特許第6978841号(P6978841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6978841調理器具用の表面処理金属部材、調理器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978841
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】調理器具用の表面処理金属部材、調理器具
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20211125BHJP
   A47J 36/02 20060101ALI20211125BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20211125BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20211125BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   C23C26/00 C
   A47J36/02 B
   B32B9/00 A
   B32B15/01 B
   F24C15/10 B
   F24C15/10 D
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-36879(P2017-36879)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-141210(P2018-141210A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】今泉 宏信
(72)【発明者】
【氏名】疋田 拓摩
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−126011(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/190406(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/037242(WO,A2)
【文献】 特開平03−111583(JP,A)
【文献】 国際公開第1990/015786(WO,A1)
【文献】 特開昭64−047880(JP,A)
【文献】 特開平01−280426(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0269310(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0138661(US,A1)
【文献】 皆吉達 他,減圧プラズマ溶射したZrO2被膜の特性とHIP処理の効果,窯業協会年会講演予稿集,1987年05月,Vol.1987,No.1,pp.9-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C26/00−28/04
F24C1/00−15/36
A47J9/00−47/20
B32B15/00−15/20
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動態被膜が形成された金属層の表面にコーティング層が形成された調理器具用の表面処理金属部材において、
上記金属層は、アルミニウムを含有するステンレス鋼材であり、
上記コーティング層は、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物の何れかを含有する単層からなるとともに、
上記コーティング層は、透明性を呈し、前記金属層の金属色を表面に表す構成であること
を特徴とする調理器具用の表面処理金属部材。
【請求項2】
上記コーティング層は、上記ケイ素化合物としてケイ酸化合物、上記ジルコニウム化合物として酸化ジルコニウム化合物の何れかを含有する単層からなることを特徴とする請求項1記載の調理器具用の表面処理金属部材。
【請求項3】
加熱される金属部材を有し、
請求項1又は2項記載の調理器具用の表面処理金属部材が当該金属部材に使用されることを特徴とする調理器具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロ、グリル、五徳、ライター、鍋等の調理器具のように加熱時に直火が触れる器具に使用される金属部材において、高温による金属の酸化を防止することにより、その変色を長期にわたり効果的に防止することが可能な調理器具用の表面処理金属部材、並びにこれが使用される調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼は、厚さ数nm〜十数nm程度の極めて薄い保護性の高い不動態皮膜を有しており、美麗な金属光沢を保ちながら優れた耐食性、耐熱性を呈する。このため従来より、ガスコンロ、グリル、五徳、ガスバーナー等のように加熱時に直火が触れる加熱器具や、ヒータ部品や乾燥焼成炉、ボイラー配管等のような高温環境下において使用される機器を構成する材料として用いられている。
【0003】
但し、このステンレス鋼は、上述の如き高温環境下において、その表面が変色し着色する、いわゆるテンパーカラーが発生する場合がある。このようなステンレス鋼の変色は、高温により当該ステンレス鋼が酸化して酸化物層が形成されることに基づくものである。この酸化物層の厚さが光の波長と一致する場合に、反射光が干渉して色の違いとして認知されるものである。このような酸化による変色が金属部材としてのステンレス鋼表面に現れると、外観や意匠性が急激に劣化した印象を与えてしまう。特に五徳やガスコンロ、ガスバーナー等の加熱器具は、購入時からそれほど日数が経過していないにも関わらず、直火に触れただけでこのような変色が現れてしまう場合があり、使用し尽くされて急激に古くなった印象を与えてしまう。
【0004】
このため、高温環境下においてステンレス鋼の酸化に基づく変色を防止することができる技術が従来より研究されている。先ず特許文献1には、表面にアルカリ珪酸塩皮膜を有するステンレス鋼材において、鋼素地とアルカリ珪酸塩皮膜の間に厚さ5〜100nmの反応層が介在させる技術が開示されている。この反応層を通じて、鋼材表面を覆うアルカリ珪酸塩皮膜への原子の拡散を抑制し、テンパーカラーの発生要因となるCr−Fe−O系酸化物層の生成を食い止め、変色を防止することを期待したものである。
【0005】
また特許文献2には、ステンレス鋼の表面にポリシラザンからなるケイ酸化合物膜を形成させる技術が開示されている。このケイ酸化合物は、酸素の拡散が遅い酸化物であることから、ステンレス鋼の表面近傍において生じる酸化の進行が抑制されることで、変色を防止することを期待したものである。
【0006】
また特許文献3には、窒化シリコン膜によるガスバリアフィルムの技術が開示されている。化学気相成長法により堆積された窒化シリコン膜は透明で高いガスバリア性を持つ。この特許文献3の開示技術は、ガスバリア性の高い透明膜を成膜する技術のため、金属上に成膜することで酸化防止の効果が期待できる。
【0007】
また特許文献4には、アルミナ薄膜を酸化抑制被膜に用いる技術的思想が開示されている。アルミナ薄膜は優れた成膜性、緻密性、熱安定性、電気絶縁性などを併せ持ち、高温環境下においてステンレス鋼の酸化に基づく変色を防止することを期待したものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1−4の開示技術によれば、確かに高温下においてステンレス鋼の酸化に基づく変色を防止はできるものの、長時間の高温使用により徐々に基材の酸化が進み、特に700℃を超えるような超高温域ではテンパーカラーに対しての耐久性が不足するという問題点があった。
【0009】
また特許文献5、特許文献6には、ステンレス鋼中にAlを含有することで酸化を抑制する技術が開示されている。ステンレス中にAlを含有することでAl由来の酸化被膜を形成させることで確かに酸化は抑制されるが、その酸化抑制効果は高温での酸化による酸化増量や脆弱化を防止するに留まり、高温環境下で外観上の変色を防止するまでには至らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−231551号公報
【特許文献2】特開2015−44300号公報
【特許文献3】特開2004−292877号公報
【特許文献4】特開2013−216760号公報
【特許文献5】特開2002−339048号公報
【特許文献6】特表2005−504176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、高温環境下においての酸化による変色を長期にわたって防止することが可能な表面処理金属部材、特に調理器具用の表面処理金属部材、並びにこれが使用される加熱器具、特に調理器具を提供することにある。すなわち、本発明の目的は、塗膜によるテンパーカラー抑制の耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述した課題を解決するために、アルミニウムを含有する不動態被膜が形成されたステンレス鋼材の表面に単層のコーティング層が形成された調理器具用の表面処理金属部材であって、コーティング層は、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物の何れかを含有するとともに、上記コーティング層は、透明性を呈し、前記金属層の金属色を表面に表す構成である調理器具用の表面処理金属部材、並びにこれが使用される調理器具を発明した。
【0013】
第1発明に係る調理器具用の表面処理金属部材は、不動態被膜が形成された金属層の表面にコーティング層が形成された調理器具用の表面処理金属部材において、上記金属層は、アルミニウムを含有するステンレス鋼材であり、上記コーティング層は、ケイ素化合物、ジルコニウム化合物の何れかを含有する単層からなるとともに、上記コーティング層は、透明性を呈し、前記金属層の金属色を表面に表す構成であることを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る調理器具用の表面処理金属部材は、第1発明において、上記コーティング層は、上記ケイ素化合物としてケイ酸化合物、上記ジルコニウム化合物として酸化ジルコニウム化合物の何れかを含有する単層からなることを特徴とする。
【0016】
発明に係る調理器具は、加熱される金属部材を有し、第1発明又は第3発明の調理器具用の表面処理金属部材が当該金属部材に使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述した構成からなる本発明によれば、コーティング層を構成するケイ素化合物、ジルコニウム化合物のガスバリア性により基材の酸化を抑制することができる。また本発明によれば、金属層を構成するステンレス鋼中にアルミニウムを含有させることにより、アルミニウムが含有しないステンレスに対し、高温環境下に長時間さらした場合に、酸化による変色を肉眼で検知できるまでの時間をより長期化させることができ、いわゆる耐久性を向上させることができる。この耐久性の向上は、基材同士の酸化変色防止耐久性の差からは類推できないほど著しい効果のあるものである。
【0018】
更に本発明によれば、長時間に亘り金属光沢状態を保持できるため、意匠性に優れた調理器具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用した表面処理金属部材が適用される加熱器具を示す図である。
図2】本発明を適用した表面処理金属部材を構成する各層について説明するための図である。
図3】ガスバーナーの表面を構成する金属部材の上層にコーティング層を形成させた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した表面処理金属部材について、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0021】
本発明を適用した表面処理金属部材は、例えば図1(a)に示すような加熱調理時において直火が触れる加熱器具としての五徳3等に使用される。五徳3は、システムキッチンにおけるガスコンロ2に用いられる。五徳3は、ガスコンロ2の周囲から中心に向けて延長される爪の如き形状で構成される場合が多く、やかんや鍋等の加熱用容器が載置される。五徳3は、ガスコンロから出火される直火の近傍に位置するため、700℃以上もの高温環境下で使用される場合が多く、直火に触れる場合には1000℃以上もの高温環境下で使用される場合が多い。
【0022】
このような五徳3を構成する表面処理金属部材におけるB−B´断面図を図1(b)に示す。この五徳3を構成する表面処理金属部材は、その基材としての金属層11と、この金属層11の表面を覆うように被膜され積層されたコーティング層12とを備えている。
【0023】
金属層11は、例えばステンレス鋼を始めとした金属で構成されている。この金属層11は、そのステンレス鋼の中でもアルミニウムを含有してなることが必須となる。ステンレス鋼は、添加されたCrが空気中の酸素と結合することで厚さ数nm〜十数nm程度の極めて薄い保護性の高い不動態皮膜を形成させる。この不動態皮膜は、優れた耐食性、耐熱性を呈する。即ち、五徳3は、錆の発生については、この不動態皮膜が形成された金属層11により防止することができる。
【0024】
ちなみに、この金属層11を構成するステンレス鋼の例としては、少なくともアルミニウムを含有させたステンレス鋼等を使用する。このときステンレス鋼全重量に対するアルミニウムの含有量は、特に制限されるものではないが、例えば1〜12重量%とされていることが望ましく、2〜4重量%とされていることが更に望ましい。
【0025】
コーティング層12は、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物の何れか1種類を含有する単層で構成されている。
【0026】
コーティング層12は、ケイ素化合物を含有する層で構成されている場合には、そのケイ素化合物の例としては、Siを有する化合物であれば全てを含む概念であり、例えば、脱水縮合したシリコンテトラエトキシドや、ポリシラザン、シロキサン、ケイ酸塩、窒化ケイ素、炭化ケイ素等である。但し、このケイ素化合物は、これらの例に限定されるものではない。
【0027】
コーティング層12は、アルミニウム化合物を含有する層で構成されている場合には、そのアルミニウム化合物の例としては、Al23、窒化アルミニウム、ムライト、スピネル等である。但し、このアルミニウム系化合物は、これらの例に限定されるものではない。
【0028】
コーティング層12は、ジルコニウム化合物を含有する層で構成されている場合には、そのジルコニウム化合物の例としては、ZrO2、安定化ジルコニア、ジルコン等である。但し、このジルコニウム化合物は、これらの例に限定されるものではない。
【0029】
コーティング層12は、透明性を呈する材料で構成されていることで、自身が被覆する金属層11の金属色を表面に積極的に現すことが可能となる。但し、コーティング層12は、透明性を呈する材料以外で構成されていてもよいことは勿論である。
【0030】
コーティング層12を構成するケイ素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物は、空気中の酸素が金属基材を酸化する事を抑制するバリア層として機能することで、いわゆる酸化の変色によるテンパーカラーが発生してしまうのを防止することができる。
【0031】
上述した構成からなる表面処理金属部材を有する五徳3の作用について、以下説明をする。五徳3に載置した調理用容器をガスコンロ2による直火で加熱した場合、五徳3は直火の近傍に位置し、場合によっては直火が直接触れることとなる。その結果、五徳3は、1000℃を超える高温環境下に置かれることとなる。また直接直火に触れない場合においても、その直火の近傍においては700℃以上もの高温環境下におかれることとなる。
【0032】
かかる場合において、コーティング層12は、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物を介して、空気中の酸素が金属基材に到達することを抑制することで高温環境下で酸化するのを防止することができ、変色してしまうのを防止することができる。更に金属層11を構成するステンレス鋼中にアルミニウムが含有してなることにより、アルミニウムが含有しないステンレスに対し本件発明のコーティング層12を施したものや、アルミニウムが含有する耐熱ステンレスにコーティングを施さないものに比べ、700℃を超える高温環境下に長時間さらした場合に、酸化による変色を肉眼で検知できるまでの時間が著しく長時間になった。このように、酸化による変色防止の耐久性が著しく向上する作用が生まれる。
【0033】
なお本発明は、火が直接当たる五徳3のような器具に適用される場合以外に、火が直接当たらないものの、高温における耐久性が求められる対象物に適用される。本発明は、五徳3以外にガスコンロやグリル、ライター、鍋等のような加熱器具に適用される場合に限定されるものではなく、高温環境下において使用される金属部材であればいかなるものに適用されるものであってもよい。例えば、図3に示すようなガスバーナー5やヒータ部品、ストーブ、排気管、ボイラー配管等に本発明を適用するようにしてもよいことは勿論である。仮に図3に示すガスバーナーにおいても、その表面を構成する金属部材を構成する金属層11の上層にコーティング層12が形成されている。そして、この金属層11は、アルミニウムを含有するステンレス鋼材で構成されている。
【0034】
また本発明によれば、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物の何れかからなるコーティング層12を単層で構成しても、アルミニウムを含有するステンレス鋼材に被覆することにより、酸化による変色防止効果を発現させることができる。このため、特に直接火が当たらない箇所において酸化による変色防止の耐久性を向上させることを目的とするのであれば、コーティング層12を2層以上で構成する場合と比較して、材料コストを低減させることができ、積層工程を減らすことによる製造労力の軽減、ひいては製造時間の短縮化を図ることも可能となる。
【0035】
また本発明は、これらに限定されるものではなく、高温に加熱される金属部材を有するいかなる器具に適用されるものであってもよい。かかる場合にはアルミニウムを含有するステンレス鋼材で構成されている当該金属部材の上層にコーティング層12が形成されることとなる。
【実施例1】
【0036】
以下、本発明を適用した表面処理金属部材の効果を確認するために行った実験的検証について詳細に説明をする。
【0037】
この実施例1における実験的検証においては、先ず表1に示すように複数種のサンプルを作成し、水鍋変色試験を行った。
【0038】
【表1】
【0039】
サンプルは、金属層11のみで構成し、その表面に何らコーティング層12を積層させない比較例1〜4と、アルミニウムを含まない金属層11上に上述した成分を含有するコーティング層12を単層に亘り積層させた比較例5〜11と、アルミニウムを含む金属層11上に上述した成分を含有するコーティング層12を単層に亘り積層させた本発明例1〜7と、金属層11上に上述した成分を含有するコーティング層12を2層に亘り積層させた比較例12、13からなる。
【0040】
比較例1、2並びに5〜12については、金属層11として、アルミニウムを含有しないステンレス鋼(SUS304)、アルミニウムを含有しないステンレス鋼(SUS430)を使用し、本発明例1〜7並びに比較例2、3、13については金属層11としてステンレス鋼全重量に対して4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼(15Cr−4Al−LC,N)、金属層11としてステンレス鋼全重量に対して2重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼(18Cr−2Al−Ti)を使用している。
【0041】
比較例5、6並びに本発明例1、2では、ケイ素化合物主体膜Aとして、濃度10%の平均直径25nm以上のシリカが主体となった結晶分散液をコーティング層12として塗布している。
【0042】
比較例7並びに本発明例3ではケイ素化合物主体膜Bとして、濃度20%のポリシラザンをコーティング層12として塗布している。
【0043】
比較例8、9並びに本発明例4、5では、アルミニウム化合物主体膜として、濃度3%、平均直径200nm以上の水酸化アルミニウムナノ粒子分散液をコーティング層12として塗布している。
【0044】
比較例10、11並びに本発明例6、7では、ジルコニウム化合物主体膜として、平均直径10nm以上のジルコニウムナノ粒子分散液をコーティング層12として塗布している。
【0045】
比較例12、13では、上述したケイ素化合物主体膜Aを金属層の直上に積層させ、このケイ素化合物主体膜Aの直上に上述したアルミニウム化合物主体膜を積層させた2層構造としている。
【0046】
上述した各サンプルについて水鍋変色試験による実験的検証を行った。水鍋変色試験ついては、ステンレス鋼からなる金属層11を有する鍋(直径24cm)に2lの水を入れ、4.4kWのハイカロリーバーナーで1時間連続で加熱することを繰り返し行い、JIS K5600-4-3(光源のみLED(オーム電機LEDPL48W)を使用している)に則り変色を目視評価した。この水鍋変色試験ついては、床面壁面が全て白色(SCI値が90.61)の部屋にて行い、観察位置の照度は、約2300Luxであった。
【0047】
なお、表1では金属層11にアルミニウムを含有しない金属の代表としてSUS304、アルミニウムを含有する金属の代表として4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼 (15Cr−4Al−LC,N)を例にとり、アルミニウム含有金属での変色防止耐久性向上効果を倍率で表した。この変色防止耐久性向上効果は、
変色防止耐久性向上効果=(4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼の供試体における変色開始時間(h))/(SUS304のサンプルにおける変色開始時間(h))
で表される。この変色防止耐久性向上効果が3倍以上確認され、更に変色防止耐久性が310hを超えるものを◎、アルミニウム含有基材の効果が3倍以上確認されるが変色防止耐久性が310hを下回るものを○、アルミニウム含有基材の効果が確認されないものを×とし、総合評価を行った。
【0048】
水鍋変色試験では、上述した条件の下での目視評価を行った。先ず比較例1〜4としてアルミニウムを含有しないSUS304、SUS430並びに4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼、2重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼についてコーティングを行わない状態で水鍋変色試験を行い、変色開始時間を測定した。
その結果、変色開始時間は基材によらず2分であった。このことから何らコーティングを行わない状態ではアルミニウム含有基材の変色防止耐久性向上効果は確認されず、総合評価は×となった。
【0049】
次に比較例5〜7としてアルミニウムを含有しないSUS304、SUS430について、本発明例1〜3として4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼、2重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼について、本発明例のコーティング条件の下でケイ素化合物主体膜A並びにケイ素化合物主体膜Bのコーティングを行い、それぞれについて水鍋変色試験を行い、変色開始時間を測定した。その結果、比較例5〜7の変色開始時間は全て110時間であったが、本発明例1〜3は全て470時間時点でも変色は確認されなかった。
【0050】
このことから、ケイ素化合物を含むコーティング層12をアルミニウムを含有する金属層11上に積層させることにより、アルミニウムを含有しない金属層11上に積層させた際と比べ、変色防止耐久性向上効果は少なくとも4倍以上となることがわかり、その耐久性もアルミニウムを含まない金属層11において最も変色防止耐久性の良い2層膜の比較例12の310時間を超えることから、総合評価は◎となった。
【0051】
次に比較例8、9としてアルミニウムを含有しないSUS304、SUS430について、本発明例4、5として4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼、2重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼について本発明例のコーティング条件の下でアルミニウム化合物主体膜のコーティングを行い、それぞれについて水鍋変色試験を行い、変色開始時間を測定した。
【0052】
その結果、比較例8、9はそれぞれ変色開始時間が10時間、4時間であったが、本発明例4、5では何れも145時間時点でも変色は確認されなかった。
このことから、アルミニウム化合物を含むコーティング層12をアルミニウムを含有する金属層11上に積層させることにより、アルミニウムを含有しない金属層11上に積層させた際と比べ、変色防止耐久性向上効果は少なくとも14.5倍以上となることがわかり、アルミニウム含有基材の効果は確認されたが、その耐久性は310時間を超えていないため、総合評価は○となった。
【0053】
次に比較例10、11としてアルミニウムを含有しないSUS304、SUS430について、本発明例6、7として4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼、2重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼について本発明例のコーティング条件の下でジルコニウム化合物主体膜のコーティングを行い、それぞれについて水鍋変色試験を行い、変色開始時間を測定した。
【0054】
その結果、比較例10、11の変色開始時間は何れも45分であったが、本発明例6、7の変色開始時間はそれぞれ4時間、18時間であった。
【0055】
このことから、ジルコニウム化合物を含むコーティング層12を、アルミニウムを含有する金属層11上に積層させることにより、アルミニウムを含有しない金属層11上に積層させた際と比べ、変色防止耐久性向上効果は5倍となることがわかり、アルミニウム含有基材の効果は確認されたが、その耐久性は310時間を超えていないため、総合評価は○となった。
【0056】
次に比較例12、13としてアルミニウムを含有しないSUS304、4重量%のアルミニウムを含有するステンレス鋼について本発明例のコーティング条件の下で上述したケイ素化合物Aを金属層の直上に積層させ、このケイ素化合物Aの直上に上述したアルミニウム化合物主体膜を積層させるコーティングを行い、それぞれについて水鍋変色試験を行い、変色開始時間を測定した。
【0057】
その結果、比較例12の変色開始時間は310時間であり、比較例13の変色開始時間は1700時間であった。
【0058】
このことから、ケイ素化合物を含むコーティング層とアルミニウム化合物を含むコーティング層の2層構造を持つコーティング層12を、アルミニウムを含有する金属層11上に積層させることにより、アルミニウムを含有しない金属層11上に積層させた際と比べ、変色防止耐久性向上効果は5.5倍となることがわかり、その耐久性も310時間を超えることから、総合評価は◎となった。
【0059】
また、本実施例においては製造容易性についても評価した。製造容易性は、アルミニウムを含む金属層11(15Cr−4Al−LC,N)に対してそれぞれコーティング層を積層させた本発明例1、本発明例3、本発明例4、本発明例6、比較例13について評価した。製造容易性の評価指標は、コーティング層をコーティングする上での時間を計測すると共に、実際のコーティングの労力の負担について作業者に3段階で評価してもらい、製造時間が長く、製造労力の負担が大きい場合は×、製造時間が中程度、製造労力の負担が中程度の場合は△、製造時間が短く、製造労力の負担が軽い場合は○とした。なお、比較例3は、コーティング層を施していないため、評価対象外ということで“−”としている。
【0060】
その結果、本発明例1、本発明例3、本発明例4、本発明例6は何れも製造容易性が○であったのに対して、比較例13は、2層をコーティングしなければならず、製造容易性が△であった。
【0061】
以上より、水鍋変色試験の総合評価が○以上であり、かつ製造容易性が○であるのは、何れも本発明例1、3、4、6であることが分かる。
【0062】
以上の実験結果から、金属層11のみではアルミニウム含有の有無により、変色防止の耐久性の差異は確認出来ないが、金属層11としてアルミニウムを含有させ、更にこの金属層11の上層にケイ素化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物の何れかを含有する単層からなるコーティング層12を形成された本発明例は金属層11としてアルミニウムを含有しないものの上層に上述したコーティング層12を形成された場合と比較して、変色防止耐久性が著しく向上することが分かった。
【0063】
更にこのコーティング層12がケイ素化合物を含む単層であった場合、アルミニウムを含まない金属層で2層膜を積層させた比較例を超える変色防止耐久性を単層で発揮できることがわかった。
【0064】
また、比較例13も同様にアルミニウム含有基材の効果が示され、更なる耐久性向上が可能であるが、2層に亘り積層させることで材料コストが過大になってしまい、積層工程が増加することによる製造労力の増大、製造時間の長期化の観点から本発明例よりも劣る点があることが分かった。
【符号の説明】
【0065】
2 ガスコンロ
3 五徳
5 ガスバーナー
11 金属層
12 コーティング層
図1
図2
図3