(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1挟着部の内周縁部において、前記メンブランが当接する部分は、径方向の内側に向かうに従い漸次、前記他方の液室から離れるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
前記メンブランには、同一の押圧力が加えられたときに、前記一方の液室側に向けた膨出変形より、前記他方の液室側に向けた膨出変形を大きくする偏膨出部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の防振装置。
前記第1挟着部、および前記メンブランの外周縁部のうちの少なくとも一方に、他方に向けて突出して当接する複数の支持突起が形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の防振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、液体を主液室から副液室側に向けて流通させるバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、液体を副液室から主液室側に向けて流通させるリバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、を異ならせることができなかった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、を異ならせることができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る防振装置は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結した弾性体と、前記第1取付部材内の液室を、前記弾性体を隔壁の一部に有する主液室および副液室に仕切る仕切部材と、を備え、前記仕切部材は、前記主液室の隔壁の一部をなすメンブランと、前記メンブランを挟んで前記主液室の反対側に位置し前記メンブランを隔壁の一部に有する中間液室と、前記主液室と前記中間液室とを連通する第1オリフィス通路と、前記中間液室と前記副液室とを連通する第2オリフィス通路と、前記メンブランの外周縁部を、前記主液室側および前記中間液室側の双方向から挟み込む挟着部材と、を備え、前記第1オリフィス通路は、前記主液室側に位置する主液室側通路と、前記中間液室側に位置する中間液室側通路と、を備え、前記主液室側通路および前記中間液室側通路のうちのいずれか一方の通路は、他方の通路より液体の流通抵抗が低く、前記挟着部材は、前記主液室および前記中間液室のうち、前記第1オリフィス通路における液体の流通方向で前記一方の通路側に位置する一方の液室側から前記メンブランを支持する第1挟着部と、前記第1オリフィス通路における液体の流通方向で前記他方の通路側に位置する他方の液室側から前記メンブランを支持する第2挟着部と、を備え、前記第1挟着部は、前記第2挟着部よりも、径方向の内側に長く突出していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1挟着部および第2挟着部のうち、径方向の内側に向けて長く突出した第1挟着部が、メンブランを前記一方の液室側から支持し、第2挟着部が、メンブランを前記他方の液室側から支持するので、同一の押圧力が加えられたときのメンブランの膨出変形量は、前記他方の液室側に向けた膨出変形より前記一方の液室側に向けた膨出変形の方が小さくなる。
具体的には、主液室と中間液室とを連通する第1オリフィス通路のうち、中間液室側通路における液体の流通抵抗が、主液室側通路における液体の流通抵抗より低い場合、第2挟着部よりも径方向の内側に向けて長く突出した第1挟着部が、メンブランを中間液室側から支持しているので、同一の押圧力が加えられたときのメンブランの膨出変形量が、主液室側に向けた膨出変形より中間液室側に向けた膨出変形の方が小さくなる。
すなわち、バウンド荷重が防振装置に入力されると、メンブランの中間液室側に向けた膨出変形が第1挟着部により抑止され、主液室の正圧が緩和しにくく、発生する減衰力が高くなる一方、リバウンド荷重が防振装置に入力されると、第2挟着部が第1挟着部よりも径方向の内側に突出していない分、メンブランの主液室側に向けた膨出変形が、バウンド荷重の入力時の中間液室側に向けた膨出変形と比べて大きくなり、発生する減衰力を低く抑えることができる。
また、前述のように、中間液室側通路における液体の流通抵抗が、主液室側通路における液体の流通抵抗より低い場合、バウンド荷重の入力時に、主液室の液体が、主液室側通路に流入したときに、中間液室側通路に直接流入する場合と比べて、大きな抵抗が付与される。これにより、バウンド荷重の入力時に高い減衰力を発生させることができる。
一方、副液室側の液体が、主液室に向けて第1オリフィス通路を流通するときには、主液室側通路と中間液室側通路とで流通抵抗が互いに異なっていたとしても、両者が互いに連続して1つのオリフィス通路を構成しているので、液体がその境界部分を通過する際に生ずる抵抗を抑えることが可能になり、リバウンド荷重の入力時に発生する減衰力を低く抑えることができる。
以上より、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力を、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力より確実に高めることが可能になり、これらの両減衰力の差を大きくし、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力に対するバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力の比率を高めることができる。
さらに、前述のように、メンブランが中間液室側よりも主液室側に向けて膨出変形しやすくなっていることから、大きなリバウンド荷重の入力に伴い、主液室が急激に負圧になろうとしても、メンブランが主液室側に向けて膨出変形することで、主液室の負圧を抑えることが可能になり、キャビテーションの発生を抑制することもできる。
【0008】
前述とは逆に、主液室側通路における液体の流通抵抗が、中間液室側通路における液体の流通抵抗より低い場合、第2挟着部よりも径方向の内側に向けて長く突出した第1挟着部が、メンブランを主液室側から支持しているので、同一の押圧力が加えられたときのメンブランの膨出変形量が、中間液室側に向けた膨出変形より主液室側に向けた膨出変形の方が小さくなる。
すなわち、リバウンド荷重が防振装置に入力されると、メンブランの主液室側に向けた膨出変形が第1挟着部により抑止され、主液室の負圧が緩和しにくく、発生する減衰力が高くなる一方、バウンド荷重が防振装置に入力されると、第2挟着部が第1挟着部よりも径方向の内側に突出していない分、メンブランの中間液室側に向けた膨出変形が、リバウンド荷重の入力時の主液室側に向けた膨出変形と比べて大きくなり、発生する減衰力を低く抑えることができる。
また、前述のように、主液室側通路における液体の流通抵抗が、中間液室側通路における液体の流通抵抗より低い場合、リバウンド荷重の入力時に、副液室の液体が、第2オリフィス通路を通して中間液室内に流入した後、中間液室側通路に流入したときに、主液室側通路に直接流入する場合と比べて、大きな抵抗が付与される。これにより、リバウンド荷重の入力時に高い減衰力を発生させることができる。
一方、主液室の液体が、副液室側に向けて第1オリフィス通路を流通するときには、主液室側通路と中間液室側通路とで流通抵抗が互いに異なっていたとしても、両者が互いに連続して1つのオリフィス通路を構成しているので、液体がその境界部分を通過する際に生ずる抵抗を抑えることが可能になり、バウンド荷重の入力時に発生する減衰力を抑制することができる。
以上より、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力を、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力より確実に高めることが可能になり、これらの両減衰力の差を大きくし、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力に対するリバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力の比率を高めることができる。
【0009】
また、前述した各作用効果が、例えば、主液室内の液圧が所定値に達したときに作動する部材を採用せず、前述したような、中間液室側通路における液体の流通抵抗と、主液室側通路における液体の流通抵抗と、が互いに異なり、かつメンブランが、主液室および中間液室双方の隔壁の一部をなし、挟着部材が第1挟着部および第2挟着部を備える構成によって奏されることから、比較的振幅の小さい振動であっても、前述の作用効果を安定して精度よく奏功させることができる。
【0010】
ここで、前記第1挟着部の内周縁部において、前記メンブランが当接する部分は、径方向の内側に向かうに従い漸次、前記他方の液室から離れるように傾斜してもよい。
【0011】
この場合、第1挟着部の内周縁部において、メンブランが当接する部分が、径方向の内側に向かうに従い漸次、前記他方の液室から離れるように傾斜しているので、振動の入力時に、メンブランが、前記一方の液室側に向けて膨出変形したときに、第1挟着部の内周縁部に面接触しやすくなり、異音の発生を抑制することができるとともに、メンブランの耐久性を確保することができる。
【0012】
また、前記メンブランは、前記第1挟着部の内周縁部に当接してもよい。
この場合、メンブランが、第1挟着部の内周縁部に当接しているので、振動の入力時に、メンブランが第1挟着部の内周縁部に衝突するのを抑制することが可能になり、異音の発生を確実に抑制することができる。また、メンブランが、第1挟着部の内周縁部に当接していることから、比較的振幅の小さい振動であっても、メンブランを前記一方の液室側に向けて膨出変形させる荷重が入力されたときに、高い減衰力を発生させることができる。
【0013】
また、前記メンブランは、前記挟着部材に挟み込まれた外周縁部と、前記外周縁部より径方向の内側に位置し、かつ厚肉に形成された本体部と、を備え、前記本体部のうち、前記外周縁部より前記他方の液室側に位置する部分の外周面と、前記第2挟着部の内周面と、の間に径方向の隙間が設けられてもよい。
【0014】
この場合、メンブランの本体部の外周面と、第2挟着部の内周面と、の間に径方向の隙間が設けられているので、比較的振幅の小さい振動であっても、メンブランを、前記他方の液室側に向けて円滑に膨出変形させることが可能になり、発生する減衰力を確実に低く抑えることができる。また、メンブランが、前記他方の液室側に向けて過度に大きく膨出変形しようとしたときに、本体部の外周面を第2挟着部の内周面に当接させることも可能になり、メンブランにおける外周縁部と本体部との接続部分に大きな負荷が加わるのを防ぐことができる。
【0015】
また、前記メンブランには、同一の押圧力が加えられたときに、前記一方の液室側に向けた膨出変形より、前記他方の液室側に向けた膨出変形を大きくする偏膨出部が形成されてもよい。
【0016】
この場合、メンブランに偏膨出部が形成されているので、挟着部材が、第1挟着部および第2挟着部を有していることと相俟って、同一の押圧力が加えられたときの、前記他方の液室側に向けたメンブランの膨出変形より前記一方の液室側に向けたメンブランの膨出変形の方を確実に小さくすることが可能になり、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、を大きく異ならせることができる。
具体的には、中間液室側通路における液体の流通抵抗が、主液室側通路における液体の流通抵抗より低い場合、同一の押圧力が加えられたときのメンブランの膨出変形量は、中間液室側に向けた膨出変形より主液室側に向けた膨出変形の方が大きくなる。
したがって、リバウンド荷重が防振装置に入力されると、メンブランが、偏膨出部により主液室側に向けて大きく膨出変形することで、発生する減衰力を低く抑えることができる。一方、バウンド荷重が防振装置に入力されると、メンブランの中間液室側に向けた膨出変形が、リバウンド荷重の入力時の主液室側に向けた膨出変形と比べて小さくなり、主液室の正圧が緩和しにくく、発生する減衰力が高くなる。
前述とは逆に、主液室側通路における液体の流通抵抗が、中間液室側通路における液体の流通抵抗より低い場合、同一の押圧力が加えられたときのメンブランの膨出変形量は、主液室側に向けた膨出変形量より中間液室側に向けた膨出変形量の方が大きくなる。
したがって、バウンド荷重が防振装置に入力されると、メンブランが、偏膨出部により中間液室側に向けて大きく膨出変形することで、発生する減衰力を低く抑えることができる。一方、リバウンド荷重が防振装置に入力されると、メンブランの主液室側に向けた膨出変形が、バウンド荷重の入力時の中間液室側に向けた膨出変形と比べて小さくなり、主液室の負圧が緩和しにくく、発生する減衰力が高くなる。
【0017】
また、前記偏膨出部は、前記一方の液室側に向けて突の曲面状に形成されてもよい。
【0018】
この場合、メンブランに同一の押圧力が加えられたときに、前記一方の液室側に向けた膨出変形より、前記他方の液室側に向けた膨出変形が大きくなる構成を、容易かつ確実に実現することができる。
【0019】
また、前記偏膨出部は、前記第1挟着部の内側に張り出してもよい。
【0020】
この場合、偏膨出部が、第1挟着部の内側に張り出しているので、同一の押圧力が加えられたときの、前記他方の液室側に向けたメンブランの膨出変形を、前記一方の液室側に向けたメンブランの膨出変形より大きくする構成をより一層確実に実現することができる。
【0021】
また、前記第1挟着部、および前記メンブランの外周縁部のうちの少なくとも一方に、他方に向けて突出して当接する複数の支持突起が形成されてもよい。
【0022】
この場合、第1挟着部、およびメンブランの外周縁部のうちの少なくとも一方に、他方に向けて突出して当接する複数の支持突起が形成されているので、防振装置に荷重が入力され、メンブランが、前記一方の液室側に向けて変形若しくは変位したときに、メンブランの外周縁部が、広範囲にわたって一気に第1挟着部に衝突するのを抑制することが可能になり、発生する打音を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、を異ならせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第1実施形態に係る防振装置を、
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1に示すように、防振装置1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材11、および他方に連結される第2取付部材12と、第1取付部材11と第2取付部材12とを連結した弾性体13と、第1取付部材11内の液室14を、弾性体13を隔壁の一部とする主液室15、および副液室16に仕切る仕切部材17と、を備えている。図示の例では、仕切部材17は、液室14を、第1取付部材11の中心軸線Oに沿う軸方向に仕切っている。
この防振装置1が、例えば自動車のエンジンマウントとして使用される場合、第1取付部材11が振動受部としての車体に連結され、第2取付部材12が振動発生部としてのエンジンに連結される。これにより、エンジンの振動が車体に伝達することが抑えられる。なお、第1取付部材11を振動発生部に連結し、第2取付部材12を振動受部に連結してもよい。
【0026】
以下、仕切部材17に対して軸方向に沿う主液室15側を上側といい、副液室16側を下側という。また、この防振装置1を軸方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0027】
第1取付部材11は有底筒状に形成されている。第1取付部材11の底部は、環状に形成され、前記中心軸線Oと同軸に配置されている。第1取付部材11の下部の内周面は、弾性体13と一体に形成された被覆ゴムにより覆われている。
第2取付部材12は、表裏面が前記中心軸線Oに直交する平板状に形成されている。第2取付部材12は、例えば円板状に形成され、前記中心軸線Oと同軸に配置されている。第2取付部材12は、第1取付部材11の上方に配置されている。第2取付部材12の外径は、第1取付部材11の内径と同等になっている。
【0028】
弾性体13は、第1取付部材11の上部の内周面と、第2取付部材12の下面と、を連結している。弾性体13により、第1取付部材11の上端開口部が密閉されている。弾性体13は、第1取付部材11および第2取付部材12に加硫接着されている。弾性体13は、有頂筒状に形成され前記中心軸線Oと同軸に配置されている。弾性体13のうち、頂壁部が第2取付部材12に連結され、周壁部における下端部が第1取付部材11に連結されている。弾性体13の周壁部は、上方から下方に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて延びている。
【0029】
第1取付部材11の下端部内に、前記被覆ゴムを介してダイヤフラムリング18が液密に嵌合されている。ダイヤフラムリング18は、二重筒状に形成されて前記中心軸線Oと同軸に配置されている。ダイヤフラムリング18に、ゴム等で弾性変形可能に形成されたダイヤフラム19の外周部が加硫接着されている。ダイヤフラムリング18のうち、外筒部分の内周面、および内筒部分の外周面に、ダイヤフラム19の外周部が加硫接着されている。ダイヤフラム19は、副液室16内への液体の流入および流出に伴い拡縮変形する。
ダイヤフラム19および弾性体13により、液体が封入される液室14が第1取付部材11内に画成されている。なお、液室14に封入される液体としては、例えば水やエチレングリコールなどを用いることができる。
【0030】
仕切部材17は、表裏面が前記中心軸線Oに直交する円盤状に形成され、第1取付部材11内に前記被覆ゴムを介して嵌合されている。仕切部材17により、第1取付部材11内の液室14が、弾性体13と仕切部材17とにより画成された主液室15と、ダイヤフラム19と仕切部材17とにより画成された副液室16と、に区画されている。
【0031】
仕切部材17は、第1取付部材11内に前記被覆ゴムを介して嵌合された筒状の本体部材34と、本体部材34の上端開口部を閉塞するとともに主液室15の隔壁の一部をなすメンブラン31と、本体部材34の下端開口部を閉塞した下側部材33と、メンブラン31を挟んで主液室15の反対側に位置しメンブラン31を隔壁の一部とする中間液室35と、本体部材34にメンブラン31を固定する環状の挟着部材39と、主液室15と中間液室35とを連通する第1オリフィス通路21と、中間液室35と副液室16とを連通する第2オリフィス通路22と、を備えている。
【0032】
メンブラン31は、ゴム等の弾性材料によって円板状に形成されている。メンブラン31は、前記中心軸線Oと同軸に配置されている。メンブラン31の体積は、弾性体13の体積より小さい。メンブラン31は、円板状の本体部31bと、本体部31bより薄肉に形成されるとともに、本体部31bの下部から径方向の外側に向けて突出し、全周にわたって連続して延びる外周縁部31aと、を備える。本体部31bの上下面は、全域にわたって軸方向に直交する方向に延びている。外周縁部31aにおける径方向の外端部に、軸方向の両側に向けて突出する係止突起が形成されている。
【0033】
本体部材34は、前記中心軸線Oと同軸に配置されている。本体部材34の外周面には、径方向の外側に向けて開口し、周方向に延びる第1オリフィス溝23aが形成されている。第1オリフィス溝23aにおける径方向の外側の開口は、前記被覆ゴムにより閉塞されている。本体部材34の上面には、主液室15と第1オリフィス溝23aとを連通する第1連通孔23bが形成されている。第1連通孔23bは、主液室15と第1オリフィス溝23aとを軸方向に連通している。
第1オリフィス溝23aは、前記中心軸線Oを中心に、第1連通孔23bから周方向の一方側に向けて180°を超える角度範囲にわたって周方向に延びている。
【0034】
挟着部材39は、メンブラン31の外周縁部31aを、主液室15側および中間液室35側の双方向から挟み込んでいる。挟着部材39は、メンブラン31の下面を支持する第1挟着部25と、メンブラン31の上面を支持する第2挟着部38と、を備える。第1挟着部25および第2挟着部38はそれぞれ、環状に形成されるとともに、前記中心軸線Oと同軸に配置されている。
メンブラン31の外周縁部31aが、第1挟着部25と第2挟着部38とにより軸方向に挟まれて固定されることにより、メンブラン31は、外周縁部31aを固定端として軸方向に弾性変形可能に支持されている。
【0035】
第1挟着部25は、外側フランジ部24を介して本体部材34に連結されている。外側フランジ部24は、本体部材34と一体に形成され、本体部材34の上端部から径方向の内側に向けて突出している。外側フランジ部24は、前記中心軸線Oと同軸に配置されている。第1挟着部25は、外側フランジ部24と一体に形成され、外側フランジ部24から径方向の内側に向けて突出している。第1挟着部25および外側フランジ部24それぞれの下面は面一になっている。第1挟着部25の上面は、外側フランジ部24の上面より下方に位置している。第1挟着部25の上面における外周縁部に、全周にわたって連続して延びる下環状溝が形成されている。
【0036】
第2挟着部38のうち、外周部は外側フランジ部24の上面に配置され、内周部がメンブラン31の上面を支持している。第2挟着部38の内周部の下面における外周縁部に、全周にわたって連続して延びる上環状溝が形成されている。この上環状溝は、第1挟着部25の下環状溝と軸方向で対向している。これらの上環状溝および下環状溝に、メンブラン31の外周縁部31aの前記係止突起が各別に係止されている。
【0037】
ここで、メンブラン31の本体部31bのうち、外周縁部31aより上方に位置する部分は、第2挟着部38の内周部の内側に挿入されている。メンブラン31の本体部31bのうち、外周縁部31aより上方に位置する部分の外周面(以下、メンブラン31の本体部31bの外周面31cという)と、第2挟着部38の内周部の内周面と、の間に径方向の隙間が設けられている。第2挟着部38の内周部の内周面、およびメンブラン31の本体部31bの外周面31cはそれぞれ、軸方向に延びている。第2挟着部38の内周部の内周面と、メンブラン31の本体部31bの外周面31cと、は略平行になっている。なお、第2挟着部38の内周部の内周面、およびメンブラン31の本体部31bの外周面31cを互いに傾斜させてもよい。
【0038】
下側部材33は、有底筒状に形成され、前記中心軸線Oと同軸に配置されている。下側部材33は、本体部材34内に液密に嵌合されている。下側部材33の底壁部は、副液室16と中間液室35とを軸方向に仕切る仕切壁をなしている。下側部材33の周壁部の上端開口縁は、第1挟着部25および外側フランジ部24の各下面に一体に当接している。下側部材33の底壁部の上面は、メンブラン31の下面から下方に離れている。下側部材33における底壁部の上面、および周壁部の内周面と、メンブラン31の下面と、により、前述の中間液室35が画成されている。メンブラン31により中間液室35と主液室15とが軸方向に仕切られている。中間液室35の内容積は、主液室15の内容積より小さくなっている。
【0039】
下側部材33の周壁部の外周面には、径方向の外側に向けて開口し、周方向に延びる第2オリフィス溝33aが形成されている。第2オリフィス溝33aにおける径方向の外側の開口は、本体部材34の内周面により閉塞されている。下側部材33の周壁部の内周面には、第2オリフィス溝33aと中間液室35とを連通する第2連通孔33bが形成されている。第2連通孔33bは、第2オリフィス溝33aと中間液室35とを径方向に連通している。
第2オリフィス溝33aは、前記中心軸線Oを中心に、第2連通孔33bから周方向の一方側に向けて180°を超える角度範囲にわたって周方向に延びている。第2オリフィス溝33a、および第1オリフィス溝23aそれぞれにおける周方向の一方側の端部は、同等の周方向の位置に配置されている。
【0040】
下側部材33における底壁部の下面と、ダイヤフラム19と、により副液室16が画成されている。下側部材33の底壁部には、副液室16と中間液室35とを連通する第2オリフィス通路22が形成されている。第2オリフィス通路22は、副液室16と中間液室35とを軸方向に連通している。第2オリフィス通路22における中間液室35側の開口部は、メンブラン31に対向している。第2オリフィス通路22は、下側部材33の底壁部に形成された貫通孔とされ、下側部材33の底壁部に複数形成されている。これらの第2オリフィス通路22のうちの少なくとも一部が、メンブラン31と軸方向に対向している。
【0041】
下側部材33における底壁部の上面に、メンブラン31の、中間液室35側に向けた過度に大きな膨出変形を規制する規制突起26が配設されている。規制突起26は、下側部材33と一体に形成されている。規制突起26は、筒状に形成され、前記中心軸線Oと同軸に配設されている。
なお、規制突起26は、中実に形成してもよく、前記中心軸線Oと同軸に配設しなくもてよい。
【0042】
下側部材33における底壁部の下面において、複数の第2オリフィス通路22より径方向の外側に位置する外周縁部に、前述したダイヤフラムリング18が配設されている。ダイヤフラムリング18は、下側部材33と一体に形成されている。ダイヤフラムリング18のうち、内筒部分より径方向の外側に位置する部分は、下側部材33より径方向の外側に位置し、外筒部分と内筒部分との接続部分の上面に、本体部材34の下面が液密に当接している。
【0043】
各第2オリフィス通路22の流路断面積、および流路長はそれぞれ、後述する第1オリフィス通路21の流路断面積、および流路長より小さくなっている。第2オリフィス通路22は、流路長が内径より小さくなっている。なお、第2オリフィス通路22の流路長を内径以上としてもよい。各第2オリフィス通路22における液体の流通抵抗が、第1オリフィス通路21における液体の流通抵抗より小さくなっている。
【0044】
ここで、本体部材34の内周面に、第1オリフィス溝23aと第2オリフィス溝33aとを連通する接続孔21cが形成されている。接続孔21cは、第1オリフィス溝23aと第2オリフィス溝33aとを径方向に連通している。そして、主液室15と中間液室35とを連通する第1オリフィス通路21は、径方向の外側の開口が前記被覆ゴムにより閉塞された第1オリフィス溝23aと、径方向の外側の開口が本体部材34の内周面により閉塞された第2オリフィス溝33aと、接続孔21cと、により構成されている。
以下、第1オリフィス通路21のうち、主液室15側に位置して第1オリフィス溝23aにより画成された部分を主液室側通路21aといい、中間液室35側に位置して第2オリフィス溝33aにより画成された部分を中間液室側通路21bという。
【0045】
ここで、接続孔21cは、第1オリフィス溝23aにおける周方向の一方側の端部と、第2オリフィス溝33aにおける周方向の一方側の端部と、を接続している。これにより、液体が、主液室側通路21aおよび中間液室側通路21bのうちのいずれか一方から、接続孔21cを通して、いずれか他方に流入しこの他方を流れる過程において、前記一方を流れる液体の流動方向と、前記他方を流れる液体の流動方向と、が周方向の逆向きになる。
【0046】
さらに本実施形態では、中間液室側通路21bにおける液体の流通抵抗が、主液室側通路21aにおける液体の流通抵抗より低くなっている。
図示の例では、主液室側通路21aの流路断面積が、中間液室側通路21bの流路断面積より小さくなっている。接続孔21cの開口面積が、主液室側通路21aの流路断面積より小さくなっている。接続孔21cの流路長は、主液室側通路21aおよび中間液室側通路21bの各流路長より短い。
【0047】
ここで、主液室側通路21aおよび第1連通孔23bそれぞれの流通抵抗は、互いに同等にしてもよいし、互いに異ならせてもよい。
例えば、主液室側通路21aの流通抵抗が、第1連通孔23bの流通抵抗より高い場合、第1連通孔23bを通過して主液室側通路21aに進入したときの液体の流通抵抗が増大し、液体を主液室15から副液室16側に向けて流通させるバウンド荷重の入力時に高い減衰力が発生する。
【0048】
また、接続孔21cおよび主液室側通路21aそれぞれの流通抵抗を、互いに同等にしてもよいし、互いに異ならせてもよい。
例えば、接続孔21cの流通抵抗が、主液室側通路21aの流通抵抗より高い場合、主液室側通路21aを通過して接続孔21cに進入したときの液体の流通抵抗が増大し、バウンド荷重の入力時に高い減衰力が発生する。
【0049】
また、中間液室側通路21bおよび接続孔21cそれぞれの流通抵抗を、互いに同等にしてもよいし、互いに異ならせてもよい。
例えば、中間液室側通路21bの流通抵抗が、接続孔21cの流通抵抗より高い場合、接続孔21cを通過して中間液室側通路21bに進入したときの液体の流通抵抗が増大し、バウンド荷重の入力時に高い減衰力が発生する。
【0050】
また、第2連通孔33bおよび中間液室側通路21bそれぞれの流通抵抗を、互いに同等にしてもよいし、互いに異ならせてもよい。
例えば、第2連通孔33bの流通抵抗が、中間液室側通路21bの流通抵抗より高い場合、中間液室側通路21bを通過して第2連通孔33bに進入したときの液体の流通抵抗が増大し、バウンド荷重の入力時に高い減衰力が発生する。
【0051】
また本実施形態では、第1オリフィス通路21が中間液室35に向けて開口する開口方向、つまり第2連通孔33bの中間液室35に向けた開口方向が、第2オリフィス通路22が中間液室35に向けて開口する開口方向と交差している。図示の例では、第2連通孔33bが、中間液室35に向けて径方向に開口し、第2オリフィス通路22が、中間液室35に向けて軸方向に開口している。すなわち、第2連通孔33bの中間液室35に向けた開口方向が、第2オリフィス通路22が中間液室35に向けて開口する開口方向と直交している。
【0052】
また本実施形態では、第2オリフィス通路22が中間液室35に向けて開口する開口方向に直交する方向に沿った、中間液室35の横断面積が、第2オリフィス通路22の流路断面積、第1オリフィス通路21の中間液室側通路21bの流路断面積、および第1オリフィス通路21の主液室側通路21aの流路断面積より大きくなっている。
また本実施形態では、主液室側通路21aおよび中間液室側通路21bは、流路径より流路長が長い通路となっている。ここで、図示の例では、第1オリフィス通路21の流路断面形状が矩形状となっており、この場合、流路径は、流路断面形状を、同一の流路断面積を有する円形状に置き換えたときの、この円形状の直径で表すことができる。
【0053】
ここで本実施形態では、中間液室35は、第1オリフィス通路21における液体の流通方向において、主液室側通路21aおよび中間液室側通路21bのうち、液体の流通抵抗が低い中間液室側通路21b側に位置している。
そして、本実施形態では、メンブラン31を中間液室35側から支持する第1挟着部25は、メンブラン31を主液室15側から支持する第2挟着部38よりも、径方向の内側に長く突出している。第1挟着部25において、第2挟着部38より径方向の内側に位置する部分は、メンブラン31の本体部31bの下面における外周部を支持している。第1挟着部25の内周縁部において、メンブラン31が当接する上面は、径方向の内側に向かうに従い漸次、主液室15から離れるように下方に向けて傾斜している。図示の例では、第1挟着部25の内周縁部の上面は、主液室15側に向けて突の曲面状に形成されている。メンブラン31は、第2挟着部38の下面における全域にわたって当接している。
なお、第1挟着部25の内周縁部の上面は、前記中心軸線Oに直交する方向に延びる平坦面であってもよい。メンブラン31は、第1挟着部25の上面における全域にわたって当接してもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置1によれば、第2挟着部38よりも径方向の内側に向けて長く突出した第1挟着部25が、メンブラン31を中間液室35側から支持しているので、同一の押圧力が加えられたときのメンブラン31の膨出変形量が、主液室15側に向けた膨出変形より中間液室35側に向けた膨出変形の方が小さくなる。
すなわち、バウンド荷重が防振装置1に入力されると、メンブラン31の中間液室35側に向けた膨出変形が第1挟着部25により抑止され、主液室15の正圧が緩和しにくく、発生する減衰力が高くなる一方、リバウンド荷重が防振装置1に入力されると、第2挟着部38が第1挟着部25よりも径方向の内側に突出していない分、メンブラン31の主液室15側に向けた膨出変形が、バウンド荷重の入力時の中間液室35側に向けた膨出変形と比べて大きくなり、発生する減衰力を低く抑えることができる。
【0055】
また、中間液室側通路21bにおける液体の流通抵抗が、主液室側通路21aにおける液体の流通抵抗より低いので、バウンド荷重の入力時に、主液室15の液体が、主液室側通路21aに流入したときに、中間液室側通路21bに直接流入する場合と比べて、大きな抵抗が付与される。これにより、バウンド荷重の入力時に高い減衰力を発生させることができる。
一方、副液室16側の液体が、主液室15に向けて第1オリフィス通路21を流通するときには、主液室側通路21aと中間液室側通路21bとで流通抵抗が互いに異なっていたとしても、両者が互いに連続して1つのオリフィス通路を構成しているので、液体がその境界部分を通過する際に生ずる抵抗を抑えることが可能になり、リバウンド荷重の入力時に発生する減衰力を低く抑えることができる。
以上より、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力を、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力より確実に高めることが可能になり、これらの両減衰力の差を大きくし、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力に対するバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力の比率を高めることができる。
【0056】
さらに、前述のように、メンブラン31が中間液室35側よりも主液室15側に向けて膨出変形しやすくなっていることから、大きなリバウンド荷重の入力に伴い、主液室15が急激に負圧になろうとしても、メンブラン31が主液室15側に向けて膨出変形することで、主液室15の負圧を抑えることが可能になり、キャビテーションの発生を抑制することもできる。
また、前述した各作用効果が、例えば、主液室15内の液圧が所定値に達したときに作動する部材を採用せず、前述したような、中間液室側通路21bにおける液体の流通抵抗と、主液室側通路21aにおける液体の流通抵抗と、が互いに異なり、かつメンブラン31が、主液室15および中間液室35双方の隔壁の一部をなし、挟着部材39が第1挟着部25および第2挟着部38を備える構成によって奏されることから、比較的振幅の小さい振動であっても、前述の作用効果を安定して精度よく奏功させることができる。
【0057】
また、第1挟着部25の内周縁部において、メンブラン31が当接する上面が、径方向の内側に向かうに従い漸次、主液室15から離れるように傾斜しているので、バウンド荷重の入力時に、メンブラン31が、中間液室35側に向けて膨出変形したときに、第1挟着部25の内周縁部に面接触しやすくなり、異音の発生を抑制することができるとともに、メンブラン31の耐久性を確保することができる。
【0058】
また、メンブラン31の本体部31bの外周面31cと、第2挟着部38の内周部の内周面と、の間に径方向の隙間が設けられているので、比較的振幅の小さい振動であっても、リバウンド荷重の入力時に、メンブラン31を、主液室15側に向けて円滑に膨出変形させることが可能になり、発生する減衰力を確実に低く抑えることができる。また、メンブラン31が、リバウンド荷重の入力時に、主液室15側に向けて過度に大きく膨出変形しようとしたときに、本体部31bの外周面31cを第2挟着部38の内周部の内周面に当接させることも可能になり、メンブラン31における外周縁部31aと本体部31bとの接続部分に大きな負荷が加わるのを防ぐことができる。
また、第1オリフィス通路21の主液室側通路21aが、流路径より流路長が長い通路となっているので、この部分を流通する主液室15側からの液体に付与される抵抗が高められ、バウンド荷重の入力時に発生する減衰力をより一層確実に高めることができる。
【0059】
また、第1オリフィス通路21が中間液室35に向けて開口する開口方向が、第2オリフィス通路22が中間液室35に向けて開口する開口方向と交差しているので、中間液室35に流入した主液室15側からの液体が、第2オリフィス通路22に向けて直行するのを抑制することが可能になり、この液体を中間液室35内で拡散させることができる。これにより、主液室15の液体が第2オリフィス通路22に流入するまでの間に、その流速が確実に低減されることとなり、バウンド荷重の入力時に高い減衰力を発生させることができる。
【0060】
また、中間液室35の前記横断面積が、第2オリフィス通路22の流路断面積より大きくなっているので、中間液室35の液体が第2オリフィス通路22に流入したときに生ずる抵抗を高めることが可能になり、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力を確実に高めることができる。
【0061】
次に、本発明の第2実施形態に係る防振装置2を、
図3および
図4を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0062】
本実施形態では、メンブラン31に、同一の押圧力が加えられたときに、中間液室35側に向けた膨出変形より、主液室15側に向けた膨出変形を大きくする偏膨出部23が形成されている。偏膨出部23は、中間液室35側に向けて突となるように湾曲している。偏膨出部23は、メンブラン31のうち、挟着部材39により軸方向に挟み込まれた外周縁部31aより径方向の内側に位置する本体部31bの全域にわたって一体に形成されている。なお、偏膨出部23は、前述の湾曲形状に限らず例えば、メンブラン31の上下面に形成する溝の大きさを異ならせる等、適宜変更してもよい。
【0063】
メンブラン31の下面は、第1挟着部25の内周縁部の上面に当接している。メンブラン31の偏膨出部23は、第1挟着部25の内側に張り出している。偏膨出部23の下面における下端部、および第1挟着部25の下面それぞれの軸方向の位置は、互いに同等になっている。メンブラン31の下面は、第1挟着部25の内周面と非接触となっている。メンブラン31は、第1挟着部25の上面、および第2挟着部38の内周部の下面それぞれにおける全域にわたって当接している。
なお、メンブラン31の下面を、第1挟着部25の内周縁部の上面から上方に離間させてもよい。メンブラン31の偏膨出部23を、第1挟着部25の内周面より上方に位置させてもよい。メンブラン31の下面を、第1挟着部25の内周面に接触させてもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置2によれば、メンブラン31に偏膨出部23が形成されているので、同一の押圧力が加えられたときのメンブラン31の膨出変形量が、中間液室35側に向けた膨出変形より主液室15側に向けた膨出変形の方が大きくなる。
したがって、リバウンド荷重が防振装置1に入力されると、メンブラン31が、偏膨出部23により主液室15側に向けて大きく膨出変形することで、発生する減衰力を低く抑えることができる。一方、バウンド荷重が防振装置1に入力されると、メンブラン31の中間液室35側に向けた膨出変形が、リバウンド荷重の入力時の主液室15側に向けた膨出変形と比べて小さくなり、主液室15の正圧が緩和しにくく、発生する減衰力が高くなる。
以上より、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力に対するバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力の比率を確実に高めることができる。
【0065】
また、偏膨出部23が、中間液室35側に向けて突となるように湾曲しているので、メンブラン31に同一の押圧力が加えられたときに、中間液室35側に向けた膨出変形より、主液室15側に向けた膨出変形が大きくなる構成を、容易かつ確実に実現することができる。
また、偏膨出部23が、第1挟着部25の内側に張り出しているので、同一の押圧力が加えられたときの、主液室15側に向けたメンブラン31の膨出変形を、中間液室35側に向けたメンブラン31の膨出変形よりも大きくする構成をより一層確実に実現することができる。
【0066】
また、偏膨出部23が、メンブラン31のうち、挟着部材39により軸方向に挟み込まれた外周縁部31aより径方向の内側に位置する本体部31bの全域にわたって一体に形成されているので、メンブラン31を主液室15側に向けて大きく膨出変形させることが可能になり、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、を大きく異ならせることができる。
また、メンブラン31が、第1挟着部25の内周縁部に当接しているので、バウンド荷重の入力時に、メンブラン31が第1挟着部25の内周縁部に衝突するのを抑制することが可能になり、異音の発生を確実に抑制することができる。また、メンブラン31が、第1挟着部25の内周縁部に当接していることから、比較的振幅の小さい振動であっても、バウンド荷重の入力時に高い減衰力を発生させることができる。
【0067】
次に、本発明の第3実施形態に係る防振装置3を、
図5および
図6を参照しながら説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0068】
ダイヤフラムリング28は、下側部材33の下端部から径方向の外側に向けて突出し、その上面に、本体部材34の下面が液密に当接している。ダイヤフラムリング28は、下側部材33と一体に形成されている。
外側フランジ部24は、本体部材34の上面における内周縁部から上方に向けて突出している。外側フランジ部24、および本体部材34それぞれの内周面は、面一となっている。
【0069】
さらに本実施形態では、主液室側通路21aにおける液体の流通抵抗が、中間液室側通路21bにおける液体の流通抵抗より低くなっている。図示の例では、中間液室側通路21bの流路断面積が、主液室側通路21aの流路断面積より小さくなっている。また、接続孔21cの開口面積が、中間液室側通路21bの流路断面積より小さくなっている。
【0070】
ここで、中間液室側通路21bおよび第2連通孔33bそれぞれの流通抵抗は、互いに同等にしてもよいし、互いに異ならせてもよい。
例えば、中間液室側通路21bの流通抵抗が、第2連通孔33bの流通抵抗より高い場合、第2連通孔33bを通過して中間液室側通路21bに進入したときの液体の流通抵抗が増大し、液体を副液室16から主液室15側に向けて流通させるリバウンド荷重の入力時に高い減衰力が発生する。
【0071】
また、接続孔21cおよび中間液室側通路21bそれぞれの流通抵抗を、互いに同等にしてもよいし、互いに異ならせてもよい。
例えば、接続孔21cの流通抵抗が、中間液室側通路21bの流通抵抗より高い場合、中間液室側通路21bを通過して接続孔21cに進入したときの液体の流通抵抗が増大し、リバウンド荷重の入力時に高い減衰力が発生する。
【0072】
また、主液室側通路21aおよび接続孔21cそれぞれの流通抵抗を、互いに同等にしてもよいし、互いに異ならせてもよい。
例えば、主液室側通路21aの流通抵抗が、接続孔21cの流通抵抗より高い場合、接続孔21cを通過して主液室側通路21aに進入したときの液体の流通抵抗が増大し、リバウンド荷重の入力時に高い減衰力が発生する。
【0073】
また、第1連通孔23bおよび主液室側通路21aそれぞれの流通抵抗を、互いに同等にしてもよいし、互いに異ならせてもよい。
例えば、第1連通孔23bの流通抵抗が、主液室側通路21aの流通抵抗より高い場合、主液室側通路21aを通過して第1連通孔23bに進入したときの液体の流通抵抗が増大し、リバウンド荷重の入力時に高い減衰力が発生する。
【0074】
ここで本実施形態では、主液室15は、第1オリフィス通路21における液体の流通方向において、主液室側通路21aおよび中間液室側通路21bのうち、液体の流通抵抗が低い主液室側通路21a側に位置している。
そして、本実施形態では、第2挟着部29よりも径方向の内側に向けて長く突出した第1挟着部27が、メンブラン37を主液室15側から支持し、第2挟着部29が、メンブラン37を中間液室35側から支持している。
【0075】
第2挟着部29は、外側フランジ部24と一体に形成され、外側フランジ部24から径方向の内側に向けて突出している。第2挟着部29の下面に、下側部材33の周壁部の上端開口縁が当接している。第2挟着部29の上面は、外側フランジ部24の上面より下方に位置している。なお、第2挟着部29の上面における外周縁部に、全周にわたって連続して延びる下環状溝が形成されている。
【0076】
ここで、メンブラン37は、円板状の本体部37bと、本体部37bより薄肉に形成されるとともに、本体部37bの上部から径方向の外側に向けて突出し、全周にわたって連続して延びる外周縁部37aと、を備える。
メンブラン37の本体部37bのうち、外周縁部37aより下方に位置する部分は、第2挟着部29の内側に挿入されている。メンブラン37の本体部37bのうち、外周縁部37aより下方に位置する部分の外周面(以下、メンブラン37の本体部37bの外周面37cという)と、第2挟着部29の内周面と、の間に径方向の隙間が設けられている。第2挟着部29の内周面、およびメンブラン37の本体部37bの外周面37cはそれぞれ、軸方向に延びている。第2挟着部29の内周面と、メンブラン37の本体部37bの外周面37cと、は略平行になっている。なお、第2挟着部38の内周面、およびメンブラン37の本体部37bの外周面37cを互いに傾斜させてもよい。
【0077】
第1挟着部27のうち、外周部は外側フランジ部24の上面に配置され、内周部がメンブラン37の上面を支持している。第1挟着部27の内周部の下面における外周縁部に、全周にわたって連続して延びる上環状溝が形成されている。この上環状溝は、第2挟着部29の下環状溝と軸方向で対向している。これらの上環状溝および下環状溝に、メンブラン37の外周縁部37aの前記係止突起が各別に係止されている。
【0078】
第1挟着部27において、第2挟着部29より径方向の内側に位置する部分は、メンブラン37の本体部37bの上面における外周部を支持している。第1挟着部27の内周部の内周縁部(以下、第1挟着部27の内周縁部という)において、メンブラン37が当接する下面は、径方向の内側に向かうに従い漸次、中間液室35から離れるように上方に向けて傾斜している。図示の例では、第1挟着部27の内周縁部の下面は、中間液室35側に向けて突の曲面状に形成されている。メンブラン37は、第2挟着部29の上面における全域にわたって当接している。
なお、第1挟着部27の内周縁部の下面は、前記中心軸線Oに直交する方向に延びる平坦面であってもよい。メンブラン37は、第1挟着部27の下面における全域にわたって当接してもよい。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置3によれば、第2挟着部29よりも径方向の内側に向けて長く突出した第1挟着部27が、メンブラン37を主液室15側から支持しているので、同一の押圧力が加えられたときのメンブラン37の膨出変形量は、中間液室35側に向けた膨出変形より主液室15側に向けた膨出変形の方が小さくなる。
すなわち、リバウンド荷重が防振装置2に入力されると、メンブラン37の主液室15側に向けた膨出変形が第1挟着部27により抑止され、主液室15の負圧が緩和しにくく、発生する減衰力が高くなる一方、バウンド荷重が防振装置2に入力されると、第2挟着部29が第1挟着部27よりも径方向の内側に突出していない分、メンブラン37の中間液室35側に向けた膨出変形が、リバウンド荷重の入力時の主液室15側に向けた膨出変形と比べて大きくなり、発生する減衰力を低く抑えることができる。
【0080】
また、主液室側通路21aにおける液体の流通抵抗が、中間液室側通路21bにおける液体の流通抵抗より低いので、リバウンド荷重の入力時に、副液室16の液体が、第2オリフィス通路22を通して中間液室35内に流入した後、中間液室側通路21bに流入したときに、主液室側通路21aに直接流入する場合と比べて、大きな抵抗が付与される。これにより、リバウンド荷重の入力時に高い減衰力を発生させることができる。
一方、主液室15の液体が、副液室16側に向けて第1オリフィス通路21を流通するときには、主液室側通路21aと中間液室側通路21bとで流通抵抗が互いに異なっていたとしても、両者が互いに連続して1つのオリフィス通路を構成しているので、液体がその境界部分を通過する際に生ずる抵抗を抑えることが可能になり、バウンド荷重の入力時に発生する減衰力を抑制することができる。
以上より、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力を、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力より確実に高めることが可能になり、これらの両減衰力の差を大きくし、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力に対するリバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力の比率を高めることができる。
【0081】
また、第1挟着部27の内周縁部において、メンブラン37が当接する下面が、径方向の内側に向かうに従い漸次、中間液室35から離れるように傾斜しているので、リバウンド荷重の入力時に、メンブラン37が、主液室15側に向けて膨出変形したときに、第1挟着部27の内周縁部に面接触しやすくなり、異音の発生を抑制することができるとともに、メンブラン37の耐久性を確保することができる。
【0082】
また、メンブラン37の本体部37bの外周面37cと、第2挟着部29の内周面と、の間に径方向の隙間が設けられているので、比較的振幅の小さい振動であっても、バウンド荷重の入力時に、メンブラン37を、中間液室35側に向けて円滑に膨出変形させることが可能になり、発生する減衰力を確実に低く抑えることができる。また、メンブラン37が、バウンド荷重の入力時に、中間液室35側に向けて過度に大きく膨出変形しようとしたときに、本体部37bの外周面37cを第2挟着部29の内周面に当接させることも可能になり、メンブラン37における外周縁部37aと本体部37bとの接続部分に大きな負荷が加わるのを防ぐことができる。
【0083】
また、中間液室35の前記横断面積が、第1オリフィス通路21の中間液室側通路21bの流路断面積より大きくなっているので、中間液室35の液体が中間液室側通路21bに流入したときに生ずる抵抗を確実に高めることが可能になり、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力を確実に高めることができる。
また、第1オリフィス通路21の中間液室側通路21bが、流路径より流路長が長い通路となっているので、この部分を流通する副液室16側からの液体に付与される抵抗が高められ、リバウンド荷重の入力時に発生する減衰力をより一層確実に高めることができる。
【0084】
次に、本発明の第4実施形態に係る防振装置4を、
図7および
図8を参照しながら説明する。
なお、この第4実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0085】
本実施形態では、偏膨出部36が、メンブラン37に同一の押圧力が加えられたときに、主液室15側に向けた膨出変形より、中間液室35側に向けた膨出変形を大きくさせるように形成されている。図示の例では、偏膨出部36は、主液室15側に向けて突となるように湾曲している。
【0086】
メンブラン37の上面は、第1挟着部27の内周部の内周縁部(以下、第1挟着部27の内周縁部という)の下面に当接している。メンブラン37の偏膨出部36は、第1挟着部27の内側に張り出している。偏膨出部36の上面における上端部、および第1挟着部27の上面それぞれの軸方向の位置は、互いに同等になっている。メンブラン37の上面は、第1挟着部27の内周部の内周面と非接触となっている。メンブラン37は、第1挟着部27の内周部の下面、および第2挟着部29の上面それぞれにおける全域にわたって当接している。
なお、メンブラン37の上面を、第1挟着部27の内周縁部の下面から下方に離間させてもよい。メンブラン37の偏膨出部36を、第1挟着部27の内周部の内周面より下方に位置させてもよい。メンブラン37の上面を、第1挟着部27の内周部の内周面に接触させてもよい。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置4によれば、メンブラン37に偏膨出部36が形成されているので、同一の押圧力が加えられたときのメンブラン37の膨出変形量が、主液室15側に向けた膨出変形より中間液室35側に向けた膨出変形の方が大きくなる。
したがって、バウンド荷重が防振装置2に入力されると、メンブラン37が、偏膨出部36により中間液室35側に向けて大きく膨出変形することで、発生する減衰力を低く抑えることができる。一方、リバウンド荷重が防振装置2に入力されると、メンブラン37の主液室15側に向けた膨出変形が、バウンド荷重の入力時の中間液室35側に向けた膨出変形と比べて小さくなり、主液室15の負圧が緩和しにくく、発生する減衰力が高くなる。
以上より、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力に対するリバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力の比率を確実に高めることができる。
【0088】
また、偏膨出部36が、主液室15側に向けて突となるように湾曲しているので、メンブラン37に同一の押圧力が加えられたときに、主液室15側に向けた膨出変形より、中間液室35側に向けた膨出変形が大きくなる構成を、容易かつ確実に実現することができる。
また、偏膨出部36が、第1挟着部27の内側に張り出しているので、同一の押圧力が加えられたときの、中間液室35側に向けたメンブラン37の膨出変形を、主液室15側に向けたメンブラン37の膨出変形よりも大きくする構成をより一層確実に実現することができる。
【0089】
また、偏膨出部36が、メンブラン37のうち、挟着部材39により軸方向に挟み込まれた外周縁部37aより径方向の内側に位置する本体部37bの全域にわたって一体に形成されているので、メンブラン37を中間液室35側に向けて大きく膨出変形させることが可能になり、バウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、リバウンド荷重の入力時に生ずる減衰力と、を大きく異ならせることができる。
また、メンブラン37が、第1挟着部27の内周縁部に当接しているので、リバウンド荷重の入力時に、メンブラン37が第1挟着部27の内周縁部に衝突するのを抑制することが可能になり、異音の発生を確実に抑制することができる。また、メンブラン37が、第1挟着部27の内周縁部に当接していることから、比較的振幅の小さい振動であっても、リバウンド荷重の入力時に高い減衰力を発生させることができる。
【0090】
次に、本発明の第5実施形態に係る防振装置5を、
図9を参照しながら説明する。
なお、この第5実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0091】
本実施形態では、第1挟着部25、およびメンブラン31の外周縁部31aのうちの少なくとも一方に、他方に向けて突出して当接する複数の支持突起41が形成されている。図示の例では、支持突起41は、メンブラン31の外周縁部31aの下面に形成されている。支持突起41は、第1挟着部25の上面に当接しているメンブラン31の下面のうち、防振装置5に荷重が入力され、メンブラン31が、主液室15側に向けて変形若しくは変位したときに、第1挟着部25の上面から上方に離間可能な部分に形成されている。支持突起41は、下方に向けて突の曲面状に形成されている。複数の支持突起41は、メンブラン31に、径方向および周方向に等間隔をあけて配置されている。
【0092】
なお、支持突起41は、
図10に示されるように、第1挟着部25の上面に形成されてもよい。また、支持突起41は、メンブラン31の下面に当接している第1挟着部25の上面のうち、防振装置5に荷重が入力され、メンブラン31が、主液室15側に向けて変形若しくは変位したときに、メンブラン31の下面が上方に離間可能な部分に形成されてもよい。また、支持突起41は、第1挟着部25、およびメンブラン31の外周縁部31aの双方に形成されてもよい。
【0093】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置5によれば、第1挟着部25、およびメンブラン31の外周縁部31aのうちの少なくとも一方に、他方に向けて突出して当接する複数の支持突起41が形成されているので、防振装置5に荷重が入力され、メンブラン31が、中間液室35側に向けて変形若しくは変位したときに、メンブラン31の外周縁部31aが、広範囲にわたって一気に、第1挟着部25に衝突するのを抑制することが可能になり、発生する打音を小さく抑えることができる。
【0094】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0095】
例えば前記実施形態では、第1オリフィス通路21が周方向に延び、また、第2オリフィス通路22が軸方向に延びているが、本発明はこれに限られない。
また、前記実施形態では、支持荷重が作用することで主液室15に正圧が作用する圧縮式の防振装置1〜5について説明したが、主液室15が鉛直方向下側に位置し、かつ副液室16が鉛直方向上側に位置するように取り付けられ、支持荷重が作用することで主液室15に負圧が作用する吊り下げ式の防振装置にも適用可能である。
また、本発明に係る防振装置1〜5は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、建設機械に搭載された発電機のマウントにも適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントにも適用することも可能である。
【0096】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。