(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の糸係止具では、本体部(特許文献1における係止部)の下面において、装着部(特許文献1における取付部)との接続位置よりもスプールの糸巻胴部寄りの位置に配置された突出部(特許文献1における第1突出部)と、装着部との接続位置よりもスプールの糸巻胴部から離れた位置に配置された突出部(特許文献1における第2突出部)とが、設けられている。
【0005】
すなわち、これら2つの突出部(特許文献1の第1突出部及び第2突出部)は、装着部の両側に各別に設けられている。この場合、各突出部及び装着部の間の距離を異ならせることによって、細径及び太径の釣り糸を個別に係止することができる。さらに、太径の釣り糸用には、本体部及び装着部の接続位置よりもスプールの糸巻胴部から離れた位置に配置された突出部(特許文献1の第2突出部)と装着部との間に、釣り糸を収容する凹部が、設けられている。
【0006】
このような従来の糸係止具の構成では、釣り糸が細径であるか太径であるかによって、釣り糸は、装着部の両側それぞれに係止される。このため、釣人は、細径の釣り糸を太糸用の装着範囲(特許文献1における取付部及び第2突出部の間の範囲)に装着したり、太径の釣り糸を細糸用の装着範囲(特許文献1における取付部及び第1突出部の間の範囲)に装着したりするおそれがある。すると、釣り糸が、確実に係止できないという問題点がある。
【0007】
特に、従来の糸係止具の構成では、太径用の装着範囲には、太径の釣り糸を収容する凹部が設けられている。このため、極太径の釣り糸の場合は、凹部に収容されるが、通常の太径の釣り糸の場合は、凹部に収容されずに装着部側でのみ係止されてしまうおそれがある。すなわち、釣り糸が、太糸用の装着範囲において移動可能であるため、釣り糸の係止位置が安定せず、確実に係止ができないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、釣人が糸係止具の所定の場所に釣り糸を容易に配置し、且つ釣人が糸係止具の所定の場所で釣り糸を確実に保持できる糸係止具を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る糸係止具は、スピニングリールのスプールに装着可能な装着部と、釣り糸を係止可能な係止具本体とを、有する。係止具本体は、本体部と、第1突出部と、第2突出部と、凹部とを、備える。本体部は、装着部から延設される。第1突出部は、本体部から突出する。第2突出部は、装着部及び第1突出部の間において、本体部から突出する。凹部は、第1突出部及び第2突出部の間において、本体部に凹状に形成される。
【0010】
本糸係止具では、太径の釣り糸の場合は、釣り糸が、第1突出部を通過すると、第1突出部及び第2突出部の間の凹部に配置される。この場合、第1突出部及び第2突出部によって、釣り糸の抜け出しが規制される。また、細径の釣り糸の場合は、第1突出部を通過した後、第2突出部を通過する。これにより、第2突出部及び装着部の間に配置される。この場合、第2突出部及び装着部によって釣り糸の抜け出しが規制される。このように、本糸係止具では、釣人は、糸係止具の所定の場所に、釣り糸を容易に配置することができる。また、釣人は、糸係止具の所定の場所で、細径の釣り糸であっても、太径の釣り糸であっても確実に保持することができる。
【0011】
本発明の他の側面に係る糸係止具では、本体部が、外縁部及び凹部の間に設けられるテーパ部と、装着部及び凹部の間においてテーパ部から膨出する非テーパ部とを、有することが好ましい。
【0012】
この場合、釣人は、テーパ部を用いて、釣り糸を外縁部から凹部に向けて容易に案内することができる。また、非テーパ部では、釣人は、釣り糸を第2突出部及び装着部の間に直接的に配置することができる。
【0013】
本発明の他の側面に係る糸係止具では、本体部が、外縁部の隅角部から装着部へと釣り糸を導くための導入面を、有することが好ましい。
【0014】
この場合、釣人は、導入面を用いて、釣り糸を外縁部の隅角部から装着部に向けて容易に導くことができる。
【0015】
本発明の他の側面に係る糸係止具では、本体部が、装着部及び第2突出部の間に形成される表面と導入面とを接続する接続面を、さらに有することが好ましい。
【0016】
この場合、釣り糸が係止具本体から取り外される場合に、釣り糸を、接続面によって、装着部及び第2突出部の間に形成される表面から、導入面へとスムーズに案内することができる。
【0017】
本発明の他の側面に係る糸係止具では、係止具本体が熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0018】
この場合、係止具本体をプラスチック材料で形成する場合と比較して、釣り糸を、係止具本体にスムーズに止めることができ、且つ係止具本体から外れにくくすることができる。
【0019】
本発明の一側面に係るスピニングリールのスプールは、糸巻き胴部と、スカート部と、上述した糸係止具とを、備える。糸巻き胴部は、釣り糸を外周面に巻き付け可能に構成される。スカート部は、糸巻き胴部に設けられ、糸巻き胴部より大径に構成される。糸係止具は、スカート部に配置される。
【0020】
本スプールでは、上述した糸係止具を有しているので、釣人は、糸係止具の所定の場所に、釣り糸を容易に配置することができる。また、釣人は、糸係止具の所定の場所で、釣り糸を確実に保持することができる。
【0021】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのスプールは、シート部材をさらに備える。シート部材は、スカート部及び糸係止具の間に配置される。シート部材は、釣り糸を配置可能な孔部を、有する。
【0022】
この場合、釣り糸をシート部材の孔部に配置することによって、釣り糸の抜け出しを確実に防止することができる。
【0023】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのスプールでは、釣り糸が、孔部において、凹部及びスカート部の間に配置されることが好ましい。
【0024】
この場合、釣り糸を、孔部に配置した状態で、凹部及びシート部材によって確実に挟持させることができる。
【0025】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのスプールでは、第1突出部及び第2突出部が、孔部に配置されることが好ましい。
【0026】
この場合、スカート部からの糸係止具の突出量を大きくすることなく、糸係止具をスカート部に装着することができる。
【0027】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのスプールでは、シート部材が、装着部及び第2突出部の間に形成される本体部の表面に対して、接触可能に構成されることが好ましい。釣り糸は、装着部及び第2突出部の間に形成される本体部の表面、及びシート部材の間に、配置される。
【0028】
この場合、釣り糸を、装着部及び第2突出部の間に形成される本体部の表面、及びシート部材によって、確実に挟持させることができる。
【0029】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのスプールでは、スカート部が、釣り糸を配置可能な穴部を、有することが好ましい。
【0030】
この場合、釣り糸をスカート部の孔部に配置することによって、釣り糸の抜け出しを確実に防止することができる。
【0031】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのスプールでは、釣り糸は、穴部及び凹部の間に配置される。
【0032】
この場合、釣り糸を、穴部に配置した状態で、凹部及びスカート部の表面によって確実に挟持させることができる。
【0033】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのスプールでは、第1突出部及び第2突出部が、穴部に配置されることが好ましい。
【0034】
この場合、スカート部からの糸係止具の突出量を大きくすることなく、糸係止具をスカート部に装着することができる。
【0035】
本発明の他の側面に係るスピニングリールのスプールでは、スカート部が、装着部及び第2突出部の間に形成される本体部の表面に対して、接触可能に構成されることが好ましい。釣り糸は、装着部及び第2突出部の間に形成される本体部の表面、及びスカート部の表面の間に配置される。
【0036】
この場合、釣り糸を、装着部及び第2突出部の間に形成される本体部の表面、及びスカート部の表面によって、確実に挟持させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、釣人が糸係止具の所定の場所に釣り糸を容易に配置し、且つ釣人が糸係止具の所定の場所で釣り糸を確実に保持できる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の一実施形態を採用したスピニングリール1は、
図1に示すように、リール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備える。
【0040】
リール本体2は、ハンドル5を回転可能に支持する。ロータ3は、スプール4に釣り糸を巻き付けるためのものである。ロータ3は、リール本体2に回転可能に支持される。スプール4には、釣り糸が巻き付けられる。
【0041】
以下では、ロータ3の回転中心Oが延びる方向を、“軸方向”と記す。軸方向において、釣り糸が繰り出される方向を“前方”と定義し、“前方”とは反対の方向を“後方”と定義する。
【0042】
ロータ3の回転中心Oを基準とした円において、ロータ3の回転中心Oから離れる方向を、“径方向”と定義する。ロータ3の回転中心Oを基準とした円において、ロータ3の回転中心Oまわりの方向を、“周方向”と定義する。
【0043】
スプール4は、ロータ3に対して前後方向に移動可能なように、スプール軸(図示しない)を介してリール本体2に装着される。なお、スプール軸の軸心は、ロータ3の回転中心Oと同心である。
【0044】
スプール4は、糸巻き胴部41と、前フランジ部42と、スカート部43と、糸係止具70とを、備える。スプール4は、シート部材80を、さらに備える。
【0045】
糸巻き胴部41は、釣り糸を外周面に巻き付け可能に構成される。例えば、糸巻き胴部41は、実質的に筒状に形成される。前フランジ部42は、糸巻き胴部41の前部に一体に形成される。前フランジ部42は、糸巻き胴部41より大径に形成される。前フランジ部42は、糸巻き胴部41から径方向外側に突出し、実質的に環状に形成される。
【0046】
図1〜
図3に示すように、スカート部43は、糸巻き胴部41の後部に一体に形成される。スカート部43は、糸巻き胴部41より大径に形成される。スカート部43は、糸巻き胴部41から径方向外側に突出する後フランジ部44と、後フランジ部44から軸方向に延びる筒部45とを、有する(
図3を参照)。
【0047】
図2及び
図3に示すように、筒部45には、凹部45aと、貫通孔45bとが、形成される。凹部45aは、筒部45の外周面から径方向内側に凹んで形成されている。凹部45aには、糸係止具70例えば係止具本体72(後述する)が配置される。貫通孔45bは、凹部45aの底部に形成されている(
図3を参照)。詳細には、貫通孔45bは、凹部45aの底部から径方向内側に向けて、筒部45を貫通している。貫通孔45bは、多角形状に形成される。ここでは、貫通孔45bは、実質的に矩形状に形成される。貫通孔45bには、後述する糸係止具70の装着部71(後述する)が挿通される。
【0048】
(糸係止具)
糸係止具70は、スプール4に装着可能に構成される。
図2及び
図3に示すように、糸係止具70は、スカート部43に配置される。糸係止具70は、例えばエラストマーのような熱可塑性樹脂によって成形される。糸係止具70は、スプール4に装着可能な装着部71と、釣り糸を係止可能な係止具本体72とを有する。
【0049】
−装着部−
図3に示すように、装着部71は、スプール4に装着される部分である。装着部71は、係止具本体72に設けられる。例えば、装着部71は、係止具本体72と一体に形成される。装着部71は、係止具本体72から突出する。装着部71は、一方向に長く形成されている。装着部71の断面は、多角形状に形成される。ここでは、装着部71は、実質的に矩形状に形成される。
【0050】
装着部71は、シート部材80の第1孔部80a(後述する)及びスカート部43の貫通孔45bに挿通される。装着部71の先端部71aは、固定部材例えばネジ部材によって、スカート部43の後面例えば後フランジ部44の後面に、固定される。ここでは、“装着部71の先端部がスカート部43の後面(後フランジ部44の後面)に固定される”と記したが、“装着部71の先端部が糸巻き胴部41に固定される”と解釈してもよい。
【0051】
−糸係止具本体−
係止具本体72は、釣り糸を係止可能に構成される。
図2及び
図3に示すように、係止具本体72は、装着部71と一体に形成される(
図3を参照)。係止具本体72は、スカート部43に配置される。詳細には、係止具本体72は、筒部45の凹部45aに配置される。
【0052】
図3及び
図4に示すように、係止具本体72は、本体部73と、第1突出部74と、第2突出部75と、溝部76(凹部の一例)とを、備える。本体部73は、スプールの糸巻き胴部41から離れる方向に、装着部71から延設される。例えば、本体部73は、装着部71の基端部を取り囲むように、実質的に板状に形成される。本体部73は、スカート部43の筒部45に対向して配置される。詳細には、本体部73は、シート部材80を介して、筒部45の凹部45aに対向して配置される。
【0053】
図4に示すように、本体部73は、装着側端部73aと、挿入側端部73bとを、有する。装着側端部73aには、装着部71が設けられる。挿入側端部73bは、先細り形状に形成されている。釣り糸は、挿入側端部73bから装着側端部73aの装着部71に向けて、挿入される。
【0054】
図4に示すように、本体部73は、第1表面73cと、第2表面73dとを、さらに有する。第1表面73cは、挿入側端部73bと第1突出部74との間に設けられる。第1表面73cは、スカート部43例えば凹部45aの底部と間隔を隔てて配置される(
図3を参照)。第1表面73c及びスカート部43の凹部45aの底部との間には、シート部材80が配置される。第1表面73cは、シート部材80に接触する。
【0055】
第2表面73dは、第2突出部75と装着部71との間に設けられる。第2表面73dは、第1表面73cと面一に形成される。第2表面73dは、スカート部43例えば凹部45aの底部と間隔を隔てて、配置される(
図3を参照)。第2表面73d及びスカート部43の凹部45aの底部BLとの間には、シート部材80が配置される。
【0056】
第2表面73dは、シート部材80に接触する。これにより、釣り糸が第2表面73d及びシート部材80の間に配置された場合、釣り糸は、第2表面73d及びシート部材80によって、挟持される。
【0057】
図4に示すように、本体部73は、テーパ部73eと、非テーパ部73fとを、さらに有する。テーパ部73eは、外縁部73gから第1突出部74に向けて釣り糸を導く。テーパ部73eは、外縁部73g及び第1突出部74の間に、設けられる。また、テーパ部73eは、外縁部73g及び溝部76の間に、設けられる。
【0058】
テーパ部73eは、傾斜面であり、外縁部73g及び第1表面73cと、外縁部73g及び溝部76の底部とを、接続する。例えば、テーパ部73eは、挿入側端部73bの外縁部73g及び第1突出部74の間において、外縁部73gから第1表面73cに向けて延びる。また、テーパ部73eは、挿入側端部73bの外縁部73g及び溝部76の間において、外縁部73gから溝部76の底部に延びる。
【0059】
非テーパ部73fは、装着部71及び溝部76の間の外縁部を、形成する。非テーパ部73fは、装着部71及び溝部76の間において、テーパ部73eから膨出する。非テーパ部73fは、シート部材80に接触する。非テーパ部73fがシート部材80に接触する部分は、第2表面73dに含まれる。
【0060】
図4及び
図5に示すように、本体部73は、導入面73hと、接続面73iとを、さらに有する。導入面73hは、装着側端部73aにおける外縁部73gの隅角部73jから装着部71へと釣り糸を導く。導入面73hは、装着側端部73aに設けられる。
【0061】
例えば、導入面73hは、装着側端部73aにおける外縁部73gの隅角部73j及び装着部71の間において、装着側端部73aに設けられる。導入面73hは、隅角部73jから装着部71に向けて凹状に湾曲しながら、装着部71に接続する。また、導入面73hは、接続面73iにも接続する。
【0062】
図5に示すように、導入面73hは、径方向において、スカート部43例えば凹部45aの底部BLと間隔を隔てて、配置される。また、導入面73h及びシート部材80の間には、釣り糸を隅角部73jから接続面73iに導入するための空間が、設けられる。
【0063】
図4及び
図5に示すように、接続面73iは、第2表面73d(導入面73h)から導入面73h(第2表面73d)へと釣り糸を導く。接続面73iは、装着側端部73aに設けられる。
【0064】
例えば、接続面73iは、装着部71の隅角部の近傍において、装着側端部73aに設けられる。接続面73iは、第2表面73dと導入面73hとを接続する。詳細には、接続面73iは、非テーパ部73fによって形成される第2表面73dと、導入面73hとを接続する。
【0065】
ここでは、
図5に示すように、糸係止具70を側方視した場合において、接続面73i及び第2表面73dのなす最小角度が鈍角になるように、接続面73iは形成される。これにより、釣り糸を非テーパ部73fに干渉させることなく、釣り糸を導入面73h(第2表面73d)から第2表面73d(導入面73h)へと案内することができる。
【0066】
接続面73iは、径方向において、スカート部43例えば凹部45aの底部BLと間隔を隔てて、配置される。また、接続面73i及びシート部材80の間には、釣り糸を導入面73h(第2表面73d)から第2表面73d(導入面73h)へと案内するための空間が、設けられる。
【0067】
第1突出部74は、溝部76及びシート部材80の間に配置された釣り糸の抜け出しを規制する。
図4及び
図5に示すように、第1突出部74は、本体部73から突出する。詳細には、第1突出部74は、本体部73の第1表面73cから突出する。第1突出部74は、溝部76に沿って延びる(
図4を参照)。
【0068】
第2突出部75は、第2表面73d及びシート部材80の間に配置された釣り糸の抜け出しを規制する。
図4及び
図5に示すように、第2突出部75は、装着部71及び第1突出部74の間において、本体部73から突出する。詳細には、第2突出部75は、本体部73の第2表面73dから突出する。第2突出部75は、第1突出部74と間隔を隔てて配置され、溝部76に沿って延びる(
図4を参照)。
【0069】
溝部76には、釣り糸が配置可能である。
図4及び
図5に示すように、溝部76は、第1突出部74及び第2突出部75の間において、本体部73に形成される。溝部76は、第1表面73c及び第2表面73dを基準として、凹状に形成される。
【0070】
図3に示すように、溝部76は、シート部材80を介して、スカート部43の凹部45aに対向して配置される。
図5に示すように、溝部76の底部とスカート部43の凹部45aの底部BLとの間隔D1は、第2表面73dとスカート部43における凹部45aの底部BLとの間隔D2より、大きい。
【0071】
溝部76における両端部の底部及びシート部材80の間には、釣り糸を挟持するための第1隙間S1が、形成される。また、溝部76における中央部の底部及びスカート部43の凹部45aの底部BLの間には、シート部材80の第2孔部80b(後述する)が、配置される。これにより、溝部76における中央部の底部及びスカート部43の凹部45aの底部BLの間には、釣り糸を配置するための第2隙間S2が、形成される。第2隙間S2は、第1隙間S1より大きい。
【0072】
(シート部材)
図2及び
図3に示すように、シート部材80は、スカート部43及び糸係止具70の間に、配置される。詳細には、シート部材80は、スカート部43の凹部45a及び糸係止具70の間に、配置される。
【0073】
図3に示すように、シート部材80は、第2表面73dに対して、接触可能に構成される。ここでは、シート部材80は、第1表面73cに対しても、接触可能に構成される。シート部材80は、実質的に板状に形成される。
【0074】
シート部材80は、第1孔部80aと、第2孔部80b(孔部の一例)とを、有する。第1孔部80aは、多角形状に形成される。ここでは、第1孔部80aは、実質的に矩形状に形成される。第1孔部80aは、スカート部43の貫通孔45bに対向して配置される。第1孔部80aには、糸係止具70の装着部71が挿通される。
【0075】
第2孔部80bには、釣り糸が配置可能である。第2孔部80bには、第1突出部74及び第2突出部75が配置される。糸係止具70の溝部76の中央部は、第2孔部80bを介して、スカート部43の凹部45aの底部BLと間隔を隔てて、配置される。糸係止具70の溝部76の中央部及びスカート部43の凹部45aの底部BLの間には、釣り糸が配置される。
【0076】
(釣り糸の係止形態)
釣り竿からスピニングリール1を外した後には、釣り糸がスプール4から解けないように、釣り糸の先端部が糸係止具70に係止される。以下では、説明を容易にするために、釣り糸が細径である場合と、釣り糸が太径である場合との2つの場合に分けて、説明が行われる。
【0077】
例えば、釣り糸が太径である場合、
図7Aに示すように、まず、釣り糸は、導入面73hによって、係止具本体72の装着側端部73aの隅角部73jから装着部71に向けて、導かれる。そして、この太径の釣り糸は、導入面73hから接続面73iへと案内され、非テーパ部73fの外側に配置される。
【0078】
次に、
図7Bに示すように、太径の釣り糸は、テーパ部73eによって、係止具本体72の挿入側端部73bから第1突出部74に向けて、案内される。そして、この太径の釣り糸は、第1突出部74及びシート部材80の間を通過する。すると、この釣り糸は、第1突出部74及び第2突出部75の間の溝部76に配置される。
【0079】
すると、太径の釣り糸の一部は、シート部材80の第2孔部80bを介して、溝部76における中央部の底部及びスカート部43の凹部45aの底部の間に、配置される。また、釣り糸の他の部分は、溝部76における両端部の底部及びシート部材80の表面によって、挟持される。このようにして、太径の釣り糸は、第1突出部74によって、導入側への移動を阻止されるので、係止が外れることがない。また、第2突起部75によって、装着側への移動も阻止されるので、太径の釣り糸の係止位置が安定し、太径の釣り糸を糸係止具70によって確実に係止される。
【0080】
一方で、釣り糸が細径である場合、
図6Aに示すように、まず、細径の釣り糸は、導入面73hによって、係止具本体72の装着側端部73aの隅角部73jから装着部71に向けて、導かれる。そして、この細径の釣り糸は、導入面73hから接続面73iへと案内され、接続面73iから第2表面73dへと案内される。これにより、釣り糸は、非テーパ部73f上の第2表面73d及びシート部材80の表面によって、一時的に挟持される。
【0081】
次に、
図6Bに示すように、細径の釣り糸は、テーパ部73eによって、係止具本体72の挿入側端部73bから第1突出部74に向けて、案内される。そして、この細径の釣り糸は、第1突出部74及びシート部材80の間、溝部76及びシート部材80の間、及び第2突出部75及びシート部材80の間を、通過する。すると、釣り糸は、第2表面73d及びシート部材80の表面によって、挟持される。このように、細径の釣り糸は、第2突出部74によって、導入側への移動を阻止されるので、溝部76及びシート部材80の間へ、さらに移動して係止が外れることがない。このため、細径の釣り糸の係止位置が安定し、細径の釣り糸を糸係止具70によって確実に係止される。
【0082】
すなわち、糸係止具70では、釣り糸が細径である場合、釣り糸は、第2表面73d及びシート部材80の表面によって、係止される。一方で、釣り糸が太径である場合、釣り糸は、溝部76における中央部の底部及びスカート部43の表面(凹部45aの底部)に配置された状態で、溝部76における両端部の底部及びシート部材80の表面によって係止される。このように、釣り糸が細径及び太径のいずれであっても、釣り糸の係止位置が安定し、釣り糸を糸係止具70によって確実に係止することができる。
【0083】
なお、接続面73iは、釣り糸を係止する際に、第2表面73d(導入面73h)から導入面73h(第2表面73d)へと釣り糸を導くだけでなく、係止された釣り糸を外す際にも、釣り糸が第2表面73dに引っ掛からないようにするためにも有用である。特に、細径の釣り糸の場合、装着部71側の端部に係止されたとしても、釣り糸が折れ曲がりにくくなるので、釣り糸に負担(負荷)をかけることなく釣り糸を確実に係止できる。
【0084】
<変形例>
前記実施形態では、糸係止具70がシート部材80を介してスカート部43に配置される場合の一例を、示した。これに代えて、シート部材80を用いることなく、糸係止具70をスカート部143に配置してもよい。
【0085】
この場合、
図8に示すように、スカート部143は、釣り糸を配置可能な穴部143a(孔部の一例)を、有する。穴部143aは、凹部45aの底部に凹状に形成される。釣り糸は、糸係止具70の溝部76及び穴部143aの間に、配置可能である。穴部143aには、糸係止具70の第1突出部74及び第2突出部75が、配置される。なお、ここでは、穴部143aが有底穴部である場合の例を示すが、穴部143aは貫通孔でもよい。
【0086】
スカート部143は、糸係止具70の第2表面73dに対して接触可能に構成される。詳細には、糸係止具70がスプール4に装着された状態において、スカート部143の凹部45aの底部は、糸係止具70の第1表面73c及び第2表面73dに対して接触する。
【0087】
この構成においても、釣り糸は、前記実施形態と同様に、糸係止具70によって係止される。例えば、釣り糸が細径である場合、釣り糸は、糸係止具70の第2表面73d及びスカート部143の外周面によって挟持される。一方で、例えば、釣り糸が太径である場合、釣り糸の一部が、溝部76における中央部の底部及び穴部143aの底部の間に、配置される。また、釣り糸の他の部分は、溝部76における両端部の底部及びスカート部143の外周面によって、挟持される。このように構成しても、前記実施形態と同様に、釣り糸を、糸係止具70を用いて、スプール4に係止することができる。
【0088】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0089】
(a)前記実施形態では、係止具本体72及び装着部71が一体に形成される場合の例を示したが、係止具本体72及び装着部71が別体で形成されてもよい。この場合、係止具本体72は、例えばエラストマーのような熱可塑性樹脂によって成形される。装着部71は、係止具本体72と同じ材質であっても、係止具本体72と異なる材質であってもよい。
【0090】
(b)前記実施形態では、説明を容易にするために、釣り糸が細径である場合と、釣り糸が太径である場合とに分けて、釣り糸の係止形態が説明された。しかし、釣り糸は、その太さに関係なく、第2表面73d及びこの第2表面73dに対向する部分の間と、溝部76及びこの溝部76に対向する部分との間とで、挟持させることができる。
【0091】
ここで、第2表面73dに対向する部分、及び溝部76に対向する部分は、シート部材80の表面に対応する。なお、変形例では、第2表面73dに対向する部分、及び溝部76に対向する部分は、スカート部143の外周面に対応する。
【0092】
(c)前記実施形態では、釣り糸が、第2孔部80b(又は穴部143a)に配置される場合の例を示した。この場合、釣り糸は、単に第2孔部80b(又は穴部143a)に配置されるだけもよいし、第2孔部80b(又は穴部143a)において溝部76の底部とスカート部43,143の外周面とによって、挟持されてもよい。