(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水溶性化合物を含有する不飽和基含有ポリエーテル(B)(以下、粗製不飽和基含有ポリエーテル(B)という)から水溶性化合物を、溶剤を含まず酸性成分を含む50〜140℃の洗浄水で抽出し、少なくともポリエーテル相と水相とを分離する操作を含むポリエーテルの製造方法であって、撹拌後の洗浄水のpHが4.5〜8であり、洗浄水の添加量が粗製不飽和基含有ポリエーテル(B)100重量部に対して20〜500重量部であり、粗製不飽和基含有ポリエーテル(B)の主鎖骨格が、複合金属シアン化物錯体化合物触媒の存在下イニシエーターにアルキレンオキシドを反応させて得たポリエーテルであることを特徴とする、不飽和基含有ポリエーテルの製造方法。
水溶性化合物を含有する不飽和基含有ポリエーテル(B)(以下、粗製不飽和基含有ポリエーテル(B)という)と下記一般式(1)で表されるシラン化合物とのヒドロシリル化反応により反応性ケイ素基含有ポリエーテルを製造する際、粗製不飽和基含有ポリエーテル(B)に、溶剤を含まず酸性成分を含む撹拌後のpHが4.5〜8の洗浄水を混合し、この混合物から洗浄水を取り除くことで、粗製不飽和基含有ポリエーテル(B)に含まれる水溶性化合物によるヒドロシリル化反応の阻害を低減する方法。
H−(SiR42−bXbO)m−Si(R33−a)Xa(1)
(式中、R3およびR4は同一または異なった炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基または(R’)3SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R3またはR4が二個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが二個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示す。またm個の(SiR42−bXbO)基におけるbについて、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。mは0から19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする。)
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本発明における水溶性化合物を含有するポリエーテル(A)とは、各々水溶性化合物を含有する、水酸基末端ポリエーテル、不飽和基含有ポリエーテル(B)および反応性ケイ素基含有ポリエーテルなどを示すが、ここではこれらのうち、不飽和基含有ポリエーテルの製造方法、精製およびヒドロシリル化について説明をする。
【0013】
(不飽和基含有ポリエーテル(B)の製造方法)
不飽和基含有ポリエーテルの製造方法は、ポリエーテルの末端の水酸基を金属アルコキシドによりアルコキシド化反応した後に、ハロゲン化物を反応させて炭素-炭素不飽和基を導入する。
水酸基末端ポリエーテルの製造方法は、特に限定されることはなく、公知の方法を用いることができる。
【0014】
一般的な製造方法としては、例えば、複合金属シアン化物錯体を触媒として用いる重合反応により得られる。
【0015】
水酸基末端ポリエーテルの主鎖構造は、−R−O−で表される繰り返し単位が好ましい。
【0016】
ここで、Rは、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ハロゲン原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の2価の有機基である。主鎖中の複数のRは、同一の基であってもよく、2種以上の異なった基であってもよい。
【0017】
Rとしてはアルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素原子数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましい。
【0018】
−R−O−で表される繰り返し単位としては、−CH
2CH
2O−、−CH(CH
3)CH
2O−、−CH(C
2H
5)CH
2O−、−C(CH
3)
2CH
2O−、および−CH
2CH
2CH
2CH
2O−などをあげることができるが、−CH
2CH
2O−、−CH(CH
3)CH
2O−が好ましく、−CH(CH
3)CH
2O−が特に好ましい。
【0019】
また、水酸基末端ポリエーテルの主鎖は、分岐していてもよく、架橋していてもよい。
【0020】
水酸基末端ポリエーテルは、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキサイドを開環重合させて製造されるものが好ましい。
【0021】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、α−ブチレンオキサイド、β−ブチレンオキサイド、ヘキセンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、及びα−メチルスチレンオキシドなどをあげることができる。
【0022】
また、上記アルキレンオキサイド以外に、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、及びフェニルグリシジルエーテルなどの炭素原子数2〜12の置換または非置換のグリシジルエーテル類なども使用することができる。
【0023】
開始剤としては、メタノール、エタノ−ル、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコ−ル、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチルー1−ブタノール、3−メチルー1−ブタノール、2−メチルー2−ブタノール、3−メチルー2−ブタノールおよび2,2−ジメチルー1−プロパノールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、メタリルアルコール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ポリブタジエンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどの2価アルコールまたは多価アルコール、および水酸基を有する各種重合体などをあげることができる。
【0024】
このようにして得られる水酸基末端ポリエーテルは、次いで、金属アルコキシドとの反応(アルコキシド化反応)により、−OM(Mはアルカリ金属)で表される末端基を有するポリエーテルに変換される。
【0025】
金属アルコキシドとしては、水酸基末端ポリエーテルが有する末端水酸基(−OH)中の水素原子を、アルカリ金属原子に置換可能な化合物であれば特に限定されない。
【0026】
金属アルコキシドとしては、炭素原子数1〜4のアルカリ金属アルコキシドが用いられる。
【0027】
アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびカリウムエトキシドが好ましく、ナトリウムメトキシド、およびカリウムメトキシドがより好ましく、入手性の点でナトリウムメトキシドが特に好ましい。
【0028】
金属アルコキシドは2種類以上を組み合わせて用いることもできるが、1種類を単独で用いることが好ましい。
【0029】
次いで、−OMで表される末端基を有するポリエーテルは、ハロゲン化物との反応(アリル化反応)により、精製前の金属不純物を含む不飽和基含有ポリエーテルに変換される。
【0030】
不飽和基含有ハロゲン化物としては、下記式で表される化合物が好ましい。
H(R
3)C=C(R
2)−R
1−Y
(上記式中、R
1は酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ハロゲン原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の2価の有機基であり、R
2、R
3は、水素原子、または炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、Yはハロゲン原子である。)
不飽和基含有ハロゲン化物としては、入手性の点でアリルクロライド、およびメタリルクロライド(3−クロロ−2−メチル−1−プロペン)が好ましい。
【0031】
ハロゲン化物は2種類以上を組み合わせて用いることもできるが、1種類を単独で用いることが好ましい。
また、水酸基末端ポリエーテルに、金属アルコキシドを作用(アルコキシド化反応)させた後、炭素−炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物と反応させ、さらに上記ハロゲン化物と反応(アリル化反応)させることで、不飽和基を1つの末端に1個より多く有する不飽和基含有ポリエーテルを得ることもできる。炭素−炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物としては、アリルグリシジルエーテルが好ましい。
ポリエーテルとハロゲン化物との反応完了後も攪拌を継続することで、金属アルコキシド、または金属アルコキシド中のアルカリ性不純物が、ハロゲン化物と反応することにより消費される。ハロゲン化物添加後に、炭素数1〜3のアルコールまたは水の中から選ばれる少なくとも一種を添加することにより、これらアルカリ性成分の溶解度が高まりハロゲン化物との反応が促進し、消費速度を速めることが可能となる。炭素数1〜3のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどがあげられ、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールがアルカリ性成分に対してより良い良溶媒であり、少ない添加部数でアルカリ性成分を溶解可能であるため特に好ましい。ただし、これらに限定されず、分子内の水酸基の数は2つ以上であっても良く、分子内に炭素、水素、酸素以外の原子を含有していても良い。炭素数4以上のアルコールを用いると、アルカリ性成分の溶解性が不十分であり効果が限定的である。また、炭素数4以上のアルコールは沸点が高く、反応後の除去が難しい。
【0032】
炭素数1〜3のアルコールまたは水の中から2種類以上を組み合わせて用いることもできるが、1種類を単独で用いることが好ましい。
炭素数1〜3のアルコールまたは水の添加部数については特に限定しないが、ポリエーテル100部に対し、0.05〜20部が好ましく、0.1部〜10部がより好ましい。添加部数が0.05部未満であるとアルカリ成分が十分に溶解せず、効果が限定的となる。また、添加部数が20部より多いと、アルコールまたは水添加時の圧力の上昇が大きくなり、添加が困難となる等の不都合が生じる。
アルコールまたは水添加後の攪拌時間は特に限定しないが、5分から8時間が好ましく、5分から4時間がより好ましい。攪拌時間が短いと、アルカリ性成分の除去効果が不十分で、攪拌時間が長いと生産上効率が悪くなる。
得られた不飽和基含有ポリエーテルのpHは9.0以下であることが好ましい。pHが9.0より大きいとアルカリ性成分の除去が十分でなく、次ぐ精製工程おいて、洗浄水が油相中に溶解あるいは微分散して取りこまれ分離しにくくなり、乳化し分離しなくなる可能性が高まる。また、金属不純物や塩の除去効率が悪くなる。
【0033】
上述の方法により得られる不飽和基含有ポリエーテル中には、金属不純物や塩が含まれており、次ぐ精製工程での除去対象となる水溶性化合物としては、亜鉛塩、コバルト塩および/またはアルカリ金属塩等の、アルカリ金属化合物または複合金属シアン化物錯体触媒由来の化合物等が例示できる。
【0034】
(不飽和基含有ポリエーテル(B)の精製)
本発明で実施される、水抽出による精製方法とは、不飽和基を有するポリエーテル、水、および酸性成分を激しく混合した後、水相とポリエーテル相を、遠心分離、または静置分離し、ポリエーテル相を分離することで行なわれる。
【0035】
酸性成分は、特に限定しないが、アスコルビン酸またはその誘導体、クエン酸またはその誘導体、硫酸が好ましく、特に、アスコルビン酸が好ましい。
【0036】
本発明で用いられるアスコルビン酸とは、L−アスコルビン酸;その構造異性体であるイソアスコルビン酸;それらのエステル誘導体(具体的には、ルミチン酸L−アスコルビル、ステアリン酸L−アスコルビル、2−エチルヘキサン酸L−アスコルビル、パルミチン酸イソアスコルビル、ステアリン酸イソアスコルビル、または2−エチルヘキサン酸イソアスコルビル);それらのリン酸エステル誘導体(具体的には、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸ジリン酸エステル、L−アスコルビン酸トリリン酸エステル、イソアスコルビン酸モノリン酸エステル、イソアスコルビン酸ジリン酸エステル、またはイソアスコルビン酸トリリン酸エステル);それらのエーテル誘導体(具体的には、L−アスコルビン酸−2−グルコシド、またはイソアスコルビン酸−2−グルコシド)であり、より好ましくはL−アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、である。
【0037】
撹拌後の洗浄水はpHを4.5〜8になるように酸性成分を添加することが好ましく、より好ましくはpHを5〜7になるように酸性成分を添加することが好ましい。例えば、L−アスコルビン酸を用いた場合には、20ppm〜400ppmが好ましい。より好ましくは、50ppm〜250ppmが好ましい。
【0038】
ポリエーテル相と水相とを分離する際の温度としては、50℃以上が好ましい。さらに好ましくは、分離性の観点から60℃以上であり、より高い温度が好ましい。ただし、140℃を超えると、ポリマーの劣化が懸念されることから、実用上60〜140℃が好ましい。
【0039】
不飽和基を有するポリエーテルと水との混合割合は特に限定はなく金属不純物が所望の水準まで抽出され、ポリエーテル相との分離ができる量であればよいが、少なすぎると水相とポリエーテル相の分離が困難になったり、金属不純物を抽出できなくなる。また、多すぎると装置が大きくなってしまうという問題がある。このため、不飽和基を有するポリエーテル100重量部に対して、水は10〜1000重量部が好ましく、より好ましくは20〜500重量部である。
【0040】
(不飽和基含有ポリエーテル(B)のヒドロシリル化)
精製後の不飽和基含有ポリエーテルの末端の不飽和基に、公知の方法により反応性ケイ素基を導入して、反応性ケイ素基含有ポリエーテルを得ることができる。
【0041】
不飽和基含有ポリエーテルのヒドロシリル化は特に限定されることはなく、公知の方法を用いることができる。
【0042】
不飽和基を有するポリエーテルとヒドロシリル化を行なうシラン化合物としては、1個以上のSi−H基を分子内に有している化合物であればよい。代表的なものを示すと、例えば下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
H−(SiR
42-bX
bO) m−Si(R
33-a)X
a (2)
(式中、R
3およびR
4は同一または異なった炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基、炭素数7から20のアラルキル基または(R’)
3SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R
3またはR
4が二個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが二個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示す。またm個の(SiR
42-bX
bO)基におけるbについて、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。mは0から19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする。)
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1〜5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0044】
とくに、一般式(3)で表される化合物が入手が容易であるので好ましい。
【0045】
H−SiR
33-cX
c (3)
(式中、R
3、Xは前記と同じ。cは1、2または3を示す。)
具体的には、トリクロルシラン、メチルジクロルシラン、ジメチルクロルシラン、フェニルジクロルシラン、トリメチルシロキシメチルクロルシランなどのハロゲン化シラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、トリメチルシロキシメチルメトキシシラン、トリメチルシロキシジエトキシシランなどのアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシラン、トリメチルシロキシメチルアセトキシシラン、トリメチルシロキシジアセトキシシランなどのアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシラン、ビス(ジエチルケトキシメート)トリメチルシロキシシラン、ビス(メチルエチルケトキシメート)メチルシラン、トリス(アセトキシメート)シランなどのケトキシメートシラン類;メチルイソプロペニルオキシシランなどのアルケニルオキシシラン類などが挙げられる。これらのうち、特にアルコキシシラン類が好ましく、アルコキシ基の中でもメトキシ基が特に好ましい。
【0046】
本発明におけるヒドロシリル化反応は、通常10〜150℃、より好ましくは20〜120℃、もっとも好ましくは40〜100℃の範囲とするのが好適であり、反応温度の調節、反応系の粘度の調整などの必要に応じて、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの溶剤を用いることができる。
【0047】
不飽和結合を導入したポリエーテルと加水分解性ケイ素基を有する化合物との反応において用いる触媒としては、白金、ロジウム、等のVIII族遷移金属元素から選ばれた金属錯体触媒等が有効に使用される。例えば、H
2PtCl
6・6H
2O、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、RhCl(PPh
3)
3、等のような化合物が使用できるが、ヒドロシリル化の反応性の点から、H
2PtCl
6・6H
2O、白金−ビニルシロキサン錯体、が特に好ましい。ここでいう白金−ビニルシロキサン錯体とは、白金原子に対し、配位子として分子内にビニル基を有する、シロキサン、ポリシロキサン、環状シロキサンが配位している化合物の総称であり、上記配位子の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチル1,3−ジビニルジシロキサン等が挙げられる。触媒使用量としては特に制限は無いが、通常、アルケニル基1モルに対して白金触媒を10
-1から10
-8モル使用することが好ましい。
【0048】
このようにして合成された反応性ケイ素基含有ポリエーテルは硬化触媒の存在下で、大気中の水分により常温で硬化し、金属、ガラスなどに密着性の良い塗膜を与え、建造物、航空機、自動車等の被膜組成物、密封組成物、塗料組成物、接着剤組成物として有用である。硬化触媒としては、従来公知のシラノール縮合触媒を使用することができる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明の反応性ケイ素基含有ポリエーテルは、必要に応じ種々の可塑剤、充填剤やアミノシラン等の接着性付与剤、脱水剤などを添加することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明をより一層明らかにするために具体的な実施例をあげて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
(pH測定)
洗浄水のpHはJIS Z 8802(測定方法)に記載の方法で測定した。
【0052】
不飽和基含有ポリエーテルのpHはJIS K 1557−5(試験方法:pH(参考))に記載の方法で測定した。
pH計は、メトラー・トレド(株)製S220-Kitを使用した。
【0053】
(含水率測定)
精製後、不飽和基含有ポリエーテルをエバポレーター(東京理化器機(株)製N−1210B型)を用いて脱水した。エバポレーターは以下の条件で実施した。[温度、圧力、時間:115℃、1kPa、1時間]
その後、脱水前後の重量から含水率を以下のように計算した。
含水率 = {(脱水前の重量 − 脱水後の重量)/ 脱水前の重量 }×100(%)
【0054】
(濁度測定)
精製後、不飽和基含有ポリエーテルをエバポレーター(東京理化器機(株)製N−1210B型)を用いて脱水した。エバポレーターは以下の条件で実施した。[温度、圧力、時間:115℃、1kPa、1時間]
その後、分光光度計用セル(アズワン(株)製2−478−05)に移してペルジャー( (株) サンプラテック製PC−250K)を用いて脱泡処理を行った。脱泡処理はダイヤフラムポンプを用いて減圧し、目視で泡がなくなるまで実施した。脱泡処理したセルを分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製U−1800型)を用いて、A660(660nmの吸光度)を測定した。分光光度計のゼロ点調整には、イオン交換水を使用した。
【0055】
(合成例1)
数平均分子量300のポリプロピレントリオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの開環重合を行い、触媒および/またはその残渣である金属化合物を不純物をして含む、水酸基末端ポリエーテルを得た。得られた水酸基末端ポリエーテルのGPC分析(システム:東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム:東ソー(株)製TSK−GEL Hタイプ)を行ったところ、数平均分子量が約15000であった。
【0056】
(合成例2)
合成例1で得られた水酸基末端ポリエーテルの水酸基に対して1.0倍当量のナトリウムメトキシドの30%メタノール溶液を添加してメタノールを留去した後、水酸基に対して1.8倍当量のアリルクロライドを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。アリルクロライド添加後1時間後にメタノール0.5部を添加し、さらに3時間攪拌した後、アリルクロライドとメタノールを留去し、不飽和基含有ポリエーテル(a1)を得た。不飽和基含有ポリエーテル(a1)のpHを測定したところ、8.4であった。
【0057】
(実施例1)
合成例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル(a1)687gを攪拌槽(攪拌機、およびジャケット付き)に入れ90℃に加熱し、アスコルビン酸0.103g(不飽和基含有ポリエーテル(a1)に対し150ppm)イオン交換水344gを添加した後5分間静置して分離させた。混合溶液を700rpmで1時間、続けて50rpmで15分間攪拌した後、25分間静置することにより分離させ、水相を除去した。その結果、混合溶液は不飽和基含有ポリエーテル相と水相とに分離し、中間相の発生もなかった。洗浄水のpHは6.4であった。水を下部から抜き出した後、精製された不飽和基含有ポリエーテルを抜き出し、含水率、濁度(A660)を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2)
合成例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル(a1)687gを攪拌槽(攪拌機、およびジャケット付き)に入れ90℃に加熱し、アスコルビン酸0.137g(不飽和基含有ポリエーテル(a1)に対し200ppm)イオン交換水344gを添加した後5分間静置して分離させた。混合溶液を700rpmで1時間、続けて50rpmで15分間攪拌した後、25分間静置することにより分離させ、水相を除去した。その結果、混合溶液は不飽和基含有ポリエーテル相と水相とに分離し、中間相の発生もなかった。洗浄水のpHは5.4であった。水を下部から抜き出した後、精製された不飽和基含有ポリエーテルを抜き出し、含水率、濁度(A660)を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
合成例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル(a1)687gを攪拌槽(攪拌機、およびジャケット付き)に入れ90℃に加熱し、特許文献3の実施例3に従って、アスコルビン酸0.344g(不飽和基含有ポリエーテル(a1)に対し500ppm)イオン交換水344gを添加した後5分間静置して分離させた。混合溶液を700rpmで1時間、続けて50rpmで15分間攪拌した後、25分間静置することにより分離させ、水相を除去した。その結果、混合溶液は不飽和基含有ポリエーテル相と水相が乳化状態になりほぼ分離せず、中間相が大量に発生した。洗浄水のpHは4.0であった。水を下部から抜き出した後、精製された不飽和基含有ポリエーテルを抜き出し、含水率、濁度(A660)を測定した。結果を表1に示す
【0060】
(比較例2)
合成例2で得られた不飽和基含有ポリエーテル(a1)687gを攪拌槽(攪拌機、およびジャケット付き)に入れ90℃に加熱し、水酸化ナトリウム0.014g(不飽和基含有ポリエーテル(a1)に対し20ppm)イオン交換水344gを添加した後5分間静置して分離させた。混合溶液を700rpmで1時間、続けて50rpmで15分間攪拌した後、25分間静置することにより分離させ、水相を除去した。その結果、混合溶液は不飽和基含有ポリエーテル相と水相の間に中間相が発生し、分離性が悪化した。洗浄水のpHは9.8であった。水を下部から抜き出した後、精製された不飽和基含有ポリエーテルを抜き出し、含水率、濁度(A660)を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
上記の結果より、精製時の酸添加条件で比較すると、洗浄水のpHが4.5〜8の範囲に入っているもの(実施例1、実施例2)が最も含水率・濁度(A660)が低かった、また、洗浄水のpHが4.5〜8の範囲外のもの(比較例1)では、系が乳化状態になり、含水率・濁度(A660)がひどく悪化した。一方、精製時のアルカリ添加条件(比較例2)では、洗浄水のpHが4.5〜8の範囲外となり、中間相が発生し、含水率・濁度(A660)が悪化することが確認された。
このことから、洗浄水のpHが4.5〜8の範囲にすることで不飽和基含有ポリエーテルと水との分離が良好に実施でき、塩の除去が効率的に行われたことが分かる。
【0063】
(実施例3)
実施例1で得られた不飽和基含有ポリエーテル50g、ヘキサン1g、アスコルビン酸0.0225gを200ml四つ口フラスコに加え90℃で減圧脱揮を行った後、1時間攪拌した。その後N 2で置換し、白金−ビニルシロキサン錯体(Pt1wt%/イソプロパノール(以下、IPA))23μlを加え攪拌し、ジメトキシメチルシラン1.2gをゆっくり滴下した。その混合溶液を90℃で1時間反応させ、反応性ケイ素基含有ポリエーテルを得た。NMR(日本電子(株)製JMN−LA400)により得られたポリマーの残アリル基率を測定した結果、未反応のアリル基率は1%であった。
【0064】
(比較例3)
比較例1で得られた不飽和基含有ポリエーテル50g、ヘキサン1g、アスコルビン酸0.0225gを200ml四つ口フラスコに加え90℃で減圧脱揮を行った後、1時間攪拌した。その後N 2で置換し、白金−ビニルシロキサン錯体(Pt1wt%/イソプロパノール(以下、IPA))23μlを加え攪拌し、ジメトキシメチルシラン1.2gをゆっくり滴下した。その混合溶液を90℃で1時間反応させ、反応性ケイ素基含有ポリエーテルを得た。NMR(日本電子(株)製JMN−LA400)により得られたポリマーの残アリル基率を測定した結果、未反応のアリル基率は80%であった。
【0065】
【表2】
【0066】
上記の結果より、洗浄水のpHが4.5〜8の範囲の実施例3のヒドロシリル化反応後のアリル基率は1%まで減少していることを確認した。洗浄水のpHが4.5〜8の範囲外の比較例3のヒドロシリル化反応後のアリル基率は80%残っていることを確認した。ヒドロシリル化反応後のアリル基率が少ないほうが反応が進行していることを示すことから、洗浄水のpHを4.5〜8の範囲にすることで不飽和基含有ポリーテルに含まれる水溶性化合物によるヒドロシリル化反応の阻害を低減できたことが分かる。