(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について、以下、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明の触媒調製の手順を示すフローチャートである。
【0025】
本発明は、水素ガスと二酸化炭素ガスとからなる原料ガスを炭化水素に変換する炭化水素合成触媒であって、Feよりなる第1の金属のイオンと、Cu、Zn、Mn、Ruからなる群から選択される1種類以上よりなる第2の金属のイオンとを溶解させた水溶液に担持体を含浸、乾燥、焼結させる担持化処理を1回のみ、かつ、担持体の表面にのみ実施することで得られる炭化水素合成触媒である。
【0026】
これにより、触媒の連鎖成長確率を向上させ、合成される炭化水素の長鎖化を図ることが可能となる。
【0027】
即ち、従来より知られているフィッシャー・トロプシュ合成触媒(炭化水素合成触媒)に着目し、その炭化水素合成触媒におけるFeよりなる第1の金属のイオンと、炭化水素合成に相乗効果のある第2の金属のイオンとを溶解させた水溶液に担持体を含浸、乾燥、焼結させる担持化処理を1回のみ、かつ、担持体の表面にのみ実施することで、炭化水素の長鎖化はもとより二酸化炭素転換率を向上させることが可能となる。
【0028】
ここで、前記担持化処理は、前記金属イオンの水溶液に対して1回かつ担持体の表面にのみ実施する。
【0029】
すなわち、
図1に示すように、先ず、所望の量の担持体に前処理を実施する(S201)。当該前処理には、加熱による担持体表面の吸着不純物の除去と、有機溶媒への浸漬による担持体内部の細孔の閉塞が含まれる(S201)。
【0030】
その後に、第1の金属のイオンと第2の金属のイオンとを溶解させた水溶液に、前記前処理後の担持体を含浸させる(S202)。当該含浸処理後の担持体を乾燥させ(S203)、当該乾燥後の担持体を焼結させて(S204)、担持化処理を完了する。最後に、焼結後の担持体を水素還元して(S205)、本発明に係る炭化水素合成触媒の製造を完了する。
【0031】
担持体としては通常γ−酸化アルミニウムを使用するが、γ−酸化アルミニウムの担持体には無数の細孔が表面から内部に渡って空いており、前記含浸処理で、触媒となる金属イオンが当該細孔に含浸されることになるが、ここでは前記の前処理において、加熱処理後に、有機溶媒浸漬により細孔を塞いでいるので、金属イオンは担持体の表面にしか付着しないことになる。
【0032】
又、前記担持化処理は、特定の金属イオン濃度の水溶液での担持化処理を1回のみ実施する。
【0033】
ここで、前記水溶液は、連鎖成長確率の向上の観点から、Feよりなる第1の金属のイオンと、Cu、Zn、Mn、Ruよりなる群から選択される1種類以上よりなる第2の金属のイオンとを溶解させた水溶液であるのが好ましい。又、水溶液中の第1の金属のイオンの濃度と、第2の金属のイオンの濃度にそれぞれ限定は無いが、例えば、水溶液中の前記第1の金属のイオンの濃度と、第2の金属のイオンの濃度は、飽和濃度でも、それ以外の濃度でも構わない。又、前記第1の金属に対する前記第2の金属の重量比率は、0.01〜0.10の範囲内であるのが好ましい。
【0034】
又、前記担持体は、連鎖成長確率の向上の観点から、γ−酸化アルミニウム(Al
2O
3)であるのが好ましいが、他のタイプの酸化アルミニウム(Al
2O
3)、二酸化珪素(SiO
2)、酸化チタン(TiO
2)等でも構わない。
【0035】
また、前記担持体の体積は特に限定はないが、例えば、粒径は、2.0mm〜5.0mmの範囲の粒状であるのが好ましい。後述する実施例に用いる担持体は、前記のように有機溶媒浸漬により中実部の細孔を塞いでいるので、比表面積を議論する余地はないが、細孔を塞ぐ前の担持体は、比表面積(m
2/g)は、150m
2/g〜400m
2/gの範囲内である。更に、見かけ密度(g/mL)は、0.4g/mL〜0.8g/mLの範囲内である。
【0036】
前記担持化処理の前処理として、担持体を加熱して、当該担持体に予め付着した水分や有機物等の不純物の除去を行う。加熱処理温度は900〜1100度であるのが好ましい。さらに好ましくは1000〜1100度である。室温から加熱処理温度に達するまでの昇温速度については限定されず、例えば1時間に200〜300度の割合での昇温速度が挙げられる。加熱処理温度に達した後、同温度で0.5〜2時間保つのが好ましい。加熱処理時の雰囲気は、大気中など酸化性の雰囲気であることが好ましい。なお、この前処理は複数回繰り返してもよい。
【0037】
前記加熱処理後に、前記のように担持体を有機溶媒に浸漬して表面から内部に渡って空いている細孔を塞ぐ処理を施す。但し、この段階で乾燥処理をしないで次の担持化処理に移行する。
【0038】
担持化処理では、少なくとも第1の金属と第2の金属とを担持させれば、上述した効果を奏するが、更に、第3の金属を追加して担持させても構わない。例えば、炭化水素合成に相乗効果のあるアルカリ金属、例えば、Kよりなる第3の金属のイオンを前記水溶液に溶解させて、前記担持体に第3の金属を担持させても良い。
【0039】
また、前記水溶液は、第1の金属イオンと第2の金属イオンとの組み合わせを満たしていれば、特に限定はないが、例えば、Feよりなる第1の金属のイオンと、Cuよりなる第2の金属のイオンとKよりなる第3の金属のイオンとを溶解させた水溶液、Feよりなる第1の金属のイオンとZnよりなる第2の金属のイオンとを溶解させた水溶液、Feよりなる第1の金属のイオンとMn及びRuの第2の金属のイオンとを溶解させた水溶液を挙げることが出来る。
【0040】
水溶液中の第1の金属のイオンの濃度と、第2の金属のイオンの濃度にそれぞれ限定は無いが、例えば、水溶液中の前記第1の金属のイオンの濃度と、Cuの第2の金属のイオンの濃度は、飽和濃度でも、それ以外の濃度でも構わない。又、前記第1の金属に対する前記第2の金属の重量比率は、0.01〜0.10の範囲内であるのが好ましい。
【0041】
Kよりなる第3の金属イオンを用いる場合の重量比率は第1の金属イオンに対して0.10〜0.50の範囲であることが好ましい。つまり、重量比率として、第1の金属イオン:第2の金属イオン:第3の金属イオン=1:0.01〜0.10:0.10〜0.50であることが好ましい。
【0042】
Feイオン源となる化合物は、水溶媒中で溶解し2価のFeイオンを生成するものであれば特に限定されず、硝酸鉄(II)や、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)や酢酸鉄(II)などが挙げられる。これらの化合物の中でも、硝酸鉄(II)、酢酸鉄(II)が好ましく、硝酸鉄(II)が特に好ましい。
【0043】
Cuイオン源となる化合物は水溶媒中で溶解し2価のCuイオンを生成するものであれば特に限定されず、硝酸銅(II)や、塩化銅(II)、硫酸銅(II)や酢酸銅(II)などが挙げられる。これらの化合物でも、硝酸銅(II)、酢酸銅(II)が好ましく、硝酸銅(II)が特に好ましい。
【0044】
Kイオン源となる化合物は水溶媒中で溶解しKイオンを生成するものであれば特に限定されず、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。特に好ましいのは硝酸カリウムである。また、水溶液には、水溶媒に混和するものであれば有機溶媒などを加えてもかまわない。
【0045】
前記担持化処理は、特定濃度の金属イオン濃度の水溶液で1回のみ実施する。後に実施例で示すように2回以上実施しても、二酸化炭素転換率および連鎖成長率を期待する程向上させることはできない。
【0046】
ここで、前記担持化処理における含浸方法に特に限定は無いが、例えば、前記金属イオンの水溶液を充填した容器に、前記前処理後の担持体を投入し、担持体の表面のみに金属のイオンを吸着させる方法を挙げることが出来る。このとき、攪拌装置で攪拌してもよい。
【0047】
担持体への金属イオンの担持量は、担持体に対し、担持する金属の総量として5wt%〜50wt%の範囲にあることが好ましい。金属担持量が5wt%より少ないと十分な触媒活性が得られない。一方50wt%より多いと担体表面上に金属成分が積層する形となり、触媒使用時に粉化する恐れがある。アルコール合成反応中に金属成分が粉化すると、配管の閉塞等の不具合が生じる。より好ましい金属イオンの担持量は10wt%〜30wt%の範囲である。
【0048】
また、前記担持化処理における乾燥方法は特に限定は無いが、例えば、イオンを吸着後の担持体を、デシケーター内に入れ、特定の時間間隔で当該担持体を撹拌し、乾燥時の固着を抑制するため、当該担持体の表面が乾燥するまで、デシケーター内で乾燥し、前記担持体表面の水分が無くなった時点で、高温の恒温器内に投入し、特定の保持時間保持して、前記担持体を乾燥させる方法を挙げることが出来る。乾燥温度の好ましい範囲は80〜150度である。また、保持時間の好ましい範囲は1〜24時間である。
【0049】
乾燥後、さらに、担持体を焼結する。焼結方法に特に限定は無いが、例えば、前記乾燥後の担持体を、磁性るつぼに入れて電気炉内で加熱後保持時間なしで自然冷却する方法を挙げることが出来る。
【0050】
焼結温度は400〜600度であることが好ましい。400度未満では金属イオン源に含まれる金属以外の成分(硝酸根など)を分解除去することができない。一方、600度を超えると金属のシンタリングが進むため好ましくない。焼結温度のさらに好ましい範囲は、400〜500度である。
【0051】
焼結時の雰囲気は大気中など酸化性の雰囲気であることが好ましい。
【0052】
さらに、前記担持化処理の後処理として、焼結工程の後段階で、前記担持体に水素還元を実施する。前記水素還元の方法は限定されないが、例えば、前記担持体をガラス管内に入れて、当該ガラス管内をヘリウムガス(He)又はアルゴンガス(Ar)で置換し、その後、前記ガラス管内に水素ガス(H
2)を含むアルゴンガス(Ar)を特定の流量で流通させながら昇温し、その温度で保持し、その後、自然冷却し、冷却後にヘリウムガス又はアルゴンガスでガス置換する方法を挙げることが出来る。
【0053】
水素還元処理は、担持体上に担持された金属を金属状態まで還元するために行う。担持された金属が完全に酸化、あるいは表面が酸化された状態だとCO
2の吸着、水素化および連鎖成長に対して有効な触媒活性が発現しない。
【0054】
還元処理時の温度および昇温速度、保持時間、還元雰囲気中の水素濃度は、担持した金属が上述した状態にできるのであれば、限定はない。例えば、好ましい実施形態として、温度は300〜500度、昇温速度は1時間に200〜300度の割合、保持時間は0.5〜2時間、水素濃度は1〜20mol%を例示することができる。
【0055】
以上の処理をして
図8の右端に開示するような触媒を得ることができるが、当該触媒については、
図8に示す他(左端、中央の)の比較例とともに、後に詳しく説明する。
【0056】
更に、本発明は、炭化水素合成触媒を用いた炭化水素製造装置又は炭化水素製造方法を提供することが出来る。
【0057】
具体的には、本発明に係る炭化水素製造装置は、反応部と、原料ガス供給部と、回収部と、を備える。
【0058】
反応部は、触媒用の容器に、前記炭化水素合成触媒を充填し、前記炭化水素合成触媒の活性化温度で保持して、原料ガスを反応させる。原料ガス供給部は、前記容器に、前記炭化水素合成触媒の活性化温度で、1.0MPa以上の原料ガスを供給する。回収部は、前記容器で、変換された炭化水素を回収する。これにより、連鎖成長確率が高い炭化水素を得ることが出来る。又、反応条件に応じて、連鎖成長確率とともに二酸化炭素変換率を向上させることが可能となる。尚、炭化水素製造方法であっても同様である。
【0059】
ここで、前記炭化水素合成触媒の活性化温度は、第2の金属の種類に応じて適宜変更されるものの、例えば、Feよりなる第1の金属に対してCuよりなる第2の金属を組み合わせた場合、その触媒の活性化温度は、240度〜300度の範囲内とされる。又、Feよりなる第1の金属に対してZnよりなる第2の金属を組み合わせた場合、その触媒の活性化温度は、260度〜300度の範囲内とされる。更に、Feよりなる第1の金属に対してMn及びRuの第2の金属とを組み合わせた場合、その触媒の活性化温度は、260度〜300度の範囲内とされる。
【0060】
又、前記炭化水素合成触媒に接触させる原料ガスの圧力は、1.0MPa以上であれば、特に限定はないが、例えば、2.0MPa以上であると好ましく、2.5MPa以上であると更に好ましい。これにより、原料ガスを本触媒の担持金属の活性点に接触し易くするため、連鎖成長確率と二酸化炭素転換率とをともに飛躍的に向上させることが可能となる。
【0061】
又、前記原料ガスの空間速度(流量/触媒体積=1/h)に特に限定はないが、例えば、100(1/h)〜2000(1/h)の範囲内であると好ましく、100(1/h)〜1000(1/h)の範囲内であると更に好ましい。これにより、原料ガスと本触媒とを十分に接触させることが可能となるため、連鎖成長確率と二酸化炭素転換率とをともに飛躍的に向上させることが可能となる。
【0062】
又、前記原料ガスのガス組成の物質量比率に特に限定はないが、例えば、生成物が炭化水素であることを考慮すると、水素ガス:二酸化炭素ガス=4:1の物質量比率とされる。
【0063】
又、生成物である炭化水素の連鎖成長確率(−)、二酸化炭素転換率(%)の算出方法に特に限定はなく、公知の方法を採用することが出来る。又、合成された炭化水素の種類に特に限定はなく、パラフィン系炭化水素でもオレフィン系炭化水素のいずれでも構わない。本発明の炭化水素合成触媒では、パラフィン系炭化水素がオレフィン系炭化水素よりも合成されやすい。
【0064】
<実施例、比較例等>
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はその適用が本実施例に限定されるものでない。
【0065】
<触媒調製>
炭化水素合成触媒は、下記の手順により調製した。先ず、前処理として、粒状のγ−Al
2O
3よりなる担持体を匣鉢に充填し常温から1060度まで5時間かけて昇温し、昇温後に、30分間保持し、その後に、自然冷却した。
【0066】
この後、トルエン中に担持体を浸漬させて、細孔内部まで有機溶媒を侵入させるため気泡が出なくなるまで攪拌し、1時間放置することで、当該担持体の細孔を塞いだ(S201)。
【0067】
上記とは別に、前記担持体の表面に担持させる金属イオンを含有する水溶液を用意する。すなわち、前記の担持体600.0g(1Lの容積に相当)に金属を担持させるのに必要な水溶液を得るための原料として、硝酸鉄・九水和物(純度99%),794.7g、硝酸銅(純度99.5%),21.3g、硝酸カリウム,80g、を容器に量りとり、60度で水和物の水分を利用して溶解し、30分攪拌して上記水溶液を得た(S301)。
【0068】
そして、先ず、前記調製した水溶液に、前記前処理後の担持体をトルエンを乾燥させる工程を経ずに投入し、60度で2時間保持し、前記水溶液中の金属イオンを担持体の表面に吸着させた(S202)。
【0069】
当該付着処理が完了すると、前記金属イオンが吸着した担持体をヌッチェで濾過し、余分な水溶液を分離した後、その表面が乾燥するまで、デシケーター内で乾燥し、その際に、30分毎に撹拌を行った。そして、担持体表面の水分が見えなくなった時点で、予め120度に設定した乾燥機内に入れて、2時間保持して、前記担持体を乾燥させた(S203)。
【0070】
更に、前記乾燥させた担持体を、磁性るつぼに入れて電気炉内で常温から430度まで2時間かけて昇温させ、その後、自然冷却した。これにより、前記担持体を焼結した(S204)。
【0071】
最後に、前記焼結した担持体をガラスボードへ移し、環状炉に設置したガラス管内に充填し、当該担持体の水素還元を行った(S205)。
【0072】
この水素還元は、下記の手順で行った。先ず、前記ガラス管内をヘリウムガス(He)で十分に置換し、その後、アルゴンガス(Ar):水素ガス(H
2)=95mol:5molのモル比の混合ガスを60mL/minの流量でガラス管内に流し、更に、常温から400度まで2時間かけて昇温した。昇温後に、30分間保持し、その後、自然冷却し、室温まで冷却した後に、ヘリウムガスを60mL/minの流量でガス置換して、急激な酸化が生じないように、ヘリウムガスを流したまま、ガラス管出口を開放し、その後10分間放置してから、ヘリウムガスの流入を停止して、10分間、大気に晒した。前記水素還元後の担持体を炭化水素合成触媒とし、これをデシケーター内に保管した。
【0073】
(触媒)
図8は、上段左端が下記比較例1に係る触媒、中央が比較例2にかかる触媒、右端が本願発明(実施例1)に係る触媒の断面写真である。ただし、断面写真の撮影には還元前の状態の触媒を使用した。下段は、全体径に対する触媒部分の厚みの割合を示したものであり、複数のサンプルの平均値を表したモデル図である。更に、表1は前記各触媒の組成、比表面積、細孔容積を示したものである。
【0074】
実施例1に係る炭化水素合成触媒は、上述した触媒調製において例示した金属イオン濃度の水溶液で担持化処理を1回のみかつ担持体の表面にのみ実施することにより調製した。担持体は、粒径が4.5mm前後であるγ−酸化アルミニウム(Al
2O
3)(水澤化学工業株式会社、品名:ネオビードGB−45)を使用した。尚、前記したように、当該担持体の表面から内部に亘っての微細孔はトルエンで塞ぐ処理をした。
【0075】
また、担持させる金属は、Feよりなる第1の金属と、Cuよりなる第2の金属と、Kよりなる第3の金属とを使用し、第1の金属と第2の金属と第3の金属の重量比率をFe:Cu:K=1.00:0.05:0.30とした。
【0076】
表1に示すように、Feのイオンの濃度は8.1wt%、Cuのイオンの濃度は0.4wt%、Kのイオンの濃度は2.4wt%である。
【0077】
図8の右端の写真、および下段に示したモデル図からもわかるように、触媒の層厚は平均で0.92mmで、全体径に対する比率は、40〜50%である。
【0078】
次いで、比較例1に係る炭化水素合成触媒は、上述した触媒調製において前記特定のイオン濃度の水溶液で担持化処理を2回(
図1、S202〜S204)、かつ担持体の表面にのみ実施することにより調製した。その他の触媒調製の条件は、実施例1の条件と同様である。
【0079】
図8の左端の写真からも判るように、触媒の金属が担持体の内部にまで浸透して、表面の触媒層が変色している。なお、下段のモデル図から、層厚は平均0.66mmで、全体径に対する比率は、30%前後である。
【0080】
更に、比較例2に係る炭化水素合成触媒として、前記細孔閉塞処理をしない担持体を用いて調製した。当該触媒は、担持体に前記特定のイオン濃度の水溶液で、2回の担持化処理を実施することにより触媒を調製した。従って、金属は担持体の表面だけでなく中実部にも浸透することになる。
【0081】
図8の中央の写真、および下段のモデル図からも判るように、層厚の平均は1.6mmで、全体径に対する比率は、60%前後となり、金属が担持されない担持体部分の径は本願発明(実施例1)に使用する触媒に比して非常に小さくなっている。
【0082】
前記各触媒の組成、比表面積、細孔容積を表1に示す。
【0084】
<合成反応>
図2は、前記した炭化水素合成触媒を適用した試験装置(製造装置)の概略図である。炭化水素合成触媒を評価するために、
図2に示す試験装置を用いて、一定条件下における炭化水素合成試験を行った。
【0085】
前記試験装置1は、触媒用の容器に、炭化水素合成触媒Cを充填し、前記炭化水素合成触媒Cの活性化温度で保持する反応器10と、前記容器に、1.0MPa以上の原料ガスGを送り込む原料ガスボンベ11と、前記容器で生成される生成物P(炭化水素)を回収する回収部12とを備えている。
【0086】
前記反応器10は、内径が28.4mm又は12.7mmの細管10aを触媒充填用の容器として備え、当該細管10aを環状の電気炉10b内に納め、細管10aの温度を調整出来る構成とした。
【0087】
前記原料ガスボンベ11は、原料ガスの構成成分である水素ガスボンベ、二酸化炭素ガスボンベ、ガス置換のためのアルゴンガスボンベをそれぞれ流量調整器11aと減圧弁11bとを介し前記反応器10に必要なガスを供給する構成となっている。また、前記流量調整器11aと減圧弁11bとを適宜調整することで、原料ガス内の成分比率や成分種の変更、原料ガスの圧力の変更を行うことが可能となる。
【0088】
前記回収部12は、合成された生成物Pをサンプリングするためのサンプリング部12aと、気体状の生成物Pを液化する二つの気液分離器12b、12cとを備えている。前記サンプリング部12aで、生成直後の生成物Pを採取することが出来る。又、前記気液分離器12b、12cで、生成物Pを液化した液状の炭化水素を得ることが出来る。
【0089】
ここで、前記反応器10から出てきた生成物Pを最初に処理する第1の気液分離器12bは、比較的長い冷却器を有する高圧対応の気液分離器であり、この第1の気液分離器12bの後に、入口側の圧力が所定の閾値以上になると出口側を開放する背圧弁12dを介して、第2の気液分離器12cが設置される。この第2の気液分離器12cは、比較的短い冷却器を有する低圧対応の気液分離器であり、出口側にガスメーター12eが設置され、未反応ガスや軽質ガス(炭素数が1〜4の炭化水素)の排気ガスが外部へ排出されるように構成されている。前記二つの気液分離器12b、12cには、それぞれ液状の液体炭化水素を溜める回収容器12f、12gが配置されており、これに溜められた液状の炭化水素が、FT合成油である。尚、前記回収容器12f、12gには、水も液体炭化水素と混合して採取される。
【0090】
前記試験装置1において、原料ガスの圧力、空間速度、温度を適宜変更することで、上述した炭化水素合成試験を行った。試験の手順は、先ず、前記反応器10の細管10aに、60mLの触媒Cを充填し、電気炉10bで400度まで加熱した。ここで、加熱の際に、前記原料ガスボンベ11のうち、水素ガスボンベから水素ガスを前記細管10aに1時間ほど流しながら、前記触媒Cの担持金属の還元処理を行った。これにより、当該触媒Cに含まれる金属酸化物を金属に還元して、当該金属の活性化を図った。還元処理後に、電気炉10bを停止して、常温まで自然冷却した。
【0091】
次に、前記原料ガスボンベ11のうち、水素ガスボンベと二酸化炭素ガスボンベとを開放し、目的の原料ガスの成分比率にして、所定の圧力(1MPaから3MPa)まで昇圧し、その後、昇温速度2度/分以下でゆっくりと290度まで昇温し、1時間以上保持して、前記反応器10内を原料ガスで十分に置換した。これにより、前記触媒Cに原料ガスを接触させて反応させた。その後、前記反応器10の出口側のサンプリング部12aで生成物Pのサンプリングを行った。この生成物Pに含有される成分を、GC−TCD(ガスクロマトグラフィー−熱伝導度型検出器)を用いて、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガスの無機ガスと、炭素数が2以下の低級炭化水素とに分けて分析し、GC−FID(ガスクロマトグラフィー−水素炎イオン化型検出器)を用いて、炭素数が1から9までの炭化水素に分けて分析した。炭素数が1と2の炭化水素をGC−TCD、GC−FIDを用いて分析することで、GC間の分析精度の整合性を確認した。
【0092】
尚、GC−TCD、GC−FIDの分析の際に生成物Pのサンプリングは、断熱材を巻き付けて150度まで加熱保温したシリンジを用いて、前記サンプリング部12aにおいて生成物Pを保温状態で採取し、手際よくGC−TCD、GC−FIDに注入して分析した。これにより、沸点の低い炭化水素を液化させることなくガスとして採取した。
【0093】
図3は上記反応塔10が2直列2連になっている装置を示すものである。一段目の気液分離器12bの下流側に更に、反応器20を直列に接続する。反応容器20は反応容器20と同様、細管20aを触媒充填用の容器として備え、当該細管20aを環状の電気炉20b内に納めた構成となっている。反応容器20の出力側にサンプリング部22aを設けるとともに、回収部22を設けて生成された液を回収容器22fで収容し、気液分離器22bからの排気を背圧弁22dを介して、回収容器22gを備えた気液分離器22cに送り、ガスメータ22eを介して排気ガスが放出される構成とする。
【0094】
<触媒評価>
上述のGC−TCD、GC−FIDで得られたデータと、下記の式に基づいて、連鎖成長確率(−)と二酸化炭素転換率(%)とを算出した。
【0095】
先ず、連鎖成長確率α(−)は、Shulz−Flory分布則の式(1)を下記の式(2)に変換し、炭素数が2から9の重量比Wn(−)、n=2〜9より、ln(Wn)の傾きを算出し、直線性R2>0.9を確認した上で、連鎖成長確率α(−)を算出した。
【0096】
Wn=(1−α)^2×n×α^(n−1) (1)
ln(Wn/n)=lnα×n+2ln(1−α)−lnα (2)
次に、二酸化炭素転換率(%)は、GC−TCD、GC−FIDのデータから、下記の式(3)に、炭化水素の総重量THC(g)(Total Hydro Carbon)と、二酸化炭素ガスの重量CO
2(g)と、一酸化炭素ガスの重量CO(g)とを代入することで算出した。
【0097】
二酸化炭素転換率(%)=(THC+CO)/(THC+CO+CO
2)×100 (3)
【0098】
<炭化水素の合成>
前記した試験装置1に前記調製した各炭化水素合成触媒を適用して、上述した合成反応により炭化水素を合成し以下の実施例1、比較例1、2の結果を得た。各触媒の還元条件は、400度、1時間であり、合成反応の条件は、反応器10内の温度を290度とし、原料ガスの組成のモル比を水素ガス:二酸化炭素ガス=4:1とし、原料ガスの圧力を3MPaとし、原料ガスの空間速度を1000(1/h)とした。
【0099】
<実験結果>
実施例1、比較例1〜2に対応する各担持体を同種の装置の容器Cに充填して連鎖成長確率(−)、二酸化炭素転換率(%)を比較する。
【0100】
図4は本発明(実施例1)に係る触媒(担持体の表面にのみに1回担持)を用いた実験例である。それに対して、
図5は比較例1に係る触媒(担持体の表面にのみに2回担持)を用いた実験例である。
【0101】
図6は比較例2に係る触媒(2回の担持処理、但し、中実部にも溶液を含浸)を用いた実験例である。
【0102】
図4に示すように、実施例1の連鎖成長確率(−)は、合成初期から、0.6に近い値を示し、平均でも0.55であった。加えて、二酸化炭素転換率は平均47.3%という高い値を示している。
【0103】
一方、
図5に示すように、比較例1の触媒を用いたときは、平均0.58の高い連鎖成長確率を示すが、二酸化炭素転換率(%)は、平均で、35.8%であり、表面のみの担持に劣る。
【0104】
更に、
図6に示す中実にも溶液を含浸した比較例2の触媒を使用した例では、連鎖成長率は平均0.56と、上記の2例と遜色ないが、二酸化炭素転換率は30.9%で本願発明の触媒よりも遥かに劣る結果となる。
【0105】
触媒層の厚みが本願発明より厚いので、本願発明より高い効果が期待できるところではあるが、触媒層の深い部分が有効に活用されていないと考えられる。すなわち、触媒層の深い部分での生成物がその部分に溜まって、新たな反応を阻害する等の原因が考えられる。それに対して、本願発明では、触媒層の厚みが40〜50%であり、反応物質の生成と、新たなガスの取り込みとの代謝が効率的に行われているものと考えられる。
【0106】
図7は反応塔を2段にし、実施例1と同じ触媒を用いた場合の2段目から得られたサンプルの二酸化炭素転換率を示すものである。ここでは平均54.9%、最大で61.5%もの二酸化炭素転換率が得られることが理解できる。触媒量、触媒の還元条件、反応温度、反応圧力、原料ガスの空間速度等の条件は、1段目、2段目とも実施例1と同じである。
【0107】
尚、上記の実施例1、比較例1、2では金属イオンの溶解した水溶液として硝酸塩水溶液を使用したが、これに限らず、他の無機酸塩を使用することも可能である。