(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体を順に積層した単電池を備える発電部と前記発電部を収容する電池外装容器とを有してなるリチウムイオン電池であって、
前記正極活物質層が正極活物質粒子の非結着体であり、前記負極活物質層が負極活物質粒子の非結着体であり、
前記単電池が可撓性を有し、
前記正極集電体は、金属集電体又は樹脂集電体である基材の前記正極活物質層を積層する面に第1の導電層を有するとともに、前記発電部の最外表側に第3の導電層を有し、
前記負極集電体は、金属集電体又は樹脂集電体である基材の前記負極活物質層を積層する面に他の導電層を有するとともに、前記他の導電層と前記負極活物質層との間に第2の導電層を有し、さらに、前記発電部の最外表側に前記第3の導電層を有し、
前記第1の導電層及び前記第2の導電層は、導電性材料を含んでなる導電性部材で形成されており、前記導電性材料がニッケル、銅、鉄、ステンレス鋼及び導電性カーボンからなる群より選択される少なくとも一種である
リチウムイオン電池。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1、
図2、
図3A及び
図3Bを参照して、本発明のリチウムイオン電池の第一の実施形態について説明する。
図1は、本発明のリチウムイオン電池のうち、第一の実施形態としてのリチウムイオン電池の断面図、
図2は第一の実施形態におけるリチウムイオン電池の作用を説明するための断面図、
図3Aは第一の実施形態におけるリチウムイオン電池の斜視図、
図3Bは第一の実施形態におけるリチウムイオン電池の作用を説明するための斜視図である。
【0015】
本発明のリチウムイオン電池のうち、第一の実施形態としてのリチウムイオン電池Lの電池外装容器20(以下、単に容器20と称することがある)は、
図1及び
図3Aに詳細を示すように、シート状の部材をそれぞれ所定形状に形成してなる上容器20a及び下容器20bに分割されて構成されている。上容器20a及び下容器20bは略同一の形状に形成されており、一面が開口した上容器本体20c及び下容器本体20dと、これら上容器本体20c及び下容器本体20dの
図1において左右の端部から側方に突出する一対の上容器縁部20e及び下容器縁部20fとを備える。容器20内には、リチウムイオン電池Lの発電部を構成するリチウム二次単電池(以下、単に「単電池」とも称する)1が収容されている。
【0016】
上容器20a及び下容器20bの内面(
図1において上容器20aの下面及び下容器20bの上面)、すなわち、容器20の内面には、導電性樹脂層をなす樹脂集電体である正極集電体7及び負極集電体8がそれぞれ配置されている。そして、これら正極集電体7及び負極集電体8の一端部、より詳細には、
図1において正極集電体7の左端部及び負極集電体8の右端部は、容器20の外縁部から外方(
図1において正極集電体7は左外方、負極集電体8は右外方)に突出し、この突出部が電極端子7a及び8aとされる。
【0017】
なお、2つの電極端子はそれぞれ正極集電体7及び負極集電体8と異なる部材である集電部材から構成されてもよい。
【0018】
集電部材13及び14を用いる場合、正極集電体7及び負極集電体8は突出部[
図1において正極集電体7の左端部(電極端子7a)及び負極集電体8の右端部(電極端子8a)]を有さない略矩形であってもよい。集電部材13及び14は、上容器20aの内面と正極集電体7との間及び下容器20bの内面と負極集電体8との間にそれぞれ正極集電体7及び負極集電体8と電気的に接続するように配置されることが好ましい。
【0019】
図6に示す本実施形態の別の例に係るリチウムイオン電池Lでは、上容器20a及び下容器20bと発電部を構成する単電池1との間には集電部材13及び14がそれぞれ介在されており、この集電部材13及び14の一部である13a及び14aはそれぞれ上容器縁部20e及び下容器縁部20fを通って、リチウムイオン電池Lの外方にまで延出し、電極端子13a及び14aとされている。
【0020】
図1及び
図6に示す第一の実施形態としてのリチウムイオン電池Lの上容器20a及び下容器20bの間には略平板状のセパレータ4が配置され、この上容器20aと下容器20bとの間の中空な空間を正極室2及び負極室3にそれぞれ区分している。そして、正極室2及び負極室3には、それぞれ正極活物質層5と負極活物質層6とが充填され、容器20の上容器縁部20e及び下容器縁部20fの間がシール部材(図略)により封止されることで、本実施形態のリチウムイオン電池Lが形成されている。従って、第一の実施形態におけるリチウムイオン電池において、発電部を構成する単電池1は、正極集電体7、正極活物質層5、セパレータ4、負極活物質層6及び負極集電体8が順に積層されて構成されている。
【0021】
ここで、本明細書において、「充填された」とは、正極活物質粒子11を含むが正極活物質層5が正極室2に、負極活物質粒子12を含む負極活物質層6が負極室3にそれぞれ収納されている状態を意味し、好ましくは、正極活物質粒子11と電解液とが正極室2に、負極活物質粒子12と電解液とが負極室3にそれぞれ収納されている状態を意味し、正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12はそれぞれ電解液と混合された状態であることが好ましい。
【0022】
正極活物質層5は、正極活物質粒子11を含む非結着体であり、負極活物質層6は、負極活物質粒子12を含む非結着体である。
【0023】
既知のリチウムイオン電池の正極活物質層及び負極活物質層は、活物質層の導電ネットワークを保持するためにバインダを用いて活物質及び導電助剤等を相互に結着した「結着体」を形成する。
【0024】
本明細書において、「非結着体」とは、バインダで活物質同士が相互に結着されていないことを意味する。すなわち、正極活物質層5及び負極活物質層6に含まれる正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12は、それぞれ外力に応じて移動できる状態であり、非結着体である正極活物質層5及び負極活物質層6は外力に応じて自在に変形可能である。正極活物質層5及び負極活物質層6にそれぞれ含まれる正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12は、正極活物質層5及び負極活物質層6の変形に追従して移動することができるため、隣接する正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12との電気的接続が切れることが無い。そのため、リチウムイオン電池Lが大きく変形した場合でも導電経路を維持することができ、充放電特性を発揮できる。
【0025】
非結着体である正極活物質層5及び負極活物質層6は、流動性を有する性状であることが好ましい。流動性を有する性状とは、粉体状、スラリー状及び懸濁液体状等の外力を加えることによって活物質粒子が移動して全体の形状が自在に変化する性状を意味し、正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12をそれぞれ電解液と混合した場合には、その混合重量比を調整することによって、ゲル状、スラリー状、粉体状又はこれらに近い性状等が含まれる。
【0026】
本発明において、正極室2及び負極室3に正極活物質層5又は負極活物質層6をそれぞれ充填した状態にするには、活物質粒子(正極活物質粒子11又は負極活物質粒子12)を電解液と混合して得られる正極電極組成物又は負極電極組成物をシート状に成形して得られる正極活物質層5及び負極活物質層6を正極室2及び負極室3にそれぞれ配置してもよく、正極電極組成物及び負極電極組成物をそのまま正極室2又は負極室3に入れてもよく、粉体状の正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12を直接正極室2及び負極室3にそれぞれに入れてもよい。
【0027】
粉体状の正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12を直接正極室2及び負極室3に入れた場合には、その後電解液を入れることが好ましい。
【0028】
正極電極組成物及び負極電極組成物を正極活物質層5及び負極活物質層6にする場合、バインダを用いないで正極電極組成物及び負極電極組成物をそれぞれシート状の基材上に所定の厚さに塗布し、非水溶媒を除去することで活物質同士が結着していないままに正極活物質層5及び負極活物質層6とすることができる。
【0029】
正極室2及び負極室3に正極電極組成物又は負極電極組成物を入れる場合、並びに粉体状の正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12を入れる場合、容器20に振動、衝撃を与えると正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12を正極室2及び負極室3に均一に充填することができ好ましい。
【0030】
正極電極組成物は正極活物質粒子11を含んでなり、正極活物質粒子11としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4及びLiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2)、遷移金属酸化物(例えばMnO
2及びV
2O
5)、遷移金属硫化物(例えばMoS
2及びTiS
2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン及びポリカルバゾール)等が挙げられる。正極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から0.1〜100μmが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、2〜20μmであることが更に好ましい。
【0031】
正極活物質の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法ともいう)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。レーザー回折・散乱法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法であり、体積平均粒子径の測定には、日機装株式会社製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0032】
また、負極電極組成物は負極活物質粒子12を含んでなり、負極活物質粒子12としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリキノリン等)、スズ、シリコン、及び金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLi
4Ti
5O
12等)等が挙げられる。負極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01〜100μmが好ましく、0.1〜20μmであることがより好ましく、2〜10μmであることが更に好ましい。
【0033】
負極活物質の体積平均粒子径は、正極活物質と同様に求めることができる。
【0034】
正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12は、それぞれ、表面の少なくとも一部が被覆用樹脂を含む被覆剤からなる被覆層で被覆されてなる被覆正極活物質粒子及び被覆負極活物質粒子であることが好ましく、正極活物質粒子11は、表面の少なくとも一部が被覆用樹脂及び導電助剤を含む被覆剤からなる被覆層で被覆されてなる被覆正極活物質粒子であることがより好ましい。被覆活物質粒子であると正極活物質層5及び負極活物質層6の柔軟性がそれぞれ更に良好となり好ましい。また、充放電時に発生する電解液と活物質との電気化学反応を抑制できて電解液の劣化を抑制できてサイクル特性が良好となると考えられるので好ましい。また、正極活物質粒子11が被覆用樹脂及び導電助剤を含む被覆剤からなる被覆層で被覆されてなる被覆正極活物質粒子であると正極活物質層5の電子電導性がさらに良好となり好ましい。なお、被覆負極活物質粒子が有する被覆層は導電助剤を含んでいても含んでいなくとも良く、特に負極活物質粒子12として黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体、コークス類及び炭素繊維を用いる場合には、被覆剤が導電助剤を含まなくとも負極活物質層6は良好な電子電導性を有するが、導電助剤を含む被覆剤で被覆して負極活物質層6の電子電導性を調整しても良い。
【0035】
本発明において被覆とは、活物質粒子の表面の少なくとも一部に被覆剤が付着している状態を意味し、活物質粒子表面に被覆剤が点在している状態も含む。活物質粒子の表面に被覆剤が付着している状態は、走査型電子顕微鏡等を用いて得られた被覆活物質粒子の拡大観察画像を観察することで確認することができる。
【0036】
被覆剤は被覆用樹脂を含んでおり、正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12の周囲が被覆剤で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨脹を抑制することができる。被覆用樹脂としては、電解液を吸収して膨潤する樹脂を用いることができ、具体的な例としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中ではビニル樹脂が好ましい。
【0037】
ビニル樹脂は、ビニルモノマー(a)を必須構成単量体とする樹脂であり、ビニルモノマー(a)としてカルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)及び下記一般式(1)で表されるビニルモノマー(a2)を必須構成単量体とする樹脂であることが好ましい。
CH
2=C(R
1)COOR
2 (1)
[式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は炭素数4〜36の分岐アルキル基である。]
【0038】
カルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)としては、ビニル基含有モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸等]、ビニル基含有ジカルボン酸[(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸等]等が挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。なお、本明細書において(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を意味する。
【0039】
ビニルモノマー(a1)は、アルカリ金属(ナトリウム及びリチウム等)との塩として用いることもできる。ビニルモノマー(a1)を塩で用いる場合、塩であるビニルモノマー(a1)を重合してもよく、樹脂を中和して塩にしてもよい。
【0040】
上記一般式(1)で表されるビニルモノマー(a2)において、R
1は水素原子又はメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
【0041】
R
2は炭素数4〜36の分岐アルキルアルコールから水酸基を除いた残基であり、具体例としては、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、1−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−メチルノニル基、1−エチルオクチル基、1−メチルデシル基、1−エチルノニル基、1−ブチルエイコシル基、1−ヘキシルオクタデシル基、1−オクチルヘキサデシル基、1−デシルテトラデシル基、1−ウンデシルトリデシル基、iso−ブチル基、2−メチルブチル基、2−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2−エチルヘプチル基、2−メチルノニル基、2−エチルオクチル基、2−メチルデシル基、2−エチルノニル基、2−ヘキシルオクタデシル基、2−オクチルヘキサデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ウンデシルトリデシル基、2−ドデシルヘキサデシル基、2−トリデシルペンタデシル基、2−デシルオクタデシル基、2−テトラデシルオクタデシル基、2−ヘキサデシルオクタデシル基、2−テトラデシルエイコシル基及び2−ヘキサデシルエイコシル基等が挙げられ、好ましくは2−エチルヘキシル基及び2−デシルテトラデシル基である。
【0042】
上記一般式(1)で表されるビニルモノマー(a2)としては、(メタ)アクリル酸と前記の炭素数4〜36の分岐アルキルアルコールとを公知の方法でエステル化して得られるビニルモノマーが挙げられ、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましく、メタクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。
【0043】
また、ビニル樹脂の構成単量体としては、カルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)及び上記一般式(1)で表されるビニルモノマー(a2)の他に、共重合性ビニルモノマー(a3)が含まれていてもよい。
【0044】
活性水素を含有しない共重合性ビニルモノマー(a3)としては、下記(a31)〜(a38)が挙げられる。
【0045】
(a31)炭素数1〜18のモノアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレート等。
【0046】
(a32)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)アルキル(炭素数1〜18)エーテルと(メタ)アクリレートとのエステル:メタノールのエチレンオキサイド10モル付加物のモノメチルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル、プロピレンオキサイド10モル付加物のモノメチルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル等。
【0047】
(a33)窒素元素含有ビニル化合物:N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン等及びこれらを4級化したもの。
【0048】
(a34)ビニル炭化水素:エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン及びベンジルスチレン等。
【0049】
(a35)ビニルエステル:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、ジアリルフタレート、メチル−4−ビニルベンゾエート及びアセトキシスチレン等。
【0050】
(a36)ビニルエーテル:ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル−2−エチルメルカプトエチルエーテル、ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン、ビニルフェニルエーテル及びフェノキシスチレン等。
【0051】
(a37)ビニルケトン:ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等。
【0052】
(a38)ビニルスルホン酸:ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸並びにこれらのアルカリ金属との塩等。
【0053】
上記(a3)として例示したもののうち耐電圧の観点から好ましいのは、(a31)、(a32)、(a33)及び(a38)であり、更に好ましいのは、(a31)であり、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。
【0054】
カルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)、上記一般式(1)で表されるビニルモノマー(a2)及び共重合性ビニルモノマー(a3)の含有量は、重合体の構成単量体の合計重量を基準として、それぞれ(a1)が0.1〜80重量%であり、(a2)が0.1〜99.9重量%であり、(a3)が0〜99.8重量%であることが好ましい。
【0055】
それぞれの含有量が上記範囲内であると、正極活物質層5及び負極活物質層6において、正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12の移動が良好となる。
【0056】
より好ましい含有量は、(a1)が15〜60重量%、(a2)が5〜60重量%、(a3)が5〜80重量%であり、更に好ましい含有量は、(a1)が25〜50重量%、(a2)が15〜45重量%、(a3)が20〜60重量%である。
【0057】
被覆用樹脂としてビニル樹脂を用いる場合、ビニル樹脂の数平均分子量の下限は3,000であることが好ましく、より好ましくは50,000、更に好ましくは100,000、特に好ましくは200,000であり、上限は2,000,000であることが好ましく、より好ましくは1,500,000、更に好ましくは1,000,000、特に好ましくは800,000である。
数平均分子量は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)測定により求めることができる。
・装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
・溶媒:オルトジクロロベンゼン
・標準物質:ポリスチレン
・検出器:RI
・サンプル濃度:3mg/ml
・カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED−B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
・カラム温度:135℃
【0058】
被覆用樹脂として用いるビニル樹脂は、単量体を用いて公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合及び懸濁重合等)により製造することができる。
【0059】
重合に際しては、公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル等)]、パーオキサイド系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等)等}を使用して行なうことができる。
【0060】
重合開始剤の使用量は、構成単量体の合計重量に基づいて0.01〜5重量%であることが好ましい。
【0061】
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、エステル(例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル等の炭素数2〜8のエステル)、アルコール(例えばメタノール、エタノール及びオクタノール等の炭素数1〜8のアルコール)、炭化水素(例えばn−ブタン、シクロヘキサン及びトルエン等の炭素数4〜8の炭化水素)及びケトン(例えばメチルエチルケトン等の炭素数3〜9のケトン)が挙げられ、使用量は構成単量体の合計重量に基づいて5〜900%であることが好ましい。
【0062】
乳化重合及び懸濁重合の場合に用いる分散媒としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル(例えばプロピオン酸エチル)及び軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10〜24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10〜24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。更に安定剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
【0063】
溶液重合、乳化重合及び懸濁重合において、溶液又は分散液に含まれる構成単量体の濃度は5〜95重量%であることが好ましい。
【0064】
重合に際しては、メルカプト化合物(ドデシルメルカプタン及びn−ブチルメルカプタン等)及びハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素及び塩化ベンジル等)等の公知の連鎖移動剤を使用することができ、その使用量は構成単量体の全重量に基づいて2重量%以下であることが好ましい。
【0065】
また、重合反応における系内温度は−5〜150℃であることが好ましく、反応の終点は、未反応単量体の量を測定することにより決めることができる。なお、重合反応の終点における未反応単量体の量は、使用した構成単量体の合計重量に対して5重量%以下であることが好ましい。
【0066】
被覆剤が含む導電助剤としては、導電性を有する材料から選択して用いることができる。
【0067】
導電性を有する材料としては、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、導電性カーボン[グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ケッチェンブラック(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック、カーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブ等)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、ハードカーボン及びフラーレン等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0068】
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、更に好ましくはカーボンである。また導電助剤としては、粒子系セラミック材料、樹脂材料等の非導電性材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をメッキ等でコーティングしたもの及び非導電性材料と導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)とを混合したものも用いることができる。
【0069】
導電助剤の形状に特に制限はなく、球状、不定形状、繊維状、単一粒子状、凝集体及びこれらの組み合わせ等の形状を有するものを用いることができ、なかでも、導電性等の観点から、一次粒子径が5〜50nmの微粒子の凝集体であることが好ましい。導電助剤の形状は、走査型電子顕微鏡等を用いて得られた導電助剤の拡大観察画像を観察し視野にある粒子を計測することで得ることができる。
【0070】
被覆剤に含まれる被覆用樹脂と導電助剤との重量比は、被覆用樹脂:導電助剤=100:1〜100:200が好ましく、更に好ましくは100:5〜100:100である。この範囲にあると正極活物質層5及び負極活物質層6の導電性が良好となる。
【0071】
被覆活物質粒子は、例えば、正極活物質粒子11又は負極活物質粒子12を万能混合機に入れて30〜500rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂及び必要により用いる導電助剤を有機溶剤に混合した樹脂溶液を1〜90分かけて滴下混合し、更に必要により用いる導電助剤を混合し、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に10〜150分保持することにより得ることができる。
【0072】
樹脂溶液に含まれる被覆用樹脂の割合は、樹脂溶液の重量に基づいて10〜50重量%が好ましい。樹脂溶液に用いる有機溶剤としては被覆用樹脂を溶解可能な有機溶剤を選択することができる。
【0073】
被覆活物質粒子が得られたことは、走査型電子顕微鏡等を用いて得られた被覆活物質粒子の拡大観察画像を観察することで確認することができる。
【0074】
正極室2及び負極室3に正極電極組成物及び負極電極組成物をそれぞれ入れる場合、正極電極組成物及び負極電極組成物としては、正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12のそれぞれをそれぞれ電解液又は非水溶媒と混合して得られる混合物であることが好ましく、スラリー状の混合物であることがより好ましい。この場合、正極電極組成物及び負極電極組成物にそれぞれ含まれる正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12の重量は、電解液又は非水溶媒の重量に基づいて10〜60重量%であることが好ましい。
【0075】
電解液としては、公知のリチウムイオン電池の製造に用いられる電解質及び非水溶媒を混合して得られる公知の電解液を使用することができる。
【0076】
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、無機酸のリチウム塩(LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6及びLiClO
4等)及び有機酸のリチウム塩[LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2及びLiC(CF
3SO
2)
3等]等が挙げられ、これらの電解質は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPF
6である。
【0077】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、ラクトン、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物等を用いることができる。これらの非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
非水溶媒のなかでも電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、より好ましいのはラクトン、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、更に好ましいのは環状炭酸エステル、及び環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。特に好ましいのはプロピレンカーボネート(PC)、プロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)との混合液、及びエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合液である。
【0079】
電解液に含まれる電解質の濃度は、電解液の容量に基づいて0.1〜3mol/Lが好ましく、0.5〜2mol/Lがより好ましい。
【0080】
本発明において正極活物質層5及び負極活物質層6は、イオン抵抗を低減できる等の観点からそれぞれ前記の被覆活物質粒子とともに繊維状導電性フィラーを含むことが好ましい。繊維状導電性フィラーとしては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維のなかでも炭素繊維が好ましい。
【0081】
繊維状導電性フィラーは、イオン抵抗及び活物質層の強度等の観点から、平均繊維長が100〜1000μmが好ましく、110μm〜600μmが更に好ましく、150μm〜500μmが特に好ましい。平均繊維径は、0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることが更に好ましい。
【0082】
正極活物質層5及び負極活物質層6に繊維状導電性フィラーを含む場合、繊維状導電性フィラーの割合は、被覆活物質粒子の重量に基づいて0.5〜5重量%であることが好ましい。
【0083】
正極活物質層5及び負極活物質層6に繊維状導電性フィラーを含む場合、正極室2及び負極室3のそれぞれに、正極活物質粒子11と繊維状導電性フィラーと電解液とを含む正極電極組成物及び負極活物質粒子12と繊維状導電性フィラーと電解液とを含む負極電極組成物をそれぞれ充填して正極活物質層5及び負極活物質層6を形成することが好ましい。
【0084】
正極活物質層5及び負極活物質層6の厚さは、200μm以上であることが好ましい。より好ましくは500μm以上、更に好ましくは1000μm以上である。この厚さ以上であると、単位体積あたりの活物質量が多くなり、蓄電容量が大きい電池とできる。なお、正極活物質層5及び負極活物質層6の厚さの上限は蓄電容量に応じて調整することができるが、充放電レート特性の観点から3000μm以下であることが好ましい。
【0085】
セパレータ4としては、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂及びポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)製の多孔性フィルム、多孔性フィルムの多層フィルム(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体等)、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)及びガラス繊維等からなる不織布並びにこれらの表面にシリカ、アルミナ及びチタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用セパレータ等を用いることができる。
【0086】
セパレータ4の厚みは、リチウムイオン電池の用途により調整することができるが、携帯機器等の電子機器等の用途においては、単層あるいは多層で好ましくは5〜100μmであり、更に好ましくは10〜50μmである。
【0087】
前記多孔性フィルム又はその多層フィルムからなるセパレータ4の細孔径は、最大の細孔径が1μm以下であることが好ましい。不織布を用いる場合、セパレータ4の厚さは、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
【0088】
正極集電体7及び負極集電体8は金属集電体又は樹脂集電体であり、それぞれ公知の金属集電体並びに日本国特許公開第2012−150905号公報及び国際公開第WO2015/005116号等に記載の公知の樹脂集電体等を用いることができる。
【0089】
金属集電体としては、リチウムイオン電池に一般に使用する金属集電体を用いることができ、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの一種以上を含む合金並びにステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属からなる集電体等が挙げられる。
【0090】
金属集電体の基材の形態は、薄板状、金属箔状及びメッシュ状のいずれであってもよく、金属集電体の基材の表面にスパッタリング、電着及び塗布等の手法により金属層を形成してもよい。
【0091】
樹脂集電体とは、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に導電性を付与した高分子から形成された集電体である。
【0092】
導電性高分子材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル及びポリオキサジアゾール等が挙げられる。なお、導電性の高分子材料を含む樹脂集電体の導電性を向上させる目的から、更に後述する導電性フィラーを含んでいることが好ましい。
【0093】
非導電性高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0094】
非導電性高分子材料としては、電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、より好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0095】
非導電性高分子材料に導電性を付与した高分子は、非導電性高分子材料と導電性フィラーとを混合することで得ることができ、導電性フィラーは、導電性を有する材料から得られるフィラーから選択される。好ましくは、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から得られるフィラーからを用いるのが好ましい。具体的には、カーボン材料、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケル及びステンレス(SUS)等の合金材等から得られるフィラーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでも耐食性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料又はニッケルから得られるフィラー、より好ましくはカーボン材料から得られるフィラーである。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。なお、導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものを用いることもできる。
【0096】
導電性フィラーの形状は粒子状、繊維状及びこれらの凝集体のいずれの形状であってもよい。
【0097】
樹脂集電体は、日本国特許公開第2012−150905号公報及び国際公開第WO2015/005116号等に記載の公知の方法で得ることができ、具体例としては、ポリプロピレンに導電性フィラーとしてアセチレンブラックを5〜20部分散させた後、熱プレス機で圧延したもの等が挙げられる。また、その厚みも特に制限されず、公知のものと同様、あるいは適宜変更して適用することができる。
【0098】
正極集電体7及び負極集電体8は、金属集電体又は樹脂集電体をそのまま用いても、その表面に後述する導電層を形成したものを用いてもよく、電池特性等の観点から、導電層を形成した金属集電体又は樹脂集電体であることが好ましい。
【0099】
上述のように正極集電体7及び負極集電体8の形状は、電極端子7a及び8aとなる突出部を有していてもよく、突出部を有さない略矩形であってもよい。
【0100】
突出部を有さない略矩形の正極集電体7及び負極集電体8を用いる場合、上容器20aの内面と正極集電体7との間及び下容器20bの内面と負極集電体8との間に、それぞれの集電体と電気的に接続するように配置された集電部材を有することが好ましい。
【0101】
集電部材は、電極端子7a及び8aとなる突出部を有する略平板状であることが好ましく、銅箔及びアルミニウム箔等の導電性金属箔を用いることができ、導電性金属箔としてはその表面にカーボン等の他の導電性物質を塗布等して表面処理したものも用いることができる。なお、突出部は電流を取り出すことができればその形状に制限はなく、銅線等を用いることもできる。
【0102】
正極集電体7及び負極集電体8として樹脂集電体を用いる場合、正極集電体7及び負極集電体8は突出部を有さない略矩形の樹脂集電体であることが好ましく、電極端子7a及び8aとなる突出部を有する略平板状である集電部材を用いることが好ましい。
【0103】
シール部材を構成する材料としては、正極集電体7及び負極集電体8と接着性を有し、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0104】
シール部材は、好ましくは両面テープ状に、すなわち、平面状の基材の両面に上述の熱硬化性樹脂等を塗布して形成する方法、及び公知のシールフィルム等を用いたものが好ましい。シールフィルムとしては、三層構造のシールフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルムの上下に変性ポリプロピレンフィルムを積層したフィルム等)等を用いることができる。シールフィルムはインパルスシーラー等の公知のシール装置を用いて加熱圧着することでシールすることができる。
【0105】
上容器縁部20e及び下容器縁部20fをシール部材で封止することによって得られた容器20には、正極集電体7、正極活物質層5、セパレータ4、負極活物質層6及び負極集電体8が順に積層した単電池1が発電部として収容されており、この発電部は可撓性を有する。
【0106】
正極活物質層5及び負極活物質層6はそれぞれ活物質粒子の非結着体であり、正極活物質層5及び負極活物質層6は外力に応じて自在に変形可能であるから、前述した正極集電体7、セパレータ4及び負極集電体8を用いた積層体とすることによって可撓性を有する発電部とすることができる。
【0107】
容器20としては、この容器20内に正極電極組成物及び負極電極組成物を安定に収納しうる材料で構成された容器20であれば任意の容器20が適用可能であり、特に、電池外装容器20は可撓性を有することが好ましい。加えて容器20は、電極組成物と容器20とが接触する可能性を考慮して、絶縁性を有する材料で構成されたることが好ましく、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質及び負極集電体を順に積層してなる発電部を内部に収納した状態で封止(好ましくは減圧封止)することを考慮して、気密性を有する材料で構成されることが好ましい。
【0108】
このような容器20としては、ラミネートフィルムからなる容器が好ましい。ラミネートフィルムとしては、耐熱性樹脂フィルムを含む外層と熱可塑性樹脂フィルムを含む内層との間に金属層を介在した複合フィルムを用いることができ、耐熱性樹脂フィルムとしてはポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂の延伸フィルム等を好ましく用いることができ、熱可塑性樹脂フィルムとしては未延伸ポリオレフィンフィルム等を好ましく用いることができる。
【0109】
金属層としては、アルミニウム箔、ステンレス箔及び銅箔等による層を用いることができる。なお、耐熱性樹脂フィルムとは、樹脂フィルムの融点が内層となる熱可塑性樹脂フィルムの融点よりも高い樹脂フィルムであることを意味し、耐熱性樹脂フィルムを外層に用いると、内層となる熱可塑性樹脂フィルムだけを十分に加熱溶融することができ、電池外装容器のヒートシールを確実に行うことが可能になる。
【0110】
ラミネートフィルムの一例としては、アルミニウム又はニッケル等の金属層の面のうち、容器20の外面となる第一面に耐熱性樹脂(ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂等)をコーティングし、容器20の内面となる第二面に熱可塑性樹脂(ポリエチレン及びポリプロピレン等)をコーティングしたフィルムが上げられる。
【0111】
本発明のリチウムイオン電池のうち、容器20が可撓性を有するリチウムイオン電池Lは、リチウムイオン電池Lを屈曲させる方向に応力Sが作用すると、
図2及び
図3Bに示すように、可撓性を有する単電池1とともに屈曲することができる。従来のリチウムイオン電池であれば、屈曲に伴って活物質層での亀裂の発生や集電体との界面での剥離がおこる場合があるが、本発明に用いる単電池1が有する正極活物質層5及び負極活物質層6は、それぞれ正極活物質粒子と負極活物質粒子の非結着体であるため、正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12は
図2に詳細に示すように、活物質層内部に空隙等を生じることなく、活物質粒子同士の接触の維持したまま変形することができる。
【0112】
正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12が、表面の少なくとも一部が被覆用樹脂を含む被覆剤からなる被覆層で被覆されてなる被覆活物質粒子であると、被覆層は活物質粒子同士の接触部分において潤滑層として作用し、接触部分における活物質粒子の動きを更に助けることができる。そのため、被覆活物質粒子は、隣接する活物質粒子との接触部分に空隙を生じることなく更に容易に動くことができ、正極活物質層5及び負極活物質層6が変形した場合であっても、活物質粒子同士の接触を更に良好に維持することができ、好ましい。
【0113】
本発明に用いる単電池1は、正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12が結着されていないため、活物質粒子は隣接する活物質粒子との接触を維持したまま動くことが出来る。これにより、リチウムイオン電池Lを屈曲させる方向に応力Sが作用してリチウムイオン電池Lが変形した場合であっても、活物質層での亀裂の発生や集電体との界面での剥離を起こすことなく、正極集電体7と負極集電体8との間における導電経路を維持することができ、十分な充放電特性を発揮し続けることができる。
【0114】
このようにして得られたリチウムイオン電池Lは、全体に可撓性を持たせることが可能である。この結果、一例として
図3Bに示すように、リチウムイオン電池Lの長手方向及び短手方向のいずれにも応力S1、S2が同時に作用しても、リチウムイオン電池Lの長手方向及び短手方向に沿ってリチウムイオン電池Lを屈曲させることが可能である。加えて、このように二方向にリチウムイオン電池Lが屈曲しても、正極集電体7と負極集電体8との間における導電経路を確保することができ、十分な充放電特性を発揮し続けることができる。
【0115】
従って、
図5に示すように、第一の実施形態に係るリチウムイオン電池Lが、スマートフォン等の携帯電子機器SPを駆動するための電源電池として、この携帯電子機器SPに内蔵させることができる。そして、
図4に示すように、
図5に示す携帯電子機器SPを、操作者のズボン(パンツ)の尻ポケットHに挿入した場合、操作者の臀部の曲面に合わせて携帯電子機器SPが屈曲したとしても、上述のようにリチウムイオン電池Lが十分な充放電特性を発揮し続けることができるので、携帯電子機器SPを継続して使用することが可能となる。
【0116】
次に、
図16〜
図19を参照して、本発明の第二の実施形態としてのリチウムイオン電池L’について説明する。第二の実施形態におけるリチウムイオン電池L’は、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体を順に積層した単電池を複数積層した積層発電部を有する。
【0117】
図16は本発明の第二の実施形態におけるリチウムイオン電池L’が備える単電池を示す断面図、
図17は第二の実施形態におけるリチウムイオン電池L’ が備える単電池の一部破断斜視図、
図18は第二の実施形態としてのリチウムイオン電池L’の構造を示す断面図、
図19は第二の実施形態におけるリチウムイオン電池L’の斜視図である。
【0118】
これら図において、本実施形態係るリチウムイオン電池L’は、電池外装容器20内に2つ以上の単電池1を積層した積層発電部21が収納されて構成されている。
【0119】
リチウムイオン電池L’が有する発電部は、
図18に示すように積層発電部21として形成されており、隣り合う単電池1は、その正極集電体7の上面と負極集電体8の下面とが電気的な接続を維持したまま直列に積層されている。そして、この積層発電部21が容器20を減圧封止することによって収納されて、
図18及び
図19に示す本実施形態のリチウムイオン電池L’が構成されている。
【0120】
単電池1の積層においては、隣り合う単電池1の正極集電体7の上面と負極集電体8の下面とは電気的な接続を維持していれば積層する方法に限定はなく、正極集電体7の上面と負極集電体8の下面との間に導電性粘接着部材等の積層体の形成を補助する部材及び公知の放熱部材等を配置してもよい。
【0121】
本実施形態に係るリチウムイオン電池L’に用いる正極集電体7、正極活物質層5、セパレータ4、負極活物質層6、負極集電体8及びシール部材9としては、前述の第一の実施形態における正極集電体7、正極活物質層5、セパレータ4、負極活物質層6、負極集電体8及びシール部材9と同じものを用いる。
【0122】
リチウムイオン電池L’に用いる容器20としては、前記の第一の実施形態における容器20と同じものを用いることができる。
【0123】
単電池1の積層体である積層発電部21を有するリチウムイオン電池L’は、可撓性を有する単電池1を積層した積層発電部21を有している。そのため、積層発電部21を入れた容器20をその内部を減圧した後に封止することによって、
図20に示すように、リチウムイオン電池L’に対して容器の外部から均一に大気の圧力Pが作用し、隣り合う単電池1が有する正極集電体7と負極集電体8とが気泡を含むことなく均一に密着することができる。これにより、金属集電体に比較して導電率が低い樹脂集電体を正極集電体7及び負極集電体8に用いた場合であっても、電池特性の向上と安定化を図ることが出来る。また、積層した単電池1が互いに均一に密着すること等によって、リチウムイオン電池L’全体の歪みが無くなり、電池特性が向上する効果と剛性が高まる効果を奏する。
【0124】
また、正極活物質層5及び負極活物質層6は非結着体であるので、リチウムイオン電池L’に応力が作用しても、正極活物質層5及び負極活物質層6は、前述の第一の実施形態のリチウムイオン電池Lと同様に、活物質粒子同士の接触を維持し、活物質層内部に空隙等を生じることがない。そのため、積層発電部の大型化及び活物質層の厚膜化等に伴って活物質層内に歪みが生じても導電経路を維持することができ、十分な充放電特性を発揮することができる。
【0125】
正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12が、表面の少なくとも一部が被覆剤からなる被覆層で被覆されてなる被覆活物質粒子であると、この被覆層が活物質粒子同士の接触部分において潤滑層として作用し、接触部分における活物質粒子の動きを助けることができ、更に好ましい。隣接する活物質粒子との接触部分での活物質粒子の動きが良好であると、活物質層に歪みが生じた場合に、活物質粒子が動くことによって、活物質層に空隙を生じることなく歪みを緩和することができ、好ましい。
【0126】
リチウムイオン電池L’に用いる単電池1は、正極活物質粒子11及び負極活物質粒子12が結着されていないため、活物質粒子は隣接する活物質粒子との接触を維持したまま動くことが出来る。活物質粒子同士の接触部分における活物質粒子の動きが妨げられないことから、リチウムイオン電池L’に応力が作用した場合に、活物質層での亀裂の発生や集電体との界面での剥離を起こすことなく、正極集電体7と負極集電体8との間における導電経路を確保することができ、十分な充放電特性を発揮し続けることができる。
【0127】
従って、例えば第二の実施形態におけるリチウムイオン電池L’を
図21に示すように自動車Cに搭載した場合、この自動車Cの走行に伴いリチウムイオン電池L’に振動が加えられても、この振動にかかわらず十分な充放電特性を発揮し続けることができ、非常に好ましい。
【0128】
また、第二の実施形態におけるリチウムイオン電池L’は、積層発電部21を収容する容器20が可撓性を有する場合、リチウムイオン電池L’は全体に可撓性を有しており、リチウムイオン電池L’の長手方向と短手方向の両方に同時に応力が作用した場合にはリチウムイオン電池L’を長手方向及び短手方向に沿って屈曲することできる。二方向にリチウムイオン電池L’が屈曲した場合であっても、正極活物質層5及び負極活物質層6は非結着体であるので導電経路を確保することができ、十分な充放電特性を発揮し続けることができる。
【0129】
次に、本発明のリチウムイオン電池のうち、単電池1からなる発電部と前記発電部を収容する電池外装容器20とを有してなる、第一の実施形態としてのリチウムイオン電池Lの製造方法について説明する。
【0130】
まず、所定形状に形成された上容器20a及び下容器20bとの間に必要に応じて用いる集電部材13、正極集電体7、正極活物質層5、セパレータ、負極活物質層6、負極集電体8及び必要に応じて用いる集電部材14を順に積層した発電部を配置する。
【0131】
発電部を上容器20a及び下容器20bの間に配置する方法としては以下の方法によりおこなうことができる。
【0132】
(配置方法1)上容器本体20cの内面に必要に応じて用いる集電部材13及び正極集電体7を配置し、下容器本体20dの内面に必要に応じて用いる集電部材14及び負極集電体8を配置したあとに、上容器本体20c及び下容器本体20dの凹部に正極電極組成物及び負極電極組成物をそれぞれ充填する方法。
【0133】
(配置方法2)正極集電体7、正極活物質層5、セパレータ4、負極活物質層6及び負極集電体8を順に積層した発電部を、必要に応じて用いる集電部材13を配置した上容器本体20c及び必要に応じて用いる集電部材14を配置した下容器本体20dの間に配置する方法。
【0134】
(配置方法3)必要に応じて用いる集電部材13、正極集電体7、正極活物質層5、セパレータ4、負極活物質層6、負極集電体8及び必要に応じて用いる集電部材14を順に積層した発電部を上容器20a及び下容器20bの間に配置する方法。
【0135】
(配置方法1)において、正極電極組成物及び負極電極組成物を上容器本体20c及び下容器本体20dの凹部に充填する場合、その手法に限定はなく、正極電極組成物及び負極電極組成物がそれぞれ格納されたタンクからノズルを介して充填する手法や、インクジェット装置により上容器本体20c及び下容器本体20dの凹部に正極電極組成物及び負極電極組成物をそれぞれ充填する手法、及びシート状に成形した正極電極組成物及び負極電極組成物を配置する方法等の周知の手法が好適に適用される。
【0136】
(配置方法2)及び(配置方法3)において、必要に応じて用いる集電部材13、正極集電体7、正極活物質層5、セパレータ4、負極活物質層6、負極集電体8及び必要に応じて用いる集電部材14を順に積層した発電部を上容器本体20c及び下容器本体20dとの間に配置する場合、正極電極組成物を塗布して正極活物質層5を形成した正極集電体7とセパレータ4と負極電極組成物を塗布して負極活物質層6を形成した負極集電体8とを積層する方法等により単電池1からなる発電部を配置することができる。
【0137】
なお、上容器本体20c及び下容器本体20dの凹部に正極電極組成物及び負極電極組成物を充填する場合、正極電極組成物及び負極電極組成物の量は、少なくとも凹部がこれら正極電極組成物及び負極電極組成物により充満される程度の量であり、好ましくは正極電極組成物及び負極電極組成物が、上容器縁部20e及び下容器縁部20fから若干盛り上がる程度の量であることが好ましい。
【0138】
上容器本体20c及び下容器本体20dの凹部に正極電極組成物及び負極電極組成物をそれぞれ充填した場合には、次いで、上容器本体20c及び下容器本体20dのいずれか一方の上面に平板状のセパレータ4を配置して正極活物質層5又は負極活物質層6の上面をセパレータ4で覆う。この際、上述のように正極電極組成物又は負極電極組成物を上容器縁部20e及び下容器縁部20fから盛り上がる程度の量だけ上容器本体20c及び下容器本体20dの凹部に充填した場合、セパレータ4の上面をローラで押さえながらこのセパレータ4を配置し、正極活物質層5又は負極活物質層6を均質にすることが好ましい。
【0139】
上容器本体20c及び下容器本体20dの凹部に正極電極組成物及び負極電極組成物をそれぞれ充填した場合には、セパレータ4を配置した後に、次いで、上容器本体20c及び下容器本体20dのいずれかを上下逆転させて、上容器20a及び下容器20bを、それぞれの上容器縁部20e及び下容器縁部20fが相対向するように配置する。この状態で、上容器20a及び下容器20bにより形成される収容部内を脱気し、上容器縁部20e及び下容器縁部20fをシール部材により封止することで、
図1及び
図3Aに示すようなリチウムイオン電池Lを得ることができる。
【0140】
上記の製造方法により作製したリチウムイオン電池Lは、更にその平面に対して垂直方向に圧力(好ましくは0.1〜0.5MPa)をかけて少なくとも1回の充放電操作を行うことが好ましい。圧力をかけることで正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体の密着度が増して界面抵抗が低減するため、この状態で充放電することで電池性能が更に良好となる。なお、リチウムイオン電池Lに圧力をかけて行う充放電は少なくとも一回行えば良く、その後はかけた圧力を除いても良好な電池性能を発揮することができる。圧力をかけた状態で一度充放電を行うことで適切な導電経路が形成され、圧力を除いた後でもその導電経路が維持されるためと考えられる。リチウムイオン電池Lの平面に対して垂直方向に圧力をかける方法としては、プレス機を用いる方法及び金属板等の硬質な平面部材で挟む方法等を用いることができる。
【0141】
次に、第二の実施形態を有する本発明のリチウムイオン電池L’の製造方法について説明する。
【0142】
まず、正極集電体7及び負極集電体8のそれぞれの表面に、正極活物質層5及び負極活物質層6を形成して正極2及び負極3を形成する。正極2及び負極3を形成する手法は任意であり、正極集電体7及び負極集電体8のそれぞれの表面に正極電極組成物及び負極電極組成物を塗布する方法、正極集電体7及び負極集電体8のそれぞれの表面にノズル等を介して正極電極組成物及び負極電極組成物を載置した後に所定の厚さになるようにヘラ等で均等に広げる方法、正極電極組成物及び負極電極組成物をシート状に成形することで得られた正極活物質層5及び負極活物質層6を正極2及び負極3として配置する方法等の種々の手法が挙げられる。正極電極組成物及び負極電極組成物をシート状に成形する場合、正極電極組成物及び負極電極組成物をシート状の基材上に所定の厚さにそれぞれ塗布し、非水溶媒を除去することで活物質同士が結着していないままにシート状に成形することができる。
【0143】
その後、セパレータ4を介して正極2及び負極3を積層し、正極集電体7及び負極集電体8の端部、更にセパレータ4の端部をシール部材9により封止することで単電池1を製造することができる。
【0144】
次いで、上述の工程により製造された単電池1を、隣り合う単電池1の正極集電体7の上面と負極集電体8の下面とが隣接するように直列に積層して積層発電部21を形成し、更に、この積層発電部21を集電部材13及び14とともに容器20内に収納し、容器20内を脱気した後にシール部材で封止することで、本実施形態のリチウムイオン電池L’を製造することができる。隣接する単電池1の正極集電体7の上面と負極集電体8の下面との間に導電性粘接着部材等の積層体の形成を補助する薬剤の他、放熱部材等の公知の部材を配置することもできる。
【0145】
上記の製造方法により作製したリチウムイオン電池L’は、リチウムイオン電池Lと同様に、その平面に対して垂直方向に圧力(好ましくは0.1〜0.5MPa)をかけて少なくとも1回の充放電操作を行うことが好ましく、リチウムイオン電池L’の平面に対して垂直方向に圧力をかける方法もリチウムイオン電池Lと同様の方法等を用いることができる。
【0146】
次に、
図7A、
図7B及び
図7Cを参照して、本発明のリチウムイオン電池が有する単電池の変形例について説明する。
図7Aは、本発明のリチウムイオン電池が有する単電池の要部を示す断面図、
図7Bは
図7AのA円内拡大断面図、
図7Cは
図7AのB円内拡大断面図である。
【0147】
図7A〜
図7Cに示す単電池と、
図1、
図2及び
図6に示す前述の実施形態としてのリチウムイオン電池L並びに
図16〜
図18に示す前述の実施形態としてのリチウムイオン電池L’が有する単電池との相違点は、正極集電体7及び負極集電体8の構成にある。
【0148】
より詳細には、
図7Bに示すように、正極集電体7は、金属集電体又は樹脂集電体である基材15の下面、すなわち、正極活物質層5を積層する面(
図7Bにおいて下面)に第1の導電層16が形成され、また、基材15の上面、すなわち、発電部1の最外表面側(
図7Bにおいて上面)に第3の導電層18が形成されて構成されており、第1の導電層16及び第3の導電層18は、それぞれ基材15と電気的に接触している。
【0149】
図18等に示す前述の第二の実施形態におけるリチウムイオン電池L’が有する積層発電部21を、
図7A〜
図7Cに示す単電池を積層して形成する場合、負極集電体8と隣り合う正極集電体7は、負極集電体8との密着性等の観点から、第3の導電層18の上に更に導電性粘接着部材からなる導電性粘着層が配置されていても良い。
【0150】
本発明のリチウムイオン電池が有する単電池の変形例で用いる負極集電体8は、
図7Cに示すように、基材15の負極活物質層6を積層する面側(
図7Cにおいて基材15の上面側)には第2の導電層17を有し、基材15の発電部1の最外表面側(
図7Cにおいて基材15の下面側)には第3の導電層18を有し、第1の導電層16及び第2の導電層17は、それぞれ基材15と電気的に接触している。
図7Cにおいては、基材15の上面側表面には予め他の導電層19(好ましくは第3の導電層18と同じ導電層)が形成されており、その上に第2の導電層17が形成されており、他の導電層19が基材15及び第2の導電層17のそれぞれと電気的に接触することで、第2の導電層17が基材15と電気的な接触を維持している。
【0151】
これ以外の構成については、前述の実施形態としてのリチウムイオン電池L及びリチウムイオン電池L’と同様であるので、同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0152】
図7B及び
図7Cにおいて、正極集電体7及び負極集電体8を構成する基材15は、上述の実施形態としてのリチウムイオン電池L及びリチウムイオン電池L’を構成する正極集電体7及び負極集電体8のうち、金属集電体又は樹脂集電体と略同一の構成であるので、ここでの説明は行わない。
【0153】
このように、基材15と正極活物質層5及び負極活物質層6との間に第1の導電層16及び第2の導電層17をそれぞれ配置することにより、正極集電体7及び負極集電体8において、正極活物質層5及び負極活物質層6との接触抵抗を低減することができる。これにより、リチウムイオン電池L及びリチウムイオン電池L’の耐久性、特に電極の充放電サイクル耐久性を更に向上させることができる。
【0154】
第1の導電層16及び第2の導電層17は、それぞれ導電性材料を含んでなる導電性部材で形成されており、導電性材料としては特に制限されないが、鉄よりイオン化傾向の小さい金属、鉄、チタン、ジルコニウム、タンタル及びニオブからなる群より選択される少なくとも一種の金属、前記金属を主成分とする合金、並びに導電性カーボンからなる群より選択される少なくとも一種の導電性材料を含むことが好ましい。これらの材料は、その表面に絶縁性を有する酸化膜を形成しにくく、導電性フィラーとの電気的な接触が長期間に亘って維持されるためである。
【0155】
鉄よりイオン化傾向の小さい金属の具体例としては、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金及び金等が挙げられる。金属は酸化被膜が形成されることによって電気抵抗が上昇するが、鉄よりイオン化傾向の小さい金属の酸化被膜は電気抵抗が低いため、基材15と正極活物質層5及び負極活物質層6との接触抵抗を低いまま維持することが可能である。上記合金の例としては、ステンレス(SUS)等が挙げられる。
【0156】
上記導電性カーボンとしては、前記の導電助剤として例示したものと同じものが挙げられる。
【0157】
第1の導電層16及び第2の導電層17に含まれる導電性材料は、導電性部材が第1の導電層16及び第2の導電層17のいずれに用いられるかによって適宜選択されることが好ましい。
【0158】
例えば、導電性部材が第1の導電層16に用いられる場合には、導電性材料は、導電性カーボン、チタン及びステンレス鋼からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。すなわち、活物質層が正極活物質層5であり、かつ導電性部材が導電性カーボン、チタン及びステンレス鋼からなる群より選択される少なくとも一種の導電性材料を含むことが好ましい。これらの材料は耐食性(耐酸化性)に優れるため、電極の耐久性をより向上できる。
【0159】
また、導電性部材が第2の導電層17に用いられる場合には、導電性材料は、ニッケル、銅、鉄及びステンレス鋼からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。すなわち、活物質層が負極活物質層6であり、かつ前記導電性部材がニッケル、銅、鉄及びステンレス鋼からなる群より選択される少なくとも一種の導電性材料を含むことが好ましい。これらの材料は、Li+の挿入脱離やLiとの合金化による劣化を防止できる。
【0160】
上記導電性材料は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用してもよい。
【0161】
導電性材料の形状は、特に制限はなく、粒子状、粉末状、繊維状(短繊維及び長繊維等)、板状、塊状、布状及びメッシュ状等の公知の形状を適宜選択することができる。
【0162】
導電性材料が粒子状及び粉末状である場合、その平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)は、特に限定されるものではないが、0.01〜10μm、より好ましくは0.01〜3μm、更に好ましくは0.01〜1μm程度であることが好ましい。このような大きさであれば、基材15と導電性材料との接触効率が良好となり基材15と導電性部材との電気的接触効率をより高めることができる。
【0163】
導電性材料が繊維状である場合、その平均繊維長は特に制限されるものではないが、0.1〜100μmであることが好ましい。また、導電性フィラーが繊維状である場合の、その平均直径もまた特に制限されるものではないが、0.01〜10μm、より好ましくは0.01〜3μm、更に好ましくは0.01〜1μmであることが好ましい。このような大きさであれば、基材15と導電性材料との電気的接触効率をより高めることができ、導電性フィラーが繊維状である場合には、少量の添加でも2次元的な(横方向の)電気的接触効率を増大できるため、好ましい。
【0164】
第1の導電層16及び第2の導電層17を形成する導電性部材は、上記導電性材料のみから構成されても、下記に示す他の材料を含んでもよい。他の材料を含む場合、前記導電性部材に含まれる導電性材料の含有量は、前記基材15における導電性フィラーの含有量より多いことが好ましい。かような構成であれば、耐久性、特に電極の充放電サイクル耐久性をより向上できる。
【0165】
また、第1の導電層16及び第2の導電層17を形成する導電性部材が上記の導電性材料と他の材料を含む場合、他の材料として高分子材料を用いることができる。他の材料として導電性部材で用いられる高分子材料の例としては、例えば、導電性高分子[ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール等]、非導電性熱可塑性高分子{ポリエチレン[高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等]、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン−ブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン等}及び非導電性熱硬化性高分子[エポキシ樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等]等が挙げられる。これらは単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。なかでも接触抵抗を低減できる点から、非導電性熱硬化性高分子が好ましい。理由は明らかではないが、非導電性熱硬化性高分子を用いると硬化時の収縮作用によって生じる応力によって導電性材料の配列が整い、基材15と導電性部材との電気的接触をより高めることができるものと考えられる。
【0166】
第1の導電層16及び第2の導電層17を形成する導電性部材が導電性材料と高分子材料とを含む場合、導電性材料の含有量は、導電性部材の全質量に対して、20〜95重量%であることが好ましく、50〜90重量%であることがより好ましい。基材15として樹脂集電体を用いる場合には、前記導電性部材における導電性材料の含有量は、樹脂集電体に含まれるにおける導電性フィラーの含有量より多いことが好ましい。かような構成であれば、耐久性、特に電極の充放電サイクル耐久性をより向上できる。
【0167】
第1の導電層16及び第2の導電層17を形成する導電性部材は基材15上に配置される。導電性部材を配置する位置は基材15上の表面であれば、基材15の全面に設けてもよいし、必要な領域のみに配置してもよい。必要な領域のみに配置する場合、導電性部材は基材15が有する表面の一部に連続的又は間欠的に配置され、形成される導電層の形状としては、網目状、ストライプ状、格子状、ドット状及び帯状等の各種形状にすることができる。
【0168】
第1の導電層16及び第2の導電層17として基材15上に設けられる導電性部材の厚さは、好ましくは0.01〜60μm、より好ましくは0.1〜30μmである。
【0169】
次に、第3の導電層18は、第1の導電層16及び第2の導電層17と同様に、基材15と電気的に接触するものであるが、この第3の導電層18は、基材15と集電板である電極端子7a及び8aとの接触抵抗を低減させるために設けられたものである。
【0170】
すなわち、第3の導電層18を基材15と集電板との間に配置することにより、基材15と集電板との2次元的及び/又は3次元的な接触を増加させ、接触抵抗を低減することができる。これにより、電池の出力性能を向上させることができる。
【0171】
第3の導電層18は、導電性材料を含んでなる導電性部材で形成されており、導電性材料としては、第1の導電層16及び第2の導電層17で例示した導電性材料と同じものが挙げられる。
【0172】
導電性材料の形状、平均粒子径及び平均繊維長は、第1の導電層16及び第2の導電層17で例示した導電性部材の材料と同じであり、好ましい範囲も同じである。
【0173】
これらの中でも、上記したように表面に絶縁性の膜を形成しにくい点に加え、入手容易であり、導電助剤としても有効に機能しやすいといった観点から、導電性材料は導電性カーボンから構成されることが好ましく、アセチレンブラックが更に好ましい。
【0174】
また、第3の導電層18を形成する導電性部材は、上記の導電性材料に加えて、高分子材料を含んでもよい。導電性部材で用いられる高分子材料の例としては、第1の導電層16及び第2の導電層17で例示した高分子材料と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0175】
第3の導電層18を形成する導電性部材が導電性材料と高分子材料とを含む場合の導電性材料の含有量は、第1の導電層16及び第2の導電層17の場合と同様であり、好ましい範囲も同じである。
【0176】
第3の導電層18として基材15上に設けられる導電性部材の形状は、第1の導電層16及び第2の導電層17の場合と同様とすることができる。また、該導電性部材は、少なくとも正極集電体7及び負極集電体8のいずれか一方と集電板と接する面上に設けられることが好ましいが、正極集電体7及び負極集電体8の両方に設けられてもよい。
【0177】
第3の導電層18である導電性部材の厚さは、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.1〜30μmである。
【0178】
第3の導電層18の上に更に導電性粘接着部材からなる導電性粘着層を配置する場合、導電性粘接着部材としては、導電性材料の効果を損なわない範囲において、上記の導電性材料と粘着剤又は接着剤とを含んだものを用いることができる。
【0179】
使用可能な粘着剤及び接着剤は、特に制限されず、公知のものを用いることができ、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂及びビニルエーテル系樹脂等の熱可塑性樹脂を主成分とする粘着剤及び接着剤が挙げられる。
【0180】
熱可塑性樹脂を主成分とするアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを必須構成単量体とする(共)重合体を用いることができる。なお、本明細書において「(共)重合体」は、重合体及び/又は共重合体を指すものである。
【0181】
熱可塑性樹脂を主成分とするシリコン系樹脂としては、ジメチルシロキサンを必須構成単量体とする(共)重合体(ジメチルシロキサンガム及びジメチルシロキサンレジンとも言う)を用いることができる。
【0182】
熱可塑性樹脂を主成分とするビニルエーテル系樹脂としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル及び2−エチルヘキシルビニルエーテル等を構成単量体とする(共)重合体が挙げられる。
【0183】
粘着剤及び接着剤としては、市販のものを用いてもよく、たとえば、三洋化成工業株式会社製ポリシック310−S、AH−300、410−SA、430−SA、470−S及び610−SA等を用いることができる。
【0184】
導電性粘接着部材における導電性材料の含有量は、導電性粘接着部材の合計重量に対して2〜90重量%であることが好ましく、3〜85重量%であることがより好ましく、5〜75重量%であることが更により好ましく、5〜60重量%であることが特に好ましい。
【0185】
基材15上に、上述の第1の導電層16、第2の導電層17及び第3の導電層18をそれぞれ形成する方法としては、特に制限されないが、(1)シート状に形成した導電性部材を基材15上に転写する方法、(2)シート状に形成した導電性部材と基材15とを、導電性接着部材により貼り合わせる方法、及び(3)基材15上に導電性材料を含むインクを塗布して塗膜を基材15上に形成した積層体を得る工程を有する方法等が挙げられる。
【0186】
シート状に形成した導電性部材は、導電性材料と高分子材料とを有機溶剤(N−メチル−2−ビニルピロリドン等)に分散溶解した混合液を非接着性フィルム(ポリオレフィンフィルム及びポリイミドフィルム等)の上に所定の厚さで塗工した後に有機溶剤を乾燥等することにより除去して塗膜を作製する方法等により得ることができる。
【0187】
本発明のリチウムイオン電池に
図7A、
図7B及び
図7Cに記載の単電池を用いた場合、正極集電体7に第1の導電層16及び第3の導電層18を設け、負極集電体8に第1の導電層16、第2の導電層17及び第3の導電層18を設けたので、上述した実施形態のリチウムイオン電池L及びL’と同様の効果に加えて、正極集電体7と正極活物質層5との間の接触抵抗、負極集電体8と負極活物質層6との間の接触抵抗、正極集電体7と電極端子7aとの間の接触抵抗、並びに負極集電体8と電極端子8aとの間の接触抵抗を低下させることができ、リチウムイオン電池の耐久性、特に電極の充放電サイクル耐久性を更に向上させることができる。
【0188】
なお、これら第1の導電層16、第2の導電層17及び第3の導電層18の全てが必須ではなく、基材15の正極活物質層5又は負極活物質層6を積層する面に設けられる第1の導電層16及び第2の導電層17あるいは基材15の発電部1の最外表面側に設けられる第3の導電層18のいずれかを設けた構成であってもよい。
【0189】
次に、
図8〜
図11を参照して、本発明のリチウムイオン電池の適用例について説明する。
【0190】
図8は、第一の実施形態における本発明のリチウムイオン電池Lが搭載された電子機器を示す斜視図、
図9は前記リチウムイオン電池Lが搭載された電子機器を示す一部破断斜視図、
図10は別の電子機器の要部を示す断面図、
図11は前記リチウムイオン電池Lが搭載された電子機器の機能構成を示すブロック図である。
【0191】
図8において、30は、前記リチウムイオン電池Lが搭載された電子機器である。電子機器30は、いわゆるタブレット端末と呼ばれる、外形が略矩形板状に形成されたものであり、
図8においてその上面に、電子ペーパーや有機EL等、可撓性を有するディスプレイ部31と、同様に
図8においてその上面の下部に、ユーザからの操作入力を受け入れる操作ボタン32とを備える。電子機器30は、ディスプレイ部31やリチウムイオン電池等を収納する筐体33等、電子機器30を構成する部材全体が可撓性を有する部材から形成されており、これにより、電子機器30全体も可撓性を有するように構成されている。
【0192】
図9は、
図8に示す電子機器30の筐体33上部を取り外した状態の図であり、電子機器30の筐体33内部には、ディスプレイ部31のディスプレイ素子31a、操作ボタン32の操作入力が伝達される操作スイッチ32a及び電子機器30の各種動作を行うための半導体素子(図示略)が設けられた基板34、基板34とディスプレイ素子31a等を電気的に接続するためのコネクタ35及び前記リチウムイオン電池Lが収納されている。
【0193】
電子機器30に収納された前記リチウムイオン電池Lは、
図10にもっともよく示されるように、平面視矩形状の発電部1が所定間隔をおいてマトリクス状に配置されて構成されている。そして、
図10に示すように、前記リチウムイオン電池Lを構成する上容器20a及び下容器20bのうち、上容器20aは略平板状に形成されている一方で発電部1が設けられていない箇所の下容器20bは図中上方に窪んで形成され、発電部1の周囲に溝SLが形成されている。これにより、リチウムイオン電池Lは、面積が広い場合でもこの溝SLの部分でも屈曲可能に構成され、発電部1の可撓性と相まって、前記リチウムイオン電池L全体としての可撓性をより確保することができる。
【0194】
また、
図10に示すように、ディスプレイ素子31aの図中上面にはタッチパネル31bが設けられており、これらディスプレイ素子31a及びタッチパネル31b等によりディスプレイ部31が構成されている。なお、
図10においては基板34の図示を省略している。
【0195】
図11は、電子機器30の概略回路構成を示すブロック図である。図中、36は電子機器30の全体制御を行うCPU等からなる制御部、37はリチウムイオン電池への充電及び電源供給を制御する電源制御部、38はディスプレイ部31の表示制御を行う表示制御部、39は操作ボタン32からの操作入力を受け入れて制御部36に入力信号を送出する操作部、40は各種データを一時的又は非一時的に格納するメモリ部、41は移動体通信網や無線LANとの通信を行う通信部である。
【0196】
従って、電子機器30は、これを構成する部品等が可撓性を有するため、電子機器30全体としても可撓性を有し、しかも、電子機器30に搭載されたリチウムイオン電池Lも可撓性を有するとともに、屈曲された状態においても十分な充放電特性を発揮し続けることができるため、屈曲した状態での継続使用が可能である。
【0197】
また、近年のタブレット端末は大画面化及び軽量化の要求があるが、大画面化及び軽量化の双方を追求すると、タブレット端末全体を薄型の矩形板状に形成する必要がある。筐体を薄型の矩形板状に形成すると、一般的な金属筐体であると高剛性を確保することが困難である。本発明の第一の実施形態におけるリチウムイオン電池Lが屈曲しても十分な充放電特性を発揮し続けることができるため、前記リチウムイオン電池Lを用いることで薄型の矩形板状に形成した電子機器が変形することによる特性劣化の可能性を十分抑制することができる。
【0198】
次に、
図12及び
図13を参照して、第一の実施形態における本発明のリチウムイオン電池Lの別の適用例について説明する。
図12は、前記リチウムイオン電池Lが搭載された衣類を示す一部破断斜視図、
図13は
図12に示す衣類の機能構成を示すブロック図である。
【0199】
これら図において、50は本発明の前記リチウムイオン電池Lが搭載されたTシャツ等の衣類である。この衣類50には、
図12に示すように、その胸部分にウェアラブル端末51が取り付けられており、前記リチウムイオン電池Lはウェアラブル端末51に搭載されている。
【0200】
ウェアラブル端末51は、電子ペーパーや有機EL等、可撓性を有するディスプレイ部52と、各種動作を行うための半導体素子(図示略)が設けられた基板53と、前記リチウムイオン電池Lとを備え、ディスプレイ部52及び基板53が可撓性を有する部材から形成されている。
【0201】
図13は、前記リチウムイオン電池Lを搭載するウェアラブル端末51の概略回路構成を示すブロック図である。図中、54はウェアラブル端末51の全体制御を行うCPU等からなる制御部、55は前記リチウムイオン電池Lへの充電及び電源供給を制御する電源制御部、56はディスプレイ部52の表示制御を行う表示制御部、57は衣類50を着用するユーザの脈拍を測定する脈拍センサや加速度センサ等の各種センサ、58は各種入力を受け入れる操作部、59は各種データを一時的又は非一時的に格納するメモリ部、60は移動体通信網や無線LANとの通信を行う通信部である。
【0202】
ウェアラブル端末51は、これを構成する部品等が可撓性を有するため、ウェアラブル端末51全体としても可撓性を有する。ウェアラブル端末51に搭載された前記リチウムイオン電池Lが屈曲した状態においても十分な充放電特性を発揮し続けることができるため、ウェアラブル端末51は、屈曲した状態での継続使用が可能である。これにより、衣類50にこのウェアラブル端末51を取り付けた状態で使用することが可能になる。
【0203】
加えて、ウェアラブル端末51が備えるディスプレイ部52に、
図12に示すように動的な模様(図中ではハートマークを表示している)や変化する模様を表示でき、更には、各種センサ57による測定結果及びこれに基づく検査結果も表示することができる。
【0204】
次に、
図14及び
図15を参照して、第一の実施形態における本発明のリチウムイオン電池Lを搭載する別の適用例について説明する。
図14は、前記リチウムイオン電池Lが搭載された履物を示す一部破断斜視図、
図15は
図14に示す履物の機能構成を示すブロック図である。
【0205】
これら図において、70は第一の実施形態におけるリチウムイオン電池Lが搭載された履物であり、この履物70の底部に設けられた靴底71には、前記リチウムイオン電池Lと、基板72とが内蔵されている。前記リチウムイオン電池L及び基板72はいずれも可撓性を有する部材から形成されており、これらの図に示す履物は全体として可撓性を有するように構成されている。
図14に示されるように、前記リチウムイオン電池Lは、靴底71の前部(
図14において左方部分)に、基板72は靴底の後部(
図14において右方部分)にそれぞれ設けられている。
【0206】
図15は、履物70の概略回路構成を示すブロック図である。図中、73は履物70の全体制御を行うCPU等からなる制御部、74は前記リチウムイオン電池Lへの充電及び電源供給を制御する電源制御部、75は圧電素子等からなる発電装置、76は加速度センサ、ジャイロコンパス等の各種センサ、77はLED等の発光素子等を備える表示部、78は各種入力を受け入れる操作部、79は各種データを一時的又は非一時的に格納するメモリ部、80は移動体通信網との通信や無線LAN、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信を行う通信部である。
【0207】
従って、履物70は、靴底71に内蔵された部品等が可撓性を有し、靴底71に内蔵された前記リチウムイオン電池Lが屈曲された状態においても十分な充放電特性を発揮し続けることができるため、靴底71が屈曲した状態での継続使用が可能である。これにより、ウェアラブル端末としての機能を付加した履物70を実現することができる。
【0208】
すなわち、履物70を用いれば、履物70を着用する(履く)ユーザの歩数、足の運び方等の運動の状況及びカロリー消費量等を記録等することができる。例えば、ダンスやテニス等で、ユーザのステップや足の運びをプロのそれと比較し、スマートフォン等の通信端末で確認することができる。
【0209】
次に、
図22〜
図25Bを参照して、第二の実施形態におけるリチウムイオン電池L’の変形例について説明する。
【0210】
図22は本発明の第二の実施形態におけるチウムイオン電池の変形例であるリチウムイオン電池の分解図、
図23Aは
図22に示すリチウムイオン電池の断面図、
図23Bは
図23Aに示すリチウムイオン電池の一部破断斜視図、
図24Aは
図23A及び
図23Bに示すリチウムイオン電池の使用状態を示す断面図、
図24Bは
図24Aに示すリチウムイオン電池の一部破断斜視図、
図25Aは
図22に示すリチウムイオン電池の電流引き出し部の構造の例を示す断面図、及び
図25Bは
図22に示すリチウムイオン電池の電流引き出し部の変形例を示す断面図である。
【0211】
本発明の第二の実施形態におけるリチウムイオン電池L’の変形例を構成する容器20は、
図22にもっともよく示すように、上容器20g及び下容器20hに分割されて構成されている。下容器20hは、上面が開口した略中空箱形の下容器本体20jと、この下容器本体20jの上部周縁部に形成された略矩形額縁状の下容器縁部20kとを備える。一方、上容器20gは、この下容器20hの下容器縁部20kと略同じ大きさの略矩形板状に形成され、下容器20hの下容器本体20jの開口を覆うように配置されている。
【0212】
そして、下容器本体20j内に積層発電部21が収納され、下容器本体20j内が減圧された状態で、上容器20g及び下容器20hが図略のシール部材により封止されることで、リチウムイオン電池が構成される。
【0213】
ここで、上容器20g及び下容器本体20jの
図22及び
図23Aにおける下面には、可撓性及び導電性を有する矩形板状の電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bがそれぞれ形成されている。この電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bは、積層発電部21の最上部及び最下部に位置する単電池1の正極集電体7及び負極集電体8と略同一形状に形成されている。そして、積層発電部21は容器20内に減圧封止されて収納されていることから、
図23Aにもっともよく示すように、積層発電部21の最上部及び最下部に位置する単電池1の正極集電体7及び負極集電体8の上面及び下面は、それぞれ電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bに密着することで電気的に接触している。
【0214】
電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bを構成する材料は、可撓性及び導電性を有する材料であれば特段の限定はない。一例として、
図25Aに示すように、不織布でできた容器20が有する空隙の該当部分に導電性材料を導入等して容器20の一部に導電性を付与することで電流引き出し部40aを形成してもよく、また、
図25Bに示すように、ラミネートフィルムでできた容器20に開口部を設けて、可撓性を有する導電板である電流引き出し部40aを貼付してもよい。
【0215】
このような構成のリチウムイオン電池は、電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bの上面及び下面に、例えば帯状の金属箔からなる図略の電極端子の一端が導電性接着剤等により固定され、電力端子が積層発電部21に接続されることでリチウムイオン電池からの電源電圧が外部に供給される。
【0216】
リチウムイオン電池は、その内部に内部短絡等の欠陥が発生した場合にいずれかの単電池1から経時で微量のガスが発生して電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bを含む容器20の内圧が上昇して大気圧以上になる場合がある。
【0217】
図22〜
図23Bに示した構成を有するリチウムイオン電池において容器20の内圧が上昇して大気圧以上になった場合、電流引き出し部40a、電流引き出し部40b及び容器20として可撓性を有する材料を用いているので、
図24A及び
図24Bに示すように、容器20とともに電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bが外方に膨張する。この結果、電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bと、積層発電部21の最上部及び最下部に位置する単電池1の正極集電体7及び負極集電体8の上面及び下面との少なくとも一部が離間し、電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bと正極集電体7及び負極集電体8との接触面積が減少することで電流引き出し部と集電体との間の電気抵抗が増加する。これによって、単電池1に流れる電流が抑制され、好ましくは遮断される。
【0218】
このように
図22〜
図23Bに示したリチウムイオン電池によれば、容器20に電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bを設けるという単純な構成により、内部に欠陥が生じた場合において電流を遮断することができるリチウムイオン電池を実現することができる。
【0219】
特に、単電池1の正極集電体7及び負極集電体8に樹脂集電体を用いた場合、この樹脂集電体は、金属集電体に比較して導電率が高くない。このため、電源電圧の取り出し効率等の観点から、積層発電部21からリチウムイオン電池の外部に電源電圧を取り出すためには、容器20側に設ける電源電圧取出部である電流引き出し部40a及び電流引き出し部40bの面積を広くすることが好ましく、正極集電体7及び負極集電体8と略同一面積にすることがより好ましい。
(実施例)
【0220】
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて比較する。但し、本発明の技術的範囲が以下の実施例及び比較例のみに限定されるわけではない。なお、以下において、特記しない限り、操作は、室温(25℃)で行った。また、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0221】
(製造例1:被覆用樹脂溶液の作製)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記)70部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル40部、メタクリル酸45部、メタクリル酸メチル15部、スチレンスルホン酸リチウム0.1部及びDMF20部を配合したモノマー配合液と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.2部をDMF10部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。これにDMF133.3部を加えて室温まで冷却し樹脂濃度30重量%の被覆用樹脂溶液を得た。
【0222】
(製造例2:被覆正極活物質粒子の作製)
LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2粉末96部を万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態に、樹脂の固形分が2部になる量に秤量した製造例1で得られた被覆用樹脂溶液(樹脂濃度30重量%)を60分かけて滴下混合し、更に30分撹拌した。
【0223】
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[商品名「デンカブラック(登録商標)HS−100」、電気化学工業株式会社製、一次粒子の平均粒子径:36nm]2部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、0.01MPaまで減圧した状態を30分間保持し、被覆正極活物質粒子を得た。
【0224】
(製造例3:被覆負極活物質粒子の作製)
難黒鉛化性炭素[商品名「カーボトロン(登録商標)PS(F)」、株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製]90部を万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態に、樹脂の固形分が5部になる量に秤量した製造例1で得られた被覆用樹脂溶液(樹脂濃度30重量%)を60分かけて滴下混合し、更に30分撹拌した。
【0225】
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[商品名「デンカブラックHS−100」]5部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、0.01MPaまで減圧した状態を30分間保持し、被覆負極活物質粒子を得た。
【0226】
(製造例4:電解液の作製)
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)に、0.5重量%の1,3−プロパンスルトン(PS)を加えた後、LiPF
6を1mol/Lの割合で溶解させてリチウムイオン電池用電解液を作製した。
【0227】
(製造例5:樹脂集電体の作製)
実施例で用いられる集電体は、以下のようにして作製した。
【0228】
[製造例5−1:導電性樹脂層を有する集電体(集電体1)の作製]
二軸押出機にて、ポリプロピレン(PP)[商品名「サンアロマー(登録商標)PL500A」、サンアロマー株式会社製]75重量%、アセチレンブラック[商品名「デンカブラックHS−100」]20重量%、及び樹脂改質剤[商品名「ユーメックス(登録商標)1001」、三洋化成工業株式会社製]5重量%を、180℃、100rpm、滞留時間10分の条件で溶融混練し集電体用材料を得た。なお、上記各成分の量は混合比を表わし、ポリプロピレン、アセチレンブラック及び樹脂改質剤の合計が100重量%である。得られた集電体用材料を、熱プレス機により圧延することで、厚さ100μmの集電体1を得た。
【0229】
[製造例5−2:導電層を有する正極集電体(集電体1−1)の作製]
液状エポキシ樹脂[商品名「セロキサイド(登録商標)2021P」、株式会社ダイセル製、脂環式エポキシ樹脂]7部、多官能エポキシ樹脂[商品名「マープルーフ(登録商標)G2050M」、日油株式会社製]15部、メチルエチルケトン75部、アセチレンブラック(商品名「デンカブラックHS−100」)3部及びエポキシ樹脂用硬化剤(商品名「サンエイドSI−60」、三新化学工業株式会社製)0.5部を混合して高分子材料含有導電性部材形成用の導電性部材用インキ1を調製した。
【0230】
製造例5−1で作製した集電体1の両面に、前記の導電性部材用インキ1をギャップ30μmのアプリケータを用いて塗布し、続いて110℃で3時間真空乾燥することで脱溶剤及び硬化し、アセチレンブラックとエポキシ樹脂とからなる高分子材料含有導電性部材からなる導電層(第1の導電層及び第3の導電層)が集電体1の両表面に固定された集電体1−1を得た。
【0231】
[製造例5−3:更に最表面に導電層を有する負極集電体(集電体1−2)の作製]
液状エポキシ樹脂(商品名「セロキサイド2021P」)7部、多官能エポキシ樹脂(商品名「マープルーフG2050M」)15部、メチルエチルケトン75部、ニッケルフィラー(商品名「T255」、日興リカ株式会社製、一次粒子の標準粒子径:2.2〜2.8μm)3部及び硬化剤(商品名「サンエイドSI−60」)0.5部を混合して高分子材料含有導電性部材形成用の導電性部材用インキ2を調製した。
【0232】
上記の製造例5−2で作製した集電体1−1の片面に、前記の導電性部材用インキ2をギャップ30μmのアプリケータを用いて塗布し、続いて110℃で3時間真空乾燥することで脱溶剤及び硬化し、ニッケルフィラーとエポキシ樹脂とからなる高分子材料含有導電性部材からなる第2の導電層が集電体1−1の片面に固定された集電体1−2を得た。
【0233】
(製造例6:炭素繊維の作製)
炭素繊維は、Eiichi Yasuda,Asao Oya,Shinya Komura,Shigeki Tomonoh,Takashi Nishizawa,Shinsuke Nagata,Takashi Akatsu、CARBON、50、2012、1432−1434及びEiichi Yasuda,Takashi Akatsu,Yasuhiro Tanabe,Kazumasa Nakamura,Yasuto Hoshikawa,Naoya Miyajima、TANSO、255、2012、254〜265頁の製造方法を参考にして作製した。
【0234】
炭素前駆体として合成メソフェーズ(商品名「メソフェーズピッチAR・MPH」、三菱ガス化学株式会社製)10部とポリメチルペンテン(商品名「TPX RT18」、三井化学株式会社製)90部を、バレル温度310℃、窒素雰囲気下で一軸押出機を用いて溶融混練し、樹脂組成物を調製した。
【0235】
上記樹脂組成物を390℃で溶融押出し紡糸した。紡糸した樹脂組成物を電気炉に入れ、窒素雰囲気下270℃で3時間保持し炭素前駆体を安定化させた。ついで、電気炉を1時間かけて500℃まで昇温し、500℃で1時間保持し、ポリメチルペンテンを分解除去した。電気炉を2時間かけて1000℃まで昇温し1000℃で30分間保持し、残った安定化させた炭素前駆体を導電性繊維とした。
【0236】
得られた導電性繊維90部、水500部とΦ0.1mmのジルコニアボール1000部をポットミル容器に入れ5分間粉砕した。ジルコニアボールを分級後、100℃で乾燥し、炭素繊維を得た。走査型電子顕微鏡での測定結果より、平均繊維径は、0.3μm、平均繊維長は、26μmであった。
【0237】
(製造例7:正極の作製)
製造例2で得られた被覆正極活物質粒子98部、製造例6で得られた炭素繊維2部及び製造例4で得られた電解液70部を混合し、更に自転公転ミキサー(株式会社シンキー製あわとり練太郎)にて2000rpmで5分間混練し、被覆正極活物質組成物を作製した。長さ100mm×幅100mmのアラミド不織布(型番2486R、日本バイリーン株式会社製、[厚さ20μm])上に長さ50mm×幅50mmの開口部を有するマスクを重ね、前記被覆正極活物質組成物をスキージで開口部内に塗工し、長さ50mm×幅50mm、厚み約1mmの被覆正極活物質層を形成した。
【0238】
これに、吸液用のアラミド不織布を上から重ね、平滑なSUS製シートに挟んだ後、プレス機にて空隙率45%となるようプレスした。その後、吸液用のアラミド不織布をはがして被覆正極活物質層であるリチウムイオン二次電池用正極を得た。アラミド不織布の上に形成された正極の厚さは600μmであった。
【0239】
なお、空隙率はプレスした後の被覆正極活物質層の容積と被覆正極活物質層に含まれる固体材料(正極活物質粒子、被覆用樹脂及び導電助剤等)の容積(固体材料それぞれの重量と比重から計算される)とから計算される。
【0240】
(製造例8:負極の作製)
製造例3で得られた被覆負極活物質粒子98部、製造例6で得られた炭素繊維2部及び製造例4で得られた電解液150部を前記正極の調整と同様に混合、混練して被覆負極活物質組成物を作製した。長さ100mm×幅100mmに切断したアラミド不織布上に長さ55mm×幅55mmの開口部を有するマスクを重ね、前記被覆負極活物質組成物をスキージで開口部内に塗工し、長さ55mm×幅55mm、厚み約1mmの被覆負極活物質層を形成した。
【0241】
前記の正極と同様の方法で空隙率45%までプレスし、被覆負極活物質層であるリチウムイオン二次電池用負極を得た。アラミド不織布上に形成された負極の厚さは700μmであった。なお、空隙率は正極と同様にして得る。
【0242】
(比較製造例1:比較例となる従来型電池用正極の作製)
LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2粉末90部、アセチレンブラック[商品名「デンカブラックHS−100」]10部、ポリフッ化ビニリデン[シグマアルドリッチ社製]5部、N−メチルピロリドン30部を加え、乳鉢で充分に混合し比較用正極活物質組成物を得た。得られた比較用正極活物質組成物を、厚さ20μmのアルミニウム電解箔上の片面に塗布し、100℃で15分間乾燥させた後、更に減圧下(1.3kPa)、80℃で8時間乾燥して、比較用正極を作製した。乾燥後の電極厚さはアルミ箔を含めて620μmであった。
【0243】
(比較製造例2:比較例となる従来型電池用負極の作製)
黒鉛粉末[日本黒鉛工業株式会社製]90部、アセチレンブラック(商品名「デンカブラックHS−100」)5部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩[商品名「セロゲン(登録商標)F−BSH4」、第一工業製薬株式会社製]2.5部、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)エマルション(JSR株式会社製、樹脂濃度40重量%)6.25部、水30部を加え、遊星ミルで充分に混合し、比較用負極活物質組成物を得た。得られた比較用負極活物質組成物を、厚さ20μmの銅箔の片面に塗布し、常圧で80℃/3時間乾燥後、真空乾燥を80℃/8時間行って溶媒を蒸発させ、比較用負極を作製した。乾燥後の電極厚さは銅箔を含めて720μmであった。
【0244】
<実施例1及び比較例1>
(本発明のリチウムイオン電池及び比較用電池の作製)
製造例7及び製造例8で得られたリチウムイオン二次電池用電極同士、並びに比較製造例1及び比較製造例2で得られた比較用電極同士をそれぞれ組み合わせ、以下の方法で本発明のリチウムイオン電池及び比較用電池を作製した。
【0245】
長さ120mm×幅120mmのアルミラミネートシート上に配置した電流取り出し用タブを接続した長さ70mm×幅70mmの電解銅箔上に、長さ60mm×幅60mmに切断した製造例5−3で得られた集電体1−2、リチウムイオン二次電池用負極又は比較用負極、長さ80mm×幅80mmのPP製セパレータ[商品名「セルガード(登録商標)2500」、セラガード社製]、リチウムイオン二次電池用正極又は比較用正極、長さ60mm×幅60mmに切断した製造例5−2で得られた集電体1−1を順に、電流取り出し用タブが正方形のセルの外側に出るように配置しながら積層して発電部を作製した。更にその上に電流取り出し用タブを接続した長さ70mm×幅70mmのカーボンコートアルミ箔及び長さ120mm×幅120mmのアルミラミネートフィルムを順に積層した。なお発電部の作製時には負極上及びセパレータ上に合計1.2部の電解液を数回に分けてスポイト等を用いて注液した。
【0246】
その後、発電部の上下にあるアルミラミネートフィルムの3方をヒートシール装置にて熱融着し、残る1方を真空封止機(TOSEI製、TOSPACK V−307GII)を用いて真空度99%で熱融着封止して本発明のリチウムイオン電池及び比較用電池を作製した。
【0247】
(リチウムイオン電池の放電容量の評価)
作製した本発明のリチウムイオン電池を2枚の厚さ約1mmのブリキ板の間に挟み、0.2MPaの圧力をかけた。室温下、充放電測定装置「バッテリーアナライザー1470型」[東陽テクニカ株式会社製]を用いて、0.05Cの電流で電圧4.3Vまで充電し、10分間の休止後、0.05Cの電流で電圧2.5Vまで放電して1回目の充放電を行った。続いて電池を挟んでいたブリキ板を外し、1回目の充放電と同様に電圧4.3Vまで充電し、10分間の休止後に電圧2.5Vまでの放電を行い、このときの電池容量を測定した。本発明のリチウムイオン電池について得られた電池容量を正電の表面積で割ることで算出した単位面積当たりの容量(放電容量)は20mAh/cm
2であった。比較用電池についてもブリキ板に挟まないこと以外は本発明のリチウムイオン電池と同様に充放電を行い、2回目の充放電での電池容量から放電容量を計算した。比較用電池の放電容量は4mAh/cm
2であった。
【0248】
(リチウムイオン電池の可撓性の試験)
放電容量の測定を行った本発明のリチウムイオン電池及び比較用電池のそれぞれをJISK5600−5−1:1999 第5部−第1節 耐屈曲性(円筒形マンドレル法)に記載の円筒形治具に準拠した直径20mmの円筒形治具に巻き付けた後に再び平らに戻すという操作を10回繰り返した。次いで本発明のリチウムイオン電池及び比較用電池を十字の折り目が付くように2方向に同時に折り曲げ、折り曲げた状態を維持したままLEDを接続した。実施例で作成した本発明のリチウムイオン電池のみLEDが点灯し、比較用電池に接続したLEDは点灯しなかった。
【0249】
実施例における本発明のリチウムイオン電池は比較例におけるリチウムイオン電池に比べて大きい放電容量を達成することができた。また、実施例におけるリチウムイオン電池は、折り曲げた状態でも放電が可能であった。一方比較例におけるリチウムイオン電池は折り曲げた状態では放電できなかった。これは、本発明のリチウムイオン電池において単電池の有する活物質層が非結着体であるために可撓性を有し、被覆活物質粒子のもつ被覆層が潤滑層として作用することで活物質間の電気的接続を維持したまま活物質粒子が折り曲げた際に生じる応力に対応して移動したためと考えられる。単電池を積層した積層発電部を有する第二の実施形態を有するリチウムイオン電池においても同様に応力に応じて活物質粒子がその電気的な接続を維持したまま移動すると考えられ、従来型電池用の電極を用いた電池に比べて機械的な耐久性を示すものと考えられる。