(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978316
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】ブロードバンドの混合された基本波及び高調波周波数超音波診断イメージング
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20211125BHJP
G01S 15/89 20060101ALI20211125BHJP
G01S 7/52 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
A61B8/14
G01S15/89 B
G01S7/52 D
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-539455(P2017-539455)
(86)(22)【出願日】2016年1月18日
(65)【公表番号】特表2018-509198(P2018-509198A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】IB2016050216
(87)【国際公開番号】WO2016120745
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2019年1月17日
(31)【優先権主張番号】62/109,121
(32)【優先日】2015年1月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アダムス,ダーウィン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ディアニス,スコット ウィリアム
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−230559(JP,A)
【文献】
特開2007−167626(JP,A)
【文献】
特開2009−090134(JP,A)
【文献】
特開2008−109951(JP,A)
【文献】
特表2007−513727(JP,A)
【文献】
米国特許第06023977(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
G01S 15/00
G01S 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波周波数画像及び高調波周波数画像を生成する超音波診断イメージングシステムであって、
アレイトランスデューサを有し、基本波周波数において連続する異なって変調された超音波パルスを送信し、基本波周波数及び高調波周波数においてエコー信号を受信するよう構成される超音波イメージングプローブと、
前記受信したエコー信号に応答し、前記異なって変調された超音波パルスからの前記エコー信号を加法合成及び減法合成することによって、基本波信号及び高調波信号を出力するよう構成されるキャンセレーション回路と、
基本波周波数信号の帯域を規定する基本波周波数通過帯域を有し、前記基本波信号から基本波周波数信号を出力する基本波周波数フィルタと、
前記基本波周波数通過帯域とオーバラップする高調波周波数通過帯域を有し、前記高調波信号から高調波周波数信号を出力する高調波周波数フィルタと、
前記基本波周波数信号から、基本波周波数画像を表す基本波周波数画像信号を検出するよう構成される第1の検出器と、
前記高調波周波数信号から、高調波周波数画像を表す高調波周波数画像信号を検出するよう構成される第2の検出器と、
検出された基本波周波数画像信号及び高調波周波数画像信号を合成するよう構成される合成器と、
混合された基本波周波数画像及び高調波周波数画像を表示するディスプレイと、
を有し、
前記高調波周波数通過帯域は、前記アレイトランスデューサのトランスデューサ通過帯域の上方の周波数部分を含むシステム。
【請求項2】
前記キャンセレーション回路は、パルス反転によって高調波周波数通過帯域における基本波信号をキャンセルするよう構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記基本波周波数フィルタは、前記高調波周波数フィルタが有する帯域通過フィルタの中心周波数より低い中心周波数の周波数通過帯域を有する帯域通過フィルタを有し、前記高調波周波数フィルタは、前記基本波周波数フィルタが有する帯域通過フィルタの中心周波数より高い中心周波数の周波数通過帯域を有する帯域通過フィルタを有する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
異なって変調される超音波パルスは、位相又は極性において異なって変調される、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記キャンセレーション回路は、
前記連続する超音波パルスの第1のものに応答して受信したエコー信号を記憶するよう構成されるラインバッファと、
前記連続する超音波パルスの第2のものに応答して受信したエコー信号を、前記ラインバッファによって記憶されているエコー信号と加法合成するよう構成される第1の合成回路と、
前記連続する超音波パルスの第2のものに応答して受信したエコー信号を、前記ラインバッファによって記憶されているエコー信号と減法合成するよう構成される第2の合成回路と、
を有する、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
基本波周波数通過帯域における信号又は高調波周波数通過帯域における信号を増幅するよう構成されるTGC回路を更に有する、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
基本波周波数通過帯域又は高調波周波数通過帯域における信号を対数スケーリングされた信号に変換するよう構成されるログアンプを更に有する、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記アレイトランスデューサによって受信されたエコー信号に応答して、コヒーレント基本波周波数信号及びコヒーレント高調波周波数信号を生成するよう構成されるビームフォーマを更に有する、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記ビームフォーマは、マルチラインビームフォーマを有する、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
基本波周波数画像又は高調波周波数画像を生成する超音波診断イメージングシステムであって、前記システムは、実行されると、
アレイトランスデューサを有する超音波イメージングプローブを利用して、連続する異なって変調された超音波パルスを基本波周波数において送信し、エコー信号を基本波周波数及び高調波周波数において受信するステップと、
異なって変調された超音波パルスからの前記エコー信号を加法合成及び減法合成することによって、基本波信号及び高調波信号を出力するステップと、
基本波周波数通過帯域を有する基本波周波数フィルタによって、前記基本波信号から基本波周波数信号を出力するステップと、
前記基本波周波数通過帯域とオーバラップする高調波周波数通過帯域を有する高調波周波数フィルタによって、前記高調波信号から高調波周波数信号を出力するステップと、
前記基本波周波数信号又は前記高調波周波数信号から、基本波周波数画像を表す基本波周波数画像信号又は高調波周波数画像を表す高調波周波数画像信号を検出するステップと、
所望の画像フォーマットの基本波周波数画像又は高調波周波数画像を生成するステップと、
基本波周波数画像又は高調波周波数画像を表示するステップと、
を前記システムに実行させる命令を有し、
前記高調波周波数通過帯域は、前記アレイトランスデューサのトランスデューサ通過帯域の上方の周波数部分を含むシステム。
【請求項11】
前記命令は更に、パルス反転によって高調波周波数通過帯域における基本波周波数信号をキャンセルさせるステップを前記システムに実行させる、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記異なって変調される超音波パルスは、位相又は極性において異なって変調される、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記命令は更に、マルチラインビームフォーマを利用して、コヒーレント基本波周波数信号及びコヒーレント高調波周波数信号を生成するステップを前記システムに実行させる、請求項11記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照することによってここに援用される、2015年1月29日に出願された米国出願第62/109,121号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、超音波イメージングシステムに関し、特に混合された基本波及び高調波周波数超音波画像の利用に関する。
【背景技術】
【0003】
高調波イメージングは、超音波造影剤をイメージングし、基本波周波数において発生しうる残響クラッタを解消するため超音波イメージングにおいて利用される。より高い高調波周波数におけるエコー信号は深さに依存する周波数減衰の減衰性効果を示すが、今日の超音波システムは、体内のより浅い深さでこの欠点を克服する主として解消するのに十分な感度を有する。この効果は組織高調波イメージングにおいてのみよく見られ、リブアーチファクトからのニアフィールドクラッタは深さと共に高調波信号成分のより遅い進展によって回避される。他方、高調波造影剤は、超音波によって刺激されると、強力な高調波応答を生じさせ、応答はしばしば近くの基本波周波数エコー信号より強力になる。
【0004】
より高い高調波周波数の深さに依存する減衰は、より深い浸透によって強力な信号応答を生成せず、高調波イメージングが体内の有意な深さで組織及び器官をイメージングする際にその有効性を制限することを意味する。この問題に対処し、良好な解像度の高調波イメージングと深い浸透の基本波イメージングとの双方の利益を実現するための有効な技術が、米国特許第6,283,919号(Roundhillら)に記載されている。Roundhillらは、全ての深さからの基本波周波数信号と高調波周波数信号との双方を取得し、帯域通過フィルタリングによって、それらを分離する。その後、それらは2つのタイプの信号の合成画像を生成する。好ましくは、高い解像度のクラッタのない高調波信号がニアフィールドにおいて優勢であるに対して、より深く浸透する基本信号はファーフィールドにおいて最高度に使用される。しかしながら、基本波周波数と高調波周波数とを分離するのに必要なフィルタリングは、望ましくないトレードオフをもたらす。これらの信号をそれらの2つの異なるバンドにクリーンに分離するためには、帯域オーバラップがないように、フィルタの帯域幅が狭く規定される必要があり、それは、特に基本波信号を狭帯域及び結果としての限定的な解像度に限定する。より広帯域なイメージングのために帯域を広げることは、2つの帯域が各信号タイプの異なる特性及び効果を重複及び減少させる可能性がある。従って、何れかのタイプの信号によるブロードバンドイメージングを依然として得ながら、各信号タイプの識別性を保持するようにエコー信号の基本波及び高調波周波数を分離できることが望ましい。
【0005】
いくつかの態様では、本発明は、基本波及び高調波周波数画像を生成する超音波診断イメージングシステムなどの超音波システムを含む。当該システムは、アレイトランスデューサを有し、基本波周波数において連続する異なって変調された超音波パルスを送信し、基本波及び高調波周波数においてエコー信号を受信する超音波イメージングプローブと、受信したエコー信号に応答し、別々の基本波信号及び高調波信号を生成するため、異なって変調された超音波パルスからのエコー信号を加法及び減法合成するキャンセレーション回路と、基本波周波数信号の帯域を規定する通過帯域を有する基本波周波数フィルタと、基本波周波数通過帯域とオーバラップする通過帯域を有し、高調波周波数信号の帯域を規定する高調波周波数フィルタと、基本波周波数画像信号を検出する第1の検出器と、高調波周波数画像信号を検出する第2の検出器と、検出された基本波周波数信号及び高調波周波数信号を合成する合成器と、混合された基本波画像及び高調波画像を表示するディスプレイとを有する。
【0006】
特定の態様では、本発明の超音波システムは、アレイトランスデューサを有し、基本波周波数において連続する異なって変調された超音波パルスを送信し、基本波及び高調波周波数においてエコー信号を受信する超音波イメージングプローブと、受信したエコー信号に応答し、別々の基本波信号及び高調波信号を生成するため、異なって変調された超音波パルスからのエコー信号を加法及び減法合成するキャンセレーション回路と、基本波周波数信号の帯域を規定する通過帯域を有する基本波周波数フィルタと、基本波周波数通過帯域とオーバラップする通過帯域を有し、高調波周波数信号の帯域を規定する高調波周波数フィルタと、基本波又は高調波周波数信号の帯域に応答して、基本波周波数画像信号又は高調波周波数画像信号を検出する検出器と、検出された基本波又は高調波周波数画像信号に応答して、所望の画像フォーマットの基本波又は高調波画像を生成するスキャンコンバータと、基本波画像又は高調波画像を表示するディスプレイとを有する基本波及び高調波周波数画像を生成する超音波診断イメージングシステムを含むことができる。
【0007】
いくつかの態様では、本発明は、基本波又は高調波周波数画像を生成する超音波診断イメージングシステムを含み、当該システムは、実行されると、アレイトランスデューサを有する超音波イメージングプローブを利用して、連続する異なって変調された超音波パルスを基本波周波数において送信し、エコー信号を基本波及び高調波周波数において受信するステップと、別々の基本波及び高調波信号を生成するため、異なって変調された超音波パルスからのエコー信号を加法及び減法合成するステップと、通過帯域を有する基本波周波数フィルタによって基本波周波数信号の帯域をフィルタリングするステップと、基本波周波数通過帯域とオーバラップする通過帯域を有する高調波周波数フィルタによって高調波周波数信号の帯域をフィルタリングするステップと、基本波周波数又は高調波周波数画像信号を検出するステップと、所望の画像フォーマットの基本波又は高調波画像を生成するステップと、基本波又は高調波画像を表示するステップとをシステムに実行させる命令を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、基本波及び高調波周波数エコー信号成分のフィルタ分離の図である。
【
図2】
図2は、本発明の原理により構成される超音波システムをブロック図形式により示す。
【
図3】
図3は、本発明の原理による信号成分キャンセレーション及び帯域通過フィルタリングの図である。
【
図4】
図4a〜4hは、本発明の実現形態において用いるのに適した2パルスイメージングシーケンスを示す。
【
図5】
図5は、本発明の実現形態による方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の原理によると、基本波及び高調波信号成分の異なるブロードバンド信号へのクリーンな分離を可能にする超音波診断イメージングシステムが説明される。画像領域の各ポイントに連続するが、異なって変調される形式で同一のパルスを2回送信する2パルス送信が利用可能である。これを実行するための一例となる技術はパルス反転と呼ばれ、同一のパルスが位相又は極性の反転有りと無しとによって送信される。送信パルスは、パルス反転において従来利用されるものより広い帯域幅とより高い中心周波数を有する。2つの送信から受信されるエコー信号は、加算と減算との双方によって空間ベースで合成され、基本波信号成分がキャンセルされた高調波帯域と、2つのエコーからの基本波周波数成分が互いに強化する基本波帯域との2つの周波数の帯域を生じさせる。それから、2つの帯域は、周波数において互いにオーバラップすることが可能とされるフィルタによって帯域通過フィルタリングされる。2つの帯域からの信号が検出され、スキャン変換前後で混合された基本波/高調波画像に合成される。その結果は、基本波及び高調波の双方のイメージングの合成された利益と、ブロードバンド画像特性とを備えた画像である。
【0010】
いくつかの態様では、本発明は、基本波及び高調波周波数画像を生成する超音波診断イメージングシステムを含む。いくつかの実施例では、当該システムは、アレイトランスデューサを有する超音波イメージングプローブを有することが可能である。プローブは、基本波周波数において連続する異なって変調された超音波パルスを送信するよう構成可能である。異なって変調される超音波パルスは、例えば、位相又は極性において異なって変調可能である。プローブはまた、基本波及び高調波周波数においてエコー信号を受信するよう構成可能である。いくつかの態様では、当該システムは、アレイトランスデューサによって受信したエコー信号に応答し、コヒーレント基本波信号及び高調波信号を生成するビームフォーマを有することが可能である。ビームフォーマは、マルチラインビームフォーマを有することが可能である。
【0011】
当該システムは受信したエコー信号に応答して、別々の基本波及び高調波信号を生成するため、異なって変調された超音波パルスからのエコー信号を加法及び減法合成するキャンセレーション回路を有することが可能である。いくつかの実施例では、キャンセレーション回路は、パルス反転によって高調波周波数帯域において基本波周波数信号をキャンセルする。いくつかの実施例では、キャンセレーション回路は、連続する超音波パルスの第1のものに応答して受信されるエコー信号を記憶するラインバッファと、ラインバッファによって記憶されているエコー信号と、連続する超音波パルスの第2のものに応答して受信したエコー信号とを加法合成する第1の合成回路と、ラインバッファによって記憶されているエコー信号と、連続する超音波信号の第2のものに応答して受信されるエコー信号とを減法合成する第2の合成回路とを有することが可能である。
【0012】
特定の態様では、当該システムは、基本波周波数信号の帯域を規定する通過帯域を有する基本波周波数フィルタと、基本波周波数通過帯域とオーバラップする通過帯域を有し、高調波周波数信号の帯域を規定する高調波周波数フィルタとを有することが可能である。基本波周波数フィルタは、例えば、より低い周波数通過帯域を有する帯域通過フィルタを有することが可能であり、高調波周波数フィルタは、より高い周波数通過帯域を有する通過帯域フィルタを有することが可能である。いくつかの実施例では、アレイトランスデューサはトランスデューサ通過帯域を示し、より低い周波数通過帯域はトランスデューサの通過帯域の下位半分における中心とされ、より高い周波数通過帯域はトランスデューサ通過帯域の上限に延びる。
【0013】
いくつかの態様では、当該システムは、基本波周波数画像信号を検出する第1の検出器と、高調波周波数画像信号を検出する第2の検出器と、検出された基本波周波数信号及び高調波周波数信号を合成する合成器とを有することが可能である。検出された基本波及び高調波周波数信号を受信するよう結合され、基本波及び高調波周波数信号を相対的に重み付けする加重回路はまた、合成器による合成前に利用可能である。当該システムは、混合された基本波画像及び高調波画像を表示するディスプレイを有することが可能である。
【0014】
特定の態様では、当該システムは、基本波周波数信号の帯域における信号又は高調波周波数信号の帯域における信号を増幅するTGC回路を有することが可能である。当該システムはまた、基本波周波数信号の帯域又は高調波周波数信号の帯域における信号を対数スケーリングされた信号に変換するログアンプを有することが可能である。
【0015】
いくつかの実施例では、本発明のシステムは、アレイトランスデューサを有し、基本波周波数において連続する異なって変調された超音波パルスを送信し、基本波及び高調波周波数においてエコー信号を受信する超音波イメージングプローブと、受信したエコー信号に応答し、別々の基本波信号及び高調波信号を生成するため、異なって変調された超音波パルスからのエコー信号を加法及び減法合成するキャンセレーション回路と、基本波周波数信号の帯域を規定する通過帯域を有する基本波周波数フィルタと、基本波周波数通過帯域とオーバラップする通過帯域を有し、高調波周波数信号の帯域を規定する高調波周波数フィルタと、基本波又は高調波周波数信号の帯域に応答して、基本波周波数画像信号又は高調波周波数画像信号を検出する検出器と、検出された基本波又は高調波周波数画像信号に応答して、所望の画像フォーマットの基本波又は高調波画像を生成するスキャンコンバータと、スキャンコンバータに結合され、基本波画像又は高調波画像を表示するディスプレイとを有する超音波診断イメージングシステムを含むことができる。
【0016】
図1は、周波数に基づき基本波及び高調波信号を分離する超音波システムの典型的な通過帯域を示す。この図は、周波数“f”を中心とし、図において薄い黒の曲線80として示される46%送信帯域幅周波数帯域を示す。この波形に対する高調波応答は、また薄い黒の曲線82として基本波に隣接してプロットされる。送信周波数及び帯域幅は、基本波及び高調波応答が曲線Trによって示されるトランスデューサの帯域幅内にあるように選択される。
【0017】
2つのより広く示されるスペクトル84、86は、周波数の基本波(左)及び高調波(右)帯域の受信帯域通過形状を表す。これら2つの形状は、基本波及び高調波スペクトルがオーバラップする周波数を回避するための必要性と、トランスデューサの通過帯域によって課される周波数リミットとによって決定される。基本波スペクトル84は大変狭い帯域幅を有し、高調波スペクトルは図において斜線で示される周波数オーバラップ領域88を回避するため、それのより低い周波数の範囲を制限することが分かる。
【0018】
基本波−高調波混合の成功のための重要な基準は、適切に受信及び検出されたとき、両方の成分が良好な品質の画像を生成することである。
図1のスペクトルの場合、基本波画像は、84により示された狭帯域の結果として、周波数において大変低く、帯域幅において大変狭くなる。これは大変良好な画像を生成しない。86によって区切られた高調波スペクトルは非常に良く見えるが、それはオーバラップエリア88のものより低い周波数を含むことができないため、浸透性において制限される。従って、両方のオーバラップエリアは、基本波周波数の帯域幅と、さらに高調波スペクトルの低周波数を制限し、浸透性を改善する。
【0019】
図2を参照して、本発明の原理に従って構成された超音波診断イメージングシステムがブロック図形式で示される。
図2において、トランスデューサアレイ12は、超音波を送信し、エコー情報を受信するための超音波プローブ10に設けられる。トランスデューサアレイ12は、例えば、(3Dにおける)仰角(elevation)及び方位(azimuth)の双方において、2次元又は3次元でスキャン可能なトランスデューサ素子の1次元又は2次元アレイであってもよい。トランスデューサアレイ12は、アレイ素子による信号の送受信を制御するプローブにおけるマイクロビームフォーマ14に結合される。マイクロビームフォーマは、参照することによってその全体がここに援用される、米国特許第5,997,479号(Savordら)、第6,013,032号(Savord)及び第6,623,432号(Powersら)において説明されるようなトランスデューサ素子のグループ又は“パッチ”によって受信される信号の少なくとも部分的なビームフォーミングが可能である。マイクロビームフォーマは、送信と受信とをスイッチし、高エネルギー送信信号からメインビームフォーマ20を保護する送信/受信(T/R)スイッチ16にプローブケーブルによって結合される。マイクロビームフォーマ14の制御下におけるトランスデューサアレイ12からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ及びビームフォーマ20に結合される送信コントローラ18によって指示され、ユーザインタフェース又は制御パネル38のユーザ操作からの入力を受信する。送信コントローラによって制御される送信特性のうち、送信波形の振幅、位相及び極性がある。パルス送信の方向に形成されたビームは、より広い視野のために異なる角度で又はトランスデューサアレイから真っ直ぐ前方に(直交して)誘導されてもよい。
【0020】
トランスデューサ素子の隣接するグループによって受信されたエコーは、それらを適切に遅延させ、その後に組み合わせることによってビーム形成される。各パッチからのマイクロビームフォーマ14によって生成される部分的にビーム形成された信号はメインビームフォーマ20に結合され、トランスデューサ素子の個々のパッチから部分的にビームフォーミングされた信号は、完全にビームフォーミングされた信号に合成される。例えば、メインビームフォーマ20は、12個のトランスデューサ素子のパッチから部分的にビームフォーミングされた信号をそれぞれが受信する128個のチャンネルを有してもよい。このようにして、2次元アレイの1500個以上のトランスデューサ素子によって受信された信号は、単一のビームフォーミングされた信号に効率的に寄与することができる。
【0021】
本発明の本実現形態では、ビームフォーミングされた信号はラインバッファ22に結合される。ラインバッファ22は、パルス反転処理のため迅速に連続して送信された正負(正転/反転)の正極性パルスに続いて受信したものなど、パルスから生じるエコー信号を記憶する。異なって変調されたパルスペアの第2のパルスが送信されると、戻りエコーは、ラインバッファによって格納された前のパルスの空間的に対応するエコーと共に、加算器24及び減算器26に印加される。これは、画像フィールドにおける共通するポイントから戻るエコーを加算器24によって加法合成し、減算器26によって減算する。加算器22による反対の位相又は極性の送信パルスからのエコーの加法合成は、基本波周波数成分のキャンセレーションと高調波周波数成分の生成とを生じさせる。これらの高調波信号は、高調波帯域通過フィルタ52に適用される。反対の位相又は極性のパルスからのエコーの減算は、基本波成分の強化と高調波コンテンツの削除とをもたらす。これらの基本波周波数信号は基本波帯域通過フィルタに適用される。超音波アプリケーションにおける信号のフィルタリングは周知であり、超音波信号を処理及びフィルタリングするためのハードウェア、ソフトウェア又は双方を用いて実行可能である。このような技術は、例えば、参照することによってその全体がここに援用される、Thomas SzaboにおけるDiagnostic Ultrasound Imaging:Inside Out,Elsevier Academic Press,2004などに見つけることができる。
【0022】
図4は、当該信号キャンセル現象を示す。この2パルスシーケンスは同じ方向に順次送信される第1のパルス100及び反対の位相又は極性のパルス102から構成され、すなわち、それらは共に画像フィールド内の同一のスキャンラインを走査線に音波を当てる。異なって変調されるパルスは、パルス間の動きの影響を最小化するために迅速に連続して送信され、エコーが第1のパルスに応答して受信されるとすぐに、第2のものが送信される。2つの送信パルスは、
図4a)及びb)に示される。
【0023】
画像フィールドにおけるポイントから応答して受信したエコーが、
図4c)及びd)に示される。エコー104がパルス100に応答して生成され、エコー106がパルス102に応答して生成される。これら2つのエコーが加法合成されると、これは、反対の極性による基本波周波数成分の相殺をもたらす。しかしながら、
図4e)に示されるように、高調波信号成分110が、当該組み合わせによってキャンセルされず、明示されたままである。基本波周波数成分のキャンセル後に残った高調波信号は、高調波帯域通過フィルタ52に印加される。
【0024】
同様に、
図4f)に示されるパルスの1つから戻るエコー104は、他のパルスからのエコーと減法合成される。
図4g)におけるエコー106’は、第2のエコー信号(すなわち、106)を反転形式で示すことによって当該減法合成を表す。エコー104及び106’が合成されるとき、基本波周波数成分は同じであり、
図4h)において基本波周波数エコー信号112により示されるように、互いに加法合成及び強化する。これらの基本波周波数信号は基本波周波数帯域通過フィルタ50に印加される。従って、このように、高調波信号は、一方の合成器(24)による基本周波数成分の相殺によって生成され、基本波周波数信号は、他方の合成器(26)によって生成される。
【0025】
基本波及び高調波信号成分は、周波数選択性でなくパルス反転キャンセレーションによって分離されるため、各帯域は、
図3に示されるように、改善されたパフォーマンスのためにシフト可能である。基本波周波数帯域90はもはや、
図1と同様に周波数fを中心とせず、スペクトル90によって示されるように、より高い周波数にシフトされる。高調波スペクトル92は、基本波スペクトルの中心周波数の2倍を中心とし、それもまたより広い帯域を占有する。さらに、2つのスペクトルは、
図3が示すようにオーバラップすることが可能とされる。おれは、他方のスペクトルの成分が各スペクトルにおいてキャンセルされるため、許容可能である。
図1と同様に、トランスデューサ通過帯域は帯域Trによって示される。基本波及び高調波帯域幅フィルタ50,52はそのとき、通過帯域特性94,96によって2つのオーバラップしたスペクトルをフィルタリングする。フィルタリングされた基本波通過帯域94は、
図1の限定的な通過帯域94より有意に広く、これにより、ブロードバンド基本波信号及び画像を生成することが理解される。フィルタリングされた高調波通過帯域96はまた広い帯域幅を示す。高調波スペクトル92はトランスデューサ通過帯域Trを超えて延びるため、高調波帯域の上方の周波数の裾96’は、トランスデューサ通過帯域Trの上方の周波数の裾に効果的に限定される。
【0026】
基本波及び高調波周波数帯域通過フィルタ50,52に続いて、2つの信号パスはそれぞれにおいて同じ処理を提供する。時間ゲイン制御回路54,56は深さによる増幅を提供し、基本波及び高調波信号は検出器60,62により検出され、信号の振幅はログアンプ64、66によって対数変換される。本発明の更なる態様によると、基本波及び高調波信号は基本波/高調波合成器70によって合成される。画像フィールドの各ポイントにおける基本波及び高調波信号は、それらがログアンプによって生成されるときに合成されるが、好ましくは、それらは加重回路67,68によって重み付けされる。例えば、Roundhillらの特許のアイデアを維持すると、高調波信号はニアフィールドにおいてより大きな重み付けがされ、基本波信号はより小さくなり、ファーフィールドでは反対となり、ニアフィールドにおいて高い解像度と、ファーフィールドにおいてより大きな浸透性とを提供する。
【0027】
合成器70により生成される混合された基本波/高調波画像は、スキャンコンバータ32及びマルチプラナフォーマット変換器44に結合される。スキャンコンバータは、所望の画像フォーマットにより受信された空間関係においてエコー信号を構成する。例えば、スキャンコンバータは、エコー信号を2次元(2D)セクタ形状フォーマット又は3Dスキャニングが実行されるときピラミッド型の3次元(3D)画像に構成してもよい。スキャンコンバータは、画像フィールドにおける組織の動き及び血流を示すカラードップラ画像を生成するため、ドップラ推定速度に対応する画像フィールドのポイントにおける動きに対応するカラーによってBモード構成画像を重畳可能である。マルチプラナフォーマット変換器は、米国特許第6,443,896(Detmer)に記載されるように、体のボリューム領域の共通プレーンにおけるポイントから受信されたエコーを当該プレーンの超音波画像に変換する。ボリュームレンダリング器42は、米国特許第6,530,885号(Entrekinら)に記載されるように、3Dデータセットのエコー信号を書とのリファレンスポイントから見られる投射された3D画像に変換する。2Dmataha 3D画像は、画像ディスプレイ40上の表示のための更なるエンハンスメント、バッファリング及び一時的な記憶のため、スキャンコンバータ32、マルチプラナフォーマット変換器44及びボリュームレンダリング器42から画像プロセッサ30に結合される。患者IDなどのテキスト及び他のグラフィック情報を含むグラフィックディスプレイの重畳は、超音波画像による表示のためにグラフィックプロセッサ36によって生成される。
【0028】
好適な実施例では、ビームフォーマ20及びマイクロビームフォーマ14は、参照することによってその全体がここに援用される、米国特許第8,137,272号(Cooleyら)に記載されるように、マルチラインビームフォーミングを実行する。マルチラインによって実現されるとき、複数のスキャンラインポジションが各送信パルスによって同時に音波が当てられ、ビームフォーマは各パルスに応答して複数のエコーのスキャンラインを生成する。各送信のスキャンラインは、対応するエコーが2つのパルス送信に応答して、複数のスキャンラインに沿って基本波及び高調波信号を生成するようパルス反転によって合成可能である。分離された高調波及び基本波信号は、後述されるように、画像を生成するため処理される。
【0029】
他の変形が当業者に容易に想到するであろう。例えば、スキャンコンバータは合成器70に先行してもよく、基本波及び高調波信号はまず、混合前に所望の表示フォーマットに別々に変換される。これは、所望される場合、混合前又は混合することなく高調波及び基本波画像の別々の表示を可能にする。
【0030】
いくつかの実施例では、本発明は更に、基本波及び高調波周波数画像を生成する方法を有する。当該方法は、基本波周波数において連続する異なって変調された超音波パルスを送信し、基本波及び高調波周波数においてエコー信号を受信することを有することが可能である。当該方法は、キャンセレーション回路を用いて、受信したエコー信号に応答して、別々の基本波及び高調波信号を生成するため、異なって変調された超音波パルスからのエコー信号を加算及び減法合成する。当該方法は、基本波周波数信号の帯域をフィルタリングし(例えば、基本波周波数フィルタによって)、高調波周波数信号の帯域をフィルタリングする(例えば、高調波周波数フィルタによって)ことを含む。当該方法は、例えば、1つ以上の検出器を利用して、基本波及び高調波周波数画像信号を検出することを有することが可能である。当該方法はまた、検出された基本波及び高調波周波数画像信号を合成し、混合された基本波及び高調波画像を表示することを有することが可能である。
【0031】
ブロックの図の記載の各ブロックとブロック図の記載のブロックの組み合わせとは、ここに開示されたシステム及び方法の何れかの部分と共に、コンピュータプログラム命令によって実現可能であることが理解されるであろう。これらのプログラム命令は、プロセッサ上で実行される命令がここに開示されたシステム及び方法について説明されるか、あるいはブロック図の1つ以上のブロックにおいて指定されたアクションを実現するための手段を構成するマシーンを生成するためプロセッサに提供されてもよい。コンピュータプログラム命令は、処理ステップ系列をコンピュータにより実現される処理を生成するようプロセッサによって実行させるためにプロセッサにより実行されてもよい。コンピュータプログラム命令はまた、処理ステップの少なくとも一部をパラレルに実行させてもよい。さらに、ステップの一部はまた、マルチプロセッサコンピュータシステムにおいて生じさせるような複数のプロセッサにわたって実行されてもよい。さらに、1つ以上のプロセスはまた、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく図示されるものと異なるシーケンスにおいて又は他のプロセスにより同時に実行されてもよい。
【0032】
コンピュータプログラム命令は、限定することなく、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ若しくは他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)若しくは他の光ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又は計算装置によってアクセス可能であり、所望の情報を記憶するのに利用可能な他の何れかの媒体を含む何れか適したコンピュータ可読ハードウェア媒体に記憶可能である。プロセッサは、マイクロプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、集積回路などのハードウェアを含むことが可能である。