(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。ただし、本実施形態は、以下の内容に何ら制限されず、本発明の要旨を損なわない範囲内で任意に変更して実施可能である。また、以下では、
図1に示す方向を基準として説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る冷蔵庫を示す外観斜視図である。
【0010】
図1に示すように、冷蔵庫100は、冷蔵庫本体1と、冷蔵庫本体1内を冷却する冷気を生成する冷凍サイクルF(
図3参照)と、生成された冷気を冷凍室に供給する冷気供給部材(冷気供給路)R(
図3参照)と、を備えて構成されている。
【0011】
冷蔵庫100は、冷蔵庫本体1の正面に、冷蔵室左扉2と、冷蔵室右扉3と、製氷室扉4と、上段冷凍室扉5と、下段冷凍室扉6と、野菜室扉7と、を備えている。
【0012】
冷蔵室左扉2および冷蔵室右扉3は観音開き可能に構成され、これらと冷蔵庫本体1とにより形成される空間に、冷蔵室30が形成されている。
【0013】
また、製氷室扉4、上段冷凍室扉5、下段冷凍室扉6、および野菜室扉7は手前方向に引き出し可能に構成されている。そして、これらと冷蔵庫本体1とにより形成される空間に、それぞれ、製氷室(第1冷凍室、冷凍室)40、上段冷凍室(第2冷凍室、冷凍室)50、下段冷凍室60および野菜室70が形成されている。
【0014】
冷蔵室左扉2、冷蔵室右扉3、製氷室扉4、上段冷凍室扉5、下段冷凍室扉6および野菜室扉7は、断熱扉である。各扉2〜7は、例えば、表面に設けられた外板と、外板の周縁に設けられた扉枠と、扉枠の裏面(背面)に設けられた内板と、外板と扉枠と内板とで形成された空間に発泡液を充填することで形成された発泡断熱材と、を備えて構成されている。
【0015】
発泡断熱材は、硬質ウレタンフォームで形成されている。この硬質ウレタンフォームは、各扉2〜7の内側の空間内に注入したウレタンフォーム原液(発泡断熱材の原料液)が発泡した後、硬化して形成されるものである。ちなみに、ウレタンフォーム原液としては、例えば、ポリエーテルポリオールに、シクロペンタン、水などの発泡剤、さらには触媒、整泡剤などの助剤をプレミックスした液と、イソシアネート液とを混合した液体が挙げられる。
【0016】
冷蔵庫本体1は、内箱11(
図2、
図3参照)と外箱12とを組み合わせたものであり、その間に断熱部材や真空断熱材が挟まれ、断熱箱体を構成している。外箱12は、薄い鋼板を門型に折り曲げて形成された天板1aおよび左右の側板1b,1c(側板1cは、
図2参照)と、別部材で構成された背板(不図示)と、別部材で構成された底板(不図示)と、によって構成されている。
【0017】
また、真空断熱材は、天板1aの裏面(内壁面)、側板1b,1cの裏面(内壁面)、各扉2〜7の裏面(内壁面)に設けられている。真空断熱材は、その材質は特に限定されないが、一例を挙げると、多孔質構造のグラスウール等の芯材をラミネートフィルムで真空パックして内部を減圧して封止した断熱材から成る。気体熱伝導率が略ゼロであるため、優れた断熱性能を有している。また、真空断熱材は、平板状に形成され、天板1a、側板1b,1c、各扉2〜7の裏面側に接着固定されている。
【0018】
図2は、冷凍室の内部を示す正面図である。なお、
図2は、冷凍室(製氷室40、上段冷凍室50および下段冷凍室60)のみを示し、製氷室扉4、上段冷凍室扉5および下段冷凍室扉6を取り外した状態である。また、
図2は、下段冷凍室60に収納される下段収納容器61、中段収納容器62および上段収納容器63を図示し、製氷室40と上段冷凍室50の各収納容器の図示を省略している。
【0019】
図2に示すように、冷蔵庫本体1は、製氷室40および上段冷凍室50と、下段冷凍室60との間に、左右方向(幅方向)に延在して側板1b,1cに連結される枠体13を備えている。また、冷蔵庫本体1は、製氷室40および上段冷凍室50と、冷蔵室30(
図1参照)との間に、左右方向(幅方向)に延在して側板1b,1cと連結される枠体14を備えている。また、冷蔵庫本体1は、製氷室40と上段冷凍室50との間に、鉛直方向(上下方向)に延在する枠体15を備えている。また、枠体15は、枠体13と枠体14との間に位置している。また、冷蔵庫本体1は、下段冷凍室60と野菜室70(
図1参照)との間に、左右方向(幅方向)に延在して側板1b,1cに連結される枠体19を備えている。
【0020】
製氷室40と上段冷凍室50は、左右に並んで配置されている。また、製氷室40の容積は、上段冷凍室50の容器よりも小さく構成されている。
【0021】
製氷室40には、製氷室扉4を前後方向にスライド可能に支持するレール部材41a,41bが設けられている。レール部材41aは、内箱11の左側の側面下部に設けられている。レール部材41bは、製氷室40の右側下部に設けられている。
【0022】
上段冷凍室50には、上段冷凍室扉5の裏面側に設けられた左右一対の扉枠52a,52bを前後方向にスライド可能に支持するレール部材51a,51bが設けられている。レール部材51aは、上段冷凍室50の左側下部(仕切部材16)に設けられている。レール部材51bは、内箱11の右側の側面下部に設けられている。
【0023】
下段冷凍室60には、下段収納容器61、中段収納容器62および上段収納容器63が収納される。下段収納容器61は、下段冷凍室扉6(
図1参照)の左右両側から後方に延びるアーム部(不図示)に保持される。冷蔵庫本体1は、下段収納容器61をスライド可能にするレール部材61a,61bが内箱11の左右側面に設けられている。また、冷蔵庫本体1は、レール部材61a,61bの手前側に、下段収納容器61のスライド動作を円滑にするためのローラ61c,61dが回転自在に支持されている。
【0024】
下段冷凍室60には、中段収納容器62をスライド可能に支持するレール部材62a,62bが内箱11の左右側面に設けられている。また、下段冷凍室60には、上段収納容器63をスライド可能に支持するレール部材63a,63bが内箱11の左右側面に設けられている。
【0025】
図3は、
図2のA−A線断面図である。
【0026】
図3に示すように、製氷室40と上段冷凍室50(
図2参照)との間には、仕切部材(縦仕切部材)16が設けられている。この仕切部材16は、前後方向に沿って形成され、かつ、枠体15と前後方向において重なる位置に形成されている。
【0027】
仕切部材16は、枠体15の背面の下部から後方に向けて直線状に延びている。また、仕切部材16は、前記レール部材41b,51a(
図2参照)が一体に形成されたレール支持部16aと、レール支持部16aから上方に向けて延びる連結部16b,16c,16dと、を有して構成されている。なお、仕切部材16は、レール支持部16aと連結部16b,16c,16dが合成樹脂によって一体に形成されている。
【0028】
連結部16b,16cは、冷蔵室30(
図1参照)と冷凍室(製氷室40、上段冷凍室50)とを仕切る断熱仕切部材17の下面に固定されている。なお、連結部16dは、後記する冷気供給部材Rの第2冷気導入路22cの下面に固定されている。なお、本実施形態では、連結部16bと連結部16cとの間、連結部16cと連結部16dとの間、連結部16dと冷気供給部材Rとの間が、空間s1,s2,s3を介して製氷室40と上段冷凍室50とを連通している。しかし、製氷室40と上段冷凍室50とが連通せずに、壁で仕切られる構造であってもよい。
【0029】
また、製氷室40および上段冷凍室50と下段冷凍室60との間は、空間S4を介して連通している。
【0030】
下段冷凍室60に収納される下段収納容器61は、前端から後端まで延びる大容量のものである。中段収納容器62は、下段収納容器61よりも前後方向の奥行きが短くかつ薄型に形成されている。上段収納容器63は、中段収納容器62よりも前後方向の奥行きが長くかつ薄型に形成されている。
【0031】
冷凍サイクルFは、圧縮機(図示せず)、凝縮器(図示せず)、キャピラリチューブ(減圧手段)8および冷却器(エバポレータ、蒸発器)9を含んで構成されている。冷却器9は、下段冷凍室60の略背部に設けられた冷却器収納室9sに収納されている。なお、図示しない圧縮機は、断熱箱体の背面側の下部に設けられた機械室Q(
図1参照)に設置されている。機械室Qは、断熱箱体の外側に形成されている。
【0032】
冷却器9は、銅製のフィン9aを厚み方向(左右方向)に微小間隔で並べた積層体を上下方向に5段並べた積層体群と、この積層体群の各積層体を貫通する冷媒管9bと、を備えて構成されている。
【0033】
また、冷却器9の下方には、除霜ヒータHが設けられている。除霜ヒータHによって除霜時に発生したドレン水は、樋(とい)9cに一旦落下し、ドレン孔9dを介して圧縮機(不図示)の上部に設けた蒸発皿(不図示)に溜められる。
【0034】
また、冷却器9の上方には、送風ファン18(プロペラファン、軸流ファン)が設けられている。この送風ファン18は、冷却器9で生成された冷気(低温の空気)を後方から吸い込んで前方に向けて吐出させる。送風ファン18にはファンカバー21が取り付けられており、送風ファン18から吐出された冷気を、上下左右方向に拡散させて、製氷室40、上段冷凍室50、下段冷凍室60などに供給するようになっている。
【0035】
また、送風ファン18の鉛直方向(上下方向)の下方には、下段収納容器61の後端61eが位置している。また、下段収納容器61の上端61fよりも冷却器9の上端9fが下方に位置している。また、製氷室40および上段冷凍室50よりも下方に、送風ファン18および冷却器9が収められている。
【0036】
図4は、冷気供給部材を示す分解斜視図である。
【0037】
図4に示すように、冷気供給部材Rは、送風ファン18が取り付けられるファンベース(ベース部材)20と、ファンカバー21と、冷気導入部材22と、が組み合わされて構成されている。
【0038】
ファンベース20は、略五角形状(略ベース型)に形成された平坦状の基部20tを備えている。また、ファンベース20は、送風ファン18を基部20tに固定するファン固定部20aと、ファンカバー21を基部20tに係止させるカバー係止部20dと、を備えている。また、ファンベース20は、冷凍庫内の冷気を取り込む取込口20gを備えている。
【0039】
また、ファンベース20は、内箱11(
図2参照)の内壁に固定される。また、ファンベース20の背面側(裏側)には、冷却器9(冷凍室冷却器)が配置される。換言すると、冷却器9は、内箱11と外箱12との間に形成された冷却器収納室9sに収納される。
【0040】
ファン固定部20aは、送風ファン18を係止して固定する係止爪20b,20b,20c,20cを有している。送風ファン18は、羽根18aと、この羽根18aの中心を回転自在に支持する外形が四角形状のフレーム18bと、を有して構成されている。これら係止爪20b,20b,20c,20cによって、送風ファン18のフレーム18bが係止されている。
【0041】
カバー係止部20dは、ファンカバー21を位置決めする位置決めリブ20eと、ファンカバー21と係合してファンカバー21を保持する保持部20fと、を備えている。位置決めリブ20eは、基部20tから前方に突出して形成された複数のリブ20e1,20e2,20e3,20e4によって構成されている。
【0042】
リブ20e1は、正面視において送風ファン18の左側方に位置するとともに、鉛直方向に沿って延びて形成されている。リブ20e2は、リブ20e1に対して隙間s11を空けて形成され、鉛直方向に沿って水平方向(右方向)に延びてL字状に形成されている。リブ20e3は、リブ20e2に対して隙間s12を空けて形成され、水平方向に延びて直線状に形成されている。リブ20e4は、リブ20e3に対して隙間s13を空けて形成され、水平方向に沿って基部20tまで延びて形成されている。
【0043】
保持部20fは、リブ20e1と左右方向において重ならない位置に形成された爪部20f1と、それぞれの隙間s11,s12,s13に形成される爪部20f2,20f3,20f4と、を有している。また、爪部20f2は、リブ20e1とリブ20e2との間において外側に離間して配置されている。爪部20f3は、リブ20e2とリブ20e3との間において外側に離間して配置されている。爪部20f4は、リブ20e3とリブ20e4との間において外側に離間して配置されている。
【0044】
取込口20gは、冷気の戻り口であって、格子状に形成され、基部20tの下端に形成されている。また、取込口20gは、保持部20fの下方に位置するとともに、基部20tに対して幅方向(左右方向)に細長く形成されている。
【0045】
ファンカバー21は、ファンベース20から前方に突出して形成され、送風ファン18と対向する位置に正面部21aが形成されている。この正面部21aの裏面には、送風ファン18から吐出された冷気が当たるようになっている。また、正面部21aは、左右方向(幅方向)の中央に、送風ファン18と対向する円形の凹部21bが形成されている。この凹部21bは、後方に向けて突出するように(凹面が前方に向くように)形成されている(
図3参照)。この凹部21bを形成することで、送風ファン18から吐出された冷気を径方向外側に向けて円滑に向きを変えることができ、送風効率が損なわれるのを抑えることができる。
【0046】
また、正面部21aの外周縁部からファンベース20に向けて延びる外周部21cが形成されている。なお、外周部21cの長さは、ファンカバー21をファンベース20に取り付けたときに、送風ファン18と凹部21bとの間に所定の隙間s20(
図3参照)が形成できる程度である。また、所定の隙間s20とは、送風ファン18からの冷気を径方向外側に向けて吐出させることができる距離である。
【0047】
また、正面部21aは、凹部21bの上方に矩形状の切欠部21dが上向きに開口するように形成されている。また、正面部21aには、冷気が吐出される複数の吐出口21e1,21e2,21f,21g,21g,21h,21i,21iが形成されている。吐出口21e1,21e2は、互いに同じ高さ位置である。吐出口21f,21g,21gは、互いに同じ高さ位置である。吐出口21h,21i,21iは、互いに同じ高さ位置である。
【0048】
冷気導入部材22は、製氷室40(
図2参照)と上段冷凍室50(
図2参照)とに冷気を分配する冷気分配部22aを備えている。また、冷気導入部材22は、製氷室40(
図2参照)に冷気を導入する第1冷気導入路22bと、上段冷凍室50(
図2参照)に冷気を導入する第2冷気導入路22cと、を備えている。
【0049】
冷気分配部22aは、前記切欠部21dと接続される矩形状の筒体22a1と、筒体22a1の上端に製氷室40と上段冷凍室50とに冷気の向きを変えて分配する風向板22a2(冷気分配量設定板)とを有している。
【0050】
第1冷気導入路22bは、筒体22a1の上端から左側方(製氷室40側)に向けて延び、そして前方に向けて延びる冷気案内路22b1を有している。この冷気案内路22b1は、先端で二又に分岐し、幅広形状の風路22b2と、風路22b2よりも幅狭の風路22b3と、を有している。また、風路22b2の先端は、風路22b3の先端よりも高い位置に設定されている。また、風路22b2には、該風路22b2の先端よりも低く設定された風路22b4が分岐して形成されている。
【0051】
このように、風路22b2を構成することで、冷気が製氷室40の上端から前方に向けて吐出される。また、風路22b3,22b4によって、冷気が風路22b2よりも低い位置から製氷室40に向けて吐出される。
【0052】
第2冷気導入路22cは、筒体22a1の上端から前方(仕切部材16(
図3参照))に沿って延びる冷気案内路22c1を有している。この冷気案内路22c1の風路幅は、仕切部材16の幅とほぼ同じに形成されている。また、冷気案内路22c1には、上段冷凍室50(
図2参照)に対向する面に切欠き22c2が形成されている。すなわち、冷気案内路22c1は、該冷気案内路22c1の先端に冷気の流れを遮断する側壁22c3と、製氷室40(
図2参照)側への冷気の流れを遮断する側壁22c4と、が形成されている。このように、切欠き22c2によって、冷気案内路22c1の上段冷凍室50側の側壁が他の側壁22c3,22c4よりも低く形成されているので、冷気案内路22c1に導入された(分配された)冷気が、切欠き22c2を介して上段冷凍室50(
図2参照)に向けて吐出される。
【0053】
図5は、製氷室と上段冷凍室に冷気を分配する冷気導入部材を示す上面図である。
【0054】
図5に示すように、冷気導入部材22は、第1冷気導入路22bの流路幅W1が、第2冷気導入路22cの流路幅W2よりも広く形成されている。このように、第1冷気導入路22bの流路幅W1を広くすることで、製氷室40への冷気の導入量を増やすことができる。なお、流路幅W1,W2の比率を変えることで、製氷室40と上段冷凍室50への冷気の分配量を容易に調整することができる。また、風向板22a2の形状を変更することで、製氷室40と上段冷凍室50への冷気の分配量を調整することができる。
【0055】
冷気分配部22aは、上面視(平面視)において、風向板22a2が筒体22a1の開口の略半分を覆い隠すように形成されている。風向板22a2は、板材22a3,22a4を折り曲げて形成したものである。板材22a3は、第1冷気導入路22bに向けて上昇するように傾斜して配置されている。板材22a4は、手前側に向けて上昇するように傾斜して配置されている。板材22a3によって、冷気が第1冷気導入路22bに向けて案内され、板材22a4によって、冷気が第2冷気導入路22cに向けて案内される。
【0056】
次に、上段冷凍室50内に備えた下部貯蔵容器53及び上部貯蔵容器54の構成及び引き出し動作に関して、
図6〜
図10を用いて説明する。
【0057】
図6は、
図1のB−B線断面図である。
図7は、
図6に示す上段冷凍室扉5及び扉枠52a,52bを除いた状態で、上段冷凍室50内を示す斜視図である。
図8は、
図6に示す下部貯蔵容器53、上部貯蔵容器54、トレイ部材55等の分解斜視図である。
【0058】
図6,
図8に示すように、上段冷凍室50内には、下部貯蔵容器53と上部貯蔵容器54とが設けられる。このとき、下部貯蔵容器53の前後方向の寸法は、上部貯蔵容器54の前後方向の寸法よりも大きく構成される。即ち、下部貯蔵容器53の上部開口は、上部貯蔵容器54によって覆われない部分を有する構成とした。
【0059】
また、下部貯蔵容器53の深さ寸法は、上部貯蔵容器54の深さ寸法よりも大きくした。比較的高さの小さい食品は上部貯蔵容器54内に収納し、高さの大きい食品は下部貯蔵容器53内に収納する等、使用者は使い分けができる。
【0060】
下部貯蔵容器53は、上段冷凍室扉5に設けられた扉枠52a,52bにより左右の底部を支持される。
【0061】
また、左右の扉枠52a,52bは、それぞれ仕切部材16の上段冷凍室50側の側面下部に設けられたレール部51a、及び、内箱11の右側の側面下部に設けられたレール部51bによって、前後方向に摺動可能に支持される。
【0062】
また、
図6,
図8に示すように、下部貯蔵容器53の上部開口の周縁部には、摺動縁部53a,53bが形成される。
【0063】
上部貯蔵容器54は、その左右一方の側面の下部に、凸形状の第一摺動部54a1と第一摺動部54a2とが前後に設けられ、また、他方の側面の下部に、第一摺動部54b1と第一摺動部54b2とが前後に設けられる。これら第一摺動部54a1,54a2,54b1,54b2は、それぞれ下部貯蔵容器53の摺動縁部53a,53bにより支持され、上部貯蔵容器54は前後方向に摺動可能とした。
【0064】
また、上部貯蔵容器54は、その左右一方の側面の上部に、凸形状の第二摺動部54c1と第二摺動部54c2とが前後に設けられ、また、他方の側面の上部に、第二摺動部54d1と第二摺動部54d2とが設けられる。第二摺動部54c1,54c2は、仕切部材16に設けられたレール部51cにより前後方向に摺動可能に支持される。第二摺動部54d1,54d2は、内箱11に設けられたレール部51dにより前後方向に摺動可能に支持される。
【0065】
尚、本実施の形態では、貯蔵室を左右に区画するための仕切部材16に設けたレール部51cによって、第二摺動部54c1,54c2を摺動可能に支持する構成としたが、この構成に限定する必要はない。例えば、断熱仕切部材17の上段冷凍室50側の面(上段冷凍室50の天井面)に、レール部51c相当の部品を吊り下げて取り付け、上方から支持してもよい。また、上段冷凍室50の背部の内箱11A若しくはファンベース20にレール部51c相当の部品を取り付け、後方から支持してもよい。
【0066】
また、上部貯蔵容器54の前後左右の壁の内、前壁54eの一部の高さ寸法を低くし手掛部54e1を形成した。これにより、上部貯蔵容器54を引き出す際の使用者の指を入り易くし、使い勝手を向上した。
【0067】
尚、本実施の形態では、前壁54eを部分的に低くして手掛部54e1を設けた構成としたが、この構成に限定する必要はない。例えば、前壁54eの上面フランジ部(図示せず)に凹部を形成し、その凹部を手掛部とする構成でもよい。
【0068】
また、上部貯蔵容器54内には薄板のトレイ部材55が設けられる。このトレイ部材55は金属性であり、アルミニウムやステンレス等の熱伝導性の高い材料が好ましい。このとき、上部貯蔵容器54は深さが小さく、また、冷気導入部22からの冷気が直接送られるため、下部貯蔵容器53よりも冷却効率が高いため、急速冷却室として使用することができる。
【0069】
また、上部貯蔵容器54の底面には、複数の孔部(図示せず)が設けられていてもよい。この孔部が有ることで、上部貯蔵容器54の貯蔵空間と、下部貯蔵容器53の貯蔵空間とが連通し、上部貯蔵容器54内に流入した冷気を孔部を介して下部貯蔵容器53内に導くことができる。
【0070】
さらに、トレイ部材55は、上記孔部(図示せず)を上方から覆うように設けられている。これにより、上部貯蔵容器54内に流入した冷気は、トレイ部材55を介して間接的に伝熱され、下部貯蔵容器53内を間接冷却することができる。
【0071】
次に、
図9,
図10を用いて、上段冷凍室扉5の全開時及び、上段冷凍室扉5の閉鎖時の、上部貯蔵容器54の摺動・位置の説明をする。
図9は、
図1に示す冷蔵庫1の上段冷凍室扉5を開放した状態の側面図である。
図10は、
図1に示す冷蔵庫1の上段冷凍室扉5を閉鎖した状態で且つ側板1bを透過した状態の側面図である
図9(a)〜
図9(c)は、上段冷凍室扉5を庫外に引き出した状態示す右側面図である。
【0072】
図9(a)は、上段冷凍室扉5を開放した状態において、上部貯蔵容器54と下部貯蔵容器53との位置関係が第一基本位置の状態であることを示す。
【0073】
この第一基本位置とは、第一摺動部54a1,54b1が、第一基本位置に位置規制するための前側の第一凸部53a1,53b1と、後側の第二凸部53a2,53b2との間にある状態をいう。このとき、第一摺動部54a2,54b2が摺動縁部53a,53bにより支持されるため、第二摺動部54c2,54d2はレール部51c,51dによって支持されていなくても、上部貯蔵容器54を水平状態に保つことができる。
【0074】
第一基本位置の状態では、下部貯蔵容器53の手前部分の貯蔵空間に、高さがある食品を収納することが可能である。従って、高さが比較的小さい食品は上部貯蔵容器54内若しくは、下部貯蔵容器53の奥側に収納し、また、高さが比較的大きい食品は下部貯蔵容器53の手前側に収納することができ、使用者の用途に合わせた使い勝手のよい貯蔵室を提供できる。
【0075】
第一基本位置用の前方にある第一凸部53a1,53b1は、前方の傾斜より後方の傾斜の方が大きい。また、後方にある第二凸部53a2,53b2は、後方の傾斜より前方の傾斜の方が大きいので、上部貯蔵容器54を第一基本位置に導くときは抵抗が少ない。また、上部貯蔵容器54を第一基本位置に導いた後は、その第一基本位置よりも前方もしくは後方に摺動させるときの抵抗が大きいため、第一基本位置の状態を維持しやすい。
【0076】
また、第一基本位置において、下部貯蔵容器53の前壁53eと上部貯蔵容器54の前壁54eとの間の寸法D1は、下部貯蔵容器53の前壁53eの高さ寸法H1よりも大きくした。これにより、下部貯蔵容器53の貯蔵空間の間口を広く確保することで、下部貯蔵容器53への食品の出し入れがし易くなり、使い勝手を向上できる。
【0077】
なお、第一摺動部54a1,54b1を第一基本位置に位置規制するため手段としては、第一摺動部54a1,54b1の移動を規制する溝部が形成されれば良い。したがって、上述の第一凸部53a1,53b1や第二凸部53a2,53b2を設けずに、下部貯蔵容器53に凹みを設けることで溝部を形成したものであっても構わない。
【0078】
図9(b) は、上部貯蔵容器54と下部貯蔵容器53の位置関係が第二基本位置であることを示す。即ち、上部貯蔵容器54を、
図9(a)に示す第一基本位置よりも更に前方に移動させ、上部貯蔵容器54の全体が庫外に出ている状態である。
【0079】
第二基本位置とは、第一摺動部54b1(54a1)が、第二基本位置に位置規制するための第三凸部53b3(53a3)よりも前方に位置した状態である。この第三凸部53b3(53a3)は、後方の傾斜より前方の傾斜の方が大きいので、上部貯蔵容器54を第二基本位置に導くときは抵抗が少ない。また、上部貯蔵容器54を第二基本位置に導いた後は、その第二基本位置よりも後方に摺動させるときの抵抗が大きいため、第二基本位置の状態を維持しやすい。なお、この凸部53b3(53a3)を設ける代わりに、第二基本位置の状態で支える部分の下部貯蔵容器53を、他の部分よりも凹ませても良い。
【0080】
第二基本位置の状態において、下部貯蔵容器53の前壁53eと上部貯蔵容器54の前壁54eとの間の寸法D2よりも、上部貯蔵容器54の後端と冷蔵庫本体1の前端との間の寸法D3を大きくした。これにより、上部貯蔵容器54の前端から後端までの全てが冷蔵庫本体1の外に出ているため、上部貯蔵容器54内の全体を見ることが可能であるとともに食品を出し入れし易く、使い勝手が良い。また、下部貯蔵容器53の前壁53eと上部貯蔵容器54の前壁54eとの間の寸法D2を小さくしたことで、上段冷凍室扉5の開放時に下部貯蔵容器53内への冷気侵入および下部貯蔵容器53外への冷気流出を抑制できる。
【0081】
図9(c) は、上部貯蔵容器54を、
図9(a)に示す第一基本位置よりも後方に移動させた状態であり、下部貯蔵容器53の前壁53eと上部貯蔵容器54の前壁54eとの間の寸法D4は、
図9(a)に示す寸法D1よりも大きい。
【0082】
この状態のとき、上部貯蔵容器54の左右側面の前後方向の後側に設けられた第一摺動部54a2,54b2は、摺動縁部53a,53bよりも後方に位置しているため、何ら支持されていない状態になる。そこで、第二摺動部54c2を仕切部材16に設けられたレール部51cにより支持するとともに、第二摺動部54d2を内箱11に設けられたレール部51dにより支持することで(
図6及び
図7参照)、上部貯蔵容器54は水平状態を保つことができる。
【0083】
また、上部貯蔵容器54の係止部54g(
図6に示す)が、下部貯蔵容器53の後壁に当接することにより、上部貯蔵容器54の後方への移動量を制限し、上部貯蔵容器54が脱落することを抑制する。
【0084】
図9(c)の状態では、第一基本位置よりも上部貯蔵容器54を更に後方に移動させることで、下部貯蔵容器53の前壁と上部貯蔵容器の前壁との間の寸法D4を大きくできる。即ち、上部貯蔵容器54を第一基本位置よりも更に後方に移動できるため、下部貯蔵容器53の奥部に収納された食品を取り出し易くでき、使い勝手を向上できる。
【0085】
図10(a),
図10(b)は、上段冷凍室扉5を閉鎖した状態であって、上段冷凍室50内の下部貯蔵容器53、上部貯蔵容器54、枠部材52bを側面視した側面図である(仕切部材16は省略している)。
【0086】
図10(a)は、下部貯蔵容器53及び上部貯蔵容器54が第一基本位置のときに、上段冷凍室扉5を閉鎖した状態を示す。この第一基本位置のまま、上段冷凍室扉5を前方に引き出して開放した場合、第一摺動部54a1,54b1の前後方向の位置は、第一凸部53a1,53b1と第二凸部53a2,53b2との間で維持されるため、下部貯蔵容器53及び上部貯蔵容器54は第一基本位置の状態を維持したまま庫外に引き出すことができる(即ち、
図9(a)に示す状態となる)。
【0087】
また、上段冷凍室扉5を引き出して開放した後(即ち
図9(a)の状態)、下部貯蔵容器53及び上部貯蔵容器54を第一基本位置のまま、上段冷凍室扉5を後方に移動させて閉鎖する場合、第一摺動部54a1,54b1の前後方向の位置は、前方凸部第一a1,53b1と第二凸部53a2,53b2との間で維持され、
図10(a)に示す状態にできる。
【0088】
これにより、下部貯蔵容器53の手前部分の貯蔵空間(下部貯蔵容器53の前壁53eと上部貯蔵容器54の前壁54eとの間)に、高さのある食品を収納できる空間Aを形成できるとともに、高さの低い食品を収納できる空間B、その空間Bより高く空間Aより低い空間Cのように、3種類の高さの収納空間を形成することができ、使い勝手を向上できる。
【0089】
図10(b)は、下部貯蔵容器53及び上部貯蔵容器54が第二基本位置のときに、上段冷凍室扉5を閉鎖した状態を示す。この第二基本位置のまま、上段冷凍室扉5を前方に引き出して開放した場合、第一摺動部54a1,54b1の位置は、第三凸部53a3,53b3により後方に移動しないように維持されるため、下部貯蔵容器53及び上部貯蔵容器54は、第二基本位置の状態を維持したまま庫外に引き出すことができる(即ち、
図9(b)の状態となる)。これにより、上部貯蔵容器54の全体を見ることが可能な状態を維持したまま、上段冷凍室扉5の開閉操作を行うことができるため、使い勝手が良い。また、下部貯蔵容器53内に冷気導入部22からの冷気を直接送ることが可能な状態を維持したままで、上段冷凍室扉5の開閉操作を行うことができる。
【0090】
尚、
図9(c)に示す状態で、上段冷凍室扉5を閉鎖した場合、下部貯蔵容器53及び上部貯蔵容器54の前後位置は、
図10(a)に示す状態(即ち、第一基本位置)になる。その後、上段冷凍室扉5を引き出して開放すると、前述のとおり第一基本位置のまま引き出すことができるため、上段冷凍室扉5の開閉操作時に、使用者が上部貯蔵容器54の位置を戻さずとも第一基本位置になるため、煩わしい操作が不要となる。
【0091】
以上、本実施形態により、下部貯蔵容器53の上部に、下部貯蔵容器53よりも前後方向に短い上部貯蔵容器54を摺動可能に備えた。これにより、1つの貯蔵室内において、3種類の高さの食品を上下の貯蔵容器に分けて収納することでき、使用者の用途に合わせた使い勝手のよい冷蔵庫を提供できる。
【0092】
以上、本実施形態について図面を参照しながら説明したが、本実施形態は前記の内容に何ら限定されるものではない。したがって、本発明には、様々な変形例が含まれる。すなわち、前記の実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0093】
また、本実施形態では、冷凍室を冷却する冷却器9と、冷蔵室30を冷却する冷却器31とを分割して構成した場合を例に挙げて説明したが、従来のように、冷凍室の背面に、冷蔵室30と冷凍室を冷却する冷却器を設ける構成であってよい。