(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の運転支援システムであって、前記第1の地物情報は、道路面に存在する路面標示に関する情報であり、前記第2の地物情報は、道路周辺に設置された地物に関する情報である運転支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.第1実施形態:
A1.システム構成:
図1に示すように、本発明の一実施形態としての運転支援システム10は、車両20の運転を支援する運転支援システムであって、車両20とサーバ40とを含んで構成される。車両20とサーバ40とは、インターネットNE、基地局BSを介して、互いに通信可能に接続されている。
【0013】
車両20は、車両管理部200と、車両通信部210と、入力部220と、車両状態取得部230と、出力部240と、車両制御部250とを備える。これらの構成要素は図示しない内部バスによって相互に通信可能に接続されている。
【0014】
車両管理部200は、図示しないRAMとROMとを備える。車両管理部200は、ROMに記憶された制御プログラムをRAMに展開して実行することにより、車両状態取得部230から供給される情報に基づき、車両20の現在位置を検出するほか、アクセルやブレーキなどの制御タイミングを決定するための情報を生成し車両制御部250に対し出力するなどの処理を行う。
【0015】
車両通信部210は、インターネットNEを介して車両20とサーバ40との通信を行なう装置である。入力部220は、運転支援システム10のユーザによる目的地設定、経由地設定などの各種入力を受け付ける装置である。車両状態取得部230は、衛星測位システムであるGPS(Global Positioning System)を構成する人工衛星から受信した電波に基づいて、車両20の現在位置検出のための情報を取得する。さらに、車両状態取得部230は図示しない自律航法センサを設けて、自律航法センサにより得られた情報を電波情報と併せて車両管理部200に供給してもよい。また、車両状態取得部230は、車両の走行する道路環境を認識する装置である撮像カメラ(図示せず)を備えており、本実施形態においては撮像カメラとしてCCD(Charge Coupled Device)カメラを用いる。出力部240は、地図画像等の種々の画像を出力し表示する装置である。車両制御部250は、車両管理部200から供給を受けた情報に基づき、各種の制御情報を、制御情報出力手段251を介してエンジン制御などに用いる装置である。
【0016】
サーバ40は、サーバ通信部41と、サーバ制御部42と、記憶部43とを備える。サーバ通信部41は、サーバ制御部42の制御により、インターネットNEを介して車両20とサーバ40との通信を行なう装置である。サーバ制御部42は、図示しないRAMとROMを備えており、ROMに記憶された制御プログラムをRAMに展開して実行することによりサーバ40の各部を制御する。
【0017】
記憶部43には、車線情報431と地物配置情報433と地物形状情報435とが記憶されている。車線情報431には、車両が走行可能な車線につき線形状で表す車線基準線に関する情報(以下、「車線基準線情報」という)が含まれる。地物配置情報433には、車線基準線情報として記憶された車線のうち特定の車線を走行する車両の走行態様に影響を及ぼす所定の地物についての情報であって、特定の車線を表す車線基準線と対応づけられている情報が含まれる。また、地物配置情報433には、車線基準線情報を構成する座標点列のうち所定の座標点と、地物形状情報435に含まれる座標点とを対応づける情報が含まれる。さらに、地物配置情報433には車線基準線情報の固有IDおよび地物形状情報435として記憶された地物の固有IDとが含まれるようにしてもよい。地物形状情報435には地物の存在位置に関する位置情報が含まれるとともに、例えば、座標点列からなる線形状で記述される地物、座標点列からなる多角形形状で記述される地物および所定の点列からなる線分に高さを与えることで平面形状として記述される地物のそれぞれの形状に関する情報が含まれる。なお、本実施形態において記憶部43はハードディスクで構成されている。
【0018】
次に、車線情報431について説明する。
図2に示すように、片側4車線の道路であって、車道の左隣に警察署550が存在している道路において、それぞれの車線上には停止禁止を表す道路標示515,545がペイントされており、この道路標示515,545により停止禁止部分がどれだけの範囲にわたるかが通行者に提示されている。そして一番左の車線の道路標示515は、車両進行方向の長さで比べると、他の3つの車線上横並びにペイントされた道路標示545よりも相対的に長くなっている。
図2に例示されるように、かかる停止禁止を表す道路標示がほどこされた道路においては、いったん停止禁止の道路標示がほどこされた部分に進入した場合、当該道路標示の領域内において車両は停止することができない。ここで、
図2のように一つの車線のみ他の車線に比べて停止禁止を表す路面領域部分が長い場合、すべての車線における車両制御を同一とするのではなく、個々の車線単位での道路標示に応じた車両制御を行うことが好ましい。
【0019】
本システムの記憶部43に記憶された情報は、車線に関する情報および当該車線ごとの停止禁止を表す道路標示の範囲に関する情報である。具体的には、記憶部43には、車線情報431として車線51,52,53,54をそれぞれ略中心線の形状で表す車線基準線情報510,520,530,540が記憶されている。また、記憶部43には、地物配置情報433すなわち、特定の車線の車両走行にあたり車両通行の態様に影響を及ぼす特定の地物を特定の車線基準線情報と関連づける内容のデータが記憶されている。つまり、車線基準線情報に含まれる所定の座標点と各車線での車両通行に影響を及ぼす各々の地物の存在位置および地物の形状を示す情報を含む地物形状情報435に含まれる所定の座標点ないしはこれら所定の座標点同士を結ぶ線上の点とを対応付ける内容の地物配置情報433が記憶部43に記憶されていて、この記憶内容を読み取った車両管理部200では特定の地物は特定の車線基準線のいかなる位置において関連するのかを識別することが可能となっている。
【0020】
具体的には、記憶部43には、
図2における一番左側の車線を線形状にて表す車線基準線情報510と、地物形状情報435として(車線基準線情報510に対応する車線51上を通行する車両に対する)停止禁止を表す道路標示515の位置に関する情報とが記憶されている。さらには、記憶部43の地物配置情報433の記憶内容によって、車線基準線情報510が、道路標示515の形状を示すための所定の座標点ないしはこれら所定の座標点同士を結ぶ線上の点の位置に関する情報と対応関係を持って記憶されている
。ここで進入側地点511は、車線51における、上述した車両の停止制御が禁止される道路の部分の始まりにあたる点である。そこで、進入側地点511の座標を、特定制御開始点SPという。また、退出側地点512の座標は、上述した車両の停止制御が禁止される部分の終わりにあたる点である。そこで、退出側地点512の座標を、特定制御終了点EPという。本実施例において運転支援システム10の記憶部43には、車線51上の車両通行に影響を及ぼす地物である道路標示515につき、上述した特定制御開始点SP及び特定制御終了点EPの双方を車線基準線情報515を構成する座標点の二つと対応付けるものとして、地物配置情報433が記憶されている。このように、車線基準線情報510と道路標示515とを特定制御開始点SPと特定制御終了点EPとによって対応付けた地物配置情報433のデータが記憶部43に保持されていることによって、運転支援システム10は、車両が車線51を通行する場合、特定制御開始点SPから特定制御終了点EPまでをつなぐ道路部分においては、いったん特定制御開始点SPに車両が進入した後は特定制御終了点EPから退出するまでの間停止制御を行わないようにすべし、という内容の運転支援に用いる情報を、車両側に提供することができる。
【0021】
以上のようにして、本実施例において運転支援システム10は、
図2に示されるような個々の車線単位で、停止禁止を表す道路標示の範囲(車両進行方向に対する長さ)が異なる場合に対応した、特定の一つの車線上における車両停止制御の禁止に関する情報を提供可能としている。具体的には、車線51上の、車線52〜54上の停止禁止の範囲よりも長い停止禁止の範囲を示す道路標示515の情報を、車線51上の車両の通行に関連するものとして車両20に対して提供することが可能となる。ここでは、車線51上の通行とは関連性を持たない車線52〜54上の道路標示545の情報を車両側において利用せずにすむことから、車両側のリソースを有効に活用することが可能となる。さらには、車両の通行する特定の車線に関する情報を処理するにあたり、かかる特定の車線に対応した地物配置情報433を参照するだけで、特定の制御が必要となる範囲すなわち特定制御開始点SPから特定制御終了点EPまでの範囲を特定することができることから、特定の制御の範囲を求めるにあたり、都度個別の地物形状情報435の記憶内容を参照し、計算を行うという煩雑な処理を省略することができる。そこで、次の段落では、かかる運転支援のための情報を用いた運転支援処理について説明する。
【0022】
A2.運転支援処理:
図3は、第1実施形態における運転支援処理について説明するためのフローチャートである。本実施形態では、運転支援システム10の運転支援処理機能が起動することにより開始される。
【0023】
運転支援処理が開始されると、車両管理部200は、車両状態取得部230から供給された情報により車両20の現在位置を特定する(ステップS110)。具体的には、車両状態取得部230がGPSを構成する人工衛星から受信した電波を用いて、車両管理部200は車両20の現在位置を検出する。次に、車両管理部200は、上記のとおり検出された現在位置に基づいて、記憶部43の車線情報431を参照する。記憶部43には、上述したとおり、車線を線形状で表す車線基準線情報が車線情報431に含まれて記憶されている。ここで、車線基準線情報とは、車線の形状を略中心線で表すものであり、所定の間隔で整備された座標点の集合すなわち座標点列により記述されたものである。この車線基準線情報を構成する座標点が、検出された現在位置の座標と比較され、検出された現在位置の座標に最も近い値をとる特定の座標点を構成要素として含む車線基準線情報が、車両20が走行している車線に対応するものとして車両管理部200により特定される(ステップS120)。
【0024】
次に、車両管理部200は、記憶部43の地物配置情報433を参照することにより、車両20が走行している車線に対応付けられた、当該車線上の車両通行に影響を及ぼす地物を特定する(ステップS130)。具体的には、車両20の走行している車線を表す車線基準線情報における座標点と地物配置情報433において対応付けられた座標点とを含んでいる地物形状情報435における記憶内容として表された地物が、車両が走行する車線上の通行に影響を及ぼす地物として特定される。
【0025】
車両20が走行している車線と対応付けられた当該車線上の車両通行に影響を及ぼす道路環境を体現する地物が特定された場合、車両管理部200は、この地物に応じた運転の支援のための情報が必要となる範囲の特定を行なう(ステップS140)。
【0026】
図4は、本実施例において運転支援システム10の車両管理部200が車両制御部250に対していかなる内容の情報を供給するかを例示して説明する図である。現在、車両20は、
図4において一番左の車線51を、車線変更を予定せずに走っていて、停止禁止を表す道路標示515の手前の位置にあるとする。この場合、当該車線上の停止禁止という交通規制に従って車両の運転者が車両を操作するための情報は一番左の車線上の道路標示515により提示されている。すなわち、自車両の走行する一番左側の車線上の道路標示515のみが、上記車両20に有用な情報を提示しているのであって、他の右側の車線に共通する道路標示545は、上記車両20の通行態様に関連性をもつものではない。このため、車両管理部200は、記憶部43から車両20の現に走行しその先も走行を予定する車線51と対応付けられた地物配置情報433を参照するとともに、車線基準線における特定制御開始点SPと特定制御終了点EPとを読み出し、車両の停止制御が禁止される区間の始点および終点の位置情報を車両制御部250に供給する(ステップS150)ことにより、運転の支援を行なう。車両管理部200から供給を受けた情報により車両制御部250の行う制御としては次のようなものがありうる。
【0027】
たとえば、あらかじめ車両状態取得部230を構成する撮像カメラの得た情報から車両20の前方所定距離以内において車間距離に留意して進行すべき他車が存在しないことが検出されていた場合、
図4の道路標示515上の特定制御開始点SPに車両が進入した後は道路標示515上の特定制御終了点EPを通過するまでは車両制御部250は、運転手によるブレーキ動作が実行された場合であっても、制動制御を禁止または抑制することで車両20が道路標示515の領域内で停止することを防止する。このように、車両管理部200は、車両制御部250に対して制動制御を禁止または抑制する情報を供給することとあわせ、道路標示515に対応して特定制御開始点SPに進入して特定制御開始点EPから退出するまでは、車両が停止しないよう、制動制御は禁止されまたは抑制されるということを車両20の運転手に対し案内するための情報を車両制御部250に供給してもよい。また、撮像カメラの得た情報から、車両20の前方所定距離以内において他車が存在することが検出されていた場合、前方車両との車間距離が不十分になって車両20の備えている追突防止機構が自動的に作動することにより車両20が道路標示515の存在区間内で停止を余儀なくされるおそれがある。このような場合、前方車両との車間距離に起因する不慮の停止を予防するためには、車両20は道路標示515により示された停止禁止部分より手前の位置においていったんは確実に停止をするという車両制御が必要となる。そこで、車両20の前方車両と車両20との車間距離が不十分な場合、車両管理部200は特定制御開始点SPより手前の地点において停止するよう制動制御を行うための情報を車両制御部250に供給する。そして、車両20が特定制御点SPに進入し特定制御点EPから退出するまでの間つねに車両20の前方車両との車間距離が十分に確保されるようになるまで、車両管理部200は、車両20の加速を抑制するための情報を車両制御部250に供給する。こうした車両制御により、片側複数車線において、車両の進行方向に対し停止禁止部分の範囲が車線ごとに不揃いである道路環境においても、車両が現に走行しかつ走行を予定する車線と対応付けられた地物に応じた車両の運転の支援を行なうことができる。
【0028】
運転支援システム10の運転支援処理は、運転支援処理機能がオフとなることにより終了する。一方、運転支援処理機能がオフでない場合(ステップS160:NO)、フローはステップS110に戻ることによって運転支援システム10による運転支援処理が続けられる。
【0029】
なお、上述の例では、地物配置情報433において特定制御開始点SPと特定制御終了点EPとは、それぞれ固有の座標をもつものとして記憶部43に記憶されていたが、地物配置情報433に含まれるものとして記憶される特定制御終了点EPについては、特定制御開始点SPの座標の値を起点とした相対座標で位置を特定可能にしてもよい。
【0030】
B.第2実施形態:
第2実施形態における運転支援システム10の構成は、第1実施形態と同じである。第2実施形態の運転支援処理は、第1実施形態における運転支援処理と比較して、車線上の通行態様に影響を及ぼす地物の体現する走行環境が車両の走行する車線に及ぶ範囲を決定する処理より後の処理(
図6におけるステップS250以降の処理)が異なるが、それ以外は同じである。つまり、第2実施形態では、第1実施形態におけるステップS150(運転支援のための情報出力)の処理に代えて、ステップS250とステップS260の処理が行なわれる。
【0031】
図5は、第2実施形態の運転支援システム10で用いられる、車線情報431を説明するための図である。
図5においては、片側2車線の道路であって、左側の車線63において高速道路へ進入可能なルートと片側2車線の道路の直進を続けるルートとのルートの分岐が生じる構造となっている道路の片側部分が示されている。なお、
図5に示した道路部分においては、右側の車線62においても、図示しない一般道への右折するルートと直進を続けるルートとのルートの分岐が生じる道路構造となっている。車線情報431は、各車線ごとの情報を示すものとして記憶部43に記憶されている。具体的には、車線情報431は、車線62,63,64,65,のそれぞれを各車線の略中心線で表す情報としての車線基準線情報を含み、記憶部43に記憶されている。なお、車線65は車線62および車線63の対向車線の一つが延伸して図示しない高速道路入り口に向け高速道路ランプ660に流入する車線である。車線65は車線62および63に対する関係では車線62,63の各々と交差する関係にあり、車線64に対する関係では、高速道路ランプ660において車線64に接続し吸収される関係にある。また、記憶部43には、各車線を走行する車両の走行に対して影響の及ぶ地物を、地物形状情報435として各車線62,63を表す車線基準線622,631のそれぞれと関連付けるものとしての地物配置情報433が記憶されている。具体的には、車線62の車線情報に含まれる車線基準線情報622は地物配置情報433のうちの一つのデータを媒介として、
図5においてゼブラ形状で図示された導流帯625を表す地物形状情報435のデータの一つに含まれる位置情報と対応付けられている。同様にして、車線63についての車線基準線情報631は
図5で破線状に図示されている車線境界線665の位置情報と対応付けられている。なお、車線基準線情報631は、車線63の略中心線を線形で表す情報である。そして車線基準線情報631は、高速道路ランプ660に進入するルートでありかつ車線64に吸収されるルートを表す線形状に対応する車線基準線情報632とは、高速道路ランプ660手前の地点で分岐しているものとして記憶されている。これを車線基準線情報632についての記憶部43の記憶内容の側から説明すると、車線基準線情報632は、高速道路ランプ660と一般道の車線63との境界を示す車線境界線665の手前で、車線基準線情報631として記憶された車線63から分岐独立し、高速道路ランプ660の領域の所定部分において車線基準線情報641に所定の点で吸収される線形状として設定されている。
【0032】
図6は、第2実施形態における運転支援処理について説明するためのフローチャートである。ステップS210〜S230の処理は、
図3のステップS110〜S130の処理のそれぞれと同様であるので、その説明は省略する。車両20が走行している車線と対応付けられた地物がある場合(かかる地物はステップS230で特定される)、車両管理部200は、走行中車線を略中心線で表す車線基準線情報に対応する地物配置情報433を読み出し、かかる地物配置情報433の記憶内容から、走行中車線の車両通行態様に影響を及ぼす地物の範囲(車両進行方向に対する範囲)を決定する(ステップS240)。
図5および
図7において示される走行環境において車線63を車両20が手前から奥方向に走行する場合を例にとってこれを説明する。第1実施形態において
図2で例示した走行環境と異なり、
図5および
図7で示される走行環境においては、車線63を走行する車両20にとっての走行態様に影響を及ぼす地物である車線境界線665は、その境界線を構成する点のいずれをとっても、車線63を略中心線で表した車線基準線情報631を構成する点列のいずれとも位置情報として重なりあうことがない。かかる場合の車線境界線665を記述する地物形状情報と車線63を表す車線基準線情報631とは、地物配置情報443において次のような記憶内容として対応付けられ記憶部43に記憶されている。車線基準線情報631の構成点列の一つである関連点RP1は、後述する線分イの始点であって線分アと交わる点として地物形状情報435に記憶されているが、地物配置情報443の内容としては、車線境界線665の車両進行方向からみて最も手前の座標点SP1(ここで車線境界線665に含まれる座標点SP1の位置としては、実際の路面上の破線の始まりの点の位置としてもよく、また、
図5に示されるように、分岐する道路間で分岐角度が生じ始める点の位置であってもよい)に対応するものとして記憶されている。車線境界線665のような直接車線基準線と交わらない位置に存在する地物におけるSP1に対応する関連点RP1を、車線基準線情報631の構成点列のうちから1つだけ選び取って設定するための基準としては、次のものが好適である。すなわち、地物形状情報435に特定の地物の形状を表すための点として記憶された点であって当該地物の存在位置および地物の形状を示す情報に含まれる点のうち、車両進行方向に対して最も手前の位置に存在している点から、当該地物と関連性を有する車線基準線に対して垂線を下ろしたその垂線と車線基準線との交点にもっとも近い車線基準線情報の構成点が車線基準線情報における関連点となる、というものである。これと同じ基準を用いて、車線境界線665における車両進行方向から見て最も奥の座標点EP2と対応するものとして、地物配置情報443の内容として、車線基準線情報631の構成点列に含まれる関連点RP2が記憶されている。
【0033】
つまり、車線境界線665が走行中車線(車線63)と関連付けられた地物として特定されている場合、車両管理部200は、かかる車線境界線665と車線63との対応関係を記述した地物配置情報443を読み出し、かかる地物配置情報443に上記のようにして関連点RP1と関連点RP2とが含まれていることにもとづいて、車両管理部200は、地物である車線境界線665によって示される走行環境が、車線63に対応する車線基準線情報上のRP1からRP2までの範囲にわたり車両20の走行に影響を及ぼすものであると特定する(ステップS240)。
【0034】
その後、車両管理部200は、走行中車線の車両通行態様に影響を及ぼす地物と走行中車線を線形状で表す車線基準線情報との関係に基づき、運転支援に用いる情報が複数種必要となる場合、かかる情報の種類ごとに、地物配置情報433の記憶内容から、車両通行態様に影響を及ぼす地物と走行中車線とが車線基準線情報において対応づけられた範囲を特定する処理を行う(ステップS250)。ここでは、かかるステップS250における車両管理部200の処理の内容について、
図5および
図7を基に説明する。
【0035】
図7は、
図5で示された道路領域における、車線と地物だけを描いた図である。
図7に示された道路領域において、車両20が車線63を道なりに通行しようとする場合、車両の左側方において車両走行中車線に対応する地物としては、区画線610,615と車線境界線665とが存在する。なお、
図7に示された信号機は、高速道路ランプに進入する車線65の通行を規制する信号機であって、車線63とは関連性を持たない地物であるから、記憶部43においては、かかる信号機の位置情報を含む地物形状情報435は車線63に対応するものとして記憶されていない(車線63を線形状で表す車線基準線情報631と地物との対応付けがなされる地物配置情報433には、かかる信号機の情報が含まれていない)。よって、上述したように車両20が車線63を道なりに進む場面においては、車両管理部200によって、上記の信号機に関する情報が車線63に対応するものとして扱われた結果、運転支援システムの処理が煩雑化するということは避けられる。
【0036】
ここで、地物のうち車線境界線665は、車線63と高速道路ランプ部分とを分ける境界であるから、車線63を直進する車両20は、かかる車線境界線665をまたぐことのないよう進行することとなる。ところで、車線境界線665をまたぐことのないよう、車両が車線63を通行しようとすると、少なくとも、車線境界線665の存在範囲を避けるのに必要なだけ、右方向へのステアリング操作が必要となる。これは、
図7で示された道路構造において、高速道路ランプ部分660が車線63へ左側から右側へ差し込む形で設けられているためである。上記のことについて、道路構造における線形との関係の観点から、
図5および
図7の記載にもとづいて、次段落で詳述する。
【0037】
車線63を線形状で記憶するための車線基準線情報631を
図5において示した部分に見て取れるように、車線63の略中心線は、高速道路ランプ部分660手前では
図5における鉛直方向に伸びる線分(以下、「線分ア」)と、鉛直方向に対し右側に傾きをもつ線分(以下、「線分イ」)と、高速道路ランプ部分660を車両進行方向に過ぎた地点で鉛直方向に伸びる線分(以下、「線分ウ」)との組み合わせとして把握される。これら線分ア〜ウは、
図5で、破線により示された車線基準線631の右隣に併記されている。いうまでもなく、車線63を表すこれら線分アから線分ウまでの組み合わせは、車線63を走行する車両の走行軌跡の範型となるものである。このような車線63に対応した車線基準線情報631として記憶部43に記憶された略中心線(線分アから線分ウまでの組み合わせから構成される)をたどって走行すべき車両は、上記線分イの持つ右側への傾きに対応したステアリングが必要となる。
【0038】
言い換えると、車線基準線情報631に含まれている線分イの線形状に沿って走行すべき車両にとって、線分イの形状から逸脱した走行軌跡を描き車線境界線665をまたぐ走行をするということは、範型となる走行軌跡を描いた走行を行っていないことを意味する。よって、かかる走行態様をさけるために、車両操作において車線境界線665をまたぐことのないステアリング操作が義務付けられているといえる。かかるステアリング操作の制御(操舵制御)に必要なパラメータは、線分イの部分への車両の進入速度との相関関係で定まる。そうすると、線分イの部分を表すため車線基準線情報631として記憶された線形状に追従した走行をする車両の個々の走行態様に関する情報を車両管理部200が車両制御部250に提供する場合、ステアリング操作制御にかかるパラメータとあわせ、車両の速度制御にかかるパラメータ(たとえば高速度から低速度への減速を行うためのパラメータ)を提供することが必要となることがある。
【0039】
図5および
図7において示される走行環境において車線63を手前から奥方向に走行する車両20の車両管理部200は、車線境界線665の存在位置に対応する車線基準線上の位置、すなわち上述した関連点RP1から関連点RP2までの範囲においては、車両を右側方向に旋回させるための制御情報と、かかる右側旋回を容易にする制動のための制御情報という二種類の情報を、おのおの運転支援に必要な情報として特定する(ステップS250)。つまり、関連点RP1から関連点RP2までの範囲にわたって車両20を右側に旋回させるためのパラメータ情報が運転支援のための情報の一つとして特定され、また、関連点RP1から関連点RP2までの範囲にわたる、車両20の制動にかかるパラメータ情報がいま一つの種類の運転支援のための情報として特定される。このようにすることにより、
図5および
図7に示されるような、直進車両の車線に沿った走行にあたり、車線左側の車線境界線の配置により、操舵制御と制動制御とが同時に求められる場合においても、車両管理部200は、操舵制御、制動制御という異なる制御にかかる運転支援情報を、制御の種類ごとに分別して、それぞれの制御を行うためのパラメータが必要となる範囲を特定することができる。
【0040】
上述したステップS250により範囲特定された車線基準線の部分における、複数種の、運転支援のための情報を、車両管理部200は車両制御部250に対し供給する(ステップS260)。
【0041】
以上のようにして、本実施形態の車両運転支援システム10は、特定の車線に関連する地物の体現する走行環境に対応する運転支援のための情報が車両の制御手段との関係で複数種にわたる場合であっても、運転支援のための情報を必要な範囲で必要なだけ用いて走行環境に応じた適切な走行を実現することができる。もちろん、本実施形態においても、地物配置情報433に含まれるものとして記憶される関連点RP2については、関連点RP1の座標の値を起点とした相対座標で位置を特定可能としてもよい。
【0042】
C.第3実施形態:
第3実施形態の運転支援システム10の構成は、第1、第2実施形態と同じである。第3実施形態の運転支援処理は、第1実施形態における運転支援処理と比較して次の点で異なる。相違点の第1は、車両の走行中車線を特定する処理(
図9のステップS320)において、車両管理部200が車両20の走行中車線を特定する際に用いる車線を表す情報につき、道路構造上は明確に車線の区分がされていない道路部分(交差点領域など)にあってもそれまでの車線の延長線のように車両が走行軌跡を描くその走行軌跡の標準となる線形状を、車線基準線情報と同等の情報として扱う点である。本実施例におけるステップS320での車両管理部200の処理内容を規定する、記憶部43の記憶内容について詳述する。現実にレーンペイント等により車線が区画されている道路領域以外の道路部分(たとえば交差点内など)につき、車両進行方向手前の(交差点外の)車線(記憶部43に車線基準線として記憶されている)から車両進行方向奥の別の(交差点外の)車線(記憶部43にまた別の車線基準線として記憶されている)への通行可能性という意味における車線同士の連結の有無を考慮した上で、相異なる車線を補完する線形状の情報が記憶部43に車線情報として記憶されている。そしてこのように相異なる車線同士を補完する線形状(以下、「車線基準線連関線」という)をも走行中車線を表すものとして記憶部43が記憶しているという点が本実施形態における特徴である。
【0043】
相違点の第2は、ステップS340に先行するステップS330で走行中車線と関連するものとして読み出された地物の情報と、現実の道路状況に関して車両状態取得部230の取得した情報とを対照して食い違いがある場合に、先行するステップS320で特定された車両20の走行中車線に換わる、別の車線を、現に車両20が走行している車線であるとして特定する処理を行うことである(ステップS340でNOという判定となった場合の、ステップS320に戻っての再度の処理実行)。この処理については後述する。
【0044】
図8は、車線基準線及び車線基準線連関線を説明するための図である。
図8において、車線別の走行態様を体現する地物として、矢羽模様でかたどられたレーンペイント715が存在している。かかるレーンペイント715は、特定の車線が高速道路料金所におけるETC専用レーンであることを示すため、路面上に所定の色の舗装でもって矢羽模様を含む形状を標示したものである。
【0045】
図8において、レーンペイント715で使用されている所定の色は、黒色でベタ塗りとして表されている。レーンペイント715は、車両が走行中の車線の走行環境についての情報を、路面の色相の違いを通じ、道路通行者に提示する地物である。つまり、レーンペイント715は、車両進行方向に対し手前の道路部分の舗装の色とは異なった色でペイントされている。このことから、運転支援システム10を構成する車両状態取得部230の一形態として撮像カメラ(CCDカメラ)を採用する場合に、車両の走行してきた道路部分の舗装の色とレーンペイント715の所定の色との色相の違いがCCDカメラで検出できたということをもって、レーンペイント715が存在する特定の車線上に自車両が存在していることを表すものとして車両の自己位置推定処理に用いることができる。
【0046】
図8において、レーンペイント715の車両進行方向手前側に存在する地点717は、本実施例で車線基準線(車線基準線と同等の情報として扱われる車線基準線連関線を含む。次段落以下で詳述。)によって表される車両の走行中車線との関係では、レーンペイント715の路面上の存在領域に車両が進入したことを表す地点である。これを記憶部43に記憶されたデータ内容の側面からいえば、地物形状情報435としてレーンペイント715の路面上の存在領域に対応する形状データが記憶部43に記憶されているところ、地点717は、レーンペイント715の存在領域を多角形として記述するための一つの座標点として地物形状情報435に含まれている。そして、地点717は車線基準線情報710を含む車線情報431と地物形状情報435との対応付けを行う地物配置情報433において、車線基準線情報710として記憶された線形状とレーンペイント715の存在領域とが重なり合う座標点のうち車両進行方向に対し最も手前の座標点である、という内容として記憶されている。このようにして、本実施例において、運転支援システム10は、レーンペイント715を通過し始める地点で、地物配置情報433からの読み出し処理を行い、車両管理部200が車両状態取得部230を構成するCCDカメラの撮像画像の内容を自車位置推定に用いることのできる仕組みを備えている。
【0047】
次に、本実施例の運転支援システム10により、
図9のステップS320以降において車線基準線連関線が車線基準線と同等の情報として扱われることについて、
図8を用いて説明する。なお、ステップS310,S330の処理は、
図3のステップS110,S130の処理と同様であるので、その説明は省略する。
図8に示されるような道路環境においては、車両20は、車線75から右側にステアリング操作を行った上でETC専用レーンに進入することもありうる。この場合、仮にGPS測位法による自車位置の推定が精度よく行われていなかった場合、運転支援システム10は、自律航法センサから得られた情報をも併用して車線75からETC専用レーン71に進路をとっていることを検出することとなる。ところで、
図8で図示されるような場合、車線75とETC専用レーン71とは鉛直方向に垂直に接続するものではない。このため、車線75からETC専用レーン71への進路変更を行う車両20のとるべき走行軌跡の範型として、車線75に対応する車線基準線情報751とETC専用レーン71に対応する車線基準線情報710とを補完する線形状の情報が必要となる。これが、上述した車線基準線連関線の表す情報であり、
図8においては、車線基準線情報751と車線基準線情報710とを補完するものとしての車線基準線連関線712の情報内容が示されている。
【0048】
ところで、運転支援システム10がGPS測位法に併用して自律航法センサで得られた情報を併用するといっても、車線75から右側にステアリング操作を行って走行する車両の描く走行軌跡のパターンには、大別して、
図8の車線基準線連関線712に示されるように、右側に大きくステアリング操作を行って走行するパターンと、車線基準線連関線722に示されるように、相対的に小さく右側にステアリング操作を行って走行するパターンとがある。ただ、どちらも、右側にステアリング操作を行って走行するという点では同一の走行形態であることから、自車位置推定上、相対的に大きなステアリング操作を行ったか相対的に小さなステアリング操作を行ったかに関して自律航法センサの誤検知があった場合に、車両状態取得部230により得られた別の情報を利用して誤検知に関連する情報を修正する処理を行うことが望ましい。
【0049】
ここで、
図9に示した処理フローでの各ステップにおける車両管理部200の処理内容との関係において上記の自車位置の修正処理を説明する。具体的には、
図8に示される道路環境のもと、車両20が車線75からETC専用レーン71に進路を変更し通行していく場面における、車両管理部200による自車位置の修正処理を説明する。
【0050】
車両管理部200は車線基準線情報と同等の情報として車線基準線連関線情報を取り扱い、車線75から高速道路料金所のレーン(
図8ではETC専用レーン71と一般レーンのレーン72及びレーン73の3つが存在する)へと流入する岐路のいずれに自車両の位置が存在するかを特定する(ステップS320)。具体的には、上述のとおり精度よく推定されていないとはいえGPS測位法により得られた現在位置情報を基として、自律航法センサにより得られた情報を加味して、車両20はそれまで直進して通過してきた車線75から、右方向へのステアリング操作を開始することが望ましいポイントを経由して高速道路料金所のレーンへ進入するコースに入ったと車両管理部200は特定する。ここで、現実の車両20は、
図8において車線基準線連関線情報712として示される曲線部分に位置するのに、ステップS320で車両管理部200によって特定された車両の位置は、車線基準線連関線情報722により示される曲線部分のうち所定の点であったとする。これは上述のとおり、右方向へのステアリング操作の結果(相対的に大きく右方向にステアリング操作を行ったかそれとも相対的に小さく右方向にステアリング操作を行ったか)についての自律航法センサの誤検知に起因するものである。
【0051】
上述のとおり、レーンペイント715は、そのレーンを通行する者に対し、当該レーンがETC専用レーンであることを、通常の路面舗装とは異なる色でのペイントで示すものである。そうすると、通常の路面舗装の色とレーンペイント715の色との色相の違いが車両状態取得部230の情報により検出された場合、車両状態取得部230を備える車両は、高速道路料金所における他の一般レーン上に存在するのではなく、ETC専用レーン上に存在しているということが確定的情報として判明する。
【0052】
このようにして、本実施例における運転支援システム10は、特定された自車両の走行中車線に対応する車線情報431に含まれる車線基準線連関線情報をもとにすれば、車線基準線連関線722に直接接続する車線基準線情報720の表す車線72(
図8に示される一般レーンの一つ)を実際に通行していた場合においては事象として発生するはずのない、路面上のペイントによる色相の違いの検出を契機に、先行するステップS320で特定していた走行中の車線を表す情報を誤りであるとして棄却し(ステップS340:NO)、ステップS320に戻って、現に検出された路面上のペイントによる通常の路面との色相の違いを発生させた地物の存在領域に関係する情報が地物配置情報433を介して対応している車線情報431に含まれる車線基準線情報を読み出し、現実の自車位置に対応する走行中車線の特定を再度実施して、走行中車線の修正処理を行う。
【0053】
車両20が車線75から一般レーン72に進路を変更し通行しているものの誤って自車両の走行中車線はETC専用レーン71に向かうコースであると特定されていた場合の、走行中車線の修正処理は次のとおりとなる。誤って特定された走行中車線に対応する車線情報431に含まれる車線基準線連関線情報(
図8での712)を前提とすれば、通過が予定される地点717に相当する位置において、車両20に搭載された車両状態取得部230が路面上のペイントによる色相の違いを検出するはずであった。ところが、自律航法によって、車両20が車線基準線連関線712を通過し車線基準線710上の地点717に達したと推測される(
図8では、地点717と水平に同じ位置である727をオーバーランした728の地点に達した時点で、誤って特定された走行中車線上の移動量にてらし自律航法にもとづき車線71上の地点717に到達したものと車両管理部200は推定する)のに、実際には車両状態取得部230は路面上のペイントの色相の違いを検出することはない。これは、車両20が実際には、車線基準線連関線722を通過して車線基準線720で表される車線72すなわち一般レーン上を通行する軌跡をとっているからである。このことより、あらかじめ特定されていた車両20の走行中車線は内容が誤って特定されていたものとして、車両管理部200は車両の現在位置を特定する処理に戻って処理を再実行することとなる。なぜならば、先行する走行中車線の特定処理の結果を前提に、自律航法による車両20の移動量を累積させた結果、車両管理部200は、ETC専用レーン上の地点717に車両20が達したと推定しているのに、それでもなお路面上にペイントの色相の違いが検出されないということは、車両20がレーンペイント715を敷設しているETC専用レーンを通過する走行車線に位置するという前提自体が誤っていたという判断をすべき契機となるからである。よって、この場合も、先行するステップS320で特定していた走行中の車線を表す情報を誤りであるとして棄却し(ステップS340:NO)、車両管理部200は、ステップS320に戻って、現実の自車位置に対応する走行中車線の特定を再度実施して、走行中車線の修正処理を行う。
【0054】
もちろん、先行するステップS320において、GPS測位法と自律航法センサの検出結果とから、車両20の存在する位置は車線基準線連関線712に対応する位置であるとして、走行中車線の特定が現実の車両の存在位置と合致する形で行われていた場合、
図8の地点717で通常の路面と異なる色相のレーンペイントの色が車両状態取得部230によって取得されることはそのようにして特定された車線の通過の際に当然に発生が予定されている事象であるから(地点717の情報が地物配置情報433に含まれていることによって担保されているため)、運転支援システム10は、車両20の走行中車線を特定したステップS320の特定結果を棄却することなく(ステップS340:YES)、車両20の走行中車線の特定結果を維持したままかつその特定結果に基づき、車両管理部200は、ETCでの料金精算を確実に行うため、制動制御に必要な所定情報を出力し車両制御部250に供給する等の処理を行う(ステップS350)。
【0055】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0056】
D1.変形例1:
図10は、片側二車線の道路について車線に対応する車線基準線情報が車線情報431として記憶され、当該車線における走行環境を示す地物について、地物形状情報435として地物の体現する走行環境の内容、存在位置が記憶されるとともに、地物配置情報433として地物の体現する走行環境が車線上ではどの範囲で通用するかが記録されていることを示すための一例である。
【0057】
図10に示した走行環境において、地物815は「その他の危険」という標識名の警戒標識である。これは走行中の道路の前方には運転者が注意すべき状況が存在していることを示す標識である。地物815の警戒標識によって示される注意すべき道路状況としては、路肩が弱いため路肩側車線を通行する車両は路肩に注意すべきことや、海沿いの道路であるため路肩に寄りすぎた走行は転落などの危険があることなど種々のものがありうる。ただし、この地物815は、第1実施例で説明した地物515とは次の点で異なる。第1実施例における地物515はレーンペイントであり、車線を略中心線で表す車線基準線との交点を、車両進行方向最も手前の地点と車両進行方向最も奥の地点の二つの座標で設定し記憶部43に記憶することによって、地物の表す走行環境(地物515の場合は、停止禁止部分のレーンペイントの存在する範囲内では車両の停止制御が禁止されるというもの)の通用する長さ情報を、車線との関係であますところなく表現できるものであった。ところが、
図10における地物815のような地物の場合、その地物の体現する走行環境が車線に対しいかなる範囲の長さで通用するのか、ことに、地物の体現する走行環境の終わりの地点について、地物の設置位置の情報からは判然としない。
【0058】
図10に示した例では、地物815の存在する位置から車線基準線810に垂線を下ろした場合の車線基準線810と垂線との交点811の地点より先は、「その他の危険」という警戒すべき走行環境が存在することを道路通行者は認識することができる。しかしながら、地物815のような警戒標識は、規制区間の始まりと終わりそれぞれに対応する補助標識の存在位置自体によって規制区間の長さ情報が明瞭に定義されているような規制標識とは標識の設置形態として異なることから、地物815の存在位置の情報からは、「その他の危険」という走行環境がいかなる地点で終わると認識すればよいのかを、通行車側で把握することはできない。
図10に示された例で言うと、地点812まで警戒しつつ走行をすればよいのか、地点813まで警戒しつつ走行をすればよいのかどうかが、地物815の存在位置を車両状態取得部230の情報により検出しただけでは明らかとはならない。よって、この発明の第1実施形態で示したようなデータ構造、すなわち地物配置情報433において車線基準線における特定制御開始点SPと特定制御終了点EPとが記憶されたデータ構造を変形して用いることが
図10に示されるような走行環境においては好適である。
【0059】
具体的には、「その他の危険」という地物815の体現する走行環境について、車線80との関係では、「その他の危険」として表される走行環境の始点SPと終点EPとを、地物配置情報433において、次のように設定すればよい。地物形状情報433には警戒しつつ走行すべき走行環境の始点SPとして、地物815の存在する位置として地物形状情報435に記憶された座標点のうちの一つの点から車線基準線810に垂線を下ろした場合の車線基準線810と垂線との交点811の地点が記憶される。
【0060】
そして、
図10における「その他の危険」として表される走行環境終点EPとしては、道路という営造物の設置または管理の瑕疵を生じさせないように、道路付近の危険箇所を調査すべき義務を負う道路管理者が把握している、道路脇の危険箇所の車両進行方向に対する終わりの地点の記録を入手し得られた情報である、道路脇の危険な箇所の終点から車線基準線810に垂線を下ろした場合の車線基準線810とその垂線との交点の座標が地物配置情報433において記憶されている。このように、地物の存在位置を表す座標点の情報だけでは地物の体現する特定の走行環境が車両進行方向に対し続く長さ情報が明らかにならない場合においても、地物配置情報433に走行環境の終点をあらかじめ設定しておくことで、特定の走行環境に対応した運転支援に必要な情報を車両管理部200は、必要な範囲で生成し車両制御部250に供給することが可能となる。
【0061】
D2.変形例2:
各実施形態の運転支援システム10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、車両状態取得部230が取得する情報は撮像カメラ(CCDカメラ)により得られたものであったが、これに限定されることなく、車両状態取得部230は、レーザーレーダーやミリ波レーダーにより物体から反射波として受けた情報を取得するものとしてもよい。