特許第6978879号(P6978879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978879
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】ボイラの空気送給システム
(51)【国際特許分類】
   F23C 99/00 20060101AFI20211125BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   F23C99/00 305
   F23N5/00 T
   F23N5/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-173548(P2017-173548)
(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公開番号】特開2019-49384(P2019-49384A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年1月31日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】川上 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】山下 登敏
(72)【発明者】
【氏名】森 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大庭 真彦
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−065305(JP,A)
【文献】 特開平10−339407(JP,A)
【文献】 米国特許第04739713(US,A)
【文献】 特開平07−098103(JP,A)
【文献】 特開平04−124516(JP,A)
【文献】 特開平09−072534(JP,A)
【文献】 特開2001−289405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 99/00
F23L 3/00
F23N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後壁と当該前後壁に交わる側壁とからなる炉壁により燃焼室が形成され、前記前後壁の少なくとも一方には複数のバーナが設けられ、前記炉壁には少なくとも1つのサイド噴流ポートが設けられ、前記複数のバーナは、鉛直方向及び水平方向に複数段及び複数列に配置され、前記サイド噴流ポートは、最下段のバーナ以上で最上段のバーナ以下の高さ範囲内であって最外列のバーナよりも外側に配置されるボイラの空気送給システムであって、
二次通風機が昇圧した二次空気を前記バーナへ送給する二次空気流路と、
前記二次通風機が昇圧した二次空気よりも高圧となるように一次通風機が昇圧した一次空気によって、燃料混入部で混入された燃料を前記バーナへ搬送する一次空気流路と、
前記一次通風機と前記燃料混入部との間で前記一次空気流路から分岐し、前記一次通風機が昇圧した一次空気を前記サイド噴流ポートへ送給する分岐流路と、を備え、
前記複数のバーナの各々は、一次空気によって搬送された燃料を一次空気とともに前記燃焼室へ投入し、前記二次空気流路から送給された二次空気を燃焼用空気として前記燃焼室へ供給し
記サイド噴流ポートは、前記分岐流路から送給された一次空気のみを噴流空気として前記燃焼室へ供給し、
前記分岐流路には、流路を絞る複数の降圧部が設けられ、
前記分岐流路を流通する一次空気は、前記複数の降圧部によって段階的に降圧される
ことを特徴とするボイラの空気送給システム。
【請求項2】
前後壁と当該前後壁に交わる側壁とからなる炉壁により燃焼室が形成され、前記前後壁の少なくとも一方には複数のバーナが設けられ、前記炉壁には少なくとも1つのサイド噴流ポートが設けられ、前記複数のバーナは、鉛直方向及び水平方向に複数段及び複数列に配置され、前記サイド噴流ポートは、最下段のバーナ以上で最上段のバーナ以下の高さ範囲内であって最外列のバーナよりも外側に配置されるボイラの空気送給システムであって、
二次通風機が昇圧した二次空気を前記バーナへ送給する二次空気流路と、
前記二次通風機が昇圧した二次空気よりも高圧となるように一次通風機が昇圧した一次空気によって、燃料混入部で混入された燃料を前記バーナへ搬送する一次空気流路と、
前記一次通風機と前記燃料混入部との間で前記一次空気流路から分岐し、前記一次通風機が昇圧した一次空気を前記サイド噴流ポートへ送給する分岐流路と、を備え、
前記複数のバーナの各々は、一次空気によって搬送された燃料を一次空気とともに前記燃焼室へ投入し、前記二次空気流路から送給された二次空気を燃焼用空気として前記燃焼室へ供給し、
前記サイド噴流ポートは、前記分岐流路から送給された一次空気を噴流空気として前記燃焼室へ供給し、
前記炉壁には、複数の前記サイド噴流ポートと、前記二次空気流路から送給された二次空気を前記バーナ以外から前記燃焼室へ供給する他のポートとが設けられ、
前記複数のサイド噴流ポート及び前記他のポートから前記燃焼室へ供給される全空気量の5〜15%の量の一次空気が、前記分岐流路から前記複数のサイド噴流ポートに分配され、各サイド噴流ポートから30〜50m/sの流速で前記燃焼室へ供給される
ことを特徴とするボイラの空気送給システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の空気送給システムであって、
前記一次通風機と前記燃料混入部との間の前記一次空気流路は、昇温部を通過して一次空気を昇温する高温側流路と、前記昇温部を通過しない低温側流路とに分岐して合流し、
前記分岐流路は、前記高温側流路から分岐する
ことを特徴とするボイラの空気送給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラの燃焼室へ空気を送給する空気送給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、火炉の前壁および後壁の少なくとも一方に、複数のバーナと気体噴出口とが設けられたボイラが記載されている。複数のバーナは複数段かつ複数列に配置され、気体噴出口は、高さ方向では下段バーナと上段バーナとの間で、左右方向では側壁と最外列のバーナとの間に配置される。気体噴出口から噴出された気体の噴流により、側壁近傍の気体の圧力が高まり、燃焼ガスが側壁に近寄ることを防止することができ、燃焼ガスの衝突による灰の付着や、火炉出口におけるCO濃度及び未燃分を低減することが可能となる。
【0003】
また、特許文献1には、ブロアから供給される空気が石炭搬送用空気と燃焼用空気と気体噴出口の噴流用空気とに分けられることが記載され、石炭搬送用空気と燃焼用空気とが各バーナに供給され、噴流用空気が気体噴出口に供給される状態が図示されている。
【0004】
特許文献2には、押込通風機(FDF)によって昇圧された燃焼用空気(二次空気)を、ボイラの火炉に配設された複数のバーナと、該各バーナの上方所要位置に配設されたNOx低減二段燃焼用のオーバエアポート(OAP)及び未燃分低減用の中間エアポート(IAP)へ送給すると共に、一次通風機(PAF)によって昇圧された一次空気を、複数のミルへ導入し、各ミル9で粉砕された微粉炭を、各バーナへ搬送することにより、火炉内において燃焼を行うように構成された石炭焚ボイラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−65305号公報
【特許文献2】特許第3528354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、最下段のバーナ以上で最上段のバーナ以下の高さ範囲内であって最外列のバーナよりも外側に気体噴流口(サイド噴流ポート)を設け、係るサイド噴流ポートから噴流空気を火炉内の燃焼室へ供給することにより、硫化水素(HS)を含む燃焼ガスが側壁に近寄り難くなるため、特許文献1に記載された上記効果に加えて、側壁の硫化腐食の発生が抑制されるという効果を得ることができる。
【0007】
ところで、特許文献1では、単一のブロアから送出される空気を、石炭搬送用空気とバーナからの燃焼用空気とサイド噴流ポートからの噴流空気とに用いている。これに対し、特許文献2では、ボイラへ送給される空気のうち石炭搬送用空気を一次空気として分離し、石炭搬送用空気以外には二次空気を用いている。従って、特許文献1に特許文献2を適用した場合、石炭搬送用空気には一次空気が用いられ、バーナからの燃焼用空気とサイド噴流ポートからの噴流空気とには二次空気が用いられることになる。
【0008】
しかし、二次空気は、石炭搬送用空気である一次空気よりも低圧で送給されるので、サイド噴流ポートからの噴流空気に二次空気を用いると、サイド噴流ポートの入口にて十分な圧力を確保することができず、硫化腐食の抑制に必要な噴流空気流速が得られない可能性がある。特に、部分負荷になると圧力の確保が困難となり、幅広い負荷帯において硫化腐食を抑制することができない。
【0009】
そこで、本発明は、幅広い負荷帯において硫化腐食を抑制することが可能なボイラの空気送給システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明は、前後壁と当該前後壁に交わる側壁とからなる炉壁により燃焼室が形成され、前後壁の少なくとも一方には複数のバーナが設けられ、炉壁には少なくとも1つのサイド噴流ポートが設けられ、複数のバーナは、鉛直方向及び水平方向に複数段及び複数列に配置され、サイド噴流ポートは、最下段のバーナ以上で最上段のバーナ以下の高さ範囲内であって最外列のバーナよりも外側に配置されるボイラの空気送給システムであって、一次空気流路と、二次空気流路と、分岐流路とを備える。
【0011】
二次空気流路は、二次通風機が昇圧した二次空気をバーナへ送給する。一次空気流路は、二次通風機が昇圧した二次空気よりも高圧となるように一次通風機が昇圧した一次空気によって、燃料混入部で混入された燃料をバーナへ搬送する。分岐流路は、一次通風機と燃料混入部との間で一次空気流路から分岐し、一次通風機が昇圧した一次空気をサイド噴流ポートへ送給する。複数のバーナの各々は、一次空気によって搬送された燃料を一次空気とともに燃焼室へ投入し、二次空気流路から送給された二次空気を燃焼用空気として燃焼室へ供給する。サイド噴流ポートは、分岐流路から送給された一次空気を噴流空気として燃焼室へ供給する。
【0012】
記本発明の構成では、二次通風機が昇圧した二次空気よりも高圧となるように一次通風機が昇圧した一次空気が、分岐流路からサイド噴流ポートへ送給され、噴流空気として燃焼室へ供給される。従って、部分負荷を含む幅広い負荷帯(高負荷から低負荷に亘る負荷帯)において、サイド噴流ポートの入口にて十分な圧力を確保することができ、所望の流速で噴流空気を燃焼室へ供給して硫化腐食を抑制することができる。
【0013】
本発明の第の態様の空気送給システムでは、分岐流路には、流路を絞る複数の降圧部が設けられる。分岐流路を流通する一次空気は、複数の降圧部によって段階的に降圧される。各降圧部は、例えばオリフィス又はダンパによって構成される。
【0014】
上記第の態様の構成では、硫化腐食の抑制に有効な状態(圧力及び速度)の噴流空気がサイド噴流ポートから燃焼室へ供給されるように、分岐流路を流通する一次空気が複数の降圧部によって降圧される。複数の降圧部は、分岐流路に設けられて一次空気を段階的に降圧するので、単一の降圧部によって降圧する場合に比べて、降圧部にかかる負担を軽減して降圧部の摩耗を抑制することができ、耐久性を高めることができる。
【0015】
本発明の第の態様の空気送給システムでは、炉壁には、複数のサイド噴流ポートと、二次空気流路から送給された二次空気をバーナ以外から燃焼室へ供給する他のポートとが設けられる。複数のサイド噴流ポート及び他のポートから燃焼室へ供給される全空気量の5〜15%の量の一次空気が、分岐流路から複数のサイド噴流ポートに分配され、各サイド噴流ポートから30〜50m/sの流速で燃焼室へ供給される。なお、他のポートには、例えば最上段のバーナの上方であって最外列のバーナの内側(最外列のバーナの鉛直上方を含む)から燃焼室へ二段燃焼用空気を供給するアフタエアポートや、最上段のバーナの上方であって最外列のバーナよりも外側(最外列のバーナの鉛直上方を含まない)から燃焼室へ混合促進用空気を供給するサイドエアポートなどが含まれる。
【0016】
上記第の態様の構成では、ボイラ効率の低下抑制及び火炉内容積の大型化抑制と硫化腐食の抑制とを両立させることが可能な量及び流速で、噴流空気がサイド噴流ポートから燃焼室へ供給される。
【0017】
本発明の第の態様は、第1又はの態様のボイラの空気送給システムであって、一次通風機と燃料混入部との間の一次空気流路は、昇温部を通過して一次空気を昇温する高温側流路と、昇温部を通過しない低温側流路とに分岐して合流する。分岐流路は、高温側流路から分岐する。
【0018】
上記構成では、高温側流路から分岐した高温の一次空気が噴流空気として燃焼室に供給されるので、噴流空気の供給による燃焼効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、幅広い負荷帯においてボイラの側壁の硫化腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るボイラの火炉の概略構造を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るボイラの空気送給システムを示す模式図である。
図3】一次空気流路及び二次空気流路の各流路内の位置と一次空気及び二次空気の圧力との関係を示す図である。
図4】分岐流路の各降圧部の位置を示す模式図である。
図5】一次通風機と二次通風機の他の接続例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係るボイラの空気送給システムについて、図1図4を参照して説明する。
【0022】
本実施形態のボイラは、対向噴射式で二段燃焼の貫流ボイラである。図1に示すように、ボイラの火炉1の炉壁2は、前後壁(前壁3及び後壁4)と前後壁3,4に交わる左右の側壁(左側壁5及び右側壁6)とを有し、炉壁2によって燃焼室7が形成されている。
【0023】
前壁3及び後壁4には、複数のバーナ8と、複数のアフタエアポート(AAP:After Air Port)9と、複数のサイドエアポート(SAP:Side Air Port)10と、複数のサイド噴流ポート(SSAP:Side Stream Air Port)11とがそれぞれ設けられている。
【0024】
複数のバーナ8は、鉛直方向及び水平方向に複数段及び複数列に配置されている。本実施形態では、上下3段で左右4列の計12個のバーナ8が設けられている。各バーナ8は、燃料投入口12と空気供給口13とを有する。図2に示すように、燃料投入口12には一次空気によって微粉炭(燃料)を搬送する一次空気流路21が接続され、搬送された燃料が一次空気とともに燃料投入口12から燃焼室7へ投入される。空気供給口13には二次空気を送給する二次空気流路22が接続され、送給された二次空気が燃焼用空気として空気供給口13から燃焼室7へ供給される。空気供給口13から供給される空気量は燃料投入口12から投入された微粉炭を完全燃焼するために必要な空気量よりも少なく設定され、その不足分がAAP9から供給される。なお、図2は、バーナ8、AAP9、SAP10及びSSAP11を火炉1に模式的に表したものであり、これらの数及び位置は図1に対応していない。
【0025】
図1に示すように、AAP9は、上下位置が最上段のバーナ8highの上方で、左右位置が最外列のバーナ8outの内側(最外列のバーナ8outの鉛直上方を含む炉幅中央寄り)となる範囲に配置されている。SAP10は、上下位置が最上段のバーナ8highの上方で、左右位置が最外列のバーナ8outよりも外側(最外列のバーナ8outの鉛直上方を含まない側壁5,6寄り)となる左右の範囲に配置されている。SSAP11は、上下位置が最下段のバーナ8low以上で最上段のバーナ8high以下の高さ範囲内で、左右位置が最外列のバーナ8outよりも外側(側壁5,6寄り)となる左右の範囲に配置されている。本実施形態では、前後壁3,4の各々において、AAP9はバーナ8の各列の上方に1つずつ(計4個)設けられ、SAP10は左右に2つずつ(計4個)設けられ、SSAP11は左右の1つずつ(計2個)設けられている。
【0026】
図2に示すように、AAP9には二次空気流路22が接続され、送給された二次空気が二段燃焼用空気としてAAP9から燃焼室7へ供給される。二段燃焼用空気を供給する主な目的は、二段燃焼によるNOxを低減すること、燃焼ガスの混合促進によるCOや未燃分を低減することである。
【0027】
SAP10には二次空気流路22が接続され、送給された二次空気が混合促進用空気としてSAP10から燃焼室7へ供給される。混合促進用空気を供給する主な目的は、燃焼ガスの混合を促進して、COや未燃分を低減すること、特にバーナ段の上方(最上段のバーナ8highの上方)で左右の側壁5,6側からすり抜ける燃焼ガスとの混合を促進することである。AAP9及びSAP10は、二次空気流路22から送給された二次空気をバーナ8以外から燃焼室7へ供給する他のポートを構成する。
【0028】
SSAP11には一次空気流路21から分岐した分岐流路23が接続され、分岐流路23から送給された一次空気が、噴流空気としてSSAP11から燃焼室7へ供給される。噴流空気を供給する主な目的は、火炉前後方向中央近傍(燃焼室7の前後方向の中央部)で衝突して側壁5,6へ向かう燃焼ガスの流れが側壁5,6へ到達するのを阻止して、側壁5,6の硫化腐食を抑制することである。
【0029】
なお、本実施形態のように上下3段にバーナ8を配置した場合、SSAP11の高さ位置は、中段のバーナ8midと略同高さ付近であることが好ましい。熱負荷は上段側ほど高く、壁面メタル温度が硫化腐食の厳しい条件に達するので、その少し上流(下方)から空気の壁が形成されるように噴流空気を噴出させることが有効なためである。また、SSAP11の口径(燃焼室7への開口径)はAAP9及びSAP10よりも小さく設定され、燃焼室7へ流入する空気の流速及び圧力はAAP9及びSAP10よりも高く設定されている。また、本実施形態ではSSAP11を前後壁3,4に設けているが、側壁5,6にSSAP11を設けてもよい。
【0030】
本実施形態の空気送給システムは、図2に示すように、一次空気流路21と、二次空気流路22と、分岐流路23とを備える。
【0031】
二次空気流路22は、二次通風機25で昇圧され、燃焼排ガスを利用した空気予熱器(昇温部)26で昇温(加熱)された二次空気を、バーナ8の空気供給口13、AAP9及びSAP10へ送給する。二次空気流路22には、バーナ8、AAP9及びSAP10への各流路の流通空気量を増減するダンパ35,36,37が設けられている。
【0032】
一次空気流路21は、一次通風機24で昇圧された一次空気によって微粉炭をバーナ8の燃料投入口12へ搬送する。一次空気流路21には石炭を粉砕するミル(燃料混入部)27が設けられ、粉砕された微粉炭は、ミル27で一次空気に混入されてバーナ8へ搬送される。一次通風機24は、二次通風機25が昇圧した二次空気よりも高圧となるように一次空気を昇圧する。なお、図5に示すように、二次通風機25の下流(二次通風機25と空気予熱器26との間)の二次空気流路22から一次空気流路21を分岐し、二次通風機25によって昇圧された一次空気を一次通風機24によって昇圧してもよい。
【0033】
一次通風機24とミル27との間の一次空気流路21は、空気予熱器26を通過して一次空気を昇温する高温側流路28と、空気予熱器26を通過せずにバイパスする低温側流路29とに分岐して合流する。高温側流路28及び低温側流路29には、各流路28,29の流通空気量を増減するダンパ31,32がそれぞれ設けられている。
【0034】
分岐流路23は、空気予熱器26とダンパ31との間で高温側流路28から分岐する。分岐流路23は、一次通風機24で昇圧され、空気予熱器26で昇温された一次空気を、SSAP11へ送給する。分岐流路23には、流路径を増減して流通空気量を増減する複数(本実施形態では4個)のダンパ33と、流路径を減少させる複数(本実施形態では7個)のオリフィス34とが設けられている。
【0035】
本実施形態では、図3に示すように、一次通風機24の出口の一次空気の圧力P1は、二次通風機25の出口の二次空気の圧力P2よりも高く、一次空気流路21と分岐流路23との分岐位置での一次空気の圧力Pdは、二次通風機25の出口の二次空気の圧力P2よりも高くなる。
【0036】
図4に示すように、本実施形態の分岐流路23は、一次空気流路21(高温側流路28)に連通する上流側のメイン流路23Aと、メイン流路23Aの下流端に連通する左流路23B及び右流路23Cと、左流路23Bの下流端に連通する前左流路23D及び後左流路23Eと、右側流路23Cの下流端に連通する前右流路23F及び後右流路23Gとから構成されている。前左流路23Dの下流端と前右流路23Fの下流端とは、前壁3の左右のSSAP11にそれぞれ接続され、後左流路23Eの下流端と後右流路23Gの下流端とは、後壁4の左右のSSAP11にそれぞれ接続されている。
【0037】
4個のダンパ33A〜33Dは、前左流路23D、後左流路23E、前右流路23F及び後右流路23Gにそれぞれ設けられ、7個のオリフィス34A〜34Gは、メイン流路23A、左流路23B、右流路23C、前左流路23D、後左流路23E、前右流路23F及び後右流路23Gにそれぞれ設けられている。
【0038】
これらのダンパ33A〜33D及びオリフィス34A〜34Gは、分岐流路23に設けられて流路を絞る降圧部を構成し、分岐流路23を流通する一次空気は、複数の降圧部によって段階的(本実施形態では4段階)に降圧される。例えば、前壁3の左のSSAP11へ送給される一次空気は、3箇所のオリフィス34A,34B,34Dとダンパ33Aとによって降圧され、後壁4の左のSSAP11へ送給される一次空気は、3箇所のオリフィス34A,34B,34Eとダンパ33Bとによって降圧され、前壁3の右のSSAP11へ送給される一次空気は、3箇所のオリフィス34A,34C,34Fとダンパ33Cとによって降圧され、後壁4の右のSSAP11へ送給される一次空気は、3箇所のオリフィス34A,34C,34Gとダンパ33Dとによって降圧される。
【0039】
各SSAP11には、全てのAAP9、全てSAP10及び全てのSSAP11から燃焼室7へ供給される全空気量の5〜15%の量の一次空気が分岐流路23(メイン流路23A)から分配され、分配された一次空気は、各SSAP11から30〜50m/sの流速で燃焼室7へ供給される。
【0040】
SSAP11の本来の機能は、燃焼室7の中心部における気体の圧力よりも側壁5,6近傍の気体の圧力を高め、HSを含んだ燃焼ガスが側壁5,6に近寄ることを抑制することであるが、そのためには、概ね2段燃焼用空気量の10%程度をSSAP11から噴出させる必要がある。実際にSSAP11から噴出させる空気の流量は、燃料中のS含有量や燃焼ガス噴流の広がり等にも依存するため、実際の運転においてHS濃度の低減効果を確認しながら設定する。
【0041】
また、S含有量が高い場合や、バーナ8からの燃焼ガス噴流が側壁に到達し易いような条件にある場合には、SSAP11から噴出させる空気量を増やす必要がある。一方、空気過剰率を抑制してボイラ効率と火炉内容積のコンパクト化を図る観点からは、SSAP11から噴出させる空気量をできるだけ低く抑える方が望ましい。空気過剰率とは、理論空燃比1.0を基準として完全燃焼に必要な空気よりもどれだけ多くの空気を燃焼用に投入したかを表す指標であり、例えば1.2であれば、2割余計に空気を投入することを意味する。
【0042】
本実施形態では、HS濃度の低減効果の実効と空気量の抑制とを考慮し、上記全空気量に対するSSAP11からの噴流空気量の割合の下限を5%、上限を15%としている。
【0043】
本実施形態によれば、二次通風機25が昇圧した二次空気よりも高圧となるように一次通風機24が昇圧した一次空気が、分岐流路23からSSAP11へ送給され、噴流空気として燃焼室7へ供給される。従って、部分負荷を含む幅広い負荷帯(高負荷から低負荷に亘る負荷帯)において、SSAP11の入口にて十分な圧力を確保することができ、所望の流速で噴流空気を燃焼室7へ供給して硫化腐食を抑制することができる。
【0044】
硫化腐食の抑制に有効な状態(圧力及び速度)の噴流空気がSSAP11から燃焼室7へ供給されるように、分岐流路23を流通する一次空気が複数の降圧部(ダンパ33及びオリフィス34)によって降圧される。複数の降圧部は、分岐流路23に設けられて一次空気を段階的に降圧するので、単一の降圧部によって降圧する場合に比べて、降圧部にかかる負担を軽減して降圧部の摩耗を抑制することができ、耐久性を高めることができる。
【0045】
また、高温側流路28から分岐した高温の一次空気が噴流空気として燃焼室7に供給されるので、噴流空気の供給による燃焼効率の低下を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明は、一例として説明した上述の実施形態及び変形例に限定されることはなく、上述の実施形態等以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0047】
例えは、ボイラは、前後壁3,4の双方にバーナ8等を備えた対向噴射式ではなく、前後壁3,4の何れか一方のみにバーナ8等を備えたボイラであってもよい。また、AAP9を備えた二段燃焼ではなく、AAP9を備えていない単段燃焼のボイラであってもよい。また、ボイラが備える他のポートは、AAP9及びSAP10の何れかであってもよく、これら以外であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1:火炉
2:炉壁
3:前壁
4:後壁
5,6:側壁
7:燃焼室
8:バーナ
9:アフタエアポート(AAP)
10:サイドエアポート(SAP)
11:サイド噴流ポート(SSAP)
21:一次空気流路
22:二次空気流路
23(23A〜23G):分岐流路
24:一次通風機
25:二次通風機
26:空気予熱器(昇温部)
27:ミル(燃料混入部)
28:高温側流路
29:低温側流路
31,32,35,36,37:ダンパ
33(33A〜33D):ダンパ(降圧部)
34(34A〜34G):オリフィス(降圧部)
図1
図2
図3
図4
図5