【実施例1】
【0036】
以下、本発明を適用した表面処理金属部材の効果を確認するために行った実験的検証について詳細に説明をする。
【0037】
この実施例1における実験的検証においては、先ず表1に示すように複数種のサンプルを作成し、水鍋変色試験を行った。
【0038】
【表1】
【0039】
サンプルは、金属層11のみで構成し、その表面に何らコーティング層12を積層させない比較例1〜4と、アルミニウムを含まない金属層11上に上述した成分を含有するコーティング層12を単層に亘り積層させた比較例5〜11と、アルミニウムを含む金属層11上に上述した成分を含有するコーティング層12を単層に亘り積層させた本発明例1〜7と、金属層11上に上述した成分を含有するコーティング層12を2層に亘り積層させた比較例12、13からなる。
【0040】
比較例1、2並びに5〜12については、金属層11として、アルミニウムを含有しないステンレス鋼(SUS304)、アルミニウムを含有しないステンレス鋼(SUS430)を使用し、本発明例1〜7並びに比較例2、3、13については金属層11としてステンレス鋼全重量に対して4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼(15Cr−4Al−LC,N)、金属層11としてステンレス鋼全重量に対して2重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼(18Cr−2Al−Ti)を使用している。
【0041】
比較例5、6並びに本発明例1、2では、ケイ素化合物主体膜Aとして、濃度10%の平均直径25nm以上のシリカが主体となった結晶分散液をコーティング層12として塗布している。
【0042】
比較例7並びに本発明例3ではケイ素化合物主体膜Bとして、濃度20%のポリシラザンをコーティング層12として塗布している。
【0043】
比較例8、9並びに本発明例4、5では、アルミニウム化合物主体膜として、濃度3%、平均直径200nm以上の水酸化アルミニウムナノ粒子分散液をコーティング層12として塗布している。
【0044】
比較例10、11並びに本発明例6、7では、ジルコニウム化合物主体膜として、平均直径10nm以上のジルコニウムナノ粒子分散液をコーティング層12として塗布している。
【0045】
比較例12、13では、上述したケイ素化合物主体膜Aを金属層の直上に積層させ、このケイ素化合物主体膜Aの直上に上述したアルミニウム化合物主体膜を積層させた2層構造としている。
【0046】
上述した各サンプルについて水鍋変色試験による実験的検証を行った。水鍋変色試験ついては、ステンレス鋼からなる金属層11を有する鍋(直径24cm)に2lの水を入れ、4.4kWのハイカロリーバーナーで1時間連続で加熱することを繰り返し行い、JIS K5600-4-3(光源のみLED(オーム電機LEDPL48W)を使用している)に則り変色を目視評価した。この水鍋変色試験ついては、床面壁面が全て白色(SCI値が90.61)の部屋にて行い、観察位置の照度は、約2300Luxであった。
【0047】
なお、表1では金属層11にアルミニウムを含有しない金属の代表としてSUS304、アルミニウムを含有する金属の代表として4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼 (15Cr−4Al−LC,N)を例にとり、アルミニウム含有金属での変色防止耐久性向上効果を倍率で表した。この変色防止耐久性向上効果は、
変色防止耐久性向上効果=(4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼の供試体における変色開始時間(h))/(SUS304のサンプルにおける変色開始時間(h))
で表される。この変色防止耐久性向上効果が3倍以上確認され、更に変色防止耐久性が310hを超えるものを◎、アルミニウム含有基材の効果が3倍以上確認されるが変色防止耐久性が310hを下回るものを○、アルミニウム含有基材の効果が確認されないものを×とし、総合評価を行った。
【0048】
水鍋変色試験では、上述した条件の下での目視評価を行った。先ず比較例1〜4としてアルミニウムを含有しないSUS304、SUS430並びに4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼、2重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼についてコーティングを行わない状態で水鍋変色試験を行い、変色開始時間を測定した。
その結果、変色開始時間は基材によらず2分であった。このことから何らコーティングを行わない状態ではアルミニウム含有基材の変色防止耐久性向上効果は確認されず、総合評価は×となった。
【0049】
次に比較例5〜7としてアルミニウムを含有しないSUS304、SUS430について、本発明例1〜3として4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼、2重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼について、本発明例のコーティング条件の下でケイ素化合物主体膜A並びにケイ素化合物主体膜Bのコーティングを行い、それぞれについて水鍋変色試験を行い、変色開始時間を測定した。その結果、比較例5〜7の変色開始時間は全て110時間であったが、本発明例1〜3は全て470時間時点でも変色は確認されなかった。
【0050】
このことから、ケイ素化合物を含むコーティング層12をアルミニウムを含有する金属層11上に積層させることにより、アルミニウムを含有しない金属層11上に積層させた際と比べ、変色防止耐久性向上効果は少なくとも4倍以上となることがわかり、その耐久性もアルミニウムを含まない金属層11において最も変色防止耐久性の良い2層膜の比較例12の310時間を超えることから、総合評価は◎となった。
【0051】
次に比較例8、9としてアルミニウムを含有しないSUS304、SUS430について、本発明例4、5として4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼、2重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼について本発明例のコーティング条件の下でアルミニウム化合物主体膜のコーティングを行い、それぞれについて水鍋変色試験を行い、変色開始時間を測定した。
【0052】
その結果、比較例8、9はそれぞれ変色開始時間が10時間、4時間であったが、本発明例4、5では何れも145時間時点でも変色は確認されなかった。
このことから、アルミニウム化合物を含むコーティング層12をアルミニウムを含有する金属層11上に積層させることにより、アルミニウムを含有しない金属層11上に積層させた際と比べ、変色防止耐久性向上効果は少なくとも14.5倍以上となることがわかり、アルミニウム含有基材の効果は確認されたが、その耐久性は310時間を超えていないため、総合評価は○となった。
【0053】
次に比較例10、11としてアルミニウムを含有しないSUS304、SUS430について、本発明例6、7として4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼、2重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼について本発明例のコーティング条件の下でジルコニウム化合物主体膜のコーティングを行い、それぞれについて水鍋変色試験を行い、変色開始時間を測定した。
【0054】
その結果、比較例10、11の変色開始時間は何れも45分であったが、本発明例6、7の変色開始時間はそれぞれ4時間、18時間であった。
【0055】
このことから、ジルコニウム化合物を含むコーティング層12を、アルミニウムを含有する金属層11上に積層させることにより、アルミニウムを含有しない金属層11上に積層させた際と比べ、変色防止耐久性向上効果は5倍となることがわかり、アルミニウム含有基材の効果は確認されたが、その耐久性は310時間を超えていないため、総合評価は○となった。
【0056】
次に比較例12、13としてアルミニウムを含有しないSUS304、4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼について本発明例のコーティング条件の下で上述したケイ素化合物Aを金属層の直上に積層させ、このケイ素化合物Aの直上に上述したアルミニウム化合物主体膜を積層させるコーティングを行い、それぞれについて水鍋変色試験を行い、変色開始時間を測定した。
【0057】
その結果、比較例12の変色開始時間は310時間であり、比較例13の変色開始時間は1700時間であった。
【0058】
このことから、ケイ素化合物を含むコーティング層とアルミニウム化合物を含むコーティング層の2層構造を持つコーティング層12を、アルミニウムを含有する金属層11上に積層させることにより、アルミニウムを含有しない金属層11上に積層させた際と比べ、変色防止耐久性向上効果は5.5倍となることがわかり、その耐久性も310時間を超えることから、総合評価は◎となった。
【0059】
また、本実施例においては製造容易性についても評価した。製造容易性は、アルミニウムを含む金属層11(15Cr−4Al−LC,N)に対してそれぞれコーティング層を積層させた本発明例1、本発明例3、本発明例4、本発明例6、比較例13について評価した。製造容易性の評価指標は、コーティング層をコーティングする上での時間を計測すると共に、実際のコーティングの労力の負担について作業者に3段階で評価してもらい、製造時間が長く、製造労力の負担が大きい場合は×、製造時間が中程度、製造労力の負担が中程度の場合は△、製造時間が短く、製造労力の負担が軽い場合は○とした。なお、比較例3は、コーティング層を施していないため、評価対象外ということで“−”としている。
【0060】
その結果、本発明例1、本発明例3、本発明例4、本発明例6は何れも製造容易性が○であったのに対して、比較例13は、2層をコーティングしなければならず、製造容易性が△であった。
【0061】
以上より、水鍋変色試験の総合評価が○以上であり、かつ製造容易性が○であるのは、何れも本発明例1、3、4、6であることが分かる。
【0062】
以上の実験結果から、金属層11のみではアルミニウム含有の有無により、変色防止の耐久性の差異は確認出来ないが、金属層11としてアルミニウムを含有させ、更にこの金属層11の上層にケイ素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物の何れかを含有する単層からなるコーティング層12を形成された本発明例は金属層11としてアルミニウムを含有しないものの上層に上述したコーティング層12を形成された場合と比較して、変色防止耐久性が著しく向上することが分かった。
【0063】
更にこのコーティング層12がケイ素化合物を含む単層であった場合、アルミニウムを含まない金属層で2層膜を積層させた比較例を超える変色防止耐久性を単層で発揮できることがわかった。
【0064】
また、比較例13も同様にアルミニウム含有基材の効果が示され、更なる耐久性向上が可能であるが、2層に亘り積層させることで材料コストが過大になってしまい、積層工程が増加することによる製造労力の増大、製造時間の長期化の観点から本発明例よりも劣る点があることが分かった。