(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の構造材においては、荷重支持層、燃え止まり層及び燃えしろ層が横方向に連続しているため、仮に、燃えしろ層が長時間燃えた場合、熱が荷重支持層に伝達されることになる。そうすると、荷重支持層は当該熱により、焦げる恐れがあり、場合によっては発火する危険も生じ得る。
また、上記構造材においては、燃えしろ層が燃えた後は、大量の灰が残存すると共に、荷重支持層に燃え止まり層が連続しているため、仮に、荷重支持層が残存した場合であっても、燃え止まり層及び燃えしろ層を取り除くことが困難であり、更には、別の燃え止まり層及び燃えしろ層を当該荷重支持層に取り付けることは極めて複雑な作業を要することになる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐火性に優れると共に、支持木材部への熱伝達性が極めて低く、且つ、被覆建材部が火災等により損傷した場合であっても、損傷した被覆建材部を簡単に取り外すことができ、更に、支持木材部に別の被覆建材部を比較的簡単に取り付けることができる耐火構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、支持木材部と、被覆建材部とを備えるものとし、支持木材部と被覆建材部との間に、積極的に空間を設けることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、(1)建築材料として用いられる耐火構造物であって、荷重を支持するため
の側端部を有する多角柱状の支持木材部と、該支持木材部の周囲が露出しないように、該
支持木材部の外側に配置された被覆建材部と、支持木材部の外周面、及び、被覆建材部の
内周面の間の、少なくとも四隅に設けられた複数のスペーサーと、を備え、支持木材部と
被覆建材部との間には空間が設けられており、スペーサーが平板状であり、空間がスペー
サーの厚みに基づくものであり、空間の体積に対して、スペーサーの占める割合が50%
以下であり、隣り合うスペーサーのうち、上方のスペーサーと下方のスペーサーとの間の
距離が100cm以下であり、支持木材部の側端部からスペーサーまでの最短距離が30
mm以上であり、スペーサーが、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、合板、単板積層材、
製材、セルロースファイバー
、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フ
ェノールフォームからなる群より選ばれる少なくとも1つよりなる耐火構造物に存する。
【0009】
本発明は、(2)空間における支持木材部と被覆建材部との最短距離が1mm〜20mmである上記(1)記載の耐火構造物に存する。
【0010】
本発明は、(3)
スペーサーの熱伝導率が0.5W/(m・K)以下である上記(1)又は(2)に記載の耐火構造物に存する。
【0011】
本発明は、(4)
被覆建材部が、複数の集成ブロック材を互いに連結させて形成されたものであり、集成ブロック材が凸部又は凹部を有し、一方の集成ブロック材の凸部が他方の集成ブロック材の凹部に嵌合されている上記
(1)〜(3)のいずれか1つに記載の耐火構造物に存する。
【0012】
本発明は、(5)
支持木材部の外周面、又は、被覆建材部の内周面には遮熱膜が設けられている上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の耐火構造物に存する。
【0013】
本発明は、(6)
柱、梁又は壁として用いられる上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の耐火構造物に存する。
【0014】
本発明は、(7)
被覆建材部が周方向の1か所にのみ階段状の当接部分を有する上記(
4)〜(6)のいずれか1つに記載の耐火構造物に存する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の耐火構造物は、荷重を支持するための支持木材部を備えるので、構造耐力を確実に維持することができる。
また、支持木材部の周囲が露出しないように、該支持木材部の外側に被覆建材部が配置されているので、支持木材部が外部からの影響を受けることもない。
【0020】
本発明の耐火構造物においては、支持木材部と被覆建材部との間には空間が設けられているので、火災時に、被覆建材部が加熱されたとしても、その熱が支持木材部へ伝達されることを抑制することができる(熱伝達抑制効果)。その結果、支持木材部が焦げたり、発火することを防止できる。
また、耐火構造物においては、上述した空間を介することにより、被覆建材部を支持木材部から簡単に取り外すことができる(離脱容易効果)。例えば、被覆建材部が火災を受けた場合や外部からの衝撃により損傷した場合等に、損傷した被覆建材部を取り外し、支持木材部に別の被覆建材部を比較的簡単に取り付けることができる。
【0021】
本発明の耐火構造物においては、空間における支持木材部と被覆建材部との最短距離を1mm〜20mmとすることにより、上述した熱伝達抑制効果及び離脱容易効果を確実に発揮することができる。
【0022】
本発明の耐火構造物においては、支持木材部の外周面、及び、被覆建材部の内周面の間に複数のスペーサーを設けることにより、被覆建材部がスペーサーを介して支持木材部に支持されるので、支持木材部に対して被覆建材部が不安定となりぐらついて変位することを防止することができる(ぐらつき変位防止効果)。このとき、隣り合うスペーサーのうち、上方のスペーサーと下方のスペーサーとの間の距離が100cm以下であることが好ましい。
また、この場合、空間がスペーサーの厚みに基づくものであるため、すなわち、空間がスペーサーにより形成されるため、空間を確実に確保することができる。
【0023】
本発明の耐火構造物においては、空間の体積に対して、スペーサーの占める割合を50%以下とすることにより、上述した熱伝達抑制効果を効果的に発揮することができる。
【0024】
本発明の耐火構造物においては、支持木材部が側端部を有する多角柱状であり、側端部からスペーサーまでの最短距離を30mm以上とすることにより、火災を受けた場合、スペーサー自体が火災による悪影響を受け難くすることができる。
【0025】
本発明の耐火構造物においては、スペーサーの熱伝導率を0.5W/(m・K)以下とすることにより、断熱性に優れるので、仮に被覆建材部が熱せられたとしても、スペーサーを介する支持木材部への熱伝達を抑制することができる。
【0026】
本発明の耐火構造物において、被覆建材部を、複数の集成ブロック材を互いに連結させて形成することにより、支持木材部に対する被覆建材部の取り付けを容易に行うことができる。すなわち、集成ブロック材を互いに連結させることにより、支持木材部の外側に被覆建材部を取り付け、集成ブロック材を解体することにより、被覆建材部を取り外すことができる。
このとき、耐火構造物においては、集成ブロック材が端部に凸部又は凹部を有し、一方の集成ブロック材の凸部が他方の集成ブロック材の凹部に嵌合された形態であると、集成ブロック材同士を強固に連結させることができる。
【0027】
本発明の耐火構造物においては、支持木材部の外周面、又は、被覆建材部の内周面に遮熱膜を設けることにより、熱を遮断することができる。すなわち、支持木材部の外周面に遮熱膜を設けた場合は、遮熱膜が熱を高反射し、被覆建材部の内周面に遮熱膜を設けた場合は、遮熱膜が低輻射で遮熱することになる。
【0028】
本発明の耐火構造物においては、建築材料の中でも、柱、梁又は壁として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0031】
本発明に係る耐火構造物は、建築材料として用いられる。具体的には、建築材料の中でも、柱、梁又は壁として好適に用いられる。
(第1実施形態)
まず、本発明に係る耐火構造物の第1実施形態について説明する。
図1の(a)は、本発明に係る耐火構造物を柱として用いた第1実施形態を示す一部透過斜視図であり、(b)は、その水平断面図である。
図1の(a)及び(b)に示すように、第1実施形態に係る耐火構造物Aは、柱として用いた場合の例である。
耐火構造物Aは、荷重を支持するための木材である支持木材部1と、該支持木材部1の周囲が露出しないように、該支持木材部1の外側に配置された被覆建材部2Aと、支持木材部1の外周面、及び、被覆建材部2Aの内周面の間に設けられた複数のスペーサー3とを備える。すなわち、耐火構造物Aは、水平方向において、被覆建材部2Aが支持木材部1を囲繞しており、且つ、支持木材部1と被覆建材部2Aとの間には空間Sが設けられており、その空間Sにスペーサー3が設けられている。
なお、耐火構造物Aにおいて、支持木材部1の上面及び下面には、被覆建材部2Aが設けられていないが、耐火構造物Aを柱として用いる場合、上面及び下面は、梁、柱又は床(スラブ)等の他の建築材料と接合されるので、結果として支持木材部1の上面及び下面は露出しないことになる。
【0032】
ここで、本明細書において、「支持木材部」とは、木材からなり、荷重を支持するための部位を意味し、「被覆建材部」とは、支持木材部の周囲が露出しないように、当該支持木材部を被覆した建材からなる部位を意味する。なお、これらの詳細については、後述する。
【0033】
耐火構造物Aにおいては、支持木材部1の外側に被覆建材部2Aが配置されているので、支持木材部1が外部からの影響を受けることがない。そのため、支持木材部1は、破損等することなく、長期にわたって荷重を支持することが可能である。すなわち、支持木材部1は、初期の状態を維持することができる。
【0034】
耐火構造物Aにおいては、支持木材部1と被覆建材部2Aとの間には空間Sが設けられているので、火災時に、被覆建材部2Aの外側から加熱されたとしても、その熱の伝達が空間Sにより遮断され、支持木材部1に伝達されることを極力抑制することができる(熱伝達抑制効果)。その結果、支持木材部1が焦げたり、発火することを防止できる。
また、耐火構造物Aにおいては、空間Sを利用することにより、被覆建材部2Aを支持木材部1から簡単に取り外すことができる(離脱容易効果)。例えば、被覆建材部2Aが火災を受けた場合や外部からの衝撃により損傷した場合等に、損傷した被覆建材部2Aを取り外し、支持木材部1に別の被覆建材部を簡単に取り付けることができる。
なお、被覆建材部2Aは、空間Sに設けられた複数のスペーサー3を介して、支持木材部1に支持されているので、支持木材部1に対して不安定となりぐらついて変位することも防止することができる(ぐらつき変位防止効果)。
【0035】
第1実施形態に係る耐火構造物Aにおいて、支持木材部1は、荷重を支持するための芯となる四角柱状の木材である。
当該支持木材部1は、単独で荷重に対して構造耐力上安全となるように設計されたものとなっている。すなわち、支持木材部1単独で、荷重を支持可能となっているため、仮に、被覆建材部2Aを取り外した場合であっても構造耐力を確実に維持することができる。
なお、「荷重」とは、建築基準法に定める固定荷重、積載荷重、積雪荷重、風荷重、地震荷重及び土圧、水圧による荷重を意味する。
【0036】
支持木材部1に用いられる木材としては、特に限定されず、赤松、檜、唐松、杉、檜葉、栗、米栂、スプルース、米ヒバ、米松等の一般的なものが挙げられる。
支持木材部1は、室内の湿度調整の観点から、丸太から切り出した木材である、いわゆる無垢材を採用することが好ましい。
なお、第1実施形態に係る耐火構造物Aにおいては、支持木材部1と被覆建材部2Aとの間に積極的に空間Sを設けていることから、支持木材部1は、その空間Sの空気を介して、室内の湿度を調整する機能を発揮することができる。このため、支持木材部1が上述したように無垢材からなるものであると、室内の湿度調整をより効率良く行うことができる。
【0037】
第1実施形態に係る耐火構造物Aにおいて、被覆建材部2Aは、四角柱状の中空部を有する中空四角柱状となっている。なお、中空部には、支持木材部1が被覆建材部2Aに接しないように収容されている。
また、被覆建材部2Aは、複数の集成ブロック材を互いに連結させて形成されたものである。
ここで、被覆建材部2Aの側部(集成ブロック材)の厚みH1は、支持木材部1を熱から保護する観点から、20mm〜200mmであることが好ましい。
厚みH1が20mm未満であると、厚みH1が上記範囲内にある場合と比較して、仮に、火災が起こった場合、熱が荷重支持層に伝達される恐れがあり、厚みH1が200mmを超えると、厚みH1が上記範囲内にある場合と比較して、重量が大きくなるため、作業性が悪くなると共に、コストが上昇する欠点がある。
【0038】
図2は、第1実施形態に係る耐火構造物において支持木材部と、解体させた被覆建材部の集成ブロック材とを示す水平断面図である。
図2に示すように、被覆建材部2Aは、L字状の4つの集成ブロック材21,22,23,24に分けることができる。すなわち、中空四角柱状の被覆建材部2Aは、支持木材部1の各側部の略中間付近で分離可能となっている。
なお、以下便宜的に、
図2に示す左下の集成ブロック材を第1集成ブロック材21、左上の集成ブロック材を第2集成ブロック材22、右上の集成ブロック材を第3集成ブロック材23、右下の集成ブロック材を第4集成ブロック材24ともいう。
【0039】
被覆建材部2Aにおいて、第1集成ブロック材21は、第4集成ブロック材24側の端部に凸部21aを有し、第2集成ブロック材22側の端部に凹部21bを有している。第2集成ブロック材22は、第1集成ブロック材21側の端部に凸部22aを有し、第3集成ブロック材23側の端部に凹部22bを有している。第3集成ブロック材23は、第2集成ブロック材22側の端部に凸部23aを有し、第4集成ブロック材24側の端部が、階段状となっている。第4集成ブロック材24は、第1集成ブロック材21側の端部に凹部24bを有し、第3集成ブロック材23側の端部が、階段状となっている。
【0040】
そして、第1集成ブロック材21の凸部21aは、第4集成ブロック材24の凹部24bに嵌合可能となっており、第2集成ブロック材22の凸部22aは、第1集成ブロック材21の凹部21bに嵌合可能となっており、第3集成ブロック材23の凸部23aは、第2集成ブロック材22の凹部22bに嵌合可能となっている。なお、これらの互いの嵌合関係は、締まり嵌めとすることが好ましい。
また、第3集成ブロック材23の階段状の端部と、第4集成ブロック材24の階段状の端部とは逆向きとなっており、当接させることにより、形状が合致するようになっている。
【0041】
したがって、耐火構造物Aにおいては、向かい合う第3集成ブロック材23の階段状の端部と、第4集成ブロック材24の階段状の端部とを当接させると共に、集成ブロック材21,22,23,24の互いに対応する凸部と凹部とを嵌合させることにより、支持木材部1の外側に、中空四角柱の被覆建材部2Aが形成される。
このように、被覆建材部2Aは、凸部及び凹部を利用して集成ブロック材21,22,23,24同士を連結させているので、不作為に外れることなく、その連結を強固なものとすることができる。
また、凸部と凹部とを嵌合する際、及び、階段状の端部同士を当接させる際には、接着剤を付与してもよく、両者をビスや釘等の固定具で止めてもよい。この場合、両者をより強固に連結させることができる。なお、接着剤を使用しない場合や固定具を使わない場合は、集成ブロック材同士の着脱を容易に行うことが可能となる。
【0042】
各集成ブロック材21,22,23,24は、複数の小片板状体を、互いに貼り合わせたものからなる。これにより、被覆建材部2Aを十分な強度を有するものとすることができる。
ここで、小片板状体としては、木材(無垢材)、合成木材、不燃木材、単板積層材(LVL)、合板、板状の集成材等が好適に用いられる。
また、小片板状体の厚みH2は、取り扱い易さ、及び、作り易さの観点から、5mm〜50mmであることが好ましい。
【0043】
各集成ブロック材21,22,23,24は、幅方向の長さが異なる小片板状体の一端を揃えるようにして面同士を接着した第1積層体を、角部を形成する(別の)小片板状体の端部に直角となるように接着し、幅方向の長さが異なる小片板状体の一端を揃えるようにして面同士を接着した第2積層体を、第1積層体の側面に直角となるように接着し、且つ、角部を形成する小片板状体に面同士を接着することにより得られる。
なお、第1実施形態に係る耐火構造物Aにおいては、第1積層体として、3枚の小片板状体を積層させており、第2積層体として、2枚の小片板状体を積層させている。
【0044】
このように、被覆建材部2Aを構成する集成ブロック材21,22,23,24においては、幅方向の長さが異なる小片板状体を用いているので、集成ブロック材の端部を簡単に階段状とすることができる。
そのため、中央の小片板状体を突出させることにより、集成ブロック材の端部に凸部を形成することができ、逆に前後の小片板状体を突出させることにより、集成ブロック材の端部に凹部を形成することができる。
【0045】
図3は、第1実施形態に係る耐火構造物において一方の集成ブロック材の凸部を他方の集成ブロック材の凹部に嵌合させた状態を模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、被覆建材部2Aにおいては、一方の集成ブロック材の中央の小片板状体を突出させることにより形成された上下方向に延びる凸部を、他方の集成ブロック材の前後の小片板状体を突出させることにより形成された上下方向に延びる凹部に強く押し入れて嵌合させることにより、集成ブロック材同士が連結される。これにより、集成ブロック材21,22,23,24同士を強固に連結させることができる。
このとき、凸部を形成する小片板状体は、凹部に嵌合させ易くするため、凸部の両側の角部に丸みが設けられていることが好ましい。なお、かかる丸みは、集成ブロック材を作製する際に、凸部を形成する小片板状体に予め設けておけばよい。
また、このとき、連結する部分に接着剤を用いることにより集成ブロック材同士をより強固に連結することができ、接着剤を用いないことにより集成ブロック材同士を容易に解体することが可能となる。同様に、連結する部分をビスや釘等の固定具で止めることにより集成ブロック材同士をより強固に連結することができ、当該固定具を使わないことにより集成ブロック材同士を容易に解体することが可能となる。
【0046】
耐火構造物Aにおいては、上述したように、被覆建材部2Aを、複数の集成ブロック材21,22,23,24を連結させて形成することにより、支持木材部1に対する被覆建材部2Aの取り付けを容易に行うことができる。すなわち、集成ブロック材21,22,23,24を互いに連結させることにより、支持木材部1の外側に被覆建材部2Aを簡単に取り付けることができ、逆に、集成ブロック材21,22,23,24を解体することにより、被覆建材部2Aを簡単に取り外すことができる。
【0047】
図1の(a)及び(b)に戻り、耐火構造物Aにおいて、空間Sにおける支持木材部1と被覆建材部2Aとの最短距離H3が1mm〜20mmであることが好ましい。なお、支持木材部1と被覆建材部2Aとの最短距離H3がこの範囲内であれば、全ての空間Sにおいて必ずしも一定である必要はない。
空間Sにおける支持木材部1と被覆建材部2Aとの最短距離H3が1mm未満であると、最短距離H3が上記範囲内にある場合と比較して、熱が伝達され易くなるという欠点があり、空間Sにおける支持木材部1と被覆建材部2Aとの最短距離H3が20mmを超えると、最短距離H3が上記範囲内にある場合と比較して、空間S内において一定方向の空気の流れに起因する熱の対流が生じる恐れがある。なお、対流が生じると、当然、熱が伝導され易くなる。
【0048】
耐火構造物Aにおいては、上述したように、支持木材部1と被覆建材部2Aとの間の空間Sにスペーサー3が設けられている。すなわち、スペーサー3は、支持木材部1の外周面、又は、被覆建材部2Aの内周面に取り付けられており、当該スペーサー3の厚みにより、支持木材部1と被覆建材部2Aとの間の空間Sが担保されている。なお、スペーサー3は、支持木材部1の外周面、又は、被覆建材部2Aの内周面に対して、少なくとも四隅に取り付けられる。
【0049】
ここで、取り付けられたスペーサー3の厚さは、上述した支持木材部1と被覆建材部2Aとの最短距離H3に相当する。
また、スペーサー3のサイズは、縦が10mm〜100mm、横が10mm〜100mmであることが好ましい。
【0050】
耐火構造物Aにおいて、支持木材部1と被覆建材部2Aとの間の空間Sの体積に対して、スペーサー3の体積が占める割合は50%以下であることが好ましい。
スペーサー3の占める割合が50%を超えると、スペーサー3の占める割合が上記範囲内にある場合と比較して、空間Sの割合が不十分となるため、上述した熱伝達抑制効果が十分に得られない場合がある。
【0051】
耐火構造物Aにおいて、支持木材部1の側端部1Aからスペーサー3までの最短距離H4が30mm以上であることが好ましい。なお、側端部とは、支持木材部1の周囲において、側面同士が接している角の部分を意味する。
支持木材部1の側端部1Aからスペーサー3までの最短距離H4が30mm未満であると、最短距離H4が上記範囲内である場合と比較して、スペーサー3自体が火災による悪影響を受ける場合がある。
ちなみに、耐火構造物Aが火災による熱を受けた場合、例えば、
図1の(b)で示す支持木材部1の左下の側端部1Aではない面の部分は、一方向(矢印E1又は矢印E2)から加熱されるのに対し、側端部1Aは多方向(矢印E1及び矢印E2)から加熱されることになるため火災の影響を受けやすい。
【0052】
耐火構造物Aにおいて、隣り合うスペーサー3のうち、上方のスペーサー3と下方のスペーサー3との間の距離H5は100cm以下であることが好ましい。
上方のスペーサーと下方のスペーサーとの間の距離H5が100cmを超えると、距離H5が上記範囲内にある場合と比較して、被覆建材部2Aが長期にわたって、吸湿と乾燥を繰り返した場合に、歪みが生じる恐れがある。
【0053】
ここで、スペーサー3は、平板状であり、その材質としては、例えば、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等の無機系材料、合板、単板積層材(LVL)、製材等の木質系材料、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー等の不燃繊維系材料、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡樹脂系材料等が好適に用いられる。
これらの中でも、スペーサー3は、熱を伝達し難い、いわゆる高断熱性であるという観点から、木質系材料、不燃繊維系材料、発泡樹脂系材料であることが好ましい。特に、スペーサー3は、熱伝導率が0.5W/(m・K)以下の材質を選択することが好ましい。この場合、仮に、被覆建材部2Aが火災等により熱せられたとしても、支持木材部1への熱伝達を確実に抑制することができる。
また、スペーサー3は、それ自体が燃焼しない不燃性であるという観点から、無機系材料、不燃繊維系材料であることが好ましい。
【0054】
第1実施形態に係る耐火構造物Aにおいては、スペーサー3の厚みにより、空間Sを担保することができ、更に、スペーサー3の厚みを変更することにより、空間Sの幅を調整することができる。これにより、用いる環境に応じて、熱伝達抑制効果及び被覆建材部2Aの離脱容易効果を調整することができる。
また、上述したように、耐火構造物Aにおいては、熱伝達抑制効果、離脱容易効果及びぐらつき変位防止効果を共に発揮することができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る耐火構造物の第2実施形態について説明する。なお、上述したことと重複する事項については、説明を省略する。
第2実施形態に係る耐火構造物Bは、上述した第1実施形態に係る耐火構造物Aと同様に、柱として用いた場合の例である。
耐火構造物Bは、荷重を支持するための木材である支持木材部1と、該支持木材部1の周囲が露出しないように、該支持木材部1の外側に配置された被覆建材部2Bと、支持木材部1の外周面、及び、被覆建材部2Bの内周面の間に設けられた複数のスペーサー3とを備える。すなわち、耐火構造物Bは、水平方向において、被覆建材部2Bが支持木材部1を囲繞しており、且つ、支持木材部1と被覆建材部2Bとの間には空間Sが設けられており、その空間Sにスペーサー3が設けられている。
したがって、第2実施形態に係る耐火構造物Bは、被覆建材部2Bの構造が異なること以外は、第1実施形態に係る耐火構造物Aと同じである。
【0056】
図4は、本発明に係る耐火構造物を柱として用いた第2実施形態において支持木材部と、解体させた被覆建材部の集成ブロック材とを示す水平断面図である。
図4に示すように、第2実施形態に係る耐火構造物Bにおける被覆建材部2Bは、角部を有するL字状の4つの集成ブロック材21,22,23,25と、これらの集成ブロック材を連結する直線状の集成ブロック材(以下便宜的に「補助集成ブロック材」という。)31,32,33,34に分けることができる。すなわち、中空四角柱状の被覆建材部2Bは、支持木材部1の各側面の2カ所で分離可能となっている。
なお、以下便宜的に、
図4に示す左下の集成ブロック材を第1集成ブロック材21、左上の集成ブロック材を第2集成ブロック材22、右上の集成ブロック材を第3集成ブロック材23、右下の集成ブロック材を第5集成ブロック材25、下側の補助集成ブロック材を第1補助集成ブロック材31、左側の補助集成ブロック材を第2補助集成ブロック材32、上側の補助集成ブロック材を第3補助集成ブロック材33、右側の補助集成ブロック材を第4補助集成ブロック材34ともいう。
【0057】
被覆建材部2Bにおいて、第1集成ブロック材21は、第1補助集成ブロック材31側の端部に凸部21aを有し、第2補助集成ブロック材32側の端部に凹部21bを有している。第2集成ブロック材22は、第2補助集成ブロック材32側の端部に凸部22aを有し、第3補助集成ブロック材33側の端部に凹部22bを有している。第3集成ブロック材23は、第3補助集成ブロック材33側の端部に凸部23aを有し、第4補助集成ブロック材34側の端部が、階段状となっている。第5集成ブロック材25は、第4補助集成ブロック材34側の端部に凸部25aを有し、第1補助集成ブロック材31側の端部に凹部25bを有している。第1補助集成ブロック材31は、第5集成ブロック材25側の端部に凸部31aを有し、第1集成ブロック材21側の端部に凹部31bを有している。第2補助集成ブロック材32は、第1集成ブロック材21側の端部に凸部32aを有し、第2集成ブロック材22側の端部に凹部32bを有している。第3補助集成ブロック材33は、第2集成ブロック材22側の端部に凸部33aを有し、第3集成ブロック材23側の端部に凹部33bを有している。第4補助集成ブロック材34は、第5集成ブロック材25側の端部に凹部34bを有し、第3集成ブロック材33側の端部が、階段状となっている。
【0058】
そして、第1補助集成ブロック材31の凸部31aは、第5集成ブロック材25の凹部25bに嵌合可能となっており、第1集成ブロック材21の凸部21aは、第1補助集成ブロック材31の凹部31bに嵌合可能となっており、第2補助集成ブロック材32の凸部32aは、第1集成ブロック材21の凹部21bに嵌合可能となっており、第2集成ブロック材22の凸部22aは、第2補助集成ブロック材32の凹部32bに嵌合可能となっており、第3補助集成ブロック材33の凸部33aは、第2集成ブロック材22の凹部22bに嵌合可能となっており、第3集成ブロック材23の凸部23aは、第3補助集成ブロック材33の凹部33bに嵌合可能となっている。なお、これらの互いの嵌合関係は、締まり嵌めとすることが好ましい。
また、第3集成ブロック材23の階段状の端部と、第4補助集成ブロック材34の階段状の端部とは逆向きとなっており、当接させることにより、形状が合致するようになっている。
【0059】
したがって、耐火構造物Bは、第1実施形態に係る耐火構造物Aと同様な効果を奏すると共に、被覆建材部2Bを、第1実施形態に係る耐火構造物Aよりも細かく分割することにより、集成ブロック材自体を軽量化することができるので、比較的容易に施工することが可能となる。
また、補助集成ブロック材の幅方向の長さを変えることにより、被覆建材部2Bを、支持木材部1のサイズに適宜対応させることができる。
【0060】
各集成ブロック材21,22,23,25及び各補助集成ブロック材31,32,33,34は、第1実施形態に係る集成ブロック材と同様に、複数の小片板状体を、互いに貼り合わせたものからなる。なお、第2実施形態に係る耐火構造物Bにおいては、3枚の小片板状体を積層させて補助集成ブロック材としている。
これにより、被覆建材部2Bを十分な強度を有するものとすることができる。
【0061】
各補助集成ブロック材31,32,33,34は、小片板状体の面同士を接着することにより得られる。
また、中央の小片板状体を突出させることにより、凸部を形成することができ、逆に前後の小片板状体を突出させることにより、凹部を形成することができる。
さらに、幅方向の長さが異なる小片板状体を用いることにより、補助集成ブロック材の端部を簡単に階段状とすることができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る耐火構造物の第3実施形態について説明する。なお、上述したことと重複する事項については、説明を省略する。
図5は、本発明に係る耐火構造物を梁として用いた第3実施形態を示す一部透過斜視図である。
図5に示すように、第3実施形態に係る耐火構造物Cは、梁として用いた場合の例である。
耐火構造物Cは、荷重を支持するための木材である支持木材部1と、該支持木材部1の周囲が露出しないように、該支持木材部1の周囲の外側に配置された被覆建材部2Cと、支持木材部1の外周面、及び、被覆建材部2Cの内周面の間に設けられた複数のスペーサー3とを備える。すなわち、耐火構造物Cは、被覆建材部2Cが支持木材部1の側面及び下面を覆っており、且つ、支持木材部1と被覆建材部2Cとの間には空間Sが設けられており、その空間Sにスペーサー3が設けられている。
なお、耐火構造物Cにおいて、支持木材部1の上面及び左右の端面には、被覆建材部2Cが設けられていないが、耐火構造物Cを梁として用いる場合、上面は床(スラブ)F等の他の建築材料と接合され、左右の端面は梁(小梁)、柱又は壁等の他の建築材料と接合されるので、結果として支持木材部1の上面及び左右の端面は露出しないことになる。
【0063】
耐火構造物Cにおいては、支持木材部1の外側に被覆建材部2Cが配置されているので、支持木材部1が外部からの影響を受けることがない。
また、耐火構造物Cにおいては、支持木材部1と被覆建材部2Cとの間には空間Sが設けられているので、火災時に、被覆建材部2Cの外側が加熱されたとしても、その熱の伝達が空間Sにより遮断され、支持木材部1に伝達されることを抑制することができる(熱伝達抑制効果)。その結果、支持木材部1が焦げたり、発火することを防止できる。
また、耐火構造物Cにおいては、空間Sを利用することにより、被覆建材部2Cを支持木材部1から簡単に取り外すことができる(離脱容易効果)。例えば、被覆建材部2Cが火災を受けた場合や外部からの衝撃により損傷した場合等に、損傷した被覆建材部2Cを取り外し、支持木材部1に別の被覆建材部を簡単に取り付けることができる。
なお、被覆建材部2Cは、空間Sに設けられた複数のスペーサー3を介して、支持木材部1に支持されているので、支持木材部1に対して不安定となりぐらついて変位することも防止することができる(ぐらつき変位防止効果)。
【0064】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る耐火構造物の第4実施形態について説明する。なお、上述したことと重複する事項については、説明を省略する。
図6は、本発明に係る耐火構造物を壁として用いた第4実施形態を示す一部透過斜視図である。
図6に示すように、第3実施形態に係る耐火構造物Dは、壁として用いた場合の例である。
耐火構造物Dは、荷重を支持するための木材である支持木材部1と、該支持木材部1の周囲が露出しないように、該支持木材部1の外側に配置された被覆建材部2Dと、支持木材部1の外周面、及び、被覆建材部2Dの内周面の間に設けられた複数のスペーサー3とを備える。すなわち、耐火構造物Dは、被覆建材部2Dが支持木材部1の側面を覆うように、挟んだ構成となっており、且つ、支持木材部1と被覆建材部2Dとの間には空間Sが設けられており、その空間Sにスペーサー3が設けられている。
なお、耐火構造物Dにおいて、支持木材部1の上面、下面及び左右の端面には、被覆建材部2Dが設けられていないが、耐火構造物Dを壁として用いる場合、上面及び下面は梁又は床(スラブ)等の他の建築材料と接合され、左右の端面は柱又は壁等の他の建築材料と接合されるので、結果として支持木材部1の上面、下面及び左右の端面は露出しないことになる。
【0065】
耐火構造物Dにおいては、支持木材部1の外側に被覆建材部2Dが配置されているので、支持木材部1が外部からの影響を受けることがない。
また、耐火構造物Dにおいては、支持木材部1と被覆建材部2Dとの間には空間Sが設けられているので、火災時に、被覆建材部2Dの外側が加熱されたとしても、その熱の伝達が空間Sにより遮断され、支持木材部1に伝達されることを抑制することができる(熱伝達抑制効果)。その結果、支持木材部1が焦げたり、発火することを防止できる。
また、耐火構造物Dにおいては、空間Sを利用することにより、被覆建材部2Dを支持木材部1から簡単に取り外すことができる(離脱容易効果)。例えば、被覆建材部2Dが火災を受けた場合や外部からの衝撃により損傷した場合等に、損傷した被覆建材部2Dを取り外し、支持木材部1に別の被覆建材部を簡単に取り付けることができる。
なお、被覆建材部2Dは、空間Sに設けられた複数のスペーサー3を介して、支持木材部1に支持されているので、支持木材部1に対して不安定となりぐらついて変位することも防止することができる(ぐらつき変位防止効果)。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0067】
第1〜第4実施形態に係る耐火構造物A〜Dにおいては、支持木材部1が四角柱状の木材となっているが、荷重を支持することが可能であれば、これに限定されない。すなわち、支持木材部1は、三角柱状、五角柱状、六角柱状等の多角柱状であってもよく、円柱状であってもよい。
また、第1及び第2実施形態に係る耐火構造物A、Bにおいては、被覆建材部が四角柱状の中空部を有する中空四角柱状となっているが、支持木材部1の周囲が露出しないように配置可能であれば、中空部の形状や、被覆建材部の外観はこれに限定されない。
したがって、支持木材部と被覆建材部との間に空間Sを担保できるのであれば、支持木材部1の外観形状と、中空部の形状とは必ずしも一致させる必要はない。
【0068】
第1〜第4実施形態に係る耐火構造物A〜Dは、スペーサー3を備えているが、必ずしも必須ではない。すなわち、耐火構造物A〜Dにおいては、スペーサー3を備えていなくても、空間Sを備えることにより、熱伝達抑制効果及び離脱容易効果を発揮することができる。
また、第1〜第4実施形態に係る耐火構造物A〜Dにおいて、スペーサー3は、平板状となっているが、立方体であってもよい。
【0069】
第1〜第4実施形態に係る耐火構造物A〜Dにおいては、支持木材部1として無垢材を採用しているが、合板、単板積層材(LVL)、集成材等からなるものであってもよい。
【0070】
第1〜第3実施形態に係る耐火構造物A〜Cにおいては、支持木材部1の外周面、又は、被覆建材部2A,2B,2Cの内周面に遮熱膜5が設けられていてもよい。
また、第4実施形態に係る耐火構造物Dにおいては、支持木材部1の側面、又は、被覆建材部2Dの側面に遮熱膜5が設けられていてもよい。
図7の(a)は、他の実施形態に係る耐火構造物において、支持木材部の外周面に遮熱膜を設けた場合の例を示し、(b)は、他の実施形態に係る耐火構造物において、被覆建材部の内周面に遮熱膜を設けた場合の例を示す水平断面図である。
図7の(a)に示すように、支持木材部1の外周面に遮熱膜5が設けられていてもよい。この場合、仮に、熱が被覆建材部2Eに付与された場合であっても、遮熱膜5が熱を高反射して遮熱するので、当該熱が支持木材部1に伝達することを抑制することができる。その結果、支持木材部1が加熱されることをより一層抑制することができる。
また、
図7の(b)に示すように、被覆建材部2Fの内周面に遮熱膜5が設けられていてもよい。この場合、仮に、熱が被覆建材部2Fに付与された場合であっても、遮熱膜5が低輻射で遮熱するので、当該熱が支持木材部1に伝達することを抑制することができる。その結果、支持木材部1が加熱されることをより一層抑制することができる。
なお、遮熱膜5としては、例えば、遮熱塗料により形成される膜、アルミニウム箔、スズ箔等が挙げられる。
【0071】
第1及び第2実施形態に係る耐火構造物A、Bにおいて、被覆建材部は、複数の集成ブロック材を互いに連結させて形成されたものとしているが、これに限定されない。
例えば、被覆建材部としては、集成ブロック材の他に、木材、合成木材、不燃木材、単板積層材(LVL)、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、木毛セメント板等の木質系材料、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、フレキシブルボード、セメントボード等の無機質ボード系材料、フェノールフォーム保温板、炭酸カルシウム発泡材等の不燃断熱成型板、ロックウール、グラスウール、セラミックファイバー等をボード状又はマット状にした不燃繊維系材料、ALCパネル、押出成形セメント板、コンクリートブロック等のセメント系材料、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム等の難燃断熱成型板、若しくは、これらの複合材料等からなるものを採用してもよい。
【0072】
図8の(a)〜(c)は、他の実施形態に係る耐火構造物において被覆建材部として集成ブロック材の代わりに石膏ボードを用いた例を示す水平断面図である。
図8の(a)に示す被覆建材部2Gは、貼り合わせた石膏ボードのブロックを2つ準備し、凹部と凸部とを2箇所で嵌合させたものであり、
図8の(b)に示す被覆建材部2Hは、貼り合わせた石膏ボードのブロックを3つ準備し、凹部と凸部とを2箇所で嵌合させ、階段状の端部同士を1箇所で当接させたものであり、
図8の(c)に示す被覆建材部2Iは、貼り合わせた石膏ボードのブロックを4つ準備し、凹部と凸部とを3箇所で嵌合させ、階段状の端部同士を1箇所で当接させたものである。このように、被覆建材部は、複数のブロック状の石膏ボードを連結させて形成されたものであってもよい。
【0073】
第1及び第2実施形態に係る耐火構造物A,Bにおいて、集成ブロック材は、複数の小片板状体を、互いに貼り合わせたものからなっているが、貼り合わせる小片板状体の枚数は特に限定されない。
また、このとき、幅方向の長さが異なる小片板状体を採用しているが、幅方向の長さが同じものが含まれていてもよく、幅方向の長さが全て同じものを用いてもよい。
【0074】
第1及び第2実施形態に係る耐火構造物A,Bにおいて、集成ブロック材の端部の側面には、互いの連結のため、凹部、凸部、階段状の部分等を設けているが、必ずしも必須ではない。
図9の(a)〜(c)は、他の実施形態に係る耐火構造物において被覆建材部として集成ブロック材の代わりに無垢材を用い、接合部の端部の形状が異なる例を示す水平断面図である。
図9の(a)〜(c)に示すように、耐火構造物においては、無垢材の端部の側面を上面視で傾斜した平面とし、これらの面を互いに接着することにより、無垢材同士を連結させることも可能である。なお、一方の無垢材の傾斜した平面と、他方の無垢材の傾斜した平面とは、互いに当接させることにより、形状が合致するようになっている。
すなわち、
図9の(a)に示す被覆建材部2Jは、貼り合わせた無垢材のブロックを2つ準備し、傾斜した平面同士を2箇所で当接させたものであり、
図9の(b)に示す被覆建材部2Kは、貼り合わせた無垢材のブロックを3つ準備し、傾斜した平面同士を3箇所で当接させたものであり、
図9の(c)に示す被覆建材部2Lは、貼り合わせた無垢材3つと無垢材1つを準備し、傾斜した平面同士を4箇所で当接させたものである。
【0075】
なお、本明細書において、不燃木材とは、木材に不燃成分が付与されたものである。
かかる不燃成分としては、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等のホウ素化合物、リン酸アンモニウム、リン酸グアニジン等のリン酸化合物、窒素化合物、臭化アンモニウム等のハロゲン化合物、シリコン化合物等が挙げられる。
また、例えば、特許第3485914号に記載の処理液を採用することも可能である。