(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理部は、前記第3処理において、前記第1処理で得られる前記マークの位置が前記第2処理で得られた前記マークの位置に近づくように前記変更を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のリソグラフィ装置。
前記処理部は、前記第3処理を打ち切るまでに、前記相関度が前記閾値を超えない場合、または前記ずれが前記許容範囲内に収まらない場合は、前記第1処理に関してエラーを示す情報を出力することを特徴とする請求項4に記載のリソグラフィ装置。
前記第2テンプレートマッチングは、互いに異なる複数のテンプレートマッチングを含み、前記第2処理は、前記マークの位置として、前記複数のテンプレートマッチングによりそれぞれ得られた複数の前記マークの位置の平均を得ることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
前記処理部は、前記第2処理において、前記複数のテンプレートマッチングによりそれぞれ得られた複数の前記マークの位置のばらつきが許容範囲内に収まらない場合は、前記第2処理に関してエラーを示す情報を出力することを特徴とする請求項7に記載のリソグラフィ装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の実施の具体例を示すにすぎないものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決のために必須のものであるとは限らない。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、実施形態に係る、パターンを基板に形成するリソグラフィ装置の一例である露光装置の構成を示す図である。
図2は、
図1の露光装置によって処理される基板Wの構成を示す図である。
図2において、基板WにはS1,S2,S3を含む複数のショット領域が形成されており、また、基板Wの所定位置にマークAM1,AM2,AM3,AM4(アライメントマーク)が設けられている。さらに、基板Wの外周部の一部には切り欠きであるノッチNが形成されている。
図1において、基板搬送部WFは、基板Wを装置内に搬入する。メカプリアライメントユニットMAは、基板WのノッチNを検出し、基板Wの位置及び回転角の少なくとも一方を調整するプリアライメントを行う。基板ステージSTGは、基板Wを保持して可動のステージである。基板ステージSTGの上には基板Wを保持するチャックCHが設置されている。アライメントスコープASは、基板WのマークAM1〜AM4を撮像してマークの画像を得る撮像部を含む。処理部IPは、アライメントスコープASにより取得された画像に基づき、例えばテンプレートマッチングによりマーク位置計測を行う。処理部IPは、不図示のCPUの他、各種データ等を記憶するメモリMを含みうる。制御部MCは、処理部IPにより得られたマークの位置に基づいて移動された基板ステージSTGに保持された基板Wにパターンを形成する形成部としての動作を行う。具体的には、制御部MCは、処理部IPからの位置計測情報に基づき基板ステージSTGを移動させて基板Wの位置合わせを行い、原版MSKのパターンを露光レンズLNSを通して基板Wに露光する露光処理を行うことで、基板Wの上にパターンを形成する。
【0012】
図3に、制御部MCによって行われる基板処理の制御フローを示す。S302で、制御部MCは、メカプリアライメントユニットMAを制御して、基板搬送部WFにより装置内に搬入された基板Wに対してメカプリアライメントを行う。S303で、制御部MCは、基板搬送部WFを制御して、基板WをチャックCHに搬送する。S304で、制御部MCは、形成部としての動作を行う前に、第1テンプレートマッチングによりマークの位置を得る第1処理を処理部IPに行わせる。その後、制御部MCは、第1処理で得られたマークの位置に基づき基板ステージSTGを移動させて基板アライメントを行う。第1テンプレートマッチングは、マークの理想形状を離散的な複数の特徴点で表したテンプレートを用いて、アライメントスコープASにより取得された画像内でマークの位置を探索し、マークの位置を求める。
【0013】
第1テンプレートマッチングにおける計測条件(アライメント計測条件)としては、例えば、テンプレートの配置、テンプレート内の特徴点の数(テンプレートの点数)がある。例えば、
図8(a)のようなマークAMのエッジ方向の情報をもったテンプレートを用いて、
図9に示すように、計測用に取得された画像におけるマークの探索が行われる。具体的には、相関度(類似性)が最大となる位置が探索され、その位置が計測値として決定される。なお、処理対象の基板がロットの先頭である場合には、アライメント計測条件は、デフォルトの条件または前のロットで設定された条件を用いるものとする。
【0014】
基板アライメントを実施後、制御部MCは、基板Wショット領域ごとに露光を行う(S305)。露光の完了後、制御部MCは、基板搬送部WFを制御して基板Wを搬出する(S306)。
【0015】
本実施形態における基板処理は概ね以上のようなものである。しかし、基板のプロセスによってはマークの形状の見え方が変化しうるため、位置計測の精度を維持するためにテンプレートを適切に調整していくことが必要である。そこで本実施形態では、制御部MCは、S305の露光およびS306の基板の搬出と並行して(すなわち、形成部が上記動作を行っている間に)、S308とS309のテンプレートの調整動作を実行する。S308は、第1テンプレートマッチングとは異なる第2テンプレートマッチングによりマークの位置を得る第2処理である。S309は、第2処理で得られたマークの位置に基づいて、第1処理での第1テンプレートマッチングに使用したテンプレートの変更を行い、第1処理での第1テンプレートマッチングに使用するべきテンプレートを得る第3処理である。
【0016】
S308の第2処理は、マークの位置を示すリファレンス計測値を算出する処理を含みうる。このリファレンス計測値の算出のフローを
図4に示す。
図4のフローは、制御部MCの制御の下、処理部IPによって実行されうる。処理部IPは、アライメントスコープASにより取得され基板アライメント工程(S304)で処理されたマークの画像を用いて、計測処理Aによる計測値の算出を行う(S402)。その後、処理部IPは、算出された計測値をリファレンス計測値としてメモリMに格納する(S403)。この計測処理Aは、基板アライメント工程(S304)で用いられる第1テンプレートマッチングよりも演算量は多いが高精度にマークの位置を求めることができる第2テンプレートマッチングを含む。計測処理Aにおける第2テンプレートマッチングの手法には、例えば、位相限定相関法またはLukas-Kanade法を採用しうる。位相限定相関法は、輝度の振幅ではなく位相のずれ量に着目することで、低コントラスト画像においても高い検出精度が得られる手法である。しかし、元画像及び計測画像をFFTし画像全面の位相比較を行うため、演算量が多い。また、Lukas-Kanade法は、画像の相互情報量(Mutual Information)を特徴量として用いる。Lukas-Kanade法では、2つの画像の各画素の移動量をテイラー展開による多項式近似を用いて検出しており、多項式の数が多いほど近似の精度が高まり高精度な検出が可能になるが、やはり多大な演算量を要する。どちらの手法も、離散的なテンプレート情報との相関度を求めるテンプレートマッチング(第1テンプレートマッチング)よりも計測に使う情報量が多いためロバスト性が高く、より高精度に位置検出を行うことが可能である。
【0017】
S309の第3処理は、アライメント計測条件の算出処理を含みうる。ここでは、デフォルトの条件または前のロットでの基板処理時に決定された条件を初期状態とし、基板アライメント工程(S304)であらかじめ取得された画像に対してアライメント計測条件が算出される。
【0018】
第3処理におけるアライメント計測条件の算出処理(S309)のフローを
図5に示す。この処理において初期状態で持っているテンプレート情報は、マーク設計値(理想的なマーク形状)と対応している(
図8(a))。テンプレートはマークのエッジ方向の情報を持ち、離散的にマーク形状を表している。このとき、プロセスによってはマークが歪み、例えば横方向のみマークが伸びて見える場合などがある(
図8(b))。その場合、テンプレートとマークに差異があり算出される相関度が理想状態よりも低くなる。そこで、処理部IPは、第3処理として、以下に具体的に示すように、第1処理(S304)で得られるマークの位置が第2処理(S308)で得られたマークの位置に近づくようにテンプレートの配置の決定(テンプレートの変更)を行う。
【0019】
図5のS502〜S508は、テンプレートの配置を変えながら第1テンプレートマッチングを繰り返し、テンプレートの配置を決定する配置決定処理である。まず、処理部IPは、S502で、テンプレートの配置を初期状態からランダムに変更し、S503で、変更されたテンプレートにより第1テンプレートマッチングを行う(相関度及び計測値を算出する)。次に、S504で、処理部IPは、テンプレートの配置を変更する前よりも相関度及び計測値が向上したか否かを判定する。ここで、「相関度及び計測値が向上する」とは、相関度が高まり、かつ、計測値がリファレンス計測値に近づくことをいう。具体的には、マークとテンプレートとの間の相関度が所定の閾値を超え、かつ、マークの位置を示す計測値がS308で求められたリファレンス計測値を含む所定の閾値範囲内になることである。例えば、
図8(c)では、テンプレートのある一点をランダムに選択し左方向へ動かしている。この場合、その点がマークから離れる方向になるため、相関度及び計測値は向上しない(S504でNO)。よって、処理部IPは、テンプレート配置をS502で変更される前の配置(
図8b)に戻す(S505)。
【0020】
S506では、処理部IPは、S309の処理開始からの経過時間がパターン形成動作にかかる時間に基づく所定の打ち切り時間内であるか否かを判断している。経過時間が所定の打ち切り時間内である場合(S506でYES)、再度テンプレートのある一点をランダムに選択し配置を動かす。例として、
図8(d)では、
図8(c)で選択されたテンプレートの一点が再度選択され、右方向つまりマークに近い方向に動かしている。この場合、マークに対する相関度が上がり、且つマーク以外の部分の相関度が下がることになるため、
図8(d)の状態でテンプレート配置が保持される(S504)。
【0021】
S502〜S506が所定の打ち切り時間内で繰り返されて学習回数が増えることにより、
図6(a)に示されるように、マークに対する相関度は上昇していき、
図6(b)に示されるように、マーク以外の部分の相関度は低下していく。また、
図6(c)に示されるように、マークの計測値は、リファレンス計測値によって定められる所定の閾値上限と閾値下限の間で収束していく。経過時間が所定の打ち切り時間を超えると(S506でNO)、処理部IPは、S507で、例えば、相関度及び計測値に関する以下の条件を満たすか否かを判定する。
・最終的なテンプレート配置によるマークに対する相関度が所定の閾値下限を超えていること(
図6(a))。
・最終的なテンプレート配置によるマーク以外の部分に対する相関度が所定の閾値上限を下回っていること(
図6(b))。
・最終的なテンプレート配置による計測値が、S308で算出されたリファレンス計測値によって定められる所定の閾値範囲内にあること(
図6(c))。
このように、第3処理は、マークとテンプレートとの間の相関度が閾値を超え、かつ第2処理で得られたマークの位置からの第1処理で得られるマークの位置のずれが許容範囲内に収まるように、テンプレートの変更を行う。また、処理部IPは、パターン形成動作に要する時間に基づいて、第3処理を打ち切る。
【0022】
上記条件を満たさない場合は、エラー終了とする(S508)。すなわち処理部IPは、第3処理を打ち切るまでに、相関度が閾値を超えない場合、または、ずれが許容範囲内に収まらない場合は、例えば第1処理に関してエラーを示す情報を出力する。ここまでの処理でテンプレート配置が決定される(
図8(e))。上記条件を満たす場合、S509で、S304における第1計測処理の処理開始からの経過時間が所定の閾値内であるか否かを判定する。該経過時間が所定の閾値内である場合、あるいは処理時間の制約を持たせない場合には(S509でYES)、この時点でアライメント計測条件の算出処理を終了する。このときのアライメント計測条件は、次の基板に対する第1計測処理である基板アライメント処理(S304)に用いられる。これにより、装置スループットに影響することなく、対象となる基板のマークに対して計測精度及び計測処理時間が最適となるテンプレート形状を見つけることができる。
【0023】
S509で第1計測処理の計測処理時間の制約を満たしていない場合は(S509でNO)、最適なテンプレートの点数を決定するための学習ループを回す(S510〜S512)。この処理は、決定された配置を持つテンプレートの特徴点の点数を減らしながら第1テンプレートマッチングを繰り返し、マークの相関度が所定の閾値を超え、かつ、計測値が所定の閾値範囲内になる条件の下で最小となる点数を決定する点数決定処理である。具体的には、処理部IPは、S510でテンプレートの点数を1つ減らし、S511で変更後のテンプレートにより第1計測処理と同じ手法で相関度及び計測値を算出する。S512では、全条件を実施したか、すなわち、テンプレートの点数が所定の下限値に達したかを判定する。ここでテンプレートの点数が所定の下限値に達していなければS510に戻り、所定の下限値に達したときはS513に進む。このように、テンプレートの点数を低減させていき、相関度及び計測値に関する上記条件を満たすための最低限のテンプレートの点数をアライメント計測条件として決定する(S513)。得られたテンプレート計測条件は、次の基板の第1計測処理である基板アライメント(S304)の計測条件として用いられる。これにより、対象となる基板のマークに対して計測精度及び計測処理時間が最適となるテンプレートの形状を見つけることができる。
【0024】
図5では第3処理としてテンプレートの形状を最適化しているが、別のパラメータの最適化をしてもよい。例えば、S309において、計測画像に対する複数の画像フィルタ条件を試し、計測値が最適となるものを選択するようにしてもよい。そのようなS309の処理フローを
図10に示す。ここでは例えば、画像フィルタ条件の初期条件を、ガウシアンフィルタのシグマ=0.10とする。処理部IPは、まず、S1002で、画像フィルタ条件を初期条件から変更する。ここでは、例えば画像フィルタのシグマを0.10〜0.99の間で0.01刻みで順に設定していく。S1003では、処理部IPは、変更後の画像フィルタ条件で第1計測処理により相関度と計測値を算出する。算出された相関度と計測値がフィルタ条件変更前よりも向上した場合は(S1004でYES)、そのときの画像フィルタ条件をメモリMに記憶し(S1005)、その後、S1006へ進む。算出された相関度と計測値がフィルタ条件変更前よりも向上していなければ(S1004でNO)、そのままS1006へ進む。S1006では、制処理部IPは、全ての画像フィルタ条件を実施したか、すなわち、画像フィルタのシグマを0.10〜0.99の間の全ての値で計測を行ったかを判定する。全ての画像フィルタ条件で計測が実施されていなければS1002に戻り、全ての画像フィルタ条件で計測が実施されたときはS1007に進む。
【0025】
S1007では、処理部IPは、相関度と計測値が最も向上したフィルタ条件を第1計測処理における画像フィルタ条件として設定する。これにより、基板の見え方に変化があった場合でも、最適なフィルタ条件を常に選択することが可能となる。なお、この例ではガウシアンフィルタのシグマを画像フィルタ条件として最適化しているが、その他の画像フィルタ(メディアンフィルタ、ガボールフィルタなど)のパラメータや、フィルタ同士の組み合わせの条件を最適化してもよい。
【0026】
(変形例1)
第2処理であるリファレンス計測値の算出処理(S308)の変形例を、
図7に示す。
図4の例では、第1計測処理よりも演算量は多いが高精度な計測を行うことができる計測処理Aを使用したが、ここでは、高精度な計測を行う計測処理として計測処理Aの他に計測処理Bを含む複数の計測処理を使用する。すなわち、第2テンプレートマッチングは、探索手法の異なる複数のテンプレートマッチングを含みうる。例えば、計測処理Aは位相限定相関法を用いた計測処理であり、計測処理BはLukas-Kanade法を用いた計測処理でありうる。
【0027】
制御部MCは、S702で、計測処理Aにより計測値を算出し、S703で、計測処理Bにより計測値を算出する。その後、制御部MCは、S702で得られた計測値とS703で得られた計測値との差分が所定の閾値以内であるか(S704)、または、S702で得られた計測値とS703で得られた計測値とのばらつきが所定の範囲以内であるか(S705)を判定する。これらの条件を満たさない場合は、計測に異常が発生していると判断してエラーを出力する(S708)。これらの条件を満たす場合は、例えばS702で得られた計測値とS703で得られた計測値との平均をリファレンス計測値として決定する(S706)。このように、第2処理では、複数のテンプレートマッチングによりそれぞれ得られた複数のマークの位置のばらつきが許容範囲内に収まらない場合は、第2処理に関してエラーを示す情報を出力する。
【0028】
以上の処理によれば、計測処理Aと計測処理Bが同じ画像に対する別々の特徴を用いた計測を行うことになるため、両者の計測結果の組み合わせによってリファレンス値の信頼性を向上させることができる。これにより、より精度の高いリファレンス計測値を算出することが可能となる。
【0029】
(変形例2)
上述の基板処理によれば、第2処理であるリファレンス計測値の算出(S308)と、アライメント計測条件の算出(S309)においては、基板アライメント工程(S304)で取得されたマーク画像が使用される。変形例として、制御部MCは、前回までに処理された同一ロット内の基板のマーク画像をメモリ内に記憶してもよい。そして、制御部MCは、メモリに記憶された複数のマーク画像それぞれに対してリファレンス計測値の算出(S308)とアライメント計測条件の算出(S309)を実施し、全てのマーク画像に対して計測精度と処理時間が最適となる計測条件を見つける。これにより、基板のロット内のプロセス変動に対し、最も適した基板のアライメント計測条件を見つけることができる。
【0030】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態における物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、上記のリソグラフィ装置(露光装置やインプリント装置、描画装置など)を用いて基板に原版のパターンを転写する工程と、かかる工程でパターンが転写された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0031】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。