(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車室内に設けられたスピーカとマイクロフォンを用いることにより、運転手がフィーチャフォンやスマートフォン等の携帯電話端末を手に持つことなく、相手方との通話を行うことを可能とするハンズフリーシステムが知られている。例えば特許文献1に、この種のハンズフリーシステムの具体的構成が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のハンズフリーシステムは、車室内に設けられたスピーカ及びマイクロフォンと接続された車載器を有している。この車載器は、例えばカーオーディオであり、Bluetooth(登録商標)規格によって携帯電話端末と無線接続される。この車載器は、マイクロフォンによる収音によって得られる通話データ(運転手の発話音声データ)を、無線接続された携帯電話端末に送信する。携帯電話端末は、車載器より受信した通話データを電話回線を介して相手方の電話端末に送信する。また、携帯電話端末は、電話回線を介して受信した通話データ(相手方の発話音声データ)を車載器に送信する。車載器は、携帯電話端末より受信した通話データを信号処理してスピーカから出力させる。このようなハンズフリーシステムを用いることにより、運転手は、携帯電話端末を手に持つことなく、相手方と通話することができる。
【0004】
車室内において、マイクロフォンは、例えばマップランプ付近やハンドルの根元付近に取り付けられている。このマイクロフォンと運転手の頭部との距離は、運転手の座高や姿勢に応じて変わる。この距離が変わると、マイクロフォンと運転手の口との距離も変わるため、マイクロフォンで受信される運転手の発話音声のレベルも変わる。
【0005】
例えばマイクロフォンと運転手の頭部(より詳細には運転手の口)との距離が遠い場合、マイクロフォンで受信される運転手の発話音声のレベルが小さくなりやすい。マイクロフォンで受信される運転手の発話音声のレベルが小さい場合、相手方の電話端末に送信される通話データのレベルも小さくなる。そのため、相手方が運転手の発話内容を聞き取り難くなる。これとは反対に、マイクロフォンと運転手の頭部との距離が近い場合、マイクロフォンで受信される運転手の発話音声のレベルが大きくなりやすい。マイクロフォンで受信される運転手の発話音声のレベルが大きい場合、相手方の電話端末に送信される通話データのレベルも大きくなる。この場合、音割れが生じて、相手方が運転手の発話内容を聞き取り難くなることがある。
【0006】
そこで、距離検出用のセンサ装置を用いてマイクロフォンと運転手の頭部との距離を検出し、検出された距離に応じてマイクロフォンの感度を適切な感度に調整することが考えられる。距離検出用のセンサ装置としては、例えば特許文献2に記載の超音波センサ装置が挙げられる。特許文献2に記載の超音波センサ装置は、パルス状の超音波を対象物に放射し、対象物にて反射されたエコーパルスを検出して伝搬時間(超音波の放射からエコーパルスの検知までの時間)を計算し、計算された伝搬時間に基づいて超音波センサ装置と対象物との距離を演算する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に例示されるセンサ装置を用いてマイクロフォンと運転手の頭部との距離を検出する場合、専用のセンサ装置を車室内に新たに設ける必要がある。この場合、専用のセンサ装置を設置するスペースを車室内に確保する必要があったり、当該センサ装置を設けることによるコストの増加が発生したりするなどの問題がある。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、専用のセンサ装置を備えずとも、マイクロフォンと人(運転手の頭部等)との距離に応じてマイクロフォンの感度を調整することが可能な装置及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る感度調整装置は、マイクロフォンの感度を調整する装置である。この感度調整装置は、人との距離を測定するための測定用音の信号を、音源より入力される音の信号に重畳する重畳部と、重畳部にて重畳された信号による音を出力するスピーカと、マイクロフォンと、マイクロフォンによる収音によって得られる音の信号から、人からの測定用音の反射成分を分離する分離部と、分離部にて分離された反射成分に基づいてマイクロフォンと人との距離を算出する算出部と、算出部にて算出された距離に応じてマイクロフォンの感度を調整する調整部とを備える。
【0011】
本発明の一実施形態に係る感度調整装置は、スピーカ及びマイクロフォンを利用して人との距離を算出するのに必要な情報(人からの測定用音の反射成分)を取得し、取得された情報に基づいてマイクロフォンと人との距離を算出するように構成されているため、例えば当該距離を検出するための専用のセンサ装置を備えずとも、当該距離を算出し、算出された距離に応じてマイクロフォンの感度を調整することができる。
【0012】
測定用音は、例えばインパルス音である。この場合、重畳部は、所定の条件が満たされると、インパルス音の信号を音源より入力される音の信号に重畳し、インパルス音が重畳された音をスピーカから出力させる。
【0013】
スピーカ及びマイクロフォンは、座席のヘッドレストに設けられたものであってもよい。この場合、スピーカは、インパルス音が重畳された音が座席に座る人の頭部に当たるように、インパルス音が重畳された音をヘッドレストの前方に出力する。また、この場合、感度調整装置は、座席に人が座ったことを検知する第一の検知部を更に備える構成としてもよい。この場合、上記の所定の条件は、第一の検知部によって座席に人が座ったことが検知されることである。
【0014】
マイクロフォンは、例えばヘッドレストの前方の角度範囲に指向性を有する又は無指向性のマイクロフォンである。
【0015】
本発明の一実施形態に係る感度調整装置は、座席に座る人の姿勢の変化を検知する第二の検知部を更に備える構成としてもよい。この場合、上記の所定の条件は、第二の検知部によって座席に座る人の姿勢が変化したことが検知されることである。
【0016】
座席に座る人の姿勢が変化すると、その頭部の位置が変わって、頭部とマイクロフォンとの距離が変化する。感度調整装置を上記のように構成することにより、座席に座る人の姿勢が変化(言い換えると、人の頭部とマイクロフォンとの距離が変化)する毎にインパルス音が重畳された音がスピーカから出力され、マイクロフォンによる収音によって得られる音の信号から、人からの測定用音の反射成分が分離され、分離された反射成分に基づいてマイクロフォンと人との距離が算出され、算出された距離に応じてマイクロフォンの感度が調整される。すなわち、人の頭部とマイクロフォンとの距離が変化した場合にも、その変化に応じてマイクロフォンの感度を適切に調整することが可能となる。
【0017】
上記の座席は、例えば車の座席である。この場合、感度調整装置は、車のハンドルの回転量及び回転方向の情報と車の加速度の情報の少なくとも一方の情報を取得する取得部を更に備える構成としてもよい。また、第二の検知部は、取得部にて取得された情報に基づいて座席に座る人の姿勢の変化を検知する構成としてもよい。
【0018】
マイクロフォンと人との距離を測定するための測定用音は、例えば所定の波長域の超音波である。
【0019】
調整部は、算出部にて算出された距離に応じてマイクロフォンの利得を調整する構成としてもよい。
【0020】
分離部は、マイクロフォンによる収音によって得られる音の信号から、人からの測定用音の反射成分を分離すると共に可聴域成分を分離する構成としてもよい。この場合、調整部は、算出部にて算出された距離に応じた利得で可聴域成分のレベルを調整することにより、実質的にマイクロフォンの感度を調整する。
【0021】
本発明の一実施形態に係る車載システムは、上記の感度調整装置と、感度調整装置と接続され、マイクロフォンによる収音によって得られる音の信号を用いて所定の処理を実行する車載器とを備える。
【0022】
本発明の一実施形態に係る車用ヘッドレストは、人との距離を測定するための測定用音の信号を、音源より入力される音の信号に重畳する重畳部と、重畳部にて重畳された信号による音を出力するスピーカと、マイクロフォンと、マイクロフォンによる収音によって得られる音の信号から、人からの測定用音の反射成分を分離する分離部と、分離部にて分離された反射成分に基づいてマイクロフォンと人との距離を算出する算出部と、算出部にて算出された距離に応じてマイクロフォンの感度を調整する調整部とを備える。
【0023】
本発明の一実施形態に係る信号処理装置は、スピーカ及びマイクロフォンと接続された装置であり、人との距離を測定するための測定用音の信号を、音源より入力される音の信号に重畳する重畳部と、重畳部にて重畳された信号をスピーカに出力する出力部と、マイクロフォンと接続され、マイクロフォンによる収音によって得られる音の信号が入力される入力部と、入力部に入力された音の信号から、人からの測定用音の反射成分を分離する分離部と、分離部にて分離された反射成分に基づいてマイクロフォンと人との距離を算出する算出部と、算出部にて算出された距離に応じてマイクロフォンの感度を調整する調整部とを備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、専用のセンサ装置を備えずとも、マイクロフォンと人(運転手の頭部等)との距離に応じてマイクロフォンの感度を調整することが可能な感度調整装置、車載システム、車用ヘッドレスト及び信号処理装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る車載システムについて説明する。本発明の一実施形態に係る車載システムは、車両に搭載されたシステムであり、車室内に設けられたスピーカ及びマイクロフォンを利用して人との距離を算出するのに必要な情報を取得し、取得された情報に基づいてマイクロフォンと人との距離を算出するように構成されており、例えば当該距離を検出するための専用のセンサ装置を備えずとも、当該距離を算出し、算出された距離に応じてマイクロフォンの感度を調整することができる。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る車載システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、車載システム1は、車用ヘッドレスト10、信号処理装置20及び車載器30を備えている。
【0028】
図2は、主に、本発明の一実施形態に係る車用ヘッドレスト10の構成を模式的に示す図である。車用ヘッドレスト10は、運転席Sのヘッドレストである。
図2に示されるように、車用ヘッドレスト10には、一対のスピーカSP
R、SP
L及びマイクロフォンMICが設けられている。マイクロフォンMICは、車用ヘッドレスト10の中央部に設けられており、運転席Sに座る人(以下「運転手」とする。)の発話音声を効率的に収音するため、例えば車用ヘッドレスト10の前方の角度範囲に指向性を有している。マイクロフォンMICは、無指向性のものであってもよい。
【0029】
スピーカSP
R、SP
Lは、マイクロフォンMICを挟んで、それぞれ、マイクロフォンMICの右側、左側に設けられている。スピーカSP
R、SP
Lは、出力する音(音波)が運転手の頭部に当たるように、車用ヘッドレスト10の前方に音を出力する。
【0030】
信号処理装置20は、例えばECU(Engine Control Unit)の一部を構成する装置であり、コントローラ202、超音波信号発生部204、重畳部206、出力部208、入力部210、分離部212、算出部214、調整部216及び可変アンプ218を備えている。
【0031】
車載器30は、カーオーディオ装置及びカーナビゲーション装置を搭載した機器であり、音声認識部302及びハンズフリー処理部304を備えている。
【0032】
音声認識部302及びハンズフリー処理部304には、マイクロフォンMICにて収音された運転手の発話音声データが信号処理装置20を介して入力される。音声認識部302及びハンズフリー処理部304は、信号処理装置20を介して入力された運転手の発話音声データを用いて所定の処理を実行する。
【0033】
例示的には、音声認識部302は、信号処理装置20より入力される運転手の発話音声データの内容を認識し、認識結果に基づいて車載器30を動作させる。また、音声認識部302は、音声認識結果に応じたガイダンスを、信号処理装置20を介してスピーカSP
R、SP
Lから出力させる。ハンズフリー処理部304は、信号処理装置20より入力される運転手の発話音声データをBluetooth(登録商標)等の無線通信規格でペアリングされた携帯電話端末(不図示)に送信する。この携帯電話端末は、ハンズフリー処理部304より受信した運転手の発話音声データ(通話データ)を電話回線を介して相手方の電話端末に送信する。また、この携帯電話端末は、電話回線を介して受信した通話データ(相手方の発話音声データ)をハンズフリー処理部304に送信する。ハンズフリー処理部304は、携帯電話端末より受信した通話データを処理して信号処理装置20を介してスピーカSP
R、SP
Lから出力させる。これにより、運転手は、携帯電話端末を手に持つことなく、相手方と通話することができる。なお、車載器30に搭載されたカーオーディオ装置及びカーナビゲーション装置並びに音声認識部302及びハンズフリー処理部304は周知のものであり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0034】
図3は、信号処理装置20にて実行される感度調整処理のフローチャートを示す。車載システム1は、例えば車両のエンジンの始動に伴って起動する。車載システム1が起動されると、
図3に示される感度調整処理の実行が開始される。車載システム1が停止すると、
図3に示される感度調整処理が終了する。
図3に示される感度調整処理の実行により、マイクロフォンMICと運転手の頭部との距離を検出するための専用のセンサ装置が無くとも、当該距離に応じてマイクロフォンMICの感度が適切に調整される。
【0035】
運転席Sの座面下部には着座センサ42が埋設されている。着座センサ42は、例えばメンブレンスイッチを有するシート状のセンサであり、運転席Sに人が座っているか否かを検知する。
【0036】
運転席Sに人が座ると、着座センサ42からオン信号が出力される。着座センサ42から出力されたオン信号はコントローラ202に入力される。
【0037】
コントローラ202は、信号処理装置20を制御すると共に車載器30と連携して処理を実行するIC(Integrated Circuit)であり、CPU(Central Processing Unit)、CPUによって実行される制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、制御プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)等を有している。
【0038】
コントローラ202は、着座センサ42からオン信号が入力されると(ステップS11:YES)、所定の波長域の超音波信号(測定用音の信号)の発生を超音波信号発生部204に命令する。超音波信号発生部204は、コントローラ202から命令を受けて所定の超音波信号を発生させ、発生された超音波信号を重畳部206に出力する(ステップS12)。超音波信号発生部204にて発生される超音波信号は、例えばインパルス音の信号である。
【0039】
重畳部206には、音源である車載器30から出力されたオーディオ信号が入力される。車載器30から重畳部206に入力されるオーディオ信号には、例えば、音声認識部302から出力される音声認識用のガイダンスの音声データ、ハンズフリー処理部304から出力される相手方の発話音声データ、カーオーディオ装置から出力される楽曲データ、カーナビゲーション装置から出力されるナビゲーション用の音声データが挙げられる。
【0040】
重畳部206及び出力部208は、原則、車載器30より入力されるオーディオ信号をスピーカSP
L及びSP
Rにスルー出力する。これにより、スピーカSP
L及びSP
Rから、音声認識用のガイダンスや電話相手の発話音声、楽曲、ナビゲーション用の音声等が出力される。
【0041】
重畳部206は、超音波信号発生部204から超音波信号が入力された時に限り、車載器30より入力されるオーディオ信号をスルー出力せず、当該オーディオ信号に超音波信号を重畳して出力部208に出力する(ステップS13)。言い換えると、重畳部206は、所定の条件が満たされると(着座センサ42によって運転席Sに運転手が座ったことが検知されると)、車載器30より入力されるオーディオ信号に超音波信号を重畳して出力部208に出力する。以下、説明の便宜上、車載器30より入力されるオーディオ信号に超音波信号を重畳したものを「超音波重畳信号」と記す。
【0042】
出力部208は、超音波重畳信号が重畳部206より入力されると、入力された超音波重畳信号をスピーカSP
L、SP
Rに順に出力する(ステップS14)。これにより、超音波重畳信号による音(以下、「超音波重畳音」と記す。)がスピーカSP
L、SP
Rから順に出力される。なお、超音波信号がインパルス音であることから、超音波重畳音がスピーカSP
L、SP
Rから出力される期間は極僅かである。そのため、例えば聴取中の音(音声認識用のガイダンスや電話相手の発話音声、楽曲、ナビゲーション用の音声等)を運転手が一時的に聞き取り難くなるといった弊害は実質的に生じない。
【0043】
図4(a)は、標準的な座高を持つ運転手が運転席Sに座った状態を模式的に示し、
図4(b)は、座高が低い運転手が運転席Sに座った状態を模式的に示す。
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、スピーカSP
L、SP
Rから順に出力された超音波重畳音は、運転席Sに座る運転手の頭部にて順に反射される。以下、説明の便宜上、スピーカSP
Lから出力されて運転手の頭部にて反射された超音波重畳音を「反射音R
L」と記し、スピーカSP
Rから出力されて運転手の頭部にて反射された超音波重畳音を「反射音R
R」と記す。
【0044】
反射音R
L、R
Rは、マイクロフォンMICによって順に収音される(ステップS15)。以下、説明の便宜上、マイクロフォンMICによる収音によって得られた反射音R
L、R
Rの信号をそれぞれ「反射音信号RS
L」、「反射音信号RS
R」と記す。反射音信号RS
L、反射音信号RS
Rは、入力部210を介して分離部212に順次入力される。
【0045】
分離部212はフィルタ回路を有しており、このフィルタ回路によって、入力部210より順次入力される反射音信号RS
L、反射音信号RS
Rから、超音波帯(例えば30kHz〜100kHz)の成分を分離すると共に可聴域(例えば20Hz〜20kHz)の成分を分離する(ステップS16)。
【0046】
反射音信号RS
L及び反射音信号RS
Rに含まれる超音波帯の成分は、実質的に、運転席Sに座る運転手の頭部にて反射された測定用音(超音波信号による音)の反射成分だけである。そのため、分離部212は、反射音信号RS
L、反射音信号RS
Rから、運転席Sに座る運転手の頭部にて反射された測定用音の反射成分を分離すると共に可聴域成分を分離する、ともいえる。以下、説明の便宜上、反射音信号RS
L、反射音信号RS
Rから分離された測定用音の反射成分をそれぞれ「超音波反射成分UR
L」、「超音波反射成分UR
R」と記し、反射音信号RS
L、反射音信号RS
Rから分離された可聴域成分をそれぞれ「可聴域成分A
L」、「可聴域成分A
R」と記す。
【0047】
障害物を検知するためのコーナーセンサが車両に搭載されている場合を考える。一般に、コーナーセンサのソナー信号も超音波帯の信号である。そのため、超音波信号発生部204にて発生される超音波信号とソナー信号との混信が懸念される。そこで、超音波信号発生部204にて発生される超音波信号をソナー信号とは異なる周波数帯の信号に設定し、反射音信号RS
L及び反射音信号RS
Rからソナー信号の周波数帯の成分が分離されずカットされるように分離部212のフィルタ特性を設定してもよい。また、反射音R
L及びR
RがマイクロフォンMICによって収音されるタイミングを含む極僅かな期間中に限り、ソナー信号の出力が一時的に停止されるようにコーナーセンサを制御してもよい。
【0048】
分離部212は、超音波反射成分UR
L及び超音波反射成分UR
Rを算出部214に出力すると共に可聴域成分A
L及び可聴域成分A
Rを可変アンプ218に出力する。
【0049】
算出部214は、分離部212より入力される超音波反射成分UR
L、UR
Rに基づいてマイクロフォンMICと運転席Sに座る運転手の頭部との距離Dを算出する(ステップS17)。
【0050】
図5は、反射音信号RS
Lの周波数特性を例示する図である。
図5中、実線で示される超音波反射成分UR
Lは距離Dが近い場合の例示であり、破線で示される超音波反射成分UR
Lは距離Dが遠い場合の例示である。
図5に例示されるように、超音波反射成分のレベル(ピークのレベル)は、距離Dが近いほど高く、距離Dが遠いほど低い。そのため、算出部214は、超音波反射成分のレベルが低いほど短い距離Dを算出し、超音波反射成分のレベルが高いほど短い距離Dを算出する。なお、通常、座高が低い運転手が運転席Sに座る場合よりも標準的な座高を持つ運転手が運転席Sに座る場合の方が距離Dは近いものとなる(
図4(a)及び
図4(b)参照)。
【0051】
この距離Dは、運転手の座高(
図4(a)及び
図4(b)参照)だけでなく運転手の姿勢によっても変化する。そこで、本実施形態において、算出部214は、車用ヘッドレスト10の左寄り、右寄りに設けられたスピーカSP
L、SP
Rから出力される、2つの超音波重畳音の超音波反射成分UR
L、UR
Rのレベルに基づき、運転手の座高だけでなく運転手の姿勢も考慮された距離Dを算出する。
【0052】
図6は、標準的な座高を持つ運転手(
図4(a)参照)が様々な姿勢(姿勢1〜7)をとったときの頭部の位置を例示する図である。下記は、運転手が姿勢1〜7の各姿勢をとったときの超音波反射成分UR
L、超音波反射成分UR
Rの各レベル(ピークのレベル)と、各姿勢をとったときに算出部214によって算出される距離Dを示す。
【0053】
・姿勢1
超音波反射成分UR
Lのレベル:0dB
超音波反射成分UR
Rのレベル:0dB
算出される距離D :距離D1(マイクロフォンMICに近い距離)
・姿勢2
超音波反射成分UR
Lのレベル: 0dB
超音波反射成分UR
Rのレベル:−10dB
算出される距離D :距離D2(距離D1よりも少し遠い距離)
・姿勢3
超音波反射成分UR
Lのレベル:−10dB
超音波反射成分UR
Rのレベル: 0dB
算出される距離D :距離D2(距離D1よりも少し遠い距離)
・姿勢4
超音波反射成分UR
Lのレベル:−10dB
超音波反射成分UR
Rのレベル:−10dB
算出される距離D :距離D3(距離D2よりも少し遠い距離)
・姿勢5
超音波反射成分UR
Lのレベル:−20dB
超音波反射成分UR
Rのレベル:−10dB
算出される距離D :距離D4(距離D3よりも少し遠い距離)
・姿勢6
超音波反射成分UR
Lのレベル:−10dB
超音波反射成分UR
Rのレベル:−20dB
算出される距離D :距離D4(距離D3よりも少し遠い距離)
・姿勢7
超音波反射成分UR
Lのレベル:−20dB
超音波反射成分UR
Rのレベル:−20dB
算出される距離D :距離D5(距離D4よりも少し遠い距離)
【0054】
なお、算出部214は、インパルス音を用いてインパルス応答を測定し、測定の結果得られた時間(超音波重畳音がスピーカSP
L、SP
Rから出力されてマイクロフォンMICで収音されるまでの時間)に応じて距離Dを算出してもよい。
【0055】
距離Dが遠いほどマイクロフォンMICで受信される運転手の発話音声のレベルが小さくなりやすい。マイクロフォンMICで受信される運転手の発話音声のレベルが小さい場合、例えば音声認識部302に入力される運転手の発話音声データのレベルが小さくなるためSN比が低下し、音声認識部302にて音声が誤認識されやすくなったり、ハンズフリー処理部304を介して相手方の電話端末に送信される通話データのレベルも小さくなるため、相手方が運転手の発話内容を聞き取り難くなったりする。
【0056】
これとは反対に、距離Dが近いほどマイクロフォンMICで受信される運転手の発話音声のレベルが大きくなりやすい。マイクロフォンMICで受信される運転手の発話音声のレベルが大きい場合、例えば音声認識部302に入力される運転手の発話音声データのレベルが大きくなりすぎて音割れが生じ、音声認識部302にて音声が誤認識されやすくなったり、ハンズフリー処理部304を介して相手方の電話端末に送信される通話データのレベルも大きくなりすぎて音割れが生じ、相手方が運転手の発話内容を聞き取り難くなったりする。
【0057】
そこで、調整部216は、算出部214にて算出された距離Dに応じて、例えば音声認識部302及びハンズフリー処理部304に出力される運転手の発話音声データのレベル(例えば発話の周波数帯(一例として250Hz〜4kHz)のピークのレベル)が一定に保たれるように、可変アンプ218の利得を調整する(ステップS18)。
【0058】
具体的には、調整部216は、距離Dが近いほどマイクロフォンMICで受信される運転手の発話音声のレベルが大きくなりやすいことから、可変アンプ218の利得の増幅率を下げる。また、調整部216は、距離Dが遠いほどマイクロフォンMICで受信される運転手の発話音声のレベルが小さくなりやすいことから、可変アンプ218の利得の増幅率を上げる。これにより、可変アンプ218は、分離部212より入力された可聴域成分A
L及び可聴域成分A
Rを一定のレベルで出力する。
【0059】
このように、調整部216は、算出部214によって算出された距離Dに応じた利得で可聴域成分A
L及び可聴域成分A
Rのレベルを調整することにより、実質的にマイクロフォンMICの感度を調整する。
【0060】
可変アンプ218の利得の設定値は、例えば調整部216が備えるメモリ216aに保持される。
【0061】
運転席Sに座る運転手の姿勢が一定とは限らない。例えば、運転手がある程度以上右にハンドルを切るとその姿勢が右に傾き、ある程度以上左にハンドルを切るとその姿勢が左に傾きやすい。また、車両の加速時には運転手の姿勢が後傾になりやすく、車両の減速時には運転手の姿勢が前傾になりやすい。
【0062】
コントローラ202は、ハンドルの回転操作量(操舵角)を検知するステアリングセンサ44、及び車両の加速度(減速度を含む)を検知する車速センサ46と接続されている。コントローラ202は、ステアリングセンサ44によって所定値以上のハンドルの回転操作量を検知すると(ステップS19:YES)、運転手の姿勢が変化(右又は左に傾いた姿勢に変化)したことを検知して、超音波信号の発生を超音波信号発生部204に命令する。また、コントローラ202は、車速センサ46によって所定値以上の加速度(又は所定値以上の減速度)を検知すると(ステップS19:YES)、運転手の姿勢が変化(前傾又は後傾に変化)したことを検知して、超音波信号の発生を超音波信号発生部204に命令する。以後、ステップS12以降の処理が実行される。なお、この場合、ステップS13において、重畳部206は、所定の条件が満たされると(ステアリングセンサ44によって所定値以上のハンドルの回転操作量又は車速センサ46によって所定値以上の加速度・減速度が検知されると)、車載器30より入力されるオーディオ信号に超音波信号を重畳して出力部208に出力する。
【0063】
すなわち、本実施形態では、運転手が運転席Sに座った後もその姿勢が変化する毎に距離Dが算出され、算出された距離Dに応じてマイクロフォンMICの感度が調整される。
【0064】
このように、本実施形態では、マイクロフォンMICと運転手の頭部との距離Dを検出するための専用のセンサ装置が無くとも、距離Dに応じてマイクロフォンMICの感度が適切に調整される。
【0065】
また、一般に、車用ヘッドレストは大型化設計が許容され難い。本実施形態では、車用ヘッドレスト10に専用のセンサ装置を設ける必要が無いため、車用ヘッドレスト10の大型化が避けられる。
【0066】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0067】
上記の実施形態では、運転手が運転席に座った時及び運転手の姿勢が変化した時に距離Dが算出されてマイクロフォンMICの感度が調整されるが、別の実施形態では、運転手が運転席に座ってから運転手の姿勢の変化に拘わらず所定の時間間隔毎に距離Dが算出されてマイクロフォンMICの感度が調整されてもよい。
【0068】
信号処理装置20は、上記の実施形態では、ECUの一部を構成する装置であるが、別の実施形態では、ECUとは独立した装置であってもよい。
【0069】
信号処理装置20は、上記の実施形態では、車用ヘッドレスト10とは独立した装置であるが、別の実施形態では、
図7に示されるように、車用ヘッドレスト10に組み込まれていてもよい。すなわち、車用ヘッドレスト10は、スピーカSP
R、SP
L、マイクロフォンMIC及び信号処理装置20を備える構成としてもよい。