【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘電体バリア放電等の熱的非平衡プラズマでは、CF
4の分解効率が2〜3割程度である。このため、温暖化ガス(CF
4)の排出に繋がるおそれがあった。また、原料ガスの調達コスト等のランニングコストが上昇する原因にもなっていた。更に、プラズマ発生ユニットの大型化が必要となり、設備コストの上昇の主要因となっていた。
本発明は、かかる事情に鑑み、シリコン含有物を含む被処理基板の表面処理において、CF
4等のフッ素系原料成分の分解効率を高くして、HF等のフッ素系反応成分の生成効率を高めるとともに、温暖化ガスの排出を抑え、ランニングコストや設備コストを低減可能な表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、発明者は鋭意研究考察を行なった。
前述したように、誘電体バリア放電方式による大気圧プラズマ表面処理装置からの使用済みのガスは、アーク放電式などの燃焼式除害装置によって熱分解される。反応式は、例えば下記である。
CF
4+2H
2O→4HF+CO
2 (式1)
該燃焼式除害装置は、熱プラズマ(アーク放電)を利用するため、プラズマ温度が1000℃を超え、電気的な分解に加え、熱による分解反応も起き、除害効率は90%程度である。このようなアーク放電による熱分解方式を、原料ガスから反応ガスを生成する工程に適用すれば、生成効率が高まると考えられる。
本発明は、かかる考察に基づいてなされたものであり、本発明装置は、シリコン含有物を含む被処理基板を、フッ素系反応成分を含有する反応ガスによって表面処理する表面処理装置であって、
アーク放電を発生させる一対の電極を含み、前記アーク放電によってフッ素系原料成分を含有する原料ガスから前記反応ガスを生成するアーク放電部と、
前記アーク放電部からの反応ガスを前記被処理基板へ向けて吹出すノズル部と、
を備えたことを特徴とする。
また、本発明方法は、シリコン含有物を含む被処理基板を、フッ素系反応成分を含有する反応ガスによって表面処理する表面処理方法であって、
一対の電極を含むアーク放電部においてアーク放電を発生させるとともに、フッ素系原料成分を含有する原料ガスを前記アーク放電部に導入することよって前記反応ガスを生成する工程と、
前記アーク放電部からの反応ガスを前記被処理基板に接触させる工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
シリコン含有物としては、SiO
2、SiN、Si、SiC、SiOC等が挙げられる。
フッ素系原料成分としては、CF
4、C
2F
4、C
2F
6、C
3F
8等のPFC(パーフルオロカーボン)、CHF
3、CH
2F
2、CH
3F等のHFC(ハイドロフルオロカーボン)、SF
6、NF
3、XeF
2、その他のフッ素含有化合物が挙げられる。この種のフッ素含有化合物は、化学的に安定である。
フッ素系反応成分は、前記シリコン含有物と反応可能な化合物であり、HF、COF
2等が挙げられる。
好ましくは、前記アーク放電は大気圧近傍下で行われる。本明細書において大気圧近傍とは、1.013×10
4〜50.663×10
4Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10
4〜10.664×10
4Paが好ましく、9.331×10
4〜10.397×10
4Paがより好ましい。
当該表面処理装置によれば、CF
4等のフッ素系原料成分をアーク放電によって分解することで、分解効率が高まり、HF等のフッ素系反応成分の生成効率が高まる。したがって、装置を小型化可能である。
【0008】
前記表面処理装置が、前記一対の電極間の放電電流に応じた流量のトーチガスを前記アーク放電部に供給するトーチガス供給部と、
前記トーチガスの流量に応じた流量のバランスガスを前記反応ガスに加えるバランスガス供給部と、
を更に備えていることが好ましい。
前記表面処理方法が、前記一対の電極間の放電電流に応じた流量のトーチガスを前記アーク放電部に供給する工程と、
前記トーチガスの流量に応じた流量のバランスガスを前記反応ガスに加える工程と、
を更に備えていることが好ましい。
放電電流が増大しようとしたらトーチガス流量を減らす。放電電流が減少しようとしたらトーチガス流量を増やす。これによって、放電電流を安定させることができる。
トーチガス流量を減らすときは、バランスガス流量を増やす。トーチガス流量を増やすときは、バランスガス流量を減らす。これによって、反応ガス全体の流量を安定させることができ、ひいては処理性能を安定させることができる。
トーチガス成分としては、窒素、その他の不活性ガスが挙げられる。
バランスガス成分としては、窒素、その他の不活性ガスが挙げられる。
バランスガス成分は、トーチガス成分と同じであることが好ましい。なお、バランスガス成分がトーチガス成分とは異なっていてもよい。
【0009】
前記表面処理装置が、前記原料ガスに水を添加する添加部を含み、
前記反応ガス中のフッ化水素蒸気及び水蒸気の露点が、前記アーク放電部から前記ノズル部の吹出口までの前記反応ガスの経路の最低温度より低温になるように、前記添加部の水添加量が調節されていることが好ましい。
前記表面処理方法において、前記原料ガスに水を添加するとともに、
前記反応ガス中のフッ化水素蒸気及び水蒸気の露点が、前記アーク放電部から前記ノズル部の吹出口までの前記反応ガスの経路の最低温度より低温になるように、前記水添加量を調節することが好ましい。
これによって、前記反応ガスの経路上でフッ酸水が凝縮するのを回避できる。