特許第6978862号(P6978862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978862
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   H01G4/30 201C
   H01G4/30 201K
   H01G4/30 512
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-123910(P2017-123910)
(22)【出願日】2017年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-9290(P2019-9290A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】今井 敦史
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−029152(JP,A)
【文献】 特開2016−187036(JP,A)
【文献】 特開2003−022930(JP,A)
【文献】 特開2007−035850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内部電極層が誘電体層を介して積層された容量部を有する略直方体状のコンデンサ本体と、前記複数の内部電極層が交互に接続された1対の外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサであって、
前記コンデンサ本体の相対する2つの面の対向方向(前記外部電極が向き合う方向)を第1方向、他の相対する2つの面の対向方向を第2方向、残りの相対する2つの面の対向方向(前記内部電極層が積層される方向)を第3方向とし、各方向に沿う寸法をそれぞれ第1方向寸法、第2方向寸法、第3方向寸法としたとき、
前記容量部は、共有内部電極層を境として高容量部と低容量部とに前記第3方向に二分され、かつ、前記高容量部の容量>前記低容量部の容量の関係となっており、
前記コンデンサ本体を前記第1方向と直交する面で切断したときに現れる前記共有内部電極層の断面形状は、前記共有内部電極層と隣接する前記低容量部側の前記誘電体層に向かって張り出した湾曲部を少なくとも2箇所に有する断面形状となっており、
前記複数の内部電極層のうち前記共有内部電極層以外は、各々の湾曲部を有し、
前記各々の湾曲部は、前記第3方向において、前記共有内部電極層から離れるにしたがって湾曲度合いが小さくなる、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記共有内部電極層の断面形状は、前記湾曲部を、少なくとも前記共有内部電極層の前記第2方向両側に有する断面形状となっている、
請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記共有内部電極層の断面形状は、前記湾曲部を、前記共有内部電極層の前記第2方向両側とこれらの間に有する断面形状となっている、
請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記共有内部電極層の断面形状は、3個の前記湾曲部が前記第2方向に並んだ断面形状となっている、
請求項3に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記共有内部電極層の断面形状は、3個の前記湾曲部が平坦部を介して前記第2方向に並んだ断面形状となっている、
請求項3に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記共有内部電極層の断面形状は、前記湾曲部を、前記共有内部電極層の前記第2方向両側に有する断面形状となっている、
請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記共有内部電極層の断面形状は、2個の前記湾曲部が平坦部を介して前記第2方向に並んだ断面形状となっている、
請求項6に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記高容量部を構成する前記誘電体層の前記第3方向寸法は、0.3〜1.8μmの範囲内で設定されている、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記高容量部を構成する前記誘電体層の前記第3方向寸法は、0.3〜0.8μmの範囲内で設定されている、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
前記高容量部を構成する前記誘電体層の前記第3方向寸法は、0.3〜0.6μmの範囲内で設定されている、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項11】
前記複数の内部電極層よりも前記第3方向の外側に、誘電体層を介して1以上の内部電極層を備え、
前記1以上の内部電極層の少なくとも1つは、平坦である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項12】
前記複数の内部電極層よりも前記第3方向の外側に、誘電体層を介して1以上の内部電極層を備え、
前記1以上の内部電極層のうち前記第3方向において前記低容量部側の最も外側の内部電極層が平坦である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
後記特許文献1(特に図2および図6を参照)には、複数の内部電極層が誘電体層を介して積層された容量部を有する略直方体状のコンデンサ本体と、前記複数の内部電極層が交互に接続された1対の外部電極とを備え、容量部が共有内部電極層を境として高容量部と低容量部とに積層方向に二分された積層セラミックコンデンサが開示されている。高容量部の容量>低容量部の容量の関係は、高容量部を構成する誘電体層の厚さ<低容量部を構成する誘電体層の厚さの関係によって満足されている。
【0003】
ところで、前掲の積層セラミックコンデンサは製造時に未焼成のコンデンサ本体を焼成する必要があるが、共有内部電極層に隣接する高容量部側の誘電体層の厚さ<共有内部電極層に隣接する低容量部側の誘電体層の厚さを原因として、焼成過程で共有内部電極層とこの共有内部電極層に隣接する低容量部側の誘電体層との間に剥離が生じ、この剥離がコンデンサ本体内に残存する懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−243657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、共有内部電極層に隣接する高容量部側の誘電体層の厚さ<共有内部電極層に隣接する低容量部側の誘電体層の厚さの関係がある場合でも、共有内部電極層とこの共有内部電極層に隣接する低容量部側の誘電体層との間に剥離が残存し難い積層セラミックコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る積層セラミックコンデンサは、複数の内部電極層が誘電体層を介して積層された容量部を有する略直方体状のコンデンサ本体と、前記複数の内部電極層が交互に接続された1対の外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサであって、前記コンデンサ本体の相対する2つの面の対向方向(前記外部電極が向き合う方向)を第1方向、他の相対する2つの面の対向方向を第2方向、残りの相対する2つの面の対向方向(前記内部電極層が積層される方向)を第3方向とし、各方向に沿う寸法をそれぞれ第1方向寸法、第2方向寸法、第3方向寸法としたとき、前記容量部は、共有内部電極層を境として高容量部と低容量部とに第3方向に二分され、かつ、前記高容量部の容量>前記低容量部の容量の関係となっており、前記コンデンサ本体を第1方向と直交する面で切断したときに現れる前記共有内部電極層の断面形状は、前記共有内部電極層と隣接する前記低容量部側の前記誘電体層に向かって張り出した湾曲部を少なくとも2箇所に有する断面形状となっており、前記複数の内部電極層のうち前記共有内部電極層以外は、各々の湾曲部を有し、前記各々の湾曲部は、前記第3方向において、前記共有内部電極層から離れるにしたがって湾曲度合いが小さくなる
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る積層セラミックコンデンサによれば、共有内部電極層とこの共有内部電極層に隣接する低容量部側の誘電体層との間に剥離が残存し難い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明を適用した積層セラミックコンデンサの側面図である。
図2図2図1に示したコンデンサ本体をA−A線に沿う面で切断した拡大断面図であり、共有内部電極層の第1断面形状CS1を示す図でもある
図3図3は共有内部電極層の第2断面形状CS2を示す図2対応の部分断面図である。
図4図4は共有内部電極層の第3断面形状CS3を示す図2対応の部分断面図である。
図5図5は共有内部電極層が第1断面形状CS1に係る検証結果を示す図である。
図6図6は共有内部電極層が第2断面形状CS2に係る検証結果を示す図である。
図7図7は共有内部電極層の第3断面形状CS3に係る検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
なお、以下の説明では、便宜上、後記コンデンサ本体11の相対する2つの面の対向方向(図1の左右方向に相当、後記外部電極12が向き合う方向に相当)を「第1方向d1」、他の相対する2つの面の対向方向(図2の左右方向に相当)を「第2方向d2」、残りの相対する2つの面の対向方向(図1および図2の上下方向に相当、後記内部電極層11a1〜11a3が積層される方向に相当)を「第3方向d3」と表記する。また、各構成要素の第1方向d1に沿う寸法を「第1方向寸法D1[構成要素の符号]」、第2方向d2に沿う寸法を「第2方向寸法D2[構成要素の符号]」、第3方向d3に沿う寸法を「第3方向寸法D3[構成要素の符号]」と表記する。ちなみに、各寸法D1[構成要素の符号]〜D3[構成要素の符号]は設計上の基準寸法を意味するものであって、製造上の寸法公差を含むものではない。
【0010】
《積層セラミックコンデンサ10の全体構成》
まず、図1および図2を用いて、本発明を適用した積層セラミックコンデンサ10の全体構成について説明する。
【0011】
参考までに、図1および図2の基になっているサンプル(積層セラミックコンデンサ10)の第1方向寸法D1[10]と第2方向寸法D2[10]と第3方向寸法D3[10]は、それぞれ1000μmと500μmと500μmである。
【0012】
積層セラミックコンデンサ10は、略直方体状のコンデンサ本体11と1対の外部電極12とを備えている。外部電極12は、コンデンサ本体11の第1方向d1の端部それぞれに設けられている。
【0013】
コンデンサ本体11は、複数の内部電極層(11a1〜11a3)が誘電体層(11b1および11b2)を介して第3方向d3に積層された容量部(符号省略)を内部に有している。この容量部は、共有内部電極層11a3を境として高容量部HCと低容量部LCとに第3方向d3に二分されている。
【0014】
図1および図2に準じて説明すると、高容量部HCは、30層の内部電極層11a1と1層の共有内部電極層11a3とが誘電体層11b1を介して第3方向d3に積層された構成となっている。一方、低容量部LCは、6層の内部電極層11a2と1層の共有内部電極層11a3とが誘電体層11b2を介して第3方向d3に積層された構成となっている。また、高容量部HCを構成する30層の誘電体層11b1それぞれの第3方向寸法D3[11b1]よりも、低容量部LCを構成する6層の誘電体層11b2それぞれの第3方向寸法D3[11b2]は大きくなっている。
【0015】
すなわち、高容量部HCの容量>低容量部LCの容量の関係は、高容量部HCを構成する各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]<低容量部LCを構成する各誘電体層11b2の第3方向寸法D3[11b2]の関係によって満足されている。高容量部HCと低容量部LCとが第3方向d3に二分される境界は、先に述べたように共有内部電極層11a3となる。共有内部電極層11a3を境界として、低容量部LCを構成する各誘電体層11b2の第3方向寸法D3[11b2]は、高容量部HCを構成する各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]よりも大きくなっている。この各誘電体層11b2の第3方向寸法D3[11b2]と各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]を比較する方法としては、例えば図2に示した断面において低容量部LCを構成する各誘電体層11b2に対して異なる位置10箇所で第3方向寸法D3[11b2]を測定してその平均値を算出し、高容量部HCを構成する各誘電体層11b1に対して異なる位置10箇所で第3方向寸法D3[11b1]を測定してその平均値を算出して、両平均値を比較する方法が採用できる。すなわち、このような方法を採用すれば、各誘電体層11b2の第3方向寸法D3[11b2]と各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]の大小関係を正確に判断することができる。なお、この比較方法は、各内部電極層11a1〜11a3等の第3方向寸法D3を比較するときに適用しても良い。
【0016】
さらに、30層の内部電極層11a1の第3方向寸法D3[11a1](図示省略)と6層の内部電極層11a2の第3方向寸法D3[11a2](図示省略)と1層の共有内部電極層11a3の第3方向寸法D3[11a3](図示省略)は同じであり、第2方向寸法D2[11a1]と第2方向寸法D2[11a2]と第2方向寸法D2[11a3]も同じであり、第1方向寸法D1[11a1](図示省略)と第1方向寸法D1[11a2](図示省略)と第1方向寸法D1[11a3](図示省略)も同じである。
【0017】
参考までに、前記サンプルにおけるコンデンサ本体11の第1方向寸法D1[11]と第2方向寸法D2[11]と第3方向寸法D3[11]は、それぞれ960μmと460μmと460μmである。また、前記サンプルにおける各内部電極層11a1の第2方向寸法D2[11a1]と、各内部電極層11a2の第2方向寸法D2[11a2]と、共有内部電極層11a3の第2方向寸法D2[11a3]は、それぞれ390μmである。
【0018】
図2から分かるように、高容量部HCと低容量部LCは、第3方向d3両側の誘電体マージン部11cと第2方向d2両側の誘電体マージン部11dによって囲まれている。また、図1から分かるように、各内部電極層11a1と各内部電極層11a2と共有内部電極層11a3は、第1方向d1において、1対の外部電極12の後記基礎部分(符号省略)に交互に接続されている。
【0019】
すなわち、高容量部HCと低容量部LCは1対の外部電極12に並列に接続されており、高容量部HCの低容量部LCと合成容量が積層セラミックコンデンサ10の容量となっている。なお、高容量部HCの容量は当該高容量部HCを構成する各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]および各内部電極層11a1の第3方向寸法D3[11a1]等に基づいて計算でき、低容量部LCの容量は当該低容量部LCを構成する各誘電体層11b2の第3方向寸法D3[11b2]および各内部電極層11a2の第3方向寸法D3[11a2]等に基づいて計算できる。換言すれば、高容量部HCの容量と低容量部LCの容量との大小関係は、高容量部HCを構成する各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]および各内部電極層11a1の第3方向寸法D3[11a1]と、低容量部LCを構成する各誘電体層11b2の第3方向寸法D3[11b2]および各内部電極層11a2の第3方向寸法D3[11a2]とから、推定することができる。勿論、高容量部HCの容量と低容量部LCの容量との大小関係は、積層セラミックコンデンサ10から各外部電極12を除去した後、高容量部HCを構成する各内部電極層11a1のみに接続する仮電極を形成し、かつ、低容量部LCを構成する各内部電極層11a2のみに接続する仮電極を形成して、高容量部HCの容量と低容量部LCの容量を個別に測定することによっても把握することもできる。
【0020】
参考までに、前記サンプルの各誘電体マージン部11cの第3方向寸法D3[11c]は60μmであり、各誘電体マージン部11dの第2方向寸法D2[11d]は35μmである。
【0021】
各外部電極12は、コンデンサ本体11の第1方向d1の一面(図1の左面)または第1方向d1の他面(図1の右面)に存する基礎部分(符号省略)と、コンデンサ本体11の第3方向d3の一面(図1の下面)に存する第1部分(符号省略)と、コンデンサ本体11の第3方向d3の他面(図1の上面)に存する第2部分(符号省略)と、コンデンサ本体11の第2方向d2の一面(図2の左面)に存する第3部分(符号省略)と、コンデンサ本体11の第2方向d2の他面(図2の右面)に存する第4部分(符号省略)とを連続して有する5面タイプの外部電極である。
【0022】
図示を省略したが、各外部電極12には、コンデンサ本体11に接した下地金属膜とその外面に接した表面金属膜との2層構成や、これら下地金属膜と表面金属膜との間に少なくとも1つの中間金属膜を有する多層構成が採用されている。
【0023】
参考までに、前記サンプルにおける各外部電極12の第1部分〜第4部分の第1方向寸法(符号省略)は300μm(好ましくは第1方向寸法D1[10]の1/5〜2/5の範囲内で設定)である。また、前記サンプルにおける各外部電極12の基礎部分の第1方向寸法(符号省略)と、第1部分および第2部分の第3方向寸法(符号省略)と、第3部分および第4部分の第2方向寸法(符号省略)は、それぞれ20μm(好ましくは5〜25μmの範囲内で設定)である。
【0024】
先に述べた各構成要素の材料について補足すると、コンデンサ本体11の各内部電極層11a1と各内部電極層11a2と共有内部電極層11a3の主成分は、好ましくはニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、これらの合金等から選択した金属である。また、コンデンサ本体11の各誘電層11b1と各誘電体層11b2と各誘電体マージン部11cと各誘電体マージン部11dの主成分は、好ましくはチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、酸化チタン等から選択した誘電体セラミックスである。ちなみに、一般的な積み重ね製法の場合、各誘電層11b1と各誘電体層11b2と各誘電体マージン部11dの主成分は同じになるが、これら主成分と各誘電体マージン部11cの主成分を異ならせることも可能である。
【0025】
さらに、各外部電極12が2層構成または多層構成の場合、下地金属膜の主成分は、好ましくはニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、これらの合金等から選択した金属であり、表面金属膜の主成分は、好ましくは銅、スズ、パラジウム、金、亜鉛、これらの合金等から選択した金属であり、中間金属膜の主成分は、好ましくは白金、パラジウム、金、銅、ニッケル、これらの合金等から選択した金属である。ちなみに、下地金属膜は焼き付け金属膜とメッキ金属膜のいずれでも良く、表面金属膜は好ましくはメッキ金属膜から成り、中間金属膜は好ましくはメッキ金属膜から成る。
【0026】
《共有内部電極層11a3の断面形状》
つぎに、図2図4を用いて、コンデンサ本体11を図1に示したA−A線に沿う面、すなわち、第1方向d1と直交する面で切断したときに現れる共有内部電極層11a3の断面形状について説明する。
【0027】
なお、後記湾曲部CPは、共有内部電極層11a3において当該共有内部電極層11a3と隣接する低容量部LC側の誘電体層に向かって張り出した部分を指すものであって、断面形が綺麗な弓形や円弧のものに限らず、多少歪でも断面形が弓形や円弧の近似とみなせるものも含む。また、後記湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]は、図2図4に示した共有内部電極層11a3の非張り出し箇所の下面を基準とした張り出し箇所の同下面側の第2方向d2の寸法を指す。さらに、後記湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP](図示省略)は、図2図4に示した共有内部電極層11a3の非張り出し箇所の下面を基準とした張り出し箇所の同下面側の第3方向d3の最大寸法を指す。さらに、後記平坦部FPは、共有内部電極層11a3において当該共有内部電極層11a3と隣接する低容量部LC側の誘電体層に向かって張り出していない部分を指すものであって、断面形が綺麗な直線のものに限らず、多少の凹凸があっても断面形が直線の近似とみなせるものも含む。
【0028】
〈第1断面形状CS1(図2を参照)〉
図2に示した共有内部電極層11a3の第1断面形状CS1は、共有内部電極層11a3と隣接する低容量部LC側の誘電体層11b2に向かって張り出した湾曲部CPを、第2方向d2の両側とその間に有する断面形状となっている。つまり、3個の湾曲部CPが第2方向d2に並んだ断面形状となっている。図2には3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]と第3方向寸法D3[CP](図号省略)が同じものを示してあるが、3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]は必ずしも同じでなくても良く、具体的には3個の湾曲部CPのうちの1個または2個の第2方向寸法D2[CP]が残りの第2方向寸法D2[CP]と異なっていても良い。また、3個の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]も必ずしも同じでなくても良く、具体的には3個の湾曲部CPのうちの1個または2個の第3方向寸法D3[CP]が残りの第3方向寸法D3[CP]と異なっていても良い。
【0029】
〈第2断面形状CS2(図3を参照)〉
図3に示した共有内部電極層11a3の第2断面形状CS2は、共有内部電極層11a3と隣接する低容量部LC側の誘電体層11b2に向かって張り出した湾曲部CPを、第2方向d2の両側とその間に有し、かつ、第2方向d2で隣接する湾曲部CPの間に平坦部FP(非湾曲部分)を有する断面形状となっている。つまり、3個の湾曲部CPが平坦部FPを介して第2方向d2に並んだ断面形状となっている。図3には3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]と第3方向寸法D3[CP](図号省略)が同じものを示してあるが、3個の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]は必ずしも同じでなくても良く、具体的には3個の湾曲部CPのうちの1個または2個の第2方向寸法D2[CP]が残りの第2方向寸法D2[CP]と異なっていても良い。また、3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]も必ずしも同じでなくても良く、具体的には3個の湾曲部CPのうちの1個または2個の第3方向寸法D3[CP]が残りの第3方向寸法D3[CP]と異なっていても良い。
【0030】
〈第3断面形状CS3(図4を参照)〉
図4に示した共有内部電極層11a3の第3断面形状CS3は、共有内部電極層11a3と隣接する低容量部LC側の誘電体層11b2に向かって張り出した湾曲部CPを、第2方向d2の両側に有し、かつ、第2方向d2で隣接する湾曲部CPの間に平坦部FP(非湾曲部分)を有する断面形状となっている。つまり、2個の湾曲部CPが平坦部FPを介して第2方向d2に並んだ断面形状となっている。図4には2個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]と第3方向寸法D3[CP](図号省略)が同じものを示してあるが、2個の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]は必ずしも同じでなくても良く、具体的には2個の湾曲部CPのうちの1個の第2方向寸法D2[CP]が残りの第2方向寸法D2[CP]と異なっていても良い。また、2個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]も必ずしも同じでなくても良く、具体的には2個の湾曲部CPのうちの1個の第3方向寸法D3[CP]が残りの第3方向寸法D3[CP]と異なっていても良い。
【0031】
《各断面形状CS1〜CS3に基づいて課題が解決できるか否かの検証》
つぎに、図5図7を用いて、図2図4に示した共有内部電極層11a3の第1断面形状CS1、第2断面形状CS2および第3断面形状CS3に基づいて課題が解決できるか否か、すなわち、剥離残存の抑制ができているか否かを検証した結果について説明する。
【0032】
図5図7の説明〉
図5のサンプル01は比較のためのサンプルであり、サンプル02〜12は図2に示した共有内部電極層11a3の第1断面形状CS1に対応したサンプルである。また、図5の最も左の「D2[CP]・D3[CP]」は図2に示した左側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]および第3方向寸法D3[CP]であり、その右の「D2[CP]・D3[CP]」は図2に示した中央の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]および第3方向寸法D3[CP]であり、その右の「D2[CP]・D3[CP]」は図2に示した右側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]および第3方向寸法D3[CP]である。
【0033】
図6のサンプル13は比較のためのサンプルであり、サンプル14〜24は図3に示した共有内部電極層11a3の第2断面形状CS2に対応したサンプルである。また、図6の最も左の「D2[CP]・D3[CP]」は図3に示した左側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]および第3方向寸法D3[CP]であり、その右の「D2[FP]」は図3に示した左側の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]であり、その右の「D2[CP]・D3[CP]」は図3に示した中央の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]および第3方向寸法D3[CP]であり、その右の「D2[FP]」は図3に示した右側の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]であり、その右の「D2[CP]・D3[CP]」は図3に示した右側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]および第3方向寸法D3[CP]である。
【0034】
図7のサンプル25は比較のためのサンプルであり、サンプル26〜36は図4に示した共有内部電極層11a3の第3断面形状CS3に対応したサンプルである。また、図7の最も左の「D2[CP]・D3[CP]」は図4に示した左側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]および第3方向寸法D3[CP]であり、その右の「D2[FP]」は図4に示した平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]であり、その右の「D2[CP]・D3[CP]」は図4に示した右側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]および第3方向寸法D3[CP]である。
【0035】
図5のサンプル01と図6のサンプル13と図7のサンプル25は同じものであるが、各断面形状CS1〜CS3に対応したサンプル02〜12、14〜24および26〜36と対比し易いように、サンプル番号を代えて各図の筆頭に記載してある。
【0036】
〈サンプルの作製方法および仕様の説明〉
各断面形状CS1〜CS3に対応したサンプル02〜12、14〜24および26〜36を作製するときには、最初に、チタン酸バリウムを主成分とする厚さが異なる第1グリーンシートと、チタン酸バリウムを主成分とし、かつ、第1グリーンシートよりも厚さが大きい第2グリーンシートと、ニッケルを主成分とする内部電極層パターン群を第1グリーンシートの表面に形成した第3グリーンシートと、ニッケルを主成分とする内部電極層パターン群を第2グリーンシートの表面に形成した第4グリーンシートとを用意する。
【0037】
続いて、第1グリーンシートまたは第2グリーンシートから取り出した単位シートを所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返すことにより、一方の誘電体マージン部11cに対応した部位を形成し、そして、第4グリーンシートから取り出した単位シート(内部電極層パターン群を含む)を所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返すことにより、低容量部LCに対応した部位を形成する。
【0038】
続いて、最上位の内部電極層パターン群(共有内部電極層11a3となる内部電極層パターン群)に整形板を押し当てて各内部電極層パターンを局部的に窪ませ、各内部電極層パターンに湾曲部CPに対応した箇所を形成する。整形板の押圧面には、断面形が弓形または円弧を成す微細凸部が設けられている。
【0039】
続いて、第3グリーンシートから取り出した単位シート(内部電極層パターン群を含む)を所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返すことにより、高容量部HCに対応した部位を形成し、そして、第1グリーンシートまたは第2グリーンシートから取り出した単位シートを所定枚数に達するまで積み重ねて熱圧着する作業を繰り返すことにより、他方の誘電体マージン部11cに対応した部位を形成する。
【0040】
続いて、積み重ねたもの全体に対して熱圧着を施すことにより、多数個取りに対応した未焼成の積層シートを作製する。続いて、多数個取りに対応した未焼成の積層シートを格子状に切断することにより、未焼成のコンデンサ本体11を作製する。続いて、未焼成のコンデンサ本体11を焼成炉に投入し、還元雰囲気においてチタン酸バリウムとニッケルに応じた温度プロファイルにて多数個一括で焼成(脱バインダ処理と焼成処理を含む)する。
【0041】
これにより、各断面形状CS1〜CS3に対応したサンプル02〜12、14〜24および26〜36に該当するコンデンサ本体11が作製される。比較のためのサンプル01、13および25を作製する方法は、第4グリーンシートから取り出した単位シート(内部電極層パターン群を含む)を積み重ねて熱圧着した後に最上位の内部電極層パターン群(共有内部電極層11a3となる内部電極層パターン群)に整形板を押し当てる作業を除外した他は、前記方法と同じである。
【0042】
なお、図2図4において、各共有内部電極層11a3と第3方向d3で近い位置に存する複数の内部電極層11a1および11a2を、各共有内部電極層11a3の断面形状と相似の断面形状としてあるのは、
・第4グリーンシートから取り出した単位シート(内部電極層パターン群を含む)を積み
重ねて熱圧着した後に最上位の内部電極層パターン群(共有内部電極層11a3となる
内部電極層パターン群)に整形板を押し当てたときに、その下側の内部電極層パターン
群にも局部的な張り出し(窪み)が相似的に形成されること
・整形板を押し当てた後に第3グリーンシートから取り出した単位シート(内部電極層パ
ターン群を含む)を積み重ねて熱圧着したときに、最上位の内部電極層パターン群(共
有内部電極層11a3となる内部電極層パターン群)よりも上側の内部電極層パターン
群にも局部的な張り出し(窪み)が相似的に形成されること
に基づいている。
【0043】
各断面形状CS1〜CS3に対応したサンプル02〜12、14〜24および26〜36の仕様(共有内部電極層の湾曲部を除く)は、図1および図2に示したコンデンサ本体11に照らして説明すると、
・コンデンサ本体11の第1方向寸法D1[11]と第2方向寸法D2[11]と第3方
向寸法D3[11]は、それぞれ960μmと460μmと460μm
・各内部電極層11a1の第2方向寸法D2[11a1]と各内部電極層11a2の第2
方向寸法D2[11a2]と共有内部電極層11a3の第2方向寸法D2[11a3]
は、それぞれ390μm
・各内部電極層11a1の第3方向寸法D3[11a1]と各内部電極層11a2の第3
方向寸法D3[11a2]と共有内部電極層11a3の第3方向寸法D3[11a3]
は、それぞれ1μm
・各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]は1.5μm、各誘電体層11b
2の第3方向寸法D3[11b2]は6μm
・各誘電体マージン部11cの第3方向寸法D3[11c]は60μm、各誘電体マージ
ン部11dの第2方向寸法D2[11d]は35μm
であり、比較のためのサンプル01、11および21の仕様もこれと同様である。
【0044】
〈検証方法の説明〉
各断面形状CS1〜CS3に対応したサンプル02〜12、14〜24および26〜36を図1に示したA−A線に沿う面、すなわち、第1方向d1と直交する面で切断し、切断面を研磨した後、切断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)にて観察して、共有内部電極層11a3とこの共有内部電極層11a3に隣接する低容量部LC側の誘電体層11b2との間に剥離が存在するか否かを確認した。剥離については、共有内部電極層11a3とこの共有内部電極層11a3に隣接する低容量部LC側の誘電体層11b2との間に第2方向d2において5μm以上の連続した離反が確認できた場合に、これを剥離有りと判定した。また、比較のためのサンプル01、11および21についても、これと同様の方法によって剥離が存在するか否かを確認した。図5図7の最も右の「剥離」には、各サンプル10個のうちで剥離の存在が確認されたものの数をn/10で記してある。
【0045】
〈第1断面形状CS1の検証結果(図5を参照)〉
サンプル02〜08は、3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を130μmとし、各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1〜15μmの間で段階的に増加させたものである。サンプル09は、3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を130μmとし、左右の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を15μmとし、中央の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を10μmとしたものである。サンプル10は、3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を130μmとし、左右の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を2μmとし、中央の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1μmとしたものである。サンプル11は、左右の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を160μm、中央の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を70μmとし、左側の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を6μmとし、中央の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を4μmとし、右側の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を8μmとしたものである。サンプル12は、左側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を70μm、中央の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を170μm、右側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を150μmとし、3個の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1μmとしたものである。
【0046】
サンプル02〜12は、いずれも、比較のためのサンプル01に比べて剥離の存在が確認されたものの数が極めて少ない。すなわち、図2に示した共有内部電極層11a3の第1断面形状CS1に対応したサンプル02〜12は、いずれも、課題(剥離残存の抑制)が確実に解決できている。
【0047】
また、サンプル02〜08のうち、サンプル02および03で剥離の存在が確認されたもののサンプル04〜08では剥離の存在は確認されなかった。この理由は、サンプル04〜08における各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]がサンプル02および03における各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]よりも大きく、これにより接触面積が増して剥離が発生し難くなったと推測される。さらに、サンプル03および10の「剥離」の結果を比較すると、中央の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を左右の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]よりも小さくすることが、剥離の発生を抑制するために好ましいと推測される。さらに、各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を4〜15μmの範囲内、換言すれば、各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を各誘電体層11b2の第3方向寸法D3[11b2]の66〜250%の範囲内に設定することが好ましいと推測される。
【0048】
さらに、サンプル09〜12の「剥離」の結果からすると、3個の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]は必ずしも同じでなくても剥離残存の抑制を図ることができると推測できるとともに、3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]は必ずしも同じでなくても剥離残存の抑制を図ることができると推測される。
【0049】
〈第2断面形状CS2の検証結果(図6を参照)〉
サンプル14〜20は、3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を90μmとし、2個の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]を60μmとし、各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1〜15μmの間で段階的に増加させたものである。サンプル21は、3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を90μmとし、2個の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]を60μmとし、左右の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を15μmとし、中央の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を10μmとしたものである。サンプル22は、3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を90μmとし、2個の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]を60μmとし、左右の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を2μmとし、中央の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1μmとしたものである。サンプル23は、左右の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を110μm、中央の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を50μmとし、2個の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]を60μmとし、左側の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を6μmとし、中央の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を4μmとし、右側の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を11μmとしたものである。サンプル24は、左側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を30μm、中央の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を130μm、右側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を70μmとし、2個の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]を80μmとし、3個の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1μmとしたものである。
【0050】
サンプル14〜24は、いずれも、比較のためのサンプル13に比べて剥離の存在が確認されたものの数が極めて少ない。すなわち、図3に示した共有内部電極層11a3の第2断面形状CS2に対応したサンプル14〜24は、いずれも、課題(剥離残存の抑制)が確実に解決できている。
【0051】
また、サンプル14〜20のうち、サンプル14および15で剥離の存在が確認されたもののサンプル16〜20では剥離の存在は確認されなかった。サンプル14および15よりもサンプル16〜20の剥離数が少ないことが確認された。この理由は、サンプル16〜20における各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]がサンプル14および15における各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]よりも大きく、これにより接触面積が増して剥離が発生し難くなったと推測される。さらに、サンプル15および22の「剥離」の結果を比較すると、中央の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を左右の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]よりも小さくすることが、剥離の発生を抑制するために好ましいと推測される。さらに、各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を4〜15μmの範囲内、換言すれば、各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を各誘電体層11b2の第3方向寸法D3[11b2]の66〜250%の範囲内に設定することが好ましいと推測される。
【0052】
さらに、サンプル21〜24の「剥離」の結果からすると、3個の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]は必ずしも同じでなくても剥離残存の抑制を図ることができると推測できるとともに、3個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]は必ずしも同じでなくても剥離残存の抑制を図ることができると推測できる。
【0053】
〈第3断面形状CS3の検証結果(図7を参照)〉
サンプル24〜32は、2個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を130μmとし、1個の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]を130μmとし、各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1〜15μmの間で段階的に増加させたものである。サンプル33は、2個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を130μmとし、1個の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]を130μmとし、左側の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を15μmとし、右側の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を10μmとしたものである。サンプル34は、2個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を130μmとし、1個の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]を130μmとし、左側の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1μmとし、右側の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1.5μmとしたものである。サンプル35は、2個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を160μmとし、1個の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]を70μmとし、2個の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1μmとしたものである。サンプル36は、左側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を100μmとし、右側の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]を90μmとし、1個の平坦部FPの第2方向寸法D2[FP]を200μmとし、2個の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を1μmとしたものである。
【0054】
サンプル26〜36は、いずれも、比較のためのサンプル25に比べて剥離の存在が確認されたものの数が極めて少ない。すなわち、図4に示した共有内部電極層11a3の第3断面形状CS3に対応したサンプル26〜36は、いずれも、課題(剥離残存の抑制)が確実に解決できている。
【0055】
また、サンプル26〜32のうち、サンプル26および27よりもサンプル28〜32の剥離数が少ないことが確認された。この理由は、サンプル28〜32における各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]がサンプル26および27における各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]よりも大きく、これにより接触面積が増して剥離が発生し難くなったと推測される。さらに、各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を4〜15μmの範囲内、換言すれば、各湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を各誘電体層11b2の第3方向寸法D3[11b2]の66〜250%の範囲内に設定することが好ましいと推測される。
【0056】
さらに、サンプル33〜36の「剥離」の結果からすると、2個の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]は必ずしも同じでなくても剥離残存の抑制を図ることができる推測できるともに、2個の湾曲部CPの第2方向寸法D2[CP]は必ずしも同じでなくても剥離残存の抑制を図ることができると推測できる。
【0057】
〈補足〉
各断面形状CS1〜CS3に対応したサンプル02〜12、14〜24および26〜36に基づく各検証結果は前記のとおりであるが、これら検証結果を踏まえると以下のことも言える。
(1)共有内部電極層11a3が有する湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を第3方
向d3で大きく取ると、剥離を効果的に抑制できる。
(2)共有内部電極層11a3が有する湾曲部CPの個数は2個よりも3個の方が、剥離
を効果的に抑制できる。
(3)共有内部電極層11a3が有する湾曲部CPの個数が3個の場合、左右の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]よりも中央の湾曲部CPの第3方向寸法D3[CP]を小さくすると、剥離を効果的に抑制できる。
【0058】
《変形例》
つぎに、前述の積層セラミックコンデンサ10の変形例について説明する。
【0059】
〈M1〉積層セラミックコンデンサ10として第1方向寸法D1[10]>第2方向寸法D2[10]=第3方向寸法D3[10]の関係を有するものを示したが、第1方向寸法D1[10]>第2方向寸法D2[10]>第3方向寸法D3[10]の関係や、第1方向寸法D1[10]>第3方向寸法D3[10]>第2方向寸法D2[10]の関係や、第2方向寸法D2[10]>第1方向寸法D1[10]=第3方向寸法D3[10]の関係や、第2方向寸法D2[10]>第1方向寸法D1[10]>第3方向寸法D3[10]の関係や、第2方向寸法D2[10]>第3方向寸法D3[10]>第1方向寸法D1[10]の積層セラミックコンデンサであっても、前記同様の効果を得ることができる。
【0060】
〈M2〉積層セラミックコンデンサ10として30層の内部電極層11a1と6層の内部電極層11a2を示したが、高容量部HCを構成する各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]よりも低容量部LCを構成する各誘電体層11b2の第3方向寸法D3[11b2]が大きいという関係が満足されていれば、前記同様の効果を得ることができる。
【0061】
〈M3〉積層セラミックコンデンサ10の各外部電極12として5面タイプの外部電極を示したが、コンデンサ本体11の第1方向d1の一面(図1の左面)または第1方向d1の他面(図1の右面)に存する基礎部分(符号省略)と、コンデンサ本体11の第3方向d3の一面(図1の下面)に存する第1部分(符号省略)と、コンデンサ本体11の第3方向d3の他面(図1の上面)に存する第2部分(符号省略)とを連続して有する3面タイプの外部電極や、コンデンサ本体11の第1方向d1の一面(図1の左面)または第1方向d1の他面(図1の右面)に存する基礎部分(符号省略)と、コンデンサ本体11の第3方向d3の一面(図1の下面)に存する第1部分(符号省略)とを連続して有する2面タイプの外部電極であっても、前記同様の効果を得ることができる。
【0062】
〈M4〉高容量部HCを構成する各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]として1.5μmを例示したが、同第3方向寸法D3[11b1]は0.3〜1.8μmの範囲内で適宜設定可能である。この範囲は0.3〜0.8μmとしても良く、0.3〜0.6μmとしても良い。すなわち、高容量部HCを構成する各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]を小さくすれば、積層セラミックコンデンサの小型化と高容量化を実現できる。
【0063】
〈M5〉各断面形状CS1〜CS3に対応したサンプル02〜12、14〜24および26〜36の仕様(共有内部電極層の湾曲部を除く)、換言すれば、コンデンサ本体11の仕様は、課題(剥離残存の抑制)が解決できるか否かを検証するための一例である。すなわち、
・コンデンサ本体11の第1方向寸法D1[11]と第2方向寸法D2[11]と第3方
向寸法D3[11]
・各内部電極層11a1の第2方向寸法D2[11a1]と各内部電極層11a2の第2
方向寸法D2[11a2]と共有内部電極層11a3の第2方向寸法D2[11a3]
・各内部電極層11a1の第3方向寸法D3[11a1]と各内部電極層11a2の第3
方向寸法D3[11a2]と共有内部電極層11a3の第3方向寸法D3[11a3]
・各誘電体層11b1の第3方向寸法D3[11b1]と各誘電体層11b2の第3方向
寸法D3[11b2]
・各誘電体マージン部11cの第3方向寸法D3[11c]と第2方向d2両側の誘電体
マージン部11dの第2方向寸法D2[11d]
のそれぞれを他の数値に変えても前記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
10…積層セラミックコンデンサ、11…コンデンサ本体、HC…高容量部、LC…低容量部、11a1,11a2…内部電極層、11a3…共有内部電極層、11b1…高容量部の誘電体層、11b2…低容量部の誘電体層、CP…共有内部電極層の湾曲部、FP…共有内部電極層の平坦部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7