特許第6978185号(P6978185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6978185-合わせガラス用中間膜及び合わせガラス 図000007
  • 特許6978185-合わせガラス用中間膜及び合わせガラス 図000008
  • 特許6978185-合わせガラス用中間膜及び合わせガラス 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978185
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20211125BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20211125BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20211125BHJP
【FI】
   C03C27/12 N
   C03C27/12 D
   B32B3/26 Z
   B32B7/023
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-553974(P2015-553974)
(86)(22)【出願日】2015年9月29日
(86)【国際出願番号】JP2015077456
(87)【国際公開番号】WO2016052478
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年4月19日
【審判番号】不服2020-4595(P2020-4595/J1)
【審判請求日】2020年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-199396(P2014-199396)
(32)【優先日】2014年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】伊豆 康之
(72)【発明者】
【氏名】中島 大輔
【合議体】
【審判長】 宮澤 尚之
【審判官】 金 公彦
【審判官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−24313(JP,A)
【文献】 特開2007−223883(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/132777(WO,A1)
【文献】 特表2008−532917(JP,A)
【文献】 特許第5503089(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 27/12
B32B 17/10,27/18
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と可塑剤と発光材料とを含有する発光層と、前記発光層の少なくとも一方の面に積層された、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する樹脂層とを含む多層構造の合わせガラス用中間膜であって、
合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形であり、前記発光層の最大厚さと最小厚さの差が100μm以下であり、
前記発光材料は、テレフタル酸エステル構造を有する発光材料である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
合わせガラス用中間膜の断面形状が、楔角θが0.1〜1mradである楔形であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
発光層及び樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
発光層に含まれるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が、樹脂層に含まれるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量よりも低いことを特徴とする請求項3記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されていることを特徴とする合わせガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスの特定領域において二重に表示されず、かつ、一定範囲の輝度でコントラストの高い画像を表示することができる合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全性向上の見地から、例えば、自動車用のフロントガラスについて、このフロントガラスと同じ視野内に、自動車走行データである速度情報等の計器表示をヘッドアップディスプレイ(HUD)として表示させようとする要望が高まっている。
HUDの機構としては、これまで種々の形態のものが開発されている。例えば、HUD表示部がフロントガラス表面にはなく、コントロールユニットから送信される速度情報等をインストゥルメンタル・パネルの表示ユニットからフロントガラスに反射させることにより運転者にフロントガラスと同じ位置(すなわち、同一視野内)で視認させる形態のものがある。このような反射型のHUDには、焦点距離を適切に調節することで、表示される情報が遠方に存在するように視認され、運転者の眼の焦点を変更する必要が無く安全であるという利点がある。
【0003】
特許文献1には、2枚の透明板の間に、発光材料としてヒドロキシテレフタレートを含む中間層が積層された合わせガラスが開示されている。特許文献1に記載された合わせガラスは、光線が照射されることにより、コントラストが高い画像を表示することができる。それぞれのHUDの利点を鑑み、このような発光材料を用いた合わせガラスを利用したHUDと、反射型のHUDとを組み合わせる要望がある。しかしながら、特許文献1に記載された合わせガラスでは、フロントガラスを構成する合わせガラスが2枚の平行なガラスから構成されているため、運転者の視野に映る計器表示が二重に見えることがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/139889号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された発明をもとに、所定の楔角を有する楔形の合わせガラス用中間膜中に発光材料を配合することを検討した。断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスは、該楔角を調整することにより、一方のガラスで反射される計器表示と、他方のガラスで反射される計器表示とを運転者の視野で1点に結ぶことが可能となり、計器表示が二重に見える問題を解決できることが知られている。
しかしながら、実際に発光材料を配合した断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜を用いると、発光材料により表示される画像の輝度が合わせガラスの部位によって異なってしまうという新たな問題が生じた。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、合わせガラスの特定領域において二重に表示されず、かつ、一定範囲の輝度でコントラストの高い画像を表示することができる合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂と可塑剤と発光材料とを含有する発光層と、前記発光層の少なくとも一方の面に積層された、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する樹脂層とを含む多層構造の合わせガラス用中間膜であって、合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形であり、前記発光層の最大厚さと最小厚さの差が100μm以下である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、発光材料を配合した断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスにおいて、表示される画像の輝度が異なる理由について検討した。その結果、合わせガラス用中間膜の厚み方向の断面形状が楔状となることにより、厚みが薄い部分より厚みが厚い部分における蛍光材料の面密度が高くなることが原因であることを見出した。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、発光材料を含む発光層の厚みを最大厚さと最小厚さの差を100μm以下として蛍光材料の面密度の変動を一定以下にするとともに、樹脂層を積層した多層構造として、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状を楔形とすることにより、二重像の発生を防止しながら、一定範囲の輝度で画像を表示することができる合わせガラスを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
まず、本発明の合わせガラス用中間膜の形状について詳しく説明する。
本発明の合わせガラス用中間膜は、断面形状が楔形である。合わせガラスの取り付け角度に応じて、楔形の楔角θを調整することにより、二重像の発生を防止した画像表示が可能となる。二重像をより一層抑制する観点から、上記楔角θの好ましい下限は0.1mrad、より好ましい下限は0.2mrad、更に好ましい下限は0.3mradであり、好ましい上限は1mrad、より好ましい上限は0.9mradである。
なお、例えば押出機を用いて樹脂組成物を押出し成形する方法により断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜を製造した場合、薄い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、薄い側の一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域)に最小厚みを有し、厚い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、厚い側の一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域)に最大厚みを有する形状となることがある。本明細書においては、このような形状も楔形に含まれる。
【0010】
本発明の合わせガラス用中間膜は、発光材料を含有する発光層と、樹脂層(以下、「形状補助層」ともいう。)とを含む多層構造を有する。上記発光層の厚みを一定範囲とする一方、上記形状補助層を積層することにより、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状が楔形となるように調整する。
上記形状補助層は、上記発光層の一方の面にのみ積層されていてもよく、両方の面に積層されていてもよい。更に、複数の形状補助層を積層してもよい。
【0011】
上記発光層は、断面形状が楔形であってもよく、矩形であってもよい。上記発光層は、断面形状が楔形であることが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜によって得られた合わせガラスをHUDとして用いる場合、上記発光層の最小厚さをHUDの下部に位置するように、上記発光層の最大厚さをHUDの上部に位置するように配置し、更に、反射型のHUDの光源をHUDの下部付近に、発光型のHUDの励起光光源をHUDの上部付近に配置させた状態で用いることが好ましい。このような場合に、自発光層が楔形であることで、反射型のHUDの光源に近い自発光層を薄くすることで反射型のHUDの光源に発光材料の励起光が含まれていても発光材料の予期しない発光を抑えることができ、反射型のHUDの画像を鮮明に表示することができる。更には、自発光層が楔形であることで、発光型のHUDの励起光光源に近いHUDの上部においては、鮮明な画像を表示させるために充分な量の発光材料を存在させることができ、発光型のHUDの画像を鮮明に表示することができる。
上記発光層の最大厚さと最小厚さの差は100μm以下である。これにより、一定範囲の輝度で画像を表示することができる。上記発光層の最大厚さと最小厚さの差は95μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることが更に好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。上記発光層の最大厚さと最小厚さの差の下限は特に限定されないが、0であることが好ましい。
【0012】
上記発光層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は50μm、好ましい上限は700μmである。上記発光層の厚みがこの範囲内であると、充分に高いコントラストの画像を表示できる。上記発光層の厚みのより好ましい下限は70μm、より好ましい上限は400μmであり、更に好ましい下限は80μm、更に好ましい上限は150μmである。なお、上記発光層の厚みの下限は、発光層の最小厚さの部分の厚みを意味し、上記発光層の厚みの上限は、発光層の最大厚さの部分の厚みを意味する。
【0013】
上記形状補助層は、上記発光層に積層して、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状が楔形となるように調整する役割を有する。上記合わせガラス用中間膜全体としての断面形状は、一定の楔角である楔形であることが好ましい。上記合わせガラス用中間膜全体としての断面形状は、楔形であれば、一定の楔角を有していなくてもよい。
上記形状補助層は、断面形状が楔形、三角形、又は、台形であることが好ましい。断面形状が楔形、三角形、又は、台形の形状補助層を積層することにより、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状を楔形となるように調整することができる。なお、上記形状補助層としての役割を果たせるのであれば、上記形状補助層は、例えば、五角形、六角形、楕円形等の形状をしていてもよい。また、複数の形状補助層を組み合わせて、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状を整えてもよい。この場合、全ての形状補助層の断面形状が同一である必要はなく、異なっていてもよい。
【0014】
上記形状補助層の厚みは特に限定されないが、実用面の観点、並びに、接着力及び耐貫通性を充分に高める観点から、好ましい下限は10μm、好ましい上限は1000μmであり、より好ましい下限は200μm、より好ましい上限は800μmであり、更に好ましい下限は300μmである。
なお、上記形状補助層の厚みの下限は、形状補助層の最小厚さの部分の厚みを意味し、上記形状補助層の厚みの上限は、形状補助層の最大厚さの部分の厚みを意味する。また、複数の形状補助層を組み合わせて用いる場合は、その合計の厚みを意味する。
【0015】
本発明の合わせガラス用中間膜全体の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は100μm、好ましい上限は3000μmであり、より好ましい下限は250μm、より好ましい上限は2000μmであり、更に好ましい下限は500μm、更に好ましい上限は1500μm、特に好ましい下限は800μmである。
なお、上記合わせガラス用中間膜全体の厚みの下限は、合わせガラス用中間膜全体の最小厚さの部分の厚みを意味し、上記合わせガラス用中間膜全体の厚みの上限は、合わせガラス用中間膜全体の最大厚さの部分の厚みを意味する。
【0016】
本発明の合わせガラス用中間膜の態様の一例を説明する模式図を、図1〜3に示した。なお、図1〜3では、図示の便宜上、合わせガラス用中間膜及び該合わせガラス用中間膜を構成する各層の厚みや楔角θは、実際の厚み及び楔角とは異なるように示されている。
【0017】
図1には、合わせガラス用中間膜1の厚み方向の断面が示されている。
合わせガラス用中間膜1は、発光材料を含有する発光層11の一方の面に形状補助層12が積層された2層構造を有する。
ここで発光層11は矩形であるのに対して、形状補助層12の形状を楔形、三角形、又は、台形とすることにより、合わせガラス用中間膜1全体として楔角θが0.1〜1mradである楔形となっている。
【0018】
図2には、合わせガラス用中間膜2の厚み方向の断面が示されている。
合わせガラス用中間膜2は、発光材料を含有する発光層21の両面に形状補助層22と形状補助層23とが積層された3層構造を有する。
ここで発光層21と形状補助層23とが厚みが一定の矩形であるのに対して、形状補助層22の形状を楔形、三角形、又は、台形とすることにより、合わせガラス用中間膜2全体として楔角θが0.1〜1mradである楔形となっている。
【0019】
図3には、合わせガラス用中間膜3の厚み方向の断面が示されている。
合わせガラス用中間膜3は、発光材料を含有する発光層31の両面に形状補助層32と形状補助層33とが積層された3層構造を有する。
ここで発光層31は最大厚さと最小厚さの差が100μm以下の緩やかな楔形であり、楔形の形状補助層32、33を積層することにより、合わせガラス用中間膜3全体として楔角θが0.1〜1mradである楔形となっている。
【0020】
次に、本発明の合わせガラス用中間膜の発光層及び形状補助層を構成する成分について詳しく説明する。
上記発光層は、熱可塑性樹脂と可塑剤と発光材料とを含有する。発光材料を含有する発光層を有することにより、本発明の合わせガラス用中間膜は、光線を照射することにより、コントラストが高い画像を表示することができる。
【0021】
上記熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、硫黄元素を含有するポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。なかでも、可塑剤と併用した場合に、ガラスに対して優れた接着性を発揮する合わせガラス用中間膜が得られることから、ポリビニルアセタール樹脂が好適である。
【0022】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂であれば特に限定されないが、ポリビニルブチラール樹脂が好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタール樹脂を併用してもよい。
【0023】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
上記ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量の好ましい下限が10モル%、好ましい上限が32モル%である。上記発光層に含まれるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量がこの範囲内であると、発光層の成形が容易であり、かつ、得られる合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量のより好ましい下限は15モル%、より好ましい上限は30モル%、更に好ましい下限は18モル%、更に好ましい上限は28モル%、特に好ましい下限は20モル%、特に好ましい上限は25モル%である。
なお、上記アセタール化度及び水酸基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0024】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。上記ポリビニルアルコールの鹸化度は、80〜99.8モル%であることが好ましい。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が500以上であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記ポリビニルアルコールの重合度が4000以下であると、合わせガラス用中間膜の成形が容易になる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
【0025】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0027】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキシル酸エステル等が好適である。
【0028】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0029】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、アジピン酸エステル、炭素数4〜9のアルキルアルコール及び炭素数4〜9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等の炭素数6〜8のアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0030】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0031】
更に、上記可塑剤として、加水分解を起こしにくいため、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)を含有することが好ましく、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を含有することがより好ましく、特にトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含有することがより好ましい。
【0032】
上記発光層における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する好ましい下限が30重量部、好ましい上限が100重量部である。上記可塑剤の含有量が30重量部以上であると、合わせガラス用中間膜の溶融粘度が低くなり、これを合わせガラス用中間膜として合わせガラスを製造する際の脱気性が高くなる。上記可塑剤の含有量が100重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は35重量部、より好ましい上限は80重量部、更に好ましい下限は45重量部、更に好ましい上限は70重量部、特に好ましい下限は50重量部、特に好ましい上限は63重量部である。
【0033】
上記発光材料は、発光粒子、発光顔料及び発光染料からなる群より選択される少なくとも一種である。
上記発光粒子及び上記発光顔料は、例えば、YS:Eu、BaMgAl1627:Eu,Mn、(SrCaBaMg)(POCl:Eu、BaMgAl1627:Eu、BaMgAl1627:Eu,Mn、Sr(POCl:Eu、LaPO:Ce,Tb、MgAl1119:Ce,Tb、Y:Eu、Y(PV)O:Eu、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn、Ca10(POFCl:Sb,Mn、Sr10(POFCl:Sb,Mn、(SrMg):Eu、Sr:Eu、CaWO、CaWO:Pb、MgWO、(BaCa)(POCl:Eu、SrAl1425:Eu、ZnSiO:Mn等で示される蛍光体やそれらからなる複合体や、ZnS粒子、GaSe粒子、SiC粒子、CdTe粒子等の粒子型等が挙げられる。
【0034】
上記発光染料は、例えば、(カルバゾール−ナフタルイミド)染料、(アセトニトリル−トリフェニレンアミン)染料、アリールスルホネートシアニン染料、ペリレン染料、クマリン染料、トリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオネート−O,O’)ビス(トリフェニルフォスフィンオキシド−O−)ユーロピウム等が挙げられる。
【0035】
上記発光染料としては、なかでも、ナフタルイミド骨格を有する化合物、又は、クマリン骨格を有する化合物が好適である。ナフタルイミド骨格を有する化合物、クマリン骨格を有する化合物はバインダー樹脂として用いる熱可塑性樹脂に対する親和性が高いことから、バインダー樹脂中に均一に分散させることが可能となり、透明性が高く、ヘイズが低い合わせガラス用中間膜を得ることができる。また、ナフタルイミド骨格を有する化合物、クマリン骨格を有する化合物は、紫外線に対する耐久性にも極めて優れることから、これを用いた合わせガラス用中間膜は、優れた耐光性を発揮することができる。
【0036】
上記ナフタルイミド骨格を有する化合物は、具体的には例えば、4−ブロモ−1,8−ナフタルイミド、4−アミノ−1,8−ナフタルイミド、4−メトキシ−N−メチルナフタル酸イミド、ナフタルイミド、4−アミノナフタルイミド、N−メチル−4−アミノナフタルイミド、N−エチル−4−アミノナフタルイミド、N−プロピル−4−アミノナフタルイミド、N−n−ブチル−4−アミノナフタルイミド、4−アセチルアミノナフタルイミド、N−メチル−4−アセチルアミノナフタルイミド、N−エチル−4−アセチルアミノナフタルイミド、N−プロピル−4−アセチルアミノナフタルイミド、N−n−ブチル−4−アセチルアミノナフタルイミド、N−メチル−4−メトキシナフタルイミド、N−エチル−4−メトキシナフタルイミド、N−プロピル−4−メトキシナフタルイミド、N−n−ブチル−4−メトキシナフタルイミド、N−メチル−4−エトキシナフタルイミド、N−エチル−4−エトキシナフタルイミド、N−プロピル−4−エトキシナフタルイミド、N−n−ブチル−4−エトキシナフタルイミド、Lumogen F Violet 570(BASF ジャパン社製)、Lumogen F Blue 650(BASF ジャパン社製)等が挙げられる。
【0037】
上記クマリン骨格を有する化合物は、具体的には例えば、クマリン環7位に電子供与性置換基を有する誘導体が挙げられる。より具体的には、クマリン環7位にアミノ基を持つことを特徴とする誘導体である3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)や、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)等のクマリン色素、ベーシックイエロー51等のクマリン色素染料、また、クマリン環7位にヒドロキシ基を持つことを特徴とする7−ヒドロキシクマリン、3−シアノ−7−ヒドロキシクマリン、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジメチルアミノシクロペンタ[c]−クマリン、1,2,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−8−メチル[1]ベンゾピラノ[9,9a,1−gH]キノリジン−10−オン、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、1,2,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−9−シアノ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1−gH]キノリジン−10−オン、1,2,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−9−カルボ−t−ブトキシ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1−gH]キノリジン−10−オン、7−エチルアミノ−6−メチル−4−トリフルオロメチルクマリン、1,2,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−9−カルボエトキシ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1−gH]キノリジン−10−オン、7−ジエチルアミノ−3−(1−メチルベンズイミダゾリル)クマリン、7−ジメチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、1,2,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−9−カルボキシ[1]ベンゾピラノ[9,9a,1−gH]キノリジン−10−オン、1,2,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−9−アセチル[1]ベンゾピラノ[9,9a,1−gH]キノリジン−10−オン、3−(2−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、1,2,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチル[1]ベンゾピラノ[9,9a,1−gH]キノリジン−10−オン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−9−(トリフルオロメチル)−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、7−アミノ−4−メチルクマリン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン等が挙げられる。
【0038】
上記発光材料として、テレフタル酸エステル構造を有する発光材料を用いることが好ましい。上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料は、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物や下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0039】
【化1】
【0040】
上記一般式(1)中、Rは有機基を表し、xは1、2、3又は4である。合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなることから、xは1又は2であることが好ましく、ベンゼン環の2位又は5位に水酸基を有することがより好ましく、ベンゼン環の2位及び5位に水酸基を有することが更に好ましい。
上記Rの有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1〜5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1〜3の炭化水素基であることが特に好ましい。上記炭化水素基の炭素数が10以下であると、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料を合わせガラス用中間膜に容易に分散させることができる。上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。
【0041】
上記一般式(1)で表される構造を有する化合物として、例えば、ジエチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート、ジメチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート等が挙げられる。なかでも、コントラストがより一層高い画像を表示できることから、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物はジエチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート(Aldrich社製、「2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル」)であることが好ましい。例えば、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、405nmの波長を有する光線により容易に励起することができる。
【0042】
上記一般式(2)中、Rは有機基を表し、R及びRは水素原子又は有機基を表し、yは1、2、3又は4である。
上記Rの有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜10の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1〜5の炭化水素基であることが更に好ましく、炭素数が1〜3の炭化水素基であることが特に好ましい。上記炭化水素基の炭素数が上記上限以下であると、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料を合わせガラス用中間膜に容易に分散させることができる。上記炭化水素基はアルキル基であることが好ましい。上記一般式(2)中、NRはアミノ基である。R及びRは、水素原子であることが好ましい。上記一般式(2)で表される構造を有する化合物のベンゼン環の水素原子のうち、一つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、二つの水素原子が上記アミノであってもよく、三つの水素原子が上記アミノ基であってもよく、四つの水素原子が上記アミノ基であってもよい。
【0043】
上記一般式(2)で表される構造を有する化合物として、コントラストがより一層高い画像を表示できることから、ジエチル−2,5−ジアミノテレフタレート(Aldrich社製)が好ましい。
【0044】
上記発光層中における上記発光材料の含有量は、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が0.005重量部、好ましい上限が5重量部である。充分な発光を得るためには、一定以上の発光材料を配合する必要があるが、一方で大量の発光材料は配合すると、かえって発光性が低下することがある。これは、励起された発光材料の相互作用により、吸収されたエネルギーが光を放射しない非輻射過程へ遷移して、発光強度がかえって減少してしまうという、濃度消光現象が起こるためと考えられる。上記発光材料の含有量がこの範囲内であると、特定の波長の光を照射したときに充分にコントラストの高い発光が得られる。上記発光材料の含有量のより好ましい下限は0.01重量部、より好ましい上限は3重量部であり、更に好ましい下限は0.05重量部、更に好ましい上限は1重量部である。
【0045】
上記発光層中における上記発光材料の含有量は、上記発光層100重量%中、好ましい下限が0.005重量%、好ましい上限が5重量%である。上記発光材料の含有量が0.005重量%以上であると、より一層高いコントラストで画像を表示できる合わせガラス用中間膜を得ることができる。上記発光材料の含有量が5重量%以下であると、より一層高い透明性を有する合わせガラス用中間膜を得ることができる。上記発光材料の含有量のより好ましい下限は0.01重量%、より好ましい上限は3重量%、更に好ましい下限は0.02重量%、更に好ましい上限は1重量%である。
【0046】
上記発光層は、更に分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することにより、上記発光材料を層中に微分散させることができ、より均一な発光が可能になる。
上記分散剤は、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸構造を有する化合物や、ジエステル化合物、リシノール酸アルキルエステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、リン酸エステル等のエステル構造を有する化合物や、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールやアルキルフェニル−ポリオキシエチレン−エーテル等のエーテル構造を有する化合物や、ポリカルボン酸等のカルボン酸構造を有する化合物や、ラウリルアミン、ジメチルラウリルアミン、オレイルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンの2級アミン、ポリオキシエチレンの3級アミン、ポリオキシエチレンのジアミン等のアミン構造を有する化合物や、ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド等のポリアミン構造を有する化合物や、オレイン酸ジエタノールアミド、アルカノール脂肪酸アミド等のアミド構造を有する化合物や、ポリビニルピロリドン、ポリエステル酸アマイドアミン塩等の高分子量型アミド構造を有する化合物等や、トリエトキシプロピルイソシアネートシラン、トリエトキシブチルシラン等のアルキル基を有するシラン構造を有する化合物や、トリエトキシプロピルアクリロキシシラン等のアクリロキシ基を有するシラン構造を有する化合物や、トリエトキシプロピルビニルシラン等のビニル基を有するシラン構造を有する化合物や、エポキシ基やリン酸基、カルボキシル基、メルカプト基等の側鎖を有する高分子量体であるポリシロキサン構造を有する化合物や、イソシアネート等のイソシアネート基を有する化合物や、イソシアヌレート等のイソシアヌレート基を有する化合物等の従来公知の分散剤を用いることができる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)や高分子ポリカルボン酸、縮合リシノール酸エステル等の高分子量分散剤を用いてもよい。なお、高分子量分散剤とは、その分子量が1万以上である分散剤と定義される。
【0047】
上記分散剤を配合する場合に、上記発光層中における発光材料100重量部に対する上記分散剤の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部である。上記分散剤の含有量がこの範囲内であると、上記発光材料を発光層中に均一に分散させることができる。上記分散剤の含有量のより好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は30重量部であり、更に好ましい下限は5重量部、更に好ましい上限は25重量部である。
【0048】
上記発光層は、更に、紫外線吸収剤を含有してもよい。上記発光層が紫外線吸収剤を含有することにより、上記発光層の耐光性が高くなる。
上記紫外線吸収剤は、例えば、マロン酸エステル構造を有する化合物、シュウ酸アニリド構造を有する化合物、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、ベンゾフェノン構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、ベンゾエート構造を有する化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0049】
上記紫外線吸収剤を含有する場合に、上記発光層中における上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する上記紫外線吸収剤の含有量の好ましい上限は1重量部、より好ましい上限は0.5重量部、更に好ましい上限は0.2重量部、特に好ましい上限は0.1重量部である。
【0050】
上記発光層は、優れた耐光性を得ることができることから、酸化防止剤を含有することが好ましい。
上記酸化防止剤は特に限定されず、フェノール構造を有する酸化防止剤、硫黄を含む酸化防止剤、リンを含む酸化防止剤等が挙げられる。
上記フェノール構造を有する酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記フェノール構造を有する酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。上記酸化防止剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記発光層は、本発明の合わせガラス用中間膜に遮熱性が要求される場合には、熱線吸収剤を含有してもよい。
上記熱線吸収剤は、赤外線を遮蔽する性能を有すれば特に限定されないが、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)粒子、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子、6ホウ化ランタン粒子及び6ホウ化セリウム粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
【0052】
上記発光層は、必要に応じて、更に光安定剤、帯電防止剤等の添加剤を含有してもよい。また、本発明の合わせガラス用中間膜の一部の領域に着色帯を設ける場合には、上記発光層の一部に青色顔料、青色染料、緑色顔料、緑色染料等の着色剤を配合してもよい。
【0053】
上記発光層のマグネシウム元素の濃度は80ppm以下であることが好ましい。上記発光材料がテレフタル酸エステル構造を有する発光材料である場合には、該テレフタル酸エステル構造を有する発光材料とマグネシウム元素とが錯体を形成することにより、特に合わせガラス用中間膜の変色が生じやすい。上記発光層のマグネシウム元素の濃度を80ppm以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の変色を抑制できる。合わせガラス用中間膜の変色をより一層抑制できることから、上記発光層のマグネシウム元素の濃度は75ppm以下であることが好ましく、60ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましく、40ppm以下であることが特に好ましく、30ppm以下であることが最も好ましく、25ppm以下であることが更に最も好ましい。上記発光層のマグネシウム元素の濃度は0ppmであってもよい。
上記マグネシウム元素は、例えば、金属マグネシウムやマグネシウム塩として、上記発光層に含まれていてもよい。
なお、変色とは、合わせガラス用中間膜が2枚のクリアガラス(厚み2.5mm)の間に積層された合わせガラスのYI値が20を超えることを意味する。YI値は、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−4100」)を使用して、JIS Z 8722に準拠して、測定することができる。上記YI値は、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、上記YI値は、0以上であることが好ましい。
【0054】
上記発光層のリチウム元素の濃度は25ppm以下であることが好ましい。上記発光層がリチウム元素を多量に含む場合、合わせガラス用中間膜が変色する原因は、上記テレフタル酸エステル構造を有する発光材料とリチウム元素とが錯体を形成するためであると考えられる。上記発光層のリチウム元素の濃度を25ppm以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の変色をより一層抑制できる。上記発光層のリチウム元素の濃度のより好ましい上限は20ppm、更に好ましい上限は10ppm以下であり、好ましい下限は0ppm、より好ましい下限は1ppmである。
【0055】
上記形状補助層は、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含有する。上記形状補助層に含まれる熱可塑性樹脂や可塑剤は、上記発光層に含まれる熱可塑性樹脂や可塑剤と同様のものを用いることができる。一定範囲の輝度で、より一層コントラストの高い画像を表示することができることから、上記形状補助層は発光材料を含有しないか、又は、上記形状補助層中の上記発光材料の濃度(重量%)が上記発光層中の上記発光材料の濃度(重量%)よりも低いことが好ましい。上記形状補助層の熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0056】
上記形状補助層は、更に接着力調整剤を含むことが好ましい。
上記接着力調整剤は特に限定されず、金属塩であることが好ましく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びマグネシウム塩からなる群から選択された少なくとも1種の金属塩であることが好ましい。上記金属塩は、カリウム及びマグネシウムの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。上記金属塩は、炭素数1〜16の有機酸のアルカリ金属塩、炭素数1〜16の有機酸のアルカリ土類金属塩又は炭素数1〜16の有機酸のマグネシウム塩であることがより好ましく、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ土類金属塩又は炭素数2〜16のマグネシウム塩であることが更に好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩又は炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩であることが特に好ましい。上記炭素数2〜16のカルボン酸のマグネシウム塩及び上記炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。上記有機酸の炭素数の好ましい下限は1、好ましい上限は10、より好ましい下限は2、より好ましい上限は8である。
【0057】
上記形状補助層における上記接着力調整剤の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい下限が0.0005重量部、好ましい上限が0.05重量部である。上記接着力調整剤の含有量が0.0005重量部以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記接着力調整剤の含有量が0.05重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性が高くなる。上記接着力調整剤の含有量のより好ましい下限は0.002重量部、より好ましい上限は0.02重量部である。
【0058】
上記形状補助層の耐湿性が高くなることから、上記形状補助層中のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムの含有量の合計は300ppm以下であることが好ましい。例えば、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムは、上記接着力調整剤に由来する金属として含んでもよく、ポリビニルアセタール樹脂を合成する際に用いる中和剤に由来する金属として含んでもよい。上記形状補助層中のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムの含有量の合計は200ppm以下であることがより好ましく、150ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。
合わせガラス用中間膜の変色をより一層防止できることから、上記形状補助層に含まれるマグネシウム元素の濃度は150ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。上記形状補助層に含まれるマグネシウム濃度は0ppmであってもよく、0ppmを超えてもよい。
【0059】
上記形状補助層は、必要に応じて、更に紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤等の添加物を含有してもよい。
また、本発明の合わせガラス用中間膜の一部の領域に着色帯を設ける場合には、上記形状補助層の一部に青色顔料、青色染料、緑色顔料、緑色染料等の着色剤を配合してもよい。
【0060】
本発明の合わせガラス用中間膜において、上記発光層及び形状補助層に含まれる熱可塑性樹脂が、ともにポリビニルアセタール樹脂である場合には、上記発光層に含まれるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が、上記形状補助層に含まれるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量よりも低くなるように各層のポリビニルアセタール樹脂の組合せを選択することが好ましい。これにより、発光材料が発光層から形状補助層へ移行するのを防止することができる。
発光材料が発光層から形状補助層へ移行することをより一層防止できることから、上記発光層に含まれるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量と、上記形状補助層に含まれるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量との差は、6.5モル%未満であることが好ましい。上記水酸基量の差は、6.4モル%以下であることがより好ましく、6.2モル%以下であることが更に好ましく、6.0モル%以下であることが特に好ましく、5.8モル%以下であることが最も好ましい。
また、上記水酸基量の差は、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、3モル%以上であることが更に好ましい。
【0061】
上記発光層及び形状補助層に含まれる熱可塑性樹脂や可塑剤の組合せを選択することにより、得られる合わせガラス用中間膜に種々の性能を付与することも可能である。
例えば、上記発光層に含まれる可塑剤の含有量を、上記形状補助層に含まれる可塑剤の含有量よりも多くすることにより、本発明の合わせガラス用中間膜に遮音性能を付与することができる。具体的には、上記可塑剤の含有量の差を、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは15重量部以上とすることにより、高い遮音性を付与することができる。上記可塑剤の含有量の差は、50重量部以下であることが好ましく、40重量部以下であることがより好ましく、35重量部以下であることが更に好ましい。
【0062】
遮音性をより一層高める観点から、上記発光層に含まれるポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は、上記形状補助層に含まれるポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度よりも高いことが好ましい。具体的には、上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度の差を、0.1モル%以とすることが好ましく、1モル%以上とすることがより好ましく、5モル%以上とすることが更に好ましく、10モル%以上とすることが特に好ましい。
遮音性をより一層高める観点から、上記発光層に含まれるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、上記形状補助層に含まれるポリビニルアセタール樹脂の水酸基量よりも低いことが好ましい。具体的には、上記水酸基量の差を、1モル%以上とすることが好ましく、3モル%以上とすることがより好ましく、5モル%以上とすることが更に好ましい。
遮音性をより一層高める観点から、上記発光層に含まれるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、上記形状補助層に含まれるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度よりも高いことが好ましい。
【0063】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されない。例えば、可塑剤と発光材料とを含む可塑剤溶液と、ポリビニルアセタール樹脂とを充分に混合し、上記発光層を形成するための樹脂組成物を作製する。次に、接着力調整剤と可塑剤とを含む可塑剤溶液と、ポリビニルアセタール樹脂とを充分に混合し、上記形状補助層を形成するための樹脂組成物を作製する。そして、上記発光層を形成するための樹脂組成物と上記形状補助層を形成するための樹脂組成物とを共押出機を用いて共押出し、発光層と形状補助層とが積層された合わせガラス用中間膜を製造することができる。
【0064】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記発光層を有することから、特定の波長の光線を照射することにより発光する。この性質を利用することにより、高いコントラストで情報を表示することができる。
上記特定の波長の光線を照射するための装置として、例えば、スポット光源(浜松ホトニクス社製、「LC−8」)、キセノン・フラッシュランプ(ヘレウス社製、「CWランプ」)、ブラックライト(井内盛栄堂社製、「キャリーハンド」)等が挙げられる。
【0065】
本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができるが、特定の波長の光線を照射する側とは反対のガラス板として用いることが好ましい。更に、上記ガラス板としてポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、合わせガラスの特定領域において二重に表示されず、かつ、一定範囲の輝度でコントラストの高い画像を表示することができる合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明の合わせガラス用中間膜の態様の一例を説明する模式図である。
図2】本発明の合わせガラス用中間膜の態様の一例を説明する模式図である。
図3】本発明の合わせガラス用中間膜の態様の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
(1)発光層用樹脂組成物の調製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部に、発光材料として上記一般式(1)で表される構造を有する化合物であるジエチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート(Aldrich社製、「2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル」)1.5重量部を加え、発光性の可塑剤溶液を調製した。得られた可塑剤溶液の全量と、重合度が2300であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量12.5モル%、水酸基量23.6モル%、ブチラール化度63.9モル%)100重量部とをミキシングロールで充分に混練することにより、発光層用樹脂組成物を調製した。
【0070】
(2)形状補助層用樹脂組成物の調製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部に、接着力調整剤として酢酸マグネシウムを加え、可塑剤溶液を調製した。得られた可塑剤溶液の全量と、重合度が1700であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量0.9モル%、水酸基量30.0モル%、ブチラール化度69.1モル%)100重量部とをミキシングロールで充分に混練することにより、形状補助層用樹脂組成物を調製した。
なお、形状補助層中のマグネシウム元素の濃度が70ppmとなるように、酢酸マグネシウムをトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)に添加した。
【0071】
(3)合わせガラス用中間膜の製造
得られた発光層用樹脂組成物及び形状補助層用樹脂組成物を、押出機を用いて共押出することにより、形状補助層、発光層及び形状補助層がこの順に積層した、図3に記載された3層構造の合わせガラス用中間膜を得た。
なお、得られた中間膜の押出方向に対する垂直方向における一端と他端の最短距離を測定すると1mであった。
また、得られた合わせガラス用中間膜における発光層は最小厚み90μm、最大厚み140μmの楔形の断面形状を有し、合わせガラス用中間膜全体では最小厚み800μm、最大厚み1200μmの楔形の断面形状を有していた。なお、合わせガラス用中間膜の一端が最小厚みを有し、他端が最大厚みを有しており、光学顕微鏡で観察し、最小厚み及び最大厚みを測定した。
【0072】
(4)合わせガラスの製造
得られた中間膜を、2枚の透明なフロートガラス(縦1000mm×横300mm×厚さ2.5mm)で挟み込んで、積層体を得た。230℃の加熱ロールを用いて、得られた積層体を仮圧着した。その後、仮圧着された積層体を、加熱ロール法により、オートクレーブを用いて、135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着し、合わせガラス(縦1000mm×横300mm)を作製した。
【0073】
(5)輝度測定用合わせガラスの製造
一端と他端の最短距離上における、一端から10cmの点を中心となるように、縦10cm×横10cmの中間膜(薄い部分)を切り抜いた。同様に、一端と他端の最短距離上における、他端から10cmの点を中心となるように、縦10cm×横10cmの中間膜(厚い部分)を切り抜いた。
得られた中間膜(薄い部分)及び中間膜(厚い部分)それぞれを、2枚の透明なフロートガラス(縦100mm×横100mm×厚さ2.5mm)で挟み込んで、積層体を得た。230℃の加熱ロールを用いて、得られた積層体を仮圧着した。その後、仮圧着された積層体を、加熱ロール法により、オートクレーブを用いて、135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着し、輝度測定用合わせガラス(縦100mm×横100mm)を作製した。
【0074】
(実施例2、3)
発光材料の種類、発光層の厚み方向の最大厚み及び最小厚みを表1に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0075】
(比較例1、2)
発光材料の種類、発光層の厚み方向の最大厚み及び最小厚みを表1に示すようにし、形状補助層を積層しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0076】
(実施例4〜8、比較例3、4)
発光層の厚み方向の最大厚み及び最小厚み、並びに、中間膜の最小厚み、最大厚み及び楔角を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0077】
(実施例9〜12、比較例5、6)
用いるポリビニルブチラールの組成、可塑剤の含有量、発光層の厚み方向の最大厚み及び最小厚み、並びに、中間膜の最小厚み、最大厚み及び楔角を表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0078】
(実施例13)
(1)発光層用樹脂組成物の調製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部に、発光材料として上記一般式(1)で表される構造を有する化合物であるジエチル−2,5−ジヒドロキシテレフタレート(Aldrich社製、「2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジエチル」)1.5重量部を加え、発光性の可塑剤溶液を調製した。得られた可塑剤溶液の全量と、重合度が1700であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量0.9モル%、水酸基量30.0モル%、ブチラール化度69.1モル%)100重量部とをミキシングロールで充分に混練することにより、発光層用樹脂組成物を調製した。
【0079】
(2)第1の樹脂層及び第2の樹脂層用樹脂組成物の調製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部に、接着力調整剤として酢酸マグネシウムを加え、可塑剤溶液を調製した。得られた可塑剤溶液の全量と、重合度が1700であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量0.9モル%、水酸基量30.0モル%、ブチラール化度69.1モル%)100重量部とをミキシングロールで充分に混練することにより、第1の樹脂層及び第2の樹脂層用樹脂組成物を調製した。
なお、第1の樹脂層及び第2の樹脂層中のマグネシウム元素の濃度が70ppmとなるように、酢酸マグネシウムをトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)に添加した。
【0080】
(3)遮音層用樹脂組成物の調製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部と、重合度が2300であるポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量12.5モル%、水酸基量23.6モル%、ブチラール化度63.9モル%)100重量部とをミキシングロールで充分に混練することにより、遮音層用樹脂組成物を調製した。
【0081】
(4)形状補助層の作製
第1の樹脂層及び第2の樹脂層用樹脂組成物と、遮音層用樹脂組成物とを、共押出機を用いて共押出することにより、第1の樹脂層、遮音層及び第2の樹脂層がこの順に積層した、3層構造の積層体を形状補助層として得た。
【0082】
(5)合わせガラス用中間膜の製造
得られた発光層用樹脂組成物を、単層で押し出すことにより発光層を得た。形状補助層及び発光層を、第1の樹脂層、遮音層、第2の樹脂層、発光層の順に積層することで4層構造の合わせガラス用中間膜を得た。
なお、得られた中間膜の押出方向に対する垂直方向における一端と他端の最短距離を測定すると1mであった。
また、得られた合わせガラス用中間膜における発光層は最小厚み90μm、最大厚み140μmの楔形の断面形状を有し、合わせガラス用中間膜全体では最小厚み800μm、最大厚み1200μmの楔形の断面形状を有していた。更に、得られた合わせガラス用中間膜における第1の樹脂層は最小厚み305μm、最大厚み480μmの楔形の断面形状を有し、遮音層は平均厚み100μmの矩形の断面形状を有し、第2の樹脂層は最小厚み305μm、最大厚み480μmの楔形の断面形状を有していた。なお、合わせガラス用中間膜の一端が最小厚みを有し、他端が最大厚みを有しており、光学顕微鏡で観察し、最小厚み及び最大厚みを測定した。
【0083】
(6)合わせガラスの製造
得られた中間膜を、2枚の透明なフロートガラス(縦1000mm×横300mm×厚さ2.5mm)で挟み込んで、積層体を得た。230℃の加熱ロールを用いて、得られた積層体を仮圧着した。その後、仮圧着された積層体を、加熱ロール法により、オートクレーブを用いて、135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着し、合わせガラス(縦1000mm×横300mm)を作製した。
【0084】
(7)輝度測定用合わせガラスの製造
一端と他端の最短距離上における、一端から10cmの点を中心となるように、縦10cm×横10cmの中間膜(薄い部分)を切り抜いた。同様に、一端と他端の最短距離上における、他端から10cmの点を中心となるように、縦10cm×横10cmの中間膜(厚い部分)を切り抜いた。
得られた中間膜(薄い部分)及び中間膜(厚い部分)それぞれを、2枚の透明なフロートガラス(縦100mm×横100mm×厚さ2.5mm)で挟み込んで、積層体を得た。230℃の加熱ロールを用いて、得られた積層体を仮圧着した。その後、仮圧着された積層体を、加熱ロール法により、オートクレーブを用いて、135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着し、輝度測定用合わせガラス(縦100mm×横100mm)を作製した。
【0085】
(実施例14、比較例7、8)
発光層の最小厚み及び最大厚み、第1の樹脂層の最小厚み及び最大厚み、並びに、第2の樹脂層の最小厚み及び最大厚みを表4に示すように変更したこと以外は、実施例13と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0086】
(評価)
実施例及び比較例で得られた合わせガラスについて、以下の方法で評価を行った。
結果を表1〜4に示した。
【0087】
(1)二重像の発生の評価
得られた合わせガラス(縦1000mm×横300mm)をフロントガラスの位置に設置した。合わせガラスの下方に設置した表示ユニットから表示情報を合わせガラスに反射させ、所定の位置で二重像の有無を目視で確認した。二重像が確認されない場合を「○」、二重像が確認される場合を「×」として評価した。
【0088】
(2)輝度のバラツキの評価
得られた輝度測定用合わせガラスを、暗室下にて、合わせガラスの面に対して垂直方向に10cm離れた位置に配置したHigh Powerキセノン光源(朝日分光社製、「REX−250」、照射波長405nm)から合わせガラスの全面へ光を照射し、光を照射した合わせガラスの面から45度の角度で、合わせガラス面からの最短距離として、35cm離れた位置に配置した輝度計(トプコンテクノハウス社製、「SR−3AR」)によって輝度を測定した。
中間膜(薄い部分)及び中間膜(厚い部分)における輝度の差の絶対値が200以下である場合を「○」、200を超える場合を「×」と評価した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、合わせガラスの特定領域において二重に表示されず、かつ、一定範囲の輝度でコントラストの高い画像を表示することができる合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 合わせガラス用中間膜
11 発光層
12 形状補助層
2 合わせガラス用中間膜
21 発光層
22 形状補助層
23 形状補助層
3 合わせガラス用中間膜
31 発光層
32 形状補助層
33 形状補助層
図1
図2
図3