特許第6978314号(P6978314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6978314液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978314
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20211125BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20211125BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   C08G59/14
   C09K3/10 B
   C09K3/10 E
   C09K3/10 L
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-536979(P2017-536979)
(86)(22)【出願日】2017年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2017022717
(87)【国際公開番号】WO2017221936
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2020年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-122751(P2016-122751)
(32)【優先日】2016年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺口 祐美子
【審査官】 岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−041559(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/080278(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/013214(WO,A1)
【文献】 特開2010−230713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C08G 59/14
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、
前記硬化性樹脂は、下記式(1)で表される化合物を含有し、
前記硬化性樹脂100重量部中における式(1)で表される化合物の含有量が1〜90重量部である
ことを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【化1】
式(1)中、R、メチル基を表し、Rは、下記式(2−1)、(2−2)、又は、(2−3)で表される基を表し、Arは、置換されていてもよいアリーレン基を表し、Xは、環状ラクトンの開環構造を表し、nは、0〜0.5(平均値)であり、Epは、エポキシ化合物由来の構造を表す。
【化2】
式(2−1)〜(2−3)中、*は、結合位置を表し、式(2−2)中、aは、1〜8の整数であり、式(2−3)中、bは、1〜8の整数であり、cは、1〜3の整数であり、dは、1〜8の整数である。
【請求項2】
式(1)で表される化合物は、nが0であり、かつ、EpがビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、又は、ビスフェノールE型エポキシ化合物由来の構造であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項3】
硬化性樹脂は、エポキシ化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項4】
遮光剤を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有することを特徴とする上下導通材料。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤又は請求項5記載の上下導通材料を用いてなることを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性と硬化物の透湿防止性とを両立させることができる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような、硬化性樹脂と光重合開始剤と熱硬化剤とを含有する光熱併用硬化型のシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き基板の一方に、ディスペンスにより長方形状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシール枠内に滴下し、真空下で他方の基板を重ね合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、装置の小型化は最も求められている課題である。小型化の手法として、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、狭額縁設計ともいう)。
このような狭額縁設計に伴い、液晶表示素子において、画素領域からシール剤までの距離が近くなっており、シール剤によって液晶が汚染されることによる表示むらが生じやすくなっている。
【0004】
また、タブレット端末や携帯端末の普及に伴い、液晶表示素子には高温高湿環境下での駆動等における耐湿信頼性がますます要求されており、シール剤には外部からの水の浸入を防止する性能が一層求められている。液晶表示素子の耐湿信頼性を向上させるためには、シール剤と基板等との界面からの水の浸入を防ぐためにシール剤の基板等に対する接着性を向上させ、かつ、シール剤の透湿防止性を向上させる必要がある。シール剤の透湿防止性を向上させる方法としては、例えば、タルク等のフィラーを配合する方法が考えられる。しかしながら、このようにタルク等のフィラーを配合しても、厳しい耐湿信頼性試験を行った場合、液晶表示素子に表示むらが発生する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接着性と硬化物の透湿防止性とを両立させることができる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂と重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、上記硬化性樹脂は、下記式(1)で表される化合物を含有し、上記硬化性樹脂100重量部中における式(1)で表される化合物の含有量が1〜90重量部である液晶表示素子用シール剤である。
【0008】
【化1】
【0009】
式(1)中、R、メチル基を表し、Rは、下記式(2−1)、(2−2)、又は、(2−3)で表される基を表し、Arは、置換されていてもよいアリーレン基を表し、Xは、環状ラクトンの開環構造を表し、nは、0〜0.5(平均値)であり、Epは、エポキシ化合物由来の構造を表す。
【0010】
【化2】
【0011】
式(2−1)〜(2−3)中、*は、結合位置を表し、式(2−2)中、aは、1〜8の整数であり、式(2−3)中、bは、1〜8の整数であり、cは、1〜3の整数であり、dは、1〜8の整数である。
以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明者は、驚くべきことに、硬化性樹脂として特定の構造を有する化合物を特定量用いることにより、接着性と硬化物の透湿防止性とを両立させることができる液晶表示素子用シール剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、上記式(1)で表される化合物を含有する。上記式(1)で表される化合物を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、接着性と硬化物の透湿防止性とを両立させることができるものとなる。
【0014】
上記式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。なかでも、得られる液晶表示素子用シール剤の硬化物の透湿防止性の観点から、上記Rは、メチル基であることが好ましい。
【0015】
上記式(1)中、Rは、上記式(2−1)、(2−2)、又は、(2−3)で表される基を表す。なかでも、得られる液晶表示素子用シール剤の接着性や硬化物の柔軟性の観点から、上記Rは、上記式(2−2)で表される基であることが好ましく、上記式(2−2)におけるaが2である基(エチレン基)であることがより好ましい。
【0016】
上記式(1)中、Arは、置換されていてもよいアリーレン基を表す。
上記アリーレン基としては、例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基等が挙げられる。なかでも、1,2−フェニレン基、1,8−ナフチレン基が好ましく、1,2−フェニレン基がより好ましい。
【0017】
上記式(1)中、Xは、環状ラクトンの開環構造を表す。
上記環状ラクトンとしては、例えば、γ−ウンデカラクトン、ε−カプロラクトン、γ−デカラクトン、σ−ドデカラクトン、γ−ノナラクトン、γ−ノナノラクトン、γ−バレロラクトン、σ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、σ−ヘキサノラクトン、7−ブチル−2−オキセパノン等が挙げられる。なかでも、開環したときに主骨格の直鎖部分の炭素数が5〜7となるものが好ましい。
【0018】
式(1)中、Epはエポキシ化合物由来の構造を表す。
上記Epの由来となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
なかでも、上記式(1)で表される化合物は、nが0であり、かつ、EpがビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、又は、ビスフェノールE型エポキシ化合物由来の構造であることが好ましい。
【0019】
上記式(1)で表される化合物を製造する方法としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、無水フタル酸やナフタル酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物とを、ハイドロキノンやp−メトキシフェノール等の重合禁止剤の存在下で加熱撹拌すること等により反応させる工程と、得られた反応物に、エポキシ樹脂を加えて加熱撹拌すること等により反応させる工程とを有する方法等が挙げられる。上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、上記芳香族カルボン酸無水物と反応させる前に一部をε−カプロラクトン等の環状ラクトンと反応させていてもよい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0020】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記式(1)で表される化合物の含有量の下限は1重量部、上限は90重量部である。上記式(1)で表される化合物の含有量が1重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性に優れるものとなる。上記式(1)で表される化合物の含有量が90重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が塗布性等、液晶表示素子製造時の各工程における作業性に優れるものとなる。上記式(1)で表される化合物の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は85重量部、より好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は80重量部、更に好ましい下限は12重量部、更に好ましい上限は75重量部である。
【0021】
上記硬化性樹脂は、接着性をより向上させる等の観点から、エポキシ化合物を含有することが好ましい。
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0022】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER828、jER1001(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX−4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−50TE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−80DE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−670−EXP−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN−165S(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱化学社製)、エピクロン430(DIC社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ZX−1542(新日鉄住金化学社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR−450、YR−207(いずれも新日鉄住金化学社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも新日鉄住金化学社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱化学社製)、EXA−7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0023】
また、上記硬化性樹脂は、上記エポキシ化合物として部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂を含有してもよい。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂とは、1分子中に1つ以上のエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を意味し、例えば、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる。
【0024】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記エポキシ化合物の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は80重量部である。上記エポキシ化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性により優れるものとなる。上記エポキシ化合物の含有量のより好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0025】
上記硬化性樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲において、その他の硬化性樹脂を含有してもよい。
上記その他の硬化性樹脂としては、例えば、式(1)で表される化合物以外のその他の(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、上記「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0026】
上記その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られる(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の観点から、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0031】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、上述したエポキシ化合物と同様のものを用いることができる。
【0032】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL RDX63182(いずれもダイセル・オルネクス社製)、EA−1010、EA−1020、EA−5323、EA−5520、EA−CHD、EMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0033】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1当量に対して、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させること等によって得ることができる。
【0034】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
また、上記イソシアネート化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
【0036】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレートや、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210、M−1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260(いずれもダイセル・オルネクス社製)、アートレジンUN−330、アートレジンSH−500B、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−9000H(いずれも根上工業社製)、U−2HA、U−2PHA、U−3HA、U−4HA、U−6H、U−6HA、U−6LPA、U−10H、U−15HA、U−108、U−108A、U−122A、U−122P、U−324A、U−340A、U−340P、U−1084A、U−2061BA、UA−340P、UA−4000、UA−4100、UA−4200、UA−4400、UA−5201P、UA−7100、UA−7200、UA−W2A(いずれも新中村化学工業社製)、AH−600、AI−600、AT−600、UA−101I、UA−101T、UA−306H、UA−306I、UA−306T(いずれも共栄社化学社製)等が挙げられる。
【0038】
上記その他の硬化性樹脂は、液晶汚染を抑制する観点から、−OH基、−NH−基、−NH基等の水素結合性のユニットを有するものが好ましい。
【0039】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、重合開始剤及び/又は熱硬化剤を含有する。
上記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
【0040】
上記ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0041】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。
【0042】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE 184、IRGACURE 369、IRGACURE 379、IRGACURE 651、IRGACURE 819、IRGACURE 907、IRGACURE 2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASF社製)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
【0043】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤が好ましい。
なお、本明細書において高分子アゾ化合物とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイルオキシ基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0044】
上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶への悪影響を防止しつつ、硬化性樹脂へ容易に混合することができる。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0045】
上記高分子アゾ開始剤としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。このような高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられ、具体的には例えば、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601、VPS−0501、VPS−1001(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ化合物の例としては、V−65、V−501(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0046】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0047】
上記重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂全体100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が優れた保存安定性を維持したまま、硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は10重量部であり、更に好ましい上限は5重量部である。
【0048】
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、固形の有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0049】
上記固形の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられ、市販されているものとしては、例えば、SDH、ADH(大塚化学社製)、MDH(日本ファインケム社製)、アミキュアVDH、アミキュアVDH−J、アミキュアUDH(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0050】
上記熱硬化剤の含有量は、硬化性樹脂全体100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が優れた塗布性や保存安定性を維持したまま、硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0051】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による更なる接着性の向上、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0052】
上記充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等の無機充填剤や、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等の有機充填剤が挙げられる。
【0053】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等の悪化を抑制しつつ、接着性の向上等の効果をより発揮することができる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0054】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、接着性を更に向上させることを目的として、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
上記シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0055】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果をより発揮することができる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0056】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0057】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0058】
上記チタンブラックは、波長300〜800nmの光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370〜450nmの光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の液晶表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。本発明の液晶表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
【0059】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを含有する本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0060】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、12S、13M、13M−C、13R−N、14M−C(いずれも三菱マテリアル社製)、ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
【0061】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0062】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5μmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の粘度やチクソトロピーが大きく増大することなく、塗布性により優れるものとなる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、粒度分布計(例えば、PARTICLE SIZING SYSTEMS社製、「NICOMP 380ZLS」)を用いて測定することができる。
【0063】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の接着性、硬化後の強度、及び、描画性が低下することなく、遮光性を向上させる効果をより発揮できる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0064】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、応力緩和剤、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0065】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0066】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0067】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0068】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0069】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、液晶滴下工法による液晶表示素子の製造に好適に用いることができる。
液晶滴下工法によって本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、具体的には例えば、基板に本発明の液晶表示素子用シール剤等をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により長方形状のシールパターンを形成する工程、本発明の液晶表示素子用シール剤等が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに別の基板を重ね合わせる工程、及び、本発明の液晶表示素子用シール剤等のシールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程、及び、仮硬化させたシール剤を加熱して本硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、接着性と硬化物の透湿防止性とを両立させることができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0072】
(硬化性樹脂Aの作製)
反応フラスコに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート130重量部と、無水フタル酸148重量部と、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.3重量部とを加え、マントルヒーターを用いて90℃で5時間撹拌した。次いで、得られた反応物にビスフェノールAジグリシジルエーテル170重量部を加え、90℃で5時間撹拌することにより、硬化性樹脂Aを得た。
H−NMR及び13C−NMRにより、硬化性樹脂Aは、上記式(1)で表される化合物(Rがメチル基、Rがエチレン基、Arが1,2−フェニレン基、n=0、EpがビスフェノールAジグリシジルエーテル由来の構造)であることを確認した。
【0073】
(硬化性樹脂Bの作製)
反応フラスコに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート130重量部と、ε−カプロラクトン57重量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.3重量部とを加え、マントルヒーターを用いて90℃で5時間撹拌した後、無水フタル酸148重量部を加えて更に5時間撹拌した。次いで、得られた反応物にビスフェノールAジグリシジルエーテル170重量部を加え、90℃で5時間撹拌することにより、硬化性樹脂Bを得た。
H−NMR及び13C−NMRにより、硬化性樹脂Bは、上記式(1)で表される化合物(Rがメチル基、Rがエチレン基、Arが1,2−フェニレン基、Xがε−カプロラクトンの開環構造、n=0.48(平均値)、EpがビスフェノールAジグリシジルエーテル由来の構造)であることを確認した。
【0074】
(硬化性樹脂Cの作製)
反応フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート116重量部と、ε−カプロラクトン57重量部と、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.3重量部とを加え、マントルヒーターを用いて90℃で5時間撹拌した後、ナフタル酸無水物198重量部を加えて更に5時間撹拌した。次いで、得られた反応物にビスフェノールAジグリシジルエーテル170重量部を加え、90℃で5時間撹拌することにより、硬化性樹脂Cを得た。
H−NMR及び13C−NMRにより、硬化性樹脂Cは、上記式(1)で表される化合物(Rが水素原子、Rがエチレン基、Arが1,8−ナフチレン基、Xがε−カプロラクトンの開環構造、n=0.47(平均値)、EpがビスフェノールAジグリシジルエーテル由来の構造)であることを確認した。
【0075】
(硬化性樹脂Dの作製)
反応フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート116重量部と、無水フタル酸148重量部と、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.3重量部とを加え、マントルヒーターを用いて90℃で5時間撹拌した。次いで、得られた反応物にビスフェノールAジグリシジルエーテル170重量部を加え、90℃で5時間撹拌することにより、硬化性樹脂Dを得た。
H−NMR及び13C−NMRにより、硬化性樹脂Dは、上記式(1)で表される化合物(Rが水素、Rがエチレン基、Arが1,2−フェニレン基、n=0、EpがビスフェノールAジグリシジルエーテル由来の構造)であることを確認した。
【0076】
(硬化性樹脂Eの作製)
反応フラスコに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート130重量部と、ε−カプロラクトン114重量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.3重量部とを加え、マントルヒーターを用いて90℃で5時間撹拌した後、無水フタル酸148重量部を加えて更に5時間撹拌した。次いで、得られた反応物にビスフェノールAジグリシジルエーテル170重量部を加え、90℃で5時間撹拌することにより、硬化性樹脂Eを得た。
H−NMR及び13C−NMRにより、硬化性樹脂Eは、上記式(1)における、Rがメチル基、Rがエチレン基、Arが1,2−フェニレン基、Xがε−カプロラクトンの開環構造、n=1.02(平均値)、EpがビスフェノールAジグリシジルエーテル由来の構造である化合物であることを確認した。
【0077】
(実施例1〜4、、参考例5、6、比較例1〜3)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌装置(シンキー社製、「あわとり練太郎」)にて撹拌した後、セラミック3本ロールにて均一に混合して実施例1〜4、、参考例5、6、比較例1〜3の液晶表示素子用シール剤を得た。
【0078】
<評価>
実施例、参考例、及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0079】
(接着性)
実施例、参考例、及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤に、シリカスペーサー(積水化学工業社製、「SI−H055」)を1重量%配合し、2枚のITO薄膜付きガラス基板(25×45mm)のうちの一方に微小滴下した。この基板にもう一方のITO薄膜付きガラス基板を十字状に貼り合わせ、メタルハライドランプにて3000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で60分加熱することによって接着性試験片を得た。作製した接着試験片における基板の端部を半径5mmの金属円柱を使って5mm/minの速度で押し込んだときに、パネル剥がれが起こる際の強度を測定した。得られた測定値(kgf)をシール直径(cm)で除した値が、3.5kgf/cm以上であった場合を「◎」、3.0kgf/cm以上3.5kgf/cm未満であった場合を「○」、2.5kgf/cm以上3.0kgf/cm未満であった場合を「△」、2.5kgf/cm未満であった場合を「×」として接着性を評価した。
【0080】
(透湿防止性)
実施例、参考例、及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤を、平滑な離型フィルム上にコーターを用いて厚さ200〜300μmとなるように塗布した。次いで、メタルハライドランプを用いて3000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で60分加熱することによって透湿度測定用フィルムを得た。JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じた方法で透湿度試験用カップを作製し、得られた透湿度測定用フィルムを取り付け、温度80℃湿度90%RHの恒温恒湿オーブンに投入して透湿度を測定した。得られた透湿度の値が、50g/m・24hr未満であった場合を「◎」、50g/m・24hr以上60g/m・24hr未満であった場合を「○」、60g/m・24hr以上70g/m・24hr未満であった場合を「△」、70g/m・24hr以上であった場合を「×」として透湿防止性を評価した。
【0081】
(液晶表示素子の表示性能)
実施例、参考例、及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤に、シリカスペーサー(積水化学工業社製、「SI−H055」)を1重量%配合し、脱泡処理をしてシール剤中の泡を取り除いた後、ディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY−10E」)に充填し、再び脱泡処理を行った。次いで、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)を用いて、2枚のITO薄膜付きガラス基板のうちの一方に枠を描く様にシール剤を塗布した。続いて、TN液晶(チッソ社製、「JC−5001LA」)の微小滴を液晶滴下装置にてシール剤の枠内に滴下塗布し、他方のITO薄膜付きガラス基板を重ね、真空貼り合わせ装置にて5Paの減圧下にて2枚の基板を貼り合わせた。貼り合わせた後のセルにメタルハライドランプにて3000mJ/cmの紫外線を照射した後、120℃で60分加熱することによってシール剤を熱硬化させ、液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子を温度80℃、湿度90%RHの環境下にて72時間保管した後、AC3.5Vの電圧駆動をさせ、表示むら(色むら)の有無を目視で観察した。液晶表示素子の周辺部に表示むらが全く見られなかった場合を「◎」、少し薄い表示むらが見えた場合を「○」、はっきりとした濃い表示むらがあった場合を「△」、はっきりとした濃い表示むらが周辺部のみではなく、中央部まで広がっていた場合を「×」として液晶表示素子の表示性能を評価した。
なお、評価が「◎」、「○」の液晶表示素子は実用に全く問題のないレベルである。
【0082】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、接着性と硬化物の透湿防止性とを両立させることができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。