(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978384
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ用ロータの製造金型装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20211125BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20211125BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20211125BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20211125BHJP
H02K 15/12 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/14
H02K15/03 Z
H02K15/02 K
H02K15/12 E
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-139271(P2018-139271)
(22)【出願日】2018年7月25日
(65)【公開番号】特開2020-15215(P2020-15215A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正樹
【審査官】
▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−039027(JP,A)
【文献】
特開平06−245472(JP,A)
【文献】
特開平04−071351(JP,A)
【文献】
実開昭62−188969(JP,U)
【文献】
特開平11−226992(JP,A)
【文献】
特開昭62−025843(JP,A)
【文献】
特開昭63−099751(JP,A)
【文献】
特開2008−044119(JP,A)
【文献】
特開2011−110754(JP,A)
【文献】
特開平01−144347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
B29C 33/00 − 33/76
H02K 1/17
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のマグネット(5)が樹脂製の接合部材(6)を介して回転軸(7)に同軸にかつ相対回転不能に連結されて成るブラシレスモータ用ロータの前記接合部材(6)をキャビティ(8)への樹脂の充填で形成するようにしたブラシレスモータ用ロータの製造金型装置において、前記回転軸(7)の一端側を嵌合、保持する第1保持孔(9)を有しつつ前記マグネット(5)の一端部に当接される固定盤(10)と、この固定盤(10)に対する近接、離反を可能とした可動盤(11)と、前記回転軸(7)の他端側を嵌合、保持する第2保持孔(13)を有するとともに前記マグネット(5)の他端部に当接することで前記マグネット(5)を前記固定盤(10)との間に挟持することを可能としつつ前記回転軸(7)の軸線に沿う方向での移動を可能として前記可動盤(11)に支持されて前記マグネット(5)に近接する側に弾発付勢される軸方向支持駒(14)と、前記マグネット(5)をすきま嵌めさせる中空円筒部(15a)を少なくとも有して前記可動盤(11)に固定されるエンジニアリング・プラスチック製の緩衝部材(15)とを備えることを特徴とするブラシレスモータ用ロータの製造金型装置。
【請求項2】
前記緩衝部材(15)が、前記中空円筒部(15a)と、当該中空円筒部(15a)から半径方向外方に張り出すフランジ部(15b)とを一体に有し、前記可動盤(11)に着脱可能に固定される入れ子(28)と、前記可動盤(11)との間に前記フランジ部(15b)が挟持されることを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータ用ロータの製造金型装置。
【請求項3】
前記緩衝部材(15)の前記中空円筒部(15a)内に挿脱可能に挿入される前記軸方向支持駒(14)の一端部が、前記中空円筒部(15a)内で前記マグネット(5)の他端部に当接されることを特徴とする請求項1または2に記載のブラシレスモータ用ロータの製造金型装置。
【請求項4】
前記固定盤(10)に、前記マグネット(5)の前記固定盤(10)側の端面に臨んで開口する複数の樹脂射出ゲート(37)が前記第1保持孔(9)の周方向に間隔をあけて設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブラシレスモータ用ロータの製造金型装置。
【請求項5】
前記樹脂射出ゲート(37)が前記第1保持孔(9)の周方向に120度ずつの間隔をあけて前記固定盤(10)に設けられることを特徴とする請求項4に記載のブラシレスモータ用ロータの製造金型装置。
【請求項6】
前記軸方向支持駒(14)の外周の周方向に等間隔をあけた3箇所に、前記可動盤(11)との間に第1ベント用通路(38)を形成する平面状の第1切欠き部(39)が設けられることを特徴とする請求項4または5に記載のブラシレスモータ用ロータの製造金型装置。
【請求項7】
前記軸方向支持駒(14)の前記第2保持孔(13)内に、前記回転軸(7)の前記可動盤(11)側の端部に当接する当接ピン(25)が嵌入、固定され、前記固定盤(10)の前記第1保持孔(9)内に、前記回転軸(7)の前記固定盤(10)側の端部に当接する可動ピン(26)が、前記回転軸(7)側に向けて弾発付勢されつつ嵌合され、前記当接ピン(25)の外周の周方向に等間隔をあけた3箇所に、前記第2保持孔(13)の内周面との間に第2ベント用通路(40)を形成する平面状の第2切欠き部(41)が設けられることを特徴とする請求項6に記載のブラシレスモータ用ロータの製造金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のマグネットが樹脂製の接合部材を介して回転軸に同軸にかつ相対回転不能に連結されて成るブラシレスモータ用ロータの前記接合部材をキャビティへの樹脂の充填で形成するようにしたブラシレスモータ用ロータの製造金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接合部材を射出成形する際の溶融樹脂によってマグネットの周壁にその内側から外側に向かって加わる圧力を打ち消すために、金型およびマグネット間にゴムリングを介装し、そのゴムリングを軸方向に圧縮することでマグネットに圧縮応力を予め付与するようにしたものが、特許文献1で知られている。また溶融樹脂の射出圧力でマグネットが破損するのを防止するためにマグネットを金型に圧入するようにしたものが、特許文献2で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3ー18252号公報
【特許文献2】特開平6ー245472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが上記特許文献1および特許文献2で開示されるように、接合部材の成形時にマグネットに予め圧縮応力を付与するものでは、その圧縮応力によってマグネットにクラックが生じる場合があり、そのようなクラックが生じたままのマグネットに着磁処理を施すとマグネットが破断してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、接合部材成形時の溶融樹脂からの圧力や金型側でのマグネットの保持によってマグネットの損傷が生じるのを防止することができるようにしたブラシレスモータ用ロータの製造金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、円筒状のマグネットが樹脂製の接合部材を介して回転軸に同軸にかつ相対回転不能に連結されて成るブラシレスモータ用ロータの前記接合部材をキャビティへの樹脂の充填で形成するようにしたブラシレスモータ用ロータの製造金型装置において、前記回転軸の一端側を嵌合、保持する第1保持孔を有しつつ前記マグネットの一端部に当接される固定盤と、この固定盤に対する近接、離反を可能とした可動盤と、前記回転軸の他端側を嵌合、保持する第2保持孔を有するとともに前記マグネットの他端部に当接することで前記マグネットを前記固定盤との間に挟持することを可能としつつ前記回転軸の軸線に沿う方向での移動を可能として前記可動盤に支持されて前記マグネットに近接する側に弾発付勢される軸方向支持駒と、前記マグネットをすきま嵌めさせる中空円筒部を少なくとも有して前記可動盤に固定されるエンジニアリング・プラスチック製の緩衝部材とを備えることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記緩衝部材が、前記中空円筒部と、当該中空円筒部から半径方向外方に張り出すフランジ部とを一体に有し、前記可動盤に着脱可能に固定される入れ子と、前記可動盤との間に前記フランジ部が挟持されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記緩衝部材の前記中空円筒部内に挿脱可能に挿入される前記軸方向支持駒の一端部が、前記中空円筒部内で前記マグネットの他端部に当接されることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第1〜第3の特徴の構成のいずれかに加えて、前記固定盤に、前記マグネットの前記固定盤側の端面に臨んで開口する複数の樹脂射出ゲートが前記第1保持孔の周方向に間隔をあけて設けられることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第4の特徴の構成に加えて、前記樹脂射出ゲートが前記第1保持孔の周方向に120度ずつの間隔をあけて前記固定盤に設けられることを第5の特徴とする。
【0011】
本発明は、第4または第5の特徴の構成に加えて、前記軸方向支持駒の外周の周方向に等間隔をあけた3箇所に、前記可動盤との間に第1ベント用通路を形成する平面状の第1切欠き部が設けられることを第6の特徴とする。
【0012】
さらに本発明は、第6の特徴の構成に加えて、前記軸方向支持駒の前記第2保持孔内に、前記回転軸の前記可動盤側の端部に当接する当接ピンが嵌入、固定され、前記固定盤の前記第1保持孔内に、前記回転軸の前記固定盤側の端部に当接する可動ピンが、前記回転軸側に向けて弾発付勢されつつ嵌合され、前記当接ピンの外周の周方向に等間隔をあけた3箇所に、前記第2保持孔の内周面との間に第2ベント用通路を形成する平面状の第2切欠き部が設けられることを第7の特徴とする。
【0013】
なお実施の形態の第1の可動盤11が本発明の可動盤に対応する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の特徴の構成によれば、マグネットは、固定盤と、固定盤に対して近接、離反移動可能な可動盤に回転軸の軸線に沿う方向での移動を可能として支持されて前記マグネットに近接する側に弾発付勢される軸方向支持駒とで軸方向両側から挟持され、可動盤に固定されるエンジニアリング・プラスチック製の緩衝部材の中空円筒部にすきま嵌めされるので、マグネットが、当該マグネットよりも柔軟でゴム材よりも寸法安定性に優れたエンジニアリング・プラスチック製の緩衝部材に接触することになり、接合部材成形時の溶融樹脂からの圧力や金型側からのマグネットの保持によってマグネットの損傷が生じるのを防止することができる。
【0015】
また本発明の第2の特徴によれば、緩衝部材が有するフランジ部が、可動盤に着脱可能に固定される入れ子と、可動盤との間に挟持されるので、緩衝部材を可動盤に取付ける際に、マグネットを囲む中空円筒部に変形が生じてマグネットに押圧力が作用しないようにすることができる。しかも緩衝部材が金型の長期使用過程で摩耗した場合には、容易に新品に交換することができる。
【0016】
本発明の第3の特徴によれば、軸方向支持駒が緩衝部材の中空円筒部内でマグネットの他端部に当接するので、軸方向支持駒が緩衝部材に押圧力を及ぼすことなくマグネットの他端部に当接して保持することが可能であり、マグネットに損傷が生じることがないようにしてマグネットを確実に保持することができる。
【0017】
本発明の第4の特徴によれば、マグネットの固定盤側の端面に臨んで開口する複数の樹脂射出ゲートが、回転軸の一端側を嵌入支持するようにして固定盤に設けられる第1保持孔の周方向に間隔をあけた複数箇所で固定盤に設けられるので、高温の溶融樹脂が緩衝部材に接触することを回避することができる。
【0018】
本発明の第5の特徴によれば、樹脂射出ゲートが第1保持孔の周方向に120度ずつの間隔をあけて配置されるので、射出位置を周方向にバランスよく配置することで、溶融樹脂の圧力によってマグネットの軸線が傾くことがないようにすることができる。
【0019】
本発明の第6の特徴によれば、軸方向支持駒の外周の周方向に等間隔をあけた3箇所に平面状の第1切欠き部が設けられることにより、樹脂射出ゲートと反対側でキャビティに通じる第1ベント用通路を容易に形成することができる。
【0020】
本発明の第7の特徴によれば、回転軸の可動盤側の端部に当接しつつ軸方向支持駒内に嵌入、固定される当接ピンと、回転軸の固定盤側の端部に当接するようにして固定盤の第1保持孔に嵌合されるとともに回転軸側に向けて弾発付勢される可動ピンとの間に、マグネットが軸方向両側から挟持されるので、回転軸の軸方向寸法公差を吸収して回転軸を支持することが可能となる。また可動盤に支持される軸方向支持駒に当接ピンが嵌入、固定されるので、固定盤側から射出される溶融樹脂の圧力で回転軸の軸線が傾くことがないようにすることができる。しかも当接ピンの外周の周方向に等間隔をあけた3箇所に、前記第2保持孔の内周面との間に第2ベント用通路を形成する平面と、回転軸の固定盤側の端部に当接するとともに回転軸側に向けて弾発付勢される可動ピンとの間に当接ピンの外周の周方向に等間隔をあけた3箇所に平面状の第1切欠き部が設けられることにより、樹脂射出ゲートと反対側でキャビティに通じる第2ベント用通路を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ブラシレスモータ用ロータの製造金型装置の簡略化した縦断面図であって
図2の1−1線に沿う縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について添付の
図1〜
図3を参照しながら説明すると、先ず
図1において、この製造金型装置は、円筒状に焼結されたマグネット5が樹脂製の接合部材6を介して回転軸7に同軸にかつ相対回転不能に連結されて成るブラシレスモータ用ロータの前記接合部材6をキャビティ8への樹脂の充填で形成するものであり、前記回転軸7の一端側を嵌合、保持する第1保持孔9を有しつつ前記マグネット5の一端部に当接される固定盤10と、この固定盤10に対する近接、離反を可能とした第1の可動盤11と、前記回転軸7の他端側を嵌合、保持する第2保持孔13を有するとともに前記回転軸7の軸線に沿う方向での移動を可能として前記第1の可動盤11に支持される軸方向支持駒14と、前記マグネット5をすきま嵌めさせる中空円筒部15aを少なくとも有して前記第1の可動盤11に固定される緩衝部材15とを備え、この実施の形態では、前記固定盤10および前記第1の可動盤11に対して前記回転軸7の軸線に沿う方向での相対移動を可能とした第2の可動盤12が、前記第1の可動盤11を前記固定盤10との間に挟む位置に配置される。また前記接合部材6を形成するための前記キャビティ8は、前記固定盤10、前記径方向支持駒14、前記マグネット5の内周および前記回転軸7の外周で形成される。
【0023】
前記第1の可動盤11には、前記回転軸7と平行な軸線を有して前記第2の可動盤12に一端部が固設されるガイドロッド16が挿通されており、このガイドロッド16の他端部に固設されるストッパ17が前記第1の可動盤11に前記第2の可動盤12とは反対側から当接可能である。しかも第1の可動盤11および第2の可動盤12間には第1コイルばね18が設けられており、第1の可動盤11は、前記ストッパ17に当接することで第2の可動盤12から離反する側への移動端が規制されるようにして、前記回転軸7の軸線に沿う方向で前記固定盤10および前記第2の可動盤12に対する相対移動を可能としつつ第2の可動盤12に浮動支持される。
【0024】
前記軸方向支持駒14は、その一端部が前記マグネット5の他端部に当接することで前記マグネット5を前記固定盤10との間に挟持することを可能とするようにして円筒状に形成される。前記第1の可動盤11には前記軸方向支持駒14を挿通、支持する支持孔19が設けられ、前記第2の可動盤12には、前記支持孔19に同軸に連なる挿通孔20と、前記支持孔19とは反対側で前記挿通孔20に同軸に連なる有底孔21とが設けられ、前記挿通孔20は前記支持孔19よりも大径に形成され、前記挿通孔20よりも大径の前記有底孔21および前記挿通孔20間には第1環状段部22が形成される。
【0025】
前記軸方向支持駒14の他端側は、前記挿通孔20および前記有底孔21に挿入されており、前記軸方向支持駒14の他端部には、前記第1環状段部22に前記固定盤10とは反対側から当接可能な鍔部14aが設けられる。また前記軸方向支持駒14および第2の可動盤12間には第2コイルばね23が設けられ、この第2コイルばね23の弾発力で前記軸方向支持駒14は前記マグネット5に近接する側に弾発付勢される。
【0026】
前記軸方向支持駒14が有する前記第2保持孔13内には、前記回転軸7の前記第1の可動盤11側の端部に当接する当接ピン25が嵌入、固定される。また前記固定盤10に設けられた前記第1保持孔9内には、前記回転軸7の前記固定盤10側の端部に当接する可動ピン26が嵌合され、前記固定盤10および前記可動ピン26間には、当該可動ピン26を前記回転軸7側に向けて弾発付勢する第3コイルばね27が設けられる。
【0027】
図2を併せて参照して、前記緩衝部材15は、前記中空円筒部15aと、当該中空円筒部15aから半径方向外方に張り出すフランジ部15bとを一体に有しており、エンジニアリング・プラスチックにより形成される。しかもエンジニアリング・プラスチックとしてはポリアミド系(PO)またはポリアセタール系(POM)であることが望ましい。
【0028】
前記緩衝部材15は、当該緩衝部材15の前記フランジ部15bが、前記第1の可動盤10に着脱可能に固定される入れ子28と、前記第1の可動盤10との間に挟持されることによって前記第1の可動盤11に固定されるものであり、前記入れ子28は、複数個たとえば4個のボルト29で前記第1の可動盤11に締結される。
【0029】
前記緩衝部材15は、この実施の形態では、前記中空円筒部15aの軸方向中間部から前記フランジ部15bが半径方向外方に張り出すように形成されており、前記入れ子28は、前記緩衝部材15の前記中空円筒部15aのうち前記フランジ部15bよりも前記固定盤10側の端部を嵌入する円形の第1嵌入孔30を中央部に有しつつ、四角形の平板状に形成される。
【0030】
前記第1の可動盤11には、前記入れ子28を収容するようにして四角形に形成される入れ子収容孔31が前記固定盤10側に開放して設けられ、この入れ子収容孔31と、前記支持孔19との間で前記第1の可動盤11には前記入れ子収容孔31側から順に、前記フランジ部15bを収容する円形のフランジ部収容孔32と、前記中空円筒部15aのうち前記フランジ部15bよりも第2の可動盤12側の部分を嵌入する第2嵌入孔33とが同軸に設けられ、前記フランジ部収容孔32および前記第2嵌入孔33間には前記フランジ部15bを受ける第2環状段部34が形成され、前記第2嵌入孔33および前記支持孔19間には前記中空円筒部15aの前記固定盤10とは反対側の端部を受ける第3環状段部35が形成され、前記入れ子収容孔31および前記フランジ部収容孔32間には前記入れ子28を受ける第4環状段部36が形成される。
【0031】
ところで前記中空円筒部15aは、前記マグネット5よりも軸方向に長く形成されており、前記中空円筒部15aの内径よりも小径に形成された前記軸方向支持駒14の一端部は、前記中空円筒部15a内で前記回転軸7の他端側を前記第2保持孔13内に受け入れつつ前記マグネット5の他端部に当接するようにして前記中空円筒部15a内に挿入される。
【0032】
前記固定盤10には、前記マグネット5の前記固定盤10側の端面に臨んで開口する複数の樹脂射出ゲート37が前記第1保持孔9の周方向に間隔をあけて設けられており、この実施の形態では、前記第1保持孔9の周方向に120度ずつの間隔をあけた位置で前記固定盤10に前記樹脂射出ゲート37が設けられる。
【0033】
図3において、前記軸方向支持駒14の外周の周方向に等間隔をあけた3箇所には、前記第1の可動盤11との間に第1ベント用通路38を形成する平面状の第1切欠き部39が設けられる。また前記当接ピン25の外周の周方向に等間隔をあけた3箇所には、前記第2保持孔13の内周面との間に第2ベント用通路40を形成する平面状の第2切欠き部41が設けられる。
【0034】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、ブラシレスモータ用ロータを製造するための製造金型装置が、前記回転軸7の一端側を嵌合、保持する第1保持孔9を有しつつ前記マグネット5の一端部に当接される固定盤10と、この固定盤10に対する近接、離反を可能とした第1の可動盤11と、前記回転軸7の他端側を嵌合、保持する第2保持孔13を有するとともに前記マグネット5の他端部に当接することで前記マグネット5を前記固定盤10との間に挟持することを可能としつつ前記回転軸7の軸線に沿う方向での移動を可能として前記第1の可動盤11に支持されて前記マグネット5に近接する側に弾発付勢される軸方向支持駒14と、前記マグネット5をすきま嵌めさせる中空円筒部15aを少なくとも有して前記第1の可動盤11に固定されるエンジニアリング・プラスチック製の緩衝部材15とを備えるので、マグネット5が、当該マグネット5よりも柔軟でゴム材よりも寸法安定性に優れたエンジニアリング・プラスチック製の緩衝部材15に接触することになり、接合部材6の成形時の溶融樹脂からの圧力や金型側からのマグネット5の保持によってマグネット5の損傷が生じるのを防止することができる。
【0035】
また前記緩衝部材15が、前記中空円筒部15aと、当該中空円筒部15aから半径方向外方に張り出すフランジ部15bとを一体に有し、前記第1の可動盤11に着脱可能に固定される入れ子28と、前記第1の可動盤11との間に前記フランジ部15bが挟持されるので、緩衝部材15を第1の可動盤11に取付ける際に、マグネット5を囲む中空円筒部15aに変形が生じてマグネット5に押圧力が作用しないようにすることができる。しかも緩衝部材15が金型の長期使用過程で摩耗した場合には、容易に新品に交換することができる。
【0036】
また前記緩衝部材15の前記中空円筒部15a内に挿脱可能に挿入される前記軸方向支持駒14の一端部が、前記中空円筒部15a内で前記マグネット5の他端部に当接されるので、軸方向支持駒14が緩衝部材15に押圧力を及ぼすことなくマグネット5の他端部に当接して保持することが可能であり、マグネット5に損傷が生じることがないようにしてマグネット5を確実に保持することができる。
【0037】
また前記固定盤10に、前記マグネット5の前記固定盤10側の端面に臨んで開口する複数の樹脂射出ゲート37が前記第1保持孔9の周方向に間隔をあけて設けられるので、高温の溶融樹脂が緩衝部材15に接触することを回避することができる。しかも樹脂射出ゲート37が第1保持孔9の周方向に120度ずつの間隔をあけて配置されることにより、射出位置を周方向にバランスよく配置することで、溶融樹脂の圧力によってマグネット5の軸線が傾くことがないようにすることができる。
【0038】
また前記軸方向支持駒14の外周の周方向に等間隔をあけた3箇所に、前記第1の可動盤11との間に第1ベント用通路38を形成する平面状の第1切欠き部39が設けられるので、樹脂射出ゲート38と反対側でキャビティ8に通じる第1ベント用通路38を容易に形成することができる。
【0039】
また前記軸方向支持駒14の前記第2保持孔13内に、前記回転軸7の前記第1の可動盤11側の端部に当接する当接ピン25が嵌入、固定され、前記固定盤10の前記第1保持孔9内に、前記回転軸7の前記固定盤10側の端部に当接する可動ピン26が、前記回転軸7側に向けて弾発付勢されつつ嵌合されるので、回転軸7の軸方向寸法公差を吸収して回転軸を支持することが可能となり、第1の可動盤11に支持される軸方向支持駒14に当接ピン25が嵌入、固定されることによって固定盤10側から射出される溶融樹脂の圧力で回転軸7の軸線が傾くことがないようにすることができる。
【0040】
さらに前記当接ピン25の外周の周方向に等間隔をあけた3箇所に、前記第2保持孔13の内周面との間に第2ベント用通路40を形成する平面状の第2切欠き部41が設けられるので、樹脂射出ゲート37と反対側でキャビティ8に通じる第2ベント用通路40を容易に形成することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
5・・・マグネット
6・・・接合部材
7・・・回転軸
8・・・キャビティ
9・・・第1保持孔
10・・・固定盤
11・・・可動盤
13・・・第2保持孔
14・・・軸方向支持駒
15・・・緩衝部材
15a・・・中空円筒部
15b・・・フランジ部
25・・・当接ピン
26・・・可動ピン
28・・・入れ子
37・・・樹脂射出ゲート
38・・・第1ベント用通路
39・・・第1切欠き部
40・・・第2ベント用通路
41・・・第2切欠き部