(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粒径分布が、53μm、75μm、106μm、150μm、212μm、300μm、425μm、600μm及び850μmの目開きの9個の篩をこの順で積層した分級器で篩分けし、篩分けにより9個の篩上に残った砂を、それぞれ篩の目開き値と同じ850μmの粒径の砂、600μmの粒径の砂、425μmの粒径の砂、300μmの粒径の砂、212μmの粒径の砂、150μmの粒径の砂、106μmの粒径の砂、75μmの粒径の砂及び53μmの粒径の砂とし、目開き53μmの篩を通過した砂を粒径53μm未満の砂とし、
得られた各粒径の砂を、横軸が目開き値で縦軸が質量%の10個の柱から構成される柱状グラフで表現し、
前記最も高いピークとその次に高いピークとが、最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱とに対応し、
前記137〜350μmの粒径差が、前記最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱との目開き値の差に対応し、
前記75〜150μmの粒径が、前記最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱の内、粒径の小さい側の柱の目開き値に対応する請求項1〜3のいずれか1つに記載の中子製造用の粘結剤含有砂。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粒径の細かい砂を用いて中子を形成すると、鋳型の内面の凹凸を抑制できる。しかし、粒径の細かい砂は、鋳造時に鋳型から生じるガス(樹脂のような粘結剤に由来するガス)が抜けにくく、かえって鋳物の表面に凹凸やガス欠陥を発生させることがある。そのため、鋳造時のガス抜けが良好で、凹凸の少ない表面を鋳物に与えうる中子製造用の粘結剤含有砂の提供が望まれていた。
更に、中子は、鋳物の外面を形成するための主型と共に用いられる。この主型には、ガス抜けを優先して、比較的粒径の粗い砂が用いられている。鋳造後、主型と中子を構成していた砂は、焼成及び磨鉱等の処理を経て、主型を製造するための再生砂として利用される。ここで、中子の形成に使用された粒径の細かい砂は、再生砂から得られる主型のガス抜けを低下させるため、この低下の少ない中子製造用の粘結剤含有砂の提供も望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、上記課題を解決するために、中子製造用の粘結剤含有砂の粒径を種々変更して中子を作製し、その中子を用いて鋳物を製造した。その結果、発明者等は粒径に特定の分布を有する中子製造用の粘結剤含有砂であれば、鋳造時のガス抜けが良好で、凹凸の少ない表面を鋳物に与えうることを見い出し、本発明に至った。特に、この中子製造用の粘結剤含有砂は、形成された中子の表面に、粒径の細かい砂を多く存在させ得ることを発明者等は意外にも見い出している。
かくして本発明によれば、人工砂及び/又は天然砂に由来する骨材と、粘結剤と、滑剤とを含む中子製造用の粘結剤含有砂であって、
前記粘結剤含有砂は、横軸が粒径で縦軸が質量%の粒径分布において、2つ以上のピークを示し、
前記2つ以上のピークの内、最も高いピークとその次に高いピークとが、137〜350μmの粒径差を示し、
最も高いピークとその次に高いピークの内、粒径の大きな側を第1ピークとし、粒径の小さな側を第2ピークとすると、前記第2ピークが、75〜150μmの粒径を示し、
前記第2ピークが、前記第1ピークに対して、0.2〜1.5倍の質量%を示すことを特徴とする中子製造用の粘結剤含有砂が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、鋳造時のガス抜けが良好で、凹凸の少ない表面を鋳物に与えうる中子製造用の粘結剤含有砂を提供できる。
【0007】
また、以下のいずれかの場合、鋳造時のガス抜けが良好で、凹凸の少ない表面を鋳物により与えうる中子製造用の粘結剤含有砂を提供できる。
(1)粒径分布が2つのピークを有する。
(2)粒径分布において、第1ピークと第2ピークとの間での最も小さい質量%を示す粒径を最小ボトムとすると、最小ボトムが、第2ピークに対して、0.01〜0.6倍の質量%を示す。
(3)第1ピークと第2ピークとの質量%の合計値が、40〜100質量%である。
【0008】
(4)粒径分布が、53μm、75μm、106μm、150μm、212μm、300μm、425μm、600μm及び850μmの目開きの9個の篩をこの順で積層した分級器で前記粘着剤含有砂を篩分けて得られた、横軸が目開き値で縦軸が質量%の10個の柱から構成される柱状グラフで表現され、
最も高いピークとその次に高いピークとが、最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱とに対応し、
137〜350μmの粒径差が、最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱との目開き値の差に対応し、
75〜150μmの粒径が、前記最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱の内、粒径の小さい側の柱の目開き値に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(中子製造用の粘結剤含有砂)
中子(鋳物の中空部を作るために生型と共に使用される鋳型)製造用の粘結剤含有砂(以下、単に粘結剤含有砂ともいう)は、構成要素として、人工砂及び/又は天然砂に由来する骨材と、粘結剤と、滑剤とを含み、特定の粒径分布を有している。
(i)粒径分布
粘結剤含有砂は、横軸が粒径で縦軸が質量%の粒径分布において、2つ以上のピークを示す。ピーク数は、3つでも、4つでもよいが、製造容易性の観点から2つであることが好ましい。
2つ以上のピークの内、最も高いピークとその次に高いピークとは、137〜350μmの粒径差を示す。粒径が137μm未満又は350μmより大きい場合、鋳造時のガス抜けと、鋳物表面の凹凸の低減とを両立し難いことがある。
最も高いピークとその次に高いピークの内、粒径の大きな側を第1ピークとし、粒径の小さな側を第2ピークとすると、第2ピークは、75〜150μmの粒径を示す。
第2ピークが、第1ピークに対して、0.2〜1.5倍の質量%を示す。第2ピークがこの倍数内の質量%を有することで、鋳造時のガス抜けと、鋳物表面の凹凸の低減とをより両立することが可能となる。倍数は、0.3〜1.3倍であることが好ましく、0.3〜1.1倍であることがより好ましい。
【0011】
第1ピークと第2ピークとの質量%の合計値は、40〜100質量%であることが好ましい。合計値がこの範囲内であることで、鋳造時のガス抜けと、鋳物表面の凹凸の低減とをより両立することが可能となる。合計値は、45〜95質量%であることがより好ましく、48〜93質量%であることが更に好ましい。
粒径分布において、第1ピークと第2ピークとの間での最も小さい質量%を示す粒径を最小ボトムとすると、この最小ボトムは、第2ピークに対して、0.01〜0.6倍の質量%を示すことが好ましい。上記値がこの倍数内の質量%を有することで、鋳造時のガス抜けと、鋳物表面の凹凸の低減とをより両立することが可能となる。
なお、粒径分布は、公知の種々の方法により作成できる。種々の方法としては、例えば、篩分け法、画像解析法、コールター法、遠心沈降法、レーザー回折散乱法等の方法が挙げられる。これら粒径分布の作成方法の内、篩分け法が、当該分野で所望の粒径の砂を分級する際に多用されており、多量の砂から粒径分布を得るための方法として、使用する装置及び精度の観点から適切である。
【0012】
粒径分布の一例を
図1に示す。
図1は、篩分け法により作成された粒径分布であり、粒径分布は、点線の折れ線グラフとして示されている。
図1は、実施例1で使用されている粘結剤含有砂の粒径分布である。
図1の横軸は粒径であり、紙面の左から右へ向かって粒径が大きくなっている。縦軸は質量%である。
図1のグラフは以下のようにして得られている。
即ち、53μm、75μm、106μm、150μm、212μm、300μm、425μm、600μm及び850μmの目開きの9個の篩をこの順で積層した分級器を用意する。篩分けは、分級器の一番上の目開き850μmの篩の上に原料を載せ、ロータップ型篩い機のような篩い分け機械を使用して行うことができる。篩分けにより9個の篩上に残った砂を、850μmの粒径の砂、600μmの粒径の砂、425μmの粒径の砂、300μmの粒径の砂、212μmの粒径の砂、150μmの粒径の砂、106μmの粒径の砂、75μmの粒径の砂及び53μmの粒径の砂とし、目開き53μmの篩を通過した砂を粒径53μm未満の砂(以下、PAN)とする。篩分けにより、粒径の異なる10種の砂が得られる。上記10種の砂の質量を測定し、測定値を全質量に対する%(質量%)に換算する。
図1のグラフは、換算値を、横軸を粒径、縦軸を質量%として、グラフ化することにより得ることができる。この粒径分布は、JISの鋳物砂の粒径試験方法(Z2601)に準じて測定した値である。
【0013】
図1中、Aは最も高くかつ粒径の大きな側のピークとしての第1ピークであり、Bはその次に高くかつ粒径の小さな側のピークとしての第2ピークである。また、Cは、第1ピークと第2ピークでの間の最も小さい質量%を示す最小ボトムである。なお、
図1において、Aの質量%は、600μm未満、425μm以上の粒径の砂の質量%の合計値を意味し、Bの質量%は、212μm未満、150μm以上の粒径の砂の質量%の合計値を意味し、Cの質量%は、300μm未満、212μm以上の粒径の砂の質量%の合計値を意味する。
【0014】
ところで、粒径分布は、上記換算値を、横軸を目開き値、縦軸を質量%として、グラフ化した柱状グラフでも示すことができる。そのような柱状グラフは、例えば、
図1の実線で示されている。
柱状グラフの個々の柱と折れ線グラフの個々のピークとの対応は、次の通りである。
(i)第1ピークと第2ピークとが、最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱との内、目開き値の大きな側の柱と小さな側の柱とに対応する。
(ii)137〜350μmの粒径差が、最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱との目開き値の差に対応する。
(iii)75〜150μmの粒径が、最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱の内、目開き値の小さな側の柱の目開き値に対応する。
(iv)最小ボトムが、最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱との間での最も小さい質量%を示す柱に対応する。
柱状グラフに基づけば、本発明の粘結剤含有砂は、以下のように表現することも可能である。
「人工砂及び/又は天然砂に由来する骨材と、粘結剤と、滑剤とを含む中子製造用の粘結剤含有砂であって、
前記粘結剤含有砂は、
53μm、75μm、106μm、150μm、212μm、300μm、425μm、600μm及び850μmの目開きの9個の篩をこの順で積層した分級器で前記粘着剤含有砂を篩分けて得られた、横軸が目開き値で縦軸が質量%の10個の柱から構成される柱状グラフにおいて、
(a)2つ以上のピークが存在する
(b)前記2つ以上のピークの内、最も大きな質量%を示す目開き値とその次に大きな質量%を示す柱の目開き値との差が、137〜350μmである
(c)前記最も大きな質量%を示す柱とその次に大きな質量%を示す柱の内、粒径の小さな側の柱の目開き値が、75〜150μmである
を示す粒径分布を有することを特徴とする中子製造用の粘結剤含有砂。」
【0015】
図1に示す柱状グラフは2つのピークを有し、それらピークは425μmの目開き値と150μmの目開き値とに対応する。2つのピーク位置の内、最も大きな質量%を示すピーク(目開きの大きな側の柱;以下、単に大きな側の柱ともいう)は425μmの粒径に対応し、その次に大きな質量%を示すピーク(目開きの小さな側の柱;以下、単に小さな側の柱ともいう)は150μmの目開き値に対応する。
図1において、目開き値の大きな側の柱と小さな側の柱との目開き値の差は、275μmとなる。
図1を用いた柱状グラフの説明は、一例であり、本発明はこの説明に限定されることはない。
【0016】
柱状グラフには、2以上のピークが存在している。ピーク数は、3つでも、4つでもよいが、製造の容易性観点から2つであることが好ましい。
大きな側の柱と小さな側の柱との目開き値の差は、137〜350μmである。差が137μm未満又は350μmより大きい場合、鋳造時のガス抜けと、鋳物表面の凹凸の低減とを両立し難いことがある。差は、137μm、150μm、194μm、213μm、225μm、275μm、300μm、319μm及び350μmを取り得る。
小さな側の柱の目開き値は、75〜150μmである。つまり、小さな側の柱の目開き値は、75μm、106μm及び150μmのいずれかをとり得る。
上記目開き値の差を考慮すると、大きな側の柱の目開き値は、小さな側の柱の目開きが75μmの場合、212μm、300μm及び425μmのいずれか、小さな側の柱の目開き値が106μm又は150μmの場合、300μm及び425μmのいずれかをとり得る。
小さな側の柱は、大きな側の柱に対して、0.2〜1.5倍の質量%を示すことが好ましい。小さな側の柱がこの倍数内の質量%を有することで、鋳造時のガス抜けと、鋳物表面の凹凸の低減とをより両立することが可能となる。
【0017】
小さな側の柱と大きな側の柱との質量%の合計値は、40〜100質量%であることが好ましい。合計値がこの範囲内であることで、鋳造時のガス抜けと、鋳物表面の凹凸の低減とをより両立することが可能となる。
小さな側の柱と大きな側の柱との間での最も小さい質量%を示す柱が、小さな側の柱に対して、0.01〜0.6倍の質量%を示すことが好ましい。最も小さい質量%を示す柱とは、
図1を例とすると、212μmの目開き値の砂を表す柱に対応する。この規定は、小さな側の柱と大きな側の柱とが、どの程度の明確なピークであるのかを示す指標としている。上記値がこの倍数内の質量%を有することで、鋳造時のガス抜けと、鋳物表面の凹凸の低減とをより両立することが可能となる。
【0018】
(ii)構成要素
粘結剤含有砂は、骨材と、粘結剤と、滑剤とを含む。
(1)骨材
骨材は、人工砂及び/又は天然砂に由来する。人工砂及び天然砂は、特に限定されず、アルミナ砂、ケイ砂、ジルコン砂、クロマイト砂、MgO・SiO
2系砂及びこれら砂の混合砂等が挙げられる。人工砂及び天然砂には、主成分以外に、Al
2O
3、SiO
2、ZrO
2、Cr
2O
3、CrO
2、MgO、Fe
2O
3、CaO、K
2O、TiO
2等の他の成分が含まれていてもよい。
骨材は、上記粘結剤含有砂に対応する粒径分布を有し得る。
また、骨材は、丸い粒形を有することが好ましい。
【0019】
(2)滑剤
滑剤は、特に限定されず、例えば、ステアリン酸カルシウムのような公知の滑剤を使用できる。
滑剤は、粘結剤上に存在することが好ましい。
滑剤は、骨材と粘結剤の合計100質量部あたり、0.01〜0.2質量部含まれていることが好ましい。含有量が0.01質量部未満の場合、鋳型製造の際の粘結剤含有砂の流動性が十分でないため、鋳物の表面に荒れが生じたりすることがある。また、粘結剤含有砂が、それを保存するフレコンバッグ等の内部でブロッキングしてしまう可能性が高くなる。含有量が0.2質量部より多い場合、鋳型強度の低下が生じることがある。
なお、粘結剤含有砂を構成する滑剤量は、適当な溶剤を用いて滑剤を単離し、単離物を、赤外分光分析法、ガスクロマトグラフィ法、液体クロマトグラフィ法、NMR法等の公知の方法で分析することで測定できる。
【0020】
(3)粘結剤
粘結剤は、特に限定されず、フラン樹脂、フェノール樹脂、オイルウレタン樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂、ケイ酸ソーダ、ベントナイト等が挙げられる。粘結剤は、その種類に応じた硬化剤で硬化できる。フラン樹脂用の硬化剤としては、硫酸、リン酸、リン酸エステル、ピロリン酸等の無機酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸等が挙げられる。アルカリフェノール樹脂用の硬化剤としては、ラクトン類(例えば、プロピオンラクトン)、ギ酸エチル、ギ酸メチル、トリアセチン等の有機エステル等が挙げられる。フェノール樹脂用の硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。フェノールウレタン樹脂用の硬化剤としては、トリエチルアミン、ピリジン系化合物等が挙げられる。ケイ酸ソーダ用の硬化剤としては、炭酸ガス、ダイカルシウムシリケート、有機エステル等が挙げられる。
粘結剤は、骨材100質量部あたり、0.4〜3質量部含まれていることが好ましい。含有量が0.4質量部未満の場合、骨材間の結合が十分でないため、鋳型強度が低下することがある。含有量が3質量部より多い場合、鋳物の表面に粘結剤由来成分が付着することがある。
【0021】
(4)粘結剤含有砂の製造方法
粘結剤含有砂は、公知の方法で製造できる。例えば、骨材となる原料砂をミキサー中で加温及び混合しつつ、ミキサー内に粘結剤を投入することにより、粘結剤と骨材との混合物を得る。ここで、粘結剤が硬化性樹脂を硬化剤で硬化させることで得られる場合、最初に硬化性樹脂をミキサー内に投入し、その後、硬化剤を投入して硬化性樹脂を硬化させることで粘結剤を得ることができる。次いで、ミキサー内に滑剤を投入することにより、粘結剤と骨材との混合物を滑剤と混合することで、粘結剤含有砂を製造できる。
粘結剤含有砂を上記粒径分布に調製する方法としては、例えば、2つのピークを有する粘結剤含有砂を得ようとする場合、
(a)1つのピークを有する第1の骨材と、第1の骨材とは異なる位置に1つのピークを有する第2の骨材とを混合した後、上記製造方法に付す方法
(b)1つのピークを有する第1の骨材を上記製造方法に付して得た第1の粘結剤含有砂と、第1の骨材とは異なる位置に1つのピークを有する第2の骨材を上記製造方法に付して得た第2の粘結剤含有砂とを混合する方法
が挙げられる。3つ以上のピークを有する粘結剤含有砂を得ようとする場合は、ピークの数に応じた種類の骨材を用意すればよい。
【0022】
(5)中子の製造方法
中子の製造方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。
例えば、中子の形状に対応する空間を有する金型を用意する。この金型内に、粘結剤含有砂を充填し、次いで、加熱することにより粘結剤を硬化させて粘結剤含有砂を相互に融着させることで、中子を製造できる。
金型内への粘結剤含有砂の充填方法は、金型内を粘結剤含有砂で満たすことができさえすれば、特に限定されない。例えば、加圧空気のような加圧ガスを用いて金型内に粘結剤含有砂を吹き込む(ブローする)ことにより、金型内に粘結剤含有砂を充填する方法(以下、ブロー充填法ともいう)が挙げられる。ブロー充填法において、加圧ガスは0.2〜0.4MPaの圧力(ゲージ圧)で粘結剤含有砂を吹き込むことが好ましい。金型は、粘結剤含有砂投入時に温度が低下することがあるので、予め200℃以上に加熱しておくことが好ましい。
本発明の粘結剤含有砂をブロー充填法に使用すれば、次のような効果を更に得ることができる。即ち、粘結剤含有砂からブロー充填法により得られた鋳型は、金型に沿う表面に粒径の細かい砂を存在させることが可能であり、鋳型の内部に粒径の粗い砂を多い割合で存在させることが可能である。例えば、粘結剤含有砂に対応する柱状グラフ中の小さい側の柱の質量%とその両隣の柱の質量%との合計値の1.2倍以上の割合で粒径の細かい砂を表面に存在させることが可能である。また、表面に粒径の細かい砂が多い割合で存在することは、鋳型の表面の拡大写真及び鋳型の断面の拡大写真を比較することでも確認できる。
中子を構成する砂の粒径が上記状態であることで、中子の表面に多く存在する粒径の細かい砂により中子の表面の凹凸の抑制でき、中子の中心に多く存在する粒径の粗い砂により鋳造時のガス抜けを向上できる。
【0023】
(7)鋳物の製造方法
鋳物は、それに対応する空間を有する鋳型を砂で造形し、その空間に溶融した金属を流し込み、溶融金属を冷却することにより製造できる。この鋳型は、鋳物の外側の表面を形作る主型と、内側の表面を形作る中子との組み合わせから構成される。主型は、骨材と粘結剤とを含む主型形成用骨材から形成され、粘結剤にベントナイトを使用した場合は生型と、熱硬化性樹脂を使用した場合は樹脂型と称される。
鋳型内の鋳物は、鋳型をばらすことにより取り出すことができる。ばらされた鋳型は、焼成及び磨鉱を経て個々の骨材に再生され、再生骨材として主型の製造に使用される。このように、中子を構成していた骨材は、再生骨材として主型の製造に使用されることになるが、本発明の粘結剤含有砂を鋳物の製造方法に使用すれば、次のような効果を更に得ることができる。即ち、中子製造用の骨材には、鋳物の内側の表面の凹凸をできるだけ少なくすることが望まれる観点から、粒径の細かい骨材が使用される。これに対して主型は、溶融した金属を流し込む際に主型から生じるガスの抜けを向上させる観点から、粒径の粗い骨材が使用される。粒径の細かい骨材は、再生骨材から形成される鋳型のガスの抜けを低下させるため、粒径の粗い骨材を新たに加える方法や、中子を構成していた骨材が主型を構成していた骨材と混合しないようにする方法により、この低下の抑制が従来行われていた。本発明の粘結剤含有砂は、粒径の細かい骨材の存在量を少なくできているため、従来行われていた抑制方法を考慮することなく、骨材を再生できる。
【実施例】
【0024】
以下の実施例では、表1に示す粒径分布(質量%分布)のひとつのシャープなピークを有する6種類の砂1〜6及びひとつのブロードなピークを有する4種類の砂7〜10を使用して粘結剤含有砂を製造した。表1中、砂1〜3、8は山川産業社製の高純度けい砂であり、砂4〜7、10は山川産業社製のNEサンドであり、砂9は山川産業社製の再生けい砂である。trは痕跡量を意味する。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例1
この実施例では、砂7と8を使用した。具体的には、砂7と砂8とを5:5(質量比)で混合し、得られた混合砂を160℃に加熱した後、ミキサー(遠州鉄工社製NSC−1型)に入れ、混合砂の温度を150℃に保持した。混合砂100質量部に対して0.8質量部の樹脂(日立化成社製ノボラック系フェノール樹脂)を添加しつつ混合砂を攪拌することで、樹脂と骨材の混合物を得た。次に、混合物を攪拌しつつ、樹脂100質量部に対して15質量部のヘキサメチレンテトラミン(硬化剤)と、骨材100質量部に対して1.3質量部の水(硬化剤の分散媒)とを添加することで、樹脂を硬化させて粘結剤と骨材との混合物を得た。硬化剤の添加約20秒後、冷却を開始し、冷却を約20秒行った。次いで、粘結剤と骨材との混合物を攪拌しつつ、粘結剤と骨材との混合物100質量部に対して0.06質量部の滑剤(ステアリン酸カルシウム)を添加して、約15秒間攪拌することで、粘結剤含有砂を得た。なお、得られた粘結剤含有砂の粒径分布を表2に示す。表2に対応する折れ線グラフ及び柱状グラフを
図1に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
得られた粘結剤含有砂を用いて、下記手順で、鋳物を製造した。得られた鋳物の断面写真を
図2(a)に示す。
(1)中子造型
中子焼成機を構成するホッパー内の粘結剤含有砂を、250〜300℃に加熱された金型内に吹き込んだ。金型内で粘結剤含有砂を焼成及び冷却することにより中子を得た。得られた中子にバリ取等の処理を施した。
(2)鋳型造型
鋳物の外形形状を有する模型を用いて、中子を設置するためのキャビティを備えた主型を造形した。キャビティに中子セット機を用いて中子を納めることで、鋳型を得た。
(3)注湯
1400〜1430℃の熔湯を、7〜10kg/secの速度で、鋳型へ流し込むことにより充填させた。
(4)解枠
注湯完了後の鋳型を90分程度冷却した後、鋳物を鋳型から取り出した。取り出された鋳物を、湯口や湯道等の不要部分を除去しつつ、更に150分程度冷却した。冷却後の鋳物に付着した砂を、ショットブラストにより除去した。
【0029】
比較例1
下記表3に示す粒径分布の粘結剤含有砂(1つのブロードなピークを有する砂)を使用すること以外は、実施例1と同様にして鋳物を製造した。得られた鋳物の断面写真を
図2(b)に示す。比較例1での粘結剤含有砂形成用の骨材は、砂9と砂10とを7:3(質量比)で混合したものである。
【0030】
【表3】
【0031】
実施例1と比較例1の鋳物について、
図2(a)と2(b)に示す中子が接していた9か所の位置の凹凸を測定した。凹凸はRa(算術表面粗さ)として表した。Raの測定には、ミツトヨ社製表面粗さ測定器(サーフテストSJ301)を用いた。測定評価長さを16mmとした。Raは、例えば
図3に示すような粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、下記式によって求められる値をμmで表したものとした。
【0032】
【数1】
【0033】
得られたRa値を表4に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
表4から、実施例1の粘結剤含有砂は、中子が接していた表面を比較例1より平滑にできることが分かる。
【0036】
実施例2
表1に示した砂1〜6を組み合わせること以外は実施例1と同様にして、下記表5に示す粒径分布の粘結剤含有砂を得た。なお、試験片番号2、3、5、6、8、9、14、16、17、22、23は本発明の範囲に含まれる粘結剤含有砂である。
【0037】
【表5】
【0038】
得られた粘結剤含有砂を、
図4に示す金型内に、
図5の充填機に示すように0.3MPaの加圧空気を15秒間吹き込むことで充填し、金型を400℃の温度雰囲気の炉に100秒入れ、冷却後の金型をばらすことで直径50mm×高さ50mmの円柱状の試験片を得た。金型に充填された粘結剤含有砂の充填率を以下の方法で測定した。
(充填率)
充填率(%)=試験片の充填比重÷真比重×100
図4(a)及び(b)は平板金型板の上面及び側面、
図4(c)及び(d)は半割金型の上面及び側面、
図4(e)は結束リング金型の上面、
図4(f)及び(g)は砂吹き入れ孔付上蓋用金型の上面及び側面、
図4(h)は
図4(a)〜(e)をセットした状態の上面、
図4(i)は
図4(a)〜(g)をセットした状態の上面に対応する図である。
図5中、1は金型、2は金型を載せる台、3はサンドタンク、4はエア吹き込み口を意味する。
【0039】
得られた試験片の表面状態を観察し、粒径の細かい砂が試験片の表面に占める割合を以下の方法で測定し、結果を表6に示す。
まず、実体顕微鏡を用いて、試験片表面を撮影した。倍率は30〜50倍とした。得られた画像を画像解析ソフト(イノテック社製Quick Grain)を用いて計算機に読み込ませた。このソフトを用いて砂の面積率(写真の全面積に占める細砂又は粗砂の面積率)を算出するために二値化処理を行った。二値化処理データからソフトを用いて上記割合を求めた。なお、測定箇所は、円柱状の試験片の砂吹き入れ孔付上蓋用金型に面していた円形面を上面とすると、その上面の1か所、側面の上部の2か所、側面の下部の2か所の計5か所とし、表6に示した値は5か所の平均値を意味する。
なお、試験片番号9、11、12、17及び19の顕微鏡写真を
図6〜10に示す。図中、(a−1)は側面の上部の写真を、(a1−1)及び(a2−1)は側面の上部2か所の写真を、(b−1)は側面の下部の写真を、(b1−1)及び(b2−1)は側面の下部2か所の写真を、(c)及び(c−1)は上面の写真を、それぞれ意味する。(a−2)、(a1−2)、(a2−2)、(b−2)、(b1−2)、(b2−2)及び(c−2)は、写真(a−1)、(a1−1)、(a2−1)、(b−1)、(b1−1)、(b2−1)及び(c−1)の二値化図を、それぞれ意味する。
【0040】
【表6】
【0041】
表6から、特定の範囲の粒径分布を有する実施例の粘結剤含有砂は、仕込み時の細かな砂の割合より、試験片の表面に存在する細かな砂の割合が顕著に多いことが分かる。この結果は、中子に接する表面が滑らである鋳物を製造可能であることを意味する。
【0042】
実施例3
生型用の粘結剤含有砂に中子形成用の粘結剤含有砂(実施例1と同じ粘結剤含有砂)が混合することにより与える影響をシミュレーションにより確認した。混合回数は5回とし、全粘結剤含有砂に占める中子形成用の粘結剤含有砂の割合を5%とした。両砂の粒径分布を下記表7に、シミュレーションを下記表8に示す。
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
表8から、生型用の粘結剤含有砂に本発明の中子形成用の粘結剤含有砂を繰り返し混合しても、生型用の粘結剤含有砂の粒径分布は大きな影響を受けないことが分かる。