特許第6978905号(P6978905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6978905-衣服のリサイクル装置及び方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978905
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】衣服のリサイクル装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20211125BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20211125BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20211125BHJP
   B03C 1/005 20060101ALI20211125BHJP
   B03C 1/24 20060101ALI20211125BHJP
   B03C 1/30 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   B09B5/00 Z
   B09B3/00 303Z
   B03C1/00 BZAB
   B03C1/005
   B03C1/24 101
   B03C1/30 Z
   B09B3/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-220556(P2017-220556)
(22)【出願日】2017年11月16日
(65)【公開番号】特開2019-89037(P2019-89037A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】中村 充志
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰之
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−120778(JP,A)
【文献】 特開2003−260437(JP,A)
【文献】 特開2008−264725(JP,A)
【文献】 特開平11−333437(JP,A)
【文献】 特開平10−286544(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104959361(CN,A)
【文献】 特開2018−140329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 5/00
B09B 3/00
B03C 1/00
B03C 1/005
B03C 1/24
B03C 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服を加熱する誘導加熱装置と、
加熱した衣服を破砕する破砕装置と、
破砕物を燃料として利用する低比重物と、金属を含む高比重物とに選別する選別装置と、前記選別装置により選別された前記高比重物を、さらに金属種毎に選別する第2選別装置とを備えることを特徴とする衣服のリサイクル装置。
【請求項2】
前記加熱装置は、高周波誘導加熱装置であることを特徴とする請求項1に記載の衣服のリサイクル装置。
【請求項3】
前記破砕装置は、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー、ロールプレス装置又は竪型ミルであることを特徴とする請求項1又に記載の衣服のリサイクル装置。
【請求項4】
衣服を誘導加熱する誘導加熱工程と、
加熱した衣服を破砕する破砕工程と、
破砕物を燃料として利用する低比重物と、金属を含む高比重物とに選別する選別工程と、前記選別工程において選別された前記高比重物を、さらに金属種毎に選別する第2選別工程とを備えることを特徴とする衣服のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルリサイクルによって衣服をリサイクルするための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本では不要となった衣服が年間94万トン程度排出されており、そのうちの約75%が焼却や埋め立てにより処分されている。このような衣服の処分量を削減すべく、各種のリサイクルが行われている。例えば、衣服は工場等で用いられるウエスとして再利用されたり、古着として国内で再利用したり、海外に輸出されている。
【0003】
しかし、近年、工場の海外移転によりウエスの国内需要が減少すると共に、衣服の価格低下により国内外で古着の需要も減少している。そのため、今後ウエスや古着としての衣服のリサイクルを拡大していくことは難しい。
【0004】
そこで、衣服のサーマルリサイクルが注目されている。サーマルリサイクルとは、廃棄物を単に焼却処理せず、焼却の際に発生する熱エネルギーを回収して有効活用することであり、様々な廃棄物について推進されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
衣服のサーマルリサイクルにあたり、衣服をそのまま破砕して燃料化した場合には、ファスナー等の装飾部品等と布部分とが絡まった状態となっているため、装飾部品等に含まれる銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の有価金属を回収することが難しい。また、加熱処理後に有価金属を回収すると、燃料としての品位が低下する。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、衣服の布部分と装飾部品等とを分離して有価金属の回収を効率よく行うと共に、燃料としての品位も維持することができる衣服のリサイクル装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、衣服のリサイクル装置であって、衣服を加熱する誘導加熱装置と、加熱した衣服を破砕する破砕装置と、破砕物を燃料として利用する低比重物と、金属を含む高比重物とに選別する選別装置と、前記選別装置により選別された前記高比重物を、さらに金属種毎に選別する第2選別装置とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、誘導加熱装置により衣服を加熱することで、金属製の装飾部品等の温度を上昇させ、これによって、装飾部品等の周辺の布部分のみを脆化させ、破砕装置によって布部分と装飾部品等の分離を容易に行うことが可能となる。また、金属製の装飾部品等のみを加熱し、布部分は加熱しないため、分離した布部分の燃料としての品位も維持することができる。さらに、選別装置により破砕物を低比重物と高比重物とに選別することにより、低比重物を燃料としてサーマルリサイクルすると共に、高比重物中に含まれる有価金属もリサイクルすることが可能となる。また、第2選別装置を備えることにより、回収された有価金属を金属種毎に選別し、有価金属のリサイクルを容易に行うことが可能となる。
【0010】
前記衣服のリサイクル装置において、前記加熱装置は高周波誘導加熱装置であってもよい。高周波誘導加熱装置は、被加熱物の単位面積に供給される単位時間当りのエネルギーが大きいため、高速かつ高温の加熱が可能であり、出力を調整することで温度制御を容易に行うことができて好ましい。
【0011】
前記衣服のリサイクル装置において、前記破砕装置は、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー、ロールプレス装置又は竪型ミルであってもよい。これらの破砕装置を用いることにより、特に圧縮力によって金属製の装飾部品等と布部分を効率よく分離することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、衣服のリサイクル方法であって、衣服を誘導加熱する誘導加熱工程と、加熱した衣服を破砕する破砕工程と、破砕物を燃料として利用する低比重物と、金属を含む高比重物とに選別する選別工程と、前記選別工程において選別された前記高比重物を、さらに金属種毎に選別する第2選別工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、誘導加熱により衣服を加熱することで、金属製の装飾部品等を選択的に加熱して温度を上昇させ、装飾部品等の周辺の布部分のみを脆化させることで、布部分と装飾部品等の分離を容易に行うことが可能となる。また、金属製の装飾部品等のみを加熱し、布部分は加熱しないため、分離した布部分の燃料としての品位も維持することができる。さらに、選別装置により破砕物を低比重物と高比重物とに選別することにより、低比重物を燃料としてサーマルリサイクルすることが可能になると共に、高比重物中に含まれる有価金属もリサイクルすることが可能となる。また、第2選別工程によって回収された有価金属を金属種毎に選別し、有価金属のリサイクルを容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、衣服をリサイクルするにあたり、有価金属の回収を容易に行うと共に、燃料としての品位も維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る衣服のリサイクル装置の一実施形態を示す全体構成図である。
図2】本発明に係る衣服のリサイクル方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る衣服のリサイクル装置の一実施形態を示し、このリサイクル装置1は、誘導加熱装置2と、破砕装置3と、第1選別装置4と、第2選別装置5等で構成される。リサイクルの対象となる衣服Wは、布部分の他、ファスナー等の装飾部品等を構成する金属を含むものである。
【0019】
誘導加熱装置2は、投入される衣服Wの直近に非接触状態で配置した加熱コイルに交流電流を流し、これによって発生した交番磁束を金属製の装飾部品等に通過させて誘導電流を発生させ、装飾部品等が有する抵抗値により消費されるジュール熱によって自己発熱させ、装飾部品等を選択的に加熱して温度を上昇させるために配置される。これによって装飾部品等の周辺の布部分のみを脆化させ、後段の破砕装置3による布部分と装飾部品等の分離を効率よく行う。
【0020】
この誘導加熱装置2として高周波誘導加熱装置を用いることができる。高周波誘導加熱装置は、被加熱物の単位面積に供給される単位時間当りのエネルギーが大きく、高速かつ高温の加熱が可能であり、出力を調整することで温度制御を容易に行うことができる。高周波誘導加熱装置によって衣服Wの金属製の装飾部品等の温度が急上昇する。そこで、衣服Wの燃焼を防止するため、酸素を遮断した雰囲気内で加熱することが好ましい。
【0021】
破砕装置3は、誘導加熱により脆化した布部分に衝撃を付与して布部分と装飾部品等に分離するために設けられる。この破砕装置3として、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー、回転数の異なる2つのロールで構成したロールプレス装置、回転するテーブル上にローラを有する竪型ミル等を用いることができ、これらを単独で用いてもよく、あるいは組み合わせて用いてもよい。これらの破砕装置3の特に圧縮力によって布部分と装飾部品等を分離させることが可能となる。尚、ロールプレス装置で回転数の異なる2つのロールを用いるのは、圧縮力にせん断力を加えることによって、布部分と装飾部品等をさらに効率よく分離するためである。上記装置以外にも、布部分と装飾部品等に圧縮力及び補助的にせん断力を加え、両者を分離し易くする破砕装置を用いることができる。また、布が絡まないように、カッターのような刃を用いずに突起状の刃を用いた装置や、回転部が破砕物に対して露出していない破砕装置が好ましい。
【0022】
第1選別装置4は、破砕装置3により破砕された衣服Wの破砕物Cを、燃料となる布部分を含む低比重物Lと金属を含む高比重物Hとに選別する装置である。第1選別装置4として、10mm程度の開口を有する連続式のハイバウンドスクリーン等の篩分装置や風力選別装置を用いることができる。これらの選別装置を用いることにより、簡易な構成で効率よく布部分と金属との分別を行うことができる。
【0023】
第2選別装置5は、第1選別装置4により選別された高比重物Hに含まれる金属をさらに金属種毎に選別する装置である。第2選別装置5として、磁力選別装置や渦電流を用いた選別装置、エアーテーブル等を用いることができる。第2選別装置5を備えることにより、回収された有価金属を銅(Cu)やアルミニウム(Al)、鉄(Fe)等の金属種毎に選別し、有価金属のリサイクルを容易に行うことが可能となる。尚、第1選別装置4で回収した高比重物Hをそのまま有効利用する場合には、第2選別装置5を省略することができる。また、第1選別装置4の篩分装置や風力選別装置と第2選別装置5の順序は、金属回収が可能であれば特に問わない。また、含まれる金属種や回収したい金属種に応じて選別装置の種類や組合せ、工程の増減を適宜設計すればよい。
【0024】
次に、上記構成を有するリサイクル装置1を用いた衣服のリサイクル方法について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0025】
まず、衣服Wを誘導加熱装置2に投入して加熱する(ステップS1)。この衣服Wの加熱は、金属の温度が250℃以上800℃以下の状態で10分間程度行う。特に加熱されにくいアルミニウム又は銅が250℃になるように設定するとよい。また、アルミニウムは、溶融しないように650℃以下とする。この加熱は、装飾部品等の周辺の布部分のみが焦げるなどして脆化するまで行えばよい。
【0026】
次に、加熱した衣服Wを破砕装置3に投入して破砕する(ステップS2)。これにより、衣服Wの布部分と装飾部品等を分離させる。
【0027】
次に、衣服Wの破砕物Cを第1選別装置4に投入し、燃料となる布部分を含む低比重物Lと金属を含む高比重物Hとに選別する(ステップS3)。
【0028】
次に、選別された低比重物Lと高比重物Hとを別個に回収する(ステップS4)。回収された低比重物Lは主に燃料となる布部分であって、セメント焼成装置の仮焼炉やセメントキルンの窯尻等に投入してサーマルリサイクルに供される。
【0029】
一方、高比重物Hには、リサイクル対象となり売買可能な金属(有価金属)が含まれている。そこで、回収された高比重物Hについて、第2選別装置5により金属種毎に選別する(ステップS5)。これにより、選別された銅やアルミニウム等が各々別個に回収され(ステップS6)、一連の動作が終了する。
【符号の説明】
【0030】
1 衣服のリサイクル装置
2 誘導加熱装置
3 破砕装置
4 第1選別装置
5 第2選別装置
C 破砕物
H 高比重物
L 低比重物
W 衣服
図1
図2