特許第6978377号(P6978377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6978377車両制御装置、及び車両制御装置を備える車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978377
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】車両制御装置、及び車両制御装置を備える車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20211125BHJP
   B60W 30/16 20200101ALI20211125BHJP
   B60K 31/00 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   F02D29/02 321A
   F02D29/02 301D
   F02D29/02 341
   B60W30/16
   B60K31/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-91612(P2018-91612)
(22)【出願日】2018年5月10日
(65)【公開番号】特開2019-196747(P2019-196747A)
(43)【公開日】2019年11月14日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 嘉範
(72)【発明者】
【氏名】花田 晃平
(72)【発明者】
【氏名】新村 智之
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−173454(JP,A)
【文献】 特開2010−143323(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0266476(US,A1)
【文献】 特開2015−101207(JP,A)
【文献】 特開2014−184879(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/118570(WO,A1)
【文献】 特開2014−141937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D29/00−29/06,
B60K31/00−31/18,
B60W30/00−60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と自車両の前方を走行する他車両との車間距離を用いて自車両の減速制御を行う減速制御部と、
自車両の車速が所定の低車速領域に入る旨を含む停止条件の充足によって自車両の駆動源であるエンジンの駆動を停止させるアイドリングストップ制御を行う一方、所定の再始動条件の充足によって前記エンジンを再始動させる再始動制御を行うエンジン制御部と、を備え、
前記減速制御を実行する際に用いる電源と、前記再始動制御を実行する際に用いる電源とは、自車両に搭載された一の電源を共用しており、
前記減速制御部は、前記アイドリングストップ制御の実行中では前記車間距離を用いた自車両の減速制御の実行を禁止する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記減速制御部は、自車両が停車状態になった場合、前記車間距離を用いた自車両の減速制御の実行を許可する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記減速制御部は、予め設定される要求車間距離と、自車両と自車両の前方を走行する他車両との実車間距離との差分を用いて自車両の減速制御を行い、
前記エンジン制御部は、前記要求車間距離と前記実車間距離との差分を用いて自車両の加速制御をさらに行い、
前記減速制御部は、前記アイドリングストップ制御の実行中では前記差分を用いた前記減速制御及び前記加速制御を含む追従制御の実行を禁止する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
予め設定される要求車間距離と、自車両と自車両の前方を走行する他車両との実車間距離との差分を用いて自車両の減速制御を行う減速制御部と、
自車両の車速が所定の低車速領域に入る旨を含む停止条件の充足によって自車両の駆動源であるエンジンの駆動を停止させるアイドリングストップ制御を行う一方、所定の再始動条件の充足によって前記エンジンを再始動させる再始動制御を行うエンジン制御部と、を備え、
前記減速制御を実行する際に用いる電源と、前記再始動制御を実行する際に用いる電源とは、自車両に搭載された一の電源を共用しており、
前記エンジン制御部は、前記要求車間距離と前記実車間距離との差分を用いて自車両の加速制御をさらに行い、
前記減速制御部は、前記アイドリングストップ制御の実行中では前記差分を用いた前記減速制御及び前記加速制御を含む追従制御の実行を禁止する
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両制御装置を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の停止条件を充足すると自車両の駆動源であるエンジンを停止させるアイドリングストップ機能を有する車両制御装置、及び車両制御装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料の節約、エミッションの低減、振動騒音の低減等を狙って、所定の停止条件(例えば、車速がゼロでブレーキオン)を充足すると自車両の駆動源であるエンジンを停止させるアイドリングストップ(以下、「アイドリングストップ」を「IS」と省略する場合がある。)機能を有する車両制御装置が知られている。
【0003】
かかる車両制御装置の一例として、本願出願人は、自車両の前方を走行する他車両を追従する追従制御機能とIS機能とを関連付けて自車両の制御を行う車両制御装置の発明を開示している(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に係る車両制御装置は、所定の停止条件を充足すると自車両の駆動源であるエンジンを停止させる一方、所定の再始動条件を充足するとエンジンを再始動させるエンジン制御部と、所定の追従制御条件を充足すると自車両の前方を走行する他車両を追従する追従制御を行う追従制御部と、を備える。エンジン制御部は、追従制御部による追従制御の作動中には、追従制御が非作動である場合と比べて、エンジンの停止条件又は再始動条件を変更するように動作する。
【0005】
具体的には、例えば、追従制御が非作動である場合のエンジンの停止条件として路面勾配が勾配閾値以下である旨が設定されている場合に、追従制御の作動中には、エンジンの停止条件として用いる勾配閾値をより緩やかな勾配値に変更する。つまり、エンジンの停止条件として路面勾配が用いられる場合に、追従制御の作動中には、追従制御が非作動である場合と比べて、エンジンの停止タイミングを遅らせる。
【0006】
特許文献1に係る車両制御装置によれば、追従制御とIS制御とを関連付けて自車両の走行制御を行うため、例えば、勾配路での運転者の予期しない車両の移動を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2015/118570
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る車両制御装置には、自車両の停車を待ってIS制御を行うこと(特許文献1の段落番号0033参照)が記載されている。ただし、特許文献1に係る車両制御装置には、自車両の車速が所定の低車速領域に入るとIS制御を行う(減速走行中IS制御)ことについては開示も示唆もない。
【0009】
ところで、自車両の車速が所定の低車速領域に入るとIS制御を行うケースでは、追従制御の作動中に、減速制御による減速要求及びエンジンの再始動要求が重複して生じる場合がある。ここで、減速制御による減速要求及びエンジンの再始動要求のいずれもが、その要求に応えるのに比較的大電力を要する。そのため、減速要求及び再始動要求が重複して生じた場合に、いずれか一方の要求に応えられずに、乗員に違和感を抱かせるおそれがあった。
【0010】
この点、特許文献1に係る車両制御装置では、追従制御の作動中に、減速制御による減速要求及びエンジンの再始動要求が重複して生じる事態は生じない。自車両の停車を待ってIS制御を行う特許文献1に係る車両制御装置では、自車両の走行中にはエンジンが駆動している。このため、エンジンの再始動要求が生じることはない。
【0011】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、減速制御による減速要求及びエンジンの再始動要求が重複して生じる事態を未然に回避して、乗員に違和感を抱かせることなく円滑な車両制御を実現可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、減速制御による減速要求及びエンジンの再始動要求が重複して生じる事態を未然に回避して、乗員に違和感を抱かせることなく円滑な車両制御を実現可能な車両制御装置を備える車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、(1)に係る発明は、自車両と自車両の前方を走行する他車両との車間距離を用いて自車両の減速制御を行う減速制御部と、自車両の車速が所定の低車速領域に入る旨を含む停止条件の充足によって自車両の駆動源であるエンジンの駆動を停止させるアイドリングストップ制御を行う一方、所定の再始動条件の充足によって前記エンジンを再始動させる再始動制御を行うエンジン制御部と、を備え、前記減速制御を実行する際に用いる電源と、前記再始動制御を実行する際に用いる電源とは、自車両に搭載された一の電源を共用しており、前記減速制御部は、前記アイドリングストップ制御の実行中では前記車間距離を用いた自車両の減速制御の実行を禁止することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両制御装置によれば、減速制御による減速要求及びエンジンの再始動要求が重複して生じる事態を未然に回避して、乗員に違和感を抱かせることなく円滑な車両制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る車両制御装置の概要を表すブロック構成図である。
図2A】ステアリングホィールに設けられる適応クルーズコントロール機能の操作スイッチの外観図である。
図2B】適応クルーズコントロール機能の操作スイッチを拡大して表す外観図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両制御装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図4】適応クルーズコントロール機能を有する車両制御装置の動作説明に供する、車速・エンジン回転速度・アイドリングストップ制御状態・ACC_SET状態・制動状態・ACC_SET禁止フラグの経時変化をそれぞれ表すタイムチャート図である。
図5A】ACC_SET状態がオフである旨を乗員に報知する際に用いるイメージ図である。
図5B】ACC_SET状態がオンである旨を乗員に報知する際に用いるイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る車両制御装置について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す図において、共通の機能を有する部材間、または、相互に対応する機能を有する部材間には、原則として共通の参照符号を付するものとする。また、説明の便宜のため、部材のサイズおよび形状は、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
【0017】
〔本発明の実施形態に係る車両制御装置11の概要〕
はじめに、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の概要について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の概要を表すブロック構成図である。
【0018】
本発明の実施形態に係る車両制御装置11は、適応クルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)機能による減速要求、及び自車両(不図示)の駆動源である内燃機関エンジン69(図1参照)の再始動要求が重複して生じる事態を未然に回避して、車両の乗員に違和感を抱かせることなく円滑な車両制御を実現する機能を有する。ACC機能について、詳しくは後記する。
【0019】
前記の機能を実現するために、本発明の実施形態に係る車両制御装置11は、図1に示すように、入力系要素13及び出力系要素15の間を、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信媒体17を介して相互にデータ通信可能に接続して構成されている。
【0020】
入力系要素13は、図1に示すように、イグニッション(IG)キースイッチ21、レーダ23、カメラ25、車速センサ27、車輪速センサ29、ブレーキペダルセンサ31、アクセルペダルセンサ33、制動液圧センサ35、ヨーレートセンサ37、Gセンサ39、及び、MMI(Man-Machine Interface)41を含んで構成されている。
【0021】
一方、出力系要素15は、図1に示すように、ACC−ECU51、ENG−ECU53、ESB(Electric Servo Brake)−ECU55、及び、VSA(Vehicle Stability Assist;ただし、VSAは登録商標)−ECU57を含んで構成されている。
【0022】
イグニッション(IG)キースイッチ21は、車両に搭載された電装部品の各部に、車載バッテリ43を介して電源を供給する際に操作されるスイッチである。IGキースイッチ21がオン操作されると、ACC−ECU51、ENG−ECU53、ESB−ECU55、及び、VSA−ECU57に電源が供給されて、これら各ECU51,53,55,57がそれぞれ起動される。
【0023】
レーダ23は、自車両の前方を走行する他車両を含む物標にレーダ波を照射する一方、物標で反射されたレーダ波を受信することにより、物標までの距離や物標の方位を含む物標の分布情報を取得する機能を有する。
【0024】
レーダ23としては、例えば、レーザレーダ、マイクロ波レーダ、ミリ波レーダ、超音波レーダなどを適宜用いることができる。レーダ23は、自車両のフロントグリル裏部などに設けられる。レーダ23による物標の分布情報は、通信媒体17を介してACC−ECU51へ送られる。
【0025】
カメラ25は、自車両前方の斜め下方に傾いた光軸を有し、自車両の進行方向の画像を撮像する機能を有する。カメラ25としては、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラやCCD(Charge Coupled Device)カメラなどを適宜用いことができる。カメラ25は、自車両のウインドシールド中央上部などに設けられる。カメラ25により撮像された自車両の進行方向画像情報は、例えばNTSC(National Television Standards Committee)などのインターレース方式により生成される画像信号として、通信媒体17を介してACC−ECU51へ送られる。
【0026】
車速センサ27は、車両の走行速度(車速)Vを検出する機能を有する。車速センサ27で検出された車速Vに係る情報は、通信媒体17を介してESB−ECU55等へ送られる。
【0027】
車輪速センサ29は、自車両に設けられた各車輪(不図示)毎の回転速度(車輪速)をそれぞれ検出する機能を有する。車輪速センサ29でそれぞれ検出される各車輪毎の車輪速に係る情報は、通信媒体17を介してVSA−ECU57等へ送られる。
【0028】
ブレーキペダルセンサ31は、運転者によるブレーキペダル(不図示)の操作量、及びトルクを検出する機能を有する。ブレーキペダルセンサ31で検出されたブレーキペダルの操作量、及びトルクに係る情報は、通信媒体17を介してESB−ECU55等へ送られる。
【0029】
アクセルペダルセンサ33は、運転者によるアクセルペダル(不図示)の操作量を検出する機能を有する。アクセルペダルセンサ151で検出されたアクセルペダルの操作量に係る情報は、通信媒体17を介してVSA−ECU57等へ送られる。
【0030】
制動液圧センサ35は、制動液圧系統のうちVSA装置(車両挙動安定化装置;不図示)の給液経路における制動液圧を検出する機能を有する。制動液圧センサ35で検出されたVSA装置の給液経路における液圧情報は、通信媒体17を介してESB−ECU55等へ送られる。
【0031】
ヨーレートセンサ37は、自車両に発生しているヨーレイトを検出する機能を有する。ヨーレイトセンサ152で検出されたヨーレイトに係る情報は、通信媒体17を介してVSA−ECU57等へ送られる。
【0032】
Gセンサ39は、自車両に発生している前後G(前後加減速度)及び横G(横加減速度)をそれぞれ検出する機能を有する。Gセンサ39で検出された自車両の前後G及び横Gに係る情報は、通信媒体17を介してVSA−ECU57等へ送られる。
【0033】
MMI(Man-Machine Interface)41は、適応クルーズコントロール(ACC)機能の操作スイッチ(以下、「ACC操作スイッチ」と呼ぶ。)81(図2A図2B参照)を含む。ACC操作スイッチ81は、ACC機能に係る設定情報を操作入力する際に用いられる。ACC操作スイッチ81によって操作入力されたACC機能に係る設定情報は、通信媒体17を介してACC−ECU51等へ送られる。
【0034】
ここで、ACC操作スイッチ81の周辺構成について、図2A図2Bを参照して説明する。図2Aは、ステアリングホィール83に設けられるACC操作スイッチ81の外観図である。図2Bは、ACC操作スイッチ81を拡大して表す外観図である。
【0035】
ACC操作スイッチ81は、図2Aに示すように、例えばステアリングホィール83に設けられる。運転者の進行方向前方への視線の延長線上近傍には、車速やシフト位置のほか、ACC機能に係る設定情報を表示するためのマルチインフォメーションディスプレイ85が設けられている。ACC機能に係る設定情報の表示例について、詳しくは後記する。
【0036】
次に、適応クルーズコントロール(ACC)機能について説明する。
ACC機能とは、所定の追従制御条件を充足すると、自車両の前方を走行する他車両(先行車両)を追従するように自車両の走行制御を行う機能である。従来のクルーズコントロールでは、所要の車速Vを予め設定しておけば、自車両の車速Vを設定車速に保ちながら追従制御を行う。
【0037】
これに対し、適応クルーズコントロール(ACC)では、自車両の車速Vを設定車速に保つ機能に加えて、所要の車間距離を予め設定しておけば、自車両の前方を走行する他車両(先行車両)との車間距離を、自車両の車速Vが設定車速の範囲内に維持された状態で、設定車間距離に保ちながら追従制御を行う機能を有する。
【0038】
ここで、例えばACC作動中の自車両が高速道路を走行中に渋滞に巻き込まれて、30Km/h程度の低速で走行するシーンを想定する。かかるシーンでは、自車両の車速Vは設定速度(例えば80Km/h)を下回る。この際に、自車両の前方を走行する他車両(先行車両)との車間距離を設定車間距離に保ちながら追従走行する機能を利用できれば、運転の負荷を軽減できて利便性が高まる。
【0039】
こうした要請を受けて、ACCは、LSF(低速追従;Low Speed Following)と呼ばれる機能を有している。LSF機能とは、例えば高速道路での渋滞走行時等の、自車両の車速Vが設定速度(例えば80Km/h)を下回る低速(例えば30Km/h)走行時に、先行車両との車間距離を設定車間距離に保つように、アクセルペダルやブレーキペダルの操作を要することなしに、加速制御及び減速制御を含む追従制御を行う機能である。
【0040】
ACC機能に係る設定情報を操作入力するために、ACC操作スイッチ81は、図2Bに示すように、メイン(MAIN)スイッチ91、及びサークルメニュースイッチ93を備える。メインスイッチ91は、ACC機能を起動する際に操作されるスイッチである。また、サークルメニュースイッチ93は、ACC機能に係る設定情報の操作入力を行う際に操作されるスイッチである。
【0041】
サークルメニュースイッチ93は、図2Bに示すように、セット(−SET)スイッチ95、リセット(RES+)スイッチ97、キャンセル(CANCEL)スイッチ98、及びディスタンススイッチ99を備える。
【0042】
セット(−SET)スイッチ95は、ACC機能に係る設定情報のうち、車速のセット、及び設定車速を下降調整する際に操作されるスイッチである。
【0043】
リセット(RES+)スイッチ97は、ACC機能に係る設定情報のうち、車速のリセット、及び設定車速を上昇調整する際に操作されるスイッチである。
【0044】
キャンセル(CANCEL)スイッチ98は、ACC機能の作動を解除する際に操作されるスイッチである。なお、メインスイッチ91を押下操作することによっても、ACC機能の作動を解除することができる。
【0045】
ディスタンススイッチ99は、自車両と先行車両との車間距離を設定する際に操作されるスイッチである。車間距離の設定情報は、ディスタンススイッチ99を押下操作する毎に、例えば、(最長→長→中→短)の4段階で順次切り換えられる。なお、車間距離の設定値は、自車両の車速Vの高低に応じて、車速Vが低くなるほど車間距離の設定値が短くなるように変動する構成が採用されている。
【0046】
出力系要素15に属するACC−ECU51は、図1に示すように、情報取得部61、ACC制御部63、及びLSF制御部65を備える。
【0047】
ACC−ECU51は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、ACC−ECU51が有する、各種情報の取得機能、ACC制御機能、及び、LSF制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。ACC−ECU51は、VSA−ECU57と連携して、本発明の「減速制御部」を構成する。
【0048】
情報取得部61は、レーダ23による物標の分布情報、カメラ25により撮像された自車両の進行方向画像情報、車速センサ27で検出された車速Vに係る情報、及びMMI(Man-Machine Interface)41に属するACC操作スイッチ81を介して入力されたACC機能に係る設定情報を含む各種情報を取得する機能を有する。
【0049】
ACC制御部63は、自車両の車速Vが設定車速の範囲内に維持された状態で、先行車両との車間距離を設定車間距離に保ちながら、アクセルペダルやブレーキペダルの操作を要することなしに、加速制御及び減速制御を含む追従制御を行う機能を有する。
【0050】
LSF制御部65は、例えば高速道路での渋滞走行時等の、自車両の車速Vが設定速度(例えば80Km/h)を下回る低速(例えば30Km/h)走行時に、先行車両との車間距離を設定車間距離に保つように、アクセルペダルやブレーキペダルの操作を要することなしに、加速制御及び減速制御を含む追従制御を行う機能を有する。
【0051】
ENG−ECU53は、エンジン制御部67を備える。
ENG−ECU53は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、ENG−ECU53が有する、エンジン制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
【0052】
エンジン制御部67は、アクセルペダルの踏込量等に応じてエンジン69の駆動を制御する機能を有する。詳しく述べると、エンジン制御部67は、エンジン69の吸気量を調整するスロットルバルブ(不図示)、燃料ガスを噴射するインジェクタ(不図示)、燃料の着火を行う点火プラグ(不図示)等を制御する。
【0053】
エンジン制御部67は、停止条件を充足すると、自車両の駆動源であるエンジン69を停止させるアイドリングストップ機能を有する。ここで、「停止条件」としては、例えば、自車両の車速Vが低車速領域にある(車速V<車速閾値Vis)こと、ブレーキペダルが踏み込まれていること、かつ、アクセルペダルが踏み込まれていないこと、という条件を採用すればよい。
エンジン制御部67は、エンジン69の停止制御を行う際のトリガとなる前記の停止条件を充足した場合に、原則として、エンジン69の駆動を停止させる運転意図があるとみなしてエンジン69の駆動を停止させる制御を行う。
【0054】
また、エンジン制御部67は、所定の再始動条件を充足するとエンジン69を再始動させる機能を有する。ここで、「再始動条件」とは、例えば、アクセルペダルが踏み込まれたという条件や、ブレーキペダルから足が離されたという条件を採用すればよい。
【0055】
ESB−ECU55は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、ESB−ECU55が有する、制動力制御機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
【0056】
ESB−ECU55は、マスタシリンダ(不図示)で発生した制動液圧に応じて、制動モータ71の駆動によってモータシリンダ装置(例えば、特開2015−110378号公報参照:不図示)を作動させることにより、制動液圧(二次液圧)を発生させる機能を有する。
【0057】
VSA−ECU57は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、VSA−ECU57が有する、ACC作動に基づく制動制御機能、車両姿勢安定化機能を含む各種機能の実行制御を行うように動作する。
【0058】
VSA−ECU57は、例えば、LSF制御部65の働きによる減速制御指令を受けて、ポンプモータ73を用いて加圧ポンプ(不図示)を駆動することにより、四輪の制動力を各車輪毎の目標液圧に応じた制動力に制御する機能を有する。VSA−ECU57は、ACC−ECU51と連携して、本発明の「減速制御部」を構成する。
【0059】
〔本発明の実施形態に係る車両制御装置11の動作〕
次に、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の動作について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の動作説明に供するフローチャート図である。
【0060】
図3に示すステップS11において、ACC−ECU51は、ACC操作スイッチ81のメインスイッチ91が押されたか否かに係る判定を行う。なお、メインスイッチ91は、ACC機能を起動する際に操作されるスイッチである。ACC機能が起動されると、ACC機能に係る設定情報の操作入力が可能になる。ACC機能に係る設定情報が適正に入力操作されると、原則として、ACC機能がアクティブ(後記のACC作動状態ACC_SETがオン)になる。
【0061】
ステップS11の判定の結果、メインスイッチ91が押された旨の判定が下された場合(ステップS11のYes)、ACC−ECU51は、処理の流れを次のステップS12へ進ませる。一方、ステップS11の判定の結果、メインスイッチ91が押されていない旨の判定が下された場合(ステップS11のNo)、ACC−ECU51は、処理の流れをリターン端子へ進ませる。
【0062】
ステップS12において、ACC−ECU51は、ACCセット要求があったか否かに係る判定を行う。なお、ACCセット要求があった旨の判定は、ACC操作スイッチ81のうちサークルメニュースイッチ93を用いて適正に入力操作されたACC機能に係る設定情報を取得した際に下される。ただし、ステップS12の段階では、取得したACC機能に係る設定情報に基づくACCのセット(作動)は禁止される。取得したACC機能に係る設定情報に基づくACCのセットを禁止するため、ACC_SET禁止フラグが用いられる。ACC_SET禁止フラグについて、詳しくは後記する。
【0063】
ステップS12の判定の結果、ACCセット要求があった旨の判定が下された場合(ステップS12のYes)、ACC−ECU51は、処理の流れを次のステップS13へ進ませる。一方、ステップS12の判定の結果、ACCセット要求がない旨の判定が下された場合(ステップS12のNo)、ACC−ECU51は、処理の流れをリターン端子へ進ませる。
【0064】
ステップS13において、ACC−ECU51よりACCセット要求があった旨の情報を受けたENG−ECU53は、自車両の車速Vが、所定の車速閾値Vis未満か否かに係る判定を行う。なお、所定の車速閾値Visとしては、自車両が停車予定であるとみなせる低車速値(例えば10Km/h程度)を適宜採用すればよい。
【0065】
ステップS13の判定の結果、自車両の車速Vが車速閾値Vis未満である旨の判定が下された場合(ステップS13のYes)、ENG−ECU53は、処理の流れを次のステップS14へ進ませる。一方、ステップS13の判定の結果、自車両の車速Vが車速閾値Vis未満でない旨の判定が下された場合(ステップS13のNo)、ENG−ECU53は、処理の流れをステップS16へとジャンプさせる。
【0066】
ステップS14において、ENG−ECU53のエンジン制御部67は、自車両の停車前にエンジン69の駆動を停止させる減速時IS処理を行う。なお、減速時IS処理とは、自車両の車速Vが車速閾値Vis未満に至る(低車速領域に入る)まで減速された場合に、自車両が停車予定であるとみなして、自車両の停車前にエンジン69の駆動を停止させる処理モードである。
【0067】
ステップS15において、ENG−ECU53より減速時IS処理を実行中である旨の情報を受けたACC−ECU51は、自車両が停車したか否かの判定を行う。
【0068】
ステップS15の判定の結果、自車両が停車した旨の判定が下された場合(ステップS15のYes)、ACC−ECU51は、処理の流れを次のステップS16へ進ませる。一方、ステップS15の判定の結果、自車両がまだ停車していない旨の判定が下された場合(ステップS15のNo)、ACC−ECU51は、処理の流れをステップS18へとジャンプさせる。
【0069】
ステップS16において、ACC−ECU51は、ACCセット要求を許可する。ACCセット要求の許可は、ACC_SET禁止フラグを禁止から許可に切り替えることで行われる。
【0070】
ステップS17において、ACC−ECU51は、ACC作動状態ACC_SETをオンする。これにより、ステップS12のACCセット要求時に取得したACC機能に係る設定情報に基づくACCがセット(作動)される。その後、ACC−ECU51は、処理の流れをリターン端子へ進ませる。
【0071】
ステップS18において、ACC−ECU51は、ACCセット要求を不許可とする。ACCセット要求の不許可は、ACC_SET禁止フラグを禁止状態に維持することで行われる。その後、ACC−ECU51は、処理の流れをリターン端子へ進ませる。
【0072】
〔本発明の実施形態に係る車両制御装置11の時系列動作〕
次に、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の時系列動作について、図4図5A図5Bを参照して説明する。
【0073】
図4は、適応クルーズコントロール(ACC)機能を有する車両制御装置11の動作説明に供する、車速V・エンジン回転速度ENG_Ne・IS制御状態・ACC作動状態ACC_SET・制動状態BRK・ACC_SET禁止フラグの経時変化をそれぞれ表すタイムチャート図である。
図5Aは、ACC_SET状態がオフである旨を乗員に報知する際に用いるイメージ図である。図5Bは、ACC_SET状態がオンである旨を乗員に報知する際に用いるイメージ図である。
【0074】
図4に示す時刻t0〜t1において、自車両の車速Vは、車速閾値Visを超える値から車速閾値Visを上限とする低車速領域に入るまで線形に漸減している。このとき、エンジン回転速度ENG_Neは、アイドリング回転速度を維持している。アイドリングストップ制御のオンオフ状態を表すIS制御状態はオフ状態にある。ACC作動状態ACC_SETは要求なしである。ブレーキペダルの踏み込み状態を表す制動状態BRKはオン状態(ブレーキペダルを踏み込んだ状態)にある。ACC作動状態ACC_SETのオンを禁止すべきか又は許可すべきかの制御状態を表すACC_SET禁止フラグは許可状態にある。
【0075】
時刻t1〜t3において、自車両の車速Vは、時刻t1で車速閾値Visを上限とする低車速領域に入った後も、時刻t3で車速ゼロ(停車状態)になるまで線形に漸減している。このとき、エンジン回転速度ENG_Neは、時刻t1の直後にゼロまで一気に降下し、その後、ゼロ状態(エンジン69の駆動停止状態)を維持している。IS制御状態は、時刻t1でオフ状態からオン状態へ遷移し、その後、オン状態を維持している。ACC作動状態ACC_SETは、時刻t1〜t2ではACCセット要求なしを維持した後、時刻t2でACCセット要求なしからACCセット要求ありへ遷移し(乗員のACC操作スイッチ81を用いた操作入力に従うACCセット要求の発生に基づく)、その後、ACCセット要求ありを維持している。制動状態BRKはオン状態(ブレーキペダルを踏み込んだ状態)にある。ACC_SET禁止フラグは、時刻t1で許可状態から禁止状態へ遷移し、その後、禁止状態を維持している。
【0076】
時刻t1〜t3において注目すべきことが2つある。
1つ目は、時刻t1において、IS制御状態がオフ状態からオン状態へ遷移するのと同期して、ACC_SET禁止フラグが許可状態から禁止状態へ遷移している点である。これは、アイドリングストップ制御がオン状態の、エンジン69が駆動停止している期間では、ACC機能による減速要求、及びエンジン69の再始動要求が重複して生じる事態を未然に回避するため、原則として、ACC作動状態ACC_SETのオンを禁止すべきことに基づく。
【0077】
2つ目は、ACC作動状態ACC_SETが時刻t2で要求なしから要求ありへ遷移したにもかかわらず、ACC作動状態ACC_SETのオンが禁止(ACCセット要求不許可)されている点である。こうした作用は、同時刻t1〜t3において、ACC_SET禁止フラグが禁止状態にあることで実現される。なお、時刻t1において、ACC_SET禁止フラグが許可状態から禁止状態へ遷移したのは、前記した通り、時刻t1でIS制御状態がオフ状態からオン状態へ遷移したことに基づく。
【0078】
ちなみに、時刻t2〜t3のACCセット要求不許可期間では、ACCセット要求不許可期間である旨が、ACCセット状態を表す車両の輪郭線を点線で描いて不明瞭にする形態(図5A参照)をもって、マルチインフォメーションディスプレイ85に表示される。これにより、ACC操作スイッチ81を用いてACCセット要求に係る操作入力を行った乗員に対し、ACCセット要求は受け付けらない旨を報知することができる。
【0079】
時刻t3〜t4において、自車両の車速Vは、車速ゼロ(停車状態)を維持している。このとき、エンジン回転速度ENG_Neもゼロ状態(エンジン69の駆動停止状態)を維持している。IS制御状態はオン状態を維持している。ACC作動状態ACC_SETは、時刻t3でACCセット要求ありからACCセットオンへ遷移し、その後、ACCセットオン状態を維持している。制動状態BRKはオン状態(ブレーキペダルを踏み込んだ状態)を維持している。ACC_SET禁止フラグは許可状態にある。
【0080】
時刻t3〜t4において注目すべきことは、時刻t3でACC作動状態ACC_SETがACCセット要求ありからACCセットオンへ遷移している点である。これは、時刻t3で自車両の車速がゼロ(停車状態)になったことで、ACC機能による減速要求、及びエンジン69の再始動要求が重複して生じる懸念が解消されたため、ACC_SET禁止フラグが禁止状態から許可状態へと遷移したことに基づく。
【0081】
時刻t4以降において、自車両の車速Vは、車速ゼロ(停車状態)から線形に漸増している。このとき、エンジン回転速度ENG_Neは、時刻t4の直後にアイドリング回転速度まで一気に立ち上がり、その後、アイドリング回転速度付近を維持している。IS制御状態は、時刻t4でオン状態からオフ状態へ遷移し、その後、オフ状態を維持している。ACC作動状態ACC_SETはオン状態を維持している。制動状態BRKは、時刻t4でオン状態(ブレーキペダルを踏み込んだ状態)からオフ状態(ブレーキペダルから足を離した状態)へ遷移し、その後、オフ状態を維持している。ACC_SET禁止フラグは、許可状態を維持している。
【0082】
時刻t4以降において付言すべきことは、時刻t4で制動状態BRKがオン状態からオフ状態へ遷移したこと(再始動条件の充足)をトリガとして、IS制御状態がオン状態からオフ状態へ遷移すると共に、エンジン69が再始動している点である。
なお、エンジン69の再始動条件を充足するケースとしては、制動状態BRKがオン状態からオフ状態へ遷移した(ブレーキペダルから足が離された)ケースのほか、アクセルペダルが踏まれたケース、ステアリングスイッチが操作されたケース、ステアリングホィールに所定値を超える操舵トルクがかかったケースなどの、自車両の発進意図を把握可能な種々のケースを適宜設定すればよい。
【0083】
ちなみに、時刻t3以降のACCセット要求許可期間では、ACCセット要求許可期間である旨が、ACCセット状態を表す車両の輪郭線を実線で描いて明瞭にする形態(図5B参照)をもって、マルチインフォメーションディスプレイ85に表示される。これにより、ACC操作スイッチ81を用いてACCセット要求に係る操作入力を行った乗員に対し、ACCセット要求は受け付けられている旨を報知することができる。
【0084】
〔本発明の実施形態に係る車両制御装置11が奏する作用効果〕
次に、本発明の実施形態に係る車両制御装置11が奏する作用効果について説明する。
第1の観点に基づく車両制御装置11は、自車両と自車両の前方を走行する他車両との車間距離を用いて自車両の減速制御を行うACC−ECU51及びVSA−ECU57(減速制御部)と、自車両の車速Vが所定の低車速領域に入る旨を含む停止条件の充足によって自車両の駆動源であるエンジン69の駆動を停止させるアイドリングストップ制御を行う一方、所定の再始動条件の充足によってエンジン69を再始動させる再始動制御を行うエンジン制御部67と、を備え、減速制御を実行する際に用いる電源43と、再始動制御を実行する際に用いる電源43とは、自車両に搭載された一の電源43を共用しており、ACC−ECU51及びVSA−ECU57(減速制御部)は、アイドリングストップ制御の実行中では前記車間距離を用いた自車両の減速制御の実行を禁止する構成を採用することとした。
【0085】
前提として、減速制御による減速要求及びエンジン69の再始動要求のいずれもが、その要求に応えるのに比較的大電力を要する。そのため、減速制御を実行する際に用いる電源43と、再始動制御を実行する際に用いる電源43として、自車両に搭載された一の電源43を共用している場合であって、減速要求及び再始動要求が重複して生じた場合に、電源43の容量が不足していずれか一方の要求に応えられずに、乗員に違和感を抱かせるおそれがあった。
【0086】
この点、第1の観点に基づく車両制御装置11では、ACC−ECU51及びVSA−ECU57(減速制御部)は、アイドリングストップ制御の実行中では前記車間距離を用いた自車両の減速制御の実行を禁止するため、エンジン69の駆動停止時に、減速制御が行われることはない。そのため、減速制御による減速要求及びエンジン69の再始動要求が重複して生じることはない。
【0087】
第1の観点に基づく車両制御装置11によれば、減速制御による減速要求及びエンジンの再始動要求が重複して生じる事態を未然に回避して、乗員に違和感を抱かせることなく円滑な車両制御を実現することができる。また、電源43に対する負荷の総和を抑制することができるため、電源43の容量を小さくする(電源43の軽量化を図る)という副次的な効果を期待することもできる。
【0088】
また、第2の観点に基づく車両制御装置11は、第1の観点に基づく車両制御装置11であって、ACC−ECU51及びVSA−ECU57(減速制御部)は、自車両が停車状態になった場合、前記車間距離を用いた自車両の減速制御の実行を許可する構成を採用してもよい。
【0089】
第2の観点に基づく車両制御装置11では、ACC−ECU51及びVSA−ECU57(減速制御部)は、自車両が停車状態になった場合に、前記車間距離を用いた自車両の減速制御の実行を許可する。仮にアイドリングストップ制御の実行中(エンジン69は駆動停止)であっても、自車両が停車状態になった後では、もはや減速制御による減速要求が生じることはない。そのため、自車両が停車状態になった後に、仮にアイドリングストップ制御を実行することでエンジン69の再始動要求が生じたとしても、減速制御による減速要求が重複して生じることはない。
【0090】
第2の観点に基づく車両制御装置11によれば、第1の観点に基づく車両制御装置11の効果に加えて、燃料消費量を低減する効果を期待することができる。
【0091】
また、第3の観点に基づく車両制御装置11は、第1の観点に基づく車両制御装置11であって、ACC−ECU51及びVSA−ECU57(減速制御部)は、予め設定される要求車間距離と、自車両と自車両の前方を走行する他車両との実車間距離との差分を用いて自車両の減速制御を行い、エンジン制御部67は、要求車間距離と実車間距離との差分を用いて自車両の加速制御をさらに行い、ACC−ECU51及びVSA−ECU57(減速制御部)は、アイドリングストップ制御の実行中では前記差分を用いた減速制御及び加速制御を含む追従制御の実行を禁止する構成を採用してもよい。
【0092】
第3の観点に基づく車両制御装置11によれば、ACC−ECU51及びVSA−ECU57(減速制御部)は、アイドリングストップ制御の実行中では前記差分を用いた減速制御及び加速制御を含むACC制御(追従制御)の実行を禁止するため、ACC制御(追従制御)による減速要求及びエンジンの再始動要求が重複して生じる事態を未然に回避して、乗員に違和感を抱かせることなく円滑な車両制御を実現することができる。また、電源43に対する負荷の総和を抑制することができるため、電源43の容量を小さくする(電源43の軽量化を図る)という副次的な効果を期待することもできる。
【0093】
第4の観点に基づく車両制御装置11は、予め設定される要求車間距離と、自車両と自車両の前方を走行する他車両との実車間距離との差分を用いて自車両の減速制御を行うVSA−ECU(減速制御部)57と、自車両の車速が所定の低車速領域に入る旨を含む停止条件の充足によって自車両の駆動源であるエンジン69の駆動を停止させるアイドリングストップ制御を行う一方、所定の再始動条件の充足によってエンジン69を再始動させる再始動制御を行うエンジン制御部67と、を備え、減速制御を実行する際に用いる電源43と、再始動制御を実行する際に用いる電源43とは、自車両に搭載された一の電源43を共用しており、ACC−ECU51及びVSA−ECU57(減速制御部)は、アイドリングストップ制御の実行中では前記差分を用いた減速制御及び加速制御を含む追従制御の実行を禁止する構成を採用してもよい。
【0094】
第4の観点に基づく車両制御装置11では、ACC−ECU51及びVSA−ECU57(減速制御部)は、アイドリングストップ制御の実行中では前記差分を用いた減速制御及び加速制御を含む追従制御の実行を禁止する。
【0095】
第4の観点に基づく車両制御装置11によれば、アイドリングストップ制御の実行中では減速制御及び加速制御を含むACC制御(追従制御)の実行を禁止するため、ACC制御(追従制御)による減速要求及びエンジンの再始動要求が重複して生じる事態を未然に回避して、乗員に違和感を抱かせることなく円滑な車両制御を実現することができる。
また、電源43に対する負荷の総和を抑制することができるため、電源43の容量を小さくする(電源43の軽量化を図る)という副次的な効果を期待することもできる。
【0096】
また、第5の観点に基づく車両は、第1〜第4のいずれかの観点に基づく車両制御装置11を備える。
【0097】
第5の観点に基づく車両によれば、減速制御による減速要求及びエンジンの再始動要求が重複して生じる事態を未然に回避して、乗員に違和感を抱かせることなく円滑な車両制御を実現可能な車両を提供することができる。
【0098】
〔その他の実施形態〕
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0099】
例えば、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の動作説明(図3参照)において、ACC−ECU51は、ACC操作スイッチ81のメインスイッチ91(ACC機能を起動する際に操作される)が押されたか否かに係る判定を行い、メインスイッチ91が押される(ACC機能が起動される)と、ACC機能に係る設定情報の操作入力が可能になる態様を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0100】
ACC操作スイッチ81のメインスイッチ91は、これを省略してもよい。これに併せて、ステップS11の処理は省略される。この場合、ACC操作スイッチ81のうちサークルメニュースイッチ93の適正な操作入力(ACCセット要求)に従うACC機能に係る設定情報をACC−ECU51が取得した際に、メインスイッチ91が押されたとみなす構成を採用すればよい。
【0101】
また、ACC操作スイッチ81のメインスイッチ91が、減速時IS処理(図3のステップS14参照)の開始前ではオンしていた(ACC機能が起動していた)ケースにおいて、ACC作動状態ACC_SETのオンを禁止するため、減速時IS処理の開始に伴ってメインスイッチ91を強制的にオフさせる制御を行う構成を採用してもよい。
【0102】
また、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の説明において、ACC−ECU51に対して、ACC作動状態ACC_SETのオンを許可又は禁止する制御信号(ACC_SET禁止フラグ)を生成する機能を割り当てる例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0103】
本発明は、ACC−ECU51に代えて、車両制御装置11それ自体に対して、ACC作動状態ACC_SETのオンを許可又は禁止する制御信号(ACC_SET禁止フラグ)を生成する機能を割り当てる構成を採用してもよい。この場合、車両制御装置11が、本発明の「減速制御部」に相当することになる。
【0104】
また、本発明の実施形態に係る車両制御装置11の説明において、VSA−ECU57に対して、自車両と自車両の前方を走行する他車両との車間距離を用いて自車両の減速制御を行う機能を割り当てる例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0105】
本発明は、VSA−ECU57に代えて、車両制御装置11それ自体に対して、自車両と自車両の前方を走行する他車両との車間距離を用いて自車両の減速制御を行う機能を割り当てる構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0106】
11 車両制御装置
43 電源
51 ACC−ECU(減速制御部)
57 VSA−ECU(減速制御部)
67 エンジン制御部
69 エンジン
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B