(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978647
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】半製品上での射出成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20211125BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20211125BHJP
B29C 45/40 20060101ALI20211125BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20211125BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20211125BHJP
B29C 33/30 20060101ALI20211125BHJP
B29K 101/00 20060101ALN20211125BHJP
B29K 619/00 20060101ALN20211125BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
B29C45/40
B29C45/17
B29C33/12
B29C33/30
B29K101:00
B29K619:00
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-80175(P2020-80175)
(22)【出願日】2020年4月30日
(65)【公開番号】特開2021-126894(P2021-126894A)
(43)【公開日】2021年9月2日
【審査請求日】2020年4月30日
(31)【優先権主張番号】109104189
(32)【優先日】2020年2月11日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】508167760
【氏名又は名称】華龍國際科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 國基
(72)【発明者】
【氏名】李 進興
(72)【発明者】
【氏名】程 磊
【審査官】
酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−156865(JP,A)
【文献】
特開平05−015120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半製品上での射出成形方法であって、半製品配置工程と、半製品プリプレス工程と、成型工程とをこの順で行い、
前記半製品配置工程では、まず、金型を用意し、該金型は、第1モールドベースと第2モールドベースを含み、かつ該第1モールドベースと該第2モールドベースの間に成型空間が形成され、前記第1モールドベース内に、支持部が形成されると共に、前記半製品が前記支持部の外側に被せて設置され、
前記半製品プリプレス工程では、プレス治具を用意し、該プレス治具を前記第1モールドベースと第2モールドベースの間に配置して、前記第1モールドベースと第2モールドベースに対して第1回型締めを行って、該第1モールドベースと該第2モールドベースの間に緊締力を生じさせ、該緊締力により前記プレス治具を利用して前記半製品を前記第1モールドベース内に圧入し、前記半製品と前記第1モールドベース内の前記支持部とを緊密に結合し、
前記成型工程では、第1回型開きを行い、前記第1モールドベースと第2モールドベースを分離して前記プレス治具を取り出し、続いて前記第1モールドベースと第2モールドベースに対して第2回型締めを行い、前記成型空間内に成型材料を注入し、該成型材料により前記成型空間内で前記半製品を被覆し、前記成型材料が前記成型空間内で冷却されて成型され、完成品が形成された後、第2回型開きを行い、該完成品を取り出す、
ことを特徴とする、半製品上での射出成形方法。
【請求項2】
前記金型がさらに前記第1モールドベースと前記第2モールドベースの間に設置された中板を含み、前記第1回型締めを行うとき、前記プレス治具が前記第1モールドベースと前記中板の間に配置される、ことを特徴とする、請求項1に記載の半製品上での射出成形方法。
【請求項3】
前記支持部が上面と、該上面の周縁に設けられて前記第1モールドベースの底部に連結された側壁を備え、該側壁に少なくとも1つの嵌合凸部が凸設され、該嵌合凸部と前記半製品が相互に嵌合される、ことを特徴とする、請求項1に記載の半製品上での射出成形方法。
【請求項4】
前記半製品内に被嵌空間が設けられ、該半製品が該被嵌空間を介して前記支持部上に設置され、かつ該被嵌空間の壁部が前記支持部の上面及び側壁と密接されて、前記半製品と前記支持部とが緊密に結合される、ことを特徴とする、請求項3に記載の半製品上での射出成形方法。
【請求項5】
前記被嵌空間内において、前記嵌合凸部と対応する位置に、該嵌合凸部と相互に嵌合される嵌合凹溝が形成される、ことを特徴とする、請求項4に記載の半製品上での射出成形方法。
【請求項6】
前記第2モールドベース内に圧接部が設置され、前記第2回型締めを行うとき、該圧接部が前記半製品の外側表面に押し当てられる、ことを特徴とする、請求項1に記載の半製品上での射出成形方法。
【請求項7】
前記第1モールドベースの支持部内に少なくとも1つの押圧機構が設置され、該押圧機構により前記完成品を前記第1モールドベース内から押し出し可能である、ことを特徴とする、請求項1に記載の半製品上での射出成形方法。
【請求項8】
前記第2モールドベース内に前記成型材料を流動させる少なくとも1つの流路が設置され、かつ該流路と前記成型空間が相互に連通され、該流路を通じて前記成型材料を前記成型空間内に進入させる、ことを特徴とする、請求項1に記載の半製品上での射出成形方法。
【請求項9】
前記半製品がプラスチック材料で製造され、前記成型材料がシリコン材料である、ことを特徴とする、請求項8に記載の半製品上での射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュやバリの発生を防止し、完成品の歩留まりを向上できる、半製品上での射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形は、一対の金型内に成型空間が形成され、成型材料を該成型空間内に注入し、冷却を経た後完成品が形成されるものである。
現在、射出成形に用いられる成型材料にはプラスチック、金属−プラスチック複合粉末及びシリコン等がある。
【0003】
上述の該成型材料を加熱して液状にした後、液状の成型材料を金型内に高圧注入し、冷却を経ると成形材料が固体になり、製品が形成される。
該成型材料が液状のとき、その流動性は、通常、シリコン>プラスチック>金属−プラスチック複合粉末となる。
【0004】
特にシリコンは、その流動性が非常に高く、シリコンを成型材料とするとき、往々にして金型の型締力が不足し、完成品の成型後、金型のパーティング箇所にフラッシュやバリの現象が発生しやすい。このため、完成品は射出成形後に大量の人力または物力を用いてこれらフラッシュやバリを除去する必要があるが、これでは射出成形の歩留まりが低下し、同時に相当の人件費がかかるため、生産コストの大幅な増加につながる。
例えば、特許文献1及び特許文献2等には、シリコン材料を射出成型方式で一体成型した耳栓を開示しているが、射出の過程でフラッシュやバリ等の現象が発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開第2018255387号明細書
【特許文献2】台湾特許公告第I599234号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、射出成形過程におけるフラッシュまたはバリの発生を防止し、完成品の歩留まりを向上できる、半製品上での射出成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の半製品上での射出成形方法は、半製品配置工程と、半製品プリプレス工程と、成型工程とをこの順で行い、前記半製品配置工程では、まず、金型を用意し、該金型は、第1モールドベースと第2モールドベースを含み、かつ該第1モールドベースと該第2モールドベースの間に成型空間が形成され、前記第1モールドベース内に
、支持部が形成されると共に、前記半製品が前記支持部の外側に被せて設置され、前記半製品プリプレス工程では、プレス治具を用意し、該プレス治具を前記第1モールドベースと第2モールドベースの間に配置して、前記第1モールドベースと第2モールドベースに対して第1回型締めを行って、該第1モールドベースと該第2モールドベースの間に緊締力を生じさせ、該緊締力により前記プレス治具を利用して前記半製品を前記第1モールドベース内に圧入し、前記半製品と前記第1モールドベース
内の前記支持部とを緊密に結合し、前記成型工程では、第1回型開きを行い、前記第1モールドベースと第2モールドベースを分離して前記プレス治具を取り出し、続いて前記第1モールドベースと第2モールドベースに対して第2回型締めを行い、前記成型空間内に成型材料を注入し、該成型材料により前記成型空間内で前記半製品を被覆し、前記成型材料が前記成型空間内で冷却されて成型され、完成品が形成された後、第2回型開きを行い、該完成品を取り出すことを特徴とする、半製品上での射出成形方法である。
【0008】
一実施形態において、前記金型がさらに前記第1モールドベースと前記第2モールドベースの間に設置された中板を含み、前記第1回型締めを行うとき、前記プレス治具が前記第1モールドベースと前記中板の間に配置される。
【0010】
一実施形態において、前記支持部が上面と、該上面の周縁に設けられて前記第1モールドベースの底部に連結された側壁を備え、該側壁に少なくとも1つの嵌合凸部が凸設され、該嵌合凸部と前記半製品が相互に嵌合される。
【0011】
一実施形態において、前記半製品内に被嵌空間が設けられ、該半製品が該被嵌空間を介して前記支持部上に設置され、かつ該被嵌空間の壁部が前記支持部の上面及び側壁と密接されて、前記半製品と前記支持部とが緊密に結合される。
【0012】
一実施形態において、前記被嵌空間内において、前記嵌合凸部と対応する位置に、該嵌合凸部と相互に嵌合される嵌合凹溝が形成される。
【0013】
一実施形態において、前記第2モールドベース内に圧接部が設置され、前記第2回型締めを行うとき、該圧接部が前記半製品の外側表面に押し当てられる。
【0014】
一実施形態において、前記第1モールドベースの支持部内に少なくとも1つの押圧機構が設置され、該押圧機構により前記完成品を前記第1モールドベース内から押し出し可能である。
【0015】
一実施形態において、前記第2モールドベース内に前記成型材料を流動させる少なくとも1つの流路が設置され、かつ該流路と前記成型空間が相互に連通され、該流路を通じて前記成型材料を前記成型空間内に進入させる。
【0016】
一実施形態において、前記半製品がプラスチック材料で製造され、前記成型材料がシリコン材料である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半製品と第1モールドベースとを緊密に結合することにより、成型材料が半製品と第1モールドベースの間に流入することを確実に防止できるので、シリコンのように非常に流動性が高い成型材料を用いても、第1モールドベース側に成型材料が流れて完成品にフラッシュやバリが発生する現象を効果的に回避でき、射出成形の歩留まりを高め、同時に多大な労力でフラッシュやバリを除去する必要がある等の問題を回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】半製品上での射出成形方法のフローチャートである。
【
図2】第1の実施形態に係る半製品の金型内への配置を示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るプレス治具の金型内への配置を示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る金型部分の第1回型締め時の断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る金型部分の第1回型開き後の断面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る金型部分の第2回型締め時の断面図である。
【
図8】第2の実施形態に係る金型の分解断面図である。
【
図9】第2の実施形態に係る金型部分の中板を配置した型締め時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図7は、本発明の第1の実施形態を示す。
図1に示すように、本発明の半製品上での射出成形方法は、半製品配置工程S1と、半製品プリプレス工程S2と、成型工程S3とをこの順で行う。
【0020】
半製品配置工程S1では、まず、射出成形機(従来技術であるためここでは説明を省略する)上に取り付けられる金型10を用意する(
図2)。金型10は、第1モールドベース11と第2モールドベース12を含む。
第1モールドベース11は、内部に支持部111と押圧機構112を備え、支持部111に半製品20が設置される。支持部111は、上面113と、上面113の周縁に設けられ、第1モールドベース11の底部と連結された側壁114を備え、側壁114に少なくとも1つの嵌合凸部115が凸設される。押圧機構112は、支持部111内に設置される。
第2モールドベース12は内部に圧接部121を備える。
図6に示すように、第1モールドベース11と第2モールドベース12が相互に閉じ合わされた時、金型10の内部に成型空間13が形成され、第2モールドベース12に成型材料30(
図7)の流通に供する流路122が設けられる。
【0021】
本実施形態において、半製品20はプラスチック材料で製造され、成型材料30がシリコンである。
半製品配置工程S1で、半製品20はロボットアーム(従来技術であるためここでは説明を省略する)で第1モールドベース11の支持部111上に配置される。
説明すべきは、半製品20に支持部111を嵌合するための被嵌空間21が設けられ、半製品20を支持部111上に被せて設置することができ、また、被嵌空間21内の嵌合凸部115と対応する位置に、嵌合凸部115と相互に嵌合される嵌合凹溝22が形成され、かつ半製品20の外部に外側表面23が形成される点である。
半製品20がロボットアームにより支持部111上に設置されると、支持部111の嵌合凸部115が側壁114の外側に凸設されているため、半製品20は支持部111の外部に完全に被せて設置することができず、嵌合凸部115の規制を受けて支持部111の前縁部のみに被せて設置される。
【0022】
半製品プリプレス工程S2では、プレス治具40(
図3)を用意し、プレス治具40を第1モールドベース11と第2モールドベース12の間に配置する。プレス治具40は、内部に半製品20の形状と同じ圧接空間41を備えている。
プレス治具40を第1モールドベース11と第2モールドベース12の内部に配置した後、第1モールドベース11と第2モールドベース12に対して第1回型締めを行い、第1モールドベース11と第2モールドベース12が生じる緊締力により、圧接空間41に半製品20を嵌め込み、プレス治具40を半製品20の外部に押し当て、さらにプレス治具40で半製品20を第1モールドベース11の底部に向かって移動させ、嵌合凹溝22と嵌合凸部115を相互に嵌合させて、半製品20を支持部111上に密着させることができ、かつ半製品20と支持部111とを緊密に結合する。
【0023】
成型工程S3では、まず第1回型開きを行い、
図5に示すように、第1モールドベース11と第2モールドベース12を相互に分離してプレス治具40を取り出す。
続いて、
図6に示すように、第1モールドベース11と該第2モールドベース12に対して第2回型締めを行い、さらに、流路122を通じて成型材料30を成型空間13内に注入し、成型材料30で半製品20の外部を被覆する。説明すべきは、本実施例において、第2回型締めを行うとき、第2モールドベース12の圧接部121が半製品20の外側表面23を押圧し、半製品20が圧接部121と支持部111の間に挟持され、かつ半製品20と支持部111が緊合状態にあるため、成型材料30が成型空間13内に注入された後、該成型材料30が半製品20と支持部111の間に流入することを効果的に防止できる点である。
【0024】
成型材料30が成型空間13で冷却されて成型されると、成型空間13内で成型材料30により半製品20を被覆して形成された完成品50が形成される(
図7)。
その後、第2回型開きを行い、第1モールドベース11と第2モールドベース12を相互に分離する。ここで説明すべきは、第1モールドベース11と第2モールドベース12を分離した後、流路122内に残留する成型材料30と成型空間13内の完成品50は先に切断することができる(これらの技術は一般的な射出成形技術の従来技術であるため、ここでは説明を省略する)点であり、これにより完成品50は第1モールドベース11上に留まる。
続いて、押圧機構112を利用し、半製品20を支持部111から押し出して、嵌合凹溝22を嵌合凸部115から離脱させると、第1モールドベース11中から完成品50を取り出すことができる。
【0025】
このように、半製品20と支持部111を緊合させることにより、半製品20の被嵌空間21の側壁内面と支持部111の上面113及び側壁114を相互に密接させ、かつ半製品20が支持部111と圧接部121により挟持されることで、成型材料30が半製品20と支持部111の間に流入することを確実に防止できる。
本実施形態において、成型材料30はシリコンであり、シリコンは非常に流動性が高いが、この方法は完成品50にフラッシュやバリが発生する現象を効果的に回避でき、射出成形の歩留まりを高め、同時に多大な労力でフラッシュやバリを除去する必要がある等の問題を回避することもできる。
【0026】
図8及び
図9は、第2の実施形態を示す。第1の実施形態と同様な点については説明を省略する。
本実施形態では、
図8に示すように、金型10はさらに中板14を含む。中板14は第1モールドベース11と第2モールドベース12の間に設置される。
プレス治具40を金型10内部に配置する場合、
図9に示すように、先に中板14と第1モールドベース11を圧接することで、第1モールドベース11と第2モールドベース12を閉じ合わせるときにプレス治具40のずれを防止し、半製品20に対して事前の位置決めをすることができ、第1モールドベース11と第2モールドベース12に第1回型締めを行う前に、半製品20と支持部111間の相対的位置を効果的に確保し、続いて第1回型締めを行うことで、射出成形後の歩留まりを高めることができる。
そして、第1回型締めを行うとき、プレス治具40が第1モールドベース11と中板14の間に配置される。
【0027】
以上は、本発明の実施態様の説明にすぎず、これを以って本発明の権利範囲を限定することはできない。本発明の要旨を逸脱しない修飾や変化はいずれも本発明の権利範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
S1 半製品配置工程
S2 半製品プリプレス工程
S3 成型工程
10 金型
11 第1モールドベース
111 支持部
112 押圧機構
113 上面
114 側壁
115 嵌合凸部
12 第2モールドベース
121 圧接部
122 流路
13 成型空間
14 中板
20 半製品
21 被嵌空間
22 嵌合凹溝
23 外側表面
30 成型材料
40 プレス治具
41 圧接空間
50 完成品