(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンのクランクケースに設けたブローバイガスの排出孔に一端が連通され,他端を大気開放したブリーザパイプを備えた大気開放型のクランクケースブリーザにおいて,
前記エンジンの排気管に,排気ガスを浄化する排気ガス後処理装置を設けると共に,前記ブリーザパイプの少なくとも前記他端から所定範囲を被加熱部とし,該被加熱部を内管と外管から成る二重管構造とし,前記内管を前記ブローバイガスが導入されるブローバイガス流路と成すと共に,前記内管の外周面と前記外管の内周面間に前記排気ガス後処理装置を通過した後の排気ガスの一部から成る熱媒ガスを導入する熱媒ガス流路を設け,
前記熱媒ガス流路に前記熱媒ガスを導入することにより,前記ブリーザパイプの前記被加熱部を加熱すると共に,前記加熱に使用した後の前記熱媒ガスを大気放出することを特徴とするクランクケースブリーザの除氷方法。
前記熱媒ガスの前記大気放出を,前記ブリーザパイプ内を流れる前記ブローバイガスと合流させて行うことを特徴とする請求項1記載のクランクケースブリーザの除氷方法。
エンジンのクランクケースに設けたブローバイガスの排出孔に一端が連通され,他端を大気開放したブリーザパイプを備えた大気開放型のクランクケースブリーザにおいて,
前記エンジンの排気管に,排気ガスを浄化する排気ガス後処理装置を設けると共に,前記ブリーザパイプの少なくとも前記他端から所定範囲を被加熱部とし,
前記被加熱部を内管と外管から成る二重管構造とし,前記内管を前記ブローバイガスが導入されるブローバイガス流路と成すと共に,前記内管の外周面と前記外管の内周面間に前記排気ガス後処理装置を通過した後の排気ガスの一部から成る熱媒ガスを導入する熱媒ガス流路を設け,前記ブローバイガス流路に導入されたブローバイガスと,前記熱媒ガス流路に導入された熱媒ガスの熱交換を可能とし,
前記熱媒ガス流路を通過した熱媒ガスを大気放出可能とする,前記熱媒ガス流路の出口を設けたことを特徴とするクランクケースブリーザ。
前記ブリーザパイプの前記他端寄りの位置で前記熱媒ガス流路の前記出口を前記ブローバイガス流路に連通し,前記熱媒ガスの前記大気放出を,前記ブローバイガス流路の出口を介して行うことを特徴とする請求項5記載のクランクケースブリーザ。
前記ブリーザパイプの他端側における前記内管の端部を前記外管の端部よりも短く形成して前記ブローバイガス流路の出口を,前記外管内で開口させたことを特徴とする請求項5記載のクランクケースブリーザ。
【背景技術】
【0002】
作動中のエンジンのクランクケース内部は,圧縮・燃焼行程で燃焼室から漏出したブローバイガス,温度上昇に伴って膨張した内部空気,並びに熱によって蒸発したオイル等のガス(以下,これらを総称して「ブローバイガス」と言う。)によって圧力が高くなっている。
【0003】
このようなクランクケース内の圧力上昇は,エンジンの動作に悪影響を与えることから,エンジンのクランクケースには,ブローバイガスを放出するためにクランクケースブリーザと呼ばれるガス抜き機構が設けられている。
【0004】
このクランクケースブリーザとしては,各種構造のものが知られているが,防音箱内にエンジンと該エンジンによって駆動される発電機や圧縮機等の作業機を収容したエンジン駆動型作業機に搭載されているエンジンでは,クランクケースに設けたブローバイガスの排出孔にブリーザパイプと呼ばれる配管の一端を接続し,このブリーザパイプの他端を防音箱外まで延設して大気開放する,所謂「大気開放型」と呼ばれる構造が一般的に採用されている。
【0005】
このように,ブリーザパイプを介してクランクケースより放気されるブローバイガスには,大気汚染の原因となる未燃焼ガスや蒸発したオイルが含まれることから,未燃焼ガスやオイルの大気放出を抑制するための構造を備えた大気開放型のクランクケースブリーザも提案されている。
【0006】
このような大気開放型のクランクケースブリーザの構造として,
図9に示すように防音箱109内をエンジン105及び作業機本体(発電機)103を搭載する搭載部109aと,前記搭載部109aに連通し,前記搭載部109a内に空気を吸気する吸気ダクト部109bに分割し,ブリーザパイプ170を,吸気ダクト部109bを通過させた後,機外に延在させると共に,前記ブリーザパイプ170の排出口を基端部(エンジン105側の端部)よりも上方に配置する構成が提案されている(特許文献1)。
【0007】
また,
図10に示すように,防音箱209内部を少なくともエンジン205と作業機203を配置したエンジン室209aと,該エンジン室209aに連通し,少なくともエンジン室209aを冷却した冷却風が送風される排風処理室209bを設け,該排風処理室209b内にオイル捕集箱272を配置し,該オイル捕集箱272の上部空間とエンジン205とをブリーザパイプ270で連結し,該オイル捕集箱272の上部壁面に,前記オイル捕集箱272内の上部空間を前記排風処理室209bと連通する連通口272aを設けると共に,オイル捕集箱272の上部空間とエンジン駆動作業機の防音箱209外とを連通する配管部材272bを設けた構造のクランクケースブリーザも提案されている(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記で先行技術文献として紹介した文献中,特許文献1に記載の構成では,ブリーザパイプ170内を通過するブローバイガスは,吸気ダクト部109bを通過する際に冷却されてブローバイガス中に含まれる未燃焼ガスやオイルがブリーザパイプ170内で凝集すると共に,ブリーザパイプ170の排出口を基端部(エンジン105側の端部)よりも上方に配置したことで,凝集した未燃焼ガスやオイルをエンジン105側に戻すことができるようになっており,これにより未燃焼ガスやオイル等の大気放出を抑制することができるようになっている。
【0010】
また,特許文献2に記載の構成では未燃焼ガスや蒸発したオイルは,オイル捕集箱272内に捕集できるようになっており,オイル捕集箱272を通過した後のブローバイガスを放気することで,未燃焼ガスやオイルの大気放出を抑制することができるようになっている。
【0011】
しかし,大気開放型のクランクケースブリーザでは,ブローバイガスを機外へ放気するために,エンジンのクランクケースから防音箱外まで比較的長い距離,ブリーザパイプを延設する必要があることから,エンジン駆動型作業機を寒冷地で使用すると,エンジンの停止後,ブローバイガス中に含まれる水分がブリーザパイプ内で凝集して防音箱外に延設されたブリーザパイプの先端部内で凍結し,氷でブリーザパイプ内の流路を狭め,又は流路を塞ぐことで,エンジンのクランクケース内の圧力を逃がすことができなくなる場合がある。
【0012】
そのため,寒冷地等で使用する場合,このような凍結が生じた場合であっても,クランクケース内の圧力を逃がすことができる構造を備えたクランクケースブリーザが必要となる。
【0013】
この点に関し,前掲の特許文献1として紹介したエンジン駆動作業機のクランクケースブリーザのように,ブリーザパイプ170を,吸気ダクト部109b内を通過させて冷却する構成では,吸気ダクト部109b内で冷却されたブローバイガスはブリーザパイプ170を加熱する能力が低いため,寒冷地等での使用によってブリーザパイプ170が一旦凍結して目詰まりすると,長時間にわたってこの目詰まりを解消することができず,また,極低温環境での使用では冷却の際にブローバイガスに含まれる水分が凝集して更に凍結による目詰まりを悪化させるおそれもある。
【0014】
一方,引用文献2に記載の構成では,オイル捕集箱272から防音箱209外へ延設された配管部材272bが凍結等によって詰まった場合であっても,オイル捕集箱272の上部空間は連通口272aを介して排風処理室209b内の空間と連通していることで,ブリーザパイプ270を介してオイル捕集箱272内に導入されたブローバイガスを放気することができることから,配管部材272bが凍結した場合であってもクランクケース内の圧力を逃がすことはできるようになっている。
【0015】
しかし,特許文献2に記載のクランクケースブリーザでは,最も凍結の生じ易い配管部材272bの凍結を防止し,又は,凍結が生じた場合に除氷する構成を備えていない。
【0016】
しかも,特許文献2に記載の構成では,ブリーザパイプ270がブローバイガスと共に吐出したオイルが配管部材272b内に入り込まないようにするために,配管部材272bの入口を,ブリーザパイプ270の出口の延長上からずらした位置に配置しているため(特許文献2の
図1及び
図2参照),ブリーザパイプ270より吐出された温かいブローバイガスが配管部材272b内に直接導入されることがなく,また,オイル捕集箱272には連通口272aが設けられており,オイル捕集箱272内の圧力,従って配管部材272b内の圧力が上昇することもないため,配管部材272bを塞ぐ氷が押し出されることもなく,配管部材272b内の除氷が完了するまでに長時間を必要とする。
【0017】
このように,配管部材272bの凍結による目詰まりが長時間にわたって継続すると,未燃焼ガスやオイルを含むブローバイガスが長時間にわたって連通口272aを介して排風処理室209b内に放気され続けることとなり,排風処理室209b内が汚れるおそれがある。
【0018】
しかも,特許文献2に記載のクランクケースブリーザの構造では,ブリーザパイプ270が凍結によって詰まった場合には,クランクケース内の圧力を逃がすことができなくなる。
【0019】
従って,クランクケースブリーザで凍結が生じた場合であっても早期に除氷することができる構造を備えたクランクケースブリーザが要望される。
【0020】
このような構成として,ブリーザパイプ170,270(前掲の特許文献2に記載の構成では更に配管部材272b)の外周に断熱材を巻き付けることも考えられるが,この方法は積極的にブリーザパイプ170,270を加熱する構成を備えていないため,一旦凍結が生じると,除氷が完了するまでには比較的長時間を必要とする。
【0021】
また,断熱材の巻き付けによって外径が増大したブリーザパイプの配置スペースを確保する必要があると共に,断熱材やその取り付けに使用する器具等の部品点数の増加と,断熱材を取り付けるための作業工数の増加によって,エンジンや該エンジンを搭載したエンジン駆動型作業機の製造コストが増加する。
【0022】
また,ブリーザパイプを除氷する方法としては,前述した断熱材の代わりに,テープヒータ(電気式保温材)をブリーザパイプ等の外周に巻き付けて積極的に加熱することも考えられる。
【0023】
この方法では,断熱材を巻き付ける場合に比較してブリーザパイプの外径が増大することを抑えることができると共に,ブリーザパイプを保温するだけでなく,積極的に加熱することで,凍結が生じた場合であっても比較的短い時間内に除氷を完了することが可能となる。
【0024】
しかし,テープヒータは断熱材よりも更に高価であると共に,取り付けに際しては電気的な配線作業が必要となる等,断熱材を巻き付ける場合に比較して更にエンジンやエンジン駆動型作業機の製造コストを増大させる。
【0025】
しかも,テープヒータの作動によって電力が消費されるため,エンジンに設けたオルタネータ等の発電機の負荷が増大することでエンジンの燃料消費量が増大するため,エンジンの燃費を悪化させる。
【0026】
そこで本発明は,上記従来技術の欠点を解消するために成されたもので,比較的簡単な構成により,かつ,エンジンの燃費を悪化させることなく,しかも,エンジンが始動してから比較的短い時間でブリーザパイプを加熱することができるクランクケースブリーザの除氷方法及び前記方法を実施可能な構造を備えたクランクケースブリーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と,発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0028】
上記目的を達成するために,本発明のクランクケースブリーザ60の除氷方法は,
エンジン5のクランクケースに設けたブローバイガスの排出孔61に一端70aが連通され,他端70bを大気開放したブリーザパイプ70を備えた大気開放型のクランクケースブリーザ60において,
前記エンジン5の排気管10に,排気ガスを浄化する排気ガス後処理装置40を設けると共に,前記ブリーザパイプ70の少なくとも前記他端70bから所定範囲を被加熱部72とし,該被加熱部72
を内管74と外管75から成る二重管構造とし,前記内管74を前記ブローバイガスが導入されるブローバイガス流路73と成すと共に,前記内管74の外周面と前記外管75の内周面間に,前記排気ガス後処理装置40を通過した後の排気ガスの一部から成る熱媒ガスを導入する熱媒ガス流路76を設け,
前記熱媒ガス流路76に前記熱媒ガスを導入することにより,前記ブリーザパイプ70の前記被加熱部72を加熱すると共に,前記加熱に使用した後の前記熱媒ガスを大気放出することを特徴とする(請求項1)。
【0029】
前記熱媒ガスの前記大気放出は,前記ブリーザパイプ70内を流れる前記ブローバイガスと合流させて行うものとしても良い(請求項2,
図5参照)。
【0030】
この場合,前記エンジン5が,発電機や圧縮機等の作業機本体(図示せず)と共に防音箱9内に収容されたエンジン駆動型作業機1のエンジン5である場合には,前記ブリーザパイプ70の前記他端70bを前記防音箱9外に延設すると共に,前記熱媒ガスと前記ブローバイガスの前記合流を,前記ブリーザパイプ70の前記他端70b近傍において行うことが好ましい(請求項3,
図5参照)。
【0031】
また,同様に前記エンジン5が,作業機本体(図示せず)と共に防音箱9内に収容されたエンジン駆動型作業機1のエンジン5である場合,前記ブリーザパイプ70の前記他端70bを前記防音箱9外に突設すると共に,前記合流による大気放出に代えて,前記熱媒ガスの大気放出を,前記防音箱9外において,前記ブローバイガスの放出位置の近傍で行うようにするものとしても良い(請求項4,
図6参照)。
【0033】
また,本発明のクランクケースブリーザ60は,
エンジン5のクランクケースに設けたブローバイガスの排出孔61に一端70aが連通され,他端70bを大気開放したブリーザパイプ70を備えた大気開放型のクランクケースブリーザ60において,
前記エンジン5の排気管10に,排気ガスを浄化する排気ガス後処理装置40を設けると共に,前記ブリーザパイプ70の少なくとも前記他端70bから所定範囲を被加熱部72とし,
前記被加熱部72
を内管74と外管75から成る二重管構造とし,
前記内管74を前記ブローバイガスが導入されるブローバイガス流路73と
成すと共に,
前記内管74の外周面と前記外管75の内周面間に前記排気ガス後処理装置40を通過した後の排気ガスの一部から成る熱媒ガスを導入する熱媒ガス流路76を設け,前記ブローバイガス流路73に導入されたブローバイガスと,前記熱媒ガス流路76に導入された熱媒ガスの熱交換を可能と
し,
前記熱媒ガス流路76を通過した熱媒ガスを大気放出可能とする,前記熱媒ガス流路76の出口76bを設けたことを特徴とする(請求項
5)。
【0034】
上記構成のクランクケースブリーザ60において,前記ブリーザパイプ70の前記他端70b寄りの位置で前記被加熱部72に設けた前記熱媒ガス流路76の前記出口76bを前記ブローバイガス流路73に連通し,前記熱媒ガスの前記大気放出を,前記ブローバイガス流路73の出口73bを介して行うように構成するものとしても良い(請求項
6,
図5参照)。
【0035】
上記構成に代えて,前記熱媒ガス流路76の前記出口76bを前記ブローバイガス流路73の出口73b近傍に開口する構成としても良い(請求項
7,
図6,
図7参照)。
【0037】
前記ブリーザパイプ70の他端70b側における前記内管74の端部(内管74の他端74b)を前記外管75の端部(外管75の他端75b)よりも短く形成して前記ブローバイガス流路73の出口73bを,前記外管75内の奥まった位置で開口させるものとしても良い(請求項
8,
図7参照)。
【0038】
上記いずれの構成においても,前記エンジン5が作業機本体(図示せず)と共に防音箱9内に収容されたエンジン駆動型作業機1のエンジン5である場合,前記ブリーザパイプ70の前記他端70bを前記防音箱9外に突設させるものとすることができる(請求項
9)。
【0039】
この場合,ブローバイガス流路73の出口73bを,前記外管75内の奥まった位置で開口させた構成では,前記防音箱9外に配置された部分の前記外管75の側壁にガス抜き孔となる貫通孔79を設けておくことが好ましい(請求項
10,
図7,
図8参照)。
【発明の効果】
【0040】
以上で説明した本発明の構成により,本発明では以下の顕著な効果を得ることができた。
【0041】
ブリーザパイプ70の少なくとも他端70bから所定範囲,すなわち,凍結による目詰まりが生じ易い範囲を被加熱部72とし,この部分を,排気ガス後処理装置40を通過した後の排気ガスの一部から成る高温の熱媒ガスによって加熱することで,ブリーザパイプ70の前記被加熱部72を効率的に加熱することができ,ブローバイガス中の水分の凍結による被加熱部72の目詰まりが生じた場合であっても,エンジン5の始動後,比較的早期に凍結によって生じた氷を除去することができた。
【0042】
しかも,被加熱部72の加熱に使用する熱媒ガスは,排気ガス後処理装置40を通過した後のクリーンな排気ガスであるため,加熱に使用した後は,これをそのまま大気放出することが可能である。
【0043】
更に,本発明の方法及び装置では,ブリーザパイプ70の加熱を,排気ガス後処理装置40の排熱を利用して行うことから,加熱を行うための電力等の消費がなく,エンジン5の燃費を悪化させることなくブリーザパイプ70の除氷を行うことができた。
【0044】
前記熱媒ガスを,前記ブリーザパイプ70内を流れる前記ブローバイガスと合流させて大気放出する構成では,ブローバイガスの温度を上昇させることでブリーザパイプ70の他端70b部が凍結によって塞がれている場合であっても早期に氷を溶かすことができると共に,高温のブローバイガスによって氷を吹き飛ばすことができた。
【0045】
特に,前記エンジン5が,作業機本体(図示せず)と共に防音箱9内に収容されたエンジン駆動型作業機1のエンジン5であり,前記ブリーザパイプ70の前記他端70bを前記防音箱9外に突設した構成では,ブリーザパイプ70のうち,防音箱9外に延設された部分が低温となりやすく,凍結し易いものとなるが,ブローバイガスに対する熱媒ガスの合流をブリーザパイプ70の他端70b寄りの位置で行うことで,又は,熱媒ガスの大気放出を,前記防音箱9外において,前記ブローバイガスの放出位置の近傍で行うことで,ブリーザパイプ70のうち最も凍結が生じ易い他端70b部分を確実に加熱することができた。
【0046】
ブリーザパイプ70の被加熱部72を内管74と外管75から成る二重管構造とし,内管74内をブローバイガス流路73,内管74の外周面と外管75の内周面間の間隔を熱媒ガス流路76としたことで,比較的簡単に熱媒ガス流路76を形成することが可能であり,しかもこの構成では,ブローバイガス流路73の外周に熱媒ガス流路76が形成されることで,ブローバイガス流路73内を流れるブローバイガスの外周を温度の高い熱媒ガスで覆うことにより,熱媒ガスを熱媒としてのみならず,断熱材としても機能させることができ,ブローバイガスを保温しつつ加熱することで,より高い温度のブローバイガスを他端70b部に導入することができた。
【0047】
前記ブリーザパイプ70の他端70b側における前記内管74の端部(内管74の他端74b)を前記外管75の端部(外管75の他端75b)よりも短く形成して前記ブローバイガス流路73の出口を,前記外管75内部の奥まった位置で開口させた構成では,ブリーザパイプ70の他端70bの開口径が外管75の径となるため大きくなり,凍結等が生じた場合であっても氷によって開口部全体が塞がれ難くなり,また,仮に氷で全体が塞がれた場合であっても,ブローバイガスと熱媒ガスとで容易に吹き飛ばすことができた。
【0048】
特に,防音箱9より突出した部分の外管75の側壁に貫通孔79を設けた構成では,仮にブリーザパイプ70の他端70b(外管75の他端75b)が氷で塞がれた場合であっても,この貫通孔79がガス抜き用の孔として機能することで,ブローバイガスの排気が妨げられることを防止できた。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下,添付図面を参照しながら説明する。
【0051】
〔エンジン駆動型作業機の全体構成〕
本発明のクランクケースブリーザ60を備えたエンジン駆動型作業機1の全体構造を
図1及び
図3に示す。
【0052】
図示のエンジン駆動型作業機1は,圧縮機や発電機等の作業機(図示せず)と,この作業機を駆動するエンジン(ディーゼルエンジン)5,後述する排気ガス後処理装置40を備えた排気管10,その他の必要な機器を防音箱9内に収容して構成されている。
【0053】
作業機を駆動するエンジン5には,図示せざる排気再循環(EGR: Exhaust Gas Recirculation)システムを設けて,排気ガス中の窒素酸化物(NO
X)の発生を抑制するようにしてもよい。このEGRシステムは,排気ガスの一部を吸気に循環・混合させるもので,エンジンの吸気通路と排気通路とを繋ぐ再循環通路と,再循環する排気ガス量を調整するバルブとを備え,エンジンのシリンダ内で酸素濃度が低い状態で燃料を燃焼させることで燃焼温度の低下を図り,窒素酸化物(NO
X)の発生を抑制する。
【0054】
図示の実施形態において,前述の防音箱9内は,仕切壁92によって紙面左右方向に2室に仕切られており,一方の室を作業機やエンジン5を収容するエンジン室9a,他方の室を通気室9bと成すと共に,前記仕切壁92に設けた連通口93に対向してエンジン5や作業機を冷却するためのラジエータやインタークーラ,オイルクーラ(図示の例ではラジエータ8)を配置すると共に,連通口93及びラジエータ8を通過する冷却風を発生させるファン7を前記ラジエータ8に対向して配置し,エンジン5の作動時,このファン7の回転によってラジエータ8と連通口93を通過する冷却風を発生させることができるようにしている。
【0055】
図示の実施形態では,エンジン5の作動時,ファン7によってエンジン室9a側から通気室9b側に向かう冷却風の流れを発生させ,通気室9bの上方において防音箱9の天板に形成した開口部91を介して防音箱9内の空気を放出する,所謂「吹き出し式」の構成を採用しているが,これとは逆に,ファン7の回転によって通気室9bからエンジン室9aに向かう冷却風の流れを生じさせることで,開口部91及び通気室9bを介して防音箱9内に導入された外気を,ラジエータ8を通過させた後,エンジン室9a内に導入する,所謂「吸い込み式」として構成しても良い。
【0056】
なお,図示の実施形態では,前述した開口部91を通気室9bの上方における防音箱9の天板に開口しているが,開口部91は,防音箱9の天板に限らず側壁に設けるものとしても良く,防音箱9内の空気を防音箱9外に放出し得るものであれば,いずれの位置に設けるものとしても良い。
【0057】
〔排気管〕
エンジン室9aに収容されたエンジン5の排気口5aには,排気口5aを介して排出されたエンジン5の排気ガスを防音箱9外に導出する排気管10が取り付けられている。
【0058】
図示の実施形態では,この排気管10は,エンジン5の排気口5aに連通されたエキゾーストマニホールド20(以下,「エキマニ」と略称する。),このエキマニ20に連通されたエキゾーストパイプ30(以下,「エキパイ」と略称する。),エキパイ30に入口が連通された排気ガス後処理装置40,及び,前記排気ガス後処理装置40の出口に連通されたテールパイプ50によって構成されており,エンジン5からの排気ガスが,排気ガス後処理装置40内を通過して浄化された後,テールパイプ50を介して防音箱9外に放出されるよう構成されている。
【0059】
なお,排気ガス後処理装置40の出口とテールパイプ50の間には,必要に応じて更にマフラー(消音器)を設け,マフラーによって消音した後の排気ガスを機外に放出するように構成しても良い。
【0060】
図1及び
図3に示すように,本実施形態では排気ガス後処理装置40とテールパイプ50は前述の通気室9bに設けられており,エンジン室9aに設けられたエンジン5の排気口5aと排気ガス後処理装置40の入口間が,同じくエンジン室9a内に収容されたエキマニ20とエキパイ30によって連通されている。
【0061】
前述の排気ガス後処理装置40は,エンジン(ディーゼルエンジン)5の排気を浄化する装置であり,
図2に示すようにPMを捕集するDPF(微粒子除去フィルタ)42と,DPF42の一次側に配置されたDOC(酸化触媒)41を備えており,必要に応じて窒素酸化物(NO
X)を浄化するための尿素SCR(選択式還元触媒)43を備えている。
【0062】
図2は,尿素SCR43を備えた排気ガス後処理装置の構成例を示したもので,排気ガス後処理装置40は,第1ケーシング44内にDOC41とDPF42を収容して成るPM除去部40aと,第2ケーシング45内に尿素SCR43を収容して成る窒素酸化物(NO
X)除去部40c,及び,PM除去部40aとNO
X除去部40cを連通する配管内に設けられた,尿素水噴射装置40bによって構成されている。
【0063】
これにより,エンジン5の排気ガスは,排気ガス後処理装置40内を通過する際にPMとNO
Xが除去されて浄化された後,機外に排出されるように構成されている。
【0064】
なお,図示の実施形態では排気ガス後処理装置40として尿素SCR43や尿素水噴射装置40bを備えた構成のものを採用しているが,例えば前述した排気再循環(EGR: Exhaust Gas Recirculation)システムの採用等により,排気ガス中の窒素酸化物(NO
X)の発生が抑制されている場合等には,尿素SCR43や尿素水噴射装置40bを設けず,DOC41とDPF42によって構成された排気ガス後処理装置40を採用するものとしても良い。
【0065】
〔クランクケースブリーザ〕
クランクケース内のブローバイガスを放出させるクランクケースブリーザ60は,
図1に示すようにエンジン5のクランクケースカバーに設けられたブローバイガスの排出孔61と,該排出孔61に一端70aを連通され,他端70bを防音箱9外に延設されたブリーザパイプ70によって構成され,エンジン5の作動時,燃焼室からのブローバイガスの流入や内部空気の熱膨張,及びオイルの蒸発等によって圧力が上昇したクランクケース内の圧力を逃がすことができるように構成されている。
【0066】
図示の実施形態では,クランクケースカバーに設けた排出孔61とブリーザパイプ70の一端70a間にオイルセパレータ62を設け,排出孔61より放出されたブローバイガス中に含まれるオイルをオイルセパレータ62で分離,回収し,ドレンホース63を介してエンジン5に戻すことができるように構成している。
【0067】
なお,図示の例では,ブローバイガス中に含まれるオイルを回収するための構成として,オイルセパレータ62を設ける構成を採用したが,オイルセパレータ62に代え,オイルキャッチャを設け,オイルキャッチャで回収したオイルをエンジンに戻すことなくオイルキャッチャ内に貯めておくように構成するものとしても良い。
【0068】
また,エンジンの排気量が小さい等,ブローバイガスと共に排出されるオイル量が比較的少量である場合等には,前述したオイルセパレータ62やオイルキャッチャを設けることなく,ブリーザパイプ70の一端70aを直接,クランクケースカバーに設けた排出孔61に連通するものとしても良い。
【0069】
クランクケースに設けた排出孔61より排出されたブローバイガスを防音箱9外に導出する前述のブリーザパイプ70には,少なくとも防音箱9外に配置される他端70bから所定の範囲を,排気ガス後処理装置40を通過した排気ガスの一部から成る熱媒ガスによって加熱される被加熱部72として構成する。
【0070】
図示の実施形態では,フリーザパイプ70の一端70aから全長の約40%程度をゴムホース等の可撓性を有する材質によって変形可能に構成された導入部71とし,他端70bから全長の約60%程度を直線状に形成し,この部分を前述した被加熱部72としている。
【0071】
もっとも,被加熱部72の形成範囲は,図示の実施形態に限定されず,図示の例に比較してより広い範囲,例えばブリーザパイプ70の全長に亘って被加熱部72を形成するものとしても良く,又は,図示の例に比較してより短い範囲を被加熱部72とするものとしても良く,想定されるエンジン駆動作業機1の使用環境に合わせてブリーザパイプ70の除氷が必要となる範囲で被加熱部72を形成すれば良い。
【0072】
また,図示の例では被加熱部72を直線状に形成したが,被加熱部72の形状はこれに限定されず,例えば湾曲形状等に形成するものとしても良い。
【0073】
この被加熱部72の構造としては,例えばブローバイガス流路73(又は熱媒ガス流路76)となる管の外周に,熱媒ガス流路76(又はブローバイガス流路73)となる一又は複数の金属管を平行に接触配置し,あるいはスパイラル状に巻き付けて配置する等して,熱媒ガス流路76に導入され熱媒ガスによって,ブローバイガス流路73やこれを通過するブローバイガスの加熱を行うことができるものであれば図示の構成に限定されない。
【0074】
本実施形態では,
図5〜7に示すように前述した被加熱部72を,内管74と該内管74の外周を覆う外管75から成る二重管構造とすることで,内管74内にブローバイガス流路73を形成すると共に,内管74の外周面と外管75の内周面間の間隔に熱媒ガス流路76を形成している。
【0075】
この外管75の一端75a(導入部71側の端部)は閉塞されており,図示の実施形態では,外管75の一端75aを,その内径を内管74の外径と一致する太さとなるまで絞り,一端75aを内管74に接合(例えば溶接)することによって閉塞している。
【0076】
このようにして閉塞された外管75の一端75a側には,該外管75の外壁を貫通して熱媒ガス流路76の入口76aを設けることで,熱媒ガス流路76に対し熱媒ガスを導入することができるように構成すると共に,導入された熱媒ガスを,外管75の他端75b側にも設けた後述する熱媒ガス流路76の出口76bに向かって移動させることで,高温の熱媒ガスによって内管74とその中を流れるブローバイガスを加熱することができるように構成している。
【0077】
ブリーザパイプ70の他端70bを成す,被加熱部72の端部は,一例として
図5に示すように内管74の他端74bを外管75の他端75bよりも突出させて設けるものとしても良く,この構成では,外管75の他端75bについても前記一端75aと同様に閉塞する。
【0078】
この
図5に示した構成では,外管75によって覆われている部分の内管74のうちの他端74b寄りの部分に,内管74の壁面を貫通する貫通孔を設け,この貫通孔を熱媒ガス流路76の出口76bとすることで,入口76aを介して熱媒ガス流路76に導入された熱媒ガスを,前記出口76bを介してブリーザパイプ74内に導入し,ブリーザパイプ74内のブローバイガスと合流させてブローバイガス流路73の出口73bより大気放出することができるように構成した。
【0079】
エンジンからの排気ガスは,排気ガス後処理装置40に設けられた酸化触媒(DOC)41を通過することにより一例として500〜600℃程度の比較的高い温度となっており,このような高温の排気ガスの一部である熱媒ガスは,熱媒ガス流路76に導入されて内管74やその中のブロ―バイガス流路73を流れるブローバイガスと熱交換した後においても依然として高い温度を維持している。
【0080】
従って,内管74の他端74b寄りの位置に設けた出口76bを介して,ブローバイガス流路73内を流れるブローバイガスにこの高温の熱媒ガスを合流させて排出するように構成したことで,防音箱9の壁面を貫通して防音箱9外に突出している,最も凍結が生じ易いブリーザパイプ70の他端70b付近を効果的に加熱することができるものとなっている。
【0081】
なお,ブリーザパイプ70の他端70bにおける内管74と外管75の端部構造は,
図5を参照して説明した構造に代えて,一例として
図6及び
図7に示した構造としても良い。
【0082】
図6は,内管74の他端74bと外管75の他端75bが同じ位置となるように構成した例であり,この構成では,外管75の他端75bの内壁とブリーザパイプ74の他端74bの外壁間の間隔に熱媒ガス流路76の出口76bが形成されている。
【0083】
従って,防音箱9の壁面を貫通して外管75の他端75bを防音箱9外に延設することで,熱媒ガス流路76の出口76bとブローバイガス流路73の出口73bを共に防音箱9外で開口させることができると共に,熱媒ガスの放気を,ブローバイガスの放気位置の外周を覆うようにして行うことで,ブローバイガス流路73の出口73bである内管74の他端74bを効果的に加熱することができる。
【0084】
更に,
図7に示す構成例では,内管74の他端74bを外管75内部の奥まった位置で終端させて,内管74の他端74bよりも外管75の他端75bを突出させた例である。
【0085】
この構成では,内管74の他端74b外周と,外管75の内周面間の間隔によって形成される熱媒ガス流路76の出口76bと,内管74の他端74bに形成されるブローバイガス流路73の出口73bは,いずれも外管75内部の奥まった位置で開口される。
【0086】
このように,外管75の他端75bを,内管74の他端74bよりも突出させた構成としたことで,ブリーザパイプ70の他端70bの開口径が,外管75の径となって比較的大なものとなるため,凍結等が生じた場合であっても,ブリーザパイプ70の出口全体が氷によって塞がれることを防止できると共に,仮にブリーザパイプ70の出口全体が氷で塞がれた場合であっても,熱媒ガスとブローバイガスの噴射によって比較的容易に吹き飛ばすことが可能となる。
【0087】
なお,
図7に示すように,外管75の他端75bを,内管74の他端74bよりも突出させた構成では,防音箱9の壁面を貫通して防音箱9外に露出させた部分の外管75の側壁に,ガス抜き穴となる貫通孔79を設けることが好ましい。
【0088】
このような貫通孔79を設けることで,
図8(A)に示したように外管75の他端75b部分に凍結等が生じていない正常な状態では,ブローバイガス流路73の出口73bを介して放出されたブローバイガスと,熱媒ガス流路76の出口76bを介して放出された熱媒ガスは,外管75内で合流し,外管75の他端75bを介して放出される。
【0089】
一方,外管75の他端75b,すなわちブリーザパイプ70の他端70bが凍結によって塞がれるような事態が生じた場合には,前述の貫通孔79が設けられていることで,
図8(B)に示すように,ブローバイガス流路73の出口73bより放出されたブローバイガスや熱媒ガス流路76の出口76bより放出された熱媒ガスを,いずれも前述の貫通孔79を介して防音箱9外に放気することができ,凍結による目詰まりが生じた場合であってもクランクケース内の圧力を好適に逃がすことができる。
【0090】
しかも,貫通孔79を防音箱9外に設けていることから,ブローバイガス中に含まれる未燃焼ガスやオイル等で防音箱9内を汚すこともない。
【0091】
以上で説明した被加熱部72の熱媒ガス流路76に導入される熱媒ガスは,被加熱部72の加熱に使用された後には大気放出されることから,熱媒ガスはクリーンなものであることが要求される。
【0092】
そのため,本発明では,排気ガス後処理装置40を通過した後のクリーンな排気ガスを熱媒ガスとし,これを前述した被加熱部72に設けた熱媒ガス流路76の入口76aに導入している。
【0093】
排気ガス後処理装置40として,DOC41やDPF42の他に,尿素SCR43を備える構成のものを採用した図示の実施形態では,
図2及び
図4に示すように尿素SCR43を通過した後の排気ガスの一部を熱媒ガスとして熱媒ガス流路76の入口76aに導入するが(
図2及び
図4参照),排気ガス後処理装置40に尿素SCR43を設けない構成では,DPF42を通過した後の排気ガスの一部を熱媒ガスとして導入する。
【0094】
いずれの構成においても,熱媒ガス流路76に導入される熱媒ガスは,PM等の有害物質が除去されていることから,これをそのまま大気放出しても問題ないだけでなく,このような熱媒ガスは,熱媒ガス流路76内に導入しても熱媒ガス流路76内に煤(PM)の堆積等に伴う目詰まりが生じることもない。
【0095】
排気ガス後処理装置40を通過した後の排気ガスの一部を取り出すために,
図2及び
図4に示す例ではテールパイプ50の側壁を貫通する開孔を熱媒ガス取出口51として設けると共に,この熱媒ガス取出口51にテールパイプ50内を流れる排気ガスの一部を誘導する誘導板52をテールパイプ50の内壁面に設けている。
【0096】
熱媒ガス取出口51より取り出された熱媒ガスは,熱媒ガス取出口51に一端が連通され,他端を,被加熱部72に設けた熱媒ガス流路76の入口76aに連通した還流流路53(又は53a,53b)を介して熱媒ガス流路76に導入されるように構成した。
【0097】
図1及び
図2に示す実施形態にあっては,排気ガス後処理装置40を通過した後の排気ガスの一部を直接,被加熱部72に設けた熱媒ガス流路76の入口76aに導入する構成を示したが,この構成に代え,排気ガス後処理装置40を通過した排気ガスの一部を,防音箱9内に収容されている他部材の加熱に使用した後,前述した熱媒ガス流路76の入口76aに導入するように構成しても良い。
【0098】
図3及び
図4に示す実施形態では,排気ガス後処理装置40の一次側に設けられているエキパイ30を,内管30aと外管30bから成る二重管構造とし(
図4参照),このエキパイ30の内管30a内をエンジン5からの排気ガスが通過する内側流路31と成すと共に,内管30aの外面と外管30bの内面間に形成された間隔内に,排気ガス後処理装置を通過した後の排気ガスの一部である熱媒ガスを導入する外側流路32を形成している。
【0099】
そして,テールパイプ50に設けた熱媒ガス取出口51とエキパイ30に設けた外側流路32の入口33を第1の還流流路53aで連通すると共に,この外側流路32の出口34とブリーザパイプ70の被加熱部72に設けた熱媒ガス流路76の入口76aを第2の還流流路53bで連通することにより,排ガス後処理装置40を通過した後の排気ガスの一部を,被加熱部72に設けた熱媒ガス流路76の入口76aに導入することができるように構成している。
【0100】
排気ガス後処理装置のDOC41を通過した後の排気ガスは,DOCを通過する前の排気ガスに対し高温(一例として200℃以上)となっており,上記のように構成したエンジン駆動型作業機では,エキパイ30に形成された外側流路32に熱媒ガスを導入することで,排気ガス後処理装置40に導入される前の排気ガス温度を上昇させることができ,その結果,寒冷時等においてエンジン5からの排気ガスの温度が低い状態となっている場合であっても,排気ガス後処理装置40に導入される排気ガス温度をDOC41の活性化温度に上昇させて,DPF42の目詰まりを防止することができる。
【0101】
しかも,エキパイ30に設けた外側流路32を通過した後も熱媒ガスは外気に対し依然として大幅に高い温度を維持していることから,エキパイ30を通過させた後の熱媒ガスを被加熱部72に設けた熱媒ガス流路76に導入した場合であっても,被加熱部72を好適に加熱することができ,ブリーザパイプの凍結に伴うクランクケースのガス抜き不良の発生を好適に防止することができる。
【0102】
このように,本発明のクランクケースブリーザ60の構造では,いずれの構造においても被加熱部72においてブローバイガス流路73の外周は,熱媒ガス流路76によって覆われていると共に,熱媒ガス流路76には,排気ガス後処理装置40を通過して温度が上昇した排気ガスの一部が熱媒ガスとして導入されていることで,被加熱部72及び被加熱部72におけるブローバイガス流路73内を流れるブローバイガスを加熱して容易に除氷することができるものとなっている。
【0103】
しかも,被加熱部72を二重管構造として内周側にブローバイガス流路73,外周側に熱媒ガス流路76を設けたことから,熱媒ガスは,ブローバイガスが冷えることを防止する断熱材としても機能する。
【0104】
その結果,エンジン5のクランクケースから排出されたブローバイガスは,被加熱部72を通過する際に冷却されないだけでなく,熱媒によって加熱された後に防音箱9外に放気されることで,ブリーザパイプ70の他端70bやその近傍部分を好適に加熱することができる。
【0105】
しかも,このような加熱による除氷はエンジン5の排気熱を利用して行うものであるから,除氷のための新たなエネルギー消費がなく,エンジン5の燃費等を悪化させることなく,前述した除氷を行うことが可能である。