(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、化学気相浸透(CVI)または化学気相析出(CVD)を用いて、セラミックマトリックス複合材料(CMC)および被覆された基材のような物品を製造するためのシステムおよび技術について記述する。ある例では、CVI/CVD反応容器は外壁および外壁における少なくとも1つの反応器入口を含むことができる。少なくとも1つの反応器入口は、反応容器に前駆体ガスを導入し、前駆体ガスが反応容器の半径方向中心コア領域のまわりに旋回する流れを生ずるように構成することができる。旋回する流れとは、円周方向速度成分を含む前駆体ガスの流れのことをいうとすることができる。
【0013】
CMCや被覆を有する基材のような物品は、基材を作製し、その基材の中にまたはその基材の上にマトリックスまたは被覆材料を析出させることにより製造することができる。CMCを製造するために、基材はCMCの内部に強化材を形成した多孔質の予備成形物であってもよく、CVIは多孔質基材の中の強化材の上にマトリックス材料を析出させるために使用してもよい。ある例では、CVIは、多孔質の予備成形物に前駆体ガスを浸透させ、前駆体ガスからマトリックス材料を多孔質の予備成形物の中に析出させ、多孔質の予備成形物の強化材料を囲むマトリックスを形成するために使用することができる。ある例では、CVDは、非多孔質の予備成形物を前駆体ガスと接触させ、前駆体ガスから被覆材料を非多孔質の予備成形物の上に析出させ、非多孔質の予備成形物の上に被覆を形成するために使用することができる。
【0014】
ある例では、CMCは、セラミック繊維またはセラミック繊維前駆体を含む多孔質の予備成形物を作製し、多孔質の予備成形物にマトリックス材料を浸透させて浸透した予備成形物を形成し、そして熱処理、被覆などのような任意のさらなる処理で浸透した予備成形物に仕上げ処理を施して最終CMCを形成することにより製造することができる。CVIは、多孔質の予備成形物に前駆体ガスを浸透させ、前駆体ガスからセラミックマトリックス材料を多孔質の予備成形物の中に析出させ、多孔質の予備成形物のセラミック繊維またはセラミック繊維前駆体を囲むセラミックマトリックスを形成するために使用することができる。CVIは、多孔質の予備成形物に浸透させ、セラミック繊維の上にマトリックス材料を析出させるために、高温ガスを使用する。セラミック繊維上への前駆体ガスの析出は、前駆体ガスの温度、前駆体ガスの濃度、多孔質の予備成形物の温度、多孔質の予備成形物内の温度勾配、前駆体ガスの流量、化学気相浸透反応器内の前駆体ガスの滞留時間などのような因子によって制御することができる。
【0015】
物品を製造するためのシステムは、反応容器、熱源、少なくとも1つの反応器入口および少なくとも1つの反応器出口を含むことができる。反応容器は外壁および半径方向中心コア領域を含むことができる。反応容器は半径方向中心コア領域に基材を収容することができる。熱源は反応容器に熱的に連結することができる。少なくとも1つの反応器入口は、外壁に存在することができ、反応容器に前駆体ガスを導入し、前駆体ガスが反応容器の半径方向中心コア領域のまわりに旋回する流れを生ずるように構成することができる。少なくとも1つの反応器出口は、反応容器から排気ガスを取り出すことができる。
【0016】
ある例では、半径方向中心コア領域のまわりに前駆体ガスが旋回する流れは、基材に温度条件のより大きな制御を可能にすることができる。いくつかの方法において、前駆体ガスの旋回する流れは、反応容器内の前駆体ガスの温度の均一性を増加させることができる。たとえば、旋回する流れは、前駆体ガスの滞留時間および混合を増加させることができ、それはより均一な前駆体ガス温度をもたらすことができ、それに応じて基材の中のまたは基材の上のより均一な前駆体析出率および分布をもたらすことができる。ある例では、前駆体ガスの旋回する流れは、基材を横切って(たとえば多孔質の予備成形物内に)2次元の温度勾配を作るために使用することができる。たとえば、多孔質の予備成形物内に温度勾配が存在する温度勾配CVIプロセスにおいては、旋回するまたは螺旋状の流れは、多孔質の予備成形物の多数の面と接触し、軸方向および半径方向の両方の温度勾配の生成を可能にすることができる。
【0017】
ある例では、反応容器は、また、選択的に回転することができる基材スタンドを含むことができる。前駆体ガスの旋回する流れと組み合わせて、回転する基材スタンドは、前駆体ガスが反応容器の中を直線的に流れるCVI/CVD反応器と比較して、基材の中へのまたは基材の上への前駆体流れのより大きな制御を可能にすることができる。たとえば、拡散CVIプロセスにおいては、回転する基材スタンドは、前駆体ガスが旋回するのとほぼ同じ速度で多孔質の予備成形物の外周が移動するような速度で回転することができる。これは、多孔質の予備成形物と前駆体ガスの間の相対的な回転(円周方向)運動を減少させ、対流より前駆体ガスの拡散を優先させる結果となる。別の例として、回転する予備成形物は、よりゆっくり回転してもよいし、全く回転しなくてもよいし、前駆体ガスの旋回方向と反対方向に回転してもよく、そうすることによって、多孔質の予備成形物の外周と前駆体ガスの間の相対的な回転(円周方向)速度を生じさせることができる。これは拡散より対流を優先し、強制流CVIプロセスに帰着することができ、多孔質の予備成形物の内部の前駆体ガス濃度の均一性を増加させることができる。
【0018】
ある例では、前駆体ガスの旋回する流れは、反応容器の全容積にわたって熱伝達を向上させることができるので、反応容器または基材のより速いまたはより均一な加熱または冷却を可能にすることができる。ある例では、より速くまたはより均一に基材を加熱または冷却するために、加熱または冷却の間、基材を回転させてもよい。
【0019】
ある例では、本開示のシステムおよび技術を使用して製造された物品は、マトリックスまたは被覆材料の均一性がより高く(たとえばマトリックス中の空隙がより少なく、マトリックスの内部の組成の違いがより少なく)、前駆体ガスの浪費がより少なく、より速く製造することができる。ここに記述された技術を使用して形成された物品としては、被覆された基材およびセラミックマトリックス複合材料のような複合材料を挙げることができる。セラミックマトリックス複合材料の例としては、炭素(C)/C複合材料、C/炭化ケイ素(SiC)複合材料、SiC/SiC複合材料、SiC/Si−SiC複合材料、アルミナ(Al
2O
3)/Al
2O
3複合材料などを挙げることができる。ここで、最初に記載されたのが強化材料であり、2番目に記載されたのがマトリックス材料である。これらのセラミックマトリックス複合材料は、限定するものではないが、航空宇宙推進用、海事推進用および発電用のガスタービンエンジン部品などの様々な用途に使用することができる。
【0020】
図1は、CVI/CVDを使用して、物品を製造するためにシステム2の例を示す概念的および図式的なブロックダイヤグラムである。システム2は反応容器4、熱源8、反応器入口10および反応器出口12を含む。ある例では、
図1に示されるように、システム2は、所望により、回転する基材スタンド14、コントローラー16またはそれらの両方を含むことができる。
【0021】
システム2は反応容器4を含む。反応容器4は、半径方向中心コア領域6の中に基材18を収容し、かつ複合材料を形成するために基材18の中または上への前駆体ガスの化学気相浸透または析出を促進するように構成することができる。反応容器4は、等温CVI、拡散流CVI、温度勾配CVI、強制流CVI、パルス流CVI、常圧CVD、低圧CVD、超高真空CVDなどの様々なCVIおよびCVDプロセスを扱うように構成することができる。ある例では、反応容器4は、ヒーター、冷却器、温度計、圧力計、流量計、パージ弁および出口弁のような、温度検出および制御装置、圧力検出および制御装置、流れ検出および制御装置などを含むことができる。
【0022】
反応容器4は外壁を含むことができる。反応容器4の外壁は、軸方向および周方向に延び、その中でCVI/CVD技術が実施される囲まれた体積の境界を定める反応容器4の構造的部分であることができる。ある例では、反応容器4は、反応容器4を画定する多数の壁または構造を含む。ここで使用するときは、反応容器4の外壁は、その中に基材18が収容され、その中に前駆体ガスが導入される反応容器4の内部体積の少なくとも1つの側面の境界を定める壁である。たとえば、反応容器4が円筒状の場合、外壁は円筒の外周の境界を定める反応容器4の軸方向に延びる曲面状の側面であることができる。ある例では、外壁は黒鉛サセプタのような伝導加熱エレメントを含むことができる。さらに、ある例では、外壁の内面を形成する材料は、CVI/CVD技術において使用される前駆体ガスに実質的に不活性であることができる。
【0023】
反応容器4は、反応容器4の囲まれた体積の内部に半径方向中心コア領域6を含むことができる。半径方向中心コア領域6は、反応容器4の内部の概念的な領域であり、前駆体ガスがバルク流体としてその周囲を流れる反応容器4の機能的な体積であることができる。ある例では、半径方向中心コア領域6は、基材18によって実質的に占有された体積であってもよい。たとえば、基材18が反応容器4の中心の平らな底に置かれた円筒状のパイプである場合、半径方向中心コア領域6はその周りを前駆体ガスが流れる円柱状の体積であってもよい。この例においては、円柱状の体積はパイプの寸法によって画定することができる。他の例では、半径方向中心コア領域6は、基材18の形および大きさによって画定されないかもしれず、反応容器4によって囲まれた体積の中心部分における基材スタンド14に隣接した体積であってもよい。ある例では、半径方向中心コア領域6は、反応容器4の最上部から(または反応容器4の最上部の近くから)基材スタンド14にまで及んでいてもよい。
【0024】
反応容器4は基材18を取り囲むように構成されていてもよい。基材18は多孔質の予備成形物であってもよいし、非多孔質の予備成形物であってもよい。基材18が多孔質の予備成形物を含む例では、基材18は、セラミック繊維またはセラミック繊維前駆体強化構造物のような強化材料を含むことができる。基材18は、基材18から形成される物品の最終用途に依存して、様々な形および多孔質のいずれをも含むことができる。たとえば、基材18は、ガスタービンエンジン翼のような比較的複雑な幾何学的形状またはブレーキディスクのような比較的単純な幾何学的形状を有する多孔質または非多孔質の予備成形物を含むことができる。
【0025】
基材18が多孔質の予備成形物である例では、基材18は、限定するものではないが、チョップド繊維またはトウ、不織布繊維またはトウ、織られた繊維またはトウ、組んだ繊維またはトウ、束ねられた繊維またはトウ、布帛、繊維またはトウの三次元織物などの様々な異なる形態の1つ以上の強化材料を含むことができる。基材18の強化材料は、限定するものではないが、弾性係数、引張強さ、熱安定性、密度およびフィラメント直径などの様々な特性で選ぶことができる。限定するものではないが、炭化ケイ素(SiC)、炭素(C)、アルミナ(Al
2O
3)、ムライト(3Al
2O
3・2SiO
2または2Al
2O
3・SiO
2)、これらのセラミックスの前駆体などのようなセラミック繊維およびセラミック繊維の前駆物質;金属、およびポリマーなどの種々様々な強化材料を使用することができる。基材18が多孔質の予備成形物を含む例では、基材18は、CVI/CVDの間、たとえばワイヤー支持ケージもしくはスタンドまたは黒鉛ホルダーによって支持されていてもよい。
【0026】
システム2は、反応容器4の外壁に少なくとも1つの反応器入口10を含む。反応器入口10は、反応容器4に前駆体ガスを導入し、半径方向中心コア領域6のまわりに前駆体ガスの旋回する流れを生ずるように構成することができる。上述したように、ここで使用するときは、旋回する流れは、反応容器4内の前駆体ガスのバルク流れプロフィールが円周方向成分を含むことを意味する。ある例では、反応器入口10は、半径方向中心コア領域6のまわりに旋回する流れを生ずるように角度がつけられていてもよい。ある例では、反応器入口10は反応容器4の最上部の近くに配置してもよい。ある例では、反応器入口10は、反応容器4の外壁に、たとえば同じような弧の長さの間隔を置いて、多数の円周位置に配置してもよい。これは、反応容器4内の前駆体ガスの旋回する流れの確立を促進することができる。
【0027】
ある例では、外壁に周方向に間隔を置いて配置された多数の反応器入口10に加えてまたはそれらの代わりに、2つ以上の反応器入口10が反応容器4の外壁に沿って軸方向に分布していてもよい。たとえば、1つの反応器入口10は反応容器4の最上部に配置してもよいし、反応容器4の全体にわたって旋回する流れを保持するために、1つの反応器入口10を反応容器4の外壁の中間部に配置してもよい。したがって、多数の反応器入口10は、反応容器4内の前駆体ガスの旋回する流れの確立を促進するために、反応容器4の外壁に、異なる円周方向の位置、異なる軸方向の位置またはそれらの両方の位置に配置してもよい。
【0028】
反応器入口10は、ジェットインジェクターのような指向性または分配流れ装置を含んでもよい。ある例では、反応器入口10は、特定の旋回流れプロフィールを作り出すために、反応容器4の外壁に対してある角度で前駆体ガスを導入するように構成されていてもよい。その角度は、それぞれの反応器入口10の位置で反応容器4の外壁に対し接線の方向の表面から0度と90度の間であることができる。ある例では、旋回する流れを作り出すために外壁に対して角度をつけることに加えて、旋回する流れに軸方向の流れ成分を生じさせるために、反応器入口10は、外壁の接線面から軸方向の角度をもって配向させてもよい。たとえば、前駆体ガスは、外壁の法線面から0〜10度の間の軸方向の角度で導入してもよい。
【0029】
前駆体ガスは、物品の前駆体マトリックスまたは被覆に従って選択することができる。前駆体ガスは、限定するものではないが、引張強さ、熱安定性、亀裂抵抗、破壊靭性および耐食性などの様々な性質のために選ぶことができる。限定するものではないが、炭素マトリックスまたは被覆用にメタンおよびプロパンのような炭化水素ガス;炭化ケイ素マトリックスまたは被覆用にメチルトリクロロシラン(CH
3SiCl
3)のようなカルボシラン;ケイ素マトリックスまたは被覆用にジクロロシランのようなシランおよびオルトケイ酸テトラエチル;アルミナ(Al
2O
3)マトリックスまたは被覆用に塩化アルミニウム(AlCl
3)のようなハロゲン化アルミニウム;六フッ化タングステンおよび五塩化チタンのような金属ハロゲン化物;ニッケルカルボニルのような金属カルボニル;選択された被覆を形成するのにふさわしい任意の他の前駆体などの様々な前駆体ガスを使用することができる。
【0030】
ある例では、反応器入口10は、反応容器4に不活性ガスのような他のガスを導入するように構成されていてもよい。前駆体ガスを希釈し、反応容器4または基材18を加熱し、反応容器4または基材18を冷却し、反応容器4をパージするなどのために、他のガスを導入してもよい。したがって、反応器入口10を通って導入されるガスは、CVI/CVD技術の異なる工程で異なっていてもよい。たとえば、反応器入口10は、前駆体ガスを導入する前に、反応容器4および存在する場合は基材18を加熱するために、反応容器4に加熱した不活性ガスを導入してもよい。別の例として、基材18の中にマトリックス材料を析出させまたは基材18の上に被覆材料を析出させるのを完了した後に、反応容器4および基材18を冷却するために、反応器入口10は、反応容器4の中に相対的に冷たい不活性ガスを導入してもよい。ある例では、反応器入口10は、さらに、前駆体ガスと一緒にキャリヤーガスを導入するように構成されていてもよい。キャリヤーガスとしては、限定するものではないが、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを挙げることができる。
【0031】
システム2は、また、反応容器4の外壁に少なくとも1つの反応器出口12を含む。反応器出口12は反応容器4から排気ガスを取り出すように構成することができる。排気ガスは、未反応前駆体ガス、不活性ガス、反応副生物ガスなどを含むことができる。ある例では、反応器出口12は、前駆体ガスの旋回する流れの発生を助けるように配置することができる。たとえば、旋回する流れを促進する方向に前駆体ガスの流れを引き出すために、反応器出口は、外壁の法線面からある半径方向角度をもって配置することができる。ある例では、反応器出口12は反応容器4の底に配置してもよい。このように、出口12は、反応容器4の内部で前駆体ガスの軸方向の流れ成分を生ずるのを助けることができる。
【0032】
システム2は、また、熱源8を含む。熱源8は、反応容器4に熱的に連結し、反応容器4を加熱するように構成することができる。ある例では、熱源8は反応容器4を加熱するヒーターであってもよい。ある例では、反応容器4は高温壁反応容器であってもよく、熱源8は反応容器の壁の内部のヒーターであってもよい。熱源8としては、誘導ヒーター、対流ヒーター、加熱炉、プラズマ源などを挙げることができる。
【0033】
システム2は、また、基材スタンド14を含むことができる。基材スタンド14は反応容器4の内部に基材18を収容するように構成することができる。ある例では、基材スタンド14は、基材スタンド14を通ってガスが流れることができるように穿孔を含んでもよい。たとえば、基材スタンド14に置かれた基材18が空洞または細孔を含む場合、基材スタンド14中の穿孔は、ガスが基材スタンド14を通り抜けて基材18の空洞または細孔の中に流れるのを、またはガスが基材18の空洞または細孔から基材スタンド14を通り抜けて流れるのを可能にすることができる。ある例では、システム2は、CVI/CVDが反応容器4内の複数の基材の上に並行して実施されるのを可能にするために複数の基材スタンド14を含んでもよい。ある例では、基材スタンド14は、たとえば温度勾配CVIまたはCVDのために、基材18を加熱するように構成された加熱コンポーネントを含んでもよい。
【0034】
ある例では、基材スタンド14は、たとえば反応容器4の軸方向と実質的に平行に延びる軸のまわりに、回転するように構成されていてもよい。たとえば、基材スタンド14はシャフトとモーターに連結されていてもよい。ある例では、モーターとシャフトは、2つの反対の回転方向のうちの1つの方向に選択的に回転するように、反対の回転方向に基材18を選択的に回転させるように構成することができる。さらに、モーターとシャフトは異なる回転速度で回転するように構成されていてもよい。このように、回転するように構成された基材スタンド14は、反応容器4の外壁に対して、および所望により反応容器4内の前駆体ガスの回転(または旋回)流速に対して、制御された回転速度で基材18を回転させるために使用することができる。
【0035】
システム2は、また、少なくとも熱源8、反応器入口10および反応器出口12に通信可能に連結されたコントローラー16を含むことができる。コントローラー16は、プロセッサー(たとえば1つまたはそれ以上のマイクロプロセッサー、1つまたはそれ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、1つまたはそれ以上のフィールドプログラム可能なゲートアレイ(FPGA)など)、1つまたはそれ以上のサーバー、1つまたはそれ以上のデスクトップコンピューター、1つまたはそれ以上のノートブック(すなわちラップトップ)コンピューター、1つまたはそれ以上のクラウドコンピューティングクラスターなどの広範囲の装置のいずれをも含むことができる。
【0036】
コントローラー16は、熱源8に通信可能に連結することができる。ある例では、コントローラー16は、半径方向中心コア領域6の中に基材18を含む反応容器4を加熱するために熱源8を制御することができる。たとえば、コントローラー16は、直接、反応容器4の外壁に熱を供給するためにヒーターを制御することができる。別の例では、コントローラー16は、不活性ガスを加熱するために予熱器を制御することができる。たとえば、コントローラー16は、反応器入口10を通って反応容器4に導入するために、反応器入口10および不活性ガス源を制御する。ある例では、コントローラー16は反応容器4から温度情報を受け取ることができる。
【0037】
コントローラー16は、また、反応器入口10に通信可能に連結することができる。ある例では、コントローラー16は、特定の流量で反応容器4に前駆体ガスを導入するためにまたは反応容器4の中で特定の前駆体ガス濃度を達成するために、反応容器4の外壁の外壁における少なくとも1つの反応器入口10および所望により前駆体ガス源、コントロールバルブ、ジェットエジェクター、ポンプなどを制御することができる。他の例では、コントローラー16は、反応容器4にキャリヤーガスを導入するために、反応容器4を特定の温度に加熱するために、または反応容器4の中で特定の前駆体ガス濃度を達成するために、反応器入口10および所望によりコントロールバルブ、ジェットエジェクター、ポンプ、キャリヤーガス供給などを制御することができる。
【0038】
コントローラー16は、さらに、反応器出口12に通信可能に連結することができる。ある例では、コントローラー16は、反応容器4から排気ガスを取り除くために反応器出口12の少なくとも1つを制御することができる。たとえば、コントローラー16は、特定の流量で反応容器4から排気ガスを取り除くためにまたは反応容器4中の特定の圧力または前駆体ガス滞留時間を維持するために、反応器出口12および所望によりコントロールバルブ、真空ポンプなどを制御することができる。たとえば、低圧CVDプロセスでは、コントローラー16は、反応容器4の中に低圧を作り出すために真空ポンプを制御することができる。
【0039】
システム2でのコントローラー16の操作を、
図2を参照して説明する。
【0040】
図2は、旋回流CVI/CVDを使用して、物品を製造する技術の例を図示するフローチャートである。
図2の技術を、
図1のシステム2を同時に参照しながら以下説明する。ただし、
図2の技術がより多くのまたはより少しの構成要素を含む他のシステムによって実行することができること、およびシステム2が他の技術を実行することができることを当業者は理解するであろう。
図2の技術は、等温、非等温、拡散流および強制流などの様々なCVI条件の1つまたはそれ以上を、ならびに大気圧、低圧および超高真空などの様々なCVD条件の1つまたはそれ以上を達成することができる。
【0041】
等温CVI条件においては、基材18は、多孔質であり、かつ基材18の全体にわたって実質的に均一な温度を有することができる。基材18の上および中での前駆体ガスの分解および前駆体の析出の速度は、温度変化に敏感であることができる。基材18の全体にわたって温度勾配を減少させることによって、マトリックス材料は、基材18の全体にわたって前駆体ガスからより均一に析出することができる。温度勾配は、前駆体ガスの平均前駆体温度および反応容器4の反応容器温度を基材18の平均基材温度と実質的に同様に維持することにより減少させることができる。前駆体ガスの旋回流れは、たとえば、反応容器4内の前駆体ガスの旋回流れを含まない条件と比較して、反応容器4中の前駆体ガスの、および基材18の1つまたはそれ以上の表面における、より均一な温度を作り出すことができる。
【0042】
非等温CVI条件においては、基材18は、多孔質であり、かつ基材18の全体にわたって温度勾配を有することができる。たとえば、反応容器4中のガスは基材18より冷たくてもよく、それは基材18の相対的により冷たい表面温度および相対的により熱い内部の温度につながる。前駆体ガスは、より冷たい部分より基材18のより熱い部分においてより速い速度で分解することができ、それはより冷たい部分よりより熱い部分における前駆体析出のより速い速度につながる。この温度勾配は、基材18の内部でのより大きなガス拡散率およびより速いマトリックス材料析出につながることができる。ある例では、温度勾配は軸方向であってもよいし、他の例では、温度勾配は半径方向であってもよい。温度勾配は、前駆体ガスの平均前駆体温度および反応容器4の反応容器温度を基材18の平均基材温度未満に維持することにより、たとえば基材スタンド14を使用して基材18を加熱することにより、またはそれらの両方を行うことにより、作り出すことができる。前駆体ガスの旋回流れは、たとえば、反応容器4中の前駆体ガスのより均一な温度を作り出し、そしてそれにより基材18の表面により均一な温度を作り出すことができる。
【0043】
図2の技術の拡散CVI条件において、基材18は多孔質でありかつ基材18の全体にわたって実質的に均一な圧力を有してもよく、その圧力は反応容器4の半径方向中心コア領域6の外部の前駆体ガスの圧力と実質的に等しくてもよい。基材18は、基材18の中へ前駆体ガスが拡散する速度を制限する細孔を含む。このために、基材18の表面における前駆体ガスの濃度は、基材18の中の前駆体ガスの濃度より高くてもよい。前駆体ガスは、基材18の内部と外部の濃度差により、基材18の中に細孔を通って拡散することができる。基材18の中への前駆体ガスの拡散流れのための流れ条件および圧力条件を制御することによって、基材18の中への前駆体ガスの浸透を改善することができる。基材18中の圧力勾配は、基材18の細孔の中の圧力を反応容器4中の圧力と実質的に同様に維持することにより、基材18の外表面に隣接している前駆体ガスの旋回流速と実質的に同様の速度で基材スタンド14および基材18を回転させることにより、またはそれらの両方を行うことにより、減少させることができる。前駆体ガスの旋回流れは、たとえば、反応容器4の中のおよび基材18の表面における前駆体ガスのより均一な濃度を作り出すことができる。基材スタンド14上の基材18を回転させることは、たとえば、基材18に対する前駆体ガスの対流を減少させ、かつ基材18の細孔の中への前駆体ガスの対流と比べて基材18の細孔の中への前駆体ガスの半径方向の拡散の相対的な大きさを増加させるために、基材18と前駆体ガスとの間の相対速度を減少させることができる。
【0044】
図2の技術の強制流CVI条件においては、基材18は、多孔質であり、かつ基材18の中への前駆体ガスの拡散速度より速い速度での基材18の中への前駆体ガスの流れを有することができる。前駆体ガスは、基材18中の有限の圧力勾配を作り出す流れ条件によって基材18の中に強制的に送り込むことができる。基材18の中への前駆体ガスの流れを増加させることによって、基材18中の前駆体析出の速度は増加させることができる。基材18中の圧力勾配は、反応容器4中の動圧を基材18中の圧力より実質的に高く維持することにより、基材18の外表面に隣接している前駆体ガスの旋回流速と基材18との間の回転速度の差を作り出すことにより、またはそれらの両方により、作り出すことができる。前駆体ガスの旋回流れは、たとえば、反応容器4中の前駆体ガスのより均一な濃度を作り出し、基材18が回転しない場合または前駆体ガスの旋回流れと異なる回転速度でおよび/または前駆体ガスの旋回流れの方向とは異なる方向に回転する場合に、基材18におけるまたは基材の近くで対流を増加させることができる。
【0045】
図2の技術の低圧または超高真空CVD条件においては、基材18は非多孔質であってもよく、反応容器4は大気圧より低い圧力を包囲することができる。反応容器4中の圧力を減少させることによって、前駆体ガスの物質輸送速度を減少させることができ、その結果、前駆体ガスは基材18の表面上により均一に析出することができる。前駆体ガスの旋回流れは、たとえば、反応容器4の中のおよび基材18の表面における前駆体ガスのより均一な濃度、反応容器4内のおよび基材18の表面におけるより均一な温度などを作り出すことができる。基材スタンド14上の基材18を回転させることは、たとえば、基材18に対する前駆体ガスの対流を減少させるために、基材18と前駆体ガスとの間の相対速度を減少させることができる。
【0046】
ある例では、
図2には示されていないが、基材18は基材温度に加熱されてもよい。ある例では、熱源8は基材18を加熱することができる。たとえば、熱源8はヒーターであってもよく、コントローラー16は基材18を基材温度に加熱するために熱源8を制御することができる。別の例では、コントローラー16は、不活性ガスを基材温度以上の温度に加熱するためにヒーターを制御し、かつ、基材18を基材温度に加熱するために反応容器4に加熱した不活性ガスを導入する1つまたはそれ以上の反応器入口10を制御することができる。ある例では、基材18は反応容器4の外で加熱してもよい。たとえば、基材18は、反応容器4の外の加熱炉の中で加熱し、反応容器4の半径方向中心コア領域6に置いてもよい。他の例では、基材18は、基材18中の温度勾配を作り出すために、CVI/CVDの前または間に反応容器4中のヒーターによって加熱してもよい。たとえば、非等温CVIの場合は、基材スタンド14の内部のまたは基材スタンド14に隣接したヒーターのような、ヒーターによって、基材18の少なくとも1つの表面を加熱することができる。ある例では、基材スタンド14は、基材18をより均一に加熱するために、加熱の間、基材18を回転させることができる。ある例では、基材18を別個に加熱するのではなく、後述のように、反応容器4を加熱する工程(20)の一部として基材18を加熱してもよい。
【0047】
図2の技術は、熱源8を使用して、反応容器4を反応容器温度に加熱する工程(20)を含む。熱源8は、反応容器4の半径方向中心コア領域6の中の基材18のCVI/CVDのために、選択された温度条件、温度勾配などを作り出すために、反応容器4を加熱することができる。ある例では、熱源8は反応容器4に熱的に連結されたヒーターであってもよく、コントローラー16は反応容器4を反応容器温度に加熱するために熱源8を制御することができる。等温CVIのための技術のような例では、熱源8は基材18の基材温度と実質的に同じ反応容器温度に反応容器4を加熱する。温度勾配CVIのための技術のようなある例では、熱源8は基材18の基材温度よりも低い反応容器温度に反応容器4を加熱する。
【0048】
図2の技術は、また、反応器入口10の少なくとも1つを使用して、反応容器4へ前駆体ガスを導入する工程(22)を含む。たとえば、コントローラー16は、反応容器4の内部体積に前駆体ガスを導入する(22)ために、反応器入口10の少なくとも1つおよび所望により前駆体ガス源、コントロールバルブ、ジェットエジェクター、ポンプなどを制御することができる。反応器入口10は、前駆体ガスを導入し、半径方向中心コア領域6のまわりに前駆体ガスの旋回する流れを作り出すことができる。ある例では、コントローラー16は、選択された速度、方向、流量などで前駆体ガスを導入することにより、反応容器4中の旋回する流れを作り出すために少なくとも1つの反応器入口10を制御することができる。ある例では、反応器入口10の各々は、同じ速度、方向および流量で操作され、一方、他の例では、反応器入口10の各々は、異なる速度、方向および流量で操作される。たとえば、反応容器4を通る前駆体ガスの実質的に一定のバルク流量を維持するために、反応容器4の上の異なる円周方向または軸方向の位置に配置された反応器入口10は、異なる速度で操作することができる。
【0049】
ある例では、反応器入口10は、特定の旋回する流れプロフィールを作り出すために、反応容器4の外壁に対しある角度をもって前駆体ガスを導入するように構成することができる。その角度は、反応器入口10の位置において反応容器4の外壁に対し接線をなす面から0度〜90度であることができる。たとえば、反応器入口10の角度は、より層流のまたはより滞留時間の長い流れの場合はより0度に近く、より乱流の流れの場合はより90度に近くすることができる。ある例では、旋回する流れを作り出すために外壁に対して角度をつけることに加えて、旋回流れに軸方向流れ成分を生じさせるために、反応器入口10は、外壁の接線面から軸方向角度をつけて配向させることができる。たとえば、反応器入口は、外壁の接線面から0〜10度の軸方向角度をつけて反応容器4に前駆体ガスを導入するように構成することができる。
【0050】
ある例では、反応器入口10は、反応容器4中の前駆体ガスの滞留時間を増加させるために、特定の旋回流れ条件で前駆体ガスを導入するように構成することができる。たとえば、反応容器4中にバルク旋回流れを作り出すために、反応器入口10は、特定の速度および特定の角度で前駆体ガスを導入することができる。反応容器4のまわりを周方向に移動する前駆体ガスの特定の体積は、反応容器4の中を周方向に移動しないが軸方向に移動する前駆体ガスの体積よりも、反応容器4の中の特定の軸方向距離のためにより長い合計距離を移動することができる。このより長い距離および/または時間は、前駆体ガスの体積に、反応容器4の外壁の温度を旋回前駆体ガス流れと平衡させるより大きな機会を与えることができる。たとえば、所与の流量に対して外壁の表面の接線から離れた角度で導入された前駆体ガスよりも長い滞留時間を有する旋回流れを作り出すために、反応器入口10は、反応容器4の外壁の表面の接線に近い角度で前駆体ガスを導入することができる。接線に近い角度で導入された前駆体ガスは、外壁からより離れた角度でかつより少ない周方向移動で導入された前駆体ガスよりも、軸の単位あたりより長い移動合計距離を、反応容器のまわりを周方向に移動することができる。このより長い移動合計距離は、反応容器4中の前駆体ガスの滞留時間を増加させることができる。
【0051】
ある例では、反応器入口10は、半径方向中心コア領域6における前駆体の輸送を増加させるために、特定の旋回流れ条件で前駆体ガスを導入するように構成することができる。たとえば、半径方向中心コア領域6においてより温度の低い流体に遠心力を誘発するために、反応器入口10は特定の速度で前駆体ガスを導入することができる。この遠心力は、半径方向中心コア領域6および基材18に、より温度が高い前駆体ガスを輸送するのを増強することができる。たとえば、半径方向中心コア領域6の中により大きな向心力を作り出すために、反応器入口10はより速い速度で前駆体ガスを導入することができる。旋回する速度が増加するとともに、誘発される向心力は増加することができ、それは基材18におけるより冷たいコア前駆体ガスをバルク流体からのより熱い前駆体ガスで置換するのを増加させることができる。
【0052】
ある例では、反応器入口10は、反応容器4中のバルク前駆体ガスの混合を増加させるために、特定の旋回流れ条件で前駆体ガスを導入するように構成することができる。たとえば、反応器入口10は、反応容器4の中に乱流または対流条件を作り出すために、特定の速度および特定の角度で前駆体ガスを導入してもよい。乱流または対流条件は、反応容器4の少なくとも軸セグメント(すなわち反応容器4の断面セグメント)を通してより均一な温度および前駆体ガス濃度を作り出すために、前駆体ガスの混合を増加させることができる。たとえば、反応器入口10は、前駆体ガスの混合を増加させるために、より乱流の前駆体流れを作り出すために、より速い速度で、または反応容器4の外壁の接線からより離れた角度で前駆体ガスを導入してもよい。反応容器4中の乱流は、反応容器4中の前駆体流れのレイノルズ数に関係し得る。前駆体流れのレイノルズ数は速度に比例し、それは前駆体ガスの流量または流速が増加するにつれて増加し得る。他の例では、反応容器4の外壁の表面の接線からより離れた角度は、たとえば外壁の面に向かって交差することによって、または他の方向に移動するガスとの剪断力によって、不規則な前駆体ガス流れを作り出してもよく、それは乱流を増加させ得る。増加した前駆体ガス乱流は、対流の不安定性を増加させ、反応容器4中のおよび基材18における前駆体ガスの混合に役立ち得る。
【0053】
ある例では、反応容器4の内部に前駆体ガスを導入する工程は、前駆体ガスを前駆体温度に加熱することを含んでいてもよい。ある例では、前駆体温度は実質的に反応容器温度と同じであってもよい。たとえば、等温CVI反応器操作の場合は、前駆体温度は、基材18におけるより均一な温度分布を達成するために、反応容器温度および基材温度と実質的に同じであってもよい。他の例では、前駆体温度は反応容器温度と実質的に異なっていてもよい。たとえば、前駆体ガスの滞留時間が長い反応器操作の場合は、反応容器4が前駆体ガスを反応容器温度に加熱するのにより長い時間を有することができるので、前駆体温度は反応容器温度よりも低くてもよい。
【0054】
図2の技術は、反応器出口12の少なくとも1つを使用して、反応容器4から排気ガスを取り出す工程(24)を含む。ある例では、反応器出口12は、特定の速度、角度、流量などで排気ガスを取り出すことによって、反応容器4中に旋回流れを作り出し、反応容器4中の圧力を制御し、または反応容器4中の滞留時間を制御するのに役立ち得る。ある例では、反応器入口10および反応器出口12は、反応容器4中の選択された流量、圧力、滞留時間、温度などを作り出すために、前駆体ガスのバルク流れを制御し得る。たとえば、流れを反応容器4を回る周方向に向けるために、反応器出口12の1つまたはそれ以上を反応容器4の外壁の接線に近い角度に配置してもよい。他の例では、反応器出口12は、流れを反応容器4の周方向に向けるよりはむしろ反応容器4の半径方向に向けるために、反応容器4の外壁の接線からより離れた角度で配置してもよい。ある例では、反応容器4中の圧力または滞留時間を減少させるために、反応器出口12はより高い流量または流速で排気ガスを取り出してもよい。
【0055】
ある例では、
図2には示されていないが、その技術は、所望により、基材スタンド14を使用して、たとえば反応容器4の軸方向と実質的に平行に延びる軸の周りに、基材18を回転させることを含んでもよい。ある例では、基材スタンド14は、選択的に、反対の回転方向に基材18を回転させてもよい。たとえば、基材18中の前駆体ガスの拡散を助けるために、基材スタンド14は、基材18と旋回前駆体ガスとの間の相対運動を減少させる速度および方向で回転してもよい。他の例では、基材スタンド14は、より速く/ゆっくり回転してもよいし、回転しなくてもよいし、旋回する前駆体ガス流れと反対の方向に回転してもよい。たとえば、基材スタンド14は、基材18を加熱/冷却する時間の量を減らすために、または基材18をより均一に加熱/冷却するために、基材18を加熱または冷却する間、逆回転してもよい。拡散CVIまたは低圧CVDに関する例では、バルク前駆体ガスと基材18との間の相対速度を減少し、かつ基材18の中への前駆体ガスの対流に比べて基材18の中への前駆体ガスの拡散を増加させるために、基材スタンド14は、旋回する前駆体ガスの流れと同じ方向に基材18を回転(すなわち同速回転)させてもよい。強制流CVIまたは大気圧CVDに関する例では、基材スタンド14は、バルク前駆体ガスと基材18との間の相対速度を増加させ、かつ基材18の表面での混合を増加させるために、基材18を回転させなくてもよいし、旋回する前駆体ガスの流れと反対の方向に基材18を回転(すなわち逆回転)させてもよい。
【0056】
図2の技術は、たとえば析出した前駆体をセラミックマトリックスへ固化させるために、反応容器4を冷却する工程(26)を含んでもよい。ある例では、コントローラー16は、基材18を冷却するために、反応容器4の中に、相対的により冷たい不活性ガスを導入するように反応器入口10を制御してもよい。ヒーターを使用する例のような他の例では、コントローラー16は、反応容器4を冷却するために、ヒーターを切るかまたは調節してもよい。ある例では、コントローラー16は、基材18の冷却速度を増加させるために、基材18を逆回転させるように基材スタンド14を制御してもよい。
【0057】
ある例では、
図2の技術は等温CVIに使用することができる。たとえば、コントローラー16は、基材18の温度と実質的に同じ温度に反応容器4を加熱する(20)ために熱源8を制御してもよい。コントローラー16は、基材18の温度と実質的に同じ温度で前駆体ガスを導入する(22)ために反応器入口10の少なくとも1つを制御してもよい。
【0058】
ある例では、
図2の技術は温度勾配CVIに使用することができる。たとえば、コントローラー16は、基材18の温度より低い温度に反応容器4を加熱する(20)ために熱源8を制御してもよい。コントローラー16は、基材18の温度より低い温度で前駆体ガスを導入する(22)ために反応器入口10の少なくとも1つを制御してもよい。
【0059】
ある例では、
図2の技術は拡散CVIに使用することができる。たとえば、反応容器4の圧力が実質的に基材18中の圧力と同じになるように、コントローラー16は、ある速度、流量および/または角度で前駆体ガスを導入する(22)ための反応器入口10の少なくとも1つを制御し、また、ある速度、流量および/または角度での排気ガスを取り出す(24)ための反応器出口12の少なくとも1つを制御してもよい。
【0060】
ある例では、
図2の技術は強制流CVIに使用することができる。たとえば、反応容器4の動圧が基材18中の圧力よりも高くなるように、コントローラー16は、ある速度、流量および/または角度で前駆体ガスを導入する(22)ための反応器入口10の少なくとも1つを制御してもよいし、また、ある速度、流量および/または角度で排気ガスを取り出す(24)ための反応器出口12の少なくとも1つを制御してもよい。
【0061】
ある例では、
図2の技術は低圧CVDに使用することができる。たとえば、反応容器4中の圧力が大気圧よりも低くなるように、コントローラー16は、ある速度、流量および/または角度で前駆体ガスを導入する(22)ための反応器入口10の少なくとも1つを制御してもよいし、また、ある速度、流量および/または角度で排気ガスを取り出す(24)ための反応器出口12の少なくとも1つを制御してもよい。
【0062】
さらに、上記のパラメータ制御の様々な形式を組み合わせることによって、拡散等温CVI、拡散温度勾配CVI、強制流等温CVI、または強制流温度勾配CVIを達成するために、等温CVIまたは温度勾配CVIを拡散CVIまたは強制流CVIと組み合わせてもよい。
【0063】
図3は、化学気相浸透または析出を使用して、複合材料を製造するためのシステム30の例を図示する概念的な断面図である。
図3のシステム30を、
図1のシステム2を同時に参照しながら、以下、説明する。ただし、当業者は
図3のシステム30がより多くのまたはより少ない構成要素を含んでもよいことを理解するであろう。
【0064】
システム30は反応容器34を含む。反応容器34は
図1に記載した反応容器4と同じように構成し操作することができる。反応容器34は半径方向中心コア領域32に基材46を収容するように構成することができる。基材46および半径方向中心コア領域32は、それぞれ
図1に記載した基材18および半径方向中心コア領域6と同じように構成し操作することができる。反応容器34は外壁48を含むことができる。外壁48は、反応容器34の側面に軸方向に延び、中でCVI/CVD技術が実施される包囲体積の境界を円周状に定める。
【0065】
システム30は、また、基材スタンド56を含んでいてもよい。基材スタンド56は、
図1に記載した基材スタンド14に同じように構成し操作することができる。ある例では、基材スタンド56は、シャフト58およびモーター60に機械的に連結していてもよい。モーター60は、選択的にまたは制御可能にシャフト58を回転させるように、そしてそれに応じて基材スタンド56を回転させるように構成することができる。ある例では、基材スタンド56は、所望により、温度勾配CVIを予熱するために基材46を加熱するヒーターのような他の構成要素を含んでいてもよい。
【0066】
システム30は、また、反応容器34に熱的に連結された熱源44を含む。熱源44は、
図1に記載した熱源4と同じように構成し操作することができる。この例では、熱源44は、伝導を通じて反応容器34の外壁48を直接加熱することができる。熱源44は、外壁48に構造上連結されていてもよい。たとえば、熱源44は、熱い流体で反応容器34を加熱し、より冷たい流体で反応容器34を冷却するように構成された流体ヒーターおよび冷却器であってもよい。ある態様では、熱源44は反応容器34上の異なる軸方向の位置で異なる温度で作動するように構成してもよい。
【0067】
図3の例では、システム30は、さらに、外壁48に2つの反応器入口36を含む。反応器入口36は
図1に記載した反応器入口10と同じように構成し操作することができる。この例には、外壁48を通って延びる2つの反応器入口が示されいる。しかし、他の例では、より多くのまたはより少ない反応器入口36が使用されてもよい。たとえば、反応器入口36は、反応容器34の外周のまわりに、外壁48の側面に軸方向に沿って、またはそれらの両方に、分布してもよい。この例では、反応器入口36の1つは第1の旋回する流れを作り出すために反応容器34の最上部の近くに配置され、一方、もう1つの反応器入口36は、第1の旋回する流れを増加させまたは補強することができる第2の旋回する流れを作り出すために、反応容器34の最上部より軸方向に下の位置に配置されている。反応器入口36の各々は供給管38に連結されている。供給管38の各々は、反応器入口36の1つを通って、反応容器34に前駆体ガスを輸送するように構成されている。他の例では、供給管38は反応容器34に不活性ガスを輸送してもよい。供給管38は予熱器40に連結してもよい。予熱器40はCVI/CVD用の選択された温度に前駆体ガスを加熱するように構成されていてもよい。他の例では、予熱器40は、不活性ガス、キャリヤーガスまたは後処理ガスのような他のガスを選択された温度に加熱するように構成されていてもよい。
【0068】
システム30は、また、外壁48に反応器出口54を含む。反応器出口54は
図1に記載した反応器出口12と同じように構成し操作することができる。この例には、外壁48を通って延びる1つの反応器出口54がて示されている。しかし、他の例では、2つ以上の反応器出口54が使用されてもよい。たとえば、反応器出口54は、外壁48の外周のまわりに分布していてもよいし、外壁48の側面を下方に軸方向に分布していてもよい。反応器出口54は排出管52に連結されている。排出管52は排気ガスを反応容器34から反応器出口48を通って輸送するように構成されている。排出管52は、真空ポンプ50またはスクラバーのような他の後処理設備に連結されていてもよい。真空ポンプ50は反応容器34に対して吸込圧力を作り出すように構成することができる。
【0069】
システム30は、また、コントローラー42を含むことができる。コントローラー42は
図1に記載したコントローラー16と同じように構成し操作することができる。コントローラー42は、熱源44、予熱器40、反応器入口36、反応器出口54、真空ポンプ50およびモーター60に通信可能に連結され得る。コントローラー42は、熱源44を選択された反応容器温度、温度勾配などで制御し、予熱器40を選択された前駆体ガス温度、不活性ガス温度などで制御し、反応器入口36を選択された速度、流量および方向に制御し、反応器出口54を選択された速度、流量、方向などに制御し、真空ポンプ50を選択された圧力、流量などに制御し、そしてモーター60を選択された回転数、基材速度などに制御するように構成することができる。
【0070】
図4は
図1の反応器入口の周方向の位置の例を図示する概念的な断面図である。反応容器74は、半径方向中心コア領域72および反応容器74の外周に配置された4つの入口62を有し得る。反応容器74、半径方向中心コア領域72および反応器入口62は、それぞれ
図1に記載した反応容器4、半径方向中心コア領域6および反応器入口10と同じように構成し操作することができる。他の例では、4つより多くのまたは4つより少ない反応器入口62を使用してもよく、また、他の例では、反応器入口62は、対称な位置または非対称の位置のような反応容器62のまわりの異なる周方向位置に配置されてもよい。流れ方向68は、たとえば、反応器入口62からの前駆体ガス流れの方向を表わす。流れ方向68が反応容器74の外壁の接線面64から半径方向角度66になるように、反応器入口62は配置される。流れ方向68の反応器入口62からの流れは、反応容器74中にそして半径方向中心コア領域72のまわりに旋回流れ70を生ずるように、反応器入口62を配置することができる。ある例では、反応器入口62は、接線面64からより離れた半径方向角度66よりも、一般により大きな外周で旋回流れ70を生じさせるような接線面64からの半径方向角度66で配置されてもよい。ある例では、反応器入口62は、接線面64からより離れた半径方向角度66よりも、より大きな外周ではより大きな速度を有し、より小さな外周ではより遅い速度を有する旋回流れ70を生じさせるような接線表64からの半径方向角度66で配置してもよい。
【実施例】
【0071】
予熱工程
多孔質予備成形物は、SiC繊維を織って多孔質予備成形物にすることにより作製することができる。SiC繊維多孔質予備成形物は、反応容器の中に反応器入口を含む反応容器の中に置くことができる。反応容器の内部体積を反応容器温度に加熱するために、反応容器ヒーター温度(T
f)はT
rv=1000℃に設定することができる。さらに、反応容器の中に旋回流れを作り出し、かつ反応容器の内部体積を反応容器温度に加熱するのを助けるために、窒素ガスをT
g=1000℃の加熱炉ガス温度(T
g)に加熱し、反応器入口を通って高流量で注入することができる。反応容器および多孔質予備成形物の予熱時間をさらに短縮するために、旋回流れの方向とは逆の方向に基材スタンドを回転させてもよい。
【0072】
浸透工程−等温拡散輸送
T
rv=1000℃に維持した反応容器ヒーターで、メチルトリクロロシランと水素ガスの混合物をT
rv=1000℃に予熱し、反応器入口を通して反応容器の壁に対してほぼ接線方向に注入して、反応容器の中に旋回流れを作り出すことができる。旋回流れにより延長されたガス分解時間がある。加熱炉の壁から遠ざかるバルク旋回速度が混合物の拡散速度に匹敵するように、流量を設定することができる。多孔質予備成形物中の拡散輸送が主として半径方向に生じるのを促進するために、基材スタンドはバルク旋回流れと同速回転することができる。拡散速度は、多孔質予備成形物の内部と外部の濃度差の増加により増加させることができ、一方、旋回流れ加熱炉における拡散速度長さスケールは、軸流加熱炉における拡散速度長さスケールのおよそ半分であり得る。多孔質予備成形物において所望の高密度化が達成されるまで、システムはT
rv=1000℃に保持されることができる。
【0073】
浸透工程−等温強制流れ
T
rv=1000℃に維持した反応容器ヒーターで、メチルトリクロロシランと水素ガスの混合物をT
g=1000℃に予熱し、反応器入口を通して反応容器の壁に対してほぼ接線方向に注入して、旋回流れを作り出すことができる。ガスの対流速度が生じるように流量と角度を設定することができる。多孔質予備成形物浸透性および/または複数の多孔質予備成形物装填配置と調和するように、均一なバルク速度ゾーンを作り出すことができる。
【0074】
浸透工程−温度勾配拡散輸送
予熱が完了した後、T
rv=900℃に下げた反応容器ヒーターで、メチルトリクロロシランと水素ガスの混合物を、T
g=900℃に予熱し、反応器入口を通して反応容器の壁に対してほぼ接線方向に注入して、旋回流れを作り出すことができる。多孔質予備成形物温度とガス/反応容器温度の差は、多孔質予備成形物の中に温度勾配を作り出し、多孔質予備成形物の外表面だけがより低い温度の加熱炉ガスに直接接触することにより、多孔質予備成形物の内部温度をより高くすることができる。温度勾配を作り出すことができる時間は、反応器入口からの流れが増えると短くなり得る。反応容器の壁から遠ざかるバルク旋回速度が混合物の拡散速度に匹敵するように、流量を設定することができる。多孔質予備成形物中の拡散輸送が主として半径方向に生じるのを促進するために、基材スタンドをバルク旋回流れと同速回転させることができる。
【0075】
浸透工程−温度勾配強制流
T
rv=900℃に下げられた反応容器ヒーターで、メチルトリクロロシランと水素ガスの混合物を、T
g=900℃に予熱し、反応器入口を通して反応容器の壁に対してほぼ接線方向に注入して、旋回流れを作り出すことができる。ガスの対流速度が生じるように、流量と角度を設定することができる。多孔質予備成形物浸透性および/または複数の多孔質予備成形物装填配置と調和するように、均一なバルク速度ゾーンを作り出すことができる。
【0076】
冷却工程
反応容器ヒーターを切り、反応容器壁を冷却することができる。反応容器は、基材スタンドを逆回転させながら、高流量で反応器入口を通して注入されたT
g=300℃の窒素ガスで洗い流すことができる。
【0077】
様々な実施例について記載された。これらおよびその他の実施例が次の特許請求の範囲の範囲内である。
【0078】
本開示は、次の態様を含むことができる。
[1]熱源を使用して反応容器の半径方向中心コア領域に基材を含む反応容器を加熱すること、
反応容器の外壁における少なくとも1つの反応器入口を使用して、反応容器に前駆体ガスを導入し、前駆体ガスから基材の上に物質を析出させること、および
少なくとも1つの反応器出口を使用して反応容器から排気ガスを取り出すこと
を含む方法であって、少なくとも1つの反応器入口は前駆体ガスが反応容器の半径方向中心コア領域のまわりを旋回する流れを生ずるように構成されている、方法。
[2]回転する基材スタンドを使用して、基材を回転させることをさらに含む[1]に記載の方法。
[3]反応容器を加熱することが、さらに、予熱された不活性ガスを導入すること、および基材を回転させることを含む、[2]に記載の方法。
[4]基材は多孔質予備成形物を含み、前駆体ガスの平均温度と多孔質予備成形物の平均温度は実質的に同じであり、反応容器の動圧と予備成形物中の圧力は実質的に同じである、[1]に記載の方法。
[5]基材は多孔質予備成形物を含み、前駆体ガスの平均温度と多孔質予備成形物の平均温度は実質的に同じであり、反応容器の動圧は予備成形物中の圧力より大きい、[1]に記載の方法。
[6]基材は多孔質予備成形物を含み、前駆体ガスの平均温度は多孔質予備成形物の平均温度よりも低く、反応容器の動圧と予備成形物中の圧力は実質的に同じである、[1]に記載の方法。
[7]基材は多孔質予備成形物を含み、前駆体ガスの平均温度は多孔質予備成形物の平均温度よりも低く、反応容器の動圧は予備成形物中の圧力より高い、[1]に記載の方法。
[8]前駆体ガスが外壁の接線面から0〜90度の半径方向角度で導入される、[1]に記載の方法。
[9]前駆体ガスが外壁の接線面から0〜10度の軸方向角度で導入される、[1]に記載の方法。
[10]外壁を含む反応容器、
反応容器に熱的に連結した熱源、
外壁における少なくとも1つの反応器入口、および
少なくとも1つの反応器出口
を含むシステムであって、反応容器は半径方向中心コア領域に基材を収容するように構成され、少なくとも1つの反応器入口は、反応容器に前駆体ガスを導入し、前駆体ガスが反応容器の半径方向中心コア領域のまわりを旋回する流れを生ずるように構成され、少なくとも1つの反応器出口は反応容器から排気ガスを取り出すように構成されている、システム。
[11]少なくとも1つの反応器入口は第1の反応器入口と第2の反応器入口を含み、第1の反応器入口と第2の反応器入口は外壁の異なる軸方向位置に配置されている、[10]に記載のシステム。
[12]基材を回転させるように構成された回転する基材スタンドをさらに含む[10]に記載のシステム。
[13]基材は多孔質予備成形物を含み、前駆体ガスの平均温度と多孔質予備成形物の平均温度は実質的に同じであり、反応容器の動圧と予備成形物中の圧力は実質的に同じである、[10]に記載のシステム。
[14]基材は多孔質予備成形物を含み、前駆体ガスの平均温度と多孔質予備成形物の平均温度は実質的に同じであり、反応容器の動圧は予備成形物中の圧力より大きい、[10]に記載のシステム。
[15]基材は多孔質予備成形物を含み、前駆体ガスの平均温度は多孔質予備成形物の平均温度よりも低く、反応容器の動圧と予備成形物中の圧力は実質的に同じである、[10]に記載のシステム。
[16]基材は多孔質予備成形物を含み、前駆体ガスの平均温度は多孔質予備成形物の平均温度よりも低く、反応容器の動圧は予備成形物中の圧力より高い、[10]に記載のシステム。
[17]少なくとも1つの反応器入口が、前駆体ガスを外壁の接線面から0〜90度の半径方向角度で導入するように構成されている、[10]に記載のシステム。
[18]少なくとも1つの反応容器入口が、前駆体ガスを外壁の接線面から0〜10度の軸方向角度で導入するように構成されている、[10]に記載のシステム。
[19]少なくとも1つの反応器入口が、不活性ガスを反応容器に導入するように構成されている、[10]に記載のシステム。
[20]反応容器の半径方向中心コア領域に基材を含む反応容器を加熱するために熱源を制御し、反応容器に前駆体ガスを導入するために反応容器の外壁における少なくとも1つの反応器入口を制御し、かつ反応容器から排気ガスを取り出すために少なくとも1つの反応器出口を制御するように構成されたコントローラーを含むシステムであって、少なくとも1つの反応器入口は前駆体ガスが反応容器の半径方向中心コア領域のまわりを旋回する流れを生ずるように構成されている、システム。