特許第6978560号(P6978560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6978560
(24)【登録日】2021年11月15日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】可動コアを備えた多色成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/33 20060101AFI20211125BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   B29C45/33
   B29C45/16
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-135286(P2020-135286)
(22)【出願日】2020年8月7日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】古本 求
(72)【発明者】
【氏名】西田 正三
(72)【発明者】
【氏名】島本 茂
(72)【発明者】
【氏名】須佐 圭呉
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−192765(JP,A)
【文献】 特開2018−099795(JP,A)
【文献】 特開2019−048413(JP,A)
【文献】 特開2010−094943(JP,A)
【文献】 特開平08−001798(JP,A)
【文献】 特開平03−292116(JP,A)
【文献】 特開平03−130121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ内において進退する可動コアを備え、前記可動コアの位置を順次変えながら複数回樹脂を射出して多色成形品を得る多色成形用金型であって、
前記金型には前記金型内でスライドする所定のプレートが設けられていると共に前記可動コアの後端面にはコア側プレート部が設けられ、
前記プレートと前記コア側プレート部の一方には、その表面に高さが3段階以上で変化する複数の段部からなる所定の段部パターンが繰り返し形成され、他方には前記段部パターンと同幅で所定の段部を備えた他の段部パターンが繰り返し形成されており、
前記多色成形用金型を型締めするとき、前記プレートのスライド位置に応じて前記段部パターンと前記他の段部パターンとが互いに異なる噛み合い状態で噛み合って、それによって前記可動コアが異なる3以上の位置で保持されるようになっていることを特徴とする多色成形用金型。
【請求項2】
請求項1に記載の多色成形用金型において、前記他の段部パターンは前記段部パターンと同じ形状のパターンからなることを特徴とする多色成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティ内で進退自在な可動コアを備え、可動コアの位置を変えながらキャビティを形成し、3種類以上の異なる樹脂を順次射出して、多色成形品を成形する多色成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の種類の樹脂からなるいわゆる多色成形品は色々な成形方法によって成形されている。例えば2種類の樹脂からなる2色成形品であれば、予め第1の樹脂によって成形された1次成形品を所定の金型にインサートして第2の樹脂を射出して一体化するインサート成形によっても成形することができるし、スライド金型を使用するいわゆるダイ・スライド・インジェクション法によっても成形することができる。また、進退自在な可動コアを備えた金型によっても成形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−192765号公報
【特許文献2】特開平3−130121号公報
【特許文献3】特開2010−094943号公報
【0004】
進退自在な可動コアを備えた金型によって2色成形品を成形する場合、可動コアを1次位置にしてキャビティを形成して1次成形を実施し、可動コアを2次位置に移動させてキャビティを形成して2次成形を実施している。ところが可動コアを備えた金型においては、可動コアに射出圧力が作用して可動コアの位置がずれやすいという問題がある。特許文献1、2、3にはこの問題を解決し、1次成形において可動コアの後退を確実に防止することができる2色成形用金型が記載されている。特許文献1に記載の金型を図5によって説明する。
【0005】
特許文献1に記載の金型によって成形する2色成形品は、図6の(A)、(B)に示されているように、スマートフォンのカバー50であり、第1の樹脂からなる本体部51と、第2の樹脂からなる平板部52とからなる。カバー50を成形する金型54は、図6の(C)に示されているように、射出成形機の固定盤55に設けられている固定側金型56と、可動盤58に設けられている可動側金型59とからなる。この可動側金型59は、受板60と型板62とから構成され、これらの間にはバネが設けられ、型開時にはバネ付勢により受板60に対して型板62は所定の間隔だけ浮上がり、型締時には受板60と型板62とが密着するようになっている。型板62には、中央部にくり抜きが形成され、このくり抜きに可動コア64が進退自在に設けられている。この可動コア64には、その背面にコア側段差部66が形成され、コア側段差部66と対向して所定の段差プレート67が設けられている。段差プレート67は受板60に接した状態で駆動機構68によって上下にスライドするようになっている。コア側段差部66も、段差プレート67も、帯状の山部と帯状の谷部とが交互に等ピッチで形成されており、段差プレート67のスライド位置によって互いに山部同士で当接したり、山部と谷部とが噛み合ったりするようになっている。可動コア64とコア側段差部66はバネ70、70により付勢されており、可動コア64はパーティングラインから後退するようになっている。この金型54を使用して次のように2色成形品を成形する。まず、図6の(D)に示されているように、駆動機構68によって段差プレート67を所定の位置にして型締めする。そうすると、段差プレート67とコア側段差部66は山部同士が当接し、可動コア64が前進する第1の位置になり、金型54内にキャビティが形成される。第1の射出装置71から第1の樹脂を射出し1次成形品すなわちカバーの本体部51を成形する。わずかに型開すると、バネ付勢により型板62と受板60が離間し、さらにバネ70、70付勢により可動コア64が後退する。駆動機構68により段差プレート67をわずかにスライドし、型締めする。そうすると図6の(E)に示されているように、段差プレート67とコア側段差部66とは互いに山部と谷部とが噛み合い、可動コア64は後退した状態で維持される。つまり第2の位置になり金型54内にキャビティが形成される。第2の射出装置72から第2の樹脂を射出する。2色成形品、すなわちスマートフォンのカバー50が成形される。特許文献1に記載の金型54について説明したが、特許文献2、3に記載の金型においても、コア側段差部66と段差プレート67に類似した部材が設けられ、可動コアを2位置に維持することができるので、特許文献1に記載の成形方法と同様にして2色成形品を成形することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の金型54によって2色成形を実施すると、可動コア64はコア側段差部66と段差プレート67とによって後退が規制されるので、射出時の射出圧力によって位置がずれることがない。つまり安定して良品を成形することができる。そして2色成形品を得る成形方法としては、1個の金型内で1次成形と2次成形とを実施するようにするので、汚れの付着を防止することができ、優れていると言える。つまり2色成形品を成形する金型として優れている。同様に特許文献2、3に記載の金型についても、1個の金型内で1次成形、2次成形を実施して2色成形品を成形できるので優れている。しかしながら、特許文献1〜3に記載の金型によっては、3色以上の多色成形品を成形することはできない。特許文献1に記載の金型を例に説明すると、段差プレート67とコア側段差部66は互いに噛み合わせるか否かの2つの状態を採らせることによって、可動コア64を2位置のいずれかに保持することができるが、3位置以上についてそれぞれの位置で保持することは想定されていないからである。すなわち可動コアを3位置以上で保持するという技術的な思想がない。従って、3次以上の射出を実施して多色成形品を成形しようとしても、安定的に良品を得ることができない。
【0007】
本発明は、上記したような問題点を解決した3色以上の多色成形品の成形用金型を提供することを目的とし、1個の金型において3次以上の複数次の成形を実施して、安定的に良品の多色成形品を得ることができる、多色成形品の成形用金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、キャビティ内において進退する可動コアを備え、可動コアの位置を順次変えながら複数回樹脂を射出して多色成形品を得る多色成形用金型を対象とする。金型に金型内でスライドする所定のプレートを設け、可動コアの後端面にコア側プレート部を設ける。プレートとコア側プレート部の一方には、その表面に高さが3段階以上で変化する複数の段部からなる所定の段部パターンを設け、この段部パターンを繰り返し形成する。他方には段部パターンと同幅で所定の段部を備えた他の段部パターンを繰り返し形成する。プレートの位置を変えて型締すると、段部パターンと他の段部パターンの噛み合い状態が変わり、それによって可動コアの位置を3段階の位置に保持されるようにする。これによって3色以上の多色成形品を成形するようにする。
【0009】
かくして、請求項1記載の発明は、上記目的を達成するために、キャビティ内において進退する可動コアを備え、前記可動コアの位置を順次変えながら複数回樹脂を射出して多色成形品を得る多色成形用金型であって、前記金型には前記金型内でスライドする所定のプレートが設けられていると共に前記可動コアの後端面にはコア側プレート部が設けられ、前記プレートと前記コア側プレート部の一方には、その表面に高さが3段階以上で変化する複数の段部からなる所定の段部パターンが繰り返し形成され、他方には前記段部パターンと同幅で所定の段部を備えた他の段部パターンが繰り返し形成されており、前記多色成形用金型を型締めするとき、前記プレートのスライド位置に応じて前記段部パターンと前記他2の段部パターンとが互いに異なる噛み合い状態で噛み合って、それによって前記可動コアが異なる3以上の位置で保持されるようになっていることを特徴とする多色成形用金型として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多色成形用金型において、前記他の段部パターンは前記段部パターンと同じ形状のパターンからなることを特徴とする多色成形用金型として構成される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明は、キャビティ内において進退する可動コアを備え、可動コアの位置を順次変えながら複数回樹脂を射出して多色成形品を得る多色成形用金型を対象としている。本発明によると、金型には金型内でスライドする所定のプレートが設けられていると共に可動コアの後端面にはコア側プレート部が設けられ、プレートとコア側プレート部の一方には、その表面に高さが3段階以上で変化する複数の段部からなる所定の段部パターンが繰り返し形成され、他方には段部パターンと同幅で所定の段部を備えた他の段部パターンが繰り返し形成されている。そして多色成形用金型を型締めするとき、プレートのスライド位置に応じて段部パターンと他の段部パターンとが互いに異なる噛み合い状態で噛み合って、それによって可動コアが異なる3以上の位置で保持されるようになっている。可動コアが異なる3以上の位置で保持されるので、1次成形、2次成形、3次成形においてそれぞれ可動コアの位置を変化させて樹脂を射出することができ、射出圧力による可動コアの後退がなく、良品の多色成形品を成形することができる。ところで可動コアは3以上の位置で保持されるが、必ずしも3次以上の成形を実施しなくてもよい。例えば、1次、2次成形からなる2色成形も実施できる。このように色々な成形を実施でき、使い勝手の良い多色成形用金型であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る成形方法で成形される多色成形品を示す図で、その(A)は多色成形品の斜視図、その(B)は(A)において断面X−Xで切断した多色成形品の側面断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る金型と射出成形機の一部を示す図で、金型はその断面を、射出成形機はその一部を示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る金型によって多色成形品を成形する方法を模式的に示す図で、その(A)〜(D)は各工程における金型の正面断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る金型によって多色成形品を成形する方法を模式的に示す図で、その(A)〜(C)は各工程における金型の正面断面図である。
図5】本発明の他の実施の形態に係る金型の一部であるプレートとコア側プレート部とを示す図で、その(A)〜(D)はそれぞれ第2の実施の形態に係る金型について、そしてその(E)〜(H)はそれぞれ第3の実施の形態に係る金型について、そのプレートとコア側プレート部とを示す正面断面図である。
図6】従来例を示す図で、その(A)は成形対象である2色成形品を示す斜視図、その(B)はその(A)において断面Z−Zで切断した2色成形品の断面図、その(C)は2色成形用金型の正面断面図、その(D)、(E)は2色成形品を成形する各段階を示す2色成形用金型の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る成形方法によって成形する多色成形品は、3種類の樹脂からなるスマートフォンのカバーCであり、図1の(A)、(B)に示されている。カバーCは第1の樹脂からなるカバー本体部C1と、第2の樹脂からなるカバー表面部C2と、第3の樹脂からなるカバー裏面部C3とから構成されている。カバー本体部C1は、周縁部が一方向に所定高さで立上がって湾曲しており、この立上がり部分がスマートフォンをその側部において把持するようになっている。この把持によってカバーCがスマートフォンに装着される。カバー本体部C1の中央は長方形状にくり抜かれており、ここにカバー表面部C2とカバー裏面部C3とが一体的に設けられている。
【0013】
カバーCを成形する本実施の形態に係る多色成形用金型1を説明する。本実施の形態に係る多色成形用金型1は、図2に示されているように、射出成形機2の固定盤3に設けられている固定側金型5と、可動盤6に設けられている可動側金型7とから構成されている。射出成形機2には第1〜3の射出装置9、10、11が設けられている。第1、2の射出装置9、10は固定盤3の裏面から固定側金型5のスプルにそれぞれの射出ノズルが当接し、第1、2の樹脂が射出されるようになっている。一方、第3の射出装置11は可動側金型7の側方に設けられているスプルにその射出ノズルが当接し、第3の樹脂が射出されるようになっている。なお、第3の射出装置11は射出時に射出ノズルがスプルに当接し、射出しないときは離間するようになっているが、以下射出ノズルのタッチ・離間については説明を省略する。
【0014】
本実施の形態において可動側金型7は、可動側受板12と可動側型板13とからなる。図2には示されていないが可動側受板12と可動側型板13の間にはバネが設けられており、型開しているとき可動盤型板13はバネ付勢により可動側受板12に対して所定の間隔だけ浮上がり、型締めされるとバネが圧縮されて可動側型板13に密着するようになっている。このような可動側型板13には、中央部においてくり抜きが形成され、このくり抜きに可動コア15が進退自在に設けられている。
【0015】
本実施の形態に係る成形用金型1は、可動コア15が3段階で移動するようになっていて、それぞれの移動位置つまり第1〜3のコア位置において可動コア15の後退が規制される点に特徴がある。後退が規制されるので可動コア15に射出圧が作用してもその位置が保持されるようになっている。このような可動コア15の動作を可能にしている機構は、所定のプレート16と、コア側プレート部17と、プレート16をスライドするピストンシリンダユニット18とからなる。プレート16は、その裏面が可動側受板12に接し、スライド自在になっている。つまり可動側金型7のパーティングラインと並行にスライドされるようになっている。このプレート16の表面には複数の段部の組み合わせからなる所定の段部パターン20が繰り返しが形成されている。段部パターン20は、図2に示されているように、高さの異なる第1〜4の段部a1、a2、a3、a4からなる。それぞれの高さは、第1の段部a1が低、第3の段部a3が高、第2、4の段部a2、a4はいずれも中になっていて、本実施の形態においては高さは3段階に変化している。コア側プレート部17は可動コア15の後端部に固着されている部材であり、可動コア15の後端面に対応する面、つまりプレート16と対向する面に、他の段部パターン22が繰り返し形成されている。本実施の形態においては、この他の段部パターン22は、段部パターン20と同じパターンの段部から形成されている。プレート16の段部パターン20とコア側プレート部17の他の段部パターン22とは、多色成形用金型1を型締めしたときに互いに噛み合い状態になるが、後で説明するようにプレート16のスライド位置によって噛み合い状態が変化する。具体的には噛み合い状態は3種類あるが、噛み合い状態が変化するとき、可動コア15の位置も変化する。つまり可動コア15は3段階で位置が変化することになる。ところで、このようなコア側プレート部17と可動コア15はバネ体24、24によって後退方向に付勢されている。ただし図には示されていないが、コア側プレート部17の後退量を制限する部材が設けられているので、コア側プレート部17と可動コア15は所定量だけ後退したらそれ以上後退することはなく、可動側型板13から外れることはない。
【0016】
可動側金型7のパーティングラインには、可動コア15の周囲に可動側凹部25が形成されている。この可動側凹部25に対応するように、固定側金型5のパーティングラインにも固定側凹部26が形成されている。これらの凹部25、26と可動コア15の側面とから1次成形によってカバー本体部C1を成形するキャビティが形成され、固定側凹部26と可動コア15の頂部とからカバー表面部C2を成形するキャビティが形成され、可動コア15の頂部からカバー裏面部C3を成形するキャビティが形成されるようになっている。
【0017】
本実施の形態に係る成形用金型1によって、多色成形品であるカバーCを成形する方法を説明する。図3の(A)に示されているように、成形用金型1を型開する。そうすると図に示されていないバネにより付勢されて可動側受板12から可動側型板13が所定の高さだけ浮く。つまり離間する。コア側プレート部17と可動コア15はバネ体25、25により後退するが前述したように後退量は規制される。ピストンシリンダユニット18を駆動してプレート16を第1のスライド位置にスライドする。第1のスライド位置においては、プレート16の段部パターン20、20、…とコア側プレート部17の他の段部パターン22、22、…とが所定の位置関係で対向する。具体的にはそれぞれのパターン20、22において最も高い段部a3、a3同士が対向する。型締めする。そうすると、図3の(B)に示されているように、固定側金型5と可動側金型7が型閉じし、可動側金型7の可動側受板12と可動側型板13が密着し、プレート16とコア側プレート部17とが当接する。つまり所定の噛み合い状態になる。これによってコア側プレート部17と可動コア15とが前進する。そうすると可動コア15の上面が固定側金型5の固定側凹部26に当接する。つまり可動コア15が第1のコア位置になり1次成形用のキャビティが構成される。1次成形により第1の射出装置9から第1の樹脂を射出してカバー本体部C1を成形する。このとき射出による樹脂圧力は可動コア15の上面に作用することはないが、可動コア15はプレート16とコア側プレート部17とによって後退が規制されているので、可動コア15が後退する虞はなく安定的に成形することができる。
【0018】
カバー本体部C1が冷却・固化したら、図3の(C)に示されているように、成形用金型1をわずかに型開きする。わずかに型開きすると、固定側金型5と可動側型板13は型閉じが維持された状態で、可動側受板12から可動側型板13が所定の間隔だけ浮く。そうするとプレート16とコア側プレート部17とが離間し、コア側プレート部17と可動コア15がバネ体25、25の付勢により後退する。ピストンシリンダユニット18を駆動してプレート16を第2のスライド位置にスライドする。そうすると、プレート16の段差パターン20とコア側プレート部17の他の段差パターン22とが所定の位置関係で対抗する。具体的には、一方の中の高さの段部a2と他方の最も高い段部a3とが対向する。この状態で成形用金型1を型締めすると、図3の(D)に示されているように可動側金型7では可動側型板13が可動側受板12に密着する。このときプレート16の段部パターン20とコア側プレート部17の他の段部パターン22とが所定の噛み合い状態で当接する。コア側プレート部17と可動コア15はプレート16によって押されてわずかに前進する。すなわち可動コア15は第2のコア位置になり、2次成形用のキャビティが形成される。第2の射出装置10から第2の樹脂を射出して、カバー表面部C2を形成する。このとき射出による樹脂圧が可動コア15に作用するが、プレート16とコア側プレート部17とがそれぞれ所定の噛み合い状態で固定されているので可動コア15の後退が規制される。すなわち安定的に2次成形を実施することができる。
【0019】
カバー表面部C2が冷却・固化したら、図4の(A)に示されているように、成形用金型1をわずかに型開きする。わずかに型開きすると、固定側金型5と可動側型板13は型閉じが維持された状態で、可動側受板12から可動側型板13が所定の間隔だけ浮く。そうするとプレート16とコア側プレート部17とが離間し、コア側プレート部17と可動コア15がバネ体25、25の付勢により後退する。ピストンシリンダユニット18を駆動してプレート16を第3のスライド位置にスライドする。そうすると、プレート16の段差パターン20とコア側プレート部17の他の段差パターン22とが所定の位置関係で対抗する。具体的には、一方の最も高い段部a3と他方の最も低い段部a1とが対向する。この状態で成形用金型1を型締めすると、図4の(B)に示されているように可動側金型7では可動側型板13が可動側受板12に密着する。このときプレート16の段部パターン20とコア側プレート部17の他の段部パターン22とが所定の噛み合い状態で当接する。このとき、コア側プレート部17と可動コア15はプレート16によって押されることはない。すなわち可動コア15は第3のコア位置で維持されることになり、3次成形用のキャビティが形成される。第3の射出装置11から第3の樹脂を射出して、カバー裏面部C3を形成する。すなわちカバーCが成形される。このとき射出による樹脂圧が可動コア15に作用するが、プレート16とコア側プレート部17とがそれぞれ所定の噛み合い状態になっているので可動コア15の後退が規制される。すなわち安定的に3次成形を実施することができる。成形用金型1を型開きする。そうすると図4の(C)に示されているように、カバーCがが図示されない突出装置により突き出される。以下同様にして3色成形品のカバーCを成形する。
【0020】
本実施の形態に係る成形用金型1は色々な変形が可能である。例えば、プレート16’やコア側プレート部17’に形成されている段部パターン20’と他の段部パターン22’は図5の(A)に示されているように変形することができる。こようのなパターン20’、22’であっても図5の(B)、(C)、(D)で示されているように、型締時に3種類の噛み合い状態にすることができ、図に示されていない可動コア15が異なる3位置で維持される。さらには、段部パターン20’と他の段部パターン22’は、同じパターンから形成する必要はない。図5の(E)に示されているように、段部パターン20’’と他の段部パターン22’’を互いに異なるパターンに形成してよい。この場合、少なくとも段部パターン20’’もしくは他の段部パターン22’’のいずれか一方は、3段階以上に高さが変化する複数段の段部から形成されている必要がある。この実施の形態のプレート16’’とコア側プレート部17’’についても、プレート16’’のスライド位置を変えて型締めすると、図5の(F)、(G)、(H)に示されているように3種類の噛み合い状態になり、図に示されていない可動コア15が3位置で維持される。なお、当業者であれば容易に理解するように、プレート16’’に他の段部パターン22’’を、コア側プレート部17’’に段部パターン20’’を形成してもよい。段部パターン20と他の段部パターン22は、本実施の形態においては3段階ので噛み合い状態が変化し、それによって可動コア15は3位置で維持されるように説明したが、4段階以上で噛み合い状態を変化させるようにして、可動コア15を4位置で位置させることもできる。この場合4色成形品を成形することができる。具体的には、段部パターン20について、4段階で高さが変化する段部から形成すればよい。さらにはそれぞれの段部パターン20、22を構成している個々の段部の形状についても変形が可能である。例えば段部を台形状に形成したり、丸みを帯びた形状にすることができる。他の変形も可能であり、コア側プレート部17と可動コア15は異なる部材から形成する必要はなく一体的に形成されていてもよい。
【0021】
本実施の形態に係る成形用金型1を使って、成形する成形方法も変形が可能である。本実施の形態においては、可動コア15は3位置で維持し、1〜3次成形を実施するようにしているが、可動コア15を最前進位置である第1の位置にして1次成形を実施し、その後に最後退位置である第3の位置にして2次成形を実施して2色成形品を成形するようにしてもよい。成形用金型1による成形方法はこのように色々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 成形用金型 2 射出成形機
3 固定盤 5 固定側金型
6 可動盤 7 可動側金型
9 第1の射出装置 10 第2の射出装置
11 第3の射出装置 12 可動側受板
13 可動側型板 15 可動コア
16 プレート 17 コア側プレート部
18 ピストンシリンダユニット 20 段部パターン
22 他の段部パターン 24 バネ体
C カバー C1 カバー本体部
C2 カバー表面部 C3 カバー裏面部
【要約】
【課題】安定的に成形できる、可動コアを備えた多色成形品の成形用金型を提供する。
【解決手段】3段階以上で位置を変える可動コア(15)を備えた多色成形用金型(1)を対象とする。金型(1)に所定のプレート(16)を設け、可動コア(15)の後端面にコア側プレート部(17)を設ける。プレート(16)とコア側プレート部(17)の一方には、その表面に高さが3段階以上で変化する複数の段部からなる所定の段部パターン(20)を繰り返し形成する。他方には段部パターン(20)と同幅で所定の段部を備えた他の段部パターン(22)を繰り返し形成する。プレート(16)のスライド位置を変えて型締すると、段部パターン(20)と他の段部パターン(22)の噛み合い状態が変わり、可動コア(15)の保持位置が3段階で変わる。これによって多色成形品を成形する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6