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特許6978491地面マーキングを認識するための画像処理方法、および地面マーキングを検出するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978491
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】地面マーキングを認識するための画像処理方法、および地面マーキングを検出するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20211125BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   G06T7/00 300F
   G06T7/00 650A
   G08G1/16 C
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-511815(P2019-511815)
(86)(22)【出願日】2017年5月11日
(65)【公表番号】特表2019-517089(P2019-517089A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】FR2017051143
(87)【国際公開番号】WO2017194890
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2020年4月20日
(31)【優先権主張番号】1654322
(32)【優先日】2016年5月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518403447
【氏名又は名称】アンスティテュ ヴェデコム
(73)【特許権者】
【識別番号】512208084
【氏名又は名称】アンスティテュ フランセ デ シアンス エ テクノロジ デ トランスポール,ドゥ ラメナジュモン エ デ レゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】レヴィルド, マルク
(72)【発明者】
【氏名】ラーハル, モハメド シェリフ
(72)【発明者】
【氏名】グルイェール, ドミニク
【審査官】 千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−602(JP,A)
【文献】 特開2004−205527(JP,A)
【文献】 特開平11−213137(JP,A)
【文献】 特開平10−124687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方および/または後方の地面の少なくとも1つの画像を受領するステップを含む、地面マーキングを認識するための画像処理方法であって、前記方法は、信頼マップに対応するデジタル画像をコンピュータ計算するステップを含み、前記ステップは、取得された前記画像の各画素に、マーキングゾーンに属する前記画素の信頼度に対応する値を割り当て、次いで、次式の関数f、
ただし、
は回帰関数であり、
− xは、エージェントが横切るi番目の画素のx座標に対応し、
− yは、エージェントが横切るi番目の画素のy座標に対応し、
− wは、エージェントが横切るi番目の画素のグレー値Vに対応し、
− Bは、関数空間を指し、
− λは、道路のタイプの関数である平滑化パラメータを指す、
を最小化することによるマーキング検出ステップを実施することに基づいている、方法。
【請求項2】
パラメータλを、ジオロケーションシステムから生じるデータに基づいて調整するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の地面マーキングを認識するための画像処理方法。
【請求項3】
車両の前方および/または後方の地面の少なくとも1つの画像を受領するステップを含むことを特徴とし、前記方法は、取得された前記画像を、カメラ視野内の地面のレベルより上方に位置する要素を検出するための検出モジュールから生じるデータを使用して、部分的にマスキングするステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の地面マーキングを認識するための画像処理方法。
【請求項4】
− 車両の前方および/または後方の地面の少なくとも1つの画像を受領するステップと、
− 前記画像の各画素に、マーキングに属する前記画素を表すデジタル指標を割り当てることに基づく、前記画像を前処理するステップと、
− マルチエージェントプロセスを初期化するステップと、を含み、マルチエージェントプロセスを初期化するステップは、
− 各々がN個の隣接する画素の知覚領域が関連付けられている複数のエージェントを伝搬させ、前記画像のエッジ画素[1つの画素]のところから始めて前記画像の光学中心のほうに向かって移動すること、
− 前記知覚領域での、前記領域に属する前記画素の前記デジタル指標によって重み付けされた前記知覚領域の重心に向けての、前記エージェントの各々の移動を命令すること、
− 画像ストリップのエッジが少なくとも1つのマーキングを含む限り、前記エージェントの各々について、前記ステップを反復すること、
− 前記エージェントの各々について、通過した画素の座標、および前記領域に属する前記画素のデジタル指標の値を記録すること、
− 記録された最大のデジタル値を有するエージェントを選択すること、
− 前記エージェントの記録のシーケンスを記録すること
からなり、
次いで、前記初期化するステップに続いて、新たな画像ごとに、
− 以前の推定中に得られたマーキング推定値と前記画像のエッジとの間の交点に基づいて、エージェントの各々の開始位置を再推定するステップと、
− 以前のステップ中に選択されたエージェントを、前記開始位置のところで再初期化するステップと、
次いで、
− 前記選択されたエージェントの全てを伝搬させ、前記開始位置のところから始めるステップと、
− 前記知覚領域での、前記領域に属する前記画素の前記デジタル指標によって重み付けされた前記知覚領域の重心に向けての、前記エージェントの各々の移動を命令するステップと、
− 画像ストリップのエッジが少なくとも1つのマーキングを含む限り、前記エージェントの各々について、前記ステップを反復するステップと、
− 前記エージェントの各々について、通過した画素の座標、および前記領域に属する前記画素のデジタル指標の値を記録するステップと、
− 記録された最大のデジタル値を有するエージェントを選択するステップと、
− 前記新たな画像についての前記エージェントの記録のシーケンスを記録するステップと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の地面マーキングを認識するための画像処理方法。
【請求項5】
記録の各々について、属することのデジタル指標の値によって重み付けされた、3次スプライン法を用いた平滑化を施すことに基づく処理ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の地面マーキングを認識するための画像処理方法。
【請求項6】
マーキング検出手段間でデータを交換するための手段を含むことを特徴とする、請求項3に記載の地面マーキングを認識するための画像処理方法。
【請求項7】
少なくとも1台のカメラ(1から3)と、コンピュータ(5)とを備える、地面マーキングを検出するためのシステムであって、前記コンピュータ(5)が、車両の前方および/または後方の地面の少なくとも1つの画像を受領するステップを含む、地面マーキングを認識するための画像処理を命令するためのプログラムを実行することを特徴とし、前記命令が、信頼マップに対応するデジタル画像をコンピュータ計算するステップを含み、前記ステップは、取得された画像の各画素に、マーキングゾーンに属する前記画素の信頼度に対応する値を割り当て、次いで、次式の関数f、

ただし、
− fは回帰関数であり、
− xは、エージェントが横切るi番目の画素のx座標に対応し、
− yは、エージェントが横切るi番目の画素のy座標に対応し、
− wは、エージェントが横切るi番目の画素のグレー値Vに対応し、
− Bは、関数空間を指し、
− λは、道路のタイプの関数である平滑化パラメータを指す、
を最小化することによって、
スプラインをコンピュータ計算するためにマーキング検出のステップを実施することに基づくことを特徴とする、地面マーキングを検出するためのシステム。
【請求項8】
道路の平面上の全ての要素を検出するために前記車両の前方の方向走査し、障害物または車両によって暗化された地面上のゾーンの処理を防ぐために画像空間をフィルタリングすることができるようにする、可動レーザによって形成されたライダ(7)をさらに備えていることを特徴とする、請求項7に記載の地面マーキングを検出するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その内容(本文、図面、および特許請求の範囲)が参照によりここに組み込まれている、2016年5月13日に出願した仏国出願1654322の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、地面マーキング、具体的には、道路マーキングまたは車両駐車場上のマーキングの、認識の分野に関する。
【0003】
「マーキング」は、走行面(driving surface)(道路または交通エリアまたは駐車場)とは異なる色であり、かつ走行車線のサイドを定める、地面の線を意味するものである。地面の線は、連続的でもよく、断続的でもよい。「マーキング」は、走行面のエッジ、すなわち、交通のためのものである、例えばアスファルトからなる表面と路肩との間の境界線を意味するものでもある。
【0004】
道路マーキングを検出するための方法は一般に、自動車両の運転者を、例えば車両が走行車線から逸れた時に音および/または光信号を放出することによって支援するために使用される。このタイプの方法を、例えば検出された道路マーキングに基づいて車両のスピードおよび/または方向を自動制御することによる自動車両の自動制御に使用することも意図される。
【0005】
その適用分野は、車線エッジのパラメータのリアルタイム推定、自動運転ドライバレス車両の設計、存在するマーキングの質および起こり得る劣化を評価するための道路資産の解析、先進の地理参照型データベース(georeferenced database)の設計、アダプティブスピードリミッタ(adaptive speed limiter)などに基づいて、運転者が自身の車両をその走行車線内に維持するのを支援する、先進運転支援システム(ADAS)への情報の提供にも関係する。
【0006】
道路マーキング線を追従および認識する際の技術的困難は、影、まぶしさ、障害物による暗化などの影響を受ける、オンボードでの画像取得状況の結果として生じている。
【0007】
Ieng、Tarel、およびCharbonnier、「Estimation robuste pour la detection et le suivi par camera」[Robust estimation for camera detection and following]、Traitement du signal[Signal processing]第21巻第3号、205〜226頁、2004という文献では、画像内の道路マーキングを検出するための方法について記載している。この方法では、代表的な道路マーキングである曲線のパラメータが推定される。この推定は、道路マーキングの一部分に対応することのできるものとして画像から抽出された1組の点、および抽出された点と道路マーキングとの間の統計的一致によってモデリングされたノイズの関数に基づいている。
【0008】
しかし、道路マーキングを検出するための知られている方法は、信頼度の限られたものであるということが分かっている。具体的には、例えば道路の状態、照明、可視性、寄生要素の存在、道路マーキングの欠如、または2つの道路マーキングが互いに近くに存在することのため、道路マーキングを検出するための知られている方法は、不正確なまたは誤った結果をもたらすことがある。さらに、道路マーキングを検出するための方法は、マーキングされていない道路の場合は役に立たない。
【0009】
一般的に言うと、地面マーキングを認識するための方法は、2つのステップにおいて機能する。
【0010】
第1に、道路マーキングの基本要素が、カメラデータから抽出される。
【0011】
第2に、基本要素が、そこから走行車線を抽出するために、数学的方法(多項式回帰、RANSAC、ハフ変換)を使用して空間的に解析される。このモデルが、LIVIC複数車線検出アルゴリズムの開発に使用された。
【0012】
最新技術
欧州特許EP1221643からは、道路マーキング線を認識するためのデバイスおよび方法が従来技術から知られている。この方法は次の、
− 車両の前方の道路の画像を取得するステップと、
− 画像データに基づいて、走行車線の検出ウィンドウを確立するステップと、
− 当該の走行車線検出ウィンドウ内の各点における輝度データのアイテムに基づいて、検出ウィンドウを通過する走行車線マークを検出するステップと、
− 複数の他の走行車線検出ウィンドウを確立するステップと、
− 各ノイズ検出ウィンドウ内のエッジ強度を検出するステップと、
− 各走行車線検出ウィンドウの重み付け値を、考慮している各ノイズ検出ウィンドウ内のエッジ強度に従って修正するステップと、
− 検出される走行マークのいずれか、および修正された重み付け値を使用して、道路プロファイルを計算するステップと
を含む。
【0013】
次の論文、AHARON BAR HILLEL他、「Recent progress in road and lane detection:a survey」、MACHINE VISION AND APPLICATIONS、第25巻、第3号、2014年4月1日(2014−04−01)、727〜745頁、XP055113665、ISSN:0932−8092、DOI:10.1007/s00138−011−0404−2も、従来技術において知られている。
【0014】
この文献では、道路マーキング線、主として直線を、さまざまな代替手段を実施して検出するための解決策について記載しており、代替手段のうちの738頁に記載されたものが、3次スプラインの多項式関数を使用することを提案している。
【0015】
BROGGI他、「An agent based evolutionary approach to path detection for off−road vehicle guidance」、XP027922645という論文も知られており、その論文は、全く異なる問題、すなわち、全地形対応車両を走行面のエッジに対して誘導するという問題に関するものである。
【発明の概要】
【0016】
従来技術の解決策は、完全に満足のゆくものというわけではない。具体的には、それらは、例えば主車線からの出口車線のマーキングの場合に遭遇する、漸進的な角加速度を有する曲率半径変化トポロジを認識するのにあまり適していない。直線と円との間で連続的であるとともに漸進的な角加速度を有する、クロソイドと呼ばれるこれらの接続ゾーンは、従来技術の解決策を使用して認識するのが困難であり、というのも、処理が、直線または定曲率を有する線を認識することの可能な幾何モデルに基づいているためである。多項式次数が上がる場合、増加したノイズが認識損失を招く。
【0017】
AHARON他の文献に記載されている、3次スプラインタイプの回帰関数を実施する解決策は、ワイルドポイント(wild point)の存在の影響を非常に受けやすいので、満足のゆくものではない。したがって、この種の処理方法のロバスト性の欠如は、自律的車両誘導適用分野と適合しない。
【0018】
これらの欠点を克服するために、本発明は、主クレームによる地面マーキングを認識するための画像処理方法、および従属クレームにおける変形形態に関する。
【0019】
本発明は、本発明の非限定的実施形態についての次の詳細な説明を、添付の図面を参照して読めばすぐに、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】− 本発明のハードウェアアーキテクチャの概略図である。
図2】− 本発明の機能アーキテクチャの概略図である。
図3】− マーキング検出モジュールの一実施形態のロジックダイアグラムである。
図4】− マーキング検出エージェントを用いたシミュレーションの一実施形態のロジックダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ハードウェアアーキテクチャ
図1は、自動車両内に設置された、一実施形態による地面マーキング認識システムのハードウェアアーキテクチャの概略図である。
【0022】
説明する実施形態では、システムは、3台のカメラ(1から3)を備え、そのうち、2台は車両の前部の右手側および左手側に配置され、1台は車両の後部のところの中心に位置付けられる。カメラ(1から3)の各々の画角はフラットであり、すなわちその視野は、高さよりも幅のほうが広い。
【0023】
イーサネットネットワークスイッチ(4)が、カメラ(1から3)から信号を受領し、前記信号をコンピュータ(5)に送出する。このコンピュータ(5)では、マーキングの処理および検出ができるようになっている。
【0024】
第2のコンピュータ(6)が、マーキングに関する、スプラインの形をとるデータを受領し、車両を誘導するためにスケジューリングアルゴリズムを施す。
【0025】
カメラ(1から3)には、電源(7)によって電力が供給される。あるいは、カメラ(1から3)は、パワーイーサネット技術を使用して、ネットワークケーブルによって直接給電されてもよい。
【0026】
カメラ(1から3)の各々の、車両の後車軸に関連付けられたリポジトリに対する位置および向きは、車両上にカメラが設置される時のカメラ較正プロセスによって分かる。
【0027】
カメラと物体モデルの対に直接対応する内因性パラメータ、ならびに後車軸に対する位置および向きに対応する外因性パラメータが、カメラ(1から3)の各々について決定される。
【0028】
コンピュータ(5)は、ステアリングコラムの角度位置センサおよび後輪の回転スピードを検出するセンサによって提供される、サービス信号も受領する。CANネットワークがこれらのデータを車両に、インターフェース回路(8)を介して送出する。
【0029】
このデータにより、以前の反復において検出されたマーキングの位置を、マーキングを現在の反復中に行われる検出上にマッピングするために、定期的に再計算することが可能になっている。
【0030】
可動レーザによって形成されたライダ(9)により、道路の平面上の全ての要素を検出するために、また地面の、障害物または車両によって暗化されたゾーンの処理を防ぐべく画像空間をフィルタリングするために、車両の前方の方向の走査ができるようになっている。
【0031】
機能アーキテクチャ
カメラ(1から3)によって取得された画像は、モジュール(11)によって画像処理にかけられ、モジュール(11)は、ライダ(9)によって送出されたデータを処理するマスキングモジュール(12)から生じるデータも受領する。
【0032】
モジュール(11)は、マスキングに対応する可能性の高いゾーンの輝度を上げるか、または道路マーキングに対応する可能性の低いゾーンの画素輝度を下げて、グレースケール画像の形をとる信頼マップを計算する。
【0033】
換言すれば、画像の各画素のレベルは、画素が道路マーキングに属する確率を表す。
【0034】
マーキング検出オペレータ
信頼マップは、道路マーキング検出オペレータによって計算される。
【0035】
道路マーキング検出オペレータの目的は、後にマーキング追跡エージェントによって使用される信頼マップを作成することである。
【0036】
畳み込みオペレータ
第1のオペレータは、所与の画素の水平近傍(horizontal vicinity)と完全なマーキングモデルとの間の畳み込みに基づいている。線の全ての画素によって特徴付けられる関数fが、矩形関数に対応する曲線gと畳み込まれる。このオペレータはl、すなわち道路マーキングの推定幅、の関数であり、推定幅は、矩形関数の幅に対応する。畳み込みは、以下のように定義される。
ただし、
− Yは、画像の線中の処理される画素の横座標に対応し、
− mは、整数変数に対応し、
− l(y)は、画素の信頼度を表すグレースケールに対応し、
− アルファは、gの高/低比に対応し、
− Sは、画像空間内に投影され、かつyを中心とする道路マーキングの公称幅に対応する、所定のパラメータに対応し、
g(m)は、以下のように定義される。
【0037】
したがって、モジュール(11)によって行われるこの処理により、道路マーキングに属する高い確率を有するゾーンを区別する信頼マップに対応する、画像の各画素の値を計算することが可能になっている。
【0038】
モジュール(11)によって行われるこの処理は、マスキングモジュール(12)によって提供されるマスキングデータのアイテムに対応する画像ゾーン内では阻止される。
【0039】
マーキングの検出
モジュール(11)によってコンピュータ計算された画像に基づいて、検出モジュール(13)が、マルチエージェント法を用いた処理を遂行し、道路マーキングに対応するスプラインを検出する。
【0040】
エージェントの知覚領域(field of perception)の決定
エージェントの知覚パターンは、三角形の知覚領域に基づいている。知覚領域は、頂点(エージェントの位置に対応する点)、および幅2.S(ただし、上で定義したSは、画像空間内に投影されたマーキングの公称幅に対応する)を有する底辺、自車両からの距離(エージェントによって処理されるゾーンの、車両の基準点からの距離)の関数である深さLによって定められる。この三角形は、底辺に垂直でありかつ頂点を通過する軸に対応する、エージェントの方向に対応するベクトルVagentを定める。
【0041】
エージェントによって処理される信頼画像の画素のセットを定めるために、次いで、三角形視野が画像空間内に投影される。
【0042】
エージェントの移動パターンの決定
移動パターンは、上で定義した三角形視野の、視野の画素の値によって重み付けされた重心を計算することによって決定される(あまりにも低い値を有する画素を排除するために、低しきい値化がオプションで施される)。
【0043】
重み付けされた重心により、エージェントが目指すターゲット点が決定する。三角形の頂点および重心の座標によって定められる、ベクトルVagentとベクトルVdisplacementとの間の角度が計算される。
【0044】
エージェントの知覚領域内に含まれる点のセットがしきい値よりも少ない場合、重心を計算することは不可能である。
【0045】
この場合、ターゲットは、1つまたは複数の隣接するエージェントから生じるデータに基づいて決定されてよい。この状況は、例えば、エージェントが2つのダッシュ間を伝搬するとともに隣接するエージェントが連続的なマーキング内を伝搬する時に発生する。この場合、第1のエージェントの伸展方向の伸展は、第2のエージェントの伸展方向の伸展と同一である。
【0046】
エージェントが、重心を計算することができず、重心を計算することのできるどんな隣接するエージェントも有していない場合、移動の角度は変更されないままであり、エージェントは、以前に指定された方向に移動し続ける。
【0047】
エージェントは、所定の値に制限された角度に対応する方向に移動する。所定の値は、道路のタイプとこの検出プロセスに意図される最大曲率との関数である。この値は、車両が上を走行している車線のタイプについての仮定に基づいて、可変(車線が高速道路である場合はより低い値、車線が州道である場合はより高い値)とすることができる。
【0048】
移動の長さは一定であり、2つの画素間の距離に対応する。
【0049】
エージェントの挙動
エージェントは、画像空間内の水平に対応する線まで、知覚ステップと移動ステップを反復的に交互させる。
【0050】
エージェントが通過する各点のところで、対応する画素の値およびエージェントの位置が、対[V,P]として記録され、xは、エージェントの出発点と到着点との間で変化する。
【0051】
エージェントの選択
次のステップは、その変位がマーキングに対応するエージェントを選択することを含む。
【0052】
この目的のために、検出されるマーキングのタイプの各々について比Rroadが記録される。例えば、連続的なマーキングの場合、比は1である。
【0053】
不連続のマーキングの場合、比は、マーキングの変調に応じて0と1との間である。
【0054】
エージェントは、
− ○所定のしきい値より上の画素の値Vと、
○所定のしきい値未満の画素の値V
との比Ragent iが、予め定められた許容マージンのある状態で、比Rroadよりも低い、
または
− エージェントによって記録された画素の平均強度Vが、所定のしきい値より上である
場合、維持される。
【0055】
エージェントの作成
エージェントは、底辺エッジ上の、画像の右側または左側に作成され、画像の光学中心のほうに向かって移動する。
【0056】
3つの段階、
− 所定の距離だけそれぞれ分離された複数N個のエージェントが信頼画像上に送られる、初期化段階、
− 選択されたエージェントの以前のトレースが、対応するエージェントをその位置においてそのトレースの開始時に再初期化するのに使用される、再初期化段階、
− 各反復時の、
○選択された最も右手側エージェントの右側へのエージェント
または
○選択された最も左手側エージェントの左側へのエージェント
の作成、
が区別される。
【0057】
選択されるサイドは、各反復時に変更される。
【0058】
道路マーキングの形状の推定
道路マーキングの、またはマーキングの3次スプラインの形状は、エージェントが横切る全ての画素に基づいて、マーキングを特徴付ける3次スプラインを計算することからなる処理によって推定される。
【0059】
3次スプラインのフォーミュラは、次式の関数f、
ただし、
− xは、エージェントが横切るi番目の画素のx座標に対応し、
− yは、エージェントが横切るi番目の画素のy座標に対応し、
− wは、エージェントが横切るi番目の画素のグレー値Vに対応し、
− Bは、関数空間を指し、
− λは、道路のタイプの関数である、0から0.15の間の平滑化パラメータを指す、
を最小化することによって計算される。
【0060】
パラメータλは、実質的にまっすぐな道路、例えば高速道路上では、ゼロになるかまたはゼロに近くなり、頻繁な屈曲のある道路、例えば山岳道路の場合、0.1に近くなる。
【0061】
パラメータλは、手動で調整することもでき、外部システム、例えばジオロケーションデバイス(GPS)から生じるデータに基づくこともできる。
【0062】
この処理の結果、道路マーキングに対応する平滑化スプラインがもたらされる。
【0063】
実施形態の変形形態についての説明
図3は、本発明による地面マーキングを認識するための解決策の、より正確には、マーキング検出モジュール(13)の、別のロジックダイアグラムである。
【0064】
処理は、モジュール(11)によってコンピュータ計算された信頼画像に対して施される。
【0065】
第1のステップ(20)は、マーキングダッシュごとに、その位置の最大伸展を示すパラメータのセットを決定することにある。伸展には、車両の縦揺れ運動の結果から生じる誤差、および地面の凹凸の結果から生じる誤差を考慮に入れる。
【0066】
次のステップ(21)は、先行する信頼画像上のマーキングを示す、少なくとも1つの選択されたエージェントが、以前の反復中に存在したかどうかを判定する。
【0067】
− 少なくとも1つのエージェントが存在した場合、次に続くステップ(22)は、不整合のエージェントを排除するためにマーキング推定値の空間的整合性を学習することにある。
【0068】
ステップ(23)では、次いで、以前の反復中に選択されたエージェントのうちの最も右側のエージェントの右側、または以前の反復中に選択されたエージェントのうちの最も左側のエージェントの左側に、エージェントが追加される。
【0069】
− 選択されたエージェントがなかった場合、光学中心のほうに向かって伝搬する複数のエージェントが初期化される(24)。
【0070】
ステップ(25)は、エージェントの各々について、隣接するエージェントを、エージェントが伝搬する前に推定することにある。
【0071】
ステップ(26)は、下で図4を参照して説明する、エージェントがマーキングを検出するプロセスを始めることにある。
【0072】
ステップ(27)は、エージェントの各々について知覚しきい値および安定性しきい値を推定することにある。知覚しきい値は、エージェントのトレースを使用して特定されるダッシュを推定しかつ次に続くダッシュの位置および長さを外挿推定することによって、計算される。
【0073】
エージェントの知覚しきい値は、次に続く反復について、前記要素に基づいて調整される。
【0074】
安定性は、しきい値より上の値の画素の数と、前記しきい値未満の値の画素の数との比に基づいて推定される。
【0075】
ステップ(28)は、安定性値がしきい値未満である場合、またはトレースの画素の値の平均がしきい値未満である場合に、不適切なエージェントを排除することにある。
【0076】
ステップ(29)は、道路の軸に対する車両の平均スピードを推定することに関する。この推定は、回帰法を用いてエージェントトレースを時間的にリセットする結果から生じる。
【0077】
マーキングの特徴を明らかにするステップ(30)は、バッファメモリ内に、エージェントのトレースの第1の画素の連続値を記録すること、およびそこからマーキングタイプを、連続値を異なるタイプのマーキングのシグネチャライブラリ(signature library)と比較することによって導出することにある。
【0078】
ステップ(31)は、カメラの知覚領域(カメラの視錐台)とマーキングを特徴付ける3次スプラインとの間の交点のところで、エージェントを再初期化することにある。
【0079】
ステップ(32)は、次に続く反復のステップ(25)の隣接物を計算するために、エージェントを左から右にソートすることに関する。
【0080】
ステップ(33)は、車両が上に位置する現在の車線を計算することにある。
【0081】
ステップ(34)は、ステップ(30)の間に特徴付けられた通行不可能線上のマーキングを排除することにある。このステップにより、必要なコンピュータ計算能力を低減すること、および自動操縦システムが使用される場合に予期せぬ車線変更を防ぐことが可能になる。
【0082】
マルチエージェントシミュレーションのロジックダイアグラム
第1のステップ(40)は、道路の向きの推定に対応し、これは、エージェントの方向に関するコンセンサス法によって達成される。
【0083】
ステップ(41)は、最も後ろのエージェントを決定すること、および上で定義した移動パターンを使用してそのエージェントを移動させること(ステップ(42))にある。
【0084】
ステップ(43)は、エージェントが水平線に到達したかどうかをチェックすることにある。
【0085】
− エージェントが水平線に到達していなかった場合、プロセスはステップ(40)から繰り返される。
【0086】
− そうではなく、エージェントが水平線に到達していた場合、エージェントが上で説明した安定性しきい値を満たしているかどうか、またトレース上の画素平均値が上で説明した比較を満たしているどうかについて、チェックが行われる。
【0087】
次いで、検証ステップ(44)が行われる。結果が否である場合、エージェントは開始時に再初期化され、隣接するエージェントと協働するための手段を排除しながらプロセスをステップ(40)から繰り返すことにあるステップ(45)が実施される。エージェントは次いで、再初期化フラグでマークされる。すでに再初期化されているエージェントを、2度目に再初期化することはできない。
【0088】
その後、エージェントトレースの画素を記録することにある(ステップ46)が実施され、次いで、コンセンサスにより平均スピードを推定するステップ(29)の処理を可能にするために、現在の反復と以前の反復との間のマーキングの移動を推定することにある(ステップ47)が実施される。
【0089】
ステップ(48)では、以前の反復からのエージェントトレースと現在の反復のエージェントトレースを比較することによって、エージェントの起こり得る断絶の推定がなされる。断絶は、以前の反復と現在の反復との間のデータの損失(マーキングダッシュ)として定義される。
【0090】
ステップ(aの間に断絶が検出される場合、隣接するエージェントと協働するための手段を排除しながらプロセスをステップ(40)から繰り返すことにあるステップ(49)が実施される。エージェントは、検出された断絶ゾーン、およびステップ(40)からのプロセスの繰り返しの開始時に、再初期化される。
【0091】
全てのエージェントが水平線に到達した場合、プロセスは終了する(ステップ(50))。
図1
図2
図3
図4