【実施例】
【0026】
図1は、本発明の一実施例の被加熱物搬送装置8が加熱炉12に取り付けられた状態を示す平面図である。被加熱物搬送装置8は、ローラ式搬送装置10と移送コンベア36とを備えている。加熱炉12は、所謂ローラハースキルン型の熱処理炉である。加熱炉12は、耐熱レンガ、セラミックボード等の断熱材及びその断熱材を包被するケーシングによって形成されたトンネル状の炉体14と、被搬送物Kを搬送する複数本の炉体内搬送ローラ16と、被搬送物Kを加熱するように炉体14内に設けられた図示しないヒータと、複数本の炉体内搬送ローラ16を一定の回転速度で相互に同期して回転駆動する図示しない回転駆動装置と、を備えている。
【0027】
被加熱物である被搬送物Kは、アルミナ、SiC、ムライト、コーディライト、スピネルコーディライト、マグネシア、ジルコニア等のセラミック材料により構成されており、矩形のセラミック板、加熱処理材料が収容された箱型の匣鉢等である。本実施例では、箱型の匣鉢が図に示されている。匣鉢には、例えば誘電体、誘電体と電極とが積層されたチップコンデンサ、リチウムイオン電池の電極材料等加熱処理材料が収容される。
【0028】
複数本の炉体内搬送ローラ16は、被搬送物Kを例えば大気中或いは不活性ガス中で連続的に熱処理するために、炉体14内を水平方向に且つ炉体14の長手方向すなわち搬送方向A1に直交する方向に一定の中心間隔で貫通して設けられている。
【0029】
図1では、炉体14の出口側端部と、その出口側端部に配置された1本の炉体内搬送ローラ16とが示されている。加熱炉12で熱処理された複列の被搬送物Kは、炉体14の出口側端部から炉体14の出口に配置されたローラ式搬送装置10へ一定の速度で連続的に搬出されるようになっている。
【0030】
ローラ式搬送装置10は、フード30及び置換室32を備えている。また、ローラ式搬送装置10は、3列コンベア20と切離コンベア22と払出コンベア23と被搬送物整列装置28と送出コンベア34とを炉体14の長手方向に順に備えている。フード30は、被搬送物Kのガス雰囲気例えば大気雰囲気、窒素雰囲気、還元雰囲気等を保持し或いは被搬送物Kを保温するために、炉速コンベアとして機能する3列コンベア20、切離コンベア22、払出コンベア23、及び被搬送物整列装置28を気密に覆う。置換室32は、被搬送物Kの搬送方向A1にフード30に連続して設けられている。
図2は、ローラ式搬送装置10を覆うフード30の天井壁30dを取り除いて示す平面図である。
【0031】
3列コンベア20は、複列の被搬送物Kを少なくとも3列(本実施例では6列)の縦列状態で基本的には炉体14内と同じ速度(炉速)でそれぞれ搬送方向A1へ搬送する。切離コンベア22は、被搬送物Kが所定位置に到達するまでは3列コンベア20と同じ速度で搬送するが、到達すると3列コンベア20よりも高速で複数の被搬送物Kを搬送することで、複数の被搬送物Kを横一列で切り離す。払出コンベア23は、切離コンベア22により切り離された被搬送物Kを炉速よりも高速で搬送し、置換室32内へ送り込む。
【0032】
被搬送物整列装置28は、置換室32内へ送り込まれるに先立って、横一列で切り離された被搬送物Kをストッパ24に突き当て且つ搬送方向A1と直交する方向に挟持して被搬送物Kを相互に密着させる幅寄せ装置26を用いて被搬送物Kの搬送方向A1に直交する方向に横一列に整列させる。送出コンベア34は、置換室32内の横一列に整列させられた被搬送物Kを置換室32から炉速よりも高速で送り出す。
【0033】
移送コンベア36は、送出コンベア34からの横一列の被搬送物Kを受けて、搬送方向A1に直交する方向へ一列(単列)で図示しない反転装置等へ移送する。
【0034】
図3、
図4、
図5、
図6に示すように、3列コンベア20、切離コンベア22、払出コンベア23、被搬送物整列装置28、フード30、置換室32、及び送出コンベア34は、機枠(フレーム)38によってそれぞれ支持されている。
図2及び
図3に示すように、フード30は、一対の側壁30a及び30b、底壁30c、天井壁30dを備えてトンネル状を成し、炉体14の出口に気密に接続されている。置換室32は、
図1及び
図6に示すように、一対の側壁32a及び32b、底壁32c、天井壁32dを備えてトンネル状を成している。置換室32は、さらに、炉体14側の開口を開閉する入口シャッタ32eと、炉体14とは反対側の開口を開閉する出口シャッタ32fとを備えている。一対の側壁30a及び30bの間及び一対の側壁32a及び32bの間は、被搬送物Kの搬送路Hを構成している。
【0035】
図2及び
図6に示すように、3列コンベア20は、炉体内搬送ローラ16と同じ回転速度で回転する1対の上流側炉速搬送ローラ18a及び下流側搬送ローラ18bと、複数本の第1搬送ローラ44、及び第1搬送ローラ44を回転駆動する第1回転駆動装置60と、第2搬送ローラ52、及び第2搬送ローラ52を回転駆動する第2回転駆動装置62と、第3搬送ローラ58、及び第3搬送ローラ58を回転駆動する第3回転駆動装置64とを、上流側炉速搬送ローラ18aと下流側搬送ローラ18bとの間に備えている。上流側炉速搬送ローラ18a及び下流側搬送ローラ18bは、炉体内搬送ローラ16と同様に、回転軸と、回転軸上に設けられた複数個(本実施例では12個)の支持輪とで構成されているが、下流側搬送ローラ18bの支持輪は支持軸に対して相対回転可能な自由回転輪(フリーローラ)である。
【0036】
図2及び
図4に示すように、第1搬送ローラ44は、搬送路Hの幅方向に貫通した状態で回転駆動される複数本(本実施例では8本)の第1回転軸40と、第1回転軸40のうちの長手方向の中央部に複数個設けられて3列以上の被搬送物Kのうちの中央列を構成する被搬送物Kを支持する複数(本実施例では6個)の第1支持輪42とを有する。第1支持輪42は、第1回転軸40よりも大径であって、アルミナ、SiC、ムライト、コーディライト、スピネルコーディライト、マグネシア、ジルコニア等のセラミック材料から構成されて円環状とされている。
【0037】
フード30の一対の側壁30a及び30bの外側には、スペーサ45を介して一対の側板46a、46bがそれぞれ側壁30a及び30bと平行に固定されている。第1回転軸40の両軸端部40a、40bは、シール付軸受SBを介して両側壁30a及び30bによって両持ち状に回転可能に支持されており、第1回転軸40の一方の軸端部40aは、一方の側板46aによっても回転可能に支持されている。
【0038】
第1回転軸40は、両側壁30a及び30bよりも長い全長を有し、両持ち状で回転可能に支持されている。一対の側壁30a及び30bと一対の側板46a、46bは、搬送ローラ例えば第1搬送ローラ44、第2搬送ローラ52、第3搬送ローラ58等を、回転可能に支持するローラ支持壁として機能している。
【0039】
図2及び
図3に示すように、第2搬送ローラ52は、搬送路Hの中央部の両側の端部のうち本実施例では搬送方向A1に向かって右側であるの一方の端部において、複数本の第1回転軸40の間に配置された複数本(本実施例では7本)の第2回転軸48と、第2回転軸48に複数個(本実施例では8個)設けられて2列の中央列の被搬送物Kの両側に並ぶ各2列の端列のうちの本実施例では搬送方向A1に向かって右側である一方の端列を構成する被搬送物Kを支持する第2支持輪50とを有する。第2支持輪50は、第2回転軸48よりも大径であって、アルミナ、SiC、ムライト、コーディライト、スピネルコーディライト、マグネシア、ジルコニア等のセラミック材料から円環状に構成されている。
【0040】
第2回転軸48の一方の軸端部48aは、側壁30a及び側板46aによりシール付軸受SB及び図示しない軸受を介して回転可能に支持され、第2回転軸48の他方の軸端部48bは自由端である。第2回転軸48は、第1回転軸40よりも半分よりも短い全長を有し、一方の側壁30a及び側板46aにより片持ち状で回転可能に支持されている。
【0041】
図2及び
図3に示すように、第3搬送ローラ58は、搬送路Hの中央部の両側の端部のうちの本実施例では搬送方向A1に向かって左側である他方の端部において、複数本の第1回転軸40の間に且つ第2回転軸48と同心に配置された複数本(本実施例では7本)の第3回転軸54と、第3回転軸54に複数個(本実施例では8個)設けられて中央列の両側に並ぶ各2列端列のうちの本実施例では搬送方向A1に向かって左側である他方の端列を構成する被搬送物Kを支持する第3支持輪56とを有する。第3支持輪56は、第3回転軸54よりも大径であって、アルミナ、SiC、ムライト、コーディライト、スピネルコーディライト、マグネシア、ジルコニア等のセラミック材料から構成されて円環状とされている。
【0042】
第3回転軸54の一方の軸端部54aは自由端であり、第3回転軸54の他方の軸端部54bは、他方の側壁30b及び側板46bによりシール付軸受SB及び図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。第3回転軸54は、第1回転軸40よりも半分よりも短い全長を有し、他方の側壁30b及び側板46bにより片持ち状で回転可能に支持されている。
【0043】
第1回転軸40の第1支持輪42、第2回転軸48の第2支持輪50、及び第3回転軸54の第3支持輪56は、被搬送物Kと同様、セラミック材料製であることから、被搬送物Kとの接触によって微量のセラミック粉末は発生するが、金属粉末の発生がないため、被搬送物Kに収容される誘電体、誘電体と電極とが積層されたチップコンデンサ、リチウムイオン電池の電極材料等の加熱処理材料の金属汚染が抑制されるようになっている。
【0044】
図2及び
図6に示すように、第1回転駆動装置60は、複数本の第1回転軸40の搬送路Hの一方の端すなわち一方の側壁30aからそれぞれ突き出す軸端部40aを回転駆動することにより、複数本の第1搬送ローラ44を相互に同期させて回転駆動する。第1回転駆動装置60は、第1減速機付電動機60bと、軸端部40aにそれぞれ嵌め着けられた相互に同径のスプロケット60cと、それらスプロケット60cに巻き掛けられた同期チェーン60dと、軸端部40aの一つ及び第1減速機付電動機60bの出力軸にそれぞれ嵌め着けられた一対のスプロケット60eと、一対のスプロケット60eに巻き掛けられた駆動チェーン60fとを備え、複数本の第1回転軸40を同期回転駆動する。
【0045】
図2及び
図6に示すように、第2回転駆動装置62は、複数本の第2回転軸48の搬送路Hの一方の端すなわち一方の側壁30aからそれぞれ突き出す軸端部48aを回転駆動することにより、複数本の第2搬送ローラ52を相互に同期させて回転駆動する。第2回転駆動装置62は、第2減速機付電動機62bと、軸端部48aにそれぞれ嵌め着けられた相互に同径のスプロケット62cと、それらスプロケット62cに巻き掛けられた同期チェーン62dとを備えている。さらに、第2回転駆動装置62は、下流側搬送ローラ18bの軸端部及び第2減速機付電動機62bの出力軸にそれぞれ嵌め着けられた一対のスプロケット62eと、一対のスプロケット62eに巻き掛けられた駆動チェーン62fと、下流側搬送ローラ18bの軸端部と軸端部48aの一つにそれぞれ嵌め着けられた一対のスプロケット62gと、それらスプロケット62gに巻き掛けられた駆動チェーン62hを備え、複数本の第2回転軸48を同期回転駆動する。
【0046】
図2及び
図6に示すように、第3回転駆動装置64は、複数本の第3回転軸54の搬送路Hの他方の端すなわち他方の側壁30bからそれぞれ突き出す軸端部54bを回転駆動することにより、第3搬送ローラ58を相互に同期させて回転駆動する。
図6に示されるように、第3回転駆動装置64は、第3減速機付電動機64bと、軸端部54bにそれぞれ嵌め着けられた相互に同径のスプロケット64cと、それらスプロケット64cに巻き掛けられた同期チェーン64dと、軸端部54bの一つ及び第3減速機付電動機64bの出力軸にそれぞれ嵌め着けられた一対のスプロケット64eと、一対のスプロケット64eに巻き掛けられた駆動チェーン64fとを備え、複数本の第3回転軸54を同期回転駆動する。
【0047】
図3及び
図4に示すように、第1回転駆動装置60、第2回転駆動装置62及び第3回転駆動装置64は、チェーン及びスプロケットを用いることから、被加熱材料の金属汚染の原因となる微量の金属粉(粒子)を発生させる可能性のあるものである。しかし、本実施例では、被加熱材料の金属汚染を抑制するために、第1回転駆動装置60は、第1回転軸40の搬送路Hの一方の端すなわち一方の側壁30aからそれぞれ突き出す軸端部40aを回転駆動するものであり、第2回転駆動装置62は、複数本の第2回転軸48の搬送路Hの一方の端すなわち一方の側壁30aからそれぞれ突き出す軸端部48aを回転駆動するものであり、第3回転駆動装置64は、複数本の第3回転軸54の搬送路Hの他方の端すなわち他方の側壁30bからそれぞれ突き出す軸端部54bを回転駆動するものである。また、第1回転駆動装置60、第2回転駆動装置62及び第3回転駆動装置64は、搬送路H及び側壁30a或いは30bから離れて位置させられている。さらに、第1回転駆動装置60、第2回転駆動装置62及び第3回転駆動装置64は、高温のフード30内から離れて位置させられている。このため、耐久性が得られ、また冷却装置を用いることが不要となる。
【0048】
図4に示されるように、第1回転軸40は、両側壁30a及び30bによって両持ち状に回転可能に支持されており、第1回転軸40の中央部は、複数個(本実施例では3個)の第1コロ式支持装置65により回転可能に支持されている。また、
図3に示されるように、一方の側壁30aと側板46aとにより片持ち状に回転可能に支持された第2回転軸48の軸端部(自由端部)48bは、複数(本実施例では2個の)の第2コロ式支持装置66により回転可能に支持されている。また、
図3に示されるように、他方の側壁30bと側板46bとによりそれぞれ片持ち状に回転可能に支持された第3回転軸54の軸端部(自由端部)54aは、複数(本実施例では2個)の第3コロ式支持装置67により回転可能にそれぞれ支持されている。これにより、第1回転軸40の中央部の撓み、第2回転軸48の自由端部48b、及び第3回転軸54の自由端部54aの撓みがそれぞれ抑制され、撓みに由来する被搬送物Kの搬送方向A1のずれが抑制されている。
【0049】
図3及び
図4に示されるように、第1コロ式支持装置65は、基台65aと、基台65aから立設され、水平方向に所定距離離隔した一対のコロ65bと、一対のコロ65bの回転中心線が平行な状態で回転可能に支持するローラ支持ブラケット65cとを有し、一対のコロ65bに当接する第1回転軸40を回転可能に支持する。同様に、第2コロ式支持装置66は、基台66aと、一対のコロ66bと、ローラ支持ブラケット66cとを有して第2回転軸48を回転可能に支持し、第3コロ式支持装置67は、基台67aと一対のコロ67bと、ローラ支持ブラケット67cとを有し、第3回転軸54を回転可能に支持する。
【0050】
図1及び
図6に示されるように、制御装置68は、例えば電子制御装置であって、搬送路H上を複列状態で搬送される6列の被搬送物Kを、基本的には、炉体14内における搬送速度と同じ速度で搬送するように、第1減速機付電動機60b、第2減速機付電動機62b、及び第3減速機付電動機64bを制御する。同時に、制御装置68は、搬送路H上を複列状態で搬送される6列の被搬送物Kのうち搬送方向A1に直交する方向に隣接する被搬送物K、すなわち、3列コンベア20の第1搬送ローラ44により搬送される2列の被搬送物Kと、3列コンベア20の第2搬送ローラ52により搬送される2列の被搬送物Kと、3列コンベア20の第3搬送ローラ58により搬送される2列の被搬送物Kとを、搬送方向A1の相互の位置ずれが小さくなるように、すなわち搬送方向A1に直交する方向において同期させるように、第1搬送ローラ44を駆動する第1減速機付電動機60b、第2搬送ローラ52を回転駆動する第2減速機付電動機62b、及び第3搬送ローラ58を駆動する第3減速機付電動機64bの回転数を補正制御する。
【0051】
制御装置68は、例えば、3列コンベア20の始端部に設けられた図示しない3つのセンサにより検出された、第1搬送ローラ44により搬送される2列の被搬送物Kの位置と、3列コンベア20の第2搬送ローラ52により搬送される2列の被搬送物Kの位置と、3列コンベア20の第3搬送ローラ58により搬送される2列の被搬送物Kの位置との搬送方向A1の相互のずれが縮小するように、補正制御する。
【0052】
図2及び
図6に示されるように、切離コンベア22は、3列コンベア20に続いて設けられている。切離コンベア22は、複数本(本実施例では4本)の切離搬送ローラ70と、第1回転駆動装置60と同様に構成された切離回転駆動装置72とを有する。複数本の切離搬送ローラ70は、上流側炉速搬送ローラ18aと同様にシール付軸受SBを介して両側壁30a及び30bによって両持ち状に回転可能に支持された回転軸70aと、回転軸70a上に固設された複数個(本実施例では22個)の支持輪70bとから、それぞれ構成されている。
【0053】
複数本の切離搬送ローラ70は、制御装置68により制御され、切離回転駆動装置72により同期して回転駆動されることにより、3列コンベア20で6列の縦列状態で搬送されてきた被搬送物Kが所定位置に到達するまでは炉速で搬送するが、被搬送物Kが所定位置に到達すると、3列コンベア20よりも高い速度で搬送することで、被搬送物Kを横一列毎に切り離す。
【0054】
図2及び
図5に示されるように、払出コンベア23は、切離コンベア22に続いて設けられている。払出コンベア23は、複数本(本実施例では6本)の払出搬送ローラ74と、横一列で切り離された被搬送物Kを炉速よりも高い速度で搬送させるように払出搬送ローラ74を回転駆動する払出回転駆動装置76とを有している。複数本の払出搬送ローラ74は、上流側炉速搬送ローラ18aと同様にシール付軸受SBを介して両側壁30a及び30bによって両持ち状に回転可能に支持された回転軸74aと、回転軸上に固設された複数個(本実施例では22個)の支持輪74bとからそれぞれ構成されている。払出コンベア23は、制御装置68に制御されることにより、炉速よりも高い速度で搬送途中に設けられた過程で被搬送物整列装置28において横一列に整列させられた被搬送物Kを置換室32へ送り込む。
【0055】
図2及び
図5に示されるように、被搬送物整列装置28は、ストッパ24と幅寄せ装置26とを有している。ストッパ24は、電動シリンダや空圧シリンダ等の上下アクチュエータ78により上位置及び下位置に選択的に移動可能に設けられ、上位置において被搬送物Kの搬送方向A1の移動を阻止する。幅寄せ装置26は、被搬送物上下装置84と、側壁30a及び30bに固定された一対の水平シリンダ86と、一対の挟持具88と、を備えている。被搬送物上下装置84は、電動シリンダや空圧シリンダ等の上下アクチュエータ80により上位置及び下位置に選択的に移動可能に設けられ、搬送方向A1に直交する方向に移動可能に支持する複数の支持ローラ82を有する。一対の挟持具88は、一対の水平シリンダ86により水平方向に駆動されることにより、被搬送物上下装置84により支持された被搬送物Kを搬送方向A1に直交する方向から挟持する。被搬送物整列装置28は、制御装置68に制御されることにより、ストッパ24に突き当てられ且つ搬送路Hから持ち上げられた横一列の被搬送物Kを、横方向に密接した状態で横一列に整列させる。
【0056】
図2に示されるように、送出コンベア34は、払出コンベア23に続いて設けられている。送出コンベア34は、複数本(本実施例では8本)の送出搬送ローラ94と、横一列で切り離された被搬送物Kを炉速よりも高い速度で搬送させるように送出搬送ローラ94を回転駆動する図示しない送出回転駆動装置とを有する。複数本の送出搬送ローラ94は、上流側炉速搬送ローラ18aと同様にシール付軸受SBを介して両側壁32a及び32b、及び図示しない支持壁によって両持ち状に回転可能に支持された回転軸90と、回転軸90上に固設された複数個(本実施例では22個)の支持輪92とからそれぞれ構成されている。
【0057】
送出コンベア34は、制御装置68に制御されることにより、炉速よりも高い速度で搬送途中に設けられた過程で被搬送物整列装置28において横一列に整列させられた被搬送物Kを、炉内と同じ雰囲気ガスから大気へ置換された置換室32内から移送コンベア36上へ送り出す。
【0058】
移送コンベア36は、搬送方向A1に直交する方向に配置されたコンベアレール36aと、コンベアレール36aによって支持されたコンベアチェーン36bと、図示しないチェーン駆動装置と、を有するチェーンコンベアである。移送コンベア36は、制御装置68に制御されることにより、送出コンベア34により横一列に整列させられた被搬送物Kが到着すると、それら被搬送物Kを搬送方向A1に直交する方向へ、図示しない反転装置等まで単列で移送する。反転装置においては、移送コンベア36により一列に搬送された被搬送物Kを一個ずつ順次反転することができる。
【0059】
以上のようにして構成されたローラ式搬送装置10の3列コンベアでは、炉体14の出口から、複数(本実施例では各2列の3列合計で6列)に縦列した被搬送物Kが所定の炉速で順次搬出されると、第1列である中央の2列の被搬送物Kが3列コンベア20の第1搬送ローラ44により搬送され、搬送方向A1に向かって右側の2列である第2列の被搬送物Kが3列コンベア20の第2搬送ローラ52により搬送され、搬送方向A1に向かって右側の2列である第3列の被搬送物Kが3列コンベア20の第3搬送ローラ58により搬送される。
【0060】
加熱炉12の炉体内搬送ローラ16は、特に高温加熱領域において長手方向の中央部が下方へ湾曲するように撓む傾向があり、炉体14から搬出される被搬送物Kは、搬送方向A1に直交する横方向において、両端部に比較して中央部ほど搬送方向A1に位置する傾向となる。この傾向が著しいと、被搬送物整列装置28の整列能力を超え、置換室32内に収容することが困難となる場合がある。
【0061】
これに対して、制御装置68は、3列コンベア20の上流部に設けられた図示しない3つのセンサにより検出された、第1搬送ローラ44により搬送される2列の被搬送物Kと、3列コンベア20の第2搬送ローラ52により搬送される2列の被搬送物Kと、3列コンベア20の第3搬送ローラ58により搬送される2列の被搬送物Kとの搬送方向A1の相互のずれが縮小するように、制御する。これにより、3列コンベア20の段階において、被搬送物Kの搬送方向A1の相互のずれが小さくされる。
【0062】
また、3列コンベア20の段階において、第1搬送ローラ44の第1支持輪42の径は、第2搬送ローラ52の第2支持輪50の径及び第3搬送ローラ58の第3支持輪56の径よりも大きく設定されている。このため、搬送路H上において、第1搬送ローラ44により搬送される被搬送物Kに対して、第2搬送ローラ52及び第3搬送ローラ58により搬送される被搬送物Kが離れる傾向とされ、第1搬送ローラ44により搬送される被搬送物Kと第2搬送ローラ52及び第3搬送ローラ58により搬送される被搬送物Kとの干渉が回避される。
【0063】
3列コンベア20により基本的には炉速で搬送された横一列の被搬送物Kは、搬送方向A1において比較的接近させられているが、3列コンベア20に続く切離コンベア22によって被搬送物Kの到達毎に炉速よりも高い速度で搬送されることで、搬送方向A1において切り離されることにより、搬送方向A1の相互間隔が大きくされる。このように搬送方向A1の相互間隔が大きくされた被搬送物Kは、炉速よりも高い速度で搬送される過程で、被搬送物整列装置28のストッパ24及び幅寄せ装置26によって、横方向に相互に密着した状態で搬送方向に精度よく横一列とされる。精度よく横一列とされた被搬送物Kは、払出コンベア23により置換室32内に送り込まれる。そして、置換室32内が大気に置換されると、置換室32内の横一列の被搬送物Kは、送出コンベア34により移送コンベア36の端部に送り出される。
【0064】
被搬送物整列装置28による横一列の整列及び置換室32内の収容を前提とすると、切離コンベア22によって被搬送物Kの搬送方向A1の相互間隔が大きくされることが必要である。このため、切離コンベア22は、その存在によって、加熱炉12内の被搬送物Kの返送方向の間隔を詰めることができ、加熱炉12の全長を短くすることに寄与している。
【0065】
置換室32の容積は、ガス雰囲気を形成するガスの消費効率をよくするために、横一列の被搬送物Kを収容可能な範囲で可及的に小さく設定されている。前述の、被搬送物整列装置28のストッパ24及び幅寄せ装置26によって、横方向に相互に密着した状態で搬送方向に精度よく横一列とすることが、この置換室32の容積を可及的に小さくすることに寄与している。
【0066】
また、フード30は、その側壁30a、30bを貫通する第1回転軸40、第2回転軸48、第3回転軸54、回転軸70aを受けるためにシール付軸受SBが用いられるとともに、炉体14の出口及び置換室32の入口に気密に接続されている。このため、フード30は、置換室32に入るまでは、加熱炉12から搬出された被搬送物Kを加熱炉12内と同様のガス雰囲気下に保持する機能を有している。このように、フード30内も加熱炉12内と同様のガス雰囲気とすることにより、被搬送物Kに収容された加熱処理材料に対する加熱炉12のガス雰囲気下の加熱処理容量を高めることができる。
【0067】
また、フード30は、加熱炉12から搬出された被搬送物Kの温度を保持する機能を有している。このため、被搬送物Kを比較的高温状態のままでそれに収容された加熱処理材料を取り出し、その高温状態の被搬送物Kに新たな加熱処理材料を充填して加熱炉12の入口に搬入することができるので、比熱及び熱容量の大きい被搬送物Kが低温に冷却されることがなく。熱効率が高められる。置換室32の入口シャッタ32eは、フード30の搬送方向A1の下流側のシャッタに対応している。
【0068】
本実施例の加熱炉12の被加熱物搬送装置8によれば、加熱炉12の出口から高熱状態のままで被加熱物Kを送り出す、加熱炉12の被加熱物搬送装置8であって、搬送方向A1へ所定の中心間隔で並列して搬送路Hを形成する複数本の搬送ローラ(第1搬送ローラ44、第2搬送ローラ52、第3搬送ローラ58、切離搬送ローラ70等)を用いて加熱炉12の出口から送り出される被搬送物(被加熱物)Kを搬送するローラ式搬送装置10と、加熱炉12の炉体14に続いて気密に設けられてローラ式搬送装置10上の被搬送物Kを覆うフード30と、複数本の搬送ローラのフード30の側壁30a、30bからそれぞれ突き出す軸端部(軸端部40a、軸端部48a、軸端部54b等)を相互に同期させて回転駆動する回転駆動装置(第1回転駆動装置60、第2回転駆動装置62、第3回転駆動装置64、切離回転駆動装置72等)と、を含む。このことから、ローラ式搬送装置10上の被搬送物Kがフード30により覆われているので、被搬送物Kの温度低下が抑制されつつローラ式搬送装置10の搬送距離の制限が緩和されるので、ローラ式搬送装置10等の設計の自由度が高めることができる。また、複数本の搬送ローラのフード30の側壁30a、30bからそれぞれ突き出す軸端部が、搬送路Hよりも離れた位置で回転駆動装置により相互に同期させられて回転駆動されるので、金属性の微粉による被搬送物K及び被搬送物K内の加熱処理材料の金属汚染が好適に抑制される。
【0069】
本実施例の加熱炉12の被加熱物搬送装置8によれば、ローラ式搬送装置10は、被搬送物Kを加熱炉12内の速度よりも高速で搬送することにより被搬送物Kを相互に切り離す切離コンベア(ローラ式切離コンベア)22を、含むので、加熱炉12内では、搬送方向A1において被搬送物K間を詰めることができ、加熱炉12の全長を一層短縮することができる。切離コンベア22に設けられた複数本の切離搬送ローラ70のフード30の側壁30a、30bからそれぞれ突き出す軸端部を、相互に同期させて回転駆動する切離回転駆動装置72を含む。これにより、複数本の切離搬送ローラ70のフード30の側壁30a、30bからそれぞれ突き出す軸端部が、切離コンベア22においても、搬送路Hよりも離れた位置で切離回転駆動装置72により相互に同期させられて回転駆動されるので、金属性の微粉による被搬送物K及び被搬送物K内の加熱処理材料の金属汚染が好適に抑制される。
【0070】
本実施例の加熱炉12の被加熱物搬送装置8によれば、フード30は、搬送方向A1の下流側にシャッタ(入口シャッタ32e)を備え、切離コンベア22上の被搬送物Kをも覆うものである。これにより、切離コンベア22においても、被搬送物Kがフード30により覆われるので、被搬送物Kの温度低下が一層抑制される。
【0071】
本実施例の加熱炉12の被加熱物搬送装置8によれば、切離コンベア22により搬送された被搬送物Kをストッパ24に突き当てて被搬送物Kの搬送方向位置を揃える被搬送物整列装置28が設けられている。これにより、搬送されてきた被搬送物Kが、置換室32への収容に先立って搬送方向A1に直交する方向に整列させられる。
【0072】
本実施例の加熱炉12の被加熱物搬送装置8によれば、被搬送物整列装置28は、ストッパ24に突き当てられた横一列の被搬送物Kを搬送方向A1と直交する方向に移動可能に支持した状態で搬送方向A1と直交する方向に挟持して被搬送物Kを相互に密着させる幅寄せ装置26を、含む。これにより、横一列で切り離された被搬送物Kが搬送方向A1とは直交する方向に相互に密着させられる。フード30に続いて置換室32が設けられる場合には、置換室32を小さく設定でき、ガスの消費を少なくできる。
【0073】
本実施例の加熱炉12の被加熱物搬送装置8によれば、ローラ式搬送装置10は、少なくとも3列の被搬送物Kを搬送する3列コンベア20を含み、3列コンベア20は、搬送路Hの幅方向に貫通した状態で回転駆動される複数本の第1回転軸40と、第1回転軸40のうちの長手方向の中央部に複数個設けられて複数列の被搬送物Kのうちの中央列を構成する被搬送物Kを支持する第1支持輪42とを有する第1搬送ローラ44と、搬送路Hの前記中央部の両側の端部のうちの一方の端部において、複数本の第1回転軸40の間に配置された複数本の第2回転軸48と、第2回転軸48に複数個設けられて前記中央列の両側に並ぶ端列のうちの一方の端列を構成する被搬送物Kを支持する第2支持輪50とを有する第2搬送ローラ52と、搬送路Hの前記中央部の両側の端部のうちの他方の端部において、複数本の第1回転軸40の間に且つ前記第2回転軸48と同心に配置された複数本の第3回転軸54と、第3回転軸54に複数個設けられて前記中央列の両側に並ぶ端列のうちの他方の端列を構成する被搬送物Kを支持する第3支持輪56とを有する第3搬送ローラ58と、複数本の第1回転軸40のフード30の側壁30aからそれぞれ突き出す軸端部40aを相互に同期させて回転駆動する第1回転駆動装置60と、複数本の第2回転軸48のフード30の側壁30aからそれぞれ突き出す軸端部48aを相互に同期させて回転駆動する第2回転駆動装置62と、複数本の第3回転軸54のフード30の側壁30bからそれぞれ突き出す軸端部54bを相互に同期させて回転駆動する第3回転駆動装置64と、搬送路H上を複列状態で搬送される被搬送物Kのうち搬送方向A1に直交する方向に隣接する被搬送物Kの搬送方向A1における位置差が小さくなるように第1回転駆動装置60、第2回転駆動装置62及び第3回転駆動装置64を制御する制御装置68と、を含む。
【0074】
これにより、第1回転軸40、第2回転軸48及び第3回転軸54の搬送路Hすなわちフード30から突き出した軸端部においてすなわちフード30の外において駆動されるので、搬送路Hよりも離れた位置で第1回転軸40、第2回転軸48及び第3回転軸54が第1回転駆動装置60、第2回転駆動装置62及び第3回転駆動装置64によりそれぞれ回転駆動され、金属性の微粉による被搬送物Kと共に搬送される加熱処理材料の汚染が好適に抑制される。また、搬送方向A1の上流側例えば加熱炉12内における炉体内搬送ローラ16の撓みに起因して搬送方向A1に直交する方向に被搬送物Kが蛇行しても、制御装置68により、第1搬送ローラ44上で搬送される被搬送物Kと第2搬送ローラ52上で搬送される被搬送物Kと第3搬送ローラ58上で搬送されるに被搬送物Kとの搬送方向A1の位置差が縮小されるので、搬送方向A1に直交する方向に隣接する被搬送物Kが横方向において整列させられる。
【0075】
本実施例の加熱炉12の被加熱物搬送装置8によれば、第1搬送ローラ44の第1回転軸40には、第1回転軸40の径よりも大径であって被搬送物Kを支持する複数個の第1支持輪42が、所定の間隔で設けられ、第2搬送ローラ52の第2回転軸48には、第2回転軸48の径よりも大径であって被搬送物Kを支持する複数個の第2支持輪50が、所定の間隔で設けられ、第3搬送ローラ58の第3回転軸54には、第3回転軸54の径よりも大径であって被搬送物Kを支持する複数個の第3支持輪56が、所定の間隔で設けられ、第1支持輪42は、第2支持輪50及び第3支持輪56よりも大径とされている。これにより、第1搬送ローラ44により搬送される被搬送物Kに対して、第2搬送ローラ52及び第3搬送ローラ58により搬送される被搬送物Kが離れる傾向とされ、第1搬送ローラ44により搬送される被搬送物Kと第2搬送ローラ52及び第3搬送ローラ58により搬送される被搬送物Kとの干渉が回避される。
【0076】
本実施例の加熱炉12の被加熱物搬送装置8によれば、被搬送物Kは、加熱処理材料を収容するセラミック材料製の箱型の匣鉢であり、第1支持輪42、第2支持輪50及び第3支持輪56は、共にセラミック材料製である。これにより、金属微粉の発生が好適に抑制される。
【0077】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0078】
例えば、前述の実施例において、被搬送物Kは、炉体14内及びローラ式搬送装置10において6列で搬送されていたが、単列であってもよい。
【0079】
また、被搬送物Kは匣鉢とは異なるものたとえは焼結合金成形体などであってもよい。
【0080】
また、前述の実施例において、加熱炉12は大気雰囲気で焼成するものであってもよい。この場合には、切離コンベア22、払出コンベア23、フード30、置換室32、被搬送物整列装置28の一部や、全部が除去されてもよい。
【0081】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。