【課題を解決するための手段】
【0012】
封止材料で少なくとも一部が覆われたベースプレートを備えるパワー半導体モジュールについて説明する。ベースプレートは、第1面と、第1面の反対側に位置する第2面と、第1面と第2面とを接続する端面とを含み、ベースプレートは、その第1面に電気回路が設けられるように構成され、ベースプレートは、その第2面を放熱素子と接触させるように構成され、ベースプレートは、その第1面において少なくとも1つの第1領域を含み、第1領域は、ベースプレートの端面に隣接して位置し、第1平面に延在し、少なくとも1つの第1領域において、ベースプレートには封止材料がなく、ベースプレートは、クランプ部でクランプ力を少なくとも1つの第1領域に加えることにより、放熱素子に接続されるように構成され、ベースプレートは、第1領域に隣接する端面において、少なくとも部分的に封止材料で覆われ、以下で定義される特徴a)および特徴b)のうちの少なくとも一方が実現され、特徴a)および特徴b)は、
a)端面において、封止材料は、第1平面と平行に延在する第1断面エリアと、第2平面における第2断面エリアとを有し、第2平面は第1平面と平行に延在しかつ第1平面とは異なり、第1断面エリアは、第2断面エリアと比較して、第1平面により近く、第1断面エリアは第2断面エリアよりも小さい、という特徴、および、
b)クランプ部に作用しベースプレートを放熱素子に対して押圧するクランプ力によってベースプレートが放熱素子に接続される場合において、クランプ部は、第1平面と平行でありかつ第1平面に接する第3断面エリアを有し、クランプ部は、第1平面と平行に延在しかつ第1平面とは異なる第3平面において、第4断面エリアを有し、第3断面エリアは第4断面エリアよりも小さい、という特徴である。
【0013】
このようなパワー半導体モジュールは、とりわけ放熱素子に接続されるときの、したがって製造プロセス中の、パワー半導体モジュールの機械的安定性について、先行技術を上回る重要な利点を提供する。さらに、ベースプレートの改善された封止を、封止材料の向上した完全性とともに得ることができる。
【0014】
このように、本発明は、電気回路を搭載することができる第1面と、第1面の反対側に位置する第2面と、第1面と第2面とを接続する端面とを有するベースプレートを備える、パワー半導体モジュールに関する。このような構成はパワー半導体モジュールの構成として一般的に知られている。
【0015】
ベースプレートは、その第2面を、電気回路から発生した熱を放散させるために放熱素子と接触させるように構成されている。放熱素子は、たとえば冷却液で冷却するような能動冷却器であってもよく、または、放熱素子は、たとえばヒートシンクのような受動冷却器であってもよい。ベースプレートを放熱素子に接続するためのクランプ力が封止材料に働くことを避けるために、またさらに、安定性が高い構成を実現するために、ベースプレートはその第1面において少なくとも1つの第1領域を含む。少なくとも1つの第1領域は、ベースプレートの端面に隣接して位置し、第1平面に延在する。言い換えると、第1平面は、ベースプレートの第1面の第1領域によって定められる。
【0016】
第1面全体が第1平面に延在していてもよく、または、1つ以上の第1領域のみが第1平面に延在していてもよい。
【0017】
ベースプレートの少なくとも1つの第1領域において、ベースプレートには封止材料がない。言い換えると、ベースプレートは、少なくとも1つの第1領域において、封止材料で覆われておらずしたがって封止材料に接触していない。ベースプレートの第1面上の封止材料がないこの第1領域において、クランプ部のクランプ力を直接ベースプレートに加えることができる。言い換えると、第1領域は、クランプ部を位置決めするための支持部の働きをする。したがって、封止材料に損傷を与える危険性は減じられる。よって、ベースプレートは、クランプ部でクランプ力をベースプレートの少なくとも1つの第1領域に、したがって直接ベースプレートに与えることにより、放熱素子に接続されるように構成されている。
【0018】
ベースプレートの端面は、たとえば、ベースプレートの第1平面と第2面の平面とに対して垂直に配置された平面に延在していてもよい。少なくとも1つの第1領域に隣接する端面は、封止材料が第1平面に接することができるよう、その少なくとも一部が封止材料の特に薄い部分で覆われていてもよい。これはパワー半導体モジュールの生産性の改善につながり得る。なぜなら、パワー半導体モジュールの封止のために適用されるトランスファー成形プロセスによってベースプレートの端面を覆うことができるからである。トランスファー成形プロセスでは、ベースプレートを金型に入れてもよく部分的に封止材料で覆ってもよい。ベースプレートおよび金型の寸法の許容誤差のおかげで、とりわけ、トランスファー成形中には横方向のクランプが行われないので、少なくとも1つの第1領域に隣接する端面において、ベースプレートは少なくとも部分的に封止材料で覆われる。結果として、封止材料の、たとえば定められた厚さおよび寸法を有する定められた層が、提供されるはずである。言い換えると、端面に設けられた封止材料は、電気回路とベースプレートの一部とを封止するために使用されるトランスファー成形プロセスの結果であってもよい。
【0019】
クランプ部でクランプ力を第1面の第1領域のベースプレートに加えることによってベースプレートを放熱素子に装着するときに、クランプ力は、封止材料が存在しない第1領域に加えられるだけでなく、少なくとも1つの第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆っている封止材料にも加えられる可能性がある。これは特に、端面を覆っている封止材料が第1平面に接している場合のことである。言い換えると、封止材料はクランプ部も支え得るものである。脆性挙動を示すことが多い典型的な封止材料の特性が原因で、封止材料に亀裂が発生する危険性は回避できないことが多く、パワー半導体モジュールの機械的安定性が危うくなる場合がある。
【0020】
上記リスクを減じるために、本発明は2つの選択肢を提案し、これらの選択肢はいずれも、同等の解決策により、封止材料の亀裂の危険性を大幅に減じる。
【0021】
第1の選択肢に従うと、封止材料は、第1領域に隣接するベースプレートの端面上に、この封止材料が第1断面エリアと第2断面エリアとを有するように設けられ、第1断面エリアは、第1平面と平行に延在しかつ任意で第1平面に接し、第2断面エリアは、第2平面にあり、第2平面は、第1平面と平行に延在しかつ第1平面とは異なり、第1断面エリアは第2断面エリアよりも小さい。
【0022】
このように、第1断面エリアは、第1平面と平行であり、任意で第1平面に接することで、クランプ部と接触するエリアとして作用し得る。これは、ベースプレートの第1面を垂直方向に見下ろしたときにベースプレートの端面上に見える封止材料のエリアであってもよい。言い換えると、第1断面エリアは、第1平面に最も近くかつ第1平面と平行な断面エリアであってもよい。第2平面は、第1平面と平行であり、ベースプレートの第1平面と第2面との間に位置していてもよく、または、ベースプレートの第2面に相当するものであってもよい。封止材料の第2断面エリアは、封止材料を第2平面に沿って切断した場合の、ベースプレートの端面上の封止材料の切断面のエリアに相当するものであってもよい。第2断面エリアは、第1断面エリアよりも大きい。
【0023】
このように、本実施形態では、第1平面から、第1平面に垂直でありかつ第2面の平面に向かって延在する平面までの、封止材料の端部領域は、第2面の平面から、第2面の平面に垂直でありかつ第1平面に向かって延在する平面までの、封止材料の端部領域と異なり得る。
【0024】
したがって、封止材料は、第1平面と平行でありかつ第2面の平面と第1平面との間の中心にある平面について、対称形ではない可能性があることになる。
【0025】
第1領域に隣接するベースプレートの端面上の封止材料のこのような設計は、クランプ力が加えられたときに封止材料に亀裂が発生するリスクを減じることを、見出すことができた。
【0026】
より詳しくは、封止材料とクランプ部と間の接触エリアを小さくすることができるので、脆い封止材料に対する機械的影響も小さくなる。
【0027】
さらに、この実施形態は、クランプ部から封止材料に加えられる圧力を、封止材料/ベースプレート界面の近くに作用させることができる。よって、クランプ部から封止材料に働くレバーの作用またはてこの効果をそれぞれ最小に減じることができる。このことが、封止材料の亀裂の危険性を大幅に減じる。
【0028】
その結果、パワー半導体モジュールの製造およびクランプ中にパワー半導体モジュールに損傷が生じる危険性は大幅に減じられる。これにより、モジュールの製造中の欠陥および不良品の量を少なくすることができる。
【0029】
それ以外にも、モジュールを最終的に適用する際に封止材料に破損部分が生じる危険性も大幅に減じられるので、モジュールの適用性が向上する。
【0030】
さらに、パワー半導体装置が作業中に損傷を受ける危険性も減じられ、長期信頼性の改善が可能になる。
【0031】
同一の利点を、第2の選択肢を考慮したときの代替またはその他のやり方で、得ることができ、第2の選択肢に従うと、クランプ部に作用しベースプレートを放熱素子に対して押圧するクランプ力によってベースプレートが放熱素子に接続される場合において、クランプ部が、第1平面と平行でありかつ第1平面に接する第3断面エリアを有し、クランプ部が、第1平面と平行に延在しかつ第1平面と異なる第3平面における第4断面エリアを有し、第3断面エリアは第4平面エリアよりも小さくなるように設計された、パワー半導体モジュールが提供される。
【0032】
第3平面は、第1平面と平行であり、したがってベースプレートの第1面の第1領域と平行である。第3平面は、クランプエリアに対して圧力を加えるクランプ部の面の、ベースプレートの第1面と、平行に位置していてもよい。言い換えると、第3平面は、ベースプレートの第2面がベースプレートの第1面よりも下方に位置する場合、ベースプレートの第1面の上方に位置していてもよい。このように、第3断面エリアは、第1平面に最も近くしたがってベースプレートの第1領域と接触させることができる、クランプ部の断面エリアであってもよい。
【0033】
クランプ部の第4断面エリアは、クランプ部を第3平面に沿って切断した場合の、クランプ部の切断面のエリアに相当するものであってもよい。いずれにしても、第4断面エリアは、第3断面エリアと比較して、第1平面からより遠い場所にある。
【0034】
クランプ部のこのような設計は、クランプ部に作用しベースプレートを放熱素子に対して押圧するクランプ力によってベースプレートを放熱素子に接続する場合において、封止材料に亀裂が発生するリスクを減じる。よって、クランプ部から封止材料に働くレバーの作用またはてこの効果をそれぞれ最小に減じることができる。
【0035】
第3断面エリアは第4断面エリアよりも小さいので、クランプ部に作用するクランプ力によってベースプレートを放熱素子に接続する場合において、クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料との間の接触エリアは、第2平面の第2断面エリアよりも小さい。さらに、封止材料に対して働くレバーの作用は大幅に減じられ、これも亀裂の危険性を減じることになる。
【0036】
また、要約すると、第4断面エリアは第3断面エリアよりも大きいので、潜在的に、クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料との間の接触面積も、パワー半導体モジュールを放熱素子に装着するときに封止材料にしたがってパワー半導体モジュールに損傷が生じるリスクを減じる。
【0037】
第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料に損傷が生じるリスクは、クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料との間の接触エリアが小さいほど、低くなり得る。クランプ部と、ベースプレートの端面を覆う封止材料との間の接触エリアが全くない場合もあり得る。
【0038】
上記2つの選択肢はいずれも、ベースプレートを放熱素子に接続する場合におけるクランプ部と封止材料との間の接触エリアを小さくする、またはゼロにさえすることができ、その結果、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料に対するクランプ力を減じることができる、という効果を有し得る。したがって、封止材料に生じ得る亀裂をより少なくすることができ、パワー半導体モジュールの機械的完全性を損なうリスクを減じることができる。
【0039】
さらに、クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料との間の接触エリアを減じるとともに、ベースプレート/封止材料界面から離れた場所から作用する圧力を減じることにより、ベースプレートの端面と、ベースプレートの端面を覆う封止材料との間の界面に作用するトルクも減じることができる。このことも、パワー半導体モジュールを放熱素子に装着するときにパワー半導体モジュールの機械的完全性を損なう危険性を減じる。
【0040】
クランプ力は、放熱素子に接続することができ圧力をクランプ部に加えることができるねじによって生じさせることができる。クランプ部は、この圧力をベースプレートの第1領域上に伝える。クランプ部およびねじは、パワー半導体モジュールを放熱素子に装着するための固定装置を形成することができる。しかしながら、クランプ力の発生源は決してねじに限定されない。
【0041】
先に述べたことを要約すると、パワー半導体モジュールは、とりわけ、放熱素子に接続されるときのパワー半導体モジュールの機械的安定性、および、製造される高品質モジュールに関して、多大な利点を提供する。
【0042】
パワー半導体モジュールのベースプレートはその第1面において少なくとも1つの第2領域を含み得る。ベースプレートの第2領域に電気回路が設けられ、第2領域におけるベースプレートと、電気回路とのうちの少なくとも一方が、少なくとも部分的に封止材料で覆われる。ベースプレートは、少なくとも1つの第1領域だけでなく少なくとも1つの第2領域を含み得る。具体例として、パワー半導体モジュールの電気回路は、ベースプレートの少なくとも1つの第2領域に設けられてもよい。ベースプレートのこの少なくとも1つの第2領域は、ベースプレートの少なくとも1つの第1領域の隣であってもよい。また、少なくとも1つの第2領域がベースプレートの端部ではなく中央に存在することも可能であろう。ベースプレートの少なくとも1つの第2領域において、ベースプレートおよび/または電気回路は、少なくとも部分的に封止材料で覆われていてもよい。封止材料は、電気回路および/またはベースプレートと直接接触していてもよく、電気回路および/または第2領域におけるベースプレートの第1面を覆っていてもよい。
【0043】
よって、1つ以上の第2領域(一般的に数は限定されず所望の必要性に応じて選択することができる)がパワー半導体モジュールの能動機器を配置するために設けられ、1つ以上の第1領域がベースプレートを放熱素子に固定するために役立つことが、明らかになる。
【0044】
第1領域の数について、この数も、一般的に限定されず所望の必要に応じて選択することができる。よって、第1断面エリアに対応する断面クランプエリアの数は、所望の必要性に応じて選択することができる。たとえば、そのうちの2つが互いに反対側に位置する4つのクランプエリアを設けることができる。
【0045】
機械的安定性の向上に関して、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料の第1断面エリアは、第2断面エリアより、少なくとも15%小さい、たとえば、少なくとも25%小さい、特に、少なくとも50%小さいものであってもよい。さらに、第1断面エリアは第2断面エリアより75%小さくてもよい。
【0046】
よって、クランプ部に作用しベースプレートを放熱素子に対して押圧するクランプ力によってベースプレートを放熱素子に接続する場合において、第3断面エリアが、第4断面エリアより、少なくとも15%小さい、たとえば、少なくとも25%小さい、特に少なくとも50%小さい、パワー半導体モジュールを提供することができる。
【0047】
結果として、クランプ部に作用しベースプレートを放熱素子に対して押圧するクランプ力によってベースプレートを放熱素子に接続する場合において、クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料との間の接触エリアが、第2断面エリアおよび第4断面エリアのうちの少なくとも一方よりも少なくとも15%小さい、パワー半導体モジュールを提供することができる。
【0048】
クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料との間の接触エリアを、第2断面エリアよりも小さくすることにより、封止材料に亀裂が導入される危険性を効果的に減じることができる。これは、封止材料の第1断面エリアを、第2断面エリアよりも小さくすることによって実現できる。しかしながら、パワー半導体モジュールの機械的安定性という理由から、ベースプレートの端面上から封止材料を完全になくさないことが好都合であろう。したがって、上記割合の数値は、ベースプレートの端面上に封止材料を置くことでベースプレートの端面を保護することと、パワー半導体モジュールを放熱素子に装着するときにパワー半導体モジュールに損傷を与えるリスクを減じることとを両立させる、妥当な数値であろう。
【0049】
先に述べたように、第2平面は、ベースプレートの第1面の平面とベースプレートの第2面の平面との間にあってもよく、または、ベースプレートの第2面の平面に相当するものであってもよい。具体例として、第2平面がベースプレートの第2面の平面に相当するパワー半導体モジュールを提供することができる。第2平面は、ベースプレートの端面上の封止材料の第2断面エリアを定める。この第2平面の位置の選択により、ベースプレートの端面上の封止材料の安定性を大幅に高めることができる。
【0050】
先に述べた、封止材料に損傷を与える危険性の低減は、第1領域に隣接するベースプレートの端面上の封止材料の厚さを変化させることによって実現することができる。これに従うと、封止材料が第1平面において第1厚さを有し第2平面において第2厚さを有し第1厚さが第2厚さよりも小さい、パワー半導体モジュールを提供することができる。具体例として、第1厚さおよび第2厚さは、ベースプレートの端面に垂直な方向において求めることができる。言い換えると、第1平面に垂直でありかつベースプレートの端面に垂直な平面に沿う、パワー半導体モジュールの断面図を見ると、第1厚さおよび第2厚さはこの断面図で直接示すことができる。
【0051】
先に述べた、第1領域に隣接するベースプレートの端面上の封止材料の厚さを変化させることについて、したがって、第1厚さおよび第2厚さについて、ベースプレートの端面上の封止材料が、円弧、1つの段差または複数の段差、斜面(bevel)、および面取り(chamfer)のうちの少なくとも1つの形状を有し得る、パワー半導体モジュールを提供することができる。このことは、第1厚さを第2厚さよりも小さくできるだけでなく、第1厚さと第2厚さとを接続する封止材料の境界が、円弧、1つの段差または複数の段差、斜面、および/または面取りのうちの少なくとも1つの形状を有し得ることを、意味する。
【0052】
円弧の形状を有するということは、封止材料の境界の曲率を一定にできることを意味し得る。言い換えると、上記断面図において、第1厚さと第2厚さとを円弧で接続できることがわかるであろう。曲率は正でも負でもよく、このことは、封止材料の断面の境界が凸状でも凹状でもよいことを意味する。
【0053】
1つの段差または複数の段差の形状を有するということは、第1厚さと第2厚さとを接続する封止材料の境界の方向が急激に変化することを意味し得る。さらに、方向の変化は、およそ90度、たとえば90度+/−20%であってもよい。言い換えると、上記断面において、第1厚さと第2厚さとを、階段関数の形態を有する線で接続できることが、わかるであろう。
【0054】
斜面の形状を有するということは、第1厚さと第2厚さとを接続する封止材料の境界が一定の傾斜を有することを意味し得る。言い換えると、上記断面図において第1厚さと第2厚さとを直線で接続できることがわかるであろう。
【0055】
さらに、斜面の形状を有するということは、第1厚さがゼロまたはゼロに近くてもよいことを意味し得る。このことは、クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面上の封止材料との間の接触エリアが、ゼロまたはゼロに近くてもよいことを、意味し得る。
【0056】
面取りの形状を有するということは、第1厚さと第2厚さとを接続する封止材料の境界が一定の傾斜を有することを意味し得る。言い換えると、上記断面図において、第1厚さと第2厚さとを直線で接続できることがわかるであろう。しかしながら、斜面と比較した場合、面取りの形状を有するということは、第1厚さがゼロに近くはないであろうことを意味し得る。これはまた、クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面上の封止材料との間の接触エリアが、ゼロなくてもよいことを、意味し得る。
【0057】
さらに、第1厚さが第2厚さよりも小さい限りにおいて、第1厚さと第2厚さとを接続する封止材料の境界は、その他任意の形状を有することも可能であろう。よって、上記断面図において、第1厚さと第2厚さとは、指数関数、放物線、双曲線、またはこれらの可能性のうちのいずれかを組み合わせたものの形状を有する線で、接続されていてもよい。
【0058】
さらに他の実施形態に従うと、第2厚さ、たとえばベースプレートの端面にある封止材料の最大厚さは、0.1mm〜10.0mm、たとえば0.5mm〜2.0mmの範囲であってもよい。パワー半導体モジュールは、第2厚さが大きい場合により良好に保護することができる場合がある。さらに、第1厚さは、0.05mm以上であってもよいが、第1厚さを第2厚さよりも小さくすることができる。
【0059】
さらに他の実施形態に従うと、第1厚さは、0.05mm未満、たとえば0mmと0.05mmとの間であってもよい。この文脈において、第1平面から第2面の平面まで延びるベースプレートの厚さは、端面上の封止材料の平行な厚さと同一であってもよい、パワー半導体モジュールを提供することができる。ベースプレートの厚さは、ベースプレートの第1平面と第2面の平面との間の最短距離であってもよい。ベースプレートの厚さは、ベースプレートの第1平面と第2面に対して垂直に測定することができる。第1領域に隣接する端面上の封止材料の平行な厚さは、ベースプレートの厚さと平行であってもよい。同一であるということは、封止材料の平行な厚さが、より小さい厚さを意味するベースプレートの厚さの+/−10%に等しいことを、意味し得る。たとえば、同一であるということは、封止材料の平行な厚さが、より小さい厚さを意味する−10%の誤差を許容するベースプレートの厚さに等しいことを、意味し得る。実質的にベースプレートの厚さである、ベースプレートの端面上の封止材料の平行な厚さにより、ベースプレートの端面の保護性を高めることができる。言い換えると、このことは、ベースプレートの端面全体を封止材料で覆うことができることを、意味し得る。さらに、これにより、トランスファー成形プロセスによるパワー半導体モジュールの生産性を高めることができる。
【0060】
先に述べたように、パワー半導体モジュールのベースプレートは少なくとも1つの第1領域を含み、ベースプレートの第1面における第1領域に封止材料はない。ベースプレートを放熱素子に機械的に接続するには2つ以上の第1領域があるのが好都合であろう。したがって、ベースプレートが少なくとも2つの第1領域、たとえば4つの第1領域を含む、パワー半導体モジュールを提供することができる。具体例として、ベースプレートの第1面に2つの第1領域があり、この2つの第1領域に封止材料はなく、この2つの第1領域は、双方がベースプレートの端面に隣接し、対向して位置していてもよい。したがって、ベースプレートを放熱素子により簡単にかつ確実に接続することができる。
【0061】
さらに他の具体例として、ベースプレートは4つの第1領域を含み得る。実質的に矩形のベースプレートの場合、これらの4つの第1領域は、矩形の各辺が4つの第1領域のうちの1つの第1領域の隣になるように位置していてもよい。特に、これらの4つの第1領域は、矩形の、対向する2つの辺が、4つの第1領域のうちの2つの隣になるように位置していてもよい。よって、第1領域のうちの1つは、矩形の同じ面上のもう1つの第1領域の隣に位置していてもよい。しかしながら、とりわけパワーモジュールが矩形でない場合、任意の数の第1領域が任意の位置に存在することも可能である。
【0062】
ベースプレートを放熱素子に接続するために、ベースプレートは、決して必須ではないが選択肢として、少なくとも1つの第1領域に、リセスおよび/または孔を含み得る。具体例として、ベースプレートは、すべての第1領域においてリセスおよび/または孔を含む。特に、ベースプレートは、ベースプレートを放熱素子に固定するための、リセス、ねじ穴、取付穴および/またはその他任意のデバイスを含み得る。リセスは、半円形状または円の少なくとも一部の形状であってもよい。リセスは、どちらもリセスを有する2つのベースプレートが隣り合って位置する場合に、2つのリセスが合わさってねじ穴を形成できる、という利点を有し得る。したがって、これら2つのベースプレートは、1つのねじで同時に放熱素子に装着することができる。
【0063】
既に先に述べたように、パワー半導体モジュールは、実質的に矩形または平行四辺形の形状を有し得る。実質的に矩形の形状は、角が丸い矩形の形状であってもよい。実質的に矩形の形状は、いくつかのパワー半導体モジュールを積み重ねる可能性がある場合、または、パワー半導体モジュールを放熱素子もしくはその他任意の追加の構成要素に装着する場合に有利である可能性がある。しかしながら、所望の必要に応じて、パワー半導体モジュールの、たとえばベースプレートのその他の形状も可能である。
【0064】
パワー半導体モジュールのさらに他の利点および技術的特徴に関して、パワー半導体とクランプ部と放熱素子とを備える装置、図面、および以下の説明を参照する。
【0065】
本発明はさらに、パワー半導体モジュールと放熱素子とクランプ部とを備える装置に関し、パワー半導体モジュールはベースプレートを備え、ベースプレートは、クランプ部に作用しベースプレートを放熱素子に対して押圧するクランプ力によって放熱素子に接続され、パワー半導体モジュールは、以下の説明で述べるように構成される。
【0066】
上記装置において、ベースプレートの第1面の第1領域上のクランプ部を用いてクランプ力を加えることにより、ベースプレートを放熱素子に装着する。クランプ部は、ベースプレートの第1面の第1領域に直接接触していてもよい。クランプ力は、パワー半導体モジュールを放熱素子に向けて押し下げるために、かつ、ベースプレートの第2面と放熱素子との間を密封するために使用することができる、ねじ切りされたクランプにより、発生することができる。封着リングを放熱素子の溝に設けて密封してもよい。
【0067】
クランプ力は高圧力なので、封止材料の損傷を回避するために、ベースプレートの第1領域は封止材料で覆われていない。さらに、クランプ力は、封止材料がないベースプレートの第1領域に加えられるだけでなく、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料にも加えられるので、損傷が発生する危険性を減じるために、以下で定義される特徴a)または特徴b)が実現される。特徴a)および特徴b)は、
a)端面において、封止材料は、第1平面と平行に延在し任意で第1平面に接する第1断面エリアと、第2平面における第2断面エリアとを有し、第2平面は第1平面と平行に延在しかつ第1平面とは異なり、第1断面エリアは、第2断面エリアよりも小さい、という特徴、および、
b)クランプ部に作用しベースプレートを放熱素子に対して押圧するクランプ力によってベースプレートが放熱素子に接続される場合において、クランプ部は、第1平面と平行でありかつ第1平面に接する第3断面エリアを有し、クランプ部は、第1平面と平行に延在しかつ第1平面とは異なる第3平面において、第4断面エリアを有し、第3断面エリアは、第4断面エリアよりも小さい、という特徴である。
【0068】
上記装置は、封止材料に亀裂が導入される危険性の効果的な低減をもたらし得る。そのため、パワー半導体モジュールの機械的安定性が増す。
【0069】
特徴a)および特徴b)の双方が、クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料との間の接触エリアの低減をもたらすことができる。よって、特徴a)が実現されてもよく、または特徴b)が実現されてもよく、特徴a)および特徴b)の双方が実現されてもよい。
【0070】
クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料との間の接触エリアの低減は、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料に対するクランプ力およびトルクの低減、および/またはレバー効果の低減を、もたらし得る。そのため、封止材料に発生する亀裂を少なくすることができ、パワー半導体モジュールの機械的完全性を損なうリスクを低減することができる。
【0071】
上記接触エリアの低減は、パワー半導体モジュールの説明において述べたベースプレートの端面上の封止材料の設計によって実現することができる。さらに、これもパワー半導体モジュールの説明において述べたクランプ部の設計によって実現することができる。
【0072】
クランプ部の設計に関して、第3断面エリアは、第4断面エリアよりも少なくとも15%小さくてもよい。これは、クランプ部の厚さを変化させることによって実現することができる。これに対応して、第1断面エリアは、第2断面エリアよりも少なくとも15%小さくてもよい。これは、ベースプレートの端面の封止材料の厚さを変化させることによって実現することができる。
【0073】
このように、クランプ部が第1平面において第1厚さを有してもよく第3平面において第2厚さを有してもよく第1厚さを第2厚さよりも小さくすることができる、装置を提供することができる。クランプ部の第1厚さおよび第2厚さは、ベースプレートの端面に垂直な方向において求めることができる。
【0074】
上記クランプ部の厚さを変化させることについて、クランプ部が円弧、1つの段差または複数の段差、および/または面取りの形状を有する装置を提供することができる。言い換えると、クランプ部の第1厚さを第2厚さよりも小さくすることができるだけでなく、第1厚さと第2厚さとを接続するクランプ部の境界も、円弧、1つの段差または複数の段差、および/または面取りの形状を有し得る。
【0075】
円弧の形状を有するということは、クランプの境界の曲率を一定にできることを意味し得る。言い換えると、第1平面に垂直でありかつベースプレートの端面に垂直である平面における断面図において、第1厚さと第2厚さとを円弧で接続できることがわかるであろう。曲率は正でも負でもよく、このことは、クランプ部の境界が凸状でも凹状でもよいことを意味する。
【0076】
1つの段差または複数の段差の形状を有するということは、第1厚さと第2厚さとを接続するクランプ部の境界の方向が急激に変化することを意味し得る。さらに、方向の変化は、およそ90度であってもよい。言い換えると、上記断面図において、第1厚さと第2厚さとを階段関数の形態を有する線で接続できることがわかるであろう。
【0077】
面取りの形状を有するということは、第1厚さと第2厚さとを接続するクランプ部の境界が一定の傾斜を有することを意味し得る。言い換えると、上記断面図において、第1厚さと第2厚さとを直線で接続できることがわかるであろう。
【0078】
さらに、クランプ部の第1厚さが第2厚さよりも小さい限りにおいて、第1厚さと第2厚さとを接続するクランプ部の境界は、何らかの他の形状、たとえば任意の形状を有することも可能であろう。よって、上記断面図において、第1厚さと第2厚さとは、指数関数、放物線、双曲線、またはこれらの可能性のうちのいずれかを組み合わせたものの形状を有する線で、接続されていてもよい。
【0079】
一般的に、ベースプレートにはこのように封止材料が設けられており、ベースプレートの少なくとも1つの第1領域において、ベースプレートの第1面には封止材料がなく、第1領域に隣接するベースプレートの端面は、少なくとも部分的に封止材料で覆われ、封止材料は第1平面に接し、特徴a)および特徴c)のうちの少なくとも一方が当てはまる。これらの特徴は、
a)端面において、封止材料は、第1平面と平行に延在し任意で第1平面に接する第1断面エリアと、第2平面における第2断面エリアとを有し、第2平面は第1平面と平行に延在しかつ第1平面とは異なり、第1断面エリアは、第2断面エリアと比較して、第1平面により近く、第1断面エリアは、第2断面エリアよりも小さい、という特徴、および、
c)クランプ部に作用しベースプレートを放熱素子に対して押圧するクランプ力によってベースプレートが放熱素子に接続される場合において、クランプ部と、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料との間の接触エリアは、第1平面と平行に延在しかつ第1平面とは異なる第2平面における第2断面エリアよりも小さいという、特徴である。
【0080】
この点に関し、ベースプレートに封止材料を設けるステップはトランスファー成形プロセスを含み得る。
【0081】
具体例として、封止材料は、トランスファー成形プロセスにおいて、ベースプレートの第1面の上と、第1領域に隣接するベースプレートの端面の上とに設けてもよい。
【0082】
ベースプレートに封止材料を設けるステップによりパワー半導体モジュールを得てもよく、ベースプレートの端面上の封止材料は特徴a)および/または特徴c)を有する。
【0083】
これに代えて、ベースプレートの端面上の封止材料は、特徴a)および/または特徴c)を実現するために、次の処理ステップにおいて後処理されてもよい。
【0084】
この文脈において、後処理する方法は、第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料を面取りし、および/または傾斜をつけて切断するステップを含み得る。これは、上記特徴を実現するため、かつ、パワー半導体を放熱素子に接続する際に封止材料に損傷を与えるリスクを低減するための、簡単な方法となり得る。第1領域に隣接するベースプレートの端面を覆う封止材料は、封止材料が第2断面エリアよりも小さい第1断面エリアを有するように、面取りされ、および/または傾斜をつけて切断されてもよい。
【0085】
さらに、この方法はクランプ部を与えるステップを含み得る。クランプ部は、クランプ部に作用しベースプレートを放熱素子に対して押圧するクランプ力によってベースプレートを放熱素子に接続する場合において、クランプ部が、第1平面と平行でありかつ第1平面に接する第3断面エリアを有していてもよく、また、クランプ部が、第1平面と平行でありかつ第1平面と異なる第3平面において第4断面エリアを有していてもよく、第3断面エリアは第4断面エリアよりも小さくてもよい。