各々の内部に環状のワッシャ又はシム55b、56b、57bが配置されている。シム55b、56b、57bの各々は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はガラス等の、誘電性又は電気絶縁性材料から作製されている。PEEKは、ほとんどの他の熱可塑性プラスチックと比べて比較的高い融点を有し、熱劣化に対する抵抗性が高い。シム55b、56b、57bの各々は、シムを貫く孔55c、56c、57cを画定している。孔55c、56c、57cは全て、コイル21、22の経路が発出するそれぞれの仮想点と同じ軸線A−A上にある。
【0059】
構造体50は、喫煙材を含む物品を使用時に支持するための細長い支持体130をさらに含む。本実施形態では、支持体130は管状であり、軸線A−Aと同軸である長手方向軸線を有する。他の実施形態では、支持体130は非管状であってもよい。支持体130は、シム55b、56b、57bによって所定位置に保持され、複数の平坦なスパイラルコイル21、22内の孔を通り、シム55b、56b、57b内の孔55c、56c、57cを貫き、アーム55、56、57内の開口部55a、56a、57aを通り、プレート10内の穴13を貫いて延びている。シム55b、56b、57bは、細長い支持体130が誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1e、特にそれらのコイル21、22に接触することを防止するのを助ける。
【0060】
本実施形態では、支持体130は、支持体130の内容積部を加熱するための変動磁場の侵入によって加熱可能である加熱材を含む。より具体的には、使用時、コイル21、22によって発生されたそれぞれの変動磁場は支持体130に侵入する。したがって、加熱要素130のそれぞれの部分は、それぞれの変動磁場の侵入によって加熱可能である。したがって、支持体130は使用時に加熱要素の役割を果たす。コントローラは、例えば、異なるそれぞれの時間に、異なるそれぞれの継続時間にわたって、及び/又は異なるそれぞれの速度で、加熱要素130のそれぞれの部分の加熱を生じさせるように構成され得る。
【0061】
他の実施形態では、支持体130は加熱材を含まない場合もある。例えば、いくつかの実施形態では、支持体130は、ガラス又はプラスチック材料等の非導電材料から作製され得る。さらなる諸実施形態では、支持体130は省略されてもよい。
【0062】
図5を参照すると、本発明の一実施形態に係るシステムの一例の概略断面図が示されている。システム1000は、喫煙材72を含む物品70と、喫煙材72の少なくとも一つの成分を揮発させるべく喫煙材72を加熱するための装置100とを備える。本実施形態では、喫煙材72はタバコを含み、装置100はタバコ加熱製品(当技術分野において、タバコ加熱デバイス又は非燃焼加熱式デバイスとしても知られている)である。
【0063】
本実施形態では、喫煙材72はロッド(棒状体)の形態のものであり、物品70は、喫煙材72の周りのカバー74を含む。カバー74は喫煙材72を取り囲み、物品70の輸送時及び使用時に喫煙材72を損傷から保護するのを助ける。使用時、カバー74はまた、空気の流れを、喫煙材72に入りそこを通るよう誘導するのを助けることもでき、蒸気又はエアロゾルの流れを、喫煙材72を通りそこから出るよう誘導するのを助けることができる。本実施形態では、カバー74は被覆体を含み、この被覆体は、被覆体の自由端部が互いに重なり合うよう、喫煙材72の周りに巻かれる。したがって、被覆体は、物品70の外周面の全て、又はその大部分を形成する。被覆体は、紙、再生タバコ、アルミニウム、又は同様のものから形成され得る。カバー74はまた、被覆体の重なり合った自由端部を互いに接着させる接着剤(図示せず)を含む。接着剤は、例えば、アラビアゴム、天然若しくは合成樹脂、デンプン、及びワニスのうちの一つ以上を含み得る。接着剤は、被覆体の重なり合った自由端部が分離することを阻止するのを助ける。他の実施形態では、接着剤及び/又はカバー74は省略されてもよい。さらに他の実施形態では、物品は、上で論じられたもののうちのいずれものとも異なる形態を取り得る。
【0064】
概略的に述べるならば、装置100は、物品70を受容するための細長い加熱ゾーン110と、使用時に加熱ゾーン110のそれぞれの部分110a、110b、110c、110d、110eに侵入する変動磁場を発生するための磁場発生器120とを備える。本実施形態では、加熱ゾーン110は、物品70を受容するための凹部を含む。物品70は、使用者によって、装置100の壁内のスロットを通して、又はまず、吸い口等の装置100の部分を、加熱ゾーン110にアクセスするために動かすことによる等、任意の好適な様態で加熱ゾーン110に挿入することができる。他の実施形態では、加熱ゾーン110は、棚部、表面又は突起等の凹部以外のものであってもよく、物品と協働するか、又は物品を受容するために、物品との機械的嵌合を必要としてもよい。本実施形態では、加熱ゾーン110は、物品70全体を収容するようにサイズ及び形状が設定されている。他の実施形態では、加熱ゾーン110は、使用時に物品70の一部分のみを受容するように寸法設定されてもよい。
【0065】
装置100は、加熱ゾーン110を装置100の外部と流体接続する空気入口(図示せず)と、使用時に揮発材料が加熱ゾーン110から装置100の外部へ通ることを可能にするための出口(図示せず)とを有する。使用者は、揮発成分を、出口を通して吸い込むことによって、喫煙材72の揮発成分を吸引することが可能である。揮発成分が加熱ゾーン110から除去されるのに従い、空気が装置100の空気入口を経て加熱ゾーン110に吸い込まれる。加熱ゾーン110の第1の端部111は出口に最も接近しており、加熱ゾーン110の第2の端部112は空気入口に最も接近している。
【0066】
磁場発生器120は、加熱ゾーン110の長手方向軸線H−Hに沿って連続的にそれぞれの平面内に配置された導電材料の複数の平坦なスパイラルコイル21〜22を含む。より具体的には、装置100の磁場発生器120は
図3及び
図4の構造体50を含み、磁場発生器120の複数の平坦なスパイラルコイル21、22は、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eのコイルのそれぞれの対21、22である。誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eのコネクタ30は、明確にするために、
図5から省略されている。誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eは加熱ゾーン110のそれぞれの部分110a、110b、110c、110d、110eを取り囲んでいる。コイル21、22が存在する平面は互いに実質的に平行であることは理解されるであろう。さらに、平面は全て、加熱ゾーン110の長手方向軸線H−Hと実質的に直交し、加熱ゾーン110はそれぞれの平坦なスパイラルコイル21、22内の孔を貫いて延びている。
【0067】
支持体130の長手方向軸線は加熱ゾーン110の長手方向軸線H−Hと同軸である。他の実施形態では、支持体130は非管状であってもよく、及び/又は加熱ゾーン110を部分的に取り囲むのみであってもよい。例えば、支持体は、加熱ゾーン110によって取り囲まれるように加熱ゾーン110に貫入する要素又はピンとすることができる。
【0068】
本実施形態では、装置100は、平坦なスパイラルコイル21、22の動作を制御するためのコントローラ6を備える。コントローラ6は、例えば、平坦なスパイラルコイル21、22のうちの一つの動作を、平坦なスパイラルコイル21、22のうちの少なくとも一つの他のものとは独立して制御し、以て、加熱要素130のそれぞれの部分の誘導加熱を生じさせるためものである。いくつかの実施形態では、コントローラ6は、誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eの各々のコイル21、22に電力を順次供給してもよい。
【0069】
図示されていないが、磁場発生器120はまた、電力源(図示せず)と、コントローラ6の使用者による操作のためのユーザインターフェース(図示せず)とを含む。本実施形態では、電力源は再充電可能なバッテリーである。他の実施形態では、電力源は、再充電不能なバッテリー、キャパシタ、又は電力網への接続等の、再充電可能なバッテリー以外のものとしてもよい。
【0070】
コントローラ6は電力源と誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eのコイル21、22との間に電気的に接続されており、装置100の外部に配置され得るユーザインターフェースに通信可能に接続されている。コントローラ6は、本実施形態では、ユーザインターフェースの使用者による操作によって操作される。ユーザインターフェースは、押しボタン、トグルスイッチ、ダイアル、タッチスクリーン、又は同様のものを含むものとすることができる。
【0071】
本実施形態では、使用者によるユーザインターフェースの操作により、コントローラ6は、交番電流を誘導コイル構成体1a、1b、1c、1d、1eのコイル21、22のうちの一つ以上に流し、これにより、そのコイル又は各コイル21、22に交番磁場を発生させる。コイル21、22及び加熱要素130は、コイル21、22によって生成された交番磁場が加熱要素130の加熱材に侵入するよう、相対的に配置されている。加熱要素130の加熱材が導電材料であるときには、これは、加熱材内における一つ以上の渦電流の発生を生じさせ得る。加熱材の電気抵抗に抗した加熱材内の渦電流の流れにより、加熱材はジュール加熱によって加熱される。さらに、加熱材が磁性材料で作製されているときには、加熱材内における磁気双極子の配向は、変化する印加磁場とともに変化し、これにより、熱が加熱材内に発生される。
【0072】
本実施形態では、物品70は細長く、長手方向軸線B−Bを有する。物品70が使用時に加熱ゾーン110内に配置されている場合には、この軸線B−Bは加熱ゾーン110の長手方向軸線H−Hと同軸又は平行になっている。したがって、加熱要素130のより多くの部分のうちの一つの加熱は、加熱ゾーン110の対応する部分110a、110b、110c、110d、110eの一つ以上を加熱する。ひいては、これは、物品70が加熱ゾーン110内に配置された場合に、物品70の喫煙材72のより多くの対応するセクション72a、72b、72c、72d、72eの一つ以上を加熱する。
【0073】
いくつかの実施形態において、コントローラ6は、喫煙材72の第2のセクションの加熱の前に喫煙材72の第1のセクションを加熱するように動作可能である。すなわち、コントローラ6は、第2の誘導コイル構成体1に隣り合う喫煙材72の第2のセクションの少なくとも一つの成分の揮発、及びその内部におけるエアロゾルの生成を開始するために、誘導コイル構成体1の第2のもののコイル21、22の一方若しくは両方に変動電流を流す前に、第1の誘導コイル構成体に隣り合う喫煙材72の第1のセクションの少なくとも一つの成分の揮発、及びその内部におけるエアロゾルの生成を開始するために、誘導コイル構成体1のうちの第1のもののコイル21、22の一方若しくは両方に変動電流を流す動作可能である。したがって、物品70の喫煙材72の漸進的加熱が経時的にもたらされ得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、第1の誘導コイル構成体1と、喫煙材72の関連する第1のセクションとは、加熱ゾーン110の第1の端部111に最も近いもの1a、72aであってもよく、第2の誘導コイル構成体1と、喫煙材72の関連する第2のセクションは加熱ゾーン110の第2の端部112により接近していてもよい。これは、出口に比較的接近した喫煙材72の第1のセクション72aにおいて、エアロゾルが比較的急速に生成され、使用者による吸引のために物品70から放出されることを可能にするのを助け、しかも、たとえ喫煙材72の第1のセクション72aがエアロゾルを生成することを停止した後でも、エアロゾルが生成され放出され続けるよう、エアロゾルの時間依存的な放出をもたらす。エアロゾル生成のこのような停止は、喫煙材72の第1のセクション72aが揮発性成分を使い尽くされた結果として、生じ得る。
【0075】
装置100は、加熱ゾーン110の温度、又は物品70の温度、又は加熱要素130の温度を感知するための温度センサ(図示せず)を備えてもよい。温度センサは、コンローラ6が温度を監視することができるよう、コントローラ6に通信可能に接続され得る。温度センサから受信された一つ以上の信号に基づいて、コントローラ6は、喫煙材72の温度が所定の温度範囲内にとどまることを確実にするために、コイル21、22に流される変動電流又は交番電流の特性を必要に応じて調整し得る。特性は、例えば、振幅、又は周波数、又はデューティサイクル等である。所定の温度範囲内において、使用時に、喫煙材72は、喫煙材72を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも一つの成分72を揮発させるために十分に加熱される。したがって、コントローラ6、及び装置100全体は、喫煙材72を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも一つの成分72を揮発させるよう喫煙材72を加熱するように構成されている。
【0076】
いくつかの実施形態では、温度範囲は約150℃〜約300℃である。温度範囲は、例えば、150℃超、又は200℃超、又は250℃超とすることができる。温度範囲は、例えば、300℃未満、又は290℃未満、又は250℃未満としてもよい。いくつかの実施形態では、温度範囲の上限は300℃超とすることができる。いくつかの実施形態では、温度センサは省略されてもよい。
【0077】
本実施形態の変形では、支持体130は使用時に変動磁場の全てよりも少なく侵入可能とすることができる。いくつかのこのような変形形態では、支持体130の侵入されない部分は、使用時に、支持体130の侵入された部分からの熱伝導によって加熱され得る。
【0078】
他の実施形態では、装置の支持体及び加熱要素は別個の構成要素であってもよい。例えば、支持体は、非磁性及び/又は非導電要素とし、加熱要素は、加熱ゾーン110によって取り囲まれるように加熱ゾーン110に貫入するロッド又はピンとしてもよい。支持体は、例えば、加熱ゾーン110を取り囲むプラスチック材料(PEEK等)又はガラスの管とすることができる。実施形態によっては、細長い支持体は省略されてもよい。
【0079】
さらなる実施形態では、物品70は、使用時に、物品70の喫煙材72を加熱するための変動磁場のうちの一つ以上の侵入によって加熱可能である加熱材を含む少なくとも一つの加熱要素を含み得る。物品70の加熱要素は物品70の喫煙材72と熱的に接し、いくつかの実施形態では、面接触する。例えば、このような物品の加熱要素は細長く、物品の第1の端部から物品の反対の第2の端部へ延びるものとすることができる。物品の加熱要素は、例えば、管状又は棒状であり得る。いくつかのこのような実施形態では、喫煙材は管状とすることができ、物品の管状加熱要素の半径方向内側又は半径方向外側にあるようにすることができる。いくつかの実施形態では、物品70は、物品70の喫煙材72内に分散した加熱材を含みものとすることができる。例えば、物品70は、喫煙材72及び要素の混合物を含む材料を含み得、要素の各々は、変動磁場の侵入によって加熱可能である加熱材を含む。要素の各々は加熱材の閉回路を含み得る。要素のいくつか又は各々は、例えば、環状や球状であってもよいし、加熱材の複数の別々の素線から形成されてもよい。
【0080】
物品が加熱要素を含むいくつかの実施形態では、装置100は、コイル21、22によって生成された磁場によって侵入可能である加熱要素を含まない。他の実施形態では、装置100及び物品70の各々が加熱要素を含み得る。例えば、
図5に示される実施形態の変形では、物品70はまた、管状又は棒状加熱要素を含み得る。
図5に示されるシステム1000を動作させる上述の方法のうちの任意のものが、このような他の実施形態において対応して用いられ得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、装置100は、装置100が共に使用可能である物品70とは別個に販売されるか、供給されるか、又は他の様態で提供される。しかし、実施形態によっては、装置100、及び物品70のうちの一つ以上は、キット又は集合体等の、システムとして、場合によっては、清掃用具等の追加の構成要素とともに、一緒に提供されてもよい。
【0082】
上述の実施形態の各々では、物品70は消耗品である。物品70内の喫煙材72の揮発性成分の全て、又は実質的に全てが使い果たされると、使用者は物品70を装置100の加熱ゾーン110から取り外し、物品70を廃棄することができる。使用者は、その後、物品70の別のものを用いて装置100を再使用することができる。しかし、他の各実施形態では、物品は非消耗型としてもよく、装置及び物品は喫煙材の揮発性成分が使い果たされると、一緒に廃棄される。
【0083】
上述した実施形態の各々において、加熱材は鋼である。しかし、他の実施形態では、加熱材は、導電材料、磁性材料、及び磁性導電材料からなる群から選択される1種又は複数種の材料を含み得る。いくつかの実施形態では、加熱材は金属又は金属合金を含んでもよい。いくつかの実施形態では、加熱材は、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性カーボン、黒鉛、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、銅、及び青銅からなる群から選択される1種又は複数種の材料を含み得る。他の実施形態では、他の加熱材が用いられ得る。加熱材が、鋼(例えば、軟鋼又はステンレス鋼)等の、鉄を含むいくつかの実施形態では、加熱要素(支持体130等)は、使用時に加熱要素の腐食又は酸化を回避するのを助けるためにコーティングされていてもよい。このようなコーティングは、例えば、ニッケルめっき、金めっき、或いはセラミック又は不活性ポリマーのコーティングを含み得る。
【0084】
上述の実施形態の各々では、喫煙材はタバコを含む。しかし、これらの実施形態の各々のそれぞれの変形では、喫煙材は、タバコからなるもでもよいし、実質的に完全にタバコからなってもよいし、タバコ、及びタバコ以外の喫煙材を含んでもよいし、タバコ以外の喫煙材を含んでもよいし、或いはタバコを含まなくてもよい。実施形態によっては、喫煙材は、グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、又はジエチレングリコール等の、蒸気若しくはエアロゾル生成剤又は保湿剤を含み得る。
【0085】
様々な課題に対処し、当技術を進歩させるために、本開示の全体は、特許請求されている発明が実践され得、喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく喫煙材を加熱するための装置に用いる優れた誘導コイル構成体、喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく喫煙材を加熱するための優れた装置、及びこのような装置を備える優れたシステムを提供する様々な実施形態を実例及び例として示す。本開示の利点及び特徴は諸実施形態の代表サンプルのみのものであり、網羅的及び/又は排他的なものではない。本開示の利点及び特徴は、特許請求されている、及び他の様態で開示されている特徴の理解を助け、教示するためにのみ提示されている。本開示の利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、及び/又は他の態様は、特許請求の範囲によって定義されるとおりの本開示の限定、又は特許請求の範囲の等価物の限定と考えられるべきではなく、他の実施形態を利用することができ、本開示の範囲及び/又は趣旨から逸脱することなく変更を行うことができることを理解されたい。様々な実施形態は、開示された要素、構成要素、特徴、部分、ステップ、手段等の様々な組み合わせを適切に含むか、これらからなるか、又はこれらから本質的になり得る。本開示は、現在特許請求されていないが、将来特許請求される可能性のある他の発明を含み得る。
[発明の項目]
[項目1]
喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく前記喫煙材を加熱するための装置に用いる誘導コイル構成体であって、
互いに反対向きの第1の面及び第2の面を有するプレートと、
前記プレートの前記第1の面に設置された導電材料の第1の平坦なスパイラルコイルと、
前記プレートの前記第2の面に設置された導電材料の第2の平坦なスパイラルコイルと
を備える、誘導コイル構成体。
[項目2]
前記第1の平坦なスパイラルコイルを前記第2の平坦なスパイラルコイルに電気的に接続する導電コネクタを備える、項目1に記載の誘導コイル構成体。
[項目3]
前記導電コネクタが、前記第1の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部から前記第2の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部へ延びる、項目2に記載の誘導コイル構成体。
[項目4]
前記誘導コイル構成体の一方の側から観察した場合に、前記第1の平坦なスパイラルコイルが前記第1の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部から時計回りの経路をたどり、前記第2の平坦なスパイラルコイルが前記第2の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部から反時計回りの経路をたどる、項目1〜3のいずれか一項に記載の誘導コイル構成体。
[項目5]
前記第1の平坦なスパイラルコイルを含む第1の層と、前記第2の平坦なスパイラルコイルを含む第2の層とを有する積層体を備える、項目1〜4のいずれか一項に記載の誘導コイル構成体。
[項目6]
項目1〜5のいずれか一項に記載の複数の誘導コイル構成体と、
前記誘導コイル構成体を互いに対して所定の位置に固定するために前記誘導コイル構成体の対応の前記プレートが接続される保持器と
を備える、構造体。
[項目7]
喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく前記喫煙材を加熱するための装置であって、項目1〜5のいずれか一項に記載の誘導コイル構成体、又は項目6に記載の構造体を備える、装置。
[項目8]
喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく前記喫煙材を加熱するための装置であって、
喫煙材を含む一つ以上の物品を受容するための加熱ゾーンと、
使用時に前記加熱ゾーンにおける対応の長手方向部分に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器と
を備え、前記磁場発生器が、導電材料の複数の平坦なスパイラルコイルを含み、前記スパイラルコイルが、前記加熱ゾーンの長手方向軸線に沿って連続的に、それぞれ対応の平面に配置されている、装置。
[項目9]
前記平面が互いに実質的に平行である、項目8に記載の装置。
[項目10]
前記加熱ゾーンが前記複数の平坦なスパイラルコイルの各々の内部の孔を貫いて延びている、項目8又は9に記載の装置。
[項目11]
喫煙材を含む物品を前記平坦なスパイラルコイル内の前記孔内において支持するための細長い支持体を有する、項目10に記載の装置。
[項目12]
前記支持体が管状であり、前記加熱ゾーンを取り囲んでいる、項目11に記載の装置。
[項目13]
前記加熱ゾーンを加熱するための前記変動磁場のうちの一つ以上の侵入によって加熱可能である加熱材を含む加熱要素を有する、項目8〜12のいずれか一項に記載の装置。
[項目14]
前記支持体が前記加熱要素を含む、項目11又は12に従属する項目13に記載の装置。
[項目15]
前記加熱材が、導電材料、磁性材料、及び磁性導電材料からなる群から選択される1種又は複数種の材料を含む、項目13又は14に記載の装置。
[項目16]
前記加熱材が金属又は金属合金を含む、項目13〜15のいずれか一項に記載の装置。
[項目17]
前記加熱材が、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性カーボン、黒鉛、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、鋼、銅、及び青銅からなる群から選択される1種又は複数種の材料を含む、項目13〜16のいずれか一項に記載の装置。
[項目18]
前記平坦なスパイラルコイルのうちの少なくとも一つの動作を、前記平坦なスパイラルコイルのうちの少なくとも一つの他のものとは独立して制御するためのコントローラを備える、項目8〜17のいずれか一項に記載の装置。
[項目19]
前記磁場発生器が項目6に記載の構造体を含む、項目8〜18のいずれか一項に記載の装置。
[項目20]
当該装置がタバコ加熱製品である、項目7〜19のいずれか一項に記載の装置。
[項目21]
喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく前記喫煙材を加熱するためのシステムであって、
項目8〜20のいずれか一項に記載の装置と、
喫煙材を含み、前記装置の前記加熱ゾーン内に配置するための物品と
を備える、システム。
[発明の条項]
[条項1]
喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく前記喫煙材を加熱するための装置であって、当該装置が誘導コイル構成体を備え、前記誘導コイル構成体が、
互いに反対向きの第1の面及び第2の面を有するプレートと、
前記プレートの前記第1の面に設置された導電材料の第1の平坦なスパイラルコイルと、
前記プレートの前記第2の面に設置された導電材料の第2の平坦なスパイラルコイルと
を備え、
当該装置がタバコ加熱製品である、装置。
[条項2]
前記誘導コイル構成体は、前記第1の平坦なスパイラルコイルを前記第2の平坦なスパイラルコイルに電気的に接続する導電コネクタを備える、条項1に記載の装置。
[条項3]
前記導電コネクタが、前記第1の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部から前記第2の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部へ延びる、条項2に記載の装置。
[条項4]
前記誘導コイル構成体の一方の側から観察した場合に、前記第1の平坦なスパイラルコイルが前記第1の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部から時計回りの経路をたどり、前記第2の平坦なスパイラルコイルが前記第2の平坦なスパイラルコイルの半径方向内側端部から反時計回りの経路をたどる、条項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
[条項5]
前記誘導コイル構成体は、前記第1の平坦なスパイラルコイルを含む第1の層と、前記第2の平坦なスパイラルコイルを含む第2の層とを有する積層体を備える、条項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
[条項6]
喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく前記喫煙材を加熱するための装置であって、
喫煙材を含む一つ以上の物品を受容するための加熱ゾーンと、
使用時に前記加熱ゾーンにおける対応の長手方向部分に侵入する変動磁場を発生させるための磁場発生器と
を備え、前記磁場発生器が、導電材料の複数の平坦なスパイラルコイルを含み、前記複数の平坦なスパイラルコイルが、前記加熱ゾーンの長手方向軸線に沿って連続的に、それぞれ対応の平面に配置されている、装置。
[条項7]
前記平面が互いに実質的に平行である、条項6に記載の装置。
[条項8]
前記加熱ゾーンが前記複数の平坦なスパイラルコイルの各々の内部の孔を貫いて延びている、条項6又は7に記載の装置。
[条項9]
喫煙材を含む物品を前記平坦なスパイラルコイル内の前記孔内において支持するための細長い支持体を有する、条項8に記載の装置。
[条項10]
前記支持体が管状であり、前記加熱ゾーンを取り囲んでいる、条項9に記載の装置。
[条項11]
前記加熱ゾーンを加熱するための前記変動磁場のうちの一つ以上の侵入によって加熱可能である加熱材を含む加熱要素を有する、条項6〜10のいずれか一項に記載の装置。
[条項12]
前記支持体が前記加熱要素を含む、条項9又は10に従属する条項11に記載の装置。
[条項13]
前記加熱材が、導電材料、磁性材料、及び磁性導電材料からなる群から選択される1種又は複数種の材料を含む、条項11又は12に記載の装置。
[条項14]
前記加熱材が金属又は金属合金を含む、条項11〜13のいずれか一項に記載の装置。
[条項15]
前記加熱材が、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、コバルト、導電性カーボン、黒鉛、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、鋼、銅、及び青銅からなる群から選択される1種又は複数種の材料を含む、条項11〜14のいずれか一項に記載の装置。
[条項16]
前記平坦なスパイラルコイルのうちの少なくとも一つの動作を、前記平坦なスパイラルコイルのうちの少なくとも一つの他のものとは独立して制御するためのコントローラを備える、条項6〜15のいずれか一項に記載の装置。
[条項17]
前記導電材料の複数の平坦なスパイラルコイルは、三つ以上の平坦なスパイラルコイルを含む、条項6〜16のいずれか一項に記載の装置。
[条項18]
前記加熱ゾーンは、長手方向軸線に沿って細長く延びている、条項6〜17のいずれか一項に記載の装置。
[条項19]
前記複数の平坦なスパイラルコイルの各平坦なスパイラルコイルは、一巻きより多い経路を有する、条項6〜18のいずれか一項に記載の装置。
[条項20]
喫煙材の少なくとも一つの成分を揮発させるべく前記喫煙材を加熱するためのシステムであって、
条項6〜19のいずれか一項に記載の装置と、
喫煙材を含み、前記装置の前記加熱ゾーン内に配置するための物品と
を備える、システム。
[条項21]
前記誘導コイル構成体が、前記プレートの第1の面から前記プレートの第2の面へ前記プレートを完全に貫いて延びる穴を有し、
前記第1の平坦なスパイラルコイルが、前記穴と整列するとともに前記第1の平坦なスパイラルコイルの中心に存在する第1の貫通孔の周りに巻回され、
前記第2の平坦なスパイラルコイルが、前記穴と整列するとともに前記第2の平坦なスパイラルコイルの中心に存在する第2の孔の周りに巻回されていることにより、
前記誘導コイル構成体が、喫煙剤を含む物品が使用時に配置される加熱ゾーンの部分を取り囲む、条項1〜6のいずれか一項に記載の装置。