特許第6978985号(P6978985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978985
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】ガス流量検定ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01F 25/00 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   G01F25/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-129784(P2018-129784)
(22)【出願日】2018年7月9日
(65)【公開番号】特開2020-8428(P2020-8428A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2020年2月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】城山 直也
【審査官】 羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/102319(WO,A1)
【文献】 特開平06−066622(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/004856(WO,A1)
【文献】 特開2018−014479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 25/00
G05D 7/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体制御機器と真空ポンプとを接続する流路と、前記流路に設けられた出力弁と、前記流体制御機器の出力から前記出力弁の入力までの前記流路に設けられた圧力計及び温度計と、を備え、前記出力弁を閉弁した後、前記圧力計が計測する圧力が所定の第1圧力値から所定の第2圧力値に変化する時間、前記温度計が計測する流体の温度、及び前記流体制御機器の出力から前記出力弁の入力までの前記流路の容積から、前記流体制御機器の精度を検定するガス流量検定ユニットにおいて、
前記流路の圧力を高めるための圧力上昇手段を備えること、
前記出力弁が並列に2個配置され、そのうちの1つの出力弁の出口側に、前記圧力上昇手段としてのオリフィスが配置されていること、
を特徴とするガス流量検定ユニット。
【請求項2】
請求項に記載のガス流量検定ユニットにおいて、
前記オリフィスの絞りが可変であること、
を特徴とするガス流量検定ユニット。
【請求項3】
流体制御機器と真空ポンプとを接続する流路と、前記流路に設けられた出力弁と、前記流体制御機器の出力から前記出力弁の入力までの前記流路に設けられた圧力計及び温度計と、を備え、前記出力弁を閉弁した後、前記圧力計が計測する圧力が所定の第1圧力値から所定の第2圧力値に変化する時間、前記温度計が計測する流体の温度、及び前記流体制御機器の出力から前記出力弁の入力までの前記流路の容積から、前記流体制御機器の精度を検定するガス流量検定ユニットにおいて、
前記流路の圧力を高めるための圧力上昇手段を備えること、
前記出力弁が1個のみ配置され、出口側に絞りが可変な、前記圧力上昇手段としてのオリフィスが配置されていること、
を特徴とするガス流量検定ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御機器と真空ポンプの間に配設され、出力弁を閉弁した後、圧力計が計測する圧力が所定の第1圧力値から所定の第2圧力値に変化する時間、流体の温度、及び流体制御機器の出力から前記出力弁の入力までの容積から、流体制御機器の精度を検定するガス流量検定ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、真空チャンバに供給するプロセスガスの流量を流体制御機器(具体的には、熱式または圧力式のマスフローコントローラ(MFC))で精確にコントロールしている。プロセスガスは、腐食性が高いため、マスフローコントローラで使用されている細管の内径が腐食により変化して、流量の計測精度が低下する問題がある。それを防止するため、本出願人が提案した特許文献1の、出力弁を閉弁した後、圧力計が計測する圧力が所定の第1圧力値から所定の第2圧力値に変化する時間、流体の温度、及びマスフローコントローラの出力から出力弁の入力までの容積から、マスフローコントローラの精度を検定するガス流量検定ユニットが使用されている。
このガス流量検定ユニットによれば、1sccm〜1000sccmの流量のガスを流すためのマスフローコントローラの流量検定を正確に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5222935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
近年、ガス流量検定を、1工程(例えば、10分位の時間)毎に行う場合がある。それは、プロセスガスの流量に変化がないことを確認するためである。
【0005】
例えば、図9に示すように、ガス入力ポート50を上流にして、マスフローコントローラ20と、流量制御弁21と、ガス流量検定ユニット60と、真空ポンプ30と、が直列に接続される。ガス流量検定ユニット60は検定流路4を有し、当該検定流路4に、上流側から入力弁102と、出力弁108と、が直列に接続され、入力弁102と、出力弁108と、の間に圧力計103と、温度計104と、が配置される。
検定対象となるガス(例えば窒素ガス)は、ガス入力ポート50から入力され、出力弁108が有するダイヤフラム弁体(図示せず)から上流側に検定ガスを充填することができる構成となっている。
【0006】
上記構成のもとで、流量制御弁21と、入力弁102と、出力弁108と、を開弁し、真空ポンプ30に、マスフローコントローラ20を介して設定流量の検定対象となるガスを流す。ガス流量が安定した後に、出力弁108を閉弁し、圧力計103と温度計104とにより測定されたタンク体積Vにおける圧力上昇値と温度変化値とからガス流量を算出し、設定流量と比較することで、ガス流量検定が行われる。
【0007】
ところで、ガス流量検定ユニット60で使用する圧力計103は、高精度なものが必要で、圧力計測定精度範囲(図5中PからPの範囲)が狭く設定されている場合が多い。
そのため、タンク体積Vにおける圧力が、出力弁108を閉じた時点(図5中t)での圧力Pから、既定の測定開始圧力Pに達するまでの待ち時間(図5中t)が発生している。
比較的大流量である1000sccmを流すマスフローコントローラの検定では、待ち時間(t)は、1秒程度であるが、比較的小流量である10sccmを流すマスフローコントローラの検定においては、出力弁108を閉じた時点(図5中t)での圧力Pが、1000sccmを流した場合の圧力よりも低くなるため、待ち時間(t)が60〜90秒と長くなる場合がある。
出力弁108を閉じた時点(図5中t)での圧力Pに合わせ、圧力計測定精度範囲の下限であるPを下げることで、待ち時間tを短くすることも可能と考えられるが、圧力計103が高精度で圧力測定することができなくなるため、圧力計測定精度範囲を変更することはできない。
【0008】
圧力計103の測定時間(図5中t)は、流量により変化するが、例えば流量が10sccmの場合は120秒程度であり、待ち時間tが90秒もかかると、検定に要する時間が210秒(t及びtの合計)と長くなる。検定作業は、1工程(約10分)完了する毎に行うため、待ち時間tによる時間ロスが累積し、半導体生産効率への影響が大きいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、比較的小流量である10sccmを流すマスフローコントローラの流量検定を行う場合でも、所定の圧力に達するまでの待ち時間の短いガス流量検定ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のガス流量検定ユニットは、次のような構成を有している
【0011】
流体制御機器と真空ポンプとを接続する流路と、流路に設けられた出力弁と、流体制御機器の出力から出力弁の入力までの流路に設けられた圧力計及び温度計と、を備え、出力弁を閉弁した後、圧力計が計測する圧力が所定の第1圧力値から所定の第2圧力値に変化する時間、温度計が計測する流体の温度、及び流体制御機器の出力から出力弁の入力までの流路の容積から、流体制御機器の精度を検定するガス流量検定ユニットにおいて、前記流路の圧力を高めるための圧力上昇手段を備えること、出力弁が並列に2個配置され、そのうちの1つの出力弁の出口側に、圧力上昇手段としてのオリフィスが配置されていること、を特徴とする。
)()に記載のガス流量検定ユニットにおいて、オリフィスの絞りが可変であること、を特徴とする。
【0012】
流体制御機器と真空ポンプとを接続する流路と、流路に設けられた出力弁と、流体制御機器の出力から出力弁の入力までの流路に設けられた圧力計及び温度計と、を備え、出力弁を閉弁した後、圧力計が計測する圧力が所定の第1圧力値から所定の第2圧力値に変化する時間、温度計が計測する流体の温度、及び流体制御機器の出力から出力弁の入力までの流路の容積から、流体制御機器の精度を検定するガス流量検定ユニットにおいて、前記流路の圧力を高めるための圧力上昇手段を備えること、出力弁が1個のみ配置され、出口側に絞りが可変な、圧力上昇手段としてのオリフィスが配置されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガス流量検定ユニットは、上記構成を有することにより次のような作用・効果を有する。
(1)流体制御機器と真空ポンプの間に配設され、出力弁を閉弁した後、圧力計が計測する圧力が所定の第1圧力値から所定の第2圧力値に変化する時間、流体の温度、及び流体制御機器の出力から出力弁の入力までの容積から、流体制御機器の精度を検定するガス流量検定ユニットにおいて、出力弁を流れる流量を変化させる流量変化手段を備えること、を特徴とするので、検定対象となるガスの流量を、流量変化手段により小流量にすることができる。流量変化手段の上流側と下流側とで圧力勾配が生じ、流量変化手段から上流側の流路における圧力を、流量変化手段を備えない場合と比べて高くすることができる。タンク体積における圧力が高くなった分、ガス流量検定を行う場合において、出力弁を閉弁した後、タンク体積における圧力が既定の測定開始圧力に達するまでの待ち時間が短くなる。
【0014】
例えば、流路内径が4mmである場合に、流量変化手段として絞りが0.8mm程度のオリフィスを用いれば、該オリフィスにより流量が小流量となり、オリフィスの上流側と下流側とで圧力勾配が生じ、検定対象となるガスの流量が例えば10sccmという小流量であっても、オリフィスから上流側の流路における圧力を、測定開始圧力Pに近づけることができる。よって、検定対象となるガスの流量が10sccmの場合であっても、タンク体積における圧力が規定の測定開始圧力に達するまでの待ち時間が、検定対象となるガスの流量が1000sccmの場合の待ち時間と同等の約1秒となるため、検定に要する時間の削減を図ることができる。
【0015】
従来技術においては、10sccmという小流量である場合、検定作業に要する時間は、約210秒かかる場合がある(出力弁108を閉じた時点での圧力Pから、既定の測定開始圧力Pに達するまでの待ち時間t90秒と、測定時間120秒の合計(図5および9参照))。
近年、プロセスガスの流量に変化がないことを確認するために、ガス流量検定を、1工程(例えば、10分位の時間)毎に行う場合がある。検定を行う頻度が多いことから、待ち時間tによる時間ロスが累積し、半導体生産効率への影響が大きかった。しかし、待ち時間tが1000sccmを流した場合と同等の約1秒に削減できれば、検定作業に要する時間は、合計で121秒となり(待ち時間1秒と測定時間120秒の合計)、従来と比べて約4割の時間削減となるため、半導体生産の効率も向上される。
【0016】
(2)(1)に記載のガス流量検定ユニットにおいて、出力弁が並列に2個配置され、そのうちの1つの出力弁の出口側にオリフィスが配置されていること、を特徴とするので、ガス流量検定ユニットは、オリフィスにより、オリフィスの上流側と下流側とで圧力勾配が生じる流路と、オリフィスを有さず圧力勾配が生じない通常の流路と、を有することとなる。よって、検定対象となるガスの流量によって、流路を使い分けることができる。例えば、ガス流量検定を行うとき、流量が10sccmと小流量である場合には、オリフィスを有する側の流路を用いれば、出力弁を閉弁した後、タンク体積における圧力が既定の測定開始圧力に達するまでの待ち時間が短くなる。一方、流量が比較的大流量である1000sccmである場合には、オリフィスを有さない通常の流路を用いれば良い。
【0017】
(3)(2)に記載のガス流量検定ユニットにおいて、オリフィスの絞りが可変であること、を特徴とするので、並列された出力弁のうち、オリフィスを有する側の出力弁が配置された流路においては、検定対象となるガスの流量に応じて、オリフィスの絞りを調整することができる。例えば検定対象となるガスの流量が10sccmよりも更に小流量の数sccmである場合であっても、数sccmに対応する径までオリフィスの絞りを縮小させることで、出力弁を閉弁した後、タンク体積における圧力が既定の測定開始圧力に達するまでの待ち時間が長くなることがなく、検定作業の効率が向上される。
【0018】
(4)(1)に記載のガス流量検定ユニットにおいて、出力弁が1個のみ配置され、出口側に絞りが可変なオリフィスが配置されていること、を特徴とするので、検定対象となるガスの流量に応じて、オリフィスの絞りを調整することができる。オリフィスを有する側の流路とオリフィスを有さない側の流路の2つ流路を設けることなく、1つの流路で10sccm〜1000sccmの範囲内の流量や、10sccmよりも更に小流量であっても、流量に応じてオリフィスの絞りを調整することで、出力弁を閉弁した後、タンク体積における圧力が既定の測定開始圧力に達するまでの待ち時間を一定にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るガス流量検定ユニットを用いた流量検定システムの回路図である。
図2】第1実施形態に係るガス流量検定ユニットの制御構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係るガス流量検定ユニットの容積測定プログラムの動作を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係るガス流量検定ユニットの流量検定プログラムの動作を示すフローチャートである。
図5】ガス流量検定実施時のタンク体積の圧力上昇を示す図である。
図6】第2実施形態に係るガス流量検定ユニットを用いた流量検定システムの回路図である。
図7】第2実施形態に係るガス流量検定ユニットの制御構成を示すブロック図である。
図8】第2実施形態に係るガス流量検定ユニットの流量検定プログラムの動作を示すフローチャートである。
図9】従来技術によるガス流量検定ユニットを用いた流量検定システムの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のガス流量検定ユニット1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1に示すように、ガス入力ポート50を上流にして、マスフローコントローラ20と、流量制御弁21と、ガス流量検定ユニット1と、真空ポンプ30と、が直列に接続される。
【0022】
ガス流量検定ユニット1は検定流路4を有し、当該検定流路4に、上流側から入力弁102と、第1出力弁105と、が直列に接続され、入力弁102と、第1出力弁105との間に圧力計103と、温度計104と、が配置される。また、第2出力弁106と、オリフィス107とが第1出力弁105に対して並列に配置されている。なお、オリフィス107の絞りは、固定であっても、可変可能であっても良い。
検定対象となるガス(例えば窒素ガス)は、ガス入力ポート50から入力され、第1出力弁105および第2出力弁106が有するダイヤフラム(図示せず)から上流側に検定ガスを充填することができる構成となっている。
【0023】
次に、ガス流量検定ユニット1の制御手段40について説明する。 図2は、ガス流量検定ユニット1の制御構成を示すブロック図である。制御手段40は、周知のマイクロコンピュータであって、中央演算処理装置(CPU)41と、入出力インターフェース42と、ROM43と、RAM44から構成される。
【0024】
入出力インターフェース42は、入力弁102、圧力計103、温度計104、第1出力弁105、第2出力弁106、流量制御弁21に接続されている。制御手段40は、入出力インターフェース42を介して、入力弁102、第1出力弁105、第2出力弁106、流量制御弁21に対して、制御信号を送ることで、弁の開閉動作を制御する。また、制御手段40は、入出力インターフェース42を介して、圧力計103、温度計104から測定データを受信する。
【0025】
RAM44には、データ記憶部441が設けられている。データ記憶部441には、測定開始圧力Pタンク体積Vが記憶される(図3中S14及びS15参照)。タンク体積Vとは、検定流路4の体積と、検定ガスライン6の体積を合計した体積をいい、ガス流量検定ユニット1を製造して外部システムに取り付けた後に事後的に測定されてデータ記憶部441に記憶される。
【0026】
ROM43には、各種プログラムやデータが記憶されている。例えば、容積測定プログラム431や、流量検定プログラム432が記憶されている。容積測定プログラム431は、流路体積Vとタンク体積Vを測定するものである。また、流量検定プログラム432は、入力弁102と第1出力弁と第2出力弁の弁開閉動作を適宜制御し、検定流路4の圧力と温度を圧力計103と温度計104で検出し、検出結果に基づいてマスフローコントローラ20の流量検定を行うものである。
【0027】
次にガス流量検定ユニット1の動作について、図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。
ガス流量検定ユニット1は、例えば、作業者が流量検定開始を指示するボタンを押すことでガス流量検定ユニット1の制御手段40が、容積測定プログラム431(図3中S11からS15)と、流量検定プログラム432(図4中S21からS34)をROM43から読み出して実行する。また、流量検定開始時点では、第1出力弁105と、第2出力弁106とは開弁状態にある。
【0028】
第1に、制御手段40は、タンク体積Vを測定するために容積測定プログラム431(S11からS15)を実行する。
まず、システムを初期化して先の流量検定で取得したデータを消去する(S11)。そして、配管内をパージし、余分なガスを除去する(S12)。
【0029】
次に、制御手段40は、タンク体積Vが測定済みか否かを判断する(S13)。タンク体積Vが測定済みでないと判断した場合には(S13:NO)、タンク体積Vを測定し(S14)、測定したタンク体積Vをデータ記憶部441に記憶し(S15)、容積測定プログラムを終了する。一方で、タンク体積が測定済みであると判断した場合には(S13:YES)、そのまま容積測定プログラム431を終了する。
【0030】
容積測定プログラム431終了後、制御手段40は、流量検定プログラム432を実行する。
まず、マスフローコントローラ20を介して検定対象となるガスを設定流量で流す(S21)。
【0031】
設定流量が10sccm以上である場合(S22:YES)、制御手段40は、第2出力弁106を閉弁する(S23)。第2出力弁106を閉弁することで、検定対象となるガスは開弁されている第1出力弁105側の流路を流れる。
【0032】
そして、制御手段40は、マスフローコントローラ20の流量が安定したら、第1出力弁105を閉じる(S24)。第1出力弁105を閉じることで検定対象となるガスを検定流路4と検定ガスライン6に充填し、タンク体積Vにおける圧力を上昇させる。
【0033】
そして、制御手段40は、圧力計103が検出した圧力値が、データ記憶部441に記憶されている既定の測定開始圧力P以上であるか否かを判断する(S25)。検出した圧力値が既定の測定開始圧力P未満である場合には(S25:NO)、圧力計103が既定の測定開始圧力Pを測定するまで待機する。流路内径が4mmであって、ガスの流量が1000sccmの場合、第1出力弁105が閉じられてから、圧力計103が規定の測定開始圧力Pを測定するまでの時間は約1秒程度である。
圧力計103が既定の測定開始圧力Pを測定したら(S25:YES)、Pを測定してから測定時間t後の第2圧力値Pを測定する(S26)。なお、本実施例における測定時間tは約120秒である。
【0034】
第2圧力値Pの測定後、制御手段40は、下記数1に記載する気体の状態方程式に基づいて絶対流量Qを算出する(S27)。すなわち、下記数1の「V」にタンク体積V(m)を、「ΔP」に第2圧力値PからPを減算した圧力変動値ΔP(Pa)を、「Δt」に測定時間t(s)を、「T」に温度計104の測定するガス温度(K)を、Rは気体定数(J/mol・K)を代入し、絶対流量Qを算出する。
【0035】
【数1】
【0036】
そして、制御手段40は、絶対流量Qと設定流量を比較して流量検定を行う(S28)。流量検定とは、具体的には、制御手段40は、現在の設定流量とS27で算出した絶対流量Qとの誤差を求め、その誤差が正常範囲である場合には、検定が終了した旨を知らせる表示を行う。また、制御手段40は、現在の設定流量と絶対流量Qの誤差が正常範囲と異常範囲との間の許容範囲である場合には、マスフローコントローラ20の設定流量を補正し、検定が終了した旨を知らせる表示を行う。更に、制御手段40は、現在の設定流量と絶対流量Qの誤差が異常範囲である場合には、マスフローコントローラ20の交換を指示する表示を行う。その後、流量検定プログラム432は終了し、流量検定が完了される。
【0037】
一方で、S21において流されるガスの設定流量が10sccm以下である場合(S22:NO)、制御手段40は、第1出力弁105を閉弁する(S29)。第1出力弁105を閉弁することで、検定対象となるガスは開弁されている第2出力弁106側の流路を流れる。よって、検定対象となるガスはオリフィス107を通ることとなる。
【0038】
そして、制御手段40は、マスフローコントローラ20の流量が安定したら、第2出力弁106を閉じる(S30)。第2出力弁106を閉じることで検定対象となるガスを検定流路4と検定ガスライン6に充填し、タンク体積Vにおける圧力を上昇させる。
【0039】
そして、制御手段40は、圧力計103が検出した圧力値が、データ記憶部441に記憶されている既定の測定開始圧力P以上であるか否かを判断する(S31)。検出した圧力値が既定の測定開始圧力P未満である場合には(S31:NO)、圧力計103が既定の測定開始圧力Pを測定するまで待機する。
【0040】
S29において、検定対象となるガスがオリフィス107を通ることで、流量が小流量となり、オリフィス107の上流側と下流側とで圧力勾配が生じるため、図5に示すように、オリフィス107より上流側の流路における圧力Pが、従来のオリフィス107を備えない場合の圧力Pと比べて高く維持されることとなる。オリフィス107より上流側の流路における圧力が維持されている分、S30において第2出力弁106を閉弁した時点(図5中のt)から、タンク体積Vにおける圧力が既定の測定開始圧力Pに達するまでの待ち時間tは、従来のオリフィス107を備えない場合の待ち時間tと比べて短くなる。
【0041】
例えば、流路内径が4mmである場合に、オリフィス107の絞りを0.8mm程度とすれば、検定対象となるガスの流量が例えば10sccmという小流量であっても、オリフィス107の上流側と下流側とで圧力勾配が生じるため、オリフィス107より上流側の流路における圧力を、測定開始圧力Pに近づけることができる。よって、検定対象となるガスの流量が10sccmの場合であっても、タンク体積における圧力が規定の測定開始圧力に達するまでの待ち時間が、検定対象となるガスの流量が1000sccmの場合の待ち時間と同等となるため、検定に要する時間の削減を図ることができ、検定作業の効率が向上される。
【0042】
また、オリフィス107の絞りを可変可能なものとすれば、検定対象となるガスの流量に応じで調整可能である。例えば検定対象となるガスの流量が10sccmよりも更に小流量の数sccmである場合であっても、数sccmに対応する径(約0.2から0.3mm)までオリフィス107の絞りを縮小させることで、オリフィス107より上流側の流路における圧力を、測定開始圧力Pに近づけることができる。よって、検定対象となるガスの流量が数sccmのように小流量であっても、第2出力弁106を閉弁した後、タンク体積Vにおける圧力が既定の測定開始圧力に達するまでの待ち時間が長くなることがなく、検定作業の効率が向上される。
【0043】
S30において第2出力弁106を閉弁した後、圧力計103が既定の測定開始圧力Pを測定したら(S31:YES)、Pを測定してから測定時間t後の第2圧力値Pを測定する(S32)。なお、本実施例における測定時間tは約120秒である。
【0044】
第2圧力値Pの測定後、制御手段40は、上記数1に記載する気体の状態方程式に基づいて絶対流量Qを算出する(S33)。計算方法は、上述のS27における計算と同様である。そして、制御手段40は、絶対流量Qと設定流量を比較して流量検定を行う(S34)。流量検定の具体的な方法は上述のS28と同様である。流量検定が行われた後、流量検定プログラム432は終了する。
【0045】
以上説明したように、第1実施形態のガス流量検定ユニット1によれば、
(1,2)マスフローコントローラ20と真空ポンプ30の間に配設され、第1及び第2出力弁105,106を閉弁した後、圧力計103が計測する圧力が既定の測定開始圧力Pから所定の第2圧力値Pに変化する時間t、流体の温度、及びマスフローコントローラ20の出力から第1および第2出力弁105,106の入力までの容積から、マスフローコントローラ20の精度を検定するガス流量検定ユニット1において、第1および第2出力弁105,106が並列に配置され、第2出力弁106の出口側に検定対象となるガスが小流量時に、圧力勾配を乗じさせるオリフィス107が配置されていること、を特徴とする。圧力勾配が生じることで、オリフィス107の上流側の流路における圧力を、オリフィス107を備えない場合と比べて高くすることができる。オリフィス107の上流側の流路における圧力が高くなった分、ガス流量検定を行う場合において、第2出力弁106を閉弁した後、タンク体積Vにおける圧力が既定の測定開始圧力Pに達するまでの待ち時間が短くなる。
【0046】
例えば、流路内径が4mmである場合に、オリフィス107の絞りを0.8mm程度とすれば、検定対象となるガスの流量が例えば10sccmという小流量であっても、オリフィス107の上流側と下流側とで圧力勾配が生じるため、オリフィス107の上流側の流路における圧力を、測定開始圧力Pに近づけることができる。よって、検定対象となるガスの流量が10sccmの場合であっても、タンク体積Vにおける圧力が規定の測定開始圧力Pに達するまでの待ち時間が、検定対象となるガスの流量が1000sccmの場合の待ち時間と同等となるため、検定に要する時間の削減を図ることができ、検定作業の効率が向上される。
【0047】
また、第1および第2出力弁105,106が並列に配置され、第2出力弁106の出口側に検定対象となるガスの流量が小流量時に圧力勾配を生じさせるオリフィス107が配置されているため、ガス流量検定ユニット1は、オリフィス107の上流側と下流側とで圧力勾配が生じる流路と、オリフィス107を有さず圧力勾配が生じない通常の流路と、を有することとなる。よって、検定対象となるガスの流量によって、流路を使い分けることができる。例えば、ガス流量検定を行うとき、流量が10sccmと小流量である場合には、オリフィス107を有する側の流路を用いれば、出力弁を閉弁した後、タンク体積Vにおける圧力が既定の測定開始圧力Pに達するまでの待ち時間が短くなる。一方、流量が比較的大流量である1000sccmである場合には、オリフィス107を有さない通常の流路を用いれば良い。
【0048】
(3)(1,2)に記載のガス流量検定ユニット1において、オリフィス107の絞りが可変であること、を特徴とするので、並列された第1及び第2出力弁105,106のうち、オリフィス107を有する側の第2出力弁106が配置された流路においては、検定対象となるガスの流量に応じて、オリフィス107の絞りを調整することができる。例えば検定対象となるガスの流量が10sccmよりも更に小流量の数sccmである場合であっても、数sccmに対応する径までオリフィス107の絞りを縮小させることで、第2出力弁106を閉弁した後、タンク体積Vにおける圧力が既定の測定開始圧力Pに達するまでの待ち時間が長くなることがなく、検定作業の効率が向上される。
【0049】
(第2実施形態)
続いて、本発明のガス流量検定ユニット1の第2実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図6に示すように、ガス入力ポート50を上流にして、マスフローコントローラ20と、流量制御弁21と、ガス流量検定ユニット1と、真空ポンプ30と、が直列に接続される。
【0050】
ガス流量検定ユニット1は検定流路4を有し、当該検定流路4に、上流側から入力弁102と、出力弁108と、絞りが可変可能なオリフィス107と、が直列に接続され、入力弁102と、出力弁108と、の間に圧力計103と、温度計104と、が配置される。
検定対象となるガスは、ガス入力ポート50から入力され、出力弁108が有するダイヤフラム弁体(図示せず)から上流側に検定対象となるガスを充填することができる構成となっている。
【0051】
次に、第2実施形態に係るガス流量検定ユニット1の制御手段40について説明する。図7は、ガス流量検定ユニット1の制御構成を示すブロック図である。
入出力インターフェース42は、入力弁102、圧力計103、温度計104、オリフィス107、出力弁108、流量制御弁21に接続されている。
制御手段40は、入出力インターフェース42を介して、入力弁102、出力弁108、流量制御弁21に対して、制御信号を送ることで、弁の開閉動作を制御する。また、制御手段40は、入出力インターフェース42を介して、オリフィス107に制御信号を送ることで、検定対象となるガスの流量に応じてオリフィス107の絞りを調整する。制御手段40は、入出力インターフェース42を介して、圧力計103、温度計104から測定データを受信する。
【0052】
その他、CPU41、ROM43、RAM44については、第1実施形態と同様である。
【0053】
次にガス流量検定ユニット1の動作について、図3及び図8のフローチャートを用いて説明する。
ガス流量検定ユニット1は、例えば、作業者が流量検定開始を指示するボタンを押すことでガス流量検定ユニット1の制御手段40が、容積測定プログラム431(図3中S11からS15)および流量検定プログラム432(図8中S41からS47)をROM43から読み出して実行する。
【0054】
第1に、制御手段40は、タンク体積Vを測定するために容積測定プログラム431(図3中S11からS15)を実行する。実行される動作は、第1実施形態と同様である。
【0055】
容積測定プログラムが終了すると、制御手段40は、流量検定プログラム432を実行する。
まず、制御手段40は、マスフローコントローラ20を介して検定対象となるガスを設定流量で流す(S41)。マスフローコントローラ20を介して、検定対象となるガスが設定流量で流されると、制御手段40は、設定流量に応じてオリフィスの絞りを調整する(S42)。そして、制御手段40は、マスフローコントローラ20の流量が安定するのを待ち、流量が安定したと判断すると出力弁108を閉じる(S43)。出力弁108を閉じることで検定対象となるガスを検定流路4と検定ガスライン6に充填し、タンク体積Vにおける圧力を上昇させる。
【0056】
そして、圧力計103が検出した圧力値がデータ記憶部441に記憶されている既定の測定開始圧力P以上であるか否かを判断するステップから、流量検定を行うステップまで(S44乃至S47)は、第1実施形態における図4中のS25乃至S28と同様である。
【0057】
以上説明したように、第2実施形態のガス流量検定ユニット1によれば、マスフローコントローラ20と真空ポンプ30の間に配設され、出力弁108を閉弁した後、圧力計103が計測する圧力が既定の測定開始圧力Pから所定の第2圧力値Pに変化する時間t、流体の温度、及びマスフローコントローラ20の出力から出力弁108の入力までの容積に基づいて、マスフローコントローラ20の精度を検定するガス流量検定ユニット1において、出力弁108が1個のみ配置され、出口側に絞りが可変であって、検定対象となるガスの流量を減少させるオリフィス107が配置されていること、を特徴とするので、検定対象となるガスの流量に応じて、オリフィス107の絞りを調整することができる。出力弁を並列に2個配置し、オリフィスを有する側の流路と、オリフィスを有さない側の流路を分けることなく、1つの流路で10sccm〜1000sccmの範囲内の流量や、10sccmよりも更に小流量であっても、流量に応じてオリフィス107の絞りを調整することで、出力弁108を閉弁した後、タンク体積Vにおける圧力が既定の測定開始圧力Pに達するまでの待ち時間を一定にすることが可能である。
【0058】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、第1および第2実施形態では、ガス流量検定時の測定時間tを120秒程度と規定する方法をとっているが、測定時間tを規定するのではなく、第2圧力値Pを規定し、規定された第2圧力値Pまで達する時間を測定する方法をとってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ガス流量検定ユニット
20 マスフローコントローラ
30 真空ポンプ
103 圧力計
104 温度計
105 第1出力弁
106 第2出力弁
107 オリフィス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9