特許第6978477号(P6978477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6978477オンデマンドヒータおよび温度制御システム並びその関連プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978477
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】オンデマンドヒータおよび温度制御システム並びその関連プロセス
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   F24H1/10 302D
   F24H1/10 D
   F24H1/10 302F
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-202197(P2019-202197)
(22)【出願日】2019年11月7日
(65)【公開番号】特開2020-98091(P2020-98091A)
(43)【公開日】2020年6月25日
【審査請求日】2020年3月12日
(31)【優先権主張番号】16/189,250
(32)【優先日】2018年11月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519397965
【氏名又は名称】グラコ フルイド ハンドリング (エイチ) インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Graco Fluid Handling (H) Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヘクター ジョエル カスタネーダ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ラミレズ
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−083175(JP,A)
【文献】 特開2012−021689(JP,A)
【文献】 特開平11−083174(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0067824(US,A1)
【文献】 特開2000−220888(JP,A)
【文献】 特開平11−37558(JP,A)
【文献】 特開2008−77165(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第2007−0053339(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータ流体入口とヒータ流体出口との間に直列に配置された複数のヒータバンクを有するヒータを提供するステップと、
前記ヒータを通る総流体温度上昇を決定するステップと、
前記複数のヒータバンクの各ヒータバンクへ部分流体温度上昇を割り当てるステップと、
前記複数のヒータバンクの各ヒータバンクにおける出口流体温度を検出するステップと、
そして、各ヒータバンクそれぞれに専用の温度制御装置を介して、前記複数のヒータバンクの少なくとも2つのヒータバンクへの電力を調整するステップとを含み、
前記少なくとも2つのヒータバンクが、
少なくとも1つの上流のヒータバンクであって、割り当てられた前記部分流体温度上昇とは異なる検出された出口流体温度を有している、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクと、
前記少なくとも1つの上流のヒータバンクの下流の少なくとも1つの下流のヒータバンクであって、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクから検出された前記出口流体温度と、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクに割り当てられた前記部分流体温度上昇との比較に基づいて、電力の調整がされる前記少なくとも1つの下流のヒータバンクとを有しており、
前記ヒータ流体出口での、前記総流体温度上昇が達成される、流体のオンデマンド加熱の方法。
【請求項2】
前記ヒータに入る流体の温度を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記総流体温度上昇を決定するステップは、前記ヒータに入る前記流体の温度を、前記ヒータ流体出口での前記流体の所望の最終温度と比較するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記総流体温度上昇を決定するステップは、前記ヒータを通る流体流量を決定するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のヒータバンクの少なくとも2つのヒータバンクへの電力を調整するステップは、前記検出された前記少なくとも1つの上流ヒータバンクの前記出口流体温度が前記少なくとも1つの上流のヒータバンクに割り当てられた前記部分流体温度上昇よりも低い場合に、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクへの電力を増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のヒータバンクの少なくとも2つのヒータバンクへの電力を調整するステップは、前記検出された前記少なくとも1つの上流ヒータバンクの前記出口流体温度が前記少なくとも1つの上流のヒータバンクに割り当てられた前記部分流体温度上昇よりも高い場合に、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクへの電力を低下させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
部分流体温度上昇を割り当てるステップは、前記総流体温度上昇を前記複数のヒータバンクのヒータバンク総数で割るステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒータを通る流体の流れまたは圧力を検出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
超純水を前記ヒータに通すことを更に含み、前記超純水と接触する前記ヒータの表面が1以上の非汚染材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ヒータ流体入口およびヒータ流体出口と、
少なくとも1つの上流のヒータバンクと前記少なくとも1つの上流のヒータバンクの下流の少なくも1つの下流のヒータバンクとを含む複数のヒータバンクであって、互いに流体的に接続され、前記ヒータ流体入口と前記ヒータ流体出口との間に直列に配置された前記複数のヒータバンクと、
前記複数のヒータバンクの各ヒータバンクからの流体の出口温度を検出するための温度センサと、
前記少なくとも1つの上流のヒータバンクのための少なくとも1つの上流の温度制御装置であって、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクのための少なくとも1つの上流の温度センサと電気的に接続され、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクからの前記流体の前記出口温度と、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇との比較に基づいて、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクに供給する電力を調整するように構成されている、前記少なくとも1つの上流の温度制御装置、及び
前記少なくとも1つの下流のヒータバンクのための少なくとも1つの下流の温度制御装置であって、前記少なくとも1つの下流のヒータバンクのための少なくとも1つの下流の温度センサと電気的に接続され、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクからの前記流体の前記出口温度と、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクに割り当てられた前記部分流体温度上昇との比較に基づいて、前記少なくとも1つの下流のヒータバンクに供給する電力を調整するように構成されている、前記少なくとも1つの下流の温度制御装置を有している、コントローラとを含み、
前記ヒータ流体入口から前記ヒータ流体出口までの総流体温度上昇は、制御可能である、オンデマンドヒータ。
【請求項11】
前記流体は超純水を含み、前記オンデマンドヒータの流体接触面は、1つ以上の非汚染材料を含む、請求項10に記載のオンデマンドヒータ。
【請求項12】
前記コントローラに接続された流体の流れまたは圧力センサを含む、請求項10に記載のオンデマンドヒータ。
【請求項13】
前記コントローラは、各ヒータバンクのための専用の温度コントローラを有する、請求項10に記載のオンデマンドヒータ。
【請求項14】
前記ヒータ流体出口において所望の最終流体温度を手動で入力するためのユーザインターフェースを含む、請求項10に記載のオンデマンドヒータ。
【請求項15】
前記コントローラは、決定されたヒータ流体入口の流体温度および前記所望の最終流体温度に基づいて、前記総流体温度上昇を計算するように構成される、請求項14に記載のオンデマンドヒータ。
【請求項16】
前記コントローラは前記総流体温度上昇および前記複数のヒータバンクのヒータバンク総数に基づいて、部分流体温度上昇を計算し、各ヒータバンクに割り当てるように構成される、請求項15に記載のオンデマンドヒータ。
【請求項17】
前記複数のヒータバンクの少なくとも2つのヒータバンクに電力を調整するステップは、前記少なくとも1つの上流のヒータバンクの検出された出口流体温度が前記少なくとも1つの上流のヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇よりも低い場合に、前記少なくとも1つの下流のヒータバンクへの電力を増加することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は、2018年11月13日に出願した米国特許出願No.16/189,250「オンデマンドヒータおよび温度制御システム並びにその関連プロセス」に関する出願日の利益を主張するものである。
本発明は、オンデマンド流体ヒータに関する。より詳細には、本発明は制御された方法で流体を瞬時に加熱するための改良された制御システムおよびプロセスを有するオンデマンドヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
タンクレス、フロースルー又は瞬間水ヒータとも呼ばれるオンデマンドヒータは周知である。このようなヒータは、予め加熱された水が貯蔵されるタンクを利用しない。代わりに、水または他の流体は、蛇口などを開いたときなど、流体に対する要求に応答して流体がヒータを通って流れ始めるときなど、流体に対する要求があるときに加熱される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのタイプのヒータに関する重要な問題は、オンデマンドヒータが所望のユーザ温度要件に達するためにはヒータ内の流体の滞留時間が短いので、システム電力が高くしなければならないことである。高電力システムは、潜熱および流れと圧力の変化に対する遅い応答に起因する、さまざまな流量での温度のオーバーシュートや流れの無い状態を防止することができないため、問題となる。
【0004】
オンデマンドヒータまたはフロースルーヒータは、大型の貯蔵タンクまたは貯蔵タンクを排除するので、高純度プロセスにおいて従来の水ヒータよりも優れている。これは、脱イオン水などの高純度流体を加熱する場合に特に重要であり、バクテリアの成長、金属の濡れた部分、粒子汚染を排除して水の純度を維持する必要があるからである。大規模な貯蔵タンクでは、水の流れが停滞または鈍化している領域が存在し、細菌が増殖する可能性がある。
【0005】
従来技術のオンデマンド高純度流体または脱イオン水ヒータは、出力温度センサに依存して加熱要素に電力調整を行っている。しかしながら、出力の温度が仕様から外れると、ユーザのプロセス装置に仕様外の温度の流体が供給されるので、手遅れになる。これは、半導体等の製造におけるように、高純度流体が使用される製造プロセスに依存して問題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、必要に応じて、ヒータの流体入口と流体出口との間で加熱された流体の温度を調節することができ、流体の所望の最終温度が一貫した信頼性のある基準で達成される、改善されたオンデマンドヒータが引き続き必要とされている。本発明はこれらの必要性を満たし、他の関連する利点を提供する。
【0007】
本発明は、流体がヒータを通過するときに流体の温度をリアルタイムで加熱および調整するための改良された制御システムおよびプロセスを有するオンデマンドヒータに関する。
【0008】
オンデマンドヒータは一般に、ヒータ流体入口およびヒータ流体出口を備えている。複数のヒータバンクは互いに流体的に接続されており、ヒータ流体入口とヒータ流体出口との間に直列に配置されている。温度センサは、各ヒータバンクからの出口流体の温度を検出する。コントローラは、温度センサと電気的に接続されている。コントローラは各ヒータバンクの検出された出口流体温度と、各ヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇との比較に基づいて、各ヒータバンクによる流体の加熱レベルを調整するために、各ヒータバンクに供給される電力を独立して調整するように構成される。したがって、ヒータ流体入口からヒータ流体出口までの総流体温度上昇が制御可能である。
【0009】
ヒータは、ヒータ流体出口での所望の流体温度を手動で入力するためのユーザインターフェースを含んでいる。コントローラは、各ヒータバンクのための専用の温度コントローラを含むことができる。コントローラは、決定されたヒータ流体入口流体温度および所望の最終流体温度に基づいて、総流体温度上昇を計算するように構成されている。コントローラは総流体温度上昇およびヒータバンクの数に基づいて、部分流体温度上昇を計算し、各ヒータバンクに割り当てるように構成されている。ヒータはまた、コントローラに接続された流体の流れまたは圧力センサを含むことができる。
【0010】
流体は、超純水を含むことができる。ヒータの流体接触面は、1つ以上の非汚染材料から構成される。
【0011】
本発明の方法によれば、ヒータを通る総流体温度上昇が決定される。ヒータに入る流体の温度が決定される。総流体温度上昇は、ヒータに入る流体の温度をヒータ流体出口における流体の所望の最終温度と比較することによって決定される。これは、ヒータを通る流体流量を決定するステップをさらに含むことができる。
【0012】
部分流体温度上昇は、各ヒータバンクに割り当てられている。これは、総流体温度上昇を複数のヒータバンクの数で割ることによって行うことができる。
【0013】
各ヒータバンクにおける出口流体温度が検出される。ヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇とは異なる検出出口流体温度を有するヒータバンクへの電力が調整される。これは、検出された出口流体温度がヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇よりも低い場合に、ヒータバンクへの電力を増加させることによるものであってもよい。これは、代替的に、検出された出口流体温度がヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇よりも高い場合に、ヒータバンクへの電力を低下させることによるものであってもよい。コントローラは、1つ以上のヒータバンクへの電力を独立して調整する。このようにして、総流体温度上昇は、ヒータ流体出口で達成される。ヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇とは異なる検出された出口流体温度を有するヒータバンクへの電力を調整することに加えて、またはその代わりに、コントローラは、そのヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇とは異なる検出された出口流体温度を有するヒータバンクの下流の1つまたは複数のヒータバンクへの電力を調整することができる。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の原理を例として示す添付の図面と併せて、以下のより詳細な説明から明らかになるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の添付の図面は、本発明を例示する。
図1】本発明を具体化したヒータを部分的に切欠いている正面を示した図である。
図2図1のヒータを部分的に切欠いている側面を示した図である。
図3図1の線3-3に沿ったヒータの断面図であり、本発明による複数の直列に接続されたヒータバンクを示している図である。
図4】本発明のヒータの種々の構成要素を通って流れる流体の概略を示した図である。
図5】本発明の制御システムを含むヒータの様々な構成要素の概略を示した図である。
図6】本発明に従って使用されるコントローラおよび制御システムの概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面に示すように、例示の目的で、本発明は、一般に参照番号10で参照されるオンデマンド流体ヒータに関する。より詳細には本明細書でより十分に説明するように、本発明はヒータ10内の複数の加熱素子の各々に対するより望ましい電力調整のための改良された制御システムを有するオンデマンド流体ヒータ10に関する。
【0017】
より詳細には、本発明がオンデマンド流体ヒータ10に関し、この場合、流体は周囲温度のような開始温度でヒータに入り、加熱された流体のための介在する貯蔵タンクを使用することなく、所望の温度でヒータから出ることが期待される。本発明のヒータ10は流体、より詳細にはヒータ10を通って流れる流体を瞬時に加熱するために直列に配管された複数の電気ヒータバンクのための改善された制御システムを組み込みこんでおり、この加熱はリアルタイムに各ヒータバンクで独立して調整することができる。このような、特別な要求応答回路およびコントローラは、ヒータ10のそれぞれのヒータバンクの加熱素子に供給される電力を自動的に制御する。
【0018】
図1図3を参照すると、本発明を具体化したヒータ10が示されている。ヒータ10の種々の構成要素は、筐体12内に収容されている。タッチスクリーンまたはキーパッドなどによるユーザインターフェース14は、ユーザが容易にアクセスできるように筐体ハウジング12に取り付けられる。ユーザインターフェース14はユーザがヒータ10を出る流体の所望の温度を手動で入力することを可能にし、この温度は本明細書では温度設定値(SP)と呼ぶことができ、ユーザによって入力された値は、ヒータ10のコントローラに提供される。ユーザインターフェース14はまた、適切な率の流体がヒータ10を通って流れていること、およびヒータが正しく動作していることを確認し、必要に応じて任意のエラーを提供するために、ユーザによって使用されてもよい。
【0019】
LED等によって照明され得るような押しボタン16も、ユーザによるアクセスのためにハウジング12の外部に設けられてもよい。そのようなボタンは例えば、ヒータ10をオンにするか、またはその動作を開始するために、あるいは、緑色光などの使用によって、ヒータ10が動作モードにあり、エラーがないことを示す信号を使用することができる。ヒータ10が待機モードにあることを示すために、またはヒータ10の動作を一時的に一時停止するために、赤色LEDで照明され得る押しボタンなど、他の押しボタンが提供されてもよい。ボタン16の照明はユーザの便宜のためであり、ボタンまたはスイッチは、照明されなくてもよいことが理解されるのであろう。ヒータ10はまた、緊急オフ(EMO)スイッチまたはボタン18を含んでもよく、これは、ヒータ10の電力供給を中断し、必要が生じた場合に緊急状況においてヒータ10を完全にパワーダウンするために使用されてもよい。
【0020】
筐体ハウジング12は、電気パネル、コントローラ、ヒータバンク(またはモジュール)26、およびすべての必要な配管構成要素を備えている。電気パネル(図示せず)は、ファン及び排気口20で冷たく保たれる。ドア連動センサ22をヒータ10に組み込んで、筐体12内の構成要素へのアクセスを提供する筐体ドアが開いているときを検出し、ヒータ10のコントローラにその状態の情報を提供して、安全な動作を提供することができる。ヒータシステム10への入力電力は、筐体ハウジング12を通って延びる電気導管フィッティング24を介して導入することができる。
【0021】
特に図2を参照すると、ヒータ10は、流体入口28と流体出口30とを含んでいる。説明のために、図2にはヒータバンク26は含まれていないが、ヒータバンクは流体入口28と流体出口30との間に配置されていることを理解されたい。ヒータ10はヒータ10を通る流体の流れおよび圧力をほぼ一定に維持するために、流体入口28に隣接するような圧力調整器32を含むことができる。圧力変換器34、ゲージガード36、および熱電対アセンブリ38もまた、典型的には流体入口28の近くに含めることができる。これらの構成要素はヒータ10を通る流れ及び圧力を監視及び調整すると共に、流入する流体温度を決定するために利用することができる。容量性液体レベルセンサ40および流量センサ42も、これらの目的のために、およびヒータ10のコントローラにそのような情報を提供するために使用することができる。流量センサ42は、パドルホイール等の形態であってもよい。
【0022】
図1及び図3を参照すると、上述したように、複数のヒータバンク26がヒータ流体入口28とヒータ流体出口30との間に直列に配置されている。図3に示すように、各ヒータバンク26は、1つ以上のヒータモジュール44を含むことができる。流体は入口28を通って入り、流体がヒータ出口30を通って出るまで、パイプ46を通って各ヒータバンク26、および各ヒータモジュール44に、順次、連続的に流れる。したがって、流体は、ヒータバンク26の複数のモジュール44を通過する際に段階的に加熱される。よって、加熱される流体は入口28を通って入り、第1のヒータバンク26およびその第1のヒータバンク26の最初或いは第1のヒータモジュール44を通過し、次いで、その第1のヒータバンク26の各ヒータモジュールを順次通過し、次いで、最終または最後のヒータバンク26の最終出力ヒータモジュール44から出口30に出るまで、順次に残りのヒータバンク26を通過する。それぞれが3つのヒータモジュール44を有する合計3つのヒータバンク26が例示されているが、ヒータバンクおよびヒータモジュールの数は必要に応じて調整することができることを理解されるべきである。
【0023】
タンクレス、フロースルー、インスタントウォーターヒータ(瞬間水ヒータ)とも呼ばれるオンデマンドヒータ10はヒータモジュール44またはヒータバンク26内に1つまたは複数のチャンバを使用し、これらのチャンバは体積容量が比較的小さく、一般に、内部加熱要素のサイズよりもわずかに大きいだけである。各チャンバの小さな水保持容積は、加熱システムがそれを通って流れる流体を所望の温度にほぼ瞬間的に加熱することができるようにするのを助けている。さらに、チャンバ内に埋設された加熱要素は、加熱要素から流体に電気エネルギーを迅速に伝達するように構成されている。
【0024】
本発明のヒータシステム10は、改善された温度制御を有するオンデマンド型の超純水(UPW)システムに特に適している。超純水は、非常に厳しい仕様に精製または加工された水である。超純水は、最高レベルの純度に処理され、半導体等の製造に広く使用されている。半導体製造会社はUPWを使用して、化学薬品を塗布した後にウェーハを洗浄し、化学薬品自体を希釈し、液浸フォトリソグラフィのための光学システムにおいて、またはいくつかの重要な用途における冷却流体の補充として使用している。UPWまたは脱イオン水またはその他の高純度流体はウェーハに直接接触するので、損傷をなくすためにすべての不純物を除去する必要がある。
【0025】
オンデマンドヒータまたはフロースルーヒータは、大型の貯蔵タンクまたは保持タンクを必要としないので、高純度プロセス用途において従来の水ヒータよりも優れている。これは高純度の脱イオン水等を加熱する場合に特に重要であり、バクテリアの成長、金属の濡れた部分、粒子汚染を排除して水の純度を維持する必要があるからである。大型の貯蔵タンクでは、水または他の流体の流れが停滞または鈍化している領域が依然として存在している。
【0026】
本発明のヒータ10は各ヒータバンク26とヒータモジュール44を直列に配管することにより、各々が同じ高流量を見ることにすることより、細菌増殖の可能性を排除する。さらに、ヒータチャンバは流体が各チャンバを通って流れるにつれて流体の乱流を増大させ、浄化された流体が流れを停止し、停滞したままである配管内の「デッドレッグ」を排除するように設計されている。
【0027】
本発明は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び/又はペルフルオロアルコキシ(PFA)のようなフルオロプラスチック材料で作られた入口及び出口を有するヒータハウジングを作ることによって、金属で濡らされた部分を排除することができる。ヒータハウジングは、PFAで被覆された加熱要素を含むことができる。ヒータセンサはまた、PFA材料に埋め込まれてもよい。本発明のヒータは、全てのPDVF又はPFA湿潤表面を有する方法で製造される複数のヒータモジュール44を含むことができる。好ましくは、金属で濡らされた表面が存在せず、したがって、脱イオン水または精製水または他の精製流体の汚染が回避される。
上述したように、ヒータモジュール44はそれを通って流れるときに、より大きな流体乱流に寄与し、デッドレグを排除するように設計されている。従って、流体の純度はヒータ10を通して維持される。
【0028】
次に図4を参照すると、流体が本発明のヒータ10を通って流れるときの流体の経路が概略図で示されている。図3と同様に、ヒータ10は、HTR1〜HTR9によって識別される3つのヒータモジュール44をそれぞれ含む3つのヒータバンク26を有するものとして示されている。ヒータバンク26およびヒータモジュール44の実際の数は、変更することができる。しかしながら、ヒータバンクおよび/またはモジュールは直列に配管され、各ヒータモジュール44またはバンク26はそれを通って流れる最大流体流量を見ることになり、その結果、水のよどみのためのすべての領域が排除される。脱イオン化水または他の超純水のような流体はヒータまたはシステムに流入する流体入口28を経由して入り、次に、流体供給が高圧になった場合でも安全な内部圧力が維持されるように、システムに流入する最大許容流体圧を制限する圧力調整器(PR)32を介して流入する。次に、流体は入口熱電対(T50)38および圧力変換器(PT)34を通って流れ、これらは入ってくる流体の温度および圧力をコントローラに提供する。好ましくは、センサ34および38の両方が超純水流体から分離される。入口熱電対38は、PFA材料内に封入することができる。圧力変換器34は、PFAダイアフラムを有するゲージガードを含んでもよい。次いで、流体は流体の流量を測定し、その情報をコントローラに提供する流量センサ(FS)42を通って流れる。
【0029】
図4に示す例示的なヒータでは、オンデマンドヒータは3つのヒータバンクを有し、第1のヒータバンクはヒータモジュールHTR1〜HTR3を含み、第2のヒータバンクはヒータモジュールHTR4〜HTR6を有し、第3のヒータバンクはモジュールHTR7〜HTR9を有する。熱電対(T51〜T53)の形態の温度センサ51〜53は、各ヒータバンク26の流体出力、または各ヒータバンクの最終または出力モジュールに隣接している。熱電対は、ヒータバンクを出た流体温度の読み取りを行う。したがって、例えば、温度センサT51は第1のヒータバンクを出る流体温度を測定し、温度センサT52は第2のヒータバンクを出る温度を測定し、温度センサT53は、第3の最終ヒータバンクを出る温度を測定する。これらの温度センサまたは熱電対からの温度読み取り値の各々は、コントローラに送信される。流体はヒータから出力される前に、容量性液体レベルセンサ(LS)などのセンサ48を通過して、ヒータを通る流体の適切な流れがあることを保証することができる。
【0030】
各ヒータモジュール(HTR1〜HTR9)44は、熱遮断装置(TF1〜TF9)と、それに関連する加熱素子温度センサ(HL1〜HL9)を有してもよい。熱遮断装置は、ヒータモジュール内の流体が所定の安全でない温度に達した場合に回路を開く。前記加熱素子温度センサは加熱素子の温度を測定し、測定値をコントローラに提供する。
【0031】
次に図5を参照すると、図は、流体流路と、システムセンサとヒータモジュールとの間のインターフェースと、コントローラ50とのそれらのインターフェースとを示している。超純粋な脱イオン水などの流体はオンデマンドヒータ10を通って流れ、そこで所望の温度に達し、次いでオンデマンドヒータシステムに出力され、ヒータ流体出口を通過した後にプロセス装置に流れる。流体はシステムに入り、圧力、流量、および入ってくる流体温度の読み取り値は、圧力変換器(PT)、流量センサ(FS)、および温度センサ(Tin)を含むそれぞれのセンサによって連続的に取得される。これらの読み取り値からの情報は、コントローラ50に送られる。次に、流体は各ヒータモジュールおよびヒータバンクを直列に通って移動し、1つのモジュールから出てくる流体の完全な流れが、次の後続のモジュールおよびヒータバンクに供給される。このようにして、各ヒータモジュールおよびヒータバンクはシステムの全流量およびより高い流量を見るとともに、停滞流体を引き起こし得る配管の領域を排除し、したがって、細菌成長または粒子捕捉の可能性を最小限に抑える。温度センサ51〜53(T1〜T3)がこれらの対応する領域における流体の温度を測定するために、各ヒータバンクの流体出力に配置される。これらの温度読み取り値は、コントローラ50に提供される。このようにして、コントローラ50はユーザの所望の温度設定値(SP)またはヒータを出る最終流体温度に到達するためにヒータバンクが行っている工程を分析し、評価することができる。コントローラ50は、各ヒータバンクが必要に応じてヒータを流れる流体を加熱するための異なる電力に寄与するように、各ヒータバンクの電力を独立して制御するための独立した出力信号を有する。コントローラ50はヒータバンクソリッドステートリレー(SSR)に信号を送り、ヒータバンクソリッドステートリレー(SSR)は、各ヒータバンクの電力出力を制御する。
【0032】
各ヒータモジュール44(HTR)は熱ヒューズとしても知られる熱遮断装置(TCO)を含み、モジュール内の流体が所定の安全でない状態に達した場合にコントローラ50に信号を送る。
各ヒータモジュールは加熱要素の温度を測定し、その情報をコントローラ50に送信する過熱加温センサ(HL)も含み、これはセーフティリレー57を遮断し、したがって、1つまたは複数の加熱要素の安全でない温度が検出された場合、電源55からの電力を遮断する。コントローラ50はまた、高圧、低流体流、または低流体レベルが検出された場合、セーフティリレー57を遮断する。入力電源55はオンデマンドヒータが動作するための電圧を提供し、セーフティリレー57は好ましくは安全でない状態が検出されたときに、コントローラ50がシステムへの電力を安全に遮断するように、システムへの入力電力の近くに配置される。
【0033】
従来技術のオンデマンドヒータは、出力温度センサに依存して、ヒータの電力調整を行う。しかしながら、出力における温度が仕様から外れると、ユーザのプロセス装置に仕様から外れた温度の水が供給されるので、手遅れになる。これに対して、本発明では超純水、脱イオン水、または他の流体の温度は、システムを通過する際に検出される。コントローラ50は、ユーザの最終の温度設定値、流量、および流入流体温度に基づいて、各ヒータバンク26の後の各点でどの温度に到達すべきかについて計算を行う。本発明は各ヒータバンク26から出るときの流体温度の状況を評価して、温度がどこにあるべきかを判定し、沿わない場合には、個々のヒータバンクに調整を行う。例えば、検出されたヒータバンクからの出口流体温度がそのヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇よりも低い場合に、ヒータバンクへの電力を増加させることができる。逆に、ヒータバンクからの検出された出口流体温度がそのヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇よりも高い場合には、ヒータバンクへの電力を減少または低下させることができる。加えて、または代替として、上流のヒータバンクからの検出された出口流体温度がその上流のヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇未満である場合、電力は1つ以上の下流ヒータバンクに増加されてもよく、逆に、検出された出口流体温度が上流のヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇よりも大きい場合、電力は、1つ以上の下流ヒータバンクに低下されてもよい。このようにして、ヒータシステムの応答は、より速く、より正確で、一貫した流体温度が得られる。
【0034】
次に図6を参照すると、制御システムおよびその動作の図が示されている。制御システムは、ユーザが温度設定値(SP)となる所望の最終水温にすることを可能にする、タッチスクリーンまたは押しボタンなどのユーザインターフェース14を有する。これは、ユーザによって手動で入力され、値はコントローラ50に提供される。コントローラ50は必要デルタ温度(Required Delta Temperature)とも呼ばれる総流体温度上昇を決定し、ヒータは、前記SPから読み取った入力温度センサ(Tin)38の値を差し引くことによって提供しなければならない。この値はユーザの要求を満たすために、オンデマンドヒータがヒータを通って流れるときに流体を持ち上げる必要がある程度の量である。
【0035】
コントローラ50はまた、それぞれのヒータバンクに割り当てられる部分流体温上昇(DeltaT)を決定する手段を有する。コントローラ50は、必要デルタ温度、即ちヒータを通る総流体温度上昇をヒータシステム内のヒータバンクの数で除算する除算器を有する。これにより、本明細書では部分流体温度上昇とも呼ばれる、各ヒータバンクに割り当てられるヒータバンク当たりのDeltaTが得られる。この値は各別個の独立したバンク温度制御装置に送信され、各バンク温度制御装置はそれぞれのヒータバンクへの電力を調整する。例示的なヒータは3つのヒータバンクを含むので、図6には3つのバンク温度制御装置54が示されているが、特に好ましい実施形態では各ヒータバンクがそれに関連する独立したバンク温度制御装置を有するように、ヒータバンクの数に応じてその数は変化する。
各バンク温度制御装置54は、温度センサ51〜53によってヒータバンクの出力における流体の温度読取り値が与えられたDeltaT/バンクまたは部分流体温度上昇目標値を比較する。各バンク温度制御装置54は各それぞれのヒータバンクにおける流体の温度を調整し、したがって、流れ、圧力の変化に対してより速く応答することができ、ヒータバンクからの検出された出口流体温度がそのヒータバンクに割り当てられた部分流体温度上昇またはそのヒータバンクに割り当てられたDeltaTとは異なる場合に、より速く応答することができる。従来技術とは対照的に、バンク温度制御装置54は各ヒータバンクにおける即時の局所状態に応答し、流体がシステム出力になるまで遅延されない。
【0036】
従来技術のオンデマンドヒータは、出力温度センサに依存して、ヒータの電力調整を行っている。出力における温度が仕様から外れると、ユーザのプロセス装置が仕様温度から外れた流体を受け取るので、手遅れとなる。本発明は流体がシステムを通過する際に流体の温度を検出するための手段を提供し、制御装置は、ユーザ設定値即ち最終流体温度と流入流体の温度との間の差異、ならびにヒータを通る流体流量によって決定される、ヒータを通る総流体温度上昇に基づいて、各点でどの温度であるべきかを計算する。本発明は各ヒータバンク26から出るときの流体温度の状況を評価して、温度がどこにあるべきかを決定し、沿わない場合には、個々のヒータバンクを調整することができる。このようにして、ヒータシステムの応答がより速くなり、ヒータを出るより正確で、一貫した流体温度が得られる。
【0037】
各ヒータバンク26はそれに動作可能に結合された独立したバンク温度制御装置54を有し、このバンク温度制御装置54は、ヒータバンク流体出力温度読取り値を、そのヒータバンクに割り当てられた予想されるデルタT/バンク温度または部分温度上昇と比較する。温度が予想温度よりも低い場合、バンク温度制御装置54はヒータバンク出力への信号、即ち、ヒータバンクを制御するSSRに送信する信号を調製する。したがって、各ヒータバンクに供給される電力を増加または減少させることによる温度調整は、ほぼリアルタイムで調整される。
【0038】
前述のように、液体レベルセンサ、流量センサ、圧力変換器、熱遮断装置(TC01-TC09)および加熱要素(HL1-HL9)上の温度センサを含むセーフティセンサは、その読み値をセーフティ制御装置56に送信し、これはセーフティリレー57が安全でない状態が検出された場合、ヒータパワーを停止するように信号を送る。
【0039】
いくつかの実施形態を例示の目的で詳細に説明してきたが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な修正を行うことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除き、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0040】
10 オンデマンド流体ヒータ
12 筐体ハウジング
14 ユーザインターフェース
16 押しボタン
18 ボタン
20 ファン及び排気口
22 ドア連動センサ
24 電気導管フィッティング
26 ヒータバンク
28 ヒータ流体入口
30 ヒータ流体出口
32 圧力調整器
34 圧力変換器
38 熱電対アセンブリ
40 容量性液体レベルセンサ
42 流量センサ
44 ヒータモジュール(HTR)
46 パイプ
50 コントローラ
51〜53 温度センサ
54 バンク温度制御装置
55 電源
56 セーフティ制御装置
57 セーフティリレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6