(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子線照射処理されたオレフィン系樹脂フィルムからなる基材と、該基材上に設けられたエネルギー線硬化処理された剥離処理層と、該エネルギー線硬化処理された剥離処理層上に設けられたフィルム状接着剤とを備えてなり、
前記エネルギー線硬化処理された剥離処理層の表面をX線光電子分光法(XPS)により測定した際の、全ケイ素原子数、全炭素原子数及び全酸素原子数の合計量に対する、全ケイ素原子数の比率が5〜25Atomic%である、ダイシングダイボンディングシート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<ダイシングダイボンディングシート>>
本発明のダイシングダイボンディングシートは、電子線照射処理されたオレフィン系樹脂フィルムからなる基材と、該基材上に設けられたエネルギー線硬化処理された剥離処理層と、該エネルギー線硬化処理された剥離処理層上に設けられたフィルム状接着剤とを備えてなるものである。
本発明のダイシングダイボンディングシートは、半導体ウエハのダイシングブレードを用いたダイシング(以下、「ブレードダイシング」と称することがある)と、それに続く、切断後のフィルム状接着剤を備えた半導体チップ(本明細書においては「フィルム状接着剤付き半導体チップ」と称することがある)のピックアップと、を行うときに用いるものとして好適である。
【0014】
ブレードダイシングでは、ダイシングブレードを回転させて半導体ウエハを切り込む。このとき、ダイシングブレードによって、半導体ウエハとダイシングダイボンディングシートの少なくとも一部とを切削するため、従来のダイシングダイボンディングシートでは切削屑が発生する。この切削屑は、半導体ウエハ及びダイシングダイボンディングシートのいずれかまたは両方の層から発生したものであり、粉体状、繊維状等の浮遊物であったり、上述のいずれかの層から完全には切り離されずに、ひげ状となって残存しているものである。この切削屑の発生量が多いと、その一部が半導体チップの回路形成面又は側面に付着して残存し易い。そして、このように切削屑が残存してしまうと、フィルム状接着剤付き半導体チップを正常にピックアップできないことがあり、ピックアップ不良の原因となる。また、仮にピックアップできたとしても、切削屑が残存したまま作製された半導体装置は、正常に機能しなくなってしまうことがある。
【0015】
これに対して、本発明のダイシングダイボンディングシートは、電子線照射処理されたオレフィン系樹脂フィルムからなる基材を用いることで、ダイシングブレードを用いたダイシング時において、切削屑の発生量を低減できる。そして、該基材上に設けられたエネルギー線硬化処理された剥離処理層と、該エネルギー線硬化処理された剥離処理層上に設けられたフィルム状接着剤とを備えるので、ダイシングの後、粘着剤層の硬化処理工程を経なくても、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップ不良の発生を抑制できる。
以下、まず、本発明のダイシングダイボンディングシートを構成する各層について説明する。
【0016】
<基材>
前記基材は、電子線照射処理されたオレフィン系樹脂フィルムからなる。オレフィン系樹脂フィルムは、電子線照射処理することにより架橋を形成し強固となることで、これを用いたダイシングダイボンディングシート上で固定された半導体ウエハをダイシングする際に、切削屑の発生量を低減できる。
【0017】
オレフィン系樹脂フィルムとしては、電子線照射処理することにより架橋を形成し強固となる性質を有するものであれば限定されず、エチレン−メタクリル酸(EMAA)共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリレート(EMMA)共重合体フィルム、エチレンプロピレンゴムフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。切削屑抑制、エキスパンド性の観点から、エチレン−メタクリル酸(EMAA)共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリレート(EMMA)共重合体フィルムが好ましく、エチレン−メタクリル酸(EMAA)共重合体フィルムが特に好ましい。
【0018】
基材の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、50〜300μmであることが好ましく、60〜150μmであることがより好ましい。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0019】
基材は、剥離処理層とは反対の側に、帯電防止コート層を有してもよく、ダイシングダイボンディングシートを重ね合わせて保存する際に、基材が他のシートに接着することや、基材が吸着テーブルに接着することを防止するための層等を有するものであってもよい。
【0020】
<エネルギー線硬化処理された剥離処理層>
前記剥離処理層は、一般に接着剤層又は粘着剤層の剥離性を付与するために用いられるエネルギー線硬化処理された剥離処理層を用いることができる。前記剥離処理層は、エネルギー線硬化処理されているため、熱硬化処理されたものよりも基材に係る熱履歴が小さく、低温で硬化させることができ、このため、基材の加熱変形を抑制することができる。
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
また、本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味する。
【0021】
例えば、市販の紫外線硬化型剥離剤等の、エネルギー線硬化性の剥離剤を適当な溶剤に溶かした剥離剤溶液を、前記電子線照射処理された基材の上に塗工し、乾燥後、エネルギー線を照射し、剥離剤組成物を硬化させて、基材上にエネルギー線硬化処理された剥離処理層を形成することができる。
【0022】
エネルギー線硬化処理された剥離処理層の表面をX線光電子分光法(XPS)により測定した際の、全ケイ素原子数、全炭素原子数及び全酸素原子数の合計量に対する、全ケイ素原子数の比率は、5〜25Atomic%であることが好ましく、7.5〜25Atomic%であることがより好ましく、10〜20Atomic%であることが特に好ましい。シリコーンタイプの紫外線硬化型剥離剤を用いることにより、適度なケイ素量の剥離処理層とすることができ、剥離処理層の、フィルム状接着剤側の表面の表面自由エネルギーやエネルギー線硬化処理された剥離処理層とフィルム状接着剤との間の剥離力を調整することができる。
ここで、全ケイ素原子数、全炭素原子数及び全酸素原子数の合計量に対する、全ケイ素原子数の比率は、次の式(1)により、求められる。
[全ケイ素原子数の比率(Atomic%)]=[全ケイ素原子数の比率(Atomic%)]/{[全炭素原子数の比率(Atomic%)]+[全酸素原子数の比率(Atomic%)]+[全ケイ素原子数の比率(Atomic%)]}×100 ・・・(1)
【0023】
エネルギー線硬化処理された剥離処理層の、前記フィルム状接着剤側の表面の23℃での表面自由エネルギーは37〜46mN/mであることが好ましく、38〜45mN/mであることがより好ましく、39〜44mN/mであることが特に好ましい。剥離処理層の、フィルム状接着剤側の表面の表面自由エネルギーを上記の下限値以上に設定することにより、ダイシングブレードを用いたダイシング時においてチップ飛びを防止することができ、上記の上限値以下に設定することにより、フィルム状接着剤付き半導体チップを良好にピックアップすることができる。
【0024】
エネルギー線硬化処理された剥離処理層と前記フィルム状接着剤との間の剥離力は0.013〜0.20N/25mmであることが好ましく、0.015〜0.15N/25mmであることがより好ましく、0.020〜0.10N/25mmであることが特に好ましい。剥離処理層とフィルム状接着剤との間の剥離力を上記の下限値以上に設定することにより、ダイシングブレードを用いたダイシング時においてチップ飛びを抑制することができ、上記の上限値以下に設定することにより、ダイシング後のフィルム状接着剤付き半導体チップを容易にエネルギー線硬化処理された剥離処理層から引き離してピックアップできる。さらにこのとき、フィルム状接着剤にエネルギー線硬化処理された剥離処理層の一部が付着して残ったまま、フィルム状接着剤付き半導体チップがピックアップされることが抑制される。また、前記剥離力が100mN/25mm以下であることで、フィルム状接着剤付き半導体チップを突き上げて、剥離処理層から引き離してピックアップするときに、少ない突き上げ量で容易にピックアップでき、例えば、半導体チップに割れや欠けが生じる、いわゆるチッピングが、より抑制される。
【0025】
なお、本明細書において、「剥離処理層とフィルム状接着剤との間の剥離力」は、特に断りのない限り、常温(23℃)のときの剥離処理層の剥離力を意味する。
【0026】
本発明において、前記剥離力(N/25mm)は、以下の方法で測定できる。
すなわち、幅が25mmで長さが任意の前記ダイシングダイボンディングシートを作製する。次いで、常温(例えば、23℃)下で、フィルム状接着剤によって、このダイシングダイボンディングシートを固定用基材へ貼付する。
ここで「固定用基材」とは、ダイシングダイボンディングシートのフィルム状接着剤を強固に固定できるものであればよく、その形状はフィルム状であってもよく、シート状であってもよく、その他の形状であってもよく、例えば、フィルム状接着剤(換言するとダイシングダイボンディングシート)の固定面として、両面テープが貼付されたPVC板等の、粘着面を有する粘着性基材であってもよい。両面テープが貼付されたSiウエハであってもよく、単なるPVC板であってもよく、Siウエハであってもよい。
次いで、常温(例えば、23℃)下において、フィルム状接着剤から基材及び剥離処理層の積層物を、フィルム状接着剤及び剥離処理層の互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度300mm/minで引き剥がす、いわゆる180°剥離を行う。このときの剥離力を測定して、その測定値を前記剥離力(N/25mm)とする。測定に供するダイシングダイボンディングシートの長さは、剥離力を安定して測定できる範囲であれば、特に限定されない。
【0027】
剥離処理層とフィルム状接着剤との間の剥離力は、例えば、剥離処理層の含有成分の種類及び量、剥離処理層の厚さ等を調節することで、適宜調節できる。例えば、剥離処理層の含有成分である、剥離処理層を構成する高分子化合物の構成単位の種類及びその含有比率等を調節することで、前記剥離力を容易に調節できる。また、剥離処理層を構成する高分子化合物や架橋剤の含有量を調節することで、前記剥離力を容易に調節できる。ただし、これら調節方法は一例に過ぎない。
【0028】
エネルギー線硬化処理された剥離処理層の厚さは5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。エネルギー線硬化処理された剥離処理層は、このように薄くすることができるので、電子線照射処理されたエチレン−メタクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂フィルムからなる基材上に剥離処理層を設ける際に、紫外線硬化させる際のエネルギー消費量を低減できる。エネルギー線硬化処理された剥離処理層の厚さは、10nm以上であってもよく、20nm以上であってもよく、30nm以上であってもよい。
【0029】
<フィルム状接着剤>
前記フィルム状接着剤は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。
【0030】
前記フィルム状接着剤は、硬化性を有するものであり、熱硬化性を有するものが好ましく、感圧接着性を有するものが好ましい。熱硬化性及び感圧接着性をともに有するフィルム状接着剤は、未硬化状態では各種被着体に軽く押圧することで貼付できる。また、フィルム状接着剤は、加熱して軟化させることで各種被着体に貼付できるものであってもよい。フィルム状接着剤は、硬化によって最終的には耐衝撃性が高い硬化物となり、この硬化物は、厳しい高温・高湿度条件下においても十分な接着特性を保持し得る。
【0031】
前記フィルム状接着剤の厚さは、特に限定されないが、1〜50μmであることが好ましく、3〜40μmであることがより好ましい。フィルム状接着剤の厚さが前記下限値以上であることにより、被着体(半導体チップ)に対してより高い接着力が得られる。一方、フィルム状接着剤の厚さが前記上限値以下であることにより、後述する分割工程においてフィルム状接着剤をより容易に切断でき、また、ダイシングブレードを用いたダイシング時において、切削屑の発生量をより低減できる。
【0032】
ここで、「フィルム状接着剤の厚さ」とは、フィルム状接着剤全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるフィルム状接着剤の厚さとは、フィルム状接着剤を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0033】
[接着剤組成物]
フィルム状接着剤は、その構成材料を含有する接着剤組成物を用いて形成できる。例えば、フィルム状接着剤の形成対象面に接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位にフィルム状接着剤を形成できる。接着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、フィルム状接着剤の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。ここで、「常温」とは、先に説明したとおりである。
【0034】
接着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0035】
接着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、接着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば、70〜130℃で10秒〜5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0036】
好ましい接着剤組成物としては、例えば、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)を含有するものが挙げられる。以下、各成分について説明する。
【0037】
(重合体成分(a))
重合体成分(a)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分であり、フィルム状接着剤に造膜性や可撓性等を付与すると共に、半導体チップ等の接着対象への接着性(貼付性)を向上させるための重合体化合物である。また、重合体成分(a)は、後述するエポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)に該当しない成分でもある。ただし、グリシジル基を有する重合性化合物であっても、該グリシジル基以外の重合性基が反応して重合したもの、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルを重合反応して形成された成分は重合体成分(a)とみなす。
【0038】
重合体成分(a)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0039】
重合体成分(a)としては、例えば、アクリル系樹脂((メタ)アクリロイル基を有する樹脂)、ポリエステル、ウレタン系樹脂(ウレタン結合を有する樹脂)、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂(シロキサン結合を有する樹脂)、ゴム系樹脂(ゴム構造を有する樹脂)、フェノキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0040】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
【0041】
重合体成分(a)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜2000000であることが好ましく、100000〜1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量がこのような範囲内であることで、硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力を調節することが容易となる。
一方、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へフィルム状接着剤が追従し易くなり、被着体とフィルム状接着剤との間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0042】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−60〜70℃であることが好ましく、−30〜50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤と半導体チップとの接着力が向上する。
【0043】
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1〜18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N−メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0044】
アクリル系樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN−メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0045】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0046】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(f)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(f)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、ダイシングダイボンディングシートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0047】
本発明においては、重合体成分(a)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、被着体の凹凸面へフィルム状接着剤が追従し易くなり、被着体とフィルム状接着剤との間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0048】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000〜100000であることが好ましく、3000〜80000であることがより好ましい。
【0049】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−30〜150℃であることが好ましく、−20〜120℃であることがより好ましい。
【0050】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0051】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0052】
接着剤組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、重合体成分(a)であるアクリル系樹脂の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤の、重合体成分(a)であるアクリル系樹脂の含有量)は、5〜40質量%であることが好ましく、7〜25質量%であることがより好ましい。
【0053】
接着剤組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(a)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤の重合体成分(a)の含有量)は、重合体成分(a)の種類によらず、5〜85質量%であることが好ましく、7〜80質量%であることがより好ましい。
【0054】
前記熱可塑性樹脂の使用により、上述のような効果が得られる一方、硬化前のフィルム状接着剤が高温に晒された際、その硬さが低下し、未硬化又は半硬化の状態におけるフィルム状接着剤のワイヤボンディング適性が低下する懸念がある。そこで、接着剤組成物の重合体成分(a)の含有量は、このような影響を考慮した上で設定することが好ましい。
【0055】
(エポキシ系熱硬化性樹脂(b))
エポキシ系熱硬化性樹脂(b)は、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)からなる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するエポキシ系熱硬化性樹脂(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0056】
・エポキシ樹脂(b1)
エポキシ樹脂(b1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0057】
エポキシ樹脂(b1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、ダイシングダイボンディングシートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
【0058】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。なお、本明細書において「誘導体」とは、特に断りのない限り、元の化合物の1個以上の基がそれ以外の基(置換基)で置換されてなるものを意味する。ここで、「基」とは、複数個の原子が結合してなる原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0059】
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0060】
エポキシ樹脂(b1)の重量平均分子量は、特に限定されないが、フィルム状接着剤の硬化性、並びに硬化後のフィルム状接着剤の強度及び耐熱性の点から、300〜30000であることが好ましい。
エポキシ樹脂(b1)のエポキシ当量は、100〜1000g/eqであることが好ましく、150〜800g/eqであることがより好ましい。
【0061】
エポキシ樹脂(b1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0062】
・熱硬化剤(b2)
熱硬化剤(b2)は、エポキシ樹脂(b1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(b2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0063】
熱硬化剤(b2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(以下、「DICY」と略記することがある)等が挙げられる。
【0064】
熱硬化剤(b2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(b2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(b2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0065】
熱硬化剤(b2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力を調節することが容易となる点から、熱硬化剤(b2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0066】
熱硬化剤(b2)の重量平均分子量は、例えば、60〜30000であることが好ましい。
【0067】
熱硬化剤(b2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0068】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、熱硬化剤(b2)の含有量は、エポキシ樹脂(b1)の含有量100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましい。熱硬化剤(b2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(b2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤の吸湿率が低減されて、ダイシングダイボンディングシートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0069】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)の含有量(エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量)は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、5〜1000質量部が好ましく10〜870質量部がより好ましい。
【0070】
前記フィルム状接着剤は、その各種物性を改良するために、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)以外に、さらに必要に応じて、これらに該当しない他の成分を含有していてもよい。
前記フィルム状接着剤が含有する他の成分で好ましいものとしては、例えば、硬化促進剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、エネルギー線硬化性樹脂(g)、光重合開始剤(h)、汎用添加剤(i)等が挙げられる。
【0071】
(硬化促進剤(c))
硬化促進剤(c)は、接着剤組成物の硬化速度を調節するための成分である。
好ましい硬化促進剤(c)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0072】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する硬化促進剤(c)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0073】
硬化促進剤(c)を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、硬化促進剤(c)の含有量は、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)の含有量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(c)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(c)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、硬化促進剤(c)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(c)が、高温・高湿度条件下でフィルム状接着剤中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、ダイシングダイボンディングシートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0074】
(充填材(d))
フィルム状接着剤は、充填材(d)を含有することにより、その熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数をフィルム状接着剤の貼付対象物に対して最適化することで、ダイシングダイボンディングシートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、フィルム状接着剤は、充填材(d)を含有することにより、硬化後のフィルム状接着剤の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0075】
充填材(d)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0076】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する充填材(d)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0077】
充填材(d)を用いる場合、接着剤組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する充填材(d)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤の充填材(d)の含有量)は、5〜80質量%であることが好ましく、7〜60質量%であることがより好ましい。充填材(d)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0078】
(カップリング剤(e))
フィルム状接着剤は、カップリング剤(e)を含有することにより、被着体に対する接着性及び密着性が向上する。また、フィルム状接着剤がカップリング剤(e)を含有することにより、その硬化物は耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。カップリング剤(e)は、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものである。
【0079】
カップリング剤(e)は、重合体成分(a)、エポキシ系熱硬化性樹脂(b)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン、エポキシ基含有オリゴマー等が挙げられる。
【0080】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するカップリング剤(e)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0081】
カップリング剤(e)を用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤において、カップリング剤(e)の含有量は、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)の総含有量100質量部に対して、0.03〜20質量部であることが好ましく、0.05〜10質量部であることがより好ましく、0.1〜5質量部であることが特に好ましい。
カップリング剤(e)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(d)の樹脂への分散性の向上や、フィルム状接着剤の被着体との接着性の向上など、カップリング剤(e)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(e)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0082】
(架橋剤(f))
重合体成分(a)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、接着剤組成物及びフィルム状接着剤は、前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための架橋剤(f)を含有していてもよい。架橋剤(f)を用いて架橋することにより、フィルム状接着剤の初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0083】
架橋剤(f)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0084】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味し、その例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、先に説明したとおりである。
【0085】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート;2,6−トリレンジイソシアネート;1,3−キシリレンジイソシアネート;1,4−キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0086】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0087】
架橋剤(f)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(a)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(f)がイソシアネート基を有し、重合体成分(a)が水酸基を有する場合、架橋剤(f)と重合体成分(a)との反応によって、フィルム状接着剤に架橋構造を簡便に導入できる。
【0088】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する架橋剤(f)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0089】
架橋剤(f)を用いる場合、接着剤組成物において、架橋剤(f)の含有量は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(f)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(f)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(f)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(f)の過剰使用が抑制される。
【0090】
(エネルギー線硬化性樹脂(g))
フィルム状接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0091】
エネルギー線硬化性樹脂(g)は、エネルギー線を照射することにより硬化(重合)する性質を有する。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0092】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0093】
エネルギー線硬化性樹脂(g)の重量平均分子量は、100〜30000であることが好ましい。
【0094】
接着剤組成物が含有するエネルギー線硬化性樹脂(g)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0095】
接着剤組成物において、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量は、1〜95質量%であることが好ましく、3〜90質量%であることがより好ましく、5〜85質量%であることが特に好ましい。
【0096】
(光重合開始剤(h))
接着剤組成物は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(g)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(h)を含有していてもよい。
【0097】
接着剤組成物における光重合開始剤(h)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4−ジエチルチオキサントン;1,2−ジフェニルメタン;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン;1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のキノン化合物等が挙げられる。
また、光重合開始剤(h)としては、例えば、アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0098】
接着剤組成物が含有する光重合開始剤(h)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0099】
接着剤組成物において、光重合開始剤(h)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、2〜5質量部であることが特に好ましい。
【0100】
(汎用添加剤(i))
汎用添加剤(I)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0101】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する汎用添加剤(i)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0102】
(溶媒)
接着剤組成物は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する接着剤組成物は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール、イソブチルアルコール(2−メチルプロパン−1−オール)、1−ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
接着剤組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0103】
接着剤組成物が含有する溶媒は、接着剤組成物中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0104】
接着剤組成物が含有する前記溶媒としては、例えば、重合体成分(a)等の各成分の製造時に用いたものを各成分から取り除かずに、そのまま接着剤組成物において用いてもよいし、重合体成分(a)等の各成分の製造時に用いたものと同一又は異なる種類の溶媒を、接着剤組成物の製造時に別途添加してもよい。
【0105】
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する重合体成分(a)等の各成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤における、重合体成分(a)等の各成分の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0106】
[接着剤組成物の製造方法]
接着剤組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
【0107】
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15〜30℃であることが好ましい。
【0108】
<<ダイシングダイボンディングシートの製造方法>>
本発明のダイシングダイボンディングシートは、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0109】
例えば、電子線照射処理されたオレフィン系樹脂フィルムからなる基材上にエネルギー線硬化処理された剥離処理層を設け、該エネルギー線硬化処理された剥離処理層上に、接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、エネルギー線硬化処理された剥離処理層上にフィルム状接着剤を積層することで、前記ダイシングダイボンディングシートが得られる。
【0110】
なお、ダイシングダイボンディングシートは、通常、そのフィルム状接着剤が設けられている側の最表層(例えば、フィルム状接着剤)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、あらかじめ、電子線照射処理されたオレフィン系樹脂フィルムからなる基材上にエネルギー線硬化処理された剥離処理層を設けておき、剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、接着剤組成物等の、最表層を構成するフィルム状接着剤を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成するフィルム状接着剤を形成し、このフィルム状接着剤の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に、上述の方法で形成したエネルギー線硬化処理された剥離処理層を積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることでも、ダイシングダイボンディングシートが得られる。
剥離フィルムは目的とする積層構造を形成後の任意のタイミングで取り除けばよい。
【0111】
次に、本発明のダイシングダイボンディングシートについて、図面を引用しながら、より詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0112】
図1は、本発明のダイシングダイボンディングシートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示すダイシングダイボンディングシート101は、基材11上に剥離処理層13を備え、剥離処理層13上にフィルム状接着剤14を備えてなるものである。また、ダイシングダイボンディングシート101は、さらにフィルム状接着剤14上に剥離フィルム15を備えている。
【0113】
ダイシングダイボンディングシート101においては、基材11の一方の表面(以下、「第1面」と称することがある)11aが電子線照射処理されており、基材11の電子線照射処理された表面上に剥離処理層13が積層され、剥離処理層13の基材11が設けられている側とは反対側の表面(以下、「第1面」と称することがある)13aの全面にフィルム状接着剤14が積層され、フィルム状接着剤14の剥離処理層13が設けられている側とは反対側の表面(以下、「第1面」と称することがある)に剥離フィルム15が積層されている。
【0114】
図1に示すダイシングダイボンディングシート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、フィルム状接着剤14の第1面14aが、半導体ウエハ(図示略)の回路が形成されている面(本明細書においては「回路形成面」と略記することがある)とは反対側の面(本明細書においては「裏面」と略記することがある)に貼付されて、使用される。
【0115】
図2は、本発明のダイシングダイボンディングシートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。なお、
図2以降の図において、
図1に示すものと同じ構成要素には、
図1の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0116】
ダイシングダイボンディングシート102においては、基材11の一方の表面(以下、「第1面」と称することがある)11aが電子線照射処理されており、基材11の電子線照射処理された表面上に剥離処理層13が積層され、剥離処理層13の基材11が設けられている側とは反対側の表面(以下、「第1面」と称することがある)13aの全面にフィルム状接着剤14が積層され、フィルム状接着剤14の剥離処理層13が設けられている側とは反対側の表面(以下、「第1面」と称することがある)14aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に治具用接着剤層16が積層され、フィルム状接着剤14の第1面14aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない面と、治具用接着剤層16のフィルム状接着剤14と接触していない表面(第1面16a及び側面16c)に、剥離フィルム15が積層されている。治具用接着剤層16により、ダイシング工程時の固定治具への保持性が付与される。治具用接着剤層16の形状は、固定用治具の形状に適合する形状であれば限定されない。固定用治具がリングフレームであるときは、治具用接着剤層16はリング形状のリングフレーム固定用テープでよい。ここで、治具用接着剤層16の第1面16aとは、治具用接着剤層16のフィルム状接着剤14と接触している側とは反対側の表面であり、治具用接着剤層16の第1面16a及び側面16cの境界が明確に区別できない場合もある。
【0117】
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造のものであってもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造のものであってもよい。
【0118】
ここに示すダイシングダイボンディングシート102は、治具用接着剤層16を備えている点以外は、
図1に示すダイシングダイボンディングシート101と同じものである。
【0119】
すなわち、
図2に示すダイシングダイボンディングシート102は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、フィルム状接着剤14の第1面14aのうち、中央側の一部の領域が、半導体ウエハ(図示略)の裏面に貼付され、さらに、フィルム状接着剤14の第1面14aのうち、周縁部近傍の領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0120】
本発明のダイシングダイボンディングシートは、
図1〜
図2に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図1〜
図2に示すものにおいて一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0121】
<<半導体チップの製造方法>>
本発明の半導体チップの製造方法は、上述の本発明のダイシングダイボンディングシートを用いた、半導体チップの製造方法であって、前記ダイシングダイボンディングシートを準備する工程と、前記フィルム状接着剤の、前記剥離処理層が設けられている側とは反対側の表面(すなわち前記第1面)に、半導体ウエハが設けられてなる積層構造体を形成する工程(以下、「積層構造体形成工程」と略記することがある)と、ダイシングブレードを用いて、前記積層構造体において、前記半導体ウエハの表面から前記剥離処理層に到達する切れ込みを形成することで、前記半導体ウエハを分割して半導体チップを形成する工程(以下、「ダイシング工程」と略記することがある)と、を有する。
【0122】
この半導体チップの製造方法においては、上述の本発明のダイシングダイボンディングシートを利用することで、前記ダイシング工程において切削屑の発生量を大幅に低減できることに加えて、前記剥離処理層と前記フィルム状接着剤との間の好適な剥離力の調整が可能である。これにより、前記ダイシング工程において、チップ飛び不良の発生が抑制される。
【0123】
本発明のダイシングダイボンディングシートを用いることで、前記ダイシング工程においては、ダイシングブレードを用いたダイシング時において、切削屑の発生量を従来よりも大幅に低減できる。ここで、「切削屑」とは、先に説明したものである。
【0124】
以下、
図3を参照しながら、前記半導体チップの製造方法について説明する。
図3は、本発明の半導体チップの製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図2に示すダイシングダイボンディングシートを用いた場合の製造方法について説明する。
【0125】
<積層構造体形成工程>
前記積層構造体形成工程においては、
図3(a)に示すように、ダイシングダイボンディングシート102におけるフィルム状接着剤14の第1面14aに、半導体ウエハ9’が設けられてなる積層構造体201を形成する。
積層構造体201中の半導体ウエハ9’の厚さは、特に限定されないが、10〜100μmであることが好ましく、30〜90μmであることがより好ましい。
【0126】
<ダイシング工程>
次いで、前記ダイシング工程においては、
図3(b)に示すように、ダイシングブレードを用いて、積層構造体201において、半導体ウエハ9’の表面(換言すると回路形成面)9a’から剥離処理層13に到達するとともに、基材11に到達する切れ込み10を形成することで、半導体ウエハ9’を分割して半導体チップ9を形成する。切れ込み10は剥離処理層13に到達する必要があるが、基材11には到達しなくてもよい。
半導体チップ9の厚さは、上述の半導体ウエハ9’の厚さと同じである。
【0127】
ダイシング工程においては、ダイシングブレードの回転速度は、10000〜60000rpmであることが好ましく、20000〜50000rpmであることがより好ましい。
また、ダイシングブレードの移動速度は、20〜80mm/sであることが好ましく、40〜60mm/sであることがより好ましい。
また、ダイシングブレードの作動時には、ダイシングを行っている箇所に対して、例えば、0.5〜1.5L/min程度の量で切削水を流すことが好ましい。
【0128】
<<半導体装置の製造方法>>
半導体装置の製造方法は、上述の本発明の半導体チップの製造方法により、前記半導体チップを形成する工程(ダイシング工程)を行った後、前記切れ込みを形成後のダイシングダイボンディングシートに対して、その基材側から力を加えるとともに、前記半導体チップを、切断後の前記フィルム状接着剤とともに前記剥離処理層から引き離す工程(以下、「ピックアップ工程」と略記することがある)を有する。
【0129】
この半導体装置の製造方法においては、上述の本発明のダイシングダイボンディングシートを利用することで、前記ダイシング工程において切削屑の発生量を大幅に低減できることに加えて、前記剥離処理層と前記フィルム状接着剤との間の好適な剥離力の調整が可能である。これにより、前記ピックアップ工程において、フィルム状接着剤を備えた半導体チップ(フィルム状接着剤付き半導体チップ)のピックアップ不良の発生が抑制される。
【0130】
<ピックアップ工程>
前記ピックアップ工程においては、
図4に示すように、切れ込み10を形成後のダイシングダイボンディングシート102に対して、その基材11側から力を加えるとともに、半導体チップ9を、切断後のフィルム状接着剤14とともに剥離処理層13から引き離す(ピックアップする)。
【0131】
ここでは、半導体装置の製造装置における突き上げ部(図示略)から突起(ピン)70を突出させ、突起70の先端部がダイシングダイボンディングシート102を、その基材11側から突き上げることで、切れ込み10及び半導体チップ9が形成された積層構造体201’に対して、突起70の突出方向に力を加える例を示している。このとき、突起70の突出量(突き上げ量)、突出速度(突き上げ速度)、突出状態の保持時間(持ち上げ待ち時間)等の突き上げ条件を適宜調節できる。突起70の数は特に限定されず、適宜選択すればよい。
【0132】
前記ピックアップ工程において、ダイシングダイボンディングシート102を突き上げる方法は、公知の方法でよく、例えば、上述のような突起により突き上げる方法以外に、ダイシングダイボンディングシート102に沿ってスライダーを移動させることにより、このダイシングダイボンディングシート102を突き上げる方法が挙げられる。
【0133】
また、ここでは、半導体装置の製造装置の引き上げ部71によって、半導体チップ9を引き上げることにより、フィルム状接着剤14とともに半導体チップ9を、剥離処理層13から剥離させる例を示している。ここでは、半導体チップ9の引き上げ方向を矢印Iで示している。
半導体チップ9を引き上げる方法は、公知の方法でよく、例えば、真空コレットにより半導体チップ9の表面を吸着して引き上げる方法等が挙げられる。
【0134】
ピックアップ工程においては、本発明のダイシングダイボンディングシート102を用い、本発明の半導体チップの製造方法を利用することで、フィルム状接着剤付き半導体チップ9のピックアップ不良の発生が抑制される。
【0135】
半導体装置の製造方法においては、先に説明したように、ピックアップ工程で前記剥離処理層と前記フィルム状接着剤との間の剥離力が特定値以下であるダイシングダイボンディングシートを用いることで、エネルギー線照射等による硬化を行わなくても、フィルム状接着剤付き半導体チップを容易に剥離処理層から引き離してピックアップできる。そして、硬化を行わずに、フィルム状接着剤付き半導体チップをピックアップできるため、半導体装置の製造工程を簡略化できる。
【0136】
この半導体装置の製造方法においては、フィルム状接着剤と共に引き離された(ピックアップされた)半導体チップを用いて、以降は従来法と同様の方法で、半導体装置を製造する。例えば、前記半導体チップを基板の回路面にフィルム状接着剤によってダイボンディングし、必要に応じて、この半導体チップにさらに半導体チップを1個以上積層して、ワイヤボンディングを行った後、全体を樹脂により封止することで、半導体パッケージとする。そして、この半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置を作製すればよい。
【実施例】
【0137】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0138】
(剥離剤溶液(処方1)の作製)
紫外線硬化型剥離剤としてTA37−400A(日立化成株式会社製)を、イソプロピルアルコールにて希釈して、これを処方1の剥離剤溶液(固形分20質量%)とした。
【0139】
(剥離剤溶液(処方2)の作製)
紫外線硬化型剥離剤としてTA37−440D(日立化成株式会社製)とTA37−411N(日立化成株式会社製)の1:1(固形比)の混合組成のものを、イソプロピルアルコールにて希釈して、これを処方2の剥離剤溶液(固形分20質量%)とした。
【0140】
(剥離剤溶液(処方3)の作製)
紫外線硬化型剥離剤としてTA37−440D(日立化成株式会社製)を、イソプロピルアルコールにて希釈して、これを処方3の剥離剤溶液(固形分20質量%)とした。
【0141】
(剥離剤溶液(処方4)の作製)
処方2の紫外線硬化型剥離剤としてTA37−440D(日立化成株式会社製)とTA37−411N(日立化成株式会社製)の1:9(固形比)の混合組成のものを、イソプロピルアルコールにて希釈して、これを処方4の剥離剤溶液(固形分20質量%)とした。
【0142】
(剥離剤溶液(処方5)の作製)
処方5の熱硬化型剥離剤としてテスファイン309(日立化成株式会社製)を、イソプロピルアルコールにて希釈して、これを処方5の剥離剤溶液(固形分20質量%)とした。
【0143】
(接着剤組成物Aの溶液の調製)
アクリル樹脂(商品名「コーポニールN−7088」日本合成工業株式会社製):100部に対して、エポキシ樹脂(商品名「CNA―147」日本化薬株式会社製):10部、フェノール樹脂(商品名「ミレックスXLC−4L」三井化学株式会社製):2部、球状シリカ(商品名「YA050C−SV2」株式会社アドマテックス製):40部、架橋剤(品名「BHS8515」トーヨーケム株式会社製:0.5部をメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が20重量%となる接着剤組成物Aの溶液を調製した。
【0144】
(接着剤組成物Bの溶液の調製)
アクリル樹脂(商品名「コーポニールN−2359−3」日本合成工業株式会社製):100部に対して、シリカ含有熱硬化樹脂(商品名「セイカセブンSS02−193」大日精化工業株式会社製):500部をメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が60重量%となる接着剤組成物Bの溶液を調製した。
【0145】
[実施例1]
<ダイシングダイボンディングシートの製造>
EB照射EMAA共重合体フィルム(厚さ80μm)のEB照射した側の面上に、処方1の剥離剤溶液をマイヤーバーで塗工し、60℃で1分間乾燥させた。その後、紫外線を照射(積算光量:50mJ/cm
2)し、剥離剤組成物を硬化させて基材上に剥離処理層を形成した。硬化後の剥離処理層の厚さは0.1μmだった。
【0146】
ポリエチレンテレフタレート系剥離フィルム(リンテック製SPPET−381031 厚さ:38μm)に接着剤組成物Aを、フィルム状接着剤の厚さが20μmになるように塗工し、溶剤を乾燥させた直後に、上記処方1の剥離剤溶液を用いて形成した剥離処理層とラミネーターを用いて貼り合わせることで、EB処理を施したEMAA基材、剥離処理層、フィルム状接着剤、剥離フィルムの順に積層してなるテープを得た。その後、剥離フィルムを剥離し、円形に丸抜きされたリングフレーム固定用テープを貼付し、プリカットすることで最終形態のダイシングダイボンディングシートを得た。
基材 :EB照射EMAA共重合体フィルム
剥離処理層:有り(処方1:厚さ0.1μm)
剥離処理 :紫外線硬化型剥離剤(処方1:TA37−400A(日立化成(株)製))
フィルム状接着剤:接着剤組成物A
【0147】
[実施例2]
<ダイシングダイボンディングシートの製造>
実施例1において、接着剤組成物Aを接着剤組成物Bに変更した他は、実施例1と同様にして、ダイシングダイボンディングシートを得た。
基材 :EB照射EMAA共重合体フィルム
剥離処理層:有り(処方1:厚さ0.1μm)
剥離処理 :紫外線硬化型剥離剤(処方1:TA37−400A(日立化成(株)製))
フィルム状接着剤:接着剤組成物B
【0148】
[実施例3]
<ダイシングダイボンディングシートの製造>
実施例1において、上記処方2の剥離剤溶液を用いて剥離処理層を形成した他は、実施例1と同様にして、ダイシングダイボンディングシートを得た。
基材 :EB照射EMAA共重合体フィルム
剥離処理層:有り(処方2:厚さ0.1μm)
剥離処理 :紫外線硬化型剥離剤(処方2:TA37−440D(日立化成株式会社製)とTA37−411N(日立化成株式会社製)の1:1(固形比)の混合組成)
フィルム状接着剤:接着剤組成物A
【0149】
[実施例4]
<ダイシングダイボンディングシートの製造>
実施例1において、上記処方3の剥離剤溶液を用いて剥離処理層を形成した他は、実施例1と同様にして、ダイシングダイボンディングシートを得た。
基材 :EB照射EMAA共重合体フィルム
剥離処理層:有り(処方3:厚さ0.1μm)
剥離処理 :紫外線硬化型剥離剤(処方3:TA37−440D(日立化成株式会社製))
フィルム状接着剤:接着剤組成物A
【0150】
[実施例5]
<ダイシングダイボンディングシートの製造>
実施例1において、上記処方4の剥離剤溶液を用いて剥離処理層を形成した他は、実施例1と同様にして、ダイシングダイボンディングシートを得た。
基材 :EB照射EMAA共重合体フィルム
剥離処理層:有り(処方4:厚さ0.1μm)
剥離処理 :紫外線硬化型剥離剤(処方4:TA37−440D(日立化成株式会社製)とTA37−411N(日立化成株式会社製)の1:9(固形比)の混合組成)
フィルム状接着剤:接着剤組成物A
【0151】
[比較例1]
<ダイシングダイボンディングシートの製造>
剥離フィルムに接着剤組成物Aを、フィルム状接着剤の厚さが20μmになるように塗工し、溶剤を乾燥させた直後に、EB照射EMAA共重合体フィルム(アキレス株式会社製、EANU80-AL-ND-EW、厚さ80μm)とラミネーターを用いて貼り合わせることで、EB処理を施したEMAA基材、フィルム状接着剤、剥離フィルムの順に積層してなるテープを得た。その後、剥離フィルムを剥離し、円形に丸抜きされたリングフレーム固定用テープを貼付し、プリカットすることで最終形態のダイシングダイボンディングシートを得た。
基材 :EB照射EMAA共重合体フィルム
剥離処理層:無し
フィルム状接着剤:接着剤組成物A
【0152】
[比較例2]
<ダイシングダイボンディングシートの製造>
剥離フィルムに接着剤組成物Aを、フィルム状接着剤の厚さが20μmになるように塗工し、溶剤を乾燥させた直後に、ポリエチレン(PE)フィルム(グンゼ株式会社製、フアンクレア LRC111、厚さ110μm)とラミネーターを用いて貼り合わせることで、PE基材、フィルム状接着剤、剥離フィルムの順に積層してなるテープを得た。その後、剥離フィルムを剥離し、円形に丸抜きされたリングフレーム固定用テープを貼付し、プリカットすることで最終形態のダイシングダイボンディングシートを得た。
基材 :PEフィルム
剥離処理層:無し
フィルム状接着剤:接着剤組成物A
【0153】
[比較例3]
<ダイシングダイボンディングシートの製造>
EMAAフィルムの表面上に、上記処方5の熱硬化型の剥離剤溶液を塗工し、140℃で剥離剤中の含有溶剤を揮発、乾燥させて剥離処理層を形成した。
別途、ポリエチレンテレフタレート系剥離フィルム(リンテック製SPPET−381031 厚さ:38μm)の剥離処理面に接着剤組成物Aを塗工して、フィルム状接着剤の厚さが20μmとなるようにフィルム状接着剤を形成し、溶剤を乾燥させた直後に、当該フィルム状接着剤表面を、ラミネーターを用いて前述のEMAAフィルムに積層された剥離処理層に貼り合せることで、EMAA基材、剥離処理層、フィルム状接着剤、剥離フィルムの順に積層してなるテープを得た。その後、剥離フィルムを剥離し、円形に丸抜きされたリングフレーム固定用テープを貼付し、プリカットすることで最終形態のダイシングダイボンディングシートを得た。
基材 :EMAAフィルム
剥離処理層:有り
剥離処理 :熱硬化型剥離剤(処方5:テスファイン309(日立化成株式会社製))
フィルム状接着剤:接着剤組成物A
【0154】
[比較例4]
<ダイシングダイボンディングシートの製造>
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル株式会社製、ダイアホイル T102−75S、厚さ75μm)の表面上に、上記処方5の剥離剤溶液塗工し、140℃で剥離剤中の含有溶剤を揮発、乾燥させて剥離処理層を形成した。
別途、ポリエチレンテレフタレート系剥離フィルム(リンテック製SPPET−381031 厚さ:38μm)の剥離処理面に接着剤組成物Aを塗工して、フィルム状接着剤の厚さが20μmになるようにフィルム状接着剤を形成し、溶剤を乾燥させた直後に、当該フィルム状接着剤表面を、ラミネーターを用いて前述のPETフィルムに積層された剥離処理層に貼り合わせることで、PET基材、剥離処理層、フィルム状接着剤、剥離フィルムの順に積層してなるテープを得た。その後、剥離フィルムを剥離し、円形に丸抜きされたリングフレーム固定用テープを貼付し、プリカットすることで最終形態のダイシングダイボンディングシートを得た。
基材 :PETフィルム
剥離処理層:有り
剥離処理 :熱硬化型剥離剤(処方5:テスファイン309(日立化成株式会社製))
フィルム状接着剤:接着剤組成物A
【0155】
(剥離処理層の全ケイ素原子数の比率)
上述の、剥離処理層の表面を、アルバック・ファイ(株)製PHI Quantera SXMを使用してX線光電子分光法(XPS)により炭素原子、酸素原子及びケイ素原子の量を測定した。測定条件として、炭素原子及び酸素原子について、X線源:Mg Kα,X線径:100μm,X線出力:15kV,25W,測定領域:500μm×500μm,Tilt Angle:45°,測定室真空度:1.0×10
−7Pa,Pass Energy:112eV,Energy Step:0.1eV,Time per Step:20ms,Sweep:1回,Cycle:3回とした。ケイ素原子及び酸素原子について、X線源:Mg Kα,X線径:100μm,X線出力:15kV,25W,測定領域:500μm×500μm,Tilt Angle:45°,測定室真空度:1.0×10
−7Pa,Pass Energy:224eV,Energy Step:0.2eV,Time per Step:20ms,Sweep:20回,Cycle:3回とした。全炭素原子対全酸素原子のモル比と、全ケイ素原子対全酸素原子のモル比を別々に測定してから、{[全炭素原子数の比率(Atomic%)]+[全酸素原子数の比率(Atomic%)]+[全ケイ素原子数の比率(Atomic%)]}=100%となるように、剥離処理層の全ケイ素原子数の比率を求めた。結果を表1及び表2に示す。
【0156】
(基材よれの評価)
上述の、基材の上に厚さ0.1μmの剥離処理層を設けたサンプルについて、基材のよれの大きさを平滑な机の上に置き、目視にて評価した。机と接触していない部分があるものを×、机と全面接触しているものを○とした。結果を表1及び表2に示す。
【0157】
(剥離処理層の表面自由エネルギーの算出)
上述の、基材の上に厚さ0.1μmの剥離処理層を設けたサンプルについて、接触角測定装置(全自動接触角計、協和界面科学(株)製「DM−701」)を用いて、23℃の前記剥離処理層に対する、水、1−ブロモナフタレン及びジヨードメタンの接触角を測定した。接触角の測定は、上記のいずれの溶媒(水、1−ブロモナフタレン、ジヨードメタン)についても、それぞれ5回行い、得られた5つの測定値の平均値をその溶媒の接触角として採用した。そして、この接触角の値を用いて、北崎・畑法(北崎寧昭他、日本接着協会誌、Vol.8, No.3, 1972, pp.131 - 141参照)により、剥離処理層の23℃での表面自由エネルギーを算出した。結果を表1及び表2に示す。
【0158】
(剥離処理層とフィルム状接着剤との間の剥離力の測定)
ダイシングダイボンディングシートを、幅が25mm、長さが約200mmとなるように切り出して試験片とした。
次いで、常温(23℃)下において、この試験片のフィルム状接着剤の面を両面テープが貼付されたPVC板の粘着面に固定した。
次いで、常温(23℃)下において、フィルム状接着剤から基材及び剥離処理層の積層物を、フィルム状接着剤及び剥離処理層の互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度300mm/minで引き剥がして180°剥離を行い、このときの剥離力を測定して、剥離処理層とフィルム状接着剤との間の剥離力(mN/25mm)とした。結果を表1及び表2に示す。
【0159】
<半導体チップの製造及び評価>
(積層構造体形成工程)
ドライポリッシュ仕上げを施したシリコンウエハ(200mm径、厚さ75μm)の研磨面(ドライポリッシュ面)に、フルオートマルチウェハマウンター(リンテック社製「ADWILL RAD−2700」)を用いて、上記で得られたダイシングダイボンディングシートを、そのフィルム状接着剤によって60℃で貼付し、積層構造体を得た。
【0160】
(切削屑評価)
次いで、得られた積層構造体を、そのリングフレーム固定用テープによりダイシング用リングフレームに貼付して固定した。
次いで、ダイシング装置((株)ディスコ製「DFD6361」)を使用して、上記で得られた積層構造体において8mm×8mmのチップサイズに切れ込みを形成した。ダイシングの際の切り込み量は、シリコンウエハの表面から、フィルム状接着剤及び剥離処理層を貫通し、基材を20μm切りこむようにした。そのときの条件は、以下のとおりである。
ダイシングブレード:27HEEE
ダイシング速度:50mm/s
ダイシング回転数:30000rpm
切削水量:1L/min
【0161】
ダイシング後に、200mm径のシリコンウエハの表面側からデジタル顕微鏡(キーエンス社製VHX−100)でMD及びTD方向の最も長い2ライン、すなわち計4ラインを観察し、長さ30μm以上の切削屑が一つ以上あった場合には×、ない場合には○とした。結果を表1及び表2に示す。
【0162】
(チップ飛び評価)
切削屑評価のダイシング時に、チップ飛び発生があったものを×、ないものを○として評価した。なお、このチップ飛び評価では、ウエハ外周部の三角チップの飛散は評価しない。結果を表1及び表2に示す。
【0163】
(ピックアップ評価)
更に、ダイボンド装置(キヤノンマシナリー(株)製BESTEM−D02)を用いて下記条件にて半導体チップをピックアップし、チップを不具合なく連続して27個ピックアップ可能であれば〇、できなければ×として評価した。そのときの条件は、以下のとおりである。結果を表1及び表2に示す。
ピックアップ方式:5ピン
ピックアップ速度:20mm/s
ピン突き上げ量:300μm
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
EMAA共重合体フィルムに剥離処理層を設けないでフィルム状接着剤を設けた比較例1のダイシングダイボンディングシートでは、EMAA共重合体フィルムとフィルム状接着剤との間の剥離力が大きすぎて、ピックアップができなかった。
【0167】
PEフィルムに剥離処理層を設けないでフィルム状接着剤を設けた比較例2のダイシングダイボンディングシートでは、ダイシングライン上に切削屑が大量に発生してしまった。
【0168】
EMAA共重合体フィルムに熱硬化型の剥離処理層を設け、その上にフィルム状接着剤を設けた比較例3のダイシングダイボンディングシートでは、耐熱性不足のため基材よれが生じてしまい、また、剥離処理層とフィルム状接着剤との間の剥離力が小さいため、チップ飛びも発生してしまった。
【0169】
PETフィルムに熱硬化型の剥離処理層を設け、その上にフィルム状接着剤を設けた比較例4のダイシングダイボンディングシートでは、ダイシングライン上に切削屑が大量に発生してしまい、また、剥離処理層とフィルム状接着剤との間の剥離力が小さいため、チップ飛びも発生してしまった。
【0170】
これらに対して、電子線照射処理されたオレフィン系樹脂フィルムからなる基材と、該基材上に設けられたエネルギー線硬化処理された剥離処理層と、該エネルギー線硬化処理された剥離処理層上に設けられたフィルム状接着剤とを備えてなる実施例1〜5のダイシングダイボンディングシートでは、基材よれが生じることはなく、エネルギー線硬化処理された剥離処理層の表面自由エネルギーは好適な範囲にあって、エネルギー線硬化処理された剥離処理層とフィルム状接着剤との間の剥離力を好適な範囲に調整することができた。そのため、ダイシングブレードを用いたダイシング時において、切削屑の発生量を低減でき、ダイシングの後、フィルム状接着剤付き半導体チップを良好にピックアップすることができた。