【文献】
Sarah J. Lukes et al.,"MEMS mirror for flexible z-axis control in a commercial confocal microscope",2012 International Conference on Optical MEMS and Nanophotonics,2012年08月06日,p. 148-149
【文献】
Sarah J. Lukes et al.,"Agile scanning using a MEMS focus control mirror in a commercial confocal microscope",Proc. of SPIE,2014年03月12日,Vol. 8949,p. 89490W-1-89490W-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2.関連技術の説明
日常的に顕微鏡を扱う人々は、顕微鏡とは、いくつかの直線移動可能な又は回転可能な(回転により出し入れ可能な)固定焦点距離のレンズで構成されているものである、又は、倍率を変更するために異なる対物レンズを使用する必要があると考えるのが一般的である。また、焦点合わせ(フォーカス)は、試料と対物レンズの間の距離を変更するために試料ステージを上下に移動することによって行われることが通常である。レンズを直線移動する代わりに、単一要素である可変倍率/可変焦点/バリフォーカルの光学要素(これらの用語はここでは同義語として使用される。)は、人間の目のように高速にフォーカスを行う。焦点距離が変わっても位置を保ったままである。3つのバリフォーカルレンズを使用すると、倍率とフォーカスの両方を互いに独立して変更でき、これら3つのバリフォーカルレンズにより、単一のバリフォーカルレンズを使用する場合よりも焦点の範囲を広くできる。バリフォーカルレンズには、透過レンズ(ミラー)と反射レンズ(ミラー)の両方が含まれる。これらは、光が表面に当たった後に進む方向を除いて、同じように動作する。本発明は、従来の顕微鏡の欠点を克服するために、顕微鏡と共に使用可能な、又は顕微鏡に取り付け可能なデバイスに複数のバリフォーカルレンズを組み込む。
【0005】
微小電気機械システム(MEMS)可変形状ミラーは、可変焦点距離の反射レンズである。静電MEMSミラーでは、表面形状を細かく制御するためにそれらのミラーに電圧が直接印加される。MEMSミラーは、通常(但し、これに限定されるものではないが)、感光性ポリマーSU−8 2002と、アルミニウム、金、銀等の金属(これらは反射面を提供する。)とで作られる。本発明の観点では、MEMSミラーは、SU−8 2002の代わりに、二酸化チタン又は金属/酸化物の反射面を備えた窒化ケイ素で作製されてもよい。電圧の増加に伴ってミラーの曲率半径が減少すると、対象物(観察中)の位置が変化する。これらのタイプのMEMSミラーが拡大鏡の代わりとなる、又は十分なフォーカスができるようになったのは、直近の5年間ほどである。これらの長所は、改善された微細加工技術とミラーの構造変更によるものである。
【0006】
卓上顕微鏡で観察する場合、フォーカスを変更するには試料ステージを直線移動する必要がある。このため、多くの試料は、薄く、非生存で固定される。前述のように、従来のフォーカス・ズーム機構は、固定焦点距離レンズを回転させる技術、及び/又は試料若しくは固定焦点距離レンズを直線移動する技術を含む。従来のフォーカス機構の欠点としては、ステージの直線移動による試料の攪拌がある(これにより、液体中の固体粒子を観察するときに焦点を見つけるのが困難になり、試料が偶然対物レンズに当たったときに損傷を与え、フォーカス制御が遅くなり(通常自動ステージにより100Hz未満))、フォーカスが不正確となり、露出し過ぎにより光による損傷が過多となり、観察前の反応完了により実験が早期に終了し(対象の焦点面を見つけるのに時間がかかるため)、生きている試料でリアルタイムに伝播するニューロンの観察等、観察時間の制限により短い時間では生物学的現象を観察できなくなることがある。自動化された試料ステージは、分離されたフォーカスステップ位置と従来のズームシステムに制限されるため、分離された倍率変更を行う。高速な結像を行うために、共振型の対物レンズスキャナは、対物レンズを高速に上下動できる。共振型対物レンズスキャナは、焦点範囲全体で光学解像度を維持せず、単一の(比較的速い)速度でのみ動作し、質量が移動するため、共振時にシステムを振動させる又は揺さぶる。
【0007】
バリフォーカルレンズ(MEMSミラーを含む。)は、広い焦点を実現するためにいくつかの共焦点及び多光子顕微鏡と組み合わせて使用されているが、顕微鏡の光学ズームには使用されておらず、一般的な生物学者にとってユーザ・フレンドリな小型でポータブルなユニットにも組み込まれていない。市販のバリフォーカルレンズは、平均的な生物学者にとって使い難いものである。例えば、顕微鏡の光学系の最初にある多くの動的フォーカス機構は、エンジニアによる設置が必要である。これらは、通常、1つの実験のためだけにエリート大学で行われる、単一のバリフォーカル要素を使用する特別な仕事であり、従って、広範囲に使用することはできない。バリフォーカルレンズの別形態である液体レンズは、焦点範囲全体で光学解像度を維持せず、アクロマートレンズではなく、付随する球面収差を効果的に制御することはできない。
【0008】
前の段落では、現在のバリフォーカルレンズ技術に存在するいくつかの課題について説明している。上記のように、顕微鏡で光学ズームを実現するためにバリフォーカルレンズを利用する既存の技術はない。広い範囲の低倍率から狭い範囲の高倍率に切り替えると同時に、手で試料を操作することは困難である。例えば、励磁を伴うパッチクランプ技術(excited patch-clump techniques)の間、試料は最大30分間生存可能である。科学者は細胞全体を観察し、ガラス電極の先端で細胞膜の小さな部分を取り除き、倍率を2倍にするために対物レンズターレットを回転させ、再度焦点を合わせてガラス電極の先端における励磁された組織を観察する。本発明は、科学者が(音声操作又は足踏みボタンの使用により)両手を自由に保ちながら、低倍率及び高倍率の両方で細胞膜全体を観察することを可能にする。現在、顕微鏡で簡単に使用(又は取り付け)できる高速な光学式フォーカス又はズームの解決手段はない。本発明は、焦点範囲に亘ってシステムの解像度を維持し、可変速度フォーカスを可能にし、試料の静止状態の維持を可能にする。
【0009】
顕微鏡の様々な改良については、多くの特許が存在する。しかしながら、これらの発明のいずれも、本発明の構造的特徴又は機能的改良を組み込んでいない。 本発明に直接関係はないが、拡大システムへの改良が発展した方向を示すために、いくつかをここで簡潔に参照する。これらの発明のいくつかは、顕微鏡への付属品の形態を取る。例えば、米国特許第7864996号(Hemmer他、2011年)は、組織表面に対する共焦点撮像装置の撮像位置をマクロ撮像装置と空間的に関連付けるように、マクロ撮像装置及び共焦点撮像装置がそれぞれ事前に設定された位置合わせで組織に対して個別に提示される組織取付装置を開示する。この発明では、ターレットが回転してマクロレンズ及び高倍率対物レンズを切り替えるのに対し、本発明では、倍率は、静止MEMSミラーの両端の電圧を変えることによって変更される。本発明は、直線移動や可動部品、可動部品を駆動するモータを有しておらず、これは、Hemmer及び他の同様の顕微鏡と比較して構造上の大きな差異を生じる。さらに、マクロイメージングから高倍率(共焦点)イメージングに切り替えるために2つの別個の機器を切り替えるのとは対照的に、本発明は、MEMSミラーへの電圧を変えることにより倍率を変える1つの静止ユニットを有する。
【0010】
米国特許第8425037号(Uhlhorn他、2013年)及び米国特許第9492080号(Uhlhorn et al、2016年)は、外科医がヒトの水晶体や角膜及び/又は硝子体等の他の構造のような眼の構造を視認しつつ、手術器具が視野に入っているように手術用顕微鏡に結合できる光干渉断層計(OCT)システムを提供する。前述の発明と同様に、この特定の発明は、本発明と同じ課題を解決しようとするものではなく、本発明と構造的に類似しておらず、本発明と同じ用途を有していない。これらの特許に記載されているOCTと分光計の両方とも干渉計を有する。干渉計には、再結合して干渉する2つの光路がある。本発明は、光が進行する1つの光路と、光が戻る1つの光路とを有する。2つの光路の再結合はない。本発明とは異なり、Uhlhornの発明は、印加電圧の下で動作するMEMSデバイスではない。むしろ、手術用顕微鏡は焦点距離が固定されており、眼の特定の位置を視覚的に見つけるために使用され、この点において、機器全体が固定され、OCTを介してイメージングが行われる。OCTにおけるフォーカスの変更は、干渉計の光路長を変更することによって行われる。
【0011】
米国特許第9256009号(Theriault他、2016年)は、顕微鏡ステージに近接した、可変焦点距離レンズの一種であるTAG(tunable acoustic gradient index of refraction)レンズと、顕微鏡ステージを照明可能であり、TAGレンズの動作周波数と同期してパルス出力可能なパルス式照明器とを組み込んだ顕微鏡を開示している。この発明の目的の1つは、空間光変調器の遅いスイッチング速度を克服することである。この発明は、主に、材料処理用途の処理能力を改善することに関する。Theriaultでは、レンズは圧電駆動される。対照的に、本発明のMEMSミラーは、電子的に(電圧のみによって)駆動される。Theriaultのレンズは2つの透明なウィンドウで構成され、屈折材料(気体、固体、液体、プラズマ等)で満たされる。光はレンズを透過し、MEMSミラーの場合のように反射はされない。Theriaultは単一のレンズを使用して拡大とフォーカスの両方を達成するが、本発明は3つのMEMSミラーを使用してこれらの機能を実行する。Theriaultの単一レンズの欠点の1つは、パルスレーザ又はカメラとフォーカス用の絞りを必要とすることであるが、本発明ではこれらのいずれも必要ない。
【0012】
米国特許第9602715号(Gladnick、2017年)は、可変倍率レンズ部及び可変焦点距離レンズ(TAGレンズ)部から構成される撮像システムを開示している。この特定の発明は、精密マシンビジョン検査又は計測システムで使用されることを目的としている。この発明は本発明と構造的又は機能的に類似していないが、拡大技術の改善を提示する。Gladnickの発明では、Hemmer(上述)と同様、交換レンズを使用して拡大状態を変更する。拡大用交換レンズは、分離された拡大状態をもたらす。一方、本発明の電子制御式の可変焦点MEMSミラーは、1つの(最小)拡大状態から別の(最大)拡大状態への連続的な倍率変化を可能にする。Gladnickによると、その透過性TAGレンズは、2つの拡大状態に対応する2つの個別の一定の共振周波数で動作する。本発明のMEMSミラーは、DCから1kHzまでの広範囲の連続的な周波数範囲に亘って動作する。本発明は、全ての拡大及びフォーカスのために、対物レンズの後部開口を埋める(fills)。Gladnickの発明では、設計された拡大状態毎に絞りが対物レンズの背面開口部の大きさを変更するため、対物レンズの背面開口部を埋めない。
【0013】
重要なことは、上記の発明のいずれも、MEMSミラーを使用することはなく、広領域の共焦点及び多光子顕微鏡で動的なフォーカス及びズームを提供しない。本発明を除き、単一の携帯型ユニットとして構成され、研究室の科学者が使い易いように設計された上記のようなシステムはない。MEMSミラーの利点には、通常、焦点範囲が大幅に広がり、帯域幅が広いこと、温度に対する感度が低いこと、蛍光用途ではアクロマートであること等がある。
【0014】
内容が参照により本明細書に組み込まれる、2014年に発表された記事(後記参考文献1)において、本発明の発明者は、(単一のMEMSミラーの形態の)可変倍率/可変焦点の光学要素が顕微鏡技術に組み込まれる可能性があることを予測した。しかしながら、本明細書で提供される動的フォーカス・ズームシステムの詳細はこれまで開示されていなかった。具体的には、2014年の論文では、本明細書で説明するように位置決めされて、フォーカスとズームの独立した調整を実現する3つのMEMSミラーの使用については触れられていない。MEMSミラー自体の基本構造については、2014年の記事で説明している。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、広領域の共焦点及び多光子顕微鏡で使用するための動的フォーカス・ズームシステムであって、
前記動的フォーカス・ズームシステムは、
筐体内に配置され、内部プラットフォームに設けられた第1MEMSミラー、第2MEMSミラー及び第3MEMSミラーと、
直角プリズムと、
第1固定レンズ及び第2固定レンズを有する光学リレーと、
第3固定レンズと
を備え、
前記第1MEMSミラー、前記第2MEMSミラー及び前記第3MEMSミラーは楕円状であり、
前記直角プリズム、前記第1固定レンズ、前記第2固定レンズ及び前記第1MEMSミラーは、前記光学リレーの長手方向軸に沿って直線状に位置決めされ、
前記第2MEMSミラー、前記第3固定レンズ及び前記第3MEMSミラーは、前記光学リレーの前記長手方向軸に対してそれぞれが平行となるように直線状に位置決めされ、
前記直角プリズムは、前記筐体の第1接続点に隣接して且つ前記第1固定レンズに対して45度の角度で配置され、
前記第1MEMSミラーは、前記第2固定レンズに対して45度の角度であり、
前記第2MEMSミラーは、前記第1MEMSミラーに対して90度の角度で隣接すると共に、前記第1MEMSミラーに45度の角度で当たる光線が前記第2MEMSミラーの中央に45度の角度で当たるように構成され、
前記第3固定レンズは、前記第2MEMSミラー及び前記第3MEMSミラーの間に配置され、
前記第3MEMSミラーは、前記筐体の第2接続点に隣接し且つ前記第2MEMSミラーから来る光線に対して45度の角度、及び前記第3固定レンズに対して45度の角度で配置される
ことを特徴とする。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、広領域の共焦点及び多光子顕微鏡で使用するための動的フォーカス・ズームシステムであって、
前記動的フォーカス・ズームシステムは、
筐体内に配置され、内部プラットフォームに設けられた第1MEMSミラー、第2MEMSミラー及び第3MEMSミラーと、
直角フラットミラーと、
第1固定レンズ及び第2固定レンズを有する光学リレーと、
第3固定レンズと
を備え、
前記第1MEMSミラー、前記第2MEMSミラー及び前記第3MEMSミラーは楕円状であり、
前記直角フラットミラー、前記第1固定レンズ、前記第2固定レンズ及び前記第1MEMSミラーは、前記光学リレーの長手方向軸に沿って直線状に位置決めされ、
前記第2MEMSミラー、前記第3固定レンズ及び前記第3MEMSミラーは、前記光学リレーの前記長手方向軸に対してそれぞれが平行となるように直線状に位置決めされ、
前記直角プリズムは、前記筐体の第1接続点に隣接して且つ前記第1固定レンズに対して45度の角度で配置され、
前記第1MEMSミラーは、前記第2固定レンズに対して45度の角度であり、
前記第2MEMSミラーは、前記第1MEMSミラーに対して90度の角度で隣接すると共に、前記第1MEMSミラーに45度の角度で当たる光線が前記第2MEMSミラーの中央に45度の角度で当たるように構成され、
前記第3固定レンズは、前記第2MEMSミラー及び前記第3MEMSミラーの間に配置され、
前記第3MEMSミラーは、前記筐体の第2接続点に隣接し且つ前記第2MEMSミラーから来る光線に対して45度の角度、及び前記第3固定レンズに対して45度の角度で配置される。
【0017】
好適な実施形態において、前記第1・第2MEMSミラーそれぞれは、直径を伴う短軸を有し、前記第2MEMSミラーの前記短軸の前記直径は、前記第1MEMSミラーの前記短軸の前記直径と同じである。他の好適な実施形態において、前記第1・第3MEMSミラーそれぞれは、直径を伴う短軸を有し、前記第3MEMSミラーの前記短軸の前記直径は、前記第1MEMSミラーの前記短軸の前記直径の少なくとも2倍である。さらに別の好適な実施形態において、前記第1MEMSミラーは、直径を伴う短軸を有し、前記システムは、直径を伴う背面開口を有する対物レンズと共に用いられ、前記第1MEMSミラーの前記短軸の前記直径は、前記対物レンズの前記背面開口の前記直径と同じである。
【0018】
前記第1固定レンズ、前記第2固定レンズ及び前記第3固定レンズは、アクロマートレンズであることが好ましい。前記直角プリズムは、誘電性反射プリズムであることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.概要
本発明は、無限共役像平面において既存の広領域の共焦点又は多光子顕微鏡に容易に挿入する又は取り付ける機械的構造物又は筐体から構成される。本発明は、対物レンズターレット及び対物レンズの間に配置するように特に設計されているが、接眼レンズの近くに配置されて同等に機能を持たせることもできる。筐体内では、3つの電子制御式の可変焦点レンズと1つの固定レンズが、大きな焦点ずらし(デフォーカス)とズームを実行する。実験により、発明者が確認したことは、1つのMEMSミラーではフォーカスを可能とするがズームを可能とならず、2つのMEMSミラーではフォーカス及びズームを可能とするが、相互に依存し(ズーム/倍率の特性を変更せずにフォーカスを変更することはできず、その逆も同様)、3つのMEMSミラーでは独立したフォーカス及びズームを可能とすること(つまり、他方に影響を与えることなく一方を変更可能であること)である。さらに、本発明は、顕微鏡の対物レンズターレットを回転させて対物レンズを切り替えることなく、且つ試料を静止したまま及び攪拌されないままで顕微鏡の倍率を変更することを可能にする。
【0021】
本発明が試料内のフォーカス位置を変更するとき、対物レンズの後焦点面はそのままである(remains filled)。従って、システムの開口数又は解像度は、利用可能な他の高速フォーカス技術とは異なり、一定のままである。本発明は、ズームから独立してデフォーカスを変更する。さらに、本発明は、フォーカスから独立して、(解像度を改善しないデジタルとは対照的に)光学倍率を変更することができる。
【0022】
B.図面の詳細な説明
図1は、本発明の第1実施形態の第1斜視図である。この図に示すように、本発明は、本発明の他の構成要素の周りに構造体を形成する筐体1を有する。筐体1は、上部カバー2、側壁3及びフロア(図示せず)を有する。ここでは、上部カバー2がねじで側壁3に取り付けられているように示されているが、本発明では、上部カバー2を側壁3に取り付ける方法はこれに限定されず、上部カバー2は、任意の方法で側壁3への取付け、固定、接続又は接合が可能である。別の実施形態において、上部カバー2及び側壁3は、一体成形(同じ部品の一部)とし又は一緒に溶接されてもよい。筐体1は、任意の適切で耐久性及び剛性がある材料(アルミニウム等)で作られてもよい。好適な実施形態において、上部カバー2は、熱放散のための1つ又は複数の通気孔5を有する。
【0023】
図1には、第1USB6も示されている。本発明では、3つのMEMSミラー(図示せず)のそれぞれに1つのUSBがある。筐体1は、対物レンズ8をメインウィンドウ9の第1側面に配置可能とするのに十分な大きさ及び形状の第1窪み7と、対物レンズターレット又はカメラ/接眼レンズ(図示せず)をメインウィンドウ9の第2側面に配置可能とするのに十分な大きさ及び形状の第2窪み10とを形成するように構成されることが好ましい。筐体1の上部カバー2及びフロア4(
図5B参照)は、平坦であることが好ましく、側壁は上部カバー2及びフロア4の間に位置し、それぞれに垂直である。2つの窪み7、10は、メインウィンドウ9が内部に配置される筐体1の延長部11を形成する。メインウィンドウ9は、延長部11の前端全体に亘って延在し、延長部11の両側を跨ぎ、対物レンズ8及び対物レンズターレット(図示せず)をメインウィンドウ9の互いに対向する側でメインウィンドウ9に配置できるようにする(従って、対物レンズ8及び対物レンズターレットが互いに長手方向に位置決めされる。)。
【0024】
図2は、本発明の第1実施形態の第2斜視図である。この図は、第2・第3MEMSミラー(図示せず)に対応する第2・第3USB12、13をそれぞれ示す。3つのUSB6、12、13は全て筐体1の側壁3の切欠きを通って延在することに留意されたい。各USBは、筐体1内部のMEMSミラーに近接して配置され(
図5参照)、3つのMEMSミラーのうちの1つに駆動信号を供給する。プリント回路基板14は、3つのMEMSミラーそれぞれに対応し(
図3参照)、各プリント回路基板14への電力は、USBの下方における筐体1の穴を通して供給される(例えば、
図7参照)。
【0025】
図3は、筐体の上部カバーを取り除いた点を除いて
図1と同じ図である。この図は、それぞれが1つのMEMSミラー(
図5参照)を制御する3つのプリント回路基板14を示す。将来的な実施形態では、3つのMEMSミラー全てを単一のプリント回路基板で制御することが可能になるかもしれない。
【0026】
図4は、プリント回路基板を取り除いた点を除いて
図3と同じ図である。この図に示されるように、複数のスペーサ15は、実装基板16及びプリント回路基板14の間において1つ以上の実装基板16の上に配置されることが好ましい。実装基板16は、プリント回路基板14の下方に配置される。スペーサ15の目的は、プリント回路基板14が実装基板16と電気的に接触しないようにすることである。実装基板16の穴17により、電気配線が実装基板16を通過して、下方のUSB13等からプリント回路基板14に至る。
【0027】
図5は、スペーサと実装基板を取り除いた点を除いて
図4と同じ図である。この図に示すように、本発明は、いずれも好ましくは円状である3つのMEMSミラー18、19、20を含む。(
図5では、部品番号18、19、20は、円状ミラーがテープ又はエポキシで接着された小さな正方形のプリント回路基板として示されている。)本発明は、様々な光学部品を適切に位置決めできるようにする内部プラットフォーム21を含むことが好ましい。
【0028】
図5Aは、筐体の側壁とUSBが取り除いた点を除いて
図5と同じ図である。内部プラットフォーム21の1つ又は複数の穴22により、本発明をねじで光学台に固定できることに留意されたい。この図に示すように、第1プリズム23と、第1プリズム23に隣接する第2プリズム24とは、メインウィンドウ9の直ぐ内側に配置されている。ここには示されていないが、メインウィンドウ9は、ガラス又は類似の透明材料で覆われてもよい。第2プリズム24の直後には、第1固定レンズ25及び第2固定レンズ26を有する光学リレーがある。第1・第2固定レンズは、筐体1のフロア4のスロット27内にスライド可能に取り付けられ、それらの間の距離を調整できるように止めねじ(図示せず)で所定の位置に固定されることが好ましい。
【0029】
第2固定レンズ26の直後に配置されているのは、第1ビームスプリッタ28である。第1ビームスプリッタ28は、第2プリズム24、第1固定レンズ25、第2固定レンズ26及び第1ビームスプリッタ28が全て光学リレーの長手方向軸に沿って直線状に整列するように配置される。波長板29は、第1ビームスプリッタ28及び第1MEMSミラー18の間に配置される。第1・第2MEMSミラー18、19は、光学リレーの長手方向軸に対して90度の角度で互いに直線状に位置決めされる。第2ビームスプリッタ30は、第2MEMSミラー19の前に配置され、波長板29は、第2ビームスプリッタ30及び第2MEMSミラー19の間に配置される。第3MEMSミラー20は、メインウィンドウ9に近接して配置される。第3固定レンズ31は、第3MEMSミラー20の直前に位置し、波長板29は、第3固定レンズ31の直前に位置する。本発明は可能な限り小さく設計されているため、実質的にかさばることなく既存の顕微鏡に取り付けることができる。好適な実施形態では、第3固定レンズ31(正の固定焦点距離レンズ)の追加により、一次光学要素の長さを4インチ未満に維持することが可能になった。別の実施形態では、第3固定レンズ31は、第1プリズム23及び第3プリズム33の間に配置される。さらに別の実施形態では、第3固定レンズ31は、第2ビームスプリッタ30及び第3ビームスプリッタ32の間に配置される。第3固定レンズ31は、それが配置される場所に応じて異なる焦点距離を有するであろうが、この焦点距離は、以下に記載される方程式を使用して計算され得る。
【0030】
図5Aを参照すると、第3ビームスプリッタ32は、第3固定レンズ31の前にある波長板29の直前に位置し、第3プリズム33は、第3ビームスプリッタ32の直前に位置する。第3MEMSミラー20、第3固定レンズ31、波長板29、第3ビームスプリッタ32及び第3プリズム33は全て、光リレーの長手方向軸に対して90度の角度で互いに直線状に位置決めされる。第3プリズム33は、光学リレーの中央部分(2つの固定レンズ25、26の間)に当接し、第1プリズム23及び第3プリズム33の直線状の位置決めが光リレーの長手方向軸と平行になるように第1プリズム23と直線状に位置決めされる。第1・第2・第3ビームスプリッタ28、30、32は、いずれも偏光ビームスプリッタであることが好ましい。好適な実施形態では、第1・第2MEMSミラー18、19間の距離は、第2・第3MEMSミラー19、20間の距離よりも短い。この構成は
図6にも示されている。
【0031】
図6は、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポートを取り除いた点を除いて、
図5に示す実施形態の平面図である。顕微鏡は、透過照明と反射照明(光はシステムの中を前方に進み、反射してカメラ/接眼レンズに戻って観察される。)で使用できる。本発明では、カメラ/接眼レンズ及び対物レンズをいくつかの異なる位置に配置することができる。1つの可能な構成では、カメラ/接眼レンズ(又は対物レンズターレット)が
図6の「X」の位置に配置され、対物レンズ(透過用の照明源を提供する。)が「Y」の位置に配置される(
図1も参照)。或いは、カメラ/接眼レンズを位置「Z」に配置し、対物レンズを位置「Y」に配置してもよい。この構成では、第1プリズム23が取り除かれる。さらに別の構成では、カメラ/接眼レンズは「X」の位置にあり、対物レンズは「Z」の位置にある。この構成では、第2プリズム24が取り除かれる。これらの構成の全てにおいて、カメラ/接眼レンズは、反射のための照明源を提供することができる。以下の段落では、これらの3つの構成をそれぞれ「構成A」、「構成B」、「構成C」と称する。
【0032】
構成Aでは、光は、対物レンズ8からメインウィンドウ9を通って進み、入射光線に対して45度の角度である第2プリズム24に当たる。次に、光線は、第1固定レンズ25及び第2固定レンズ26を通って導かれ、第1ビームスプリッタ28に当たる。次に、光は波長板29を通って進み、第1MEMSミラー18に当たり、そこで反射されて第1ビームスプリッタ28に戻り、第1ビームスプリッタ28を通過して第2ビームスプリッタ30に入る。次に、光線は、第2MEMSミラーの前の波長板29を通って進み、第2MEMSミラー19に当たり、そこで反射されて波長板29に戻り、さらに第2ビームスプリッタ30に戻る。次に、光線は、第2ビームスプリッタ30から第3ビームスプリッタ32に向けて垂直に方向転換される。次に、光は、第3MEMSミラー20の前の波長板29を通り、続いて第3固定レンズ31を通り、第3MEMSミラー20に進む。次に、光線は、第3MEMSミラー20で反射されて、第3固定レンズ31、波長板29及び第3ビームスプリッタ32を介して戻り、第3プリズム33に当たる。第3プリズム33では、光線を第1プリズム23に向け、メインウィンドウ9の側面を通過させ、光線は、「X」の位置でデバイスから放出される。3つの全てのプリズム23、24、33は、入射光線が45度の角度でプリズムに当たり、その入射方向に対して90度の角度で方向転換されるように構成される。
【0033】
光線がMEMSミラー18、19、20に当たると、3つのMEMSミラーのデフォーカスと球面収差を制御するソフトウェアを介して、これらの3点のそれぞれで倍率及び/又はフォーカスに影響を与える機会がある。好適な実施形態では、第1MEMSミラー18は、1:1の補正比で対物レンズの後焦点面に直接マッピングされる。好適な実施形態では、第3MEMSミラー20は、他の2つのMEMSミラー18、19よりも大きいビーム直径を有し、より大きな倍率をもたらす。
【0034】
構成Bにおいて、光路は、第1プリズム23が取り除かれて、光が
図6の「Z」の位置でデバイスから放出される点を除いて、構成Aに関する上述の説明と同じである。この構成では、カメラ/接眼レンズは対物レンズ8に垂直である。構成Cでも、カメラ/接眼レンズが対物レンズ8に垂直であるが、第1プリズム23ではなく第2プリズム24が取り除かれる。光路は、光がメインウィンドウ9の前面からデバイスに入射し、光リレーの第1固定レンズ25に当たる点を除いて、構成Aについて上述したものと同じである。
【0035】
図7は、
図1及び
図2に示されているのと同じ実施形態の第3斜視図である。この図は、第1プリズム23及び第2プリズム24並びに第1固定レンズ25が視認可能なメインウィンドウ9をより明確に示す。第1プリズム23に当たるまでに光線の直径が大きくなるため、第1プリズム23の直径(大きさ)は第2プリズム24の直径よりも大きいことに留意されたい。同様に、より大きな直径の光線のために、MEMSミラー20の直径は、他の2つのMEMSミラー18、19の直径よりも大きい。
【0036】
図8は、対物レンズが筐体に直接取り付けられる本発明の第2実施形態の第1斜視図であり、
図9は、対物レンズターレットが筐体に直接取り付けられる
図8に示す実施形態の第2斜視図である。この特定の実施形態では、装置を既存の顕微鏡に直接取り付けることができる。図示されているように、対物レンズ8は、筐体1に一体化された第1ねじ付きアダプタ34を介して位置「Y」(位置の指定については
図6を参照)で筐体にねじ込まれる。対物レンズターレット(図示せず)は、これも筐体1と一体である第2ねじ付きアダプタ35を介して位置「X」で筐体にねじ込まれる。メインウィンドウ9は削除され(対物レンズと対物レンズターレットが筐体に直接ねじ込まれているため)、延長部11はねじ付きアダプタ34、35を収容するように長くなっているが、他の全ての点で、本発明は前述の通りである。
【0037】
以下の説明は、本発明に適用される方程式に関する。
図10は、本発明の第1・第2実施形態の光学レイアウトの図である。
図10では、1つの固定レンズF(参照符号31)及び3つのバリフォーカルレンズv1、v2、v3(それぞれ参照符号20、19、18)が示されている。固定レンズFとバリフォーカルレンズv1を組み合わせることが可能であり、Gと表記する。バリフォーカルレンズv2及びv3を組み合わることが可能であり、Hと表記する。距離aは、固定焦点距離レンズFとバリフォーカルレンズv1の間の距離を表す。距離bは、バリフォーカルレンズv1とバリフォーカルレンズv2の間の距離を規定する。距離b及びcは正の値である。図示されているように、バリフォーカルレンズv1の前にある場合、距離aは正の値である。距離aは、負の値として、バリフォーカルレンズv1の後ろにすることもできる。Fの最も簡単で最適な位置はv1に近いと予想される。距離a及びcは、システムを2つのレンズリレーとみなすのに十分小さいと想定される。G、Hの同等の焦点距離f
G、f
Hはそれぞれ次の通りである。
【0039】
ここで、f
F、f
v1、f
v2、f
v3は、それぞれレンズF、v1、v2、v3の焦点距離である。距離が無限共役結像(infinite conjugate imaging)又はb=f
G+f
Hであるとすると、第2窪み10で観察される試料の倍率Mは次のようになる。
【0041】
第1MEMSミラー18(v3)を直径6mmとすると、1:1のスケールでほとんどの0.8NA対物レンズの後開口の直径と合致し、本発明に対する開口絞りとして機能する。これにより、MEMSミラーの形状を細かく制御することで、システムの球面収差やその他の収差を簡単に補正できる。また、動的フォーカス範囲に亘って解像度が維持されるように、システム全体の開口絞りが対物レンズの全開口であることを保証する。
【0042】
6mmのMEMSミラーの焦点距離は60mmから無限大まで可能である。好適な実施形態では、第1・第2MEMSミラー18、19は、f
v2=f
v3=60mmである。ビームスプリッタと波長板の大きさにより、第1・第2MEMSミラー18、19間のスペースcは少なくとも20mmである。上記式を使用すると、f
H=(60*60)/(60+60−20)=36mmである。2倍の場合、M=f
G/36=2、又はf
G=72mmである。第3MEMSミラー20は、倍率2倍では、MEMSミラー18、19の直径の2倍でなければならない。従って、その直径は12mmである。MEMSミラー20は、200mmから無限までの焦点距離範囲を有する。好適な実施形態では、倍率2倍とするケースの場合、固定レンズFの光学倍率を低減しつつ、導入された収差を最小化するために、値fv1=600mmが選択された。通常、固定レンズの光学倍率を大きくするほど、システムに収差を生じさせる。焦点距離f
v1の値が600mmの場合、f
Gをさらに減少させることにより、システムの倍率を減少させることができる。第3固定レンズ31を選択する際、f
G=72mmであるとした場合、固定焦点距離レンズ31とvlとの間の間隔aは少なくとも5mmである。これを解くと、f
G=72mm=f
F*600/(f
F+600−5)、f
G=82である。 好適な実施形態では、ユニット全体の大きさを比較的小さく保つために、f
Gとf
Hとの間の距離は100mm未満である。
【0043】
図11に示す光学系には、上記の図の説明で参照した、1つの12mm(v1)及び2つの6mm(v2及びv3)MEMSミラーが含まれている。大きいMEMSミラーは第3MEMSミラー20であり、2つの小さいMEMSミラーは第1・第2MEMSミラー18、19である。2つのリレーレンズ(第1・第2固定レンズ25、26)は、MEMSミラー18(v3)を対物レンズの後焦点面に1:1のスケールで結像する。これにより、球面収差を容易に補正可能となる。(通常、後焦点面は対物レンズ内にあり、光学リレーにより共役像面をそこに正確に配置できる。)このリレーに沿った2つの固定レンズの配置(つまり、それらの間の距離)は、デバイスが接続されている顕微鏡と2つのリレーレンズの倍率に依存する。
【0044】
ここで説明するシステムは、Zemax社(Zemax, LLC)の光学試験プラットフォームであるOPTICSTUDIO(登録商標)でモデル化された。表1は、0.8NAの水性試料における連続的な207ミクロンの範囲に亘るいくつかの焦点位置を示す。表1には、いくつかの連続的な1〜2倍の範囲で可能な倍率も示されている。
【0046】
本発明は、少しのデフォーカスの微調整を可能にするだけでなく、0.8開口数で200μmを超える焦点範囲、又は0.2NAで800μmを超える焦点範囲を可能とする。
【0047】
現在、既存のMEMSミラーを電子的にアクティブ化するには、約100〜150ボルトが必要である。MEMSミラーは、卓上型の高電圧電源で駆動できるであろう。好適な実施形態では、高電圧昇圧コンバータが、USB電力からMEMSミラーを駆動するために使用される。
【0048】
本発明は、試料ステージ又は対物レンズの動きを伴わずに、一般の人が、広領域の共焦点又は多光子顕微鏡を用いて迅速なフォーカス及びズームを実行することを可能にするという点で、従来技術に対する大幅な改善である。本発明の利点には、以下が含まれるが、これらに限定されない。(a)フォーカス及びズームが全て機器内で光学的に行われている間、試料は静止したままである。(b)大きな質量の直線移動がないため、システムの振動が最小限に抑えられる。(c)フォーカスとズームを個別に制御できる。(d)(従来技術と比較して)比較的大まかなフォーカス及びズームは、小さな構成要素で達成される。(e)対物レンズの背面開口は、焦点範囲とズーム範囲全体に亘って十分であるため、高解像度の結像が維持される。(f)可変で連続的なフォーカス速度が可能である。(g)MEMSミラーは、1kHzを超える速度で動作してフォーカスし、細かい連続的なフォーカス制御を提供できる。
【0049】
本発明の将来的な実施形態は、フォーカス及び/又はズームの音声動作制御と、ユーザが自身の手を自由に保つことができるようにズームを制御するための足踏みボタンと、MEMSミラーの同心円状のリングを用いて低次及び高次の球面収差を制御するソフトウェアと、高精細の非対称形状制御が可能な可変レンズを用いて他の収差を制御するソフトウェアと、低速度(time-lapse)実験中のオートフォーカス用のソフトウェアとを含み得る。
【0050】
図12〜
図20は、第1・第2実施形態よりもコンパクトな本発明の第3実施形態を示す。
図12は、本発明の第3実施形態の第1平面斜視図である。第1・第2実施形態と同様に、第3実施形態は、上部カバー37、側壁38及びフロア39を有する筐体36を備える。上部カバー37は、1つ以上の通気口40を備えることが好ましい。この実施形態では、単一のUSB41が上部カバー37を通って延在し、複数のMEMSミラーに駆動信号を供給する。対物レンズ42は、好ましくは筐体36と一体である第1ねじ付きアダプタ43を介して筐体36の第1側壁38に取り付けられる。本明細書では、この接続点を第1ポータル58と称する。筐体の上部にある穴47により、電力ケーブルをプリント回路基板48に接続することができる。筐体の他の穴は組立て用である。
【0051】
図13は、本発明の第3実施形態の底面斜視図である。この図に示すように、装置は、ねじ44で光学ベンチに固定できる。対物レンズタレット(図示せず)は、好ましくは筐体36と一体である第2ねじ付きアダプタ45を介して筐体36の第2側壁38に取り付けられる。本明細書では、この接続点を第2ポータル59と称する。
図16に関連して詳述するスロット46も示されている。
【0052】
図14は、筐体の上側カバーを取り除いた点を除いて
図12と同じ図である。この図に示すように、USB41は、筐体36内のプリント回路基板48に接続される。好適な実施形態では、プリント回路基板48は、3つ全てのMEMSミラー51、52、56を制御する。明確化のため、対物レンズ42及びねじ付きアダプタ43、45は、後続の図から省略している。様々なメーカーの機器に取り付ける目的で、対物レンズ42又は対物レンズタレット(図示せず)のいずれかを筐体36に接続するために、様々なねじ付きアダプタを使用できることに留意されたい。
【0053】
図15は、プリント回路基板及びUSBが取り除かれた状態で示される第3実施形態の第2平面斜視図である。この図に示すように、プリント基板48及び実装基板50の間には、複数のスペーサ49が配置される。実装基板50の穴61は、プリント回路基板48からの配線がMEMSミラー51、52、56に接続することを可能にする。
図16は、スペーサと実装基板を取り除いた点を除いて
図15と同じ図である。MEMSミラー51、52、56、プリズム/ミラー55及び第3固定レンズ57は全て、内部プラットフォームとして機能するベースプレート60に取り付けられる。プリズム/ミラー55は、直角平面ミラー又は直角プリズムとすることができる。ベースプレート/内部プラットフォーム60には、スロット46も形成されることに留意されたい。
図17は、筐体の側壁が取り除いた点を除いて
図16と同じ図である。
【0054】
図18は、本発明の第3実施形態の平面図である。この図に示すように、この実施形態は、第1MEMSミラー51及び第2MEMSミラー52を備える。これらのMEMSミラーのそれぞれは、楕円状であることが好ましく、これにより、光を適切に導くためのビームスプリッタ及び1/4波長板を不要にすることができる。これらの部品を不要にすることで、光の損失が減少するだけでなく、よりコンパクトな設計も可能になる。楕円状のMEMSミラーを使用すると、円状のMEMSミラーを斜めに使用したときに発生する非点収差をシステムから取り除き、より高い光学品質が得られる。円状のMEMSミラーによって引き起こされる非点収差と、楕円状のMEMSミラーでこの非点収差を克服するために使用される軸の比率は、本発明者による博士論文で説明されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる(後記の参考文献2)。
【0055】
上述のように、本発明の第3実施形態は、筐体のフロアのスロット46をさらに備える。第1・第2実施形態と同様に、第1・第2固定レンズ53、54は光学リレーを形成し、スロット46内にスライド可能に取り付けられ、それらの間の距離を調整できるように止めねじ(図示せず)で適所に固定される。本明細書では、対物レンズ42に最も近いスロットの端をスロットの「近位」端と称し、対物レンズから最も遠いスロットの端を「遠位」端と称する。第1MEMSミラー51は、第1・第2レンズ53、54を通過する光線が第1MEMSミラー51の中心に当たるように、スロット46の遠位端で第1・第2レンズ53、54と長手方向に位置決めされる。プリズム/ミラー55、第1固定レンズ53、第2固定レンズ54及び第1MEMSミラー51の中心点は、同じ水平面上にある。
【0056】
第1MEMSミラー51は、第1・第2レンズ52、53を通過する光線が第1MEMSミラー51に45度で当たるように、第2レンズ54に対して45度の角度で配置される。第2MEMSミラー52は、第1MEMSミラー51と同じ大きさ及び形状であることが好ましい。第2MEMSミラー52は、第1MEMSミラー51に対して90度の角度で第1MEMSミラー51に近接して配置され、また、45度の角度で第1MEMSミラー51に当たる光線が、45度の角度で第2MEMSミラー52の中心に当たるように構成される。そして、この同じ光線は、スロット46(第1・第2レンズ53、54によって形成される光リレーの長手方向軸に沿ったスロット)に平行な軌道に沿うように、第2MEMSミラー52によって方向転換される。好適な実施形態では、第1・第2固定レンズ53、54は、直径6.25mm及び焦点距離50.0mmのアクロマートレンズである。
【0057】
好適な実施形態では、プリズム/ミラー55は、6.25mmの誘電反射プリズムである。好適な実施形態では、第1・第2MEMSミラー51、52は、それぞれ5mm(短軸)×7.07mm(長軸)の直径の楕円状ミラーであり、第1MEMSミラー51の短軸は、対物レンズ42の背面開口(back aperture)の直径と同じである。好適な実施形態では、第3MEMSミラー56は、10mm(短軸)×14.14(長軸)の直径の楕円状ミラーである。
【0058】
第1構成(光路透過のみ)では、対物レンズ42からの光線は、最初に、筐体36の第1ポータル58の内側に配置された反射プリズム又はミラー55に当たる。このプリズム/ミラー55は、第1・第2レンズ53、54及び第1MEMSミラー51と全て同じ長手方向軸(すなわち、光学リレーの長手方向軸)上にあり且つプリズム/ミラー55がスロット46の近位端に近接して配置されるように、第1・第2レンズ53、54及び第1MEMSミラー51と位置決めされる。プリズム/ミラー55は、対物レンズからの光線に対して45度の角度であり、従って、プリズム/ミラー55は、スロット46上で横方向に向けられている第1・第2レンズ53、54に対して45度の角度でもあることに留意されたい。このようにして、光線は、プリズム/ミラー55によって、第1・第2のレンズ53、54を介して、第1MEMSミラー51、第2MEMSミラー52に向けられ、その後、プリズム/ミラー55に隣接して(好ましくはプリズム/ミラー55に当接して)配置された第3MEMSミラー56に当たるまで、スロット46(又は光学リレーの長手方向軸)に平行になる。第2MEMSミラー52、第3固定レンズ57及び第3MEMSミラー56の中心点は、同じ水平面上にある。
【0059】
第3MEMSミラー56は、第2MEMSミラー52から来る光線に対して45度の角度であり、それによって、光が第2ポータル59を通過するように方向転換する。第3MEMSミラー56に当たる前に、光線は第3固定レンズ57を通過する。その目的は、光路長を短くし、本発明全体の大きさを小さくすることである。第3固定レンズ57は、第2・第3MEMSミラー52、56の間に配置される。好適な実施形態では、第3固定レンズ57は、直径10mm、焦点距離150mmのアクロマートレンズである。この図では、第3固定レンズ57は位置調整可能として示されているが、最終製品では移動可能であってもなくてもよい。
【0060】
別の構成(光路反射)では、光は第2ポータル59を介して本発明に入り、第3MEMSミラー56に当たり、(第3固定レンズ57を通過した後)スロット46(又は光リレーの長手方向軸)に平行である軌道に沿って第2MEMSミラー52に向けられる。45度の角度で第2MEMSミラー52に当たると、光は90度の角度で第1MEMSミラー51に方向転換される。光が第1MEMSミラー51に当たると、光は再び90度の角度で方向転換され、第2レンズ54を通過し、次に第1レンズ53を通過する。次に、光線はプリズム/ミラー55に当たり、そこで90度の角度で方向転換され、筐体の第1ポータル58を通過し、対物レンズを通過して、試料に到達し、そこで光線は試料により反射して、対物レンズを通ってプリズム/ミラー等に戻る。光は当初の光路をたどり、筐体内の第2ポータル59(この構成では、光が第3MEMSミラー56に当たる前に本発明に入ったのと同じポータルである。)を通って放出される。
【0061】
好適な実施形態では、第3MEMSミラー56は、2倍の倍率変化のため、第1MEMSミラー51より少なくとも2倍大きい。1.5倍の倍率変更のためには、第3MEMSミラー56は、第1MEMSミラー51より少なくとも1.5倍大きくなければならない。3倍の倍率変更のためには、第3MEMSミラー56は、第1MEMSミラー51より少なくとも3倍大きくなければならない。
【0062】
図19は、本発明の第3実施形態の光学レイアウトの図である。
図19では、1つの固定レンズF(参照符号57)と3つのバリフォーカスレンズv1、v2、v3(それぞれ参照符号56、52、51)が示されている。固定レンズFとバリフォーカルレンズv1を組み合わせることが可能であり、Gと表記する。バリフォーカルレンズv2及びv3を組み合わせることが可能であり、Hと表記する。距離aは、固定焦点距離レンズFとバリフォーカルレンズv1の間の距離を表す。距離bは、固定焦点距離レンズFとバリフォーカルレンズv2の間の距離を規定する。距離b及びcは正の値である。図示するように、固定焦点距離レンズがバリフォーカルレンズv1の後ろにある場合、距離aは正の値になり得る。固定焦点距離レンズがバリフォーカルレンズv1の前にある場合、距離aは負の値にもなり得る。Fの最も簡単で最適な場所はv1に近いと予想される。距離a及びcは、システムを2つのレンズリレーとみなすのに十分小さいと想定される。G、Hの同等の焦点距離f
G、f
Hはそれぞれ次の通りである。
【0064】
ここで、f
F、f
v1、f
v2、f
v3は、それぞれレンズF、v1、v2、v3の焦点距離である。距離が無限共役結像又はb=f
G+f
Hであるとすると、第2ポータル59で観察される試料の倍率Mは次のようになる。
【0066】
好適な実施形態では、第1MEMSミラー51(v3)を直径5mmとすると、1:1のスケールで高NAエア対物レンズの後開口の直径と合致し、本発明に対する開口絞りとして機能する。これにより、MEMSミラーの形状を細かく制御することで、システムの球面収差やその他の収差を簡単に補正できる。また、動的フォーカス範囲に亘って解像度が維持されるように、システム全体の開口絞りが対物レンズの全開口であることを保証する。
【0067】
5mmのMEMSミラーの焦点距離は60mmから無限大まで可能である。好適な実施形態では、距離bは、卓上顕微鏡において、対物レンズターレット及び対物レンズの間への挿入及び使用を容易としつつ本発明を小さく維持するため、190mmに限定される。距離a及びcは、それぞれ10及び9.015である。それらは、システムにおける他の光学部品の物理的な制限及びアセンブリの考慮に基づく。2倍の場合、M=2=f
G/f
H 及び無限共役結像の場合、b=f
G+f
H 、f
H=64.83mm、f
G=129.67mm、f
v2=93.5mm、f
v3=191mmである。倍率2倍のためには、第3MEMSミラー56は、第1MEMSミラー51の直径(短軸)の少なくとも2倍でなければならない。従って、その直径は10mmである。MEMSミラー56は、焦点距離範囲が200mmから無限大である。好適な実施形態では、倍率2倍で導入される収差を最小限にする場合、固定レンズFの光学倍率を低減するために、値f
v1 = 893mmが選択された。通常、固定レンズの光学倍率が大きいほど、システムには多くの収差が生じる。第3固定レンズ57を選択するために、f
G =129.67mmであり、固定焦点距離レンズ57とv1との間の間隔aは10mmであると仮定し、これを解くと、f
G =129.67mm=f
F=893/(f
F+893−10)、f
F=150mmとなる。
【0068】
図20は、本発明の第3実施形態の光学系の図である。
図20に示す光学系には、上記の図の説明で参照した、1つの10mm(v1)及び2つの5mm(v2及びv3)のMEMSミラーが含まれている。大きいMEMSミラーは第3MEMSミラー56であり、2つの小さいMEMSミラーは第1・第2MEMSミラー51、52である。この図ではいずれも示されていない2つのリレーレンズ(第1・第2固定レンズ51、52)は、MEMSミラー56(v3)を対物レンズの後焦点面に1:1のスケールで結像する。これにより、球面収差を容易に補正可能となる。(通常、後焦点面は対物レンズ内にあり、光学リレーにより共役像面をそこに正確に配置できる。)このリレーに沿った2つの固定レンズの配置(つまり、それらの間の距離)は、デバイスが接続されている顕微鏡の対物レンズと各リレーレンズの焦点距離に依存する。
図20において、f
Fは、第3固定レンズ57である。
【0069】
ここで説明するシステムは、Zemax社(Zemax, LLC)の光学試験プラットフォームであるOPTICSTUDIO(登録商標)でモデル化された。表2は、取り付けた対物レンズなしに、空気中の−1367.8mmから109.1mmまでの連続範囲に亘って1倍の倍率の際の本発明のいくつかの焦点距離を示す。また、表2は、取り付けた対物レンズなしに、空気中の−194.8mmから98.5mmまでの連続範囲に亘って2倍の倍率の際の本発明のいくつかの焦点距離を示す。無限共役の既製の対物レンズは、無限共役での入射光線の収差を最小限に抑えるように、非常に精緻に設計されている。本発明は、負から正の範囲を有することにより、無限共役を中心とする自身の焦点距離を維持することで、不要な収差を最小限に抑える。最後に、この表は、1倍〜2倍の連続範囲に亘って倍率を変更しながら、200nmの焦点距離を維持する本発明の能力を示す。本発明が20倍の対物レンズと共に使用される場合、結像された試料の倍率は、20倍〜40倍の範囲である。
【0071】
本発明の好適な実施形態を示し、説明してきたが、本発明から逸脱することなく、本発明の幅広い観点で、多くの変更及び修正を加えることができることは、当業者には明らかであろう。従って、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲に含まれるそのような全ての変更及び修正を包含することを意図している。
【0072】
[参考文献]
1. Lukes, S. J.及びDickensheets, D.L., SPIE BiOS, International Society for Optics and Photonics, 2014年, pp. 89490W- 89411
2. Lukes, S. J., Imaging performance of elliptical-boundary varifocal mirrors in active optical systems, モンタナ州立大学 博士論文, 2015年, p. 52, Figs. 30 and 31