特許第6978416号(P6978416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978416
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】気流分布を改善する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20211125BHJP
   A61F 2/04 20130101ALI20211125BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20211125BHJP
【FI】
   A61M16/04 Z
   A61F2/04
   A61F2/82
【請求項の数】21
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-527970(P2018-527970)
(86)(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公表番号】特表2018-535778(P2018-535778A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】US2016064181
(87)【国際公開番号】WO2017095901
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年9月6日
(31)【優先権主張番号】62/261,300
(32)【優先日】2015年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510102122
【氏名又は名称】マテリアライズ・ナムローゼ・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MATERIALISE NV
(73)【特許権者】
【識別番号】518182612
【氏名又は名称】フルイッダ ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヴィークマンス,バート
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルボルグス,コーン
(72)【発明者】
【氏名】デ バカー,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォス,ウィム
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−527921(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0324094(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/125059(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/111207(WO,A1)
【文献】 特表2005−505355(JP,A)
【文献】 特開2006−314816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
A61F 2/04
A61F 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の呼吸器系における気流分布を制御する方法であって、
上記呼吸器系の少なくとも一部を通る気流の第一のコンピュータモデルを生成する工程と、
上記第一のコンピュータモデルに基づいて、肺の、換気が低下した少なくとも一つの患部である第一の患部を識別する工程と、
上記第一のコンピュータモデルに基づいて、上記肺の、換気が良好な少なくとも一つの健康な部分である第一の健康な部分を識別する工程と、
上記第一のコンピュータモデルおよび上記第一の健康な部分に基づいて、上記第一の健康な部分への少なくとも一つの気道流路を選択する工程と、
上記第一の健康な部分への上記少なくとも一つの気道流路に、上記第一の健康な部分への上記少なくとも一つの気道流路を通る気流を減少させるために上記少なくとも一つの気道流路よりも狭い通路を有するように構成されており、その結果として上記第一の患部への気流を増加させる、少なくとも一つの装置を配置する工程と、
上記第一の健康な部分への上記少なくとも一つの気道流路の気流を減少させ、その結果として上記第一の患部への気流を増加させるために、上記少なくとも一つの装置の上記通路が上記少なくとも一つの気道流路よりも狭い期間を提供する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記呼吸器系の少なくとも一部を通る気流の第一のコンピュータモデルを生成する工程は、
(a)上記呼吸器系の上記少なくとも一部の3次元画像を取得する工程と、
(b)上記呼吸器系の少なくとも一部を通る上記気流をモデル化する工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記呼吸器系の少なくとも一部を通る上記気流をモデル化する工程は、
気道の構造的挙動をモデル化する工程と、
上記構造的挙動と上記気流との相互作用をモデル化する工程とをさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記第一のコンピュータモデルは、気流、換気、および肺葉における換気のうちの少なくとも1つ以上を判定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記装置は上記選択された気道流路を遮るまたは狭めるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記第一のコンピュータモデルと上記肺の上記第一の患部および第一の健康な部分とのうちの少なくともいずれかに基づいて、上記選択された気道流路の望ましい狭小化度を判定する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記装置は、本体構造および機能素子を備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記本体構造は、上記機能素子と取り外し可能に係合する1つ以上のドッキング機構を有する内面を備えるものであって、上記ドッキング機構は上記機能素子と係合して上記本体構造の内部で上記機能素子を安定した状態に保持するように構成されていることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記内面は、円形、楕円形、および多角形のうちの1つであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記機能素子は、狭小化度を定める内径を有することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
上記装置が第二の内径を有する第二の機能素子をさらに備え、上記第一の機能素子および上記第二の機能素子は上記装置から取り外し可能であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記装置は設定変更可能な装置であって、上記機能素子は、開放状態と狭小状態との相互間で遷移するように構成されていることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
上記開放状態と上記狭小状態との相互間での遷移は、外部刺激に応じるものであり、上記解放状態は、少なくとも一つの気道流路の気流を維持するように構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記機能素子を開放状態と狭小状態とのうちの1つへ遷移させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
上記機能素子が、上記吸入薬を上記肺の上記第一の患部の方向へ向けるように構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
上記本体構造は、気道流路壁の患者固有の解剖学的構造部分に対応する1つ以上の患者固有の生体構造係合面または接点を有する外面を備えることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
上記第一のコンピュータモデルおよび上記選択された気道流路に基づいて、上記選択された気道流路における上記気流を変更するように上記機能素子を設計する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
上記装置の少なくとも一部を製造する工程をさらに含む方法であって、上記装置の少なくとも一部の製造には直接積層造形および間接積層造形のうちの少なくともいずれかを用いた上記装置の製造が含まれることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
様々な形状および/またはサイズの装置のライブラリから上記装置を選択する工程をさらに含む方法であって、上記様々な形状および/または様々なサイズの装置のライブラリからの上記装置の選択工程は上記選択された気道流路の少なくとも1つの寸法に基づくことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
上記第一のコンピュータモデルと選択された気道流路とのうちの少なくともいずれかに基づいて、様々な形状および/またはサイズの装置のライブラリから上記装置を選択する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項21】
上記装置は、ステントであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願に対する参照〕
本出願は、2015年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/261,300号の利益を主張する。本仮特許出願の全内容は、参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
〔発明の背景〕
〔技術分野〕
本願は、呼吸器疾患の治療に関する。特に、本願は、患者の呼吸器系の肺における気流分布の制御を可能にする方法および装置に関する。
【0003】
〔背景技術〕
現在、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、突発性肺線維症(IPF)、ぜんそく、および嚢胞性線維症(CF)等の呼吸器疾患の患者は、該患者が自身の肺まで吸い込む薬を投与することによって治療されることが多い。吸入薬は、通常、粉末状で提供され、患者は、該薬が肺の患部に到達するように該薬を吸い込む。肺の特定部分は健康だが、他の部分が罹病している状態のように肺疾患が局所的なものである場合がある。限局性肺疾患の治療のために吸入薬を投与する際、肺の患部の換気が低下していることが多い。肺の患部の換気が低下しているので、吸入薬は、主に換気がより良好な健康な部分に送達されやすい。結果として、患部は未治療または治療中のままになり得る。時には、吸入薬を用いて限局性肺疾患を治療するのにより良好な換気パターンを作るために、患者は体側を下にして横たわるように指示される。しかし、患者の体位にはかなり制限がある。薬剤を患部に送達させるために、内視鏡的処置を用いることも可能であるが、これらの処置は、侵襲的であり高額になりやすい。呼吸器疾患を治療するために、肺容量減少(lung volume reduction)および選択的肺アブレーション等のその他の治療も用いられてきた。これらの技術は、肺組織を変化させて疾病のいくつかの症状を和らげることはできるが、患部への薬剤の送達を改善するものではない。
【0004】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕健康な呼吸器系の一例である。
【0005】
図2〕下葉に炎症がある呼吸器系の一例である。
【0006】
図3〕肺の下葉および中葉に線維症を患っている呼吸器系の一例である。
【0007】
図4図1に示された肺等の健康な肺の中の気道流路を通る気流分布の一例である。
【0008】
図5A図2および図3に示した肺等の罹病した肺の中の気道流路を通る気流分布の一例である。
【0009】
図5B図5Aに示された気道流路中で気道障害物を配置可能な位置の図を提供する。
【0010】
図5C〕本明細書に開示された1つ以上の実施形態に係る、変更気流分布の一例を提供する。
【0011】
図6〕1つ以上の実施形態に係る、気道障害物を配置可能な位置の図を提供する。
【0012】
図7〕気道を通る気流を変更および/または制御するのに用い得る既製の固定遮断装置の一例を提供する。
【0013】
図8〕複数の開放状態および/または狭小状態に遷移する設定変更可能な既製の遮断装置の一例を提供する。
【0014】
図9〕気道流路を通る気流を可変的に変更するのに用い得る患者固有遮断装置の一例である。
【0015】
図10〕ドッキング機構および交換可能な遮断素子を用いるハイブリッド遮断装置の一例を提供する。
【0016】
図11〕患者の肺内の気流を判定する工程の一例を示すフローチャートである。
【0017】
図12図9に示された遮断装置等の患者固有遮断装置を作成する工程の一例を示すフローチャートである。
【0018】
図13〕患者固有ドッキング機構を作成する工程の一例を示すフローチャートである。
【0019】
図14〕本発明の一実施形態に係る、患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。
【0020】
図15〕本発明の一実施形態に係る、患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。
【0021】
図16〕本発明の一実施形態に係る、患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。
【0022】
図17〕本発明の一実施形態に係る、患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。
【0023】
図18〕本発明の一実施形態に係る、患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。
【0024】
〔特定の発明実施形態の詳細な説明〕
本明細書に開示される複数の実施形態は、呼吸器疾患を患う患者の治療に用いることができる方法および装置に関する。これらの呼吸器疾患は、COPD、IPF、ぜんそく、およびCFを含むが、当業者であれば、上記方法および装置がその他の疾患に同様に適用されることを容易に認識する。
【0025】
本明細書に開示された複数の実施形態は、肺における気道流路を遮断、部分的に遮断、または一時的に遮ることによって個々の患者に対して気流分布を最適化するのに使用可能な方法および装置に関する。多くの呼吸器疾患は、疾病発現の際、局所的な異質部分によって特性づけられる。より簡単に言えば、多くの呼吸器疾患は、肺の一部は健康なままである一方で、該肺の他の部分が罹病して機能しない状態につながる。これらの種類の呼吸器疾患において、吸入薬を利用する治療は、常に満足のいく結果をもたらすとは限らない。これは、肺の一部の疾患が悪化するにつれて、換気の低下に悩まされるためである。吸入薬は、肺内の気流を利用して送達される。このため、換気が低下した肺の患部には、適切に治るために必要な薬剤が届かない。代わりに、吸入薬の大部分は、治療の必要がない肺の健康な部分に流れてしまう。本願の発明者らは、この難問を認識した。肺の一部分が罹病した場合、該部分の換気は通常低下する。当該部分の換気が低下するので、吸入治療を該部分に届けることがさらに困難になる。
【0026】
これらの種類の疾患に対する現在の治療には、通常、肺組織の変更が含まれる。例えば、健康な組織が残って肺が全体としてより機能的になるように、肺組織の病気の部分を取り除く肺容量減少(「LVR」)手術が行われてもよい。LVRは呼吸および肺容量を改善できるが、LVRには欠点がいくつかある。第一に、LVRは外科手術であるため、侵襲的であり、長期にわたる高額な入院を要する。第二に、LVRは、肺の空気漏れ、肺炎または感染症のリスクの増大、あるいは外科手術に一般的に存在するその他の重大なリスクを引き起こす可能性がある。
【0027】
限局性肺疾患のその他の治療には、アブレーションの利用が含まれる。これらの治療方法では、肺の気道中の余分な平滑筋組織を減らすために弱い熱を用いて、気道をあける。該筋組織の除去により、患者はより楽に呼吸できるが、残存患部への薬剤の送達は困難である。気腫等のさらに別の肺疾患の徴候において、例えば、侵襲性が最小限に抑えられたコイルインプラントの利用が研究されている。これらのコイルインプラントは、肺の伸縮性の欠如によって引き起こされる呼吸障害を軽減するのを助けることを目的とする。これらの治療は、肺疾患の進行を遅らせることはできるが、換気が低下した患部への吸入薬の送達を改善するものではない。
【0028】
さらに他の治療には、管状構造を開いた状態かつ安定した状態に保つように設計された装置である、シリコーン又は金属の気道ステントの配置が含まれる。これらの装置は、通常、気管支鏡および配送カテーテルを用いて配置される。多くの患者は即時改善を自覚するが、気道ステントも欠点を抱えている。時間をかけて、金属ステントが気道壁に組み込まれ、粘膜で覆われるようになる。小さすぎるステントが選ばれた場合、ステントが移動してしまう場合がある。大きすぎるステントが選ばれた場合、送達後にステントが開かない場合やステントが気道壁に対してストレスを与える場合がある。患部への通路を開けることは、薬剤投与の助けになるが、多量の薬剤が肺の健康な部分に送達されるのを防ぐことはない。その結果、現在の治療方法により慢性肺疾患を回復に向かわせる望みは殆どない。
【0029】
発明者らは、新規で革新的な治療法を考案した。最も高度なレベルでは、当該治療法は、患者の呼吸器系における気道流路を通る気流のシミュレーションを含む。シミュレーションした気流モデルによって提供された情報を用いて、気流の方向を変えることによって、あるいは薬剤溶出装置またはネブライザー、もしくはそれらの組み合わせ等の薬剤送達装置を用いて薬剤を局所的に投与することによって、患者を治療することができる。肺の気道を介する換気、または、肺の気道を通る気流は、機能的呼吸イメージング等の技術を用いてシミュレーションすることができる。機能的呼吸イメージング(「FRI」)により、呼吸器科医は、呼吸器系の3次元イメージングから始まる患者固有の肺モデルを作成することによって、肺疾患の状態を評価できる。FRI等の技術を用いて、気道流路の構造的挙動を含む、肺を通る気流をモデル化できる。
【0030】
シミュレーションによって提供された情報を用いて、肺機能を改善するために肺内で気流の方向を変える様々な治療法を実施できる。いくつかの実施形態において、肺の患部へ向けて気流を推進するように気流の方向を変えることができる。これらの実施形態において、吸入治療をより必要とする患部の方向へ吸入薬の方向を変えることができるため、該吸入薬の効力が向上される。他の実施形態において、患部から離れるように気流の方向を変えてもよい。これらの実施形態において、肺機能が改善するように健康な領域を刺激する目的で、気流の方向を該健康な領域へ向けて変えてもよい。
【0031】
遮断装置を用いて肺内の気流の方向を変更することができる。一般的に、遮断装置は、気道流路に合う外形を有する(それにより、ぴったりとした、実質的に気密な嵌合を形成する)。これらの装置は、さらに、気道流路を狭める、または、遮る度合または程度を定める内形または内径を有する。複数の特定の実施形態において、上記装置の内形は静的なものまたは固定されたものであり得る。これらの実施形態において、上記装置の内部により、気道流路は常に同程度狭められる。遮断装置は、変更可能な内形を有することもできる。より具体的には、開放位置の場合には空気が装置を通過することを可能にし、狭小構成の場合には空気が(部分的にまたは完全に)遮られるように、外部刺激に応じて内形が開いたり閉じたりできてもよい。
【0032】
遮断装置は、電気信号を用いて内部通路の開閉を外部から制御できる段階的遷移も可能であってもよい。これらの実施において、内形が、無線信号を用いて制御可能な微小電気機械システム(MEMS)を備えていてもよい。該MEMS装置は、治療必要性に応じて、部分的に開いたり、完全に開いたり、あるいは完全に閉じたりすることができてもよい。これらの遷移する遮断装置において、吸入薬が投与しながら、治療中に一時的に気流の方向を変えることができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、遮断装置の外側部分は、該装置が気道流路に埋め込まれた後に該装置を取り外すことなく、そうでなくとも当該装置に支障をきたすことなく、内形を交換可能にするドッキング機構として機能してもよい。このように、静的な内形は、初めは開いているが、後に該静的な内側部品を異なる構成の内側部品と取り替えることによって変更されるようなドッキング機構で用いられてもよい。
【0034】
遮断装置それら自体は、様々な形状を有していてもよい。一般的に、遮断装置は、非外科的介入手法を用いて配置および/または除去され得る。上記遮断装置は、サイズおよび狭小化機構(narrowing feature)に基づいて選ばれた既製の装置であってよい。また、上記遮断装置は、装置のライブラリより選ばれた既製の装置であってもよい。いくつかの実施形態において、該既製の装置は、サイズおよび形状ライブラリより選択される外形と内形との最適な組み合わせを有することに基づいて選択されてもよい。
【0035】
さらに、上記遮断装置は、患者固有装置であってもよい。該患者固有装置は、積層造形技術を用いて作成されてもよい。これらの実施において、具体的には気道流路の生体構造に基づいて、外形を設計してもよい。気道流路の具体的な生体構造に基づいて外形を設計することにより、遮断装置が生体内に配置された際によりぴったりとした嵌合が達成され得る。患者固有遮断装置は、さらに、当該遮断装置の本体構造を取り外さずに内形が交換できるようにドッキング機構構成を実現していてもよい。さらに、上記遮断装置の内形は、気道流路の望ましい狭小化度を実現するように患者固有のものであってもよい。
【0036】
要するに、本明細書に開示された方法および装置は、薬剤溶出装置等の薬剤送達システムを介して薬剤を局所的に投与すること、および治療必要性に基づいて、肺の特定部分の方向へ吸入薬を向ける、および/または、向け直すことを可能にする。特に、本明細書に開示された遮断装置を用いて気流の方向を変えることによって、吸入薬を肺の患部の方向へ向けることができるので、該患部を治療し、できる限り治癒させ、それによって肺組織の切除、そうでなければ肺組織の変更の必要性を避け得る。
【0037】
次に図1を参照すると、正常で健康な呼吸器系100の前面図が示されている。図の左側には肺を通る気道流路が示されており、右側には肺自体が示されている。呼吸器系100は、右肺102および左肺104を含む。上記右肺は、右肺上葉106、右肺中葉108、および右肺下葉110を含む。左肺104は、上葉112と下葉114との2つの葉のみを含む。図1の左側を参照すると、呼吸器系100の気道流路が示されている。これらの気道流路は、右肺102および左肺104の肺組織を通過する。当該気道流路は、気管116を含む。気管116は、患者の胸部から頭部の方向へ延伸し、患者の口および鼻を通って空気が吸い込まれたり吐き出されたりすることを可能にする。気管116は、下方へ延伸するにつれて、2つの枝部118に分かれる。これらの2つの枝部は、一般的に気管支と呼ばれる。図示されるように、気管から図の左側へ下方に延伸する主(右)気管支118(図は体の前方、つまり体の正面からのものであるため)が存在する。主(右)気管支118は、右肺102の中への気道流路を提供する。左肺104の中に入る気管の左側(図の右側)には、主(左)気管支118も存在する。
【0038】
呼吸器系100の気道流路は、最終的には顕微鏡でなければ見えないサイズになるまで、肺の中で枝分かれして次第に細くなる。主気管支118は、複数の葉気管支120に枝分かれする。主気管支118の各々が2つの葉気管支120に枝分かれするが、各分枝において1つの葉気管支のみが着目されている。該葉気管支120は、順々に細くなり、気道流路をさらに下り細気管支124に至るまで空気を運ぶ区気管支122となる。細気管支124は、終端細気管支として終結する。細気管支の端部には、肺胞(不図示)と呼ばれる微視的な空気嚢の集まりが存在する。肺胞内で、空気からの酸素が血中に吸収される。代謝の老廃物である二酸化炭素は、血中から肺胞に移動し、肺の気道流路を通って上方へ吐き出されることができる。
【0039】
図1に示された例において、図示された呼吸器系100は、概して健康である。呼吸器系100等の概して健康な呼吸器系において、典型的な換気パターンは、吸い込まれた空気のうちの40%が上葉に行き、60%が下葉に行くものとして示される。図1において、矢印126は上葉への通気を示し、矢印128は下葉への通気を示す。健康な肺の当該例において、換気パターンは、吸い込まれた空気のうちの40%が上葉へ行き、約60%が下葉へ進む。
【0040】
上述したように、本発明の実施形態は、罹病した肺および呼吸器系の治療の改善に関する。図2は、罹病した呼吸器系200の一例を提供する。この場合、呼吸器系200は、下葉に炎症を患っている。図示されるように、罹病した呼吸器系200は、右肺202および左肺204を含む。右肺202は、上葉206、中葉208、および下葉210を含む。さらに、呼吸器系200は、左肺上葉212および左肺下葉214をも含む。図1の健康な肺の例を図2の罹病した肺と比較するとわかるように、中葉208を含む、罹病した肺の下部は、図1の健康な肺の対応する下部よりも大きい。
【0041】
さらに、図2は、罹病した呼吸器系200に関連する気道流路をも示す。当該気道流路は、気管216、主左気管支218、および主右気管支218を含む。該主気管支218は、炎症の徴候を示し始める葉気管支220、特に中葉208、下葉210、および下葉214のそれぞれに関連する複数の葉気管支に枝分かれする。区気管支222も図2の炎症を起こした呼吸器系に示されている。当該区気管支は、複数の細気管支224に枝分かれする。図からは容易にはわからないが、肺の下部における炎症は、図2に示される気道流路にも影響を与える場合がある。特に、炎症により通路が狭くなりえ、それによって通路を通る空気の自由な流れが妨げられる場合がある。上記呼吸器系200の下部における炎症により、この病気の呼吸器系200における換気パターンは、吸い込まれた空気のうちの40%が上葉に到達し、60%が下葉に到達するという典型的なパターンではない。
【0042】
上向き矢印226で示される、本例における上葉への通気は、より多くの気流が肺の上葉に入ることを示している。これは、肺の上葉が下葉より健康であるためである。特に、上葉は、吸い込まれた空気のうちの55%以上を受け取る。図2に示される換気パターンは、いかに正常な量の気流が、肺の炎症部分の機能障害により、該肺の炎症部分に届かないかを明示する。矢印228によって示されるように、吸い込まれた空気の45%未満が呼吸器系200の下部に到達する。このように気流が減少しているため、吸入治療が呼吸器系200に行われると、当該治療の殆どは肺の健康な部分、つまり治療の必要性がより少ない肺の部分に達して終わってしまう。逆に、肺の炎症した下葉は、吸い込まれた薬剤の45%未満を受け取る。このため、当該薬剤が有効であろう肺の炎症部分は、疾病の結果それ自体を示す換気パターンに起因して十分な薬の量を受け取ることができない。
【0043】
次に図3を参照すると、線維症を患う呼吸器系300の一例が示されている。該呼吸器系は、右肺302および左肺304を含む。右肺302は、上葉306、中葉308、および下葉310を含む。さらに、左肺304は、上葉312および下葉314を含む。中葉308、下葉310、および下葉314は、線維症の結果として形成された瘢痕組織を含み得る。線維症の呼吸器系300は、気道流路での症状をも有し得る。ここで、気道流路は、左気管支318および右気管支318のそれぞれに枝分かれする気管316を含む。左肺および右肺の各々における主気管支318は、複数の葉気管支320にさらに枝分かれする。しかしながら、線維症により発生した組織の瘢痕化により、気道流路の収縮力が低下する場合がある。葉気管支320は、複数の区気管支322に枝分かれし、さらに次には細気管支324に分かれる。図3は、呼吸器系300等の線維症の呼吸器系における典型的な換気パターンの一例をも提供する。上矢印326によって示されるように、中葉および下葉に線維症を患う呼吸器系300において、吸い込まれた空気のうちの60%より多くの空気が上部呼吸器系へと向けられる。下向き矢印328によって示されるように、患部は吸い込まれた空気のうちの40%だけを受け取る。この換気パターンの結果、吸入薬剤の殆どは健康な上部に到達するので、該吸入薬剤を用いる肺の線維症部分の治療には、問題がある。
【0044】
上述したように、本発明の実施形態は、気道流路内の気流の方向を変えるために、該気道流路内に障害物を作成することに関する。図4は、図1に示された呼吸器系100等の健康な呼吸器系における気道流路を通る気流分布400の簡略化された概略例である。以下に詳細に説明するが、これらの値は、例えば、機能的呼吸イメージングを含む様々な方法で得られ得る。
【0045】
当該例において、気道流路は気管402を含む。当該気管は、右主気管支404と左主気管支406とに枝分かれする。右主気管支404は、3つの葉気管支に枝分かれし、当該葉気管支の各々は右肺の葉のうちの1つの中へ延伸する。葉気管支408は、右肺の上葉の中へ延伸する。中葉気管支410は右肺の中葉の中へ延伸し、下葉気管支412は右肺の下葉の中へ延伸する。同様に、葉気管支414は、左肺の上葉の中へ延伸する。葉気管支416は、左肺の下葉の中へ延伸する。
【0046】
図4は、図示された葉気管支の各々に関する換気率(%)を含む。例えば、右肺の上葉の中へ延伸する葉気管支408の換気率は15%である。つまり、気流の15%が該葉気管支408に入る。右肺の中葉に関連する葉気管支410の換気率は5%であり、右下葉に関連する葉気管支412は、図示されるように上記気流の30%を受け取る。上述したように、左主気管支406は、葉気管支414と葉気管支416とに枝分かれする。葉気管支414は、左肺の上葉の中へ延伸する。図示されるように、当該区域は上記気流のうちの20%を受け取る。左肺の下葉に関連する葉気管支416は、上記気流のうちの30%を受け取る。総合すれば、下葉に関連する2つの葉気管支412および416は、呼吸器系に入る上記気流のうちの60%を受け取る。この値は、図1に示された値と一致する。残りの葉、つまり右肺の中葉、右肺の上葉、および左肺の上葉が、吸い込まれた上記気流のうちの合計40%を受け取り、図1に関連して上に示された換気パターンと一致する。
【0047】
図4に概略的に示される呼吸器系において、肺は健康であり、正常な換気パターンを有する。結果として、肺内の気流を変える必要は通常ない。しかしながら、罹病した肺の場合、換気パターンが最適でない場合があり、薬物治療を効果的に送達させるために気流の方向を変える必要がある場合がある。図5Aおよび図5Bは、例えば、上記図2および図3に示された肺等の罹病した肺の気道流路を通る気流分布の例である。
【0048】
図5Aは、呼吸器系の換気パターン500の簡略図を示す。当該特定の例において、換気パターンは、図2に関連して上述された呼吸器系200等の罹病した呼吸器系において測定されたものである。これらの換気率は、図4と同様に、FRIまたはその他の好適な測定技術を用いて取得し得る。換気パターン500は、気管502を含む気道流路の生体構造に関連して示される。該気管502は、主(右)気管支504と主(左)気管支506とに枝分かれする。主(右)気管支504は、3つの葉区に枝分かれし、当該葉区の各々は右肺の葉のうちの1つに関連する。葉区508は、右肺の上葉の中へ延伸する。図示されるように、当該罹病した肺の換気パターン500において、吸い込まれた空気のうちの19%が肺葉区508に関連する気道流路に行く。右肺の中葉に関連する肺葉区510は、呼吸器系に入る気流のうちの8%を受け取る。呼吸器系の右下葉に向かって下方に延伸する肺葉区512は、吸い込まれた空気のうちの22%を呼吸器系の肺領域のこの肺葉区部分に運ぶ。
【0049】
左肺の中へ延伸する主(左)気管支506は、肺葉区514および516に枝分かれする。肺葉区514は、左肺の上葉の中へ延伸する。図示されるように、換気パターン500によれば、吸い込まれた空気のうちの28%が肺葉区514の方向へと向けられる。主(左)気管支506から延伸するもう一方の分枝は、左肺の(罹病した)下葉の中へ延伸する肺葉区516である。図示されるように、気流のうちの23%が当該区域を通って進む。総合すれば、換気パターン500において下葉に到達する気流の比率は、45%であり、図2に示された炎症した呼吸器系200に関連して示された値に一致する。同様に、図5に示された中葉および上葉に関連する比率を加えると、気流のうちの55%が該特定の呼吸器系においてより健康な中葉および上葉に到達するということが換気パターン500に示される。このように、図5Aにおいて測定された換気パターン500は、呼吸器系の下葉に到達している気流が不十分であることを示す。
【0050】
次に図5Bを参照すると、図5Aに示された換気パターンの簡略図と同様の簡略図が提供されている。ここで、本発明の複数の特定の実施形態によれば、気流の方向を変えるために、一連の遮断装置を気道内に配置してもよい。例えば、肺葉区508内に、遮断装置518が配置される。通常上記肺葉区が延伸する起点となる主気管支近くの上記肺葉区内に、該遮断装置を配置し得る。しかしながら、気道内の他の位置に、該遮断装置を配置してもよい。主気管支から左肺の中葉に延伸する肺葉区510にも、遮断装置520が配置されていてもよい。同様に、遮断装置522、遮断装置524、および遮断装置526等の遮断装置が、それぞれ肺葉区512、514、および516にも埋め込まれていてもよい。これらの遮断装置は、気管支ステントの埋め込みに通常用いられる非侵襲的な埋め込み技術を用いて埋め込まれ得る。
【0051】
患者が治療を必要とする罹病した肺を呈する場合、上記換気パターン500は、治療医に有益な情報を提供し得る。それによって、該治療医は、該患者を最も効果的に治療するために気道流路内の気流をどのように変更すべきかを決定することができる。いくつかの実施形態において、肺の患部がより高い比率の気流を確実に受け取るように、気流の方向を気道流路内で変更してもよい。これらの状況下では、より多くの上記吸入粉末(inhaled powder)が実際に治療を必要とする肺の患部に到達するので、該吸入薬の有効性が高まる。
【0052】
図5Cは、呼吸器系の罹病した下葉に到達する空気量を増大させるように換気パターン500を変更するために、遮断装置を用いて気道流路が狭められた変形気流分布の一例を提供する。該例において、肺葉区508に配置された遮断装置518は、気道流路に入る気流を遮るように狭められる。気道が遮られた結果、上記罹病した肺における換気パターン500が変化する。特に、肺の右上葉に到達する吸い込まれた空気の比率は、19%から15%に減少する。肺葉区514に配置された遮断装置524も左肺の上葉へ向かう気道流路を遮るように狭められる。この場合、左上葉への気流は28%から22%に減少する。
【0053】
残りの遮断装置、つまり、遮断装置520、遮断装置522、および遮断装置526は、遮らない構成のまま残される。その結果、これらの遮断装置は、それぞれの肺葉区を通る気流を減少させない。上部気道流路への気流が減少したため、空気が下部気道流路の方へ押し下げられる。その結果、右肺の中葉の気流が8%から9%に増加する。右肺の下葉の気流も22%から26%に増加する。また、左肺の下葉への気流も23%から28%に増加する。このように、換気パターン全体が、下葉への気流が45%から54%に増加するように変更される。この下葉への気流の増加により、吸い込まれた薬剤は、治療をより必要とする肺の領域により良好に到達することができる。逆に、既に健康な部分は治療を受けることが少なくなる。
【0054】
上述した遮断装置は、呼吸器系の気道流路内の様々な位置に配置されてもよい。患者の状態によって、気道の生体構造内の様々な位置に遮断装置を配置してもよい。例えば、一方の肺が罹病し、他方の肺が健康なままである場合、一方の肺への気流を増加させるため、主気管支のうちの一方または両方に遮断装置を配置してもよい。これらの遮断装置は、通常、収容する気道流路が大きければ大きいほど、サイズもより大きくなる。遮断装置は、区気管支等のより小さな流路内にも配置されてもよい。区気管支は狭いため、これらの遮断装置は、ずっと小さくなる。
【0055】
図5Cに示された例において、遮断装置は葉気管支に配置された。図6は、当該特定の配置の図を提供する。図示されるように、上肺配置位置602は、上葉の各々に通じる葉気管支中に示されている。同様に、下気道流路配置位置604は、下葉および右の中葉の各々に向かう葉気管支中に示されている。該特定の例において、遮断装置は、葉気管支中にのみ配置されるが、臨床的症状に応じて、遮断装置は、主気管支、葉気管支、および区気管支のいかなる組み合わせに配置されてもよい。
【0056】
患者の呼吸器系内の気道流路を遮るために、様々な異なるタイプの遮断装置を用いてもよい。これらの遮断装置は、治療の必要性、償還規則、あるいは他の選択基準に基づいて、事例毎に選択されてもよい。一般的に、遮断装置は、気道ステントが埋め込まれた気道流路を空気が通過するのを部分的におよび/または完全に遮るように構成された気道ステントの形であってもよい。様々な異なるタイプの気道ステントが用いられ得る。複数の特定の実施形態において、既製のステントを用いてもよい。他の実施形態において、患者固有ステントを用いてもよい。図7図10は、本明細書に記載された発明の方法とともに用いられ得る様々な異なるタイプの遮断装置の例を提供する。
【0057】
図7は、気道を通る気流を変更および/または制御する遮断装置として用いられ得る既製の固定気管支ステントの4つの異なる例を提供する。これらの4つの例について、図中の左端の遮断装置から説明を始め、右側のものに説明を進める。いくつかの実施形態において、既製の固定遮断装置は、実質的に気道を狭めるが、それでも気流が該装置を通過できるように構成されていてもよい。遮断装置702は、そのような装置の一例である。遮断装置702は、一般的に円柱形状で該円柱上に滑らかな外面を有するステントまたはステント様の装置であってもよい。上記装置702は、気道流路に挿入される際にかかる圧縮力に耐えるのに十分な強度を中空の装置に与えるのに適した厚さを有する外壁704が形成された中空状であってもよい。
【0058】
上記装置702の内部で規定された通路706は、全体として該装置の直径よりも少し小さい直径を有していてもよい。しかしながら、2つの部分の大きさが上記円柱の長さの中心部へ向かって内側へ進むにつれて次第に狭くなる遷移部を中空管が有していてもよい。最も狭い点708で、内部通路が障害物を形成し、これにより該内部通路を通る空気の流れを減じる。一般的に、上記遮断装置702の外径は、予定された配置位置での気道流路の直径とほぼ同一であってもよい。このように、遮断装置の外径は、空気が気道流路の境界に沿って該装置の周囲を通過するのを防止する。その代わりに、適度に密着した取り付けにより、閉塞部分の設計に従って該閉塞部分が気流を変更可能な中空通路706の中へ空気の方向が向けられる。
【0059】
図7に示す第2の例は、既製の固定遮断装置710を示す。遮断装置710は、該遮断装置710が配置された気道流路を少しだけ狭めるように構成されている。第1の例と同様に、上記遮断装置710は、実質的に円柱形であって、該遮断装置710に対する外部から内部への圧力に対抗して支持する外壁712を形成する中空の中心部を有する円柱形である。この例において、中空中心部714は、急に狭くなることはない代わりに、内径716に向かって少しだけ狭くなる。内径716は、遮断装置710の端部での中空管の直径よりも少しだけ小さい。該構成において、気流は、遮断装置702の初めの例ほど大幅には変更されない。より正確に言えば、該特定の構成において、通路が遮断装置710の挿入前の通路と比べて大幅に小さくはないので、気流は概して変化しない、あるいは、少しだけ減少する。
【0060】
図7に示す第3の例は、遮断装置720を示す。遮断装置720は、該遮断装置720を通過する空気をほぼ完全に遮るように構成されている。上述の2つの例と同様に、上記遮断装置720は、外面および中空内側部724を有し、これらが共に上記装置720を支持するのに用いられる外壁722を形成する。図7に示されるように、上記中空通路部724は、該円柱の中を通って延伸し、気流がほぼ完全に遮断されるように位置726で狭くなる。当該構成では、ごく少量の空気のみが装置720を通過することができ、装置720が配置された気道流路内の気流は、激減する。
【0061】
図7は、既製の遮断装置730の第4の例をも提供する。既製の遮断装置730は、該遮断装置730を補強し得る厚い外壁732を含む構成を実現する。外壁732等の厚い外壁は、多大な収縮の影響または上記装置730の外側に多大な圧縮力を与えるその他の動きの影響を受けやすい気道流路内での配置に有用であり得る。厚い壁の遮断装置の該特定の例では、内部通路734は、当該装置の外径近くに延伸しない。その結果、円柱形の両端での壁厚と中央に向かう壁厚との両方が、第1の例〜第3の例における壁厚よりも大幅に厚い。他の例と同様に、中空通路734は、気道障害物736を形成するように遮断装置730の中央部で急に内側に向かう。上記気道障害物736は、気道流路を通過する空気の量を大幅に削減する。
【0062】
図7に示された例の各々は、不変の狭小化機構を有する遮断装置に関する。そのため、気道流路内に配置された遮断装置を用いて、当該気道流路を通る気流は、部分的に遮られる。いくつかの実施形態において、遮断装置が中空内側部を有さなくてもよい。あるいは、該中空内側部が完全に遮断されてもよい。そのような実施形態では、気道流路内に配置された遮断装置を用いて、当該気道流路を通る気流を完全にまたは(潜在的に漏れの可能性があるため)ほぼ完全に遮断する。
【0063】
図7に示された例の各々は、不変の狭小化機構を有する遮断装置に関する。そのため、気道流路内に配置されると、当該気道流路を通る気流の変更は、上記遮断装置が該気道流路から取り外されるまで変わらず継続する。いくつかの実施形態において、遮断装置は、該装置を気道流路から取り外す必要なく該装置の遮断特性を変更できるように、設定変更可能に構成してもよい。図8は、開放状態および/または狭小状態の間で遷移する設定変更可能な既製の遮断装置800の一例を提供する。
【0064】
図示されるように、設定変更可能な遮断装置800は、一般的に、既製の遮断装置700と同様に構成し得る。特に、遮断装置800は、外壁804を形成するように中空領域802を囲む本体構造801を備えてもよい。上記中空通路802は、開放状態と狭小状態との間で遮断装置800を遷移させる機能素子を備えてもよい。該機能素子は、1つ以上の電気的に接続された可動壁806で構成し得る微小電気機械システム装置(「MEMS」)の形態であってもよい。外部刺激から制御信号を受け取り、可動壁806を開放状態(図8の左側の例)から通路802の中央へ内側に向かって移動させる(図8の右側の例)ように構成し得る電子回路808に可動壁806が接続されていてもよい。上記電子回路808は、バッテリーで動くものでよく、当該回路は装置800の本体構造801に収容されている。その他の既知の電源を用いて電子回路808に電力供給してもよい。いくつかの実施形態において、設定変更可能な遮断装置800は、米国特許公報第2014‐0324094号に開示された設定変更可能なステント等の設定変更可能なステントの形態をしていてもよい。上記米国特許公報の全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0065】
設定変更可能な遮断装置800は、使用の際、開放状態で気道流路に埋め込まれてもよい。これにより、初期に埋め込まれる際、遮断装置800が配置される気道流路を通る気流において設定変更可能な遮断装置800により変化がもたらされることは殆どない。上記機能素子は、吸入薬を患者に投与する前に狭小状態に遷移され得る。例えば、設定変更可能な遮断装置800は、測定された換気パターンにおいて通常の気流よりも多い気流を受け取る葉に通じる葉気管支中に配置されてもよい。該葉は健康であるため、通常の気流よりも多くの気流を受け取り、そのため治療の必要がないと判定され得る。吸入薬を投与する準備をする際に、肺のこのような健康な部分により少ない量の空気が到達し、より多い量の吸い込まれた(当該吸入薬を含む)空気が肺の患部の方向へと向けられるように、上記機能素子を遷移させてもよい。
【0066】
同様に、治療が行われない期間は、肺の健康な部分へ気流を向かわせるように設定変更可能なステントを用いてもよい。例えば、設定変更可能な遮断装置800は、呼吸中に十分な気流を受け取らない罹病した葉内へ延伸する葉気管支中に配置されてもよい。患者の快適さを高めるために、遮断装置800を狭小状態に維持することによって、気流の方向を患部から離れる方向に向くように変更してもよい。これにより、吸い込まれた空気が肺のより健康な部分の方へ押し流され、その結果、患者の呼吸は、苦しさが低減されて、より快適になる。しかし、治療が行われる際には、吸入薬が肺の患部に到達し、該治療薬の治療効果を高めることができるように、遮断装置800を開放状態に遷移させ得る。
【0067】
図7および図8に関連して記載された遮断装置の各々は、患者の必要性に応じて肺内の気道を遮るように構成された既製の装置であってもよい。状況によっては、さらにカスタマイズされた、患者固有の解決策を用いることが望ましい場合がある。図9は、気道流路を通る気流を可変的に変更するのに用いられ得る患者固有遮断装置の一例である。患者固有遮断装置900は、気道流路902内に配置され得る。図示されるように、患者固有遮断装置900は、気道流路902の外形に一致する外側部または外面904を含んで形成し得る。気道流路の解剖学的構造に一致することによって、患者固有遮断装置900の外面904は、気道流路内によりぴったりと取り付けることができ、それによって気道流路内での移動や動きの発生を減少させるのに役立つことができる。さらに、装置900の外壁と気道流路902の壁との間の空間を通ることができる空気の量が少なくなるので、上記一致する外面により、気道が最適に密封され得る。上記患者固有遮断装置900は、実質的に円柱形状の外面であって、気道902の内面と同様の形に成形された自由形状の外面を有していてもよい。
【0068】
図9に示されるように、上記外面904は、不規則な形状である近位端906を有していてもよい。該近位端は、通路910を備えていてもよく、また、望ましい狭小化度をより良好に達成するように、上述のものと同様に患者固有でもあり得る。上記通路910は、患者固有の狭小化効果を達成するように特別に形成され得る内壁912を備えていてもよい。さらに、上記遮断装置900は、遠位端908をも備えていてもよい。該遠位端は、上記近位端906の外形とは異なる外形を有していてもよい。これは、近位端906の外形が気道流路のより近位な領域に一致するように形成される一方で、上記遠位端での外形は気道流路の別のより遠位な位置における解剖学的構造に一致するように形成され得るためである。図示されるように、ぴったりと取り付けることにより、遮断装置900が気道流路内で動く傾向が大幅に低減される。積層造形技術を利用して上記患者固有遮断装置900を設計および製造してもよい。いくつかの実施形態において、患者固有遮断装置900は、米国公報第2014‐0222184号に記載された技術を利用して設計および製造されてもよい。上記米国公報の全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0069】
いくつかの実施形態において、患者固有遮断装置を製造するために直接積層造形工程を用いる。直接積層造形工程では、最終製品(例えば、患者固有遮断装置)が直接的にプリントされる。いくつかの実施形態において、患者固有遮断装置を製造するのに間接積層造形工程が用いられる。間接積層造形工程では、金型(例えば、マンドレル)がプリントされ、最終製品(例えば、患者固有遮断装置)を製造するのに用いられる。例えば、気道の解剖学的構造の3次元画像を患者から取得してもよい。そして、気道構造に一致する金型の3次元モデルを作成してもよい。該金型の3次元モデルは、タイル片等のような様々な断片を作り出すようにメッシュ化されてもよい。該金型は、積層造形装置を用いて製造されてもよい。そして、製造された金型は、分割できる継ぎ目を介して相互に接続される複数のタイル片を有していてもよい。製造された金型は、マンドレルとして用いられてもよく、患者固有遮断装置900は、上記金型を用いて製造されてもよい。患者固有遮断装置900が金型を用いて製造されると、該金型は、外部からの機械力が印加されることで外され、それによって製造された金型が上記継ぎ目でバラバラになり得る。いくつかの実施形態では、患者固有遮断装置900は、図8に関連して上述した設定変更可能な遮断装置800と同様に設定変更可能であってもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、患者固有の機構、および既製の機構および/またはカスタマイズされていない機構を有するハイブリッド装置を用いてもよい。特に、患者固有ドッキング機構は、該患者固有ドッキング機構が配置される気道の患者の解剖学的構造に一致するように、そしてさらに、該装置を通る空気の通過を制御および/または障害する機能素子を受けるように製造されてもよい。上記ドッキング機構は、配置位置の生体構造に一致する外面を有する本体構造を備えていてもよい。さらに、上記本体構造は、上記機能素子を上記本体構造内の適切な位置に保持するように上記機能素子とかみ合うように構成されたドッキング機構を有する内面を有してもよい。上記機能素子は、非外科的介入手法を用いて交換可能であってもよい。さらに、上記機能素子は、開放状態と狭小状態との間での遷移を可能にする設定変更可能な装置であってもよい。
【0071】
図10は、1つ以上の実施形態に基づいて用いられ得るハイブリッド装置1000の一例を示す。特に、図10は、患者固有ドッキング機構および交換可能な遮断素子を用いるハイブリッド遮断装置1000の一例を提供する。上記ハイブリッド遮断装置1000は、該ハイブリッド遮断装置1000が配置された気道流路の内面1004に概ね一致する外面1002を有する。図示されるように、上記ハイブリッド遮断装置1000は、機能素子1010を受けるように構成されたドッキング機構1008を有する内面1006をも有する。機能素子1010は、その内径が不変のまたは内径が設定変更可能に狭小化する部分を有していてもよく、これにより気道流路を通る気流の制御を可能にする。患者に対して治療を行う間に、上記機能素子1010が異なる障害特性を有する別の機能素子と交換可能となるように、該上記機能素子1010は入れ替え可能であってもよい。さらに、機能素子1010は、一時期間の間、気道流路に配置することができ、そして薬剤送達工程が完了すると取り外すことができる、例えば、薬剤溶出装置またはネブライザー等の薬剤送達システムの形態をしていてもよい。いくつかの実施形態において、投与された薬剤は、血管拡張剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、上記ハイブリッド装置は、米国特許公報第2014‐0088698号に開示された装置と同様のものであってもよい。上記米国特許公報の全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0072】
患者の呼吸器系の気道流路を通る気流を変更するために、上述した様々な遮断装置を用いてもよい。上述したように、機能的呼吸イメージング(「FRI」)を含む様々な技術を用いて、気流または換気パターンをモデル化してもよい。図11は、患者の肺内の気流を判定するためにFRIを行う高レベル工程を示すフローチャートである。該工程は、ブロック1102から始まる。ブロック1102では、撮像装置を用いて患者の呼吸器系の3次元画像データを取得する。当該撮像装置は、MRI、CT、超音波、またはその他のタイプの撮像装置を含む任意の既知の撮像装置であってもよい。3次元画像データが取得されると、該工程はブロック1104へ進む。ブロック1104では、気道構造および肺葉構造の3次元モデルを計算し作成する。そして、該工程は、計算流体力学を用いて気道構造および肺葉構造を通る気流をシミュレーションするブロック1106へ進む。その後、該工程は、ブロック1108へ進む。該ブロック1108では、有限素子解析を用いて、空気が呼吸器系を通過する際の該呼吸器系の構造的挙動をシミュレーションするブロック1108へ進む。呼吸器系内の気流をモデル化する際に、米国特許第8,886,500号に記載されたFRI技術等のFRI技術を用いてもよい。上記米国特許の全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0073】
上述したように、患者固有遮断装置は、本明細書に開示された様々な実施形態に基づいて製造および利用されてもよい。図12は、図9に示された遮断装置900等の患者固有遮断装置を作成する一工程例のフロー図である。製造工程は、ブロック1201から始まる。ブロック1201では、気道の解剖学的構造の3次元モデルが提供される。特に、患者固有遮断装置を配置するために選択された位置を取得し、3次元設計モデリングソフトウェアに提供してもよい。次に、工程は、ブロック1203へ進む。ブロック1203では、上記選択された位置における生体構造に一致するように患者固有装置の外面を設計する。このように、該患者固有装置が配置される気道流路の内壁の形状と患者固有装置の外面とが実質的に同じ形状となるように、該外面を設計してもよい。次に、上記工程は、患者固有遮断装置の内面を設計するブロック1205に進む。図11に関連して上述されたFRIまたはその他のシミュレーション工程に基づいて判定された望ましい気流に基づいて、上記内面を設計してもよい。上記内面が適切な狭小化機構を含んで設計されると、上記工程は、ブロック1207へ進む。ブロック1207では、積層造形技術を用いて、設計された装置を製造してもよい。
【0074】
図10に関連して上述した患者固有ドッキング機構装置も、同様の工程を用いて製造されてもよい。次に図13を参照すると、患者固有ドッキング機構を作成する一工程例のフロー図が提供されている。該工程は、気道構造の3次元画像情報を取得するブロック1302から始まる。次に、上記工程は、ドッキング機構の外面が生体構造係合面を有するように設計されるブロック1304へ進む。上記工程は、機能素子用に1つ以上の結合機構を有する中空の本体構造を提供するブロック1306へ続く。次に、上記工程は、積層造形技術を用いてドッキング機構を製造し得るブロック1308へ進む。
【0075】
図14図18は、上述した技術および装置を用いて患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。図14は、本発明の1つ以上の実施形態に係る患者の呼吸器疾患を治療する一般的な方法を示す。図示されるように、工程は、ブロック1401から始まる。ブロック1401では、呼吸器系のモデルを作成および/または生成する。上述したように、米国特許第8,886,500号に記載された機能的呼吸イメージング技術を含む様々なモデル化技術を用いて、呼吸器系のモデルを作成してもよい。次に、ブロック1403では、上記モデルを用いて、肺の患部と健康な部分とを識別してもよい。いくつかの実施形態において、該識別は、生成されたモデルに示される気流の異常に基づく。場合によっては、肺の特定の領域内の疾病を観察するのに医用イメージングを用いてもよい。次に、上記工程は、肺の健康な部分と患部との識別に基づいて治療の対象となる1つ以上の気道流路を選択するブロック1405へ進む。気道流路が選択されると、選択された気道に対してブロック1407で治療を行う。ブロック1407において記載されたように肺の治療は、図7図10に関連して上述された遮断装置等の遮断装置の使用を伴っていてもよい。
【0076】
図15は、患者の呼吸器疾患を治療するより詳細な工程を示すフローチャートである。該工程は、患者の呼吸器系の機能的呼吸イメージングを行うブロック1502から始まる。そして、上記工程はブロック1504へ進む。ブロック1504では、FRI工程で観察された換気パターンを正常な換気パターンと比較する。例えば、図2および図3で示された疾病等の肺の中葉および下葉の疾病が原因で、測定された換気パターンが上葉を優先している場合がある。その結果、該工程は、患者にとっての望ましい換気パターンを判定および/または特定するブロック1506に進む。望ましい換気パターンが判定されると、該工程は、呼吸器系における1つ以上の気道流路を遮ることによって換気パターンを変更するブロック1508へ進む。
【0077】
図16は、図15のブロック1508に示された換気パターン変更ステップのサブ工程である。該工程は、ブロック1601から始まる。ブロック1601では、1つ以上の気道流路の気流の望ましい変化を判定する。例えば、望ましい変化は、吸い込まれた薬剤をより効果的に送達するために、肺の患部への気流を増加させる一方で、肺の健康な部分への気流を減少させることを含んでいてもよい。そして、上記工程は、ブロック1603へ続く。ブロック1603では、単一の遮断装置(または複数の遮断装置)の配置位置(または複数の配置位置)を選択する。上述した例の多くにおいて、これらの位置は、通常、肺の葉気管支内にあった。しかし、これらの位置として区気管支、または気管および/または主気管支等のより大きな気道流路が含まれていてもよいということは理解されなければならない。次に、上記工程はブロック1605へ進む。ブロック1605では、遮断装置における気流の望ましい変化を達成するのに必要な狭小化量を見積もる。これらの見積もりは、治療医の知識および経験に基づいていてもよい。あるいは、これらの見積もりは、インプラントの挙動をモデル化できる数学アルゴリズムを用いてコンピュータで生成されてもよい。
【0078】
次に、上記工程は、見積もられた狭小化量を有する遮断装置が配置された後に呼吸器系において気流をシミュレーションするブロック1607へ進む。初期の構成が望ましい気流パターンをもたらすかどうかを決定ステップ1609で判定するために、上記シミュレーション結果が検討される。判断ステップ1609において「いいえ」の場合、該工程は、埋め込まれた遮断装置における狭小化量を調節するブロック1611へ進む。それから、該工程は、シミュレーションを再び行うブロック1607へ戻る。このループは、決定ブロック1609で望ましい気流パターンに到達するまで継続する。望ましい気流パターンに到達すると、該工程は、ブロック1613へ進む。ブロック1613では、使用される、適切な狭小化量を有する適切な遮断装置を選択する。その後、該工程は、選択された遮断装置を患者の気道流路に埋め込むブロック1615へ続く。
【0079】
図17は、1つ以上の実施形態に基づいて設定変更可能な遮断装置をどのように用いることが可能かの一例を提供するフローチャートである。工程は、ブロック1702から始まる。ブロック1702では、選択された気道流路に設定変更可能な遮断装置が埋め込まれるまたは配置される。該工程は、上記設定変更可能な遮断装置における機能素子を狭小位置に遷移させるブロック1704へ続く。該機能素子が遷移させられると、ブロック1706で吸入薬が患者に投与される。ブロック1708では、治療の実施が完了する。治療の実施が完了すると、遮断装置が狭小状態にある必要はもはやなくなる。その結果、ブロック1710にて、上記設定変更可能な遮断装置における機能素子が開放状態または開放位置に戻される。
【0080】
次に図18を参照すると、患者の呼吸器疾患を治療するためのハイブリッド遮断装置を用いる工程が提供される。当該工程は、ブロック1801から始まる。ブロック1801では、ドッキング機構装置であってもよい上記ハイブリッド装置が患者の気道の中に配置される。次に、ブロック1803では、第1の内径を有する機能素子がドッキング機構内に配置される。ブロック1805では、上記工程は、患者への吸入薬の投与へ続く。ブロック1807では、上記吸入薬の投与が完了し、上記工程は、ブロック1809へ続く。ブロック1809では、上記機能素子がドッキング機構から除去される。次に、当該工程は、第2の内径を有する第2の機能素子をドッキング機構内に配置するブロック1811へ進む。治療の必要性に応じて、上記ドッキング機構内には任意の数の異なる半径を有する任意の数の異なる機能素子が配置され得ることは理解されなければならない。
【0081】
本発明は、さらに、治癒過程の進捗を経時的に監視する方法をも実現する。当該進捗は、所定期間後にFRIステップを繰り返すこと、およびシミュレーションによって提供された情報を初期治療の前に得られた情報と比較することによって評価できる。上記比較により、追加治療が必要とされることを示し得る。
【0082】
上述した各装置は、積層造形技術を用いて製造してもよい。積層造形は、中空の物体の製造に特に有用である。遮断装置を製造するのに用いられる材料は、用いられる製造方法(積層造形方法)、および製造される遮断装置の仕様によって決まり得る。特定の実施形態において、遮断装置は、高分子材料、金属、金属合金、セラミック材料およびガラスを含む、積層造形に適合する材料で作成し得る。いくつかの実施形態において、上記遮断装置は、ポリアミド、ポリスチレン、ポリウレタン、鋼、チタニウム、およびアルミニウムのうちの1つ以上で作成れてもよい。本明細書に開示された遮断装置は、ガラス入りポリアミドまたはアルマイド等の複合材料で作成されてもよい。アルマイドは、ポリアミドとアルミニウム粉末との混合物である。典型的な金型(部品)材料としては、例えば、DSM Somos(登録商標)シリーズの材料である7100、8100、9100、9420、10100、11100、12110、14120、および15100(DSM Somos製);ABSplus‐P430、ABSi、ABS‐ESD7、ABS‐M30、ABS‐M30i、PC‐ABS、PC‐ISO、PC、ULTEM9085、PPSF、およびPPSU材料(Stratasys製);Accura Plastic、DuraForm、CastForm、Laserform、およびVisiJetラインの材料(3‐Systems製);アルミニウム、コバルトクロム、ステンレススチール材料、マレージング鋼、ニッケル合金、チタン、PAラインの材料、PrimeCastおよびPrimePartといった材料、およびアルマイド、およびCarbonMide(EOS GmbH製)が挙げられる。
【0083】
開示された実施形態の態様は、計算装置で実行されてもよい。これらの計算装置は、一時的でないコンピュータ読取可能媒体からの命令を読み取って実行するように構成されたプロセッサを含む、汎用コンピュータまたは専用コンピュータであってもよい。より具体的には、それは、本明細書に記載された方法を実行する手段を含むデータ処理装置またはシステム、電気搬送信号で搬送される、本明細書に提供された方法の様々な工程を実施するように構成されたコンピュータプログラム、または本明細書に記載された方法を実施するように構成されたソフトウェアコードを含むコンピュータプログラムで提供される。本明細書で実現されるデータ処理システムまたはコンピュータプログラムは、特に、CAD/CAMシステムまたはプログラム等のコンピュータ支援設計製造システムおよびプログラムを指す。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】健康な呼吸器系の一例である。
図2】下葉に炎症がある呼吸器系の一例である。
図3】肺の下葉および中葉に線維症を患っている呼吸器系の一例である。
図4図1に示された肺等の健康な肺の中の気道流路を通る気流分布の一例である。
図5A図2および図3に示した肺等の罹病した肺の中の気道流路を通る気流分布の一例である。
図5B図5Aに示された気道流路中で気道障害物を配置可能な位置の図を提供する。
図5C】本明細書に開示された1つ以上の実施形態に係る、変更気流分布の一例を提供する。
図6】1つ以上の実施形態に係る、気道障害物を配置可能な位置の図を提供する。
図7】気道を通る気流を変更および/または制御するのに用い得る既製の固定遮断装置の一例を提供する。
図8】複数の開放状態および/または狭小状態に遷移する設定変更可能な既製の遮断装置の一例を提供する。
図9】気道流路を通る気流を可変的に変更するのに用い得る患者固有遮断装置の一例である。
図10】ドッキング機構および交換可能な遮断素子を用いるハイブリッド遮断装置の一例を提供する。
図11】患者の肺内の気流を判定する工程の一例を示すフローチャートである。
図12図9に示された遮断装置等の患者固有遮断装置を作成する工程の一例を示すフローチャートである。
図13】患者固有ドッキング機構を作成する工程の一例を示すフローチャートである。
図14】本発明の一実施形態に係る、患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。
図15】本発明の一実施形態に係る、患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。
図16】本発明の一実施形態に係る、患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。
図17】本発明の一実施形態に係る、患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。
図18】本発明の一実施形態に係る、患者の呼吸器疾患を治療する様々な方法を示すフローチャートである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
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図18