(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978691
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】半導体集積回路装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/82 20060101AFI20211125BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20211125BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
H01L21/82 W
H01L27/04 D
H01L21/82 B
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-546216(P2018-546216)
(86)(22)【出願日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2017035209
(87)【国際公開番号】WO2018074172
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2020年8月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-203262(P2016-203262)
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 淳司
【審査官】
市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−222151(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0286768(US,A1)
【文献】
特開2012−227395(JP,A)
【文献】
特開2009−76709(JP,A)
【文献】
特開2004−289030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/82
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回路機能を実現するスタンダードセルを備え、
前記スタンダードセルは、
第1方向にそれぞれ延びており、前記第1方向と垂直をなす第2方向において、第1電源電位を供給する第1電源配線と第2電源電位を供給する第2電源配線とが交互に配置された、N(Nは3以上の整数)本の電源配線と、
1つまたは複数種類の共通信号を受けてそれぞれ動作する、複数のフリップフロップ回路とを備え、
前記複数のフリップフロップ回路は、それぞれ、前記第1電源配線と前記第2電源配線とに挟まれた領域であるM(M=N−1)個のハイト領域のいずれか1つまたは複数に、配置されており、
前記M個のハイト領域のうち少なくとも2つである第1ハイト領域は、それぞれ、前記フリップフロップ回路が複数個、少なくとも一部が配置されており、かつ、前記共通信号のうちの1つである第1共通信号の供給経路を構成するメタル配線が、少なくとも2個の前記フリップフロップ回路に接続されるように配置されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記スタンダードセルは、前記第1共通信号を生成する共通信号生成回路を備えている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記第1共通信号の供給経路は、前記M個のハイト領域のうちの隣り合う2個以上のハイト領域にわたって、前記第2方向に延びるように形成されたゲート配線を含む
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記M個のハイト領域は、前記第1共通信号の供給経路を構成するメタル配線が設けられていないハイト領域を含む
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記第1ハイト領域に配置されており、前記第1共通信号の供給経路を構成するメタル配線は、前記第1方向に延びるように形成されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記第1共通信号は、クロック信号である
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体集積回路装置において、
前記共通信号は、前記クロック信号の反転信号である反転クロック信号を含み、
前記M個のハイト領域のうち少なくとも1つである第2ハイト領域は、前記フリップフロップ回路が複数個、少なくとも一部が配置されており、かつ、前記反転クロック信号の供給経路を構成する第2メタル配線が、少なくとも2個の前記フリップフロップ回路に接続されるように配置されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体集積回路装置において、
前記第2ハイト領域は、前記第1ハイト領域と異なるハイト領域である
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項9】
請求項8記載の半導体集積回路装置において、
前記M個のハイト領域は、前記第1ハイト領域と前記第2ハイト領域とが、前記第2方向において交互に配置されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項10】
所定の回路機能を実現するスタンダードセルを備え、
前記スタンダードセルは、
第1方向にそれぞれ延びており、前記第1方向と垂直をなす第2方向において、第1電源電位を供給する第1電源配線と第2電源電位を供給する第2電源配線とが交互に配置された、N(Nは3以上の整数)本の電源配線と、
互いに同一の機能を持ち、かつ、1つまたは複数種類の共通信号を受けてそれぞれ動作する、複数の部分回路とを備え、
前記複数の部分回路は、それぞれ、前記第1電源配線と前記第2電源配線とに挟まれた領域であるM(M=N−1)個のハイト領域のいずれか1つまたは複数に、配置されており、
前記M個のハイト領域のうち少なくとも2つである第1ハイト領域は、それぞれ、前記部分回路が複数個、少なくとも一部が配置されており、かつ、前記共通信号のうちの1つである第1共通信号の供給経路を構成するメタル配線が、少なくとも2個の前記部分回路に接続されるように配置されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項11】
請求項10記載の半導体集積回路装置において、
前記スタンダードセルは、前記第1共通信号を生成する共通信号生成回路を備えている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項12】
請求項10記載の半導体集積回路装置において、
前記スタンダードセルは、前記第1共通信号を、前記スタンダードセルの外部から受ける
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項13】
請求項10記載の半導体集積回路装置において、
前記第1共通信号の供給経路は、前記M個のハイト領域のうちの隣り合う2個以上のハイト領域にわたって、前記第2方向に延びるように形成されたゲート配線を含む
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項14】
請求項10記載の半導体集積回路装置において、
前記M個のハイト領域は、前記第1共通信号の供給経路を構成するメタル配線が設けられていないハイト領域を含む
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項15】
請求項10記載の半導体集積回路装置において、
前記共通信号は、前記第1共通信号と相補関係にある第2共通信号を含み、
前記M個のハイト領域のうち少なくとも1つである第2ハイト領域は、前記部分回路が複数個、少なくとも一部が配置されており、かつ、前記第2共通信号の供給経路を構成するメタル配線が、少なくとも2個の前記部分回路に接続されるように配置されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項16】
請求項15記載の半導体集積回路装置において、
前記第2ハイト領域は、前記第1ハイト領域と異なるハイト領域である
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項17】
請求項16記載の半導体集積回路装置において、
前記M個のハイト領域は、前記第1ハイト領域と前記第2ハイト領域とが、前記第2方向において交互に配置されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項18】
請求項10記載の半導体集積回路装置において、
前記第1ハイト領域に配置されており、前記第1共通信号の供給経路を構成するメタル配線は、前記第1方向に延びるように形成されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項19】
請求項10〜18のうちいずれか1項記載の半導体集積回路装置において、
前記複数の部分回路は、セレクタまたはラッチである
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチハイトセルを備えた半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に半導体集積回路を形成する方法として、スタンダードセル方式が知られている。スタンダードセル方式とは、特定の論理機能を有する基本的単位(例えば、インバータ,ラッチ,フリップフロップ,全加算器など)をスタンダードセルとして予め用意しておき、半導体基板上に複数のスタンダードセルを配置して、それらのスタンダードセルを配線で接続することによって、LSIチップを設計する方式のことである。
【0003】
また近年、半導体集積回路の高速化や小面積化のために、スタンダードセルにマルチハイト構造を適用することが行われている。マルチハイト構造が適用されたスタンダードセルすなわちマルチハイトセルは、シングルハイトセルをセル高さ方向に複数個連結させた構造をしており、そのセル高さはシングルハイトセルのセル高さのn倍(nは2以上の整数)である。
【0004】
特許文献1では、マルチハイトセルの一例として、セル高さがシングルハイトセルのセル高さの2倍であるダブルハイトセルのレイアウト構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−222151号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スタンダードセルの回路機能の1つとして、マルチビットセレクタのように、互いに同一の機能を持つ複数の部分回路(ここではセレクタ)を有するものがある。このような回路機能では、各部分回路はセレクト信号などの共通信号を受けてそれぞれ動作する。このようなスタンダードセルをマルチハイトセルで実現する場合には、各部分回路に与える共通信号の供給経路が長くなり、その抵抗値が高くなってしまう可能性がある。共通信号の供給経路の抵抗値が高いと、信号遅延が大きくなるため回路の高速動作が困難になるとともに、信号線における電圧降下が大きくなるため回路の動作が不安定になってしまう。
【0007】
本開示は、半導体集積回路装置において、複数の部分回路を有するマルチハイトセルについて、回路動作の高速化および安定化を実現できる構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様では、半導体集積回路装置は、所定の回路機能を実現するスタンダードセルを備え、前記スタンダードセルは、第1方向にそれぞれ延びており、前記第1方向と垂直をなす第2方向において、第1電源電位を供給する第1電源配線と第2電源電位を供給する第2電源配線とが交互に配置された、N(Nは3以上の整数)本の電源配線と、互いに同一の機能を持ち、かつ、1つまたは複数種類の共通信号を受けてそれぞれ動作する、複数の部分回路とを備え、前記複数の部分回路は、それぞれ、前記第1電源配線と前記第2電源配線とに挟まれた領域であるM(M=N−1)個のハイト領域のいずれかに、配置されており、前記M個のハイト領域のうち少なくとも2つである第1ハイト領域は、それぞれ、前記部分回路が複数個、配置されており、かつ、前記共通信号のうちの1つである第1共通信号の供給経路を構成するメタル配線が、少なくとも2個の前記部分回路に接続されるように配置されている。
【0009】
この態様によると、所定の回路機能を実現するスタンダードセルは、第1電源電位を供給する第1電源配線と第2電源電位を供給する第2電源配線とに挟まれた領域であるハイト領域を、2個以上備えており、いわゆるマルチハイトセルである。このスタンダードセルにおいて、互いに同一の機能を持ち、かつ、1つまたは複数種類の共通信号を受けてそれぞれ動作する複数の部分回路は、それぞれ、ハイト領域のいずれかに配置されている。そして、部分回路が複数個配置された少なくとも2つの第1ハイト領域には、それぞれ、第1共通信号の供給経路を構成するメタル配線が、少なくとも2個の部分回路に接続されるように配置されている。これにより、第1共通信号の供給経路における抵抗値を下げることができるので、信号遅延の抑制による回路動作の高速化や、信号線における電圧降下の低減による回路動作の安定化を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によると、複数の部分回路を有するマルチハイトセルにおいて、部分回路に与える共通信号の供給経路における抵抗値を下げることができるので、回路動作の高速化や安定化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る半導体集積回路装置が備えたスタンダードセルのレイアウト構成例を示す平面図
【
図3】
図1のスタンダードセルに含まれる部分回路のトランジスタレベルの回路図
【
図4】
図3の部分回路のレイアウト構成を示す平面図
【
図5】
図1のレイアウトにおいて共通信号の供給経路を強調表示した図
【
図6】
図1のレイアウトにおいて共通信号の供給経路を強調表示した図
【
図7】第2実施形態に係る半導体集積回路装置が備えたスタンダードセルの回路図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の実施の形態では、半導体集積回路装置は複数のスタンダードセルを備えており、この複数のスタンダードセルのうち少なくとも一部は、マルチハイトセルであるものとする。また、本開示では、マルチハイトセルにおいて、VDDを供給する電源配線とVSSを供給する電源配線とに挟まれた領域のことを、ハイト領域という。例えば、ダブルハイトセルは、3本の電源配線同士の間に挟まれた、2個のハイト領域を有している。
【0013】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る半導体集積回路装置が備えたスタンダードセル1のレイアウト構成例を示す平面図である。
図1では、図面横方向をX方向(第1方向に相当)とし、図面縦方向をY方向(第2方向に相当)としている。以降のレイアウト平面図についても同様である。また、
図2は
図1のスタンダードセル1の回路図である。
【0014】
図1に示すように、スタンダードセル1は、X方向にそれぞれ延びる5本の電源配線11〜15を備えている。VDD(第1電源電位)を供給する第1電源配線12,14とVSS(第2電源電位)を供給する第2電源配線11,13,15とは、Y方向において交互に配置されている。電源配線11〜15同士の間に4個のハイト領域AR1〜AR4が形成されている。すなわち、スタンダードセル1は、シングルハイトセルの4倍のセル高さを有する、いわゆるクワッドハイト(quad height)セルである。ハイト領域AR1〜AR4にはそれぞれ、フィンFET(Field Effect Transistor)が形成されており、これらのフィンFETによって所定の回路機能が実現されている。フィンFETは、ゲート配線(Gate)2とフィン(Fin)3とによって構成される。また、LIはゲート配線2およびフィン3と直接接続されるローカル配線、M1はローカル配線の上層のメタル配線層、M2はM1の上層のメタル配線層、VIA0はローカル配線とM1配線とを接続するビア、VIA1はM1配線とM2配線とを接続するビアである。電源配線11〜15はメタル配線層M1に形成されている。なお、ゲート配線およびローカル配線の抵抗値は、M1配線、M2配線等のメタル配線の抵抗値よりも大きい。
【0015】
図2に示すように、スタンダードセル1は8ビットセレクタであり、8個のセレクタSL0〜SL7を部分回路として備えている。各セレクタSL*(*は0〜7の整数)は、2個の入力D*0,D*1と1個の出力X*とを備えており、セレクト信号Sおよび、セレクト信号Sと相補関係にある反転セレクト信号NSを共通信号として受けて動作する。各セレクタSL*は、セレクト信号Sがハイ(反転セレクト信号NSがロー)のときは入力D*1を出力X*として出力し、セレクト信号Sがロー(反転セレクト信号NSがハイ)のときは入力D*0を出力X*として出力する。セレクト信号Sは、スタンダードセル1の外部から供給される。反転セレクト信号NSは、インバータ51aを備えた共通信号生成回路51によって、セレクト信号Sを基にして生成される。セレクト信号Sおよび反転セレクト信号NSは、それぞれの供給経路を経て、各セレクタSL0〜SL7に供給される。
【0016】
8個のセレクタSL0〜SL7は、ハイト領域AR1〜AR4にそれぞれ2個ずつ、配置されている。すなわち、ハイト領域AR1にセレクタSL0,SL1が配置され、ハイト領域AR2にセレクタSL2,SL3が配置され、ハイト領域AR3にセレクタSL4,SL5が配置され、ハイト領域AR4にセレクタSL6,SL7が配置されている。セレクト信号Sはハイト領域AR2に供給され、また、共通信号生成回路51はハイト領域AR2に配置されている。
【0017】
図3は部分回路であるセレクタのトランジスタレベルの回路図である。
図3では、セレクタSL7を例にとって示しているが、他のセレクタSL0〜SL6の構成も同様である。セレクタSL7は、入力D70を受けるトライステートインバータIN1と、入力D71を受けるトライステートインバータIN2と、トライステートインバータIN1,IN2の出力を受けるインバータIN3とを備える。トライステートインバータIN1は、P型トランジスタP1,P2およびN型トランジスタN1,N2を備え、VDDとVSSとの間にP1,P2,N2,N1の順に直列接続されている。トランジスタP2,N2のゲートに入力D70を受け、トランジスタP2,N2のドレイン同士の接続端がトライステートインバータIN1の出力となる。また、セレクト信号SはトランジスタP1のゲートに与えられ、反転セレクト信号NSはトランジスタN1のゲートに与えられる。トライステートインバータIN2は、P型トランジスタP3,P4およびN型トランジスタN3,N4を備え、VDDとVSSとの間にP3,P4,N4,N3の順に直列接続されている。トランジスタP4,N4のゲートに入力D71を受け、トランジスタP4,N4のドレイン同士の接続端がトライステートインバータIN2の出力となる。また、セレクト信号SはトランジスタN3のゲートに与えられ、反転セレクト信号NSはトランジスタP3のゲートに与えられる。インバータIN3はVDDとVSSとの間に直列接続されたP型トランジスタP5およびN型トランジスタN5を備える。トランジスタP5,N5のゲートにトライステートインバータIN1,IN2の出力を受け、トランジスタP5,N5のドレイン同士の接続端がインバータIN3の出力、すなわち、セレクタSL7の出力X7となる。
【0018】
図4は
図3のセレクタSL7のレイアウト構成を示す平面図である。ただし、
図4において、M2配線とビアVIA1については、図示を省略している。第1電源配線14側のP型トランジスタ領域において、左から順にトランジスタP1,P2,P4,P3,P5が形成されている。第2電源配線15側のN型トランジスタ領域において、左から順にトランジスタN1,N2,N4,N3,N5が形成されている。
【0019】
図4のレイアウトは、
図1のレイアウトにおけるハイト領域AR4の右側部分に相当する。ハイト領域AR4の左側に配置されるセレクタSL6のレイアウトは、
図4のレイアウトを左右反転させたものになる。ハイト領域AR2に配置されるセレクタSL2,SL3のレイアウトは、ハイト領域AR4に配置されるセレクタSL6,SL7のレイアウトとほぼ同様である。また、ハイト領域AR1に配置されるセレクタSL0,SL1のレイアウト、および、ハイト領域AR3に配置されるセレクタSL4,SL5のレイアウトは、ハイト領域AR4に配置されるセレクタSL6,SL7のレイアウトを上下反転させたものとほぼ同様である。
【0020】
図5は
図1のレイアウトにおいて、共通信号であるセレクト信号Sの供給経路を強調表示した図である。
図5では、セレクト信号Sの供給経路について、メタル配線、ローカル配線およびゲート配線の輪郭を太く示し、また、ゲート配線のハッチを黒塗りに替えている。
図5に示すように、セレクト信号Sの供給経路は、ハイト領域AR1に配置されたメタル配線21と、ハイト領域AR3に配置されたメタル配線22とを含む。メタル配線21は、ハイト領域AR1においてX方向に延びており、ハイト領域AR1に設けられたセレクタSL0,SL1に接続されている。メタル配線22は、ハイト領域AR3においてX方向に延びており、ハイト領域AR3に設けられたセレクタSL4,SL5に接続されている。ここでは、メタル配線21,22は、電源配線11〜15と同一の配線層M1に形成されている。また、セレクト信号Sの供給経路は、複数のハイト領域にわたってY方向に延びるゲート配線、例えばハイト領域AR1,AR2,AR3にわたってY方向に延びるゲート配線41を含む。
【0021】
図6は
図1のレイアウトにおいて、共通信号である反転セレクト信号NSの供給経路を強調表示した図である。
図6では、反転セレクト信号
NSの供給経路について、メタル配線、ローカル配線およびゲート配線の輪郭を太く示し、また、ゲート配線のハッチを黒塗りに替えている。
図6に示すように、反転セレクト信号NSの供給経路は、ハイト領域AR2に配置されたメタル配線31と、ハイト領域AR4に配置されたメタル配線32とを含む。メタル配線31は、ハイト領域AR2においてX方向に延びており、ハイト領域AR2に設けられたセレクタSL2,SL3に接続されている。メタル配線32は、ハイト領域AR4においてX方向に延びており、ハイト領域AR4に設けられたセレクタSL6,SL7に接続されている。ここでは、メタル配線31は、電源配線11〜15より上層の配線層M2に形成されており、メタル配線32は、電源配線11〜15と同一の配線層M1に形成されている。
【0022】
以上のように本実施形態によると、マルチハイトセルであるスタンダードセル1において、8個のセレクタSL0〜SL7は、ハイト領域AR1〜AR4に2個ずつ、配置されている。そして、セレクト信号Sの供給経路を構成するメタル配線21が、ハイト領域AR1に、セレクタSL0,SL1を接続するように配置されており、セレクト信号Sの供給経路を構成するメタル配線22が、ハイト領域AR3に、セレクタSL4,SL5を接続するように配置されている。これにより、セレクト信号Sの供給経路における抵抗値を下げることができるので、セレクト信号Sの信号遅延や信号線における電圧降下を抑制することができる。したがって、スタンダードセル1の回路動作の高速化や安定化を実現することができる。
【0023】
また、反転セレクト信号NSの供給経路を構成するメタル配線31が、ハイト領域AR2に、セレクタSL2,SL3を接続するように配置されており、反転セレクト信号NSの供給経路を構成するメタル配線32が、ハイト領域AR4に、セレクタSL6,SL7を接続するように配置されている。これにより、反転セレクト信号NSの供給経路における抵抗値を下げることができるので、反転セレクト信号NSの信号遅延や信号線における電圧降下を抑制することができる。したがって、スタンダードセル1の回路動作の高速化や安定化を実現することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、4個のハイト領域AR1〜AR4を備えたマルチハイトセルにおいて、8個のセレクタSL0〜SL7を、各ハイト領域AR1〜AR4に2個ずつ配置するものとしたが、本開示はこれに限られるものではない。例えば、ハイト領域の個数は4個以外であってもよいし、セレクタの個数は8個以外であってもよい。また、各ハイト領域に同一個数のセレクタを配置しなくてもよい。
【0025】
また、本実施形態では、セレクト信号Sの供給経路について、ハイト領域AR1,AR3にメタル配線21,22を配置し、反転セレクト信号NSの供給経路について、ハイト領域AR2,AR4にメタル配線31,32を配置するものとしたが、本開示はこれに限られるものではない。例えば、セレクト信号Sと反転セレクト信号NSのうちいずれか一方について、その供給経路を構成するメタル配線を2個以上のハイト領域に配置し、他方について、その供給経路にメタル配線を配置しないようにしてもよい。あるいは、セレクト信号Sと反転セレクト信号NSのうちいずれか一方について、その供給経路を構成するメタル配線を2個以上のハイト領域に配置し、他方について、その供給経路を構成するメタル配線を1つまたは2個以上のハイト領域に配置してもよい。
【0026】
また、本実施形態では、セレクト信号Sの供給経路を構成するメタル配線21,22が配置されるハイト領域AR1,AR3と、反転セレクト信号NSの供給経路を構成する
メタル配線31,32が配置されるハイト領域AR2,AR4とは、Y方向において交互に配置されているものとした。これにより、セレクト信号Sと反転セレクト信号NSとについて、供給経路の抵抗値をほぼ同等に合わせることができるので、信号遅延や信号レベルのバランスをとることができる。ただし、本開示はこれに限られるものではない。例えば、セレクト信号Sの供給経路を構成するメタル配線が、Y方向において連続するハイト領域に配置されていてもよいし、同じハイト領域に、セレクト信号Sの供給経路を構成するメタル配線と、反転セレクト信号NSの供給経路を構成するメタル配線とが配置されていてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、セレクト信号Sの供給経路を構成するメタル配線21,22、および、反転セレクト信号NSの供給経路を構成するメタル配線31,32は、X方向に延びるように形成されているものとしたが、本開示はこれに限られるものではない。また、セレクト信号Sの供給経路を構成するメタル配線21,22、および、反転セレクト信号NSの供給経路を構成するメタル配線31,32は、2個のセレクタを接続するように配置されているものとしたが、3個以上のセレクタを接続するように配置してもよい。
【0028】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態に係る半導体集積回路装置が備えたスタンダードセル2の回路図である。
図7に示すように、スタンダードセル2は8ビットFF(フリップフロップ)であり、8個のフリップフロップFF0〜FF7を部分回路として備えている。各フリップフロップFF*(*は0〜7の整数)は、入力D*と出力Q*とを備えており、クロック信号CKおよび反転クロック信号NCKを共通信号として受けて動作する。クロック信号CKおよび、クロック信号CKと相補関係にある反転クロック信号NCKは、インバータ52a,52bを備えた共通信号生成回路52によって、スタンダードセル2の外部から供給される原クロック信号CLKを基にして生成される。クロック信号CKおよび反転クロック信号NCKは、それぞれの供給経路を経て、各フリップフロップFF0〜FF7に供給される。
【0029】
スタンダードセル2のレイアウトについては、ここでは図示を省略するが、第1実施形態のスタンダードセル1と同様に構成することができる。すなわち、スタンダードセル2は、X方向にそれぞれ延びる5本の電源配線を備えている。VDDを供給する第1電源配線とVSSを供給する第2電源配線とは、Y方向において交互に配置されている。5本の電源配線同士の間に4個のハイト領域AR1〜AR4が形成されている。すなわち、スタンダードセル2は、シングルハイトセルの4倍のセル高さを有する、いわゆるクワッドハイト(quad height)セルである。ハイト領域AR1〜AR4にはそれぞれ、フィンFETが形成されており、これらのフィンFETによって所定の回路機能が実現されている。
【0030】
8個のフリップフロップFF0〜FF7は、ハイト領域AR1〜AR4にそれぞれ2個ずつ、配置されている。すなわち、ハイト領域AR1にフリップフロップFF0,FF7が配置され、ハイト領域AR2にフリップフロップFF1,FF6が配置され、ハイト領域AR3にフリップフロップFF2,FF5が配置され、ハイト領域AR4にフリップフロップFF3,FF4が配置されている。原クロック信号CLKはハイト領域AR2に供給され、また、共通信号生成回路52はハイト領域AR2,AR3に配置されている。
【0031】
そして、クロック信号CKの供給経路は、ハイト領域AR1に配置されたメタル配線61と、ハイト領域AR3に配置されたメタル配線62とを含む。メタル配線61は、ハイト領域AR1においてX方向に延びており、ハイト領域AR1に設けられたフリップフロップFF0,FF7に接続されている。メタル配線62は、ハイト領域AR3においてX方向に延びており、ハイト領域AR3に設けられたフリップフロップFF2,FF5に接続されている。また、反転クロック信号NCKの供給経路は、ハイト領域AR2に配置されたメタル配線71と、ハイト領域AR4に配置されたメタル配線72とを含む。メタル配線71は、ハイト領域AR2においてX方向に延びており、ハイト領域AR2に設けられたフリップフロップFF1,FF6に接続されている。メタル配線72は、ハイト領域AR4においてX方向に延びており、ハイト領域AR4に設けられたフリップフロップFF3,FF4に接続されている。なお、メタル配線61,62,71,72は例えば、電源配線と同一の配線層に形成されていてもよいし、電源配線よりも上層の配線層に形成されていてもよい。
【0032】
以上のように本実施形態によると、マルチハイトセルであるスタンダードセル2において、8個のフリップフロップFF0〜FF7は、ハイト領域AR1〜AR4に2個ずつ、配置されている。そして、クロック信号CKの供給経路を構成するメタル配線61が、ハイト領域AR1に、フリップフロップFF0,FF7を接続するように配置されており、クロック信号CKの供給経路を構成するメタル配線62が、ハイト領域AR3に、フリップフロップFF2,FF5を接続するように配置されている。これにより、クロック信号CKの供給経路における抵抗値を下げることができるので、クロック信号CKの信号遅延や信号線における電圧降下を抑制することができる。したがって、スタンダードセル2の回路動作の高速化や安定化を実現することができる。
【0033】
また、反転クロック信号NCKの供給経路を構成するメタル配線71が、ハイト領域AR2に、フリップフロップFF1,FF6を接続するように配置されており、反転クロック信号NCKの供給経路を構成するメタル配線72が、ハイト領域AR4に、フリップフロップFF3,FF4を接続するように配置されている。これにより、反転クロック信号NCKの供給経路における抵抗値を下げることができるので、反転クロック信号NCKの信号遅延や信号線における電圧降下を抑制することができる。したがって、スタンダードセル2の回路動作の高速化や安定化を実現することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、4個のハイト領域AR1〜AR4を備えたマルチハイトセルにおいて、8個のフリップフロップFF0〜FF7を、各ハイト領域AR1〜AR4に2個ずつ配置するものとしたが、本開示はこれに限られるものではない。例えば、ハイト領域の個数は4個以外であってもよいし、フリップフロップの個数は8個以外であってもよい。また、各ハイト領域に同一個数のフリップフロップを配置しなくてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、クロック信号CKの供給経路について、ハイト領域AR1,AR3にメタル配線61,62を配置し、反転クロック信号NCKの供給経路について、ハイト領域AR2,AR4にメタル配線71,72を配置するものとしたが、本開示はこれに限られるものではない。例えば、クロック信号CKと反転クロック信号NCKのうちいずれか一方について、その供給経路を構成するメタル配線を2個以上のハイト領域に配置し、他方について、その供給経路にメタル配線を配置しないようにしてもよい。あるいは、クロック信号CKと反転クロック信号NCKのうちいずれか一方について、その供給経路を構成するメタル配線を2個以上のハイト領域に配置し、他方について、その供給経路を構成するメタル配線を1つまたは2個以上のハイト領域に配置してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、クロック信号CKの供給経路を構成するメタル配線61,62が配置されるハイト領域AR1,AR3と、反転クロック信号NCKの供給経路を構成する
メタル配線71,72が配置されるハイト領域AR2,AR4とは、Y方向において交互に配置されているものとした。これにより、クロック信号CKと反転クロック信号NCKとについて、供給経路の抵抗値をほぼ同等に合わせることができるので、信号遅延や信号レベルのバランスをとることができる。ただし、本開示はこれに限られるものではない。例えば、クロック信号CKの供給経路を構成するメタル配線が、Y方向において連続するハイト領域に配置されていてもよいし、同じハイト領域に、クロック信号CKの供給経路を構成するメタル配線と、反転クロック信号NCKの供給経路を構成するメタル配線とが配置されていてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、クロック信号CKの供給経路を構成するメタル配線61,62、および、反転クロック信号NCKの供給経路を構成するメタル配線71,72は、X方向に延びるように形成されているものとしたが、本開示はこれに限られるものではない。また、クロック信号CKの供給経路を構成するメタル配線61,62、および、反転クロック信号NCKの供給経路を構成するメタル配線71,72は、2個のフリップフロップを接続するように設けられているものとしたが、3個以上のフリップフロップを接続するように配置してもよい。
【0038】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、スタンダードセルを構成する部分回路として、セレクタやフリップフロップを例にとって説明を行ったが、本開示において、スタンダードセルを構成する部分回路はこれらに限られるものではない。例えば、ラッチであってもよい。
【0039】
また、上述した実施形態では、複数の部分回路に与える共通信号として、セレクト信号やクロック信号を例にとって説明を行ったが、本開示において、複数の部分回路に与える共通信号はこれらに限られるものではない。例えば、リセット信号、セット信号、スキャンモード信号等について、本開示の構成を適用してもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、複数の部分回路を有するスタンダードセルを、フィンFETを用いて構成するものとしたが、本開示において、スタンダードセルを構成するトランジスタはフィンFETに限られるものではない。
【0041】
なお、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、複数の実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示では、複数の部分回路を有するマルチハイトセルにおいて、回路動作の高速化や安定化を実現できるので、半導体集積回路装置の性能向上に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1,2 スタンダードセル
11,13,15 第1電源配線
12,14 第2電源配線
21,22,31,32 メタル配線
41 ゲート配線
51,52 共通信号生成回路
61,62,71,72 メタル配線
AR1〜AR4 ハイト領域
FF0〜FF7 フリップフロップ(部分回路)
SL0〜SL7 セレクタ(部分回路)
S セレクト信号(共通信号)
NS 反転セレクト信号(共通信号)
CK クロック信号(共通信号)
NCK 反転クロック信号(共通信号)