(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
<画像形成装置の構成例>
本発明は、例えば
図7に示すように、矩形状の発熱部361の側縁に各々設けられた複数の個別電極361d1,361d2等と共通電極361cの間の通電により生ずる発熱領域の間に存在する領域における温度低下を抑制するヒータ等である。
【0009】
図1は、第1の実施形態に係る定着装置を用いた画像形成装置の構成例を示す図である。
図1において、画像形成装置は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFP10を例に説明する。
【0010】
MFP10の本体11の上部には透明ガラスの原稿台12があり、原稿台12上には自動原稿搬送部(ADF)13が開閉自在に設けられている。また、本体11の上部には操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、各種のキーとタッチパネル式の表示部を有している。
【0011】
本体11内のADF13の下部には、読取装置であるスキャナ部15が設けられている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するもので、密着型のイメージセンサ16を備えている。イメージセンサ16は、原稿に対して主走査を行う方向即ち主走査方向、
図1では奥行方向に配置されており、矢印S方向に移動させて副走査が行われる。
【0012】
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合は原稿台12に沿って移動しながら、原稿画像を1ライン分ずつ読み取る。これを原稿サイズ全体にわたって実行し1ページ分の原稿の読み取りを行う。また、ADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、イメージセンサ16は、固定位置(図示の位置)にある。
【0013】
更に、本体11内の中央部にはプリンタ部17を有し、本体11の下部には、各種サイズの用紙Pを収容する複数の給紙カセット18を備えている。プリンタ部17は、感光体ドラムと、露光装置としてLEDを含む走査ヘッド19を有し、走査ヘッド19からの光線によって感光体ドラムを走査して画像を生成する。
【0014】
プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データや、パーソナルコンピュータなどで作成された画像データを処理して用紙に画像を形成する。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置されている。また、走査ヘッド19も画像形成部20Y,20M,20C,20Kに対応した複数の走査ヘッド19Y,19M,19C,19Kを有している。
【0015】
図2は、画像形成部20Y,20M,20C,20Kのうち、画像形成部20Kを拡大した図である。尚、以下の説明において各画像形成部20Y,20M,20C,20Kは同じ構成であるため、画像形成部20Kを例に説明する。
【0016】
画像形成部20Kは、像担持体である感光体ドラム22Kを有する。感光体ドラム22Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電器23K、現像器24K、一次転写ローラ(転写器)25K、クリーナ26K、ブレード27K等を配置している。感光体ドラム22Kの露光位置には、走査ヘッド19Kから光を照射し、感光体ドラム22K上に静電潜像を形成する。
【0017】
画像形成部20Kの帯電器23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に帯電する。現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラ24aによりブラックのトナーおよびキャリアを含む二成分現像剤を感光体ドラム22Kに供給し、静電潜像の現像を行う。クリーナ26Kは、ブレード27Kを用いて感光体ドラム22K表面の残留トナーを除去する。
【0018】
また、
図1に示すように、画像形成部20Y,20M,20C,20Kの上部には、現像器24Y,24M,24C,24Kにトナーを供給するトナーカートリッジ28を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジ28Y,28M,28C,28Kを含む。
【0019】
中間転写ベルト21は、循環的に移動する。中間転写ベルト21は、駆動ローラ31および従動ローラ32に張架される。また、中間転写ベルト21は、感光体ドラム22Y,22M,22C,22Kに対向して接触している。中間転写ベルト21の感光体ドラム22Kに対向する位置には、一次転写ローラ25Kにより一次転写電圧が印加され、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に一次転写する。
【0020】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、二次転写ローラ33を対向して配置している。駆動ローラ31と二次転写ローラ33の間を用紙Pが通過する際に、二次転写ローラ33により二次転写電圧が用紙Pに印加される。そして、中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Pに二次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ32付近には、ベルトクリーナ34を設けている。
【0021】
また、
図1で示すように、給紙カセット18から二次転写ローラ33に至る間には、給紙カセット18内から取り出した用紙Pを搬送する給紙ローラ35が設けられている。更に、二次転写ローラ33の下流には定着装置36が設けられている。また、定着装置36の下流には搬送ローラ37が設けられている。搬送ローラ37は用紙Pを排紙部38に排出する。更に、定着装置36の下流には、反転搬送路39が設けられている。反転搬送路39は、用紙Pを反転させて二次転写ローラ33の方向に導くもので、両面印刷を行う際に使用される。
図1、
図2は本発明の実施形態の一例を示すものであり、定着装置36以外の画像形成装置部分の構造を限定するものではなく、公知の電子写真方式画像形成装置の構造を用いることができる。
【0022】
<MFP10の制御系の構成例>
図3は、一実施形態におけるMFP10の制御系50の構成例を示すブロック図である。制御系50は、例えば、MFP10全体を制御するCPU100、リードオンリーメモリ(ROM)120、ランダムアクセスメモリ(RAM)121、インターフェース(I/F)122、入出力制御回路123、給紙・搬送制御回路130、画像形成制御回路140、定着制御回路150を備えている。
【0023】
CPU100は、ROM120あるいはRAM121に記憶されるプログラムを実行することにより画像形成のための処理機能を実現する。ROM120は、画像形成処理の基本的な動作を司る制御プログラムおよび制御データなどを記憶する。RAM121は、ワーキングメモリである。ROM120(あるいはRAM121)は、例えば、画像形成部20や定着装置36等の制御プログラムと制御プログラムが使用する各種の制御データを記憶する。本実施形態における制御データの具体例としては、用紙中の印字領域の大きさ、即ち原稿が主走査される主走査方向の幅(後述する
図5における第1、第2、第3の媒体サイズ)と給電対象となる発熱部との対応関係などが挙げられる。
【0024】
定着装置36の定着温度制御プログラムは、トナー像が形成された用紙における画像形成領域の大きさを判定する判定ロジックと、用紙が定着装置36の内部に搬送される前に画像形成領域が通過する位置に対応する発熱部のスイッチング素子を選択して給電し、加熱手段における加熱を制御する加熱制御ロジックとを含んでいる。
【0025】
I/F122は、ユーザ端末やファクシミリ等の各種装置との通信を行う。入出力制御回路123は、オペレーションパネル123a、表示器123bを制御する。給紙・搬送制御回路130は、給紙ローラ35あるいは搬送路の搬送ローラ37等を駆動するモータ群130a等を制御する。給紙・搬送制御回路130は、CPU100からの制御信号に基づいて給紙カセット18近傍あるいは搬送路上の各種センサ130bの検知結果を考慮してモータ群130a等を制御する。
【0026】
画像形成制御回路140は、CPU100からの制御信号に基づいて感光体ドラム22、帯電器23、走査ヘッド19、現像器24、転写器25をそれぞれ制御する。定着制御回路150は、CPU100からの制御信号に基づいて定着装置36の駆動モータ360、発熱部361、サーミスタ等の温度検知部材をそれぞれ制御する。尚、本実施形態では定着装置36の制御プログラムおよび制御データをMFP10の記憶装置内に記憶してCPU100で実行する構成としているが、定着装置36専用に演算処理装置と記憶装置を別途設ける構成にしてもよい。
【0027】
<定着装置36の構成例>
図4は、定着装置36の構成例を示す図である。ここでは、定着装置36が、板状の発熱部361と、弾性層が形成され、複数のローラに懸架された無端ベルト363と、無端ベルト363を駆動するベルト搬送ローラ364と、無端ベルト363に張力を与えるテンションローラ365と、弾性層が表面に形成されたプレスローラ366を備えている。
【0028】
発熱部361は、発熱部側が無端ベルト363の内側に接触し、プレスローラ366方向に押圧されることで、プレスローラ366との間に所定幅の定着ニップを形成する。発熱部361がニップ領域を形成しつつ加熱する構成のため、給電時における応答性はハロゲンランプによる加熱方式の場合よりも高い。
【0029】
無端ベルト363は、例えば厚さ50μmのSUS基材あるいは70μmの耐熱樹脂であるポリイミド上の外側に厚さ200μmのシリコンゴム層が形成され、最外周はPFA等の表面保護層で被覆されている。プレスローラ366は、例えばφ10mmの鉄棒表面に厚さ5mmのシリコンスポンジ層が形成され、最外周はPFA等の表面保護層で被覆されている。
【0030】
<発熱部の構成>
また、発熱部361には、例えば、セラミック基板などの絶縁体上に発熱抵抗層、あるいはグレーズ層および発熱抵抗層が積層されている。グレーズ層はなくてもよい。発熱抵抗層は、例えばTaSiO
2などの既知の素材で形成される。発熱抵抗層は、また原稿が主走査される主走査方向において所定の長さとされ、所定の個数に分けて設けられている。
【0031】
発熱抵抗層の形成方法は既知の方法、例えばサーマルヘッドの作成方法と同様である。例えば発熱抵抗層の上にアルミニウムでマスキング層(電極層)を形成させる。このマスキング層は用紙搬送方向に発熱部(抵抗発熱体)が露出するようなパターンである。このパターンにより熱領域間が分離される。
【0032】
発熱部への給電は、両端のアルミニウム層(電極)から導電体(配線)で繋ぎ、それぞれをスイッチングドライバのスイッチング素子等に繋ぐ。
【0033】
更に、抵抗発熱体、アルミ層、配線等の全てを覆うように、最上部に保護層を形成する。保護層は、例えばSiO
2やSi
3N
4などによって形成される。このような発熱部群に対してACやDCを供給する場合は、トライアックや、FETで発熱させる部分をゼロクロスで給電し、フリッカにも配慮するものとする。
【0034】
<発熱部と電極の関係、溝部の形状が矩形状(凹状)の場合>
図5は、一実施形態における発熱部と共通電極及び個別電極の関係を示す上面図である。絶縁体基板361a上に、発熱部361bと共通電極361c,個別電極361dが設けられている。
【0035】
ここでは、発熱部361の発熱領域(発熱領域361b)を、ハガキサイズ(100×148mm)、CDジャケットサイズ(121×121mm)、B5Rサイズ(182×257mm)、A4Rサイズ(210×297mm)の幅に対応させるために、一端の電極側の電極は、原稿を主走査する主走査方向(矢印MA)において、後述する切欠き部により、例えば5つに分けられ、個別電極361dを構成している。
【0036】
発熱部の副走査方向(矢印SU方向)における一端(側縁)には4つの溝部361mが凹部として矩形状に形成されている。個別電極361dは、媒体の搬送方向における発熱領域361bの一端部のうち、複数の溝部361mを除いた位置に形成されている。即ち電極の切り欠いた部分(切欠き部361d0)が、発熱部の溝部に対応する。
【0037】
図6は、一実施形態における発熱領域361bへの給電構造を示す回路図である。ここでは、発熱領域361bの発熱領域が、対応する5つのスイッチ361eによって個別に通電が制御される並列の給電構造が示されている。
【0038】
具体的には、スイッチ361eは、個別には361e1,361e2,361e3,361e4,361e5から成る。個別電極361dは、361d1,361d2,361d3,361d4,361d5から成る。スイッチ361eにより示す駆動ICの具体例としては、スイッチング素子、FET、トライアックス、スイッチングICなどが挙げられる。
【0039】
図7は、
図6に示した破線領域Aの拡大図である。ここでは、溝部361mが、原稿の主走査方向(矢印MA)の長さ(幅)がx、副走査方向(矢印SU方向)の長さ(深さ)がyで形成されている。
【0040】
x、yの縦横比率は、任意に変更可能であり、発熱領域の連結部分の面内温度分布を計測して決定される。例えば、x:y=1:1、あるいはx:y=2:3とする。
【0041】
後述するように、溝部361mのサイズx、yの値は、すべて同じでなくてよく、例えば溝部361mの位置に応じてyの値(深さ)を変更してもよい(
図13の実施形態を参照)。
【0042】
図6において、共通電極361cに電源362の一端が接続され、この電源の他端には、並列にスイッチ361e1〜361e5が接続される。これらのスイッチ361e1〜361e5には各々、個別電極361d1〜361d5が接続される。例えばスイッチ361e2をオンにして、個別電極361d2と共通電極361間に電源362により発熱領域361bに電流を流すと、発熱領域361b2が生ずる。
【0043】
同様にして、個別電極361d1と共通電極361c間に電源362により発熱部361に電流を流すと、発熱領域361b1が生ずる。
【0044】
発熱領域361b2と発熱領域361b1の間には、発熱領域よりも温度の低い部分が生ずる。個別電極361d2と個別電極361d1の間に電極の切欠き部と溝部361mが存在するからである。しかし、この発熱領域間の温度の低い部分は、発熱部が連続しているため、発熱部が切れている場合ほど、温度が低下しない。
【0045】
このように発熱領域間においてこの温度低下が抑制される。そのメカニズムを次に推察する。
【0046】
<発熱領域間の温度低下が抑制されるメカニズム>
本実施形態によれば、発熱部361bの発熱領域が複数に分けられているが、隣接する発熱領域の間は発熱部が連続している。このため、隣接する発熱領域のうち、媒体サイズに対応して一方の発熱領域に対して給電が行われない場合でも、発熱領域の間の領域(連結領域)もある程度発熱する。
【0047】
このメカニズムは、2通り考えられる。1つは、
図8に示すように隣接する発熱領域からの熱の伝導である。他の1つは、
図9に示すように隣の個別電極と共通電極間の通電による発熱である。いま、
図7において、具体的に発熱領域361b2と発熱領域b1の間の連結領域における温度低下の抑制を考える。
【0048】
前者の発熱領域からの熱の伝導は、
図8に示すように考えられる。個別電極361d2と共通電極361cの間の発熱部361bに通電されると、発熱領域361b2が発熱して温度が上昇する。この発熱領域361b2の発熱により発生した熱自体が、矢印H1に示すように、連結領域にも伝わると考えられる。熱伝導体である発熱部361bが連続しているからである。同様に、発熱領域361b1が発熱している場合には、矢印H2に示すようにその熱がこの連結領域にも伝えられると考えられる。
【0049】
一方、隣の個別電極と共通電極間の通電による発熱は、次のように考えられる。例えば、
図8において、個別電極361d2と共に個別電極361d1にも通電されているとする。
【0050】
即ち、発熱部361bを介して、共通電極361cと個別電極361d2との間に通電されており、共通電極361cと個別電極361d1との間にも通電されているとする。
【0051】
この場合、上述のように、共通電極361cと個別電極361d2の間の通電により、発熱領域361b2が形成される。一方、共通電極361cと個別電極361d1の間の通電により、発熱領域361b1が形成される。この場合、発熱部361bには、矢印C22方向だけでなく、矢印C21方向にも電流が流れる可能性がある。
【0052】
一方、共通電極361cと個別電極361d1の間の通電により、発熱領域361b1が形成される。この場合、発熱部361bには、矢印C11方向だけでなく、矢印C12方向にも電流が流れる可能性がある。
【0053】
上記2通りのメカニズムの両方が機能している可能性もある。あるいは他のメカニズムにより、発熱領域間の領域における温度低下が抑制されている可能性もある。いずれにしてもこの発熱領域間の温度低下は抑制される。これは、溝部の形状に拘らず、また溝部がなく電極の切欠き部のみがある場合も同様な効果が得られる。
【0054】
このように、媒体サイズが切り替わるとき発熱領域が物理的に離間している構造に比べて、連結部分における温度低下を抑制することができる。
【0055】
<溝部のその他の形状>
なお、本実施形態において、溝部361mの形状が矩形状(凹形状)の場合について説明した。しかし溝部は、他の形状、例えば、U字状やV字状に形成されてもよい。また、溝部361mは、発熱部361における鉛直方向(
図5において、紙面を貫く方向)に亘って、貫通する構造を有しているが、凹部としての実施態様は、これに限られない。例えば、発熱部361の厚さ方向(鉛直方向)の途中まで穿いた構造とし、その余は、穿かない構造としても良い。
【0056】
発熱部の溝部の形状がU字状の実施形態の拡大上面図を、
図10に示す。この実施形態では、通電により発熱する矩形の発熱部361bの対向する側縁の一方には、共通電極361cが設けられている。側縁の他方には、個別電極361d1,361d2の切欠き部と、その対応する位置に、U字状の溝部361uが設けられている。
【0057】
この溝部がU字状の実施形態によれば、上記溝部が矩形状の実施形態に比べて、発熱部に角がなく局部的に電流が集中することは少ない。したがって、溝部付近においても比較的一様に電流が流れて安定的な発熱を行うことが可能である利点がある。
【0058】
発熱部の溝部の形状がV字状の実施形態の拡大図を、
図11に示す。この実施形態では、通電により発熱する矩形の発熱部361bの対向する側縁の一方には、共通電極361cが設けられている。側縁の他方には、個別電極361d1,361d2の切欠き部と、その対応する位置に、V字状の溝部361vが設けられている。
【0059】
この溝部がV字状の実施形態によれば、上記溝部が矩形状の実施形態に比べて、溝部が漸次拡大している。したがって、溝部の発熱部への影響は少ないので、溝部のある部分においても比較的一様に電流が流れて安定的な発熱を行うことが可能である利点がある。
【0060】
<発熱部に溝部がない場合>
上述の説明では、電極の切欠き部に対応して、溝部を有する場合について述べた。しかし、電極の切欠き部があれば、溝部を有しない構造でもよい。このような実施形態の拡大上面図を
図12に示す。
【0061】
この実施形態では、通電により発熱する矩形の発熱部361bの対向する側縁の一方には、共通電極361cが設けられている。側縁の他方には、個別電極361d1,361d2、361d3などを有する。これらの個別電極の間には切欠き部361d0を有するが、切欠き部361d0に対応する位置に、溝部を有していない。
【0062】
この構造の実施形態では、電極の切欠き部があるが、発熱部には溝部がないからくびれがなく、発熱領域の間における温度低下を最も小さく抑制できる効果がある。
【0063】
<溝部の深さが変わる場合>
上述実施形態では、溝部の形状即ち、溝部の幅(x)と深さ(y)が同じ場合の実施形態について説明した。
【0064】
しかし、溝部が同じ形状でなく、溝部が設けられている位置によってその幅や深さを変えた構造とすることも可能である。溝部の深さyを変えた実施形態を
図13に示す。
【0065】
この実施形態では、通電により発熱する矩形の発熱部361bの対向する側縁の一方には、共通電極361cが設けられている。側縁の他方には、個別電極361d1,361d2、361d3などを有する。これらの個別電極の間には切欠き部361d0と対応する溝部を有する。これらの溝部を361m1,361m2,362m3,361m4とする。
【0066】
溝部の深さが同一でない点を除けば、
図6に示した実施形態と同様である。
図13は、一実施形態における発熱部361bへの給電構造を示す回路図である。ここでは、発熱部361bの発熱領域が、対応する5つのスイッチ361eによって個別に通電が制御される並列の給電構造が示されている。
【0067】
具体的には、スイッチ361eは、スイッチ361e1,361e2,361e3,361e4,361e5から成る。個別電極361dは、361d1,361d2,361d3,361d4,361d5から成る。
【0068】
個別電極361d1と個別電極361d2の間の切欠き部361d0に対応して、深さy1の矩形状の溝部361m1が設けられている。個別電極361d2と個別電極361d3の間の切欠き部361d0に対応して、深さy2の矩形状の溝部361m2が設けられている。個別電極361d3と個別電極361d4の間の切欠き部361d0に対応して、深さy2の矩形状の溝部361m3が設けられている。個別電極361d4と個別電極361d5の間の切欠き部361d0に対応して、深さy1の矩形状の溝部361m4が設けられている。
【0069】
溝部の形状は矩形状に限られず、U字状、V字状など他の形状であってもよい。
【0070】
この深さが異なる溝部を有する実施形態によれば、発熱部の端部と中央付近の熱の不均衡を調整することが可能となる効果を有する。
【0071】
また、溝部の深さだけでなく、溝部の幅(x)のみ、あるいは、深さと幅を併せて変えた溝部を有する実施形態も可能である。
【0072】
<共通電極側にも切欠き部、溝部を有する場合>
上記実施形態では、矩形状の発熱部361bの一方の側縁には共通電極361cを有していた。本発明では、この側縁の共通電極にも切欠き部を設けることにより、個別電極に変えてもよい。そしてこの切欠き部は、他方の側縁の個別電極と同数としてもよいし、異なる数としてもよい。本発明のこのような実施形態には、発熱部の溝部を設ける実施形態と設けない実施形態がある。
【0073】
図14に、共通電極が切欠き部3611d0により2つの共通電極361c1,361c2に分けられた実施態様を示す。この実施形態では、共通電極側には、溝部が設けられていない。
【0074】
共通電極361c1はスイッチ361f1が接続されて電源362に接続されている。共通電極361c2はスイッチ361f2が接続されて電源362に接続されている。共通電極361c1,361c2をまとめて、共通電極361cと表すこともある。スイッチ361f1,361f2をまとめて、スイッチ361fと表すこともある。
【0075】
この実施形態では、共通電極が2つに分けられており、スイッチ361f1,361f2を選択的にオンすることにより、共通電極側の主たる発熱領域を変えることが可能である。
【0076】
図15に、共通電極が2つに分けられ、切欠き部361d0と、この切欠き部に対応する位置に溝部361n0を有する実施形態を示す。
【0077】
この実施形態は、共通電極361c1,共通電極361c2の間の切欠き部361d0に対応する位置に溝部361n0を有する。この点以外は、
図14の実施形態と同じであり、
図14と同一の符号を用いて示してある。
【0078】
この実施形態においても、共通電極が2つに分けられており、スイッチ361f1,361f2を選択的にオンし、かつ個別電極361d(361d1,361d2,361d3,361d4,361d5)の接続されているスイッチを選択的にオンすることにより、発熱領域を変えることが可能である。
【0079】
この実施形態では、溝部361n0を有しているので、
図14の実施形態の場合よりも共通電極側の発熱領域の選択を容易にすることが可能である。
【0080】
図16に両側縁の個別電極の数は同じ(この例では5個)でかつ、溝部を設けている位置が同じ場合の実施形態を示す。各部の符号の付け方は、
図15の場合と同様である。スイッチ361eを選択的にオンし、スイッチ361fを選択的にオンすることにより、各個別電極側の電極と共通電極側の電極の間の発熱部に発熱領域を形成することが可能である。
【0081】
図16の実施形態は、切欠き部の位置及び対応する溝部の位置が一致しているので、発熱領域の選択が個別になされて、電力消費を低減できる効果がある。
【0082】
図17に両側縁の個別電極の数は同じ(この例では5個)でかつ、溝部を設けている位置が異なる場合の実施形態の上面図を示す。各部の符号の付け方は、
図15の場合と同様である。スイッチ361eを選択的にオンし、スイッチ361fを選択的にオンすることにより、各個別電極側の電極と共通電極側の電極の間の発熱部に発熱領域を形成することが可能である。
【0083】
この実施形態では、電極の切欠き部及び対応する溝部の位置が、個別電極側と共通電極側とで、ずれているので、発熱領域の間の温度低下を抑制できる効果がある。
【0084】
<溝部の他の変形例>
なお、上述の
図5における発熱領域の数とそれぞれの幅は一例として挙げたものであり、これに限定はされない。MFP10が例えば5つの媒体サイズに対応していた場合には、発熱領域を各媒体サイズに合わせて5つに分けてもよい。すなわち、対応する媒体サイズに応じて発熱領域の数、分ける幅を自在に選択し、均一に発熱させることができる。同様に、媒体サイズの代わりに印刷サイズ(画像形成領域)の大小に基づいて給電対象の発熱領域を選択するように構成することもできる。また、
図5の例では、媒体が中央領域を通過する例を示したが、媒体が主走査方向(図示左右方向)における左側又は右側領域を通過する場合には、発熱領域の数、大きさ、位置を適宜変更すればよい。
【0085】
また、本実施形態では、通紙領域にラインセンサ(図示省略する)を配置し、通過する用紙のサイズと位置をリアルタイムで判定できるものとする。印刷動作の開始時に画像データあるいはMFP10内で媒体(用紙)を貯蔵されている給紙カセット18の情報から媒体サイズを判定する構成にしてもよい。
【0086】
<定着装置の構成が異なる他の実施形態>
上述の
図4に示した、定着装置の構成例では、発熱部361の発熱部側が無端ベルト363の内側に接して設けられ、対向するプレスローラ366方向に押圧されることにより、無端ベルト363とプレスローラ366に挟まれて移動する用紙Pに、トナーが加熱定着されるようになっていた。このときの無端ベルト363の駆動は、駆動モータが接続されるベルト搬送ローラ364によりなされていた。しかし、プレスローラ側から駆動して、用紙Pを移送するようにすることも可能である。
【0087】
このような例の定着装置の構成例を
図18に示す。
図18に示す定着装置では、プレスローラ側から駆動される。プレスローラ51と対向して断面円弧状のフィルムガイド52が設けられ、その外側に定着フィルム53が回転可能に取り付けられている。フィルムガイド52の内側には、セラミックヒータ54a、複数の発熱部54b、保護層54cが積層して設けられる。この積層部は、上記定着フィルムを介してプレスローラに圧接されニップ部を形成する。上述のように発熱部は並列に接続されており、温度制御回路55に接続される。温度制御回路55は図示しないスイッチング素子を開閉制御して、温度を制御する。
【0088】
この定着装置の作動中には、駆動モータに接続されたプレスローラ51が回転駆動して、接触している定着フィルム53を従動回転させる。このとき、左方から定着フィルム53とプレスローラ51間に入ってくる用紙Pを、発熱部54bにより加熱定着させ、右方に排出する。
【0089】
このように、本発明による定着装置は、プレスローラ側から駆動力を与える構造の定着装置とすることも可能である。
【0090】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。