(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記梁部材を所定の位置に配置するステップよりも後、かつ前記梁端表層部を構築するステップよりも前に、機械式継手によって前記一段筋と前記梁部材主筋とを互いに接合するステップをさらに有し、
前記機械式継手は、前記梁部材を所定の位置に配置するステップよりも前に、前記梁部材主筋又は前記一段筋が挿通されるように仮設置されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記梁部材主筋の前記梁部材本体から突出した部分又は前記一段筋の前記柱部材本体から突出した部分を囲う端部あばら筋は、前記梁部材主筋の前記梁部材本体から突出した部分の内の前記梁部材本体よりの部分、又は前記一段筋の前記柱部材本体から突出した部分の内の前記柱部材本体よりの部分に、仮設置され、前記梁部材を所定の位置に配置するステップの後、かつ、前記梁端表層部を構築するステップの前に、スライド移動して所定の位置に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
柱梁接合部には、柱主筋、梁主筋及びせん断補強筋等の多くの鉄筋が配置される。そのため、
図17に示すように、梁主筋4の外径よりも内径が大きいシース2を柱梁接合部に配置すると、鉄筋の設置可能スペースが小さくなる。また、シース2内にグラウトを充填するという手間が必要であり、さらに、グラウトが正しく充填されたかの判断及び確認が困難である。特に、シース2が水平である場合には、シース2の上部に空気が溜まりやすく、シース2と梁主筋4との付着性能が得られにくい。また、シース2に梁主筋4を挿入するため、梁部材3を柱部材1に向かって水平方向に移動させる必要があり、複数の柱部材1に複数の梁部材3を接合するためには特定の順番で組み立てる必要がある。よって、組み立ての順番を間違うと施工のやり直しが必要になり、また、一部のプレキャストコンクリート部材に不具合(気泡の存在等)があると、その部材の交換又は補修が終わるまで、それよりも後に組み立てるべきものの施工ができない。また、地震が起きた場合に、接合部内で破壊が生じやすく、大掛かりな補修を要する。
【0006】
特許文献1に記載の柱梁接合構造では、挿通鉄筋が梁部材及び柱部材とは別体として構成されているため、組み立て順序の制約は少ない。しかし、その他の点においては、
図17に示す柱梁接合構造と同様の問題が生じる。
【0007】
このような問題を鑑み、本発明は、柱部材と、プレキャストコンクリート製の梁部材とが互いに接合された柱梁接合構造において、シースが不要で、組み立て順序の制約が少なく、接合部の損傷を抑制できる構造及びその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、柱部材(11)と、プレキャストコンクリート製の梁部材(12)とが互いに接合された柱梁接合構造(10)であって、前記柱部材は、柱部材本体(13)から側方に突出し、梁せいよりも小さい上下寸法を有するコンクリート製の突出部(14)と、前記突出部の上面及び下面のそれぞれに所定の間隔をおいて沿うように前記柱部材本体から直接又は間接に突出する一段筋(15)と、少なくとも前記柱部材本体及び前記突出部内にて前記一段筋に平行に延在する二段筋(16)とを有し、前記梁部材は、前記一段筋に接合された梁部材主筋(20)を有し、前記突出部、前記一段筋の前記柱部材本体から突出した部分、及び前記梁部材主筋の梁部材本体から突出した部分は、現場打ちコンクリートからなる梁端表層部(22)に埋設されていることを特徴とする。ここで、一段筋が「前記柱部材本体から直接又は間接に突出する」とは、梁部材主筋に連結できるように、一段筋自体が柱部材本体から突出すること、又は、一段筋に取り付けられた機械式継手が柱部材本体から突出することを意味する。
【0009】
この構成によれば、柱梁接合部に梁の主筋を通すためのシースが不要となり、シースを使用することによって生じる柱梁接合部内の鉄筋の設置可能スペースの減少、シース内にグラウトを充填する手間及びその確認の手間の発生、グラウトの充填不良によるシースと梁の主筋との付着性能の低下等の問題が発生しない。また、梁部材を柱部材に対して横方向から挿入できるため、柱部材及び梁部材の組み立て順序の制約を低減できる。また、梁の主筋として機能する部分は、一段筋又は梁部材主筋と二段筋とが二重になっている部分と、梁部材主筋が一重になっている部分とに分かれるが、地震時の曲げ降伏位置がその境界位置となるため、柱梁接合部ではなく梁で破壊が生じ、破壊後の補修が比較的容易である。
【0010】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記二段筋の先端には定着部(17)が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、二段筋がコンクリート部分から引き抜かれることを防止できる。
【0012】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成のいずれかにおいて、前記梁部材本体及び前記梁端表層部の互いの当接面には、コッター(31)が形成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、梁部材本体及び梁端表層部間の付着がより確実になる。
【0014】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成のいずれかにおいて、互いに連結された前記梁部材主筋及び前記一段筋を囲い、前記梁端表層部に埋設された端部あばら筋(21a)をさらに有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、梁端部(梁端表層部及び突出部)のせん断耐力を向上させることができる。
【0016】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、プレキャストコンクリート製の柱部材(11)と、プレキャストコンクリート製の梁部材(12)とが互いに接合された柱梁接合構造(10)の構築方法であって、柱部材本体(13)から側方に向かって突出し、梁せいよりも小さい上下寸法を有するコンクリートの突出部(14)と、前記突出部の上面及び下面のそれぞれに所定の間隔をおいて沿うように前記柱部材本体から直接又は間接に突出する一段筋(15)と、少なくとも前記柱部材本体及び前記突出部内にて前記一段筋に平行に延在する二段筋(16)とを有する前記柱部材を所定の位置に配置するステップと、前記一段筋に整合可能に梁部材本体(18)から突出する梁部材主筋(20)を有する前記梁部材を所定の位置に配置するステップと、前記突出部、前記一段筋の前記柱部材本体から突出した部分、及び前記梁部材主筋の前記梁部材本体から突出した部分を埋設するように現場打ちコンクリートを打設して梁端表層部(22)を構築するステップとを有し、前記梁部材主筋は、上端側梁部材主筋(20a)と下段側梁部材主筋(20b)とからなり、前記上側梁部材主筋と前記下側梁部材主筋とは、前記突出部の前記上下寸法よりも互いに離間し、前記梁部材を配置するステップは、前記上側梁部材主筋及び前記下側梁部材主筋間に前記突出部が挿し込まれるように、前記柱部材の延在方向及び前記梁部材の延在方向に直交する方向に前記梁部材を移動させることを含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、梁部材を柱部材に対して横方向から挿し入れることができるため、柱部材と梁部材との組み立て順序の制約が低減される。また、接合部にシースが不要であるため、シースの使用に伴う問題が生じない。また、地震時の曲げ降伏位置が梁端部ではなく梁の中間部となるため、破壊後の補修が比較的容易である。
【0018】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記梁部材を所定の位置に配置するステップよりも後、かつ前記梁端表層部(22)を構築するステップよりも前に、前記一段筋と前記梁部材主筋とを機械式継手(19)により互いに接合するステップをさらに有し、前記機械式継手は、前記梁部材を所定の位置に配置するステップよりも前に、前記梁部材主筋又は前記一段筋が挿通されるように仮設置されることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、容易に機械式継手を取り付けることができる。
【0020】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記方法の構成のいずれかにおいて、前記梁部材主筋の前記梁部材本体から突出した部分又は前記一段筋の前記柱部材本体から突出した部分を囲う端部あばら筋(21a)は、前記梁部材主筋の前記梁部材本体から突出した部分の内の前記梁部材本体よりの部分、又は前記一段筋の前記柱部材本体から突出した部分の内の前記柱部材本体よりの部分に、仮設置され、前記梁部材を所定の位置に配置するステップの後、かつ、前記梁端表層部を構築するステップの前に、スライド移動して所定の位置に配置されることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、端部あばら筋を、梁の架設位置ではなく、プレキャストコンクリートの工場や建設現場の作業ヤード等で仮設置できるため、梁の架設位置での作業を減らすことができる。
【0022】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記方法の構成のいずれかにおいて、前記梁端表層部の現場打ちコンクリートの打設は、床スラブ(34)の現場打ちコンクリートの打設と一体に行われ、前記突出部のコンクリート強度は、前記梁部材のコンクリート強度よりも高く、前記梁端表層部及び前記床スラブのコンクリート強度は、前記梁部材のコンクリート強度よりも低いことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、床スラブ及び梁端表層部のコンクリートを同時に打設することにより、施工を省力化できる。また、一般に、床スラブには、梁よりも強度の低いコンクリートを使用することができるが、この構成の方法によれば、梁端表層部にそのような強度の低いコンクリートを使用しても、突出部のコンクリート強度が梁部材のコンクリート強度よりも高いため、梁端部全体として梁に要求されるコンクリート強度を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、シースが不要で、組み立て順序の制約が少なく、接合部の損傷を抑制できる柱梁接合構造及びその構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る柱梁接合構造の説明図(A:B図のA−A断面、B:コンクリート部分は柱の中心を通りかつ梁及び柱の延在方向に沿った断面を示し、鉄筋等の金物は、正面からコンクリート部分を透視したように示す。)
【
図2】実施形態に係る柱梁接合構造の組み立て順序を示す説明図
【
図3】実施形態に係る柱梁接合構造の組み立て順序を示す説明図
【
図4】実施形態に係る柱梁接合構造の組み立て順序を示す説明図
【
図5】実施形態に係る柱梁接合構造の組み立て順序を示す説明図
【
図6】実施形態に係る柱梁接合構造の組み立て順序を示す説明図
【
図7】実施形態に係る柱梁接合構造の破壊状態を示す説明図
【
図8】従来技術と実施形態に係る柱梁接合構造との破壊の仕組みの説明図
【
図9】実施形態に係る柱梁接合構造の第1変形例を示す説明図
【
図10】実施形態に係る柱梁接合構造の第2変形例を示す説明図
【
図11】実施形態に係る柱梁接合構造の第3変形例を示す説明図
【
図12】実施形態に係る柱梁接合構造の第4変形例を示す説明図
【
図13】実施形態に係る柱梁接合構造の第5変形例を示す説明図
【
図14】実施形態に係る柱梁接合構造の第6変形例を示す説明図
【
図15】実施形態に係る柱梁接合構造の第7変形例を示す説明図(A:B図のA−A断面、B:コンクリート部分は柱の中心を通りかつ梁及び柱の延在方向に沿った断面を示し、鉄筋等の金物は、正面からコンクリート部分を透視したように示す。)
【
図16】実施形態に係る柱梁接合構造の第8変形例を示す説明図
【
図17】従来技術に係る柱梁接合構造を示す説明図(平面図)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図では柱主筋及び帯筋の図示並びに断面を示すハッチングを省略している。
【0027】
図1は、実施形態に係る柱梁接合構造10を示す。柱梁接合構造10は、プレキャストコンクリート製の柱部材11と、柱部材11に接合されたプレキャストコンクリート製の梁部材12とを有する。
【0028】
柱部材11は、建物の柱を構成し、内部に図示しない柱主筋及び帯筋を含む柱部材本体13と、柱部材本体13から梁部材12が接合されるべき側方に突出するコンクリート製の突出部14を有する。柱部材本体13のコンクリートと突出部14のコンクリートとは、互いに同一の強度のものを同時に打設したものでも、同一又は異なる強度のものを別々に打設したものでもよい。本実施形態では、柱部材11の左右2方向でそれぞれ梁部材12が接合されるが、1方向、互いに直角をなすような2方向、T字状の3方向又は十字状の4方向でそれぞれ梁部材12が接合されてもよく、その接合されるべき方向のそれぞれに突出部14が設けられる。突出部14の上下寸法及び幅は、完成した梁の上下寸法(梁せい)及び幅よりも小さい。
【0029】
柱部材11は、それぞれ、梁の主筋の一部を構成する一段筋15と二段筋16とを有する。一段筋15は、突出部14の上面に所定の間隔をおいて沿うように柱部材本体13から突出する上側一段筋15aと、突出部14の下面に所定の間隔をおいて沿うように柱部材本体13から突出する下側一段筋15bとからなる。二段筋16は、柱部材本体13及び突出部14内にて一段筋15に平行に延在する上側の上側二段筋16aと下側の下側二段筋16bとからなる。
図1のように、柱部材11の左右両側に梁部材12が接合するときは、一段筋15及び二段筋16の中間部はそれぞれ柱部材本体13に埋設され、一段筋15の両端部は柱部材本体13から突出し、二段筋の両端部は突出部14内に埋設されている。なお、柱部材11の左右方向の片側にのみ梁部材12が接合するときは、梁部材12が接合しない側の一段筋15及び二段筋16の端部は柱部材本体13に定着される。また、二段筋16の先端には、コンクリート部分から引き抜かれないように定着部17が設けられている。定着部17は、二段筋16の端部をフック形状にするなどして二段筋16をコンクリート部分に定着させたものである。なお、定着部17は、二段筋16の先端に取り付けられた定着金物でもよい。
【0030】
梁部材12は、プレキャストコンクリートによって形成されたコンクリート部分を含む梁部材本体18と、一段筋15に整合するように端部が梁部材本体18から突出して機械式継手19により一段筋15に接合された梁部材主筋20とを有する。本実施形態における梁部材本体18は、建物の梁の寸法と上下寸法及び幅寸法が一致し、長尺方向の長さが2つの柱間の距離よりも短くなっている。梁部材本体18には、梁部材主筋20の中間部とあばら筋21が埋設されている。梁部材主筋20は、上側に配置された上側梁部材主筋20aと下側に配置された下側梁部材主筋20bとからなる。一段筋15、二段筋16及び梁部材主筋20が梁の主筋となる。梁の主筋の量が少なくなる二段筋16の端部が曲げ降伏位置となるため、機械式継手19の位置は、そこから離間させ、柱部材本体13に近い方が好ましい。
【0031】
柱部材本体13及び梁部材本体18間には、機械式継手19によって互いに連結された梁部材主筋20及び一段筋15を囲うように梁部材12の延在方向に直交する方向に延在する端部あばら筋21aが設けられている。また、柱部材本体13及び梁部材本体18間には、突出部14、一段筋15の前記柱部材本体13から突出した部分、梁部材主筋20の梁部材本体18から突出した部分、及び機械式継手19を埋設するように、梁端表層部22が現場打ちコンクリートによって打設されている。梁端表層部22の上面、下面及び1対の側面は、梁部材本体18の上面、下面及び1対の側面と面一となっている。
【0032】
突出部14、梁部材本体18及び梁端表層部22のコンクリート強度のすべてを、梁に要求されるコンクリート強度としてもよいが、梁部材本体18のコンクリート強度を梁に要求されるコンクリート強度(例えば48N/mm
2)とし、突出部14のコンクリート強度を梁に要求されるコンクリート強度よりも高い強度、例えば柱に要求されるコンクリート強度(例えば60N/mm
2)とし、梁端表層部22のコンクリート強度を梁に要求されるコンクリート強度よりも低い強度、例えば床スラブに要求されるコンクリート強度(例えば30N/mm
2)としてもよい。この場合、低い強度の梁端表層部22のコンクリートの中に高い強度の突出部14のコンクリートが存在するため、全体として梁に要求される強度を満たす。
【0033】
次に、
図2〜
図6を参照して、実施形態に係る柱梁接合構造10の構築方法について説明する。なお、
図2〜
図6では、端部あばら筋21a以外のあばら筋21は図示を省略している。
【0034】
まず、
図2に示すように、柱部材本体13及び突出部14のコンクリートが工場で打設されたプレキャストコンクリート部材である柱部材11を、クレーン(図示せず)等により建物の柱を構築すべき位置に配置する。
【0035】
次に、
図3に示すように、梁部材主筋20の梁部材本体18から突出した部分に、機械式継手19及び端部あばら筋21aを仮設置した後、梁部材12を、クレーン等により建物の梁を構築すべき位置に配置する。ここで、機械式継手19及び端部あばら筋21aの仮設置とは、梁部材主筋20及び一段筋15に対してスライド移動可能な状態をいう。この時、梁部材12は、柱部材11に対して横から挿し入れる。すなわち、梁部材12は、柱部材11の延在方向及び梁部材12の延在方向に直交する方向に移動することによって所定の位置に配置される。このように梁部材12を横から挿し入れることができるのは、上側梁部材主筋20aに仮設置された機械式継手19と下側梁部材主筋20bに仮設置された機械式継手19との間隔が突出部14の上下寸法よりも大きく、かつ、梁部材本体18側に寄せて仮設置された端部あばら筋21aが通過できるように梁部材本体18の柱側表面が突出部14の先端から離間しているためである。その後、
図4に示すように、機械式継手19をスライド移動させて一段筋15と梁部材主筋20とを互いに接合するとともに、端部あばら筋21aを所定の位置までスライド移動させて一段筋15又は梁部材主筋20に結束する。
【0036】
なお、機械式継手19を一段筋15に仮設置してもよい。また、端部あばら筋21aを一段筋15に仮設置してもよく、又は、端部あばら筋21aを仮設置せず、機械式継手19により一段筋15と梁部材主筋20とを互いに接合させた後に、端部あばら筋21aを一段筋15又は梁部材主筋20に取り付けてもよい。これらの場合、梁部材本体18の柱部材11側の表面が突出部14の先端面に当接するように梁部材12を配置してもよい。
【0037】
次に、
図5に示すように、梁端表層部22を打設するための型枠23を設置する。型枠23は、梁端表層部22の底面側に設置されるもののみを図示しているが、梁端表層部22の幅方向の両側面(紙面の手前側及び奥側)にも設置される。
図6に示すように、型枠23内に現場打ちコンクリートを打設することによって梁端表層部22が形成される。型枠23を取り外すと、
図1に示すように柱梁接合構造10が完成する。
【0038】
実施形態に係る柱梁接合構造10の作用効果について説明する。
【0039】
柱梁接合構造10には、
図17に示すようなシース2が用いられていないため、シース2を用いることによって生じる問題が生じない。すなわち、シース2によって鉄筋の設置可能スペースが小さくなくことを防止でき、シース2内にグラウトを充填するという手間やその確認が不要となり、グラウトの充填不良によるシース2と梁主筋4との付着性能の低下が起こらない。また、接合部内の鉄筋の量を増やすことも可能となる。また、シース2がある場合には、シース2にグラウトを充填するためのホースが必要であり、そのホースが構造物中に残ってしまうが、本実施形態に係る柱梁接合構造10では、そのホースが不要であるため、構造がより強固になる。
【0040】
また、梁部材12を横方向から2つの柱部材11間に挿し入れることができるため、柱部材11と梁部材12との組み立て順序の制限が緩和される。例えば、その階層のすべての柱部材11を設置した後に、その階層の梁部材12を順序を問わずに挿し入れることができる。さらに、柱部材11の高さを2階分(2層1節)にしても、柱部材11の設置後に、2つの階層の梁部材12を挿し入れることができる。
【0041】
図1に示すように、一段筋15、二段筋16及び梁部材主筋20は、梁の主筋であり、上側及び下側のそれぞれで、柱側から二段筋16の先端までが一段筋15又は梁部材主筋20と二段筋16とによって二重となっており、その先は梁部材主筋20の一重となっている。そのため、二段筋16の先端近傍が降伏位置となる。実際の地震時には、
図7に丸印で示した位置で曲げ降伏し、コンクリートの破壊が生じる。曲げ降伏位置はヒンジとして機能するが、
図8に示すように、従来の構造は、梁の中間位置で梁の主筋の継手が行われ、柱の近傍で曲げ降伏していた。一方、本実施形態に係る柱梁接合構造10では、柱部材本体13の近傍で梁の主筋の継手(一段筋15及び梁部材主筋20間の継手)が行われ、曲げ降伏位置が従来に比べて梁の中央によっている。このようなヒンジリロケーションが行われているため、地震時に、柱と梁との接合部分で破壊が生じることを防ぎ、梁で破壊が生じる。そのため、補修が比較的容易となる。一段筋15の量を増やして、梁端部の曲げ強度を高めて、ヒンジリロケーションをより確実にしてもよい。また、一段筋15の量を増やすことに代え、又は加えて、一段筋15を二段筋16及び梁部材主筋20よりも高強度の鉄筋とし、ヒンジリロケーションをより確実にしてもよい。
【0042】
図9〜
図16は、それぞれ、上記実施形態に係る柱梁接合構造10の変形例1〜8を示す。以下に具体的に説明する部分を除いて、上記実施形態又は記載済みの変形例と同じ符号を付した部材は、上記実施形態と同様の構成及び作用を有する。変形例1〜8に係る柱梁接合構造10では、突出部14の先端面を梁部材本体18の柱側表面に当接させるため、端部あばら筋21aは、一段筋15側に仮設置されて、梁部材12を所定の位置に配置した後に、スライド移動させて一段筋15又は梁部材主筋20に結束され、又は、仮設置せず、梁部材12を所定の位置に配置した後に一段筋15又は梁部材主筋20に取り付けられる。
図9〜
図14及び
図15(B)は、それぞれ、
図1(B)に対応する断面を、同図と同様の記載の仕方で示す。
【0043】
図9に示す第1変形例に係る柱梁接合構造10は、梁部材本体18の柱部材本体13側の表面において、突出部14よりも上方及び下方のそれぞれにて、柱部材本体13に向かって角錐台状に膨出したコッター31設けられ、梁端表層部22には、現場打ちコンクリートの打設によりコッター31に補完的な形状の凹部32が形成されている。コッター31及び凹部32により、梁部材12及び梁端表層部22間の一体性が向上する。コッター31は、梁部材本体18の幅方向の側方ではなく、上下に(突出部14よりも上側及び下側に)設けられているため、梁部材12を横方向から2つの柱部材11間に挿し入れることを阻害しない。また、一段筋15と梁部材主筋20との互いの接合は、重ね継手によりなされている。なお、上記実施形態及び他の変形例(第5変形例を除く)の継手を、重ね継手や空き重ね継手のような公知の継手に変更してもよく、第1変形例の継手を、機械式継手や空き重ね継手のような公知の継手に変更してもよい。また、定着部17として、定着金物を使用した例を図示している。
【0044】
図10に示す第2変形例に係る柱梁接合構造10は、第1変形例に対して、二段筋16の両端部が突出部14の先端面に達し、定着部17が突出部14から露出している点で相違する。このように構成することで、危険断面位置を明確にすることができる。
【0045】
図11に示す第3変形例に係る柱梁接合構造10は、第2変形例に対して、二段筋16の両端部が突出部14の先端面に達していることは共通するが、定着部17の表面が、突出部14の先端面と面一になっている点で相違する。定着部17の表面が、突出部14の先端面と面一になっているため、第2変形例に比べて施工性がよい。
【0046】
図12に示す第4変形例に係る柱梁接合構造10は、第3変形例に対して、突出部14の先端面と梁部材本体18との間に、モルタル等で形成された、突出部14及び梁部材本体18のコンクリートよりも強度の高い高強度部33が設けられた点で相違する。高強度部33によって、突出部14、梁部材本体18及び梁端表層部22の一体性が向上する。
【0047】
図13に示す第5変形例に係る柱梁接合構造10は、第1変形例に対して、機械式継手19が部分的に柱部材本体13に埋設されている点で相違する。一段筋15が梁部材主筋20に連結できるように、一段筋15の端部に連結された機械式継手が柱部材本体13から突出している。一段筋15の、柱部材本体13から突出する部分の長さが短くなるため、突出部14の突出長も短くでき、柱部材11の運搬性が向上する。
【0048】
図14に示す第6変形例に係る柱梁接合構造10は、第1変形例に対して、コッター31及び凹部32の配置が逆になっている点で相違する。梁部材本体18の柱部材本体13側の表面に凹部32が設けられ、梁端表層部22に、現場打ちコンクリートの打設により凹部32に補完的な形状のコッター31が形成される。梁部材本体18に設けられるのが、突出するコッター31ではなく凹部32であるため、梁部材本体18の柱部材本体13側の表面の幅方向の両側方に凹部32を設けても、梁部材12を横方向から2つの柱部材11間に挿し入れることを阻害しない。上記実施形態又は変形例1〜5に係る梁部材本体18の柱部材本体13側の表面の幅方向の側方に、第6変形例における凹部32を設け、梁端表層部22の幅方向の側方に凹部32に補完的な形状のコッター31を形成してもよい。梁端表層部22に梁部材本体18よりも強度の低いコンクリートを用いる場合は、高強度側が凸上になる第1変形例のコッター31の方が本変形例のものよりも構造上好ましい。本変形例の凹部32及びコッター31は幅方向の側方に設けることができるが、その場合、梁部材主筋20が突出する上部及び下部に凹部32又は第1変形例のコッター31を設けるよりも施工が容易である。
【0049】
図15に示す第7変形例に係る柱梁接合構造10は、上記実施形態に対して、ハーフプレキャスト工法によって、梁端表層部22と床スラブ34とが一体に設けられる点で相違する。梁部材本体18において、上側梁部材主筋20aは、プレキャスト部材としてのコンクリート部分から露出しており、梁端表層部22及び床スラブ34用の現場打ちコンクリートの打設によって、コンクリートに埋設される。スラブ筋35は、梁部材12の配置後、かつ現場打ちコンクリートの打設前に設置される。梁部材本体18のコンクリート強度を梁に要求されるコンクリート強度(例えば48N/mm
2)とし、突出部14のコンクリート強度を梁に要求されるコンクリート強度よりも高い強度、例えば柱に要求されるコンクリート強度(例えば60N/mm
2)とし、梁端表層部22及び床スラブ34のコンクリート強度を床スラブ34に要求されるコンクリート強度(例えば30N/mm
2)とすることが好ましい。この場合、梁端部において、低い強度の梁端表層部22のコンクリートの中に高い強度の突出部14のコンクリートが存在するため、全体として梁に要求される強度を満たす。梁部材本体18の柱部材本体13側の表面と梁端表層部22との間の上部にコッター31及び凹部32を設けることができない点を除いて、他の変形例の構成を本変形例に適用できる。
【0050】
図16は、第8変形例に係る柱梁接合構造10の
図15(B)のA−A断面に相当する部分の断面図である。第8変形例に係る柱梁接合構造10は、第7変形例に対して、突出部14及び梁部材本体18が、上下寸法よりも幅方向寸法が長い扁平形なす点で相違する。扁平形とすることで、二段筋16の量を増やし、梁端部の曲げ耐力を高め、ヒンジリロケーションを確実にすることができる。第8変形例に係る柱梁接合構造10は、ハーフプレキャスト工法ではなく、上記実施形態と同様の工法で構築してもよい。また、梁の幅を柱の幅よりも大きくしてもよい。
【0051】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。柱部材を現場打ちコンクリートで構築してもよい。また、柱部材の運搬に要するスペースを小さくするため、柱部材本体をプレキャストコンクリートとし、突出部のコンクリートを建設現場の作業ヤードで打設してもよい。