(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978899
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】インバータ装置、電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20211125BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-213012(P2017-213012)
(22)【出願日】2017年11月2日
(65)【公開番号】特開2019-88060(P2019-88060A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】水野 博之
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−175491(JP,A)
【文献】
特開昭58−151879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCリンクコンデンサレスのインバータ装置であって、
一対のDCリンクと、
前記DCリンクに発生するDCリンク電圧を交流に変換し、負荷に供給するインバータと、
前記DCリンク電圧をサンプリングし、前回の電圧値と今回の電圧値の差分から得られる前記DCリンク電圧の変動量に応じて補正されたデューティ比で、前記インバータを制御するインバータコントローラと、
を備えることを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前回の電圧値をVDC[−1]、今回の電圧値をVDC[0]とするとき、前記デューティ比の補償量は、(VDC[0]−VDC[−1])/VDC[−1]に比例した第1成分を含むことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
DCリンク電圧が一定であるとの前提で規定される補償量をPWMc、前回の電圧値をVDC[−1]、今回の電圧値をVDC[0]、所定の係数をkとするとき、前記デューティ比の補償量は、
ΔPWMc=PWMc×k×(VDC[0]−VDC[−1])/VDC[−1]
で表される第1成分を含むことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項4】
DCリンクコンデンサレスのインバータ装置であって、
一対のDCリンクと、
前記DCリンクに発生するDCリンク電圧を交流に変換し、負荷に供給するインバータと、
前記DCリンク電圧の傾きに応じて補正されたデューティ比で、前記インバータを制御するインバータコントローラと、
を備えることを特徴とするインバータ装置。
【請求項5】
前記デューティ比の補償量は、前記DCリンク電圧の前記傾きに比例した第1成分を含むことを特徴とする請求項4に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記DCリンク電圧は、デューティ比の更新周期でサンプリングされることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインバータ装置。
【請求項7】
三相交流電圧を全波整流した電圧を、前記一対のDCリンク間に発生させる整流器と、
請求項1から6のいずれかに記載のインバータ装置と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械、産業車両、工場、電気自動車、発電システムなどに、インバータやコンバータをはじめとする電力変換装置が使用される。
図1は、電力変換装置の一例を示す回路図である。
【0003】
電力変換装置100Rは、整流器102、DCリンク104、平滑コンデンサ106、インバータ108を備える。整流器102は、三相交流電圧ACを受け、それを整流した電圧を、P極およびN極の二本のDCリンク104p,nの間に発生させる。平滑コンデンサ106は、二本のDCリンク104p,nの間に接続されており、DCリンク104p,nの間の電圧(DCリンク電圧V
DCと称する)を平滑化する。インバータ108は、DCリンク電圧V
DCを受け、それを交流電圧に変換して、モータなどの負荷200に供給する。
【0004】
たとえば3相インバータ108はU,V,W相のレグを有し、各レグは、ハイサイドアームとローサイドアームを有する。ハイサイドアームとローサイドアームは、相補的に交互にスイッチングする。スイッチングのデューティ比をdとするとき、各相の出力電圧V
U〜W)は理想的に式(1)で与えられる。
V
U〜W=V
DC×d …(1)
【0005】
実際には、ハイサイドアームとローサイドアームが同時にオンして貫通電流が流れるのを防止するために、ハイサイドアームとローサイドアームが同時にオフとなるデッドタイムが挿入される。このデッドタイムの影響によって、出力電圧V
U〜Wは式(1)の理想値からずれることになる。
【0006】
従来では、デッドタイムに起因する出力電圧V
U〜Wの誤差を補正するために、デューティ比dを補償していた。このときの補償量は、DCリンク電圧V
DCを一定とみなして計算されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−223930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
DCリンクコンデンサは、寿命の短い大容量の電解コンデンサが用いられることが多い。定期的な交換が難しい用途では、DCリンクコンデンサが省略もしくは低容量化されたDCリンクコンデンサレスのインバータが用いられる。DCリンクコンデンサレスインバータでは、DCリンク電圧V
DCは直流ではなく、三相全波整流波形となり、時間的に変動する。したがってDCリンク電圧V
DCが一定であることを前提とした従来の補償方法では、出力電圧V
U〜Wの誤差が大きくなってしまう。
【0009】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、出力電圧の精度が改善されたDCリンクコンデンサレスインバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、DCリンクコンデンサレスのインバータ装置に関する。インバータ装置は、一対のDCリンクと、DCリンクに発生するDCリンク電圧を交流に変換し、負荷に供給するインバータと、DCリンク電圧の変動量に応じて補正されたデューティ比で、インバータを制御するインバータコントローラと、を備える。
【0011】
本発明の別の態様は、電力変換装置に関する。電力変換装置は、三相交流電圧を全波整流した電圧を、一対のDCリンク間に発生させる整流器と、インバータ装置と、を備えてもよい。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出力電圧の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】実施の形態に係る電力変換装置の回路図である。
【
図3】インバータコントローラのブロック図である。
【
図4】補正量生成部による補償の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0017】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0018】
図2は、実施の形態に係る電力変換装置100の回路図である。電力変換装置100は、整流器102およびDCリンクコンデンサレスのインバータ装置300を備える。インバータ装置300は、一対のDCリンク302P,302Nと、インバータ310、インバータコントローラ320、ゲートドライバ330、上位コントローラ340を備える。
【0019】
上位コントローラ340は、負荷(たとえばモータ)200の状態(回転数や速度、位置、トルクなど)が目標値に近づくように、負荷200に供給すべき電圧V
U〜W、言い換えればスイッチングのデューティ比を指示する制御指令値PWM#を生成する。上位コントローラ340は、フィードバックコントローラであってもオープンループコントローラであってもよい。
【0020】
インバータ310は、DCリンクの間に発生するDCリンク電圧V
DCを交流に変換し、負荷200に供給する。インバータコントローラ320は、上位コントローラ340からの制御指令値PWM#に応じたデューティ比を有するパルス信号S
PWMを生成する。ゲートドライバ330は、パルス信号S
PWMに応じてゲート駆動信号を生成し、インバータ310のスイッチング素子をPWM駆動する。
【0021】
インバータコントローラ320においては、貫通電流を防止するためのデッドタイムが挿入される。また、このデッドタイムに起因する出力電圧V
U〜Wの誤差を補償するために、デューティ比を補正する。
【0022】
よりインバータコントローラ320は、DCリンク電圧V
DCを監視し、その変動量ΔV
DCに応じてデューティ比PWM#を補正し、補正後のデューティ比PWM’で、インバータ310を制御する。
PWM’=PWM#+PWMc’ …(2)
PWMc’は、デューティ比の補正量を表す。
【0023】
図3は、インバータコントローラ320のブロック図である。インバータコントローラ320は、サンプリング回路322、補正量生成部324、加算器326、パルス幅変調器328を含む。なおインバータコントローラ320は、CPUやマイコンなどのソフトウェア制御可能なハードウェアで構成することができ、その場合、補正量生成部324、加算器326、パルス幅変調器328は、CPUやマイコンなどで実現される機能を示す。あるいはインバータコントローラ320は、デジタル回路で構成してもよく、その場合、補正量生成部324、加算器326、パルス幅変調器328がそれぞれ、デジタル回路で構成される。
【0024】
サンプリング回路322は、所定のサンプリング周期で、DCリンク電圧V
DCをサンプリングする。サンプリング周期は、制御指令値PWM#の更新周期と一致させるとよい。
【0025】
補正量生成部324は、出力電流I
U〜Wの検出値(またはその向き)を表す信号i#a(ただし#はU〜V)と、サンプリングされた電圧値V
DC[0]を受け、それらに応じて補正値PWMcを生成する。補正値PWMcの符号は、出力電流の向きに応じて変化する。
たとえばある相において、出力電流が負荷200に流れ込む方向に流れるとき出力電流は正であり、このときの補正値PWMcは負であり、デューティ比が減ずる方向に補償される。
【0026】
逆に負荷200からインバータ310に流れ込む方向に流れるとき出力電流は負であり、このときの補正値PWMcは正であり、デューティ比が増加する方向に補償される。
【0027】
加算器326は、制御指令値PWM#と補正値PWMcを加算し、補正後のデューティ指令値PWM’を生成する。
【0028】
パルス幅変調器328は、デューティ指令値PWM’に応じたデューティ比を有するパルス信号S
PWMを生成する。なお、ここではパルス信号S
PWMを1本の信号線で示すが、実際には、インバータのハイサイドアーム、ローサイドアームの2本の信号線が、3相分存在してもよい。
【0029】
図4は、補正量生成部324による補償の一例を説明する図である。補正量生成部324には、所定のサンプリングレートで、現在のDCリンク電圧V
DCの検出値V
DC[0]が入力される。補正量生成部324は、前回の電圧値V
DC[−1]と今回の電圧値V
DC[0]の差分である変動量ΔV
DC=(V
DC[−1]−V
DC[0])に応じてデューティ比を補正値PWMcを生成する。サンプリング周期は一定であるから、この変動量ΔV
DCは、DCリンク電圧V
DCの傾きを表しているといえ、デューティ比の補正量PWMc’は、DCリンク電圧V
DCの傾きに比例した第1成分ΔPWMcと、DCリンク電圧V
DCの変動量に依存しない第2成分PWMcとを含んでいるといえる。
PWMc’=PWMc+ΔPWMc …(3)
【0030】
第2成分PWMcは、DCリンク電圧V
DCが一定であるとの前提で規定される補償量に相当する。
【0031】
これに対して第1成分ΔPWMcは、DCリンク電圧V
DCの変動量に比例する。
ΔPWMc=PWMc×k×ΔV
DC/V
DC[−1]
=PWMc×k×(V
DC[0]−V
DC[−1])/V
DC[−1] …(4)
【0032】
ΔV
DC/V
DC[−1]は、前回の電圧値を基準とした変動率である。たとえばk=0.5とすることができる。
【0033】
式(3)、(4)をまとめると、補正量は、式(5)で表される。
PWMc’=PWMc×(1+k・ΔV
DC/V
DC[−1]) …(5)
【0034】
実施の形態に係るインバータ装置300によれば、DCリンク電圧V
DCの変動を考慮したデューティ比の補正が可能となり、出力電圧V
OUTの誤差を低減し、精度を高めることができる。
【0035】
続いてインバータ装置300の用途を説明する。
図5は、コンベアレーンを示す図である。コンベアレーン400は、工場や空港などに設置され、製品や荷物を運搬する。コンベアレーン400は、複数のユニット402を連結して構成される。各ユニット402には、ベルトを駆動するためのモータ404が設けられ、結果として複数のモータ404は、空間的に分散して配置される。
【0036】
複数のモータ404を駆動する複数のインバータ406を、一点破線で示すように1箇所(制御盤405)に集中配置すると、インバータ406とモータ404の間のパワーライン408の配線長が長くなるため、損失が大きくなる。また、レイアウトの変更にパワーラインの敷き直しが伴うため、一旦レイアウトを決定したあとの変更が困難となる。
【0037】
そこで、
図5のコンベアレーン400では、インバータおよび整流器を含む電力変換装置410が、ユニット402側に設けられ、電力変換装置410に個別に交流電力が供給されるようになっている。
【0038】
一点鎖線で示すようにインバータ406を含む電力変換装置を制御盤405に集中配置する場合、サイズの制約が少ないことから、電力変換装置の部品点数は多くても問題とならないかもしれない。また集中配置のレイアウトでは、メンテナンスの労力は相対的に少ないから、寿命の短い部品を採用した場合であっても、定期的に交換するなどの対策をとることができる。ただし集中レイアウトでは、制御盤405を設置する専用スペースが必要となるというデメリットもある。
【0039】
これに対して
図5に実線で示すように、電力変換装置410をユニット402に内蔵して分散配置する場合、電力変換装置410には小型化が要求され、したがって部品点数の減少が求められる。また、複数の電力変換装置410が分散配置されると、メンテナンスの労力が相対的に増すため、寿命の短い部品の採用は避けるべきである。
【0040】
また集中配置では制御盤の設置箇所として、比較的良い環境を選択する余地があるが、分散配置では、各ユニット402を悪環境化に設置せざるを得ない場合があり、ユニット402に密閉構造が要求される場合がある。この場合、ユニット402の筐体内の温度が上がりやすいため、部品寿命(特にコンデンサ)が短くなりやい。
【0041】
実施の形態に係る電力変換装置100は、分散型レイアウトを採用したシステムにおける電力変換装置410として好適に利用することができる。具体的には、電力変換装置100には平滑用のDCリンクコンデンサが不要である(あるいは小容量化できる)ため、サイズを小さくでき、ユニット402に設けることが容易となる。
【0042】
加えて、DCリンクコンデンサには、寿命の短い電解コンデンサが用いられるところ、実施の形態に係る電力変換装置100では、電解コンデンサが不要となるため、定期的な交換作業が不要となり、メンテナンスの労力を減らすことができる。
【0043】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0044】
(第1変形例)
インバータコントローラ320は、出力電圧V
U〜V
Wを検出し、電圧指令値と一致するようにフィードバックによってデューティ比を調節してもよい。この場合においても、DCリンク電圧V
DCにもとづくデューティ比の補正をかけることにより、出力電圧の誤差を低減できる。
【0045】
(第2変形例)
DCリンクコンデンサは、完全にゼロである必要は無く、少ない容量のDCリンクコンデンサが設けられるインバータにも本発明は適用可能である。したがって、DCリンクコンデンサレスとは、DCリンクコンデンサがゼロの場合のみでなく、小さいDCリンクコンデンサが設けられるインバータも含みうる。
【0046】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0047】
100 電力変換装置
102 整流器
104 DCリンクバス
106 平滑コンデンサ
108 インバータ
200 負荷
300 インバータ装置
302 DCリンク
310 インバータ
320 インバータコントローラ
322 サンプリング回路
324 補正量生成部
326 加算器
328 パルス幅変調器
330 ゲートドライバ
340 上位コントローラ