(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】
図1の状態から摺動体が前方へ移動した状態を示す縦断面図である。
【
図7】
図6の状態から重量体(摺動体)が前方へ移動した状態を示す縦断面図である。
【0015】
次に図面を参照しながら、本発明の加圧式筆記具をキャップ式のボールペンを用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、本実施例では、軸筒の長手方向において、ボールペンチップがある方を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。更に、軸筒の軸径方向において、ボールペンレフィルがある方を内方と表現し、その反対側を外方と表現する。
尚、説明を分かりやすくするために、図面中の同様の部材、同様の部分については同じ符号を付してある。
【0016】
実施例1
本実施例の加圧式筆記具1は、
図1から
図4に示すように、後軸2の前方に前軸3を螺合することで軸筒4を形成してあり、軸筒4内に配設された筒状体5と、筒状体5内に配設された加圧機構6と、加圧機構6の前部に装着され軸筒4内を前後に摺動可能なボールペンレフィル7と、軸筒4の外側面から一部が露出し、軸筒4に対して前後動自在に係止された摺動体9と、により構成してある。
【0017】
ボールペンレフィル7は、PP樹脂からなる透明のインキ収容筒11に、筆記具用インキ組成物であるインキ12及び当該インキ12の後端にインキの消費に伴い追従するグリース状のインキ追従体13を直接収容し、インキ収容筒11の前端開口部に、ボール(φ0.5mm)を回動自在に抱持し、筆記先端部となるボールペンチップ14の後端部を圧入嵌合して得たものである。
【0018】
摺動体9は、
図1から
図3に示すように、後端から前方へ向って形成されたスリット部9aを備えた略筒状体で形成してあり、中心部には前後方向(軸方向)に貫通する内孔9bが形成され、前部内孔9b1を後部内孔9b2に比べて小径で形成してある。また、摺動体9の外側面には、外方へ向って突出する突起状の操作部9cを形成してある。
尚、操作部9cの外方端には凹凸部9fを形成してあり、指で操作する際に滑り難くしてある。
【0019】
前軸3(軸筒4)は、
図1に示すように、前端にボールペンレフィル7のボールペンチップ14が突出可能な前端開口部3aが形成されている。また、前軸3(軸筒4)の外側面3bには、内孔3cまで貫通し前後方向に延びる側孔3dが形成してあり、側孔3dには摺動体9の操作部9cが配設され、前軸3に対して摺動体9を前後動自在に係止してある。
【0020】
更に、前軸3(軸筒4)の内面に形成した内段部3eと摺動体9の前端面9dとの間に第1コイルスプリング15(第一の弾発部材)を圧縮状態で張架し、且つ、摺動体9の内段部9eには、ボールペンレフィル7の外段部7aが当接するよう構成することで、前軸3(軸筒4)に対して摺動体9とボールペンレフィル7とを後方に弾発してある。
尚、前軸3(軸筒4)の外側面には凹凸状に形成し把持部3fが形成してあり、軸筒4を手で把持した際、指が滑り難くなるようにしてある。
【0021】
また、摺動体9の操作部9cが、前軸3の把持部3fの後方に位置するよう配設してある。このため、筆記時に使用者の指が把持部3fに掛かることで誤動作が発生することを防ぐことができる。
更に、操作部9cの軸周方向の長さL1(
図2参照)は、把持部3fを把持して筆記する際に邪魔にならず、且つ、操作し易いよう、前軸3(軸筒4)の全周長L2に対して5〜20%の間に形成することが好ましく、本実施例では、具体的には、前軸3(軸筒4)の全周長L2は37.7mm、操作部9cの軸周方向の長さL1を4.0mmで形成してあるため、操作部9cの軸周方向の長さL1は、前軸3(軸筒4)の全周長L2に対して約10.6%となり、筆記時に操作部9cに指が当たり難く、筆記し易いものとなった。
【0022】
後軸2(軸筒4)は、後端に底部を備えた略筒状に形成してあり、
図1に示すように、外側面2aに内孔まで貫通する側孔2bが形成してある。
【0023】
筒状体5は、後端に底部5cを備えた略筒状に形成してあり、外側面に外方へ向って突出する掛止突起5aが形成され、内周部には、内方へ向って突出するストッパー5bを形成してある。また、筒状体5に形成した掛止突起5aを後軸2の側孔2bに挿入することで、後軸2に対して係着してある。
【0024】
加圧機構6は、
図1及び
図4に示すように、ボールペンレフィル7の後方且つ筒状体5の内方に、当該筒状体5に対して前後動自在に収納され、円筒状のシリンダー17と、シリンダー17の後端開口部17aに挿入され、シリンダー17に対して前後に摺動可能に係着したピストン18と、ピストン18の側面に嵌着されたOリング8と、シリンダー17とピストン18の間に張架した第2コイルスプリング16(第ニの弾発部材)とで構成してある。
尚、加圧機構6は、筒状体5のストッパー5bにより前方への移動を制限してある。
【0025】
シリンダー17について詳述すると、
図1及び
図4に示すように、シリンダー17は前後に貫通する段状に形成された内孔17bを有しており、シリンダー17の外周面には、内孔17bまで貫通する空気孔17cを形成してある。
また、シリンダー17の内孔17bには、シリンダー17の内側部17dとピストン18の前端とOリング8とにより囲まれた加圧空間部10が形成され、加圧空間部10は空気口17cによりシリンダー17の外部と連通可能に構成してある。
【0026】
更に、シリンダー17の前部17eは中央部17fより小径で形成してあり、前部17eには外方へ向かって円周状に突出する装着部17gが軸方向に沿って2箇所形成してある。また、ボールペンレフィル7の後端内周部7bはシリンダー17の装着部17gに着脱自在に装着してあり、加圧空間部10はシリンダー17の内孔17bによりボールペンレフィル7の後部内孔7cまで連通してある。
尚、装着部17gは、シリンダー17にボールペンレフィル7を装着した際、シリンダー17とボールペンレフィル7との間の気密が確保され、且つ、手で容易に着脱可能になるよう外方への突出量(外径)を調整してある。
【0027】
ピストン18について詳述すると、ピストン18の外周部18aには外方へ向かって突出する凸部18bが軸心を挟んで対称に2箇所形成してある。そして、凸部18bをシリンダー17の中央部17fに軸心に沿って延びるように形成した窓部17hに、前後方向に対して摺動自在に係止してある。
【0028】
更に、ピストン18の外周部18aには軸周方向に延びる凹状の凹状部18cが形成してあり、凹状部18cには合成ゴムで形成したOリング8を嵌着してある。このOリング8の外側部はシリンダー17の内側部17dに摺接しており、シリンダー17の後端開口部17aをピストン18とOリング8とで空気が漏れないように密閉してある。また、ピストン18の後端面には前方へ向って凹状に形成された後方内孔18dを設けてある。
尚、シリンダー17が後退した際、シリンダー17の後端に筒状体5の底部5cが当接することで、シリンダー17の後退を制限してある。
【0029】
第2コイルスプリング16(第ニの弾発部材)について詳述すると、第2コイルスプリング16はシリンダー17の内方段部17iとピストン18の前段部18eとの間に張架してあり、ピストン18に対してシリンダー17を前方に弾発してある。
【0030】
尚、加圧空間部10は、シリンダー17の前後への摺動によりOリング8の位置がシリンダー17の空気口17cより前方にあるときは密閉状態となり、Oリング8の位置が空気口17cより後方にあるときは、加圧空間部10とシリンダー17の外部とが空気口17cにより連通され非密閉状態となる。
【0031】
また、第1コイルスプリング15(第一の弾発部材)でボールペンレフィル7を後方へ弾発することで、加圧機構6のシリンダー17が第2コイルスプリング16(第二の弾発部材)の弾発力により前進することを防ぎ、シリンダー内の加圧空間部10の加圧状態を維持できるよう、第2コイルスプリング16(第二の弾発部材)の弾発力より第1コイルスプリング15(第一の弾発部材)の弾発力が大きくなるよう構成することが好ましい。
このため、本実施例では、第1コイルスプリング15の弾発力は2.4N、第2コイルスプリング16の弾発力は1.7Nとなるよう構成した。
【0032】
尚、加圧式筆記具1の加圧機構6は、摺動体9を前後動させることで、ボールペンチップ14の前端部14a(筆記先端部)が前軸3の前端開口部3aから突出した筆記状態におけるシリンダー17内の加圧空間部10の密閉を解除して外気圧と同圧とし、その後、加圧空間部10を再度密閉して圧縮し加圧する加圧リセット構造を備えている。
【0033】
次に、
図1及び
図5を用いて、加圧機構6を作動させ、摺動体9を軸方向に沿って前後に摺動することで、シリンダー17内の加圧空間部10の密閉状態を解除し、再度密閉して圧縮し加圧する動作を説明する。
図1の状態から、前軸3(軸筒4)の外側面から露出する摺動体9の操作部9cに指を当て前方へ移動させると、第2コイルスプリング16の弾発力でシリンダー17とボールペンレフィル7とが前進しつつ、シリンダー17に対してピストン18とOリング8とが相対的に後方へ移動する。そして、Oリング8がシリンダー17の空気口17cに達すると、加圧空間部10と外部とが連通し、加圧空間部10の密閉状態が解除されて、外気圧と同圧となる
図5の状態となる。
【0034】
ここで、
図5の状態から、操作部9cから指を離す、または、操作部9cを前方へ押している指の力を緩めると、第1コイルスプリング15の弾発力により摺動体9、ボールペンレフィル7、シリンダー17、ピストン18、Oリング8が後方へ移動する。そして、筒状体5の底部5cにピストン18の後端が当接することでピストン18とOリング8の後退が止まる。この際、第2コイルスプリング16の弾発力より第1コイルスプリング15の弾発力の方が強くなるよう設定しているため、シリンダー17とボールペンレフィル7は後退を続け、シリンダー17の空気口17cがOリング8より後方へ移動し、加圧空間部10が密閉状態となり、更にシリンダー17が後方へ移動することで、加圧空間部10が圧縮し加圧された
図1の状態に戻る。
【0035】
実施例1の加圧式筆記具1は、摺動体9を一度前方へ移動させた後の
図1の状態で筆記を行うと、ボールペンレフィル7内のインキ12の後端にインキ追従体13を介して圧力を加えているため、通常よりインキ吐出量が増加し、筆跡濃度の向上、筆跡のかすれ防止、ボールペン構造の特有の問題である上向き筆記時の筆記先端部からの空気巻き込みを防止する等の効果を得られる。
また、
図1の状態で筆記を続けると、ボールペンレフィル7内のインキ12を消費するため、ボールペンレフィル7の後部内孔7cの容積がインキ12の消費分増加してしまい、結果として、連通している加圧空間部10が減圧され、使うごとに効果が減少してしまうが、もう一度摺動体を前方へ移動させることで、加圧空間部10の密閉状態を解除した後、再加圧することができ、加圧空間部10内の加圧状態を回復することができる。
【0036】
更に、実施例1の加圧式筆記具1は、前述したように、筆記する際に軸筒4を把持する把持部3fのすぐ後ろ側に摺動体9の操作部9cを配置しているため、筆記状態のまま、指で操作部9cを操作できる。このため、摺動体9の操作部9cの作動を軸筒4を持ち替えることなく実施でき、加圧空間部10の加圧状態を容易に維持しつつ筆記を継続することが可能なものとなった。また、操作部9cを移動させ加圧機構を作動させる操作を何度繰り返しても、加圧空間部10の加圧量が増え続けることはなく、過度に加圧量が増えてボールペンレフィル7の前端部14aからインキ12が漏れることを防止することができた。
【0037】
実施例2
本実施例の加圧式筆記具101は、
図6に示すように、後軸102の前方に前軸103を螺合することで軸筒104を形成してあり、軸筒104内に配設された筒状体5と、筒状体5内に配設された加圧機構6と、加圧機構6の前部に装着され軸筒104内を前後に摺動可能なボールペンレフィル7と、軸筒104内に前後動自在に配設された重量体109(摺動体)と、により構成してある。
【0038】
重量体109(摺動体)は、
図6に示すように、軸筒104の内側面とボールペンレフィル7の外側面との間に配設され、ボールペンレフィル7外側面を覆うように筒状に形成してあり、ボールペンレフィル7及び軸筒104に対して前後動自在になるよう形成してある。
尚、重量体109(摺動体)は、軸筒104を振った際の運動エネルギーが大きくなるよう、比重の高い材料で形成することが好ましく、本実施例では、ステンレス(SUS304)を用いて形成してある。
【0039】
また、重量体109(摺動体)の前方にはボールペンレフィル7の前部外側面7dに対して摺動自在に形成した摺動リング120が配設してあり、摺動リング120の後端面120aは、重量体9(摺動体)の前端面と当接するよう形成してある。
【0040】
前軸103(軸筒104)は、
図6に示すように、前端にボールペンレフィル7のボールペンチップ14が出没可能な前端開口部103aが形成されている。更に、前軸103(軸筒104)の内面に形成した内段部103eと摺動リング120の前端面120bとの間に第1コイルスプリング15(第一の弾発部材)を圧縮状態で張架し、且つ、摺動リング120の後端面120aには、ボールペンレフィル7の外段部7aが当接するよう構成することで、軸筒104に対して摺動リング120とボールペンレフィル7とを後方に弾発してある。
【0041】
後軸102(軸筒104)は、後端に底部を備えた略筒状に形成してあり、
図6に示すように、外側面102aに内孔まで貫通する側孔102bが形成してある。
【0042】
尚、加圧式筆記具101には、軸筒4を軸方向に沿って前後に振り、重量体109(摺動体)を前後動させることで、実施例1と同様に、ボールペンチップ14の前端部14a(筆記先端部)が前軸3の前端開口部3aから突出した筆記状態におけるシリンダー17内の加圧空間部10の密閉を解除して外気圧と同圧となり、その後、加圧空間部10を再度密閉し圧縮して加圧する加圧リセット構造を備えている。
【0043】
次に、
図6及び
図7を用いて、軸筒104を軸方向に沿って前後に振り、重量体109(摺動体)を前後に移動させて加圧リセット機構を作動することで、シリンダー17内の加圧空間部10の密閉状態を解除し、加圧する動作を説明する。
図6の状態から、前軸103(軸筒104)を把持したまま軸筒104を軸方向に沿って前後に振ると、慣性力により重量体109(摺動体)が軸筒104及びボールペンレフィル7に対して前後に摺動する。そして、重量体109(摺動体)の前端面が摺動リング120の後端面120aに当接すると、当接した際の衝撃で、摺動リング120が第1コイルスプリング15(第一の弾性部材)の弾発力に抗して前進する。更に、摺動リング120が前進した分、第2コイルスプリング16の弾発力でピストン18及びOリング8に対してシリンダー17とが前方へ移動する。そして、Oリング8がシリンダー17の空気口17cに達すると、加圧空間部10と外部とが連通し、加圧空間部10の密閉状態が解除されて外気圧と同圧になる
図7の状態となる。尚、この際、ボールペンレフィル7、シリンダー17の2部品は摺動リング120の移動に合わせて自重により前方側へ移動した状態となる。
ここで、重量体109(摺動体)に押された摺動リング120の前進が止まると(
図7の状態)、第1コイルスプリング15の弾発力により摺動リング120、重量体109(摺動体)、ボールペンレフィル7、シリンダー17、ピストン18、Oリング8が後方へ移動する。そして、筒状体5の底部5cにピストン18の後端が当接することでピストン18とOリング8の後退が止まる。この際、第2コイルスプリング16の弾発力より第1コイルスプリング15の弾発力が強くなるよう設定しているため、シリンダー17とボールペンレフィル7は後退を続け、シリンダー17の空気口17cがOリング8より後方へ移動し、加圧空間部10が密閉状態となり、更にシリンダー17が後方へ移動することで、加圧空間部10が圧縮して加圧された
図6の状態となる。
【0044】
以上の構成により、実施例2の加圧式筆記具101は、軸筒104を前後に振り、重量体109(摺動体)を前後動させ、加圧機構6を作動させることで、一次的に加圧空間部10の密閉状態を解除して外気圧と同圧にした後、再度加圧空間部10を密閉し圧縮することで加圧することができる。このため、加圧機構6を作動させた加圧式筆記具101で筆記を行うと、ボールペンレフィル7内のインキ12の後端にインキ追従体13を介して圧力を加えるため、通常よりインキ吐出量が増加し、筆跡濃度の向上、筆跡のかすれ防止、ボールペン構造の特有の問題である上向き筆記時の筆記先端部からの空気巻き込み防止等の効果を得られる。
また、
図6の状態で筆記を続けると、ボールペンレフィル7内のインキ12を消費するため、ボールペンレフィル7の後部内孔7c(後方空間部)の容積がインキ12の消費分増加してしまい、結果として、後部内孔7c(後方空間部)と連通している加圧空間部10が減圧され、筆記毎に少しずつ効果が減少してしまうが、軸筒104を前後に振り、加圧機構6を作動させることで、再加圧することができる。このため、加圧機構6の作動を軸筒4を持ち替えることなく実施でき、加圧空間部10の加圧状態を容易に維持しつつ筆記を継続することが可能なものとなった。
【0045】
尚、本実施例では、軸筒を振った際、摺動リング120の後端面120aに重量体を当接させることで第1コイルスプリング15を圧縮し、ボールペンレフィル7を第2コイルスプリング16の弾発力で前進させて、加圧機構6の加圧空間部10の密閉状態を解除したが、重量体9が当接する当接部をボールペンレフィルに一体的に設けてよく、図示はしないが、例えば、ボールペンレフィルの外側面に外方へ向って突出する突起部を設け、突起部に重量体が当接するよう構成することで、軸筒を振った際の重量体の慣性力で直接、ボールペンレフィルを第1コイルスプリングの弾発力に抗して前進させ、ボールペンレフィルの前進によりシリンダーを前進させることでも加圧空間部の密閉状態を解除して当該加圧空間部を外気圧と同圧にした後、加圧することが可能である。