特許第6978994号(P6978994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タツタ電線株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6978994-転写フィルム 図000003
  • 特許6978994-転写フィルム 図000004
  • 特許6978994-転写フィルム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6978994
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】転写フィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20211125BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20211125BHJP
【FI】
   H05K9/00 W
   B32B7/025
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-160623(P2018-160623)
(22)【出願日】2018年8月29日
(62)【分割の表示】特願2018-27711(P2018-27711)の分割
【原出願日】2018年2月20日
(65)【公開番号】特開2019-145769(P2019-145769A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅村 滋和
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−86805(JP,A)
【文献】 特開2013−216065(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/077406(WO,A1)
【文献】 特開2014−112576(JP,A)
【文献】 特開2016−150473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型剤が塗布された樹脂層形成面に樹脂層を形成し、前記樹脂層の表面を前記樹脂層形成面の凹凸により艶消し表面とする転写フィルムであって、
前記転写フィルムの前記樹脂層形成面は、最大谷深さ(Sv)が1μm以上、5μm以下、最大高さ(Sz)が2μm以上、9m以下であり、最小自己相関長さ(Sal)が8.5μm以上、20μm以下である、転写フィルム。
【請求項2】
前記転写フィルムの前記樹脂層形成面における最大谷深さ(Sv)の変動係数及び最大高さ(Sz)の変動係数は、0.2以下である、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項3】
前記転写フィルムの前記樹脂層形成面における突出谷部とコア部を分離する負荷面積率(Smr2)は90%以上である、請求項1又は2に記載の転写フィルム。
【請求項4】
微粒子を含有している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路を電磁波から保護するために、電磁波シールドフィルムが用いられている。電磁波シールドフィルムは、導電性接着剤層と絶縁保護層とを有している。電磁波シールドフィルムは、基材フィルムの表面に絶縁保護層及び導電性接着剤層を順次形成して製造することが一般的である。基材フィルムは、電磁波シールドフィルムがプリント配線基板に接着された後、リフロー工程の前に除去される。この場合、基材フィルムは、その表面状態が絶縁保護層に転写される転写フィルムとして機能する。また、電磁波シールドフィルムがプリント配線基板に接着されるまで絶縁保護層を保護する保護フィルムとしても機能する。
【0003】
絶縁保護層の表面を艶消し面とするために、転写フィルムの表面には凹凸を設けることが一般的である。凹凸を設けることにより、転写フィルムと絶縁保護層との密着性が高くなり、転写フィルムを剥離する際に要する力が大きくなる。また、電磁波シールドフィルムをプリント配線基板に接着する際には、150℃〜200℃程度の温度で、数MPaの圧力を加えることが一般的である。このような温度と圧力にさらされると、転写フィルムの剥離がさらに困難になり、転写フィルムが破断する場合もある。
【0004】
剥離の際の破断を防ぐために、転写フィルム自体を破れにくくすることが検討されている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−185659号公報
【特許文献2】特開2016−97522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、転写フィルム自体が破れにくくなったとしても、剥離の際に大きな力が必要であれば生産性が低下してしまう。また、絶縁保護層の側が損傷してしまうおそれもある。転写フィルムを容易に剥離できるようにするには、転写フィルムと絶縁保護層との相互作用を制御することが望まれる。
【0007】
本開示の課題は、転写フィルムの剥離が容易な電磁波シールドフィルムを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の電磁波シールドフィルムの一態様は、絶縁保護層と、絶縁保護層の表面に設けられた転写フィルムと、絶縁保護層の転写フィルムと反対側に設けられた導電性接着剤層とを備え、転写フィルムの絶縁保護層側の面は、最大谷深さ(Sv)が1μm以上、6μm以下、最大高さ(Sz)が2μm以上、10μm以下である。
【0009】
電磁波シールドフィルムの一態様において、転写フィルムの絶縁保護層側の面における最大谷深さ(Sv)の変動係数及び最大高さ(Sz)の変動係数は、0.2以下とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の電磁波シールドフィルムによれば、転写フィルムの剥離が容易となり、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る電磁波シールドフィルムを示す断面図である。
図2】電磁波シールドフィルムの変形例を示す断面図である。
図3】一実施形態に係る電磁波シールドフィルムを用いたシールドプリント配線基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、本実施形態の電磁波シールドフィルムは、絶縁保護層112と、絶縁保護層112の表面に設けられた転写フィルム115と、絶縁保護層112の転写フィルム115と反対側に設けられた導電性接着剤層111とを備えている。なお、図2に示すように、絶縁保護層112と導電性接着剤層111との間にシールド層113を設けることもできる。
【0013】
本願発明者らは、転写フィルム115の絶縁保護層112側の面における最大谷深さ(Sv)を6μm以下、好ましくは5μm以下とし、最大高さ(Sz)を10μm以下、好ましくは9μm以下とすることにより、容易に剥離できる転写フィルム115となることを見いだした。
【0014】
一方、算術平均高さ(Sa)が小さくても剥離が困難なフィルムが存在することを見いだした。これは、平均値としては同程度になる凹凸であっても、ピンポイントで深い谷又は高い山があると、その部分において密着性が高くなり、剥離が困難になるのではないかと考えられる。このため、転写フィルム115のSv及びSzを制御することが重要になる。なお、転写フィルム115のSa、Sv及びSzは、実施例において説明する方法により測定することができる。
【0015】
剥離を容易にする観点からは、転写フィルム115の絶縁保護層112側の面における最大谷深さが小さい方が好ましいが、絶縁保護層112の表面を艶消し面とする観点及びプリント配線基板に固定する前に転写フィルム115が剥がれてしまわないようにする観点からは、Svが1μm以上、好ましくは2μm以上で、Szが2μm以上、好ましくは3μm以上である。
【0016】
転写フィルム115の剥離強度は、容易に剥離する観点から、好ましくは5.0N/50mm以下、より好ましくは1.5N/50mm以下であり、使用前に転写フィルム115が剥離しないようにする観点から、好ましくは0.2N/50mm以上、より好ましくは0.5N/50mm以上である。なお、転写フィルム115の剥離強度は、実施例に示す方法により測定することができる。
【0017】
剥離をより容易にする観点から、転写フィルム115の絶縁保護層112側の面におけるSvの変動係数及びSzの変動係数(CV)は、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下とする。ここでいう変動係数とは、実施例に示すように10点の算術平均及び標準偏差から求めた値である。
【0018】
また、剥離をさらに容易にする観点から、Sv及びSz以外の、表面性状を表すパラメータも制御することが好ましい。例えば、尖り度(Sku)は、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上で、好ましくは8.5以下、より好ましくは7.5以下である。最小自己相関長さ(Sal)は、好ましくは7.5μm以上、より好ましくは8.5μm以上で、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは15.0以下である。表面性状のアスペクト比(Str)は、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上で、好ましくは0.75以下である。突出谷部高さ(Svk)は、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上で、好ましくは0.75以下、より好ましくは0.70以下である。突出谷部とコア部を分離する負荷面積率(Smr2)は、好ましくは90.0%以上、より好ましくは94.0%以上である。これらの表面性状を表すパラメータも、実施例において示す方法により測定することができる。
【0019】
転写フィルム115の材質は、特に限定されず、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート又はポフィフェニレンサルファイド等 を用いることができる。転写フィルム115の厚さは、特に限定されないが、剥離を容易にする観点から、好ましくは25μm以上、好ましくは100μm以下である。
【0020】
転写フィルム115の少なくとも一方の面は、Sv及びSzを所定の値とするために、サンドブラスター処理等が行われていてもよい。また、微粒子を含有させることにより、Sv及びSzを所定の値とすることもできる。転写フィルム115に添加する微粒子は、特に限定されず、例えば不定形シリカ(コロイドシリカ)、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、二酸化チタン、カオリン、及び合成ゼオライト等の無機粒子、並びに架橋ポリスチレン粒子、及び架橋アクリル粒子等の有機粒子を用いることができる。
【0021】
転写フィルム115と、絶縁保護層112との間には離型剤層(図示せず)を設けることができる。離型剤層は、シリコン系又は非シリコン系の離型剤を、転写フィルム115の絶縁保護層112側の表面に塗布することにより形成することができる。離型剤層を形成する場合、その厚さは、数μm〜10数μm程度とすることができる。
【0022】
本実施形態において、絶縁保護層112は、充分な絶縁性を有し、導電性接着剤層111及び必要な場合にはシールド層113を保護できれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は活性エネルギー線硬化性樹脂等を用いて形成することができる。
【0023】
熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、イミド系樹脂、又はアクリル系樹脂等を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリアミド系樹脂又はアルキッド系樹脂等を用いることができる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等を用いることができる。保護層は、単独の材料により形成されていても、2種以上の材料から形成されていてもよい。
【0024】
絶縁保護層112には、着色剤に限らず必要に応じて硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、及びブロッキング防止剤等の1つ以上が含まれていてもよい。
【0025】
絶縁保護層112は、材質又は硬度若しくは弾性率等の物性が異なる2層以上の積層体であってもよい。例えば、硬度が低い外層と、硬度が高い内層との積層体とすれば、外層がクッション効果を有するため、電磁波シールドフィルム101をプリント配線基板102に加熱加圧する工程においてシールド層113に加わる圧力を緩和できる。このため、プリント配線基板102に設けられた段差によってシールド層113が破壊されることを抑えることができる。
【0026】
絶縁保護層112は、転写フィルム115の表面に絶縁保護層用組成物を塗布することにより形成することができる。絶縁保護層用組成物は、例えば絶縁保護層用の樹脂に適量の溶媒を加えて調製すればよい。
【0027】
絶縁保護層112の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、好ましくは1μm以上、より好ましくは4μm以上、そして好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下とすることができる。絶縁保護層112の厚さを1μm以上とすることにより導電性接着剤層111及びシールド層113を充分に保護することができる。絶縁保護層112の厚さを20μm以下とすることにより、電磁波シールドフィルム101の弾性率及び破断伸びを所定の値とすることが容易となる。
【0028】
シールド層113を設ける場合、シールド層113は、金属箔、蒸着膜及び導電性フィラー等により形成することができる。
【0029】
金属箔は、特に限定されないが、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、及び亜鉛等のいずれか、又は2つ以上を含む合金からなる箔とすることができる。
【0030】
金属箔の厚さは、特に限定されないが、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。金属箔の厚さが0.5μm以上であると、シールドプリント配線基板に10MHz〜100GHzの高周波信号を伝送したときに、高周波信号の減衰量を抑制することができる。また、金属箔の厚さは12μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下がさらに好ましい。金属層の厚さが12μm以下であると、原材料コストを抑えることができると共に、シールドフィルムの判断伸びが良好となる。
【0031】
蒸着膜は、特に限定されないが、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、及び亜鉛等を蒸着して形成することができる。蒸着には、電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学気相堆積(CVD)法、又はメタルオーガニック堆積(MOCVD)法等を用いることができる。
【0032】
蒸着膜の厚さは、特に限定されないが、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。金属蒸着膜の厚さが0.05μm以上であると、シールドプリント配線基板において電磁波シールドフィルムが電磁波をシールドする特性に優れる。また、金属蒸着膜の厚さは0.5μm未満が好ましく、0.3μm未満であることがより好ましい。金属蒸着膜の厚さが0.5μm未満であると、電磁波シールドフィルムの耐屈曲性が優れ、プリント配線基板に設けられた段差によってシールド層が破壊されることを抑えることができる。
【0033】
導電性フィラーの場合、導電性フィラーを配合した溶剤を、絶縁保護層112の表面に塗布して乾燥することにより、シールド層113を形成することができる。導電性フィラーは、金属フィラー、金属被覆樹脂フィラー、カーボンフィラー及びそれらの混合物を使用することができる。金属フィラーとして、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、及び金コートニッケル粉等を用いることができる。これら金属粉は、電解法、アトマイズ法、還元法により作成することができる。金属粉の形状は、球状、フレーク状、繊維状、樹枝状等が挙げられる。
【0034】
本実施形態においてシールド層113の厚さは、求められる電磁シールド効果及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよいが、金属箔である場合には、破断伸びを確保する観点から12μm以下とすることが好ましい。
【0035】
本実施形態において、導電性接着剤層111は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等の樹脂成分と、導電性フィラーとを含んでいる。
【0036】
導電性接着剤層111が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂として例えばスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、イミド系樹脂、及びアクリル系樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
導電性接着剤層111が熱硬化性樹脂を含む場合、熱硬化性樹脂として例えばフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びアルキッド系樹脂等を用いることができる。活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等を用いることができる。これらの組成物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
熱硬化性樹脂は、例えば反応性の第1の官能基を有する第1樹脂成分と、第1の官能基と反応する第2樹脂成分とを含む。第1の官能基は、例えばエポキシ基、アミド基、又は水酸基等とすることができる。第2の官能基は、第1の官能基に応じて選択すればよく、例えば第1官能基がエポキシ基である場合、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基及びアミノ基等とすることができる。具体的には、例えば第1樹脂成分をエポキシ樹脂とした場合には、第2樹脂成分としてエポキシ基変性ポリエステル樹脂、エポキシ基変性ポリアミド樹脂、エポキシ基変性アクリル樹脂、エポキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性アクリル樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。これらの中でも、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。また、第1樹脂成分が水酸基である場合には、第2樹脂成分としてエポキシ基変性ポリエステル樹脂、エポキシ基変性ポリアミド樹脂、エポキシ基変性アクリル樹脂、エポキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性アクリル樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。これらの中でも、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、及びウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0039】
熱硬化性樹脂は、熱硬化反応を促進する硬化剤を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂が第1の官能基と第2の官能基とを有する場合、硬化剤は、第1の官能基及び第2の官能基の種類に応じて適宜選択することができる。第1の官能基がエポキシ基であり、第2の官能基が水酸基である場合には、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、及びカチオン系硬化剤等を使用することができる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。この他、任意成分として消泡剤、酸化防止剤、粘度調整剤、希釈剤、沈降防止剤、レベリング剤、カップリング剤、着色剤、及び難燃剤等を含んでいてもよい。
【0040】
導電性フィラーは、特に限定されないが、例えば、金属フィラー、金属被覆樹脂フィラー、カーボンフィラー及びそれらの混合物を使用することができる。金属フィラーとしては、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、及び金コートニッケル粉等を挙げることができる。これら金属粉は、電解法、アトマイズ法、又は還元法等により作製することができる。中でも銀粉、銀コート銅粉及び銅粉のいずれかが好ましい。
【0041】
導電性フィラーは、フィラー同士の接触の観点から、平均粒子径が好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。導電性フィラーの形状は特に限定されず、球状、フレーク状、樹枝状、又は繊維状等とすることができる。
【0042】
導電性フィラーの含有量は、用途に応じて適宜選択することができるが、全固形分中で好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。埋め込み性の観点からは、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。また、異方導電性を実現する場合には、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
【0043】
導電性接着剤層111は、例えば絶縁保護層112又は絶縁保護層112の上に形成されたシールド層113の上に、導電性接着剤層用組成物を塗布することにより形成することができる。導電性接着剤層用組成物は、導電性接着剤層用の樹脂及びフィラーに適量の溶剤を加えて調製すればよい。
【0044】
導電性接着剤層111の厚さは、埋め込み性を制御する観点から、1μm〜50μmとすることが好ましい。
【0045】
なお、必要に応じて、導電性接着剤層111の表面に剥離可能な保護用フィルムを貼り合わせてもよい。
【0046】
本実施形態の電磁波シールドフィルム101は、図3に示すようにプリント配線基板102と組み合わせてシールド配線基板103とすることができる。電磁波シールドフィルム101は、シールド層113を有するものであってもよい。
【0047】
プリント配線基板102は、例えば、ベース部材122と、ベース部材122の上に設けられたグランド回路125を含むプリント回路を有している。ベース部材122の上には接着剤層123により絶縁フィルム121が接着されている。絶縁フィルム121にはグランド回路125を露出する開口部が設けられている。グランド回路125の露出部分には金めっき層等の表面層が設けられていてもよい。なお、プリント配線基板102は、フレキシブル基板であってもリジッド基板であってもよい。
【0048】
電磁波シールドフィルム101をプリント配線基板102に接着する際には、導電性接着剤層111が開口部の上に位置するように、電磁波シールドフィルム101をプリント配線基板102上に配置する。そして、所定の温度(例えば120℃)に加熱した2枚の加熱板(図示せず)により、電磁波シールドフィルム101とプリント配線基板102とを、上下方向から挟んで所定の圧力(例えば0.5MPa)で短時間(例えば5秒間)押圧する。これによって、電磁波シールドフィルム101はプリント配線基板102に仮止めされる。
【0049】
続いて、2枚の加熱板の温度を、上記仮止め時よりも高温の所定の温度(例えば、170℃)とし、所定の圧力(例えば3MPa)で所定時間(例えば30分)加圧する。これによって、電磁波シールドフィルム101をプリント配線基板102に固定できる。加圧した際に、導電性接着剤層111が開口部に十分に埋め込まれることにより、電磁波シールドフィルム101が必要とする強度及び導電性を実現することができる。
【0050】
電磁波シールドフィルム101をプリント配線基板102に固定した後、転写フィルム115を剥離する。この後、部品実装のためのはんだリフローを行う。本実施形態の電磁波シールドフィルム101は、電磁波シールドフィルム101をプリント配線基板102に固定した後で、転写フィルム115を容易に剥離することができるので、生産効率を向上さ競ることができる。
【実施例】
【0051】
以下に、本開示の電磁波シールドフィルムについて実施例を用いてさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0052】
<電磁波シールドフィルムの作製>
所定の転写フィルムの表面に離型剤を塗布した。離型剤を塗布した転写フィルムの表面に、絶縁保護層用組成物を、ワイヤーバーを用いて塗布し、加熱乾燥することで、絶縁保護層を形成した。次に、絶縁保護層の上に導電性接着剤層用組成物をワイヤーバーにより塗布した後、100℃×3分の乾燥を行い、電磁波シールドフィルムを作製した。
【0053】
絶縁保護層用組成物は、厚さが2μmのポリエステル系透明樹脂のハードコート層と、厚さが3μmのカーボンブラック含有エポキシ系黒色樹脂のソフトコート層との2層構造とした。導電性接着剤層用組成物は、リン系難燃剤含有エポキシ系樹脂に導電性微粒子として平均粒子径5μmの樹枝状銀被覆銅紛を添加したものとした。導電性接着剤層の厚さは15μmとした。
【0054】
<表面性状の測定>
表面性状に関するパラメータは、レーザーマイクロスコープ(VK-X210、キーエンス(株)社製」、レンズ倍率50倍)を用い、ISO25178に準拠して測定した。測定は、5.0cm×5.0cmに切り抜いた未使用の転写フィルムの絶縁保護層を形成する面に対して行った。面内の任意の10箇所に対して測定を行い、その算術平均値を測定値として採用した。また、標準偏差(SD)及び変動係数(CV)を算出した。
【0055】
<剥離強度の測定>
電磁波シールドフィルムに、プレス機を用いて、温度:170℃、時間:30分、圧力:2〜3MPaの条件でプレスを行った。電磁波シールドフィルムが常温に戻った後、表面の剥離フィルムを剥離強度テスター((株)パルメック製、PFT50S)を用い、転写フィルムの剥離強度を測定した。測定は常温で、引張速度1000mm/分、剥離角度170°の条件で行った。測定は、10回行い、最小値、最大値及び平均値を求めた。
【0056】
(実施例1)
転写フィルムとして厚さが50μmのPETフィルムを用いた。転写フィルムを剥離した後の絶縁保護層の表面は艶消し表面となっていた。転写フィルムの絶縁保護層形成面におけるSvは3.1μm、Szは8.0μm、Saは0.69μmであった。Svの変動係数は0.15、Szの変動係数は0.02であった。剥離強度の最小値は0.51N/50mm、最大値は0.75N/50mm、平均値は0.63N/50mmであった。
【0057】
(実施例2)
転写フィルムとして厚さが50μmのPETフィルムを用いた。転写フィルムを剥離した後の絶縁保護層の表面は艶消し表面となっていた。転写フィルムの絶縁保護層形成面におけるSvは2.5μm、Szは6.6μm、Saは0.41μmであった。Svの変動係数は0.12、Szの変動係数は0.08であった。剥離強度の最小値は0.60N/50mm、最大値は0.76N/50mm、平均値は0.68N/50mmであった。
【0058】
(実施例3)
転写フィルムとして厚さが50μmのPETフィルムを用いた。転写フィルムを剥離した後の絶縁保護層の表面は艶消し表面となっていた。転写フィルムの絶縁保護層形成面におけるSvは5.9μm、Szは9.6μm、Saは0.69μmであった。Svの変動係数は0.07、Szの変動係数は0.09であった。剥離強度の最小値は0.98N/50mm、最大値は1.50N/50mm、平均値は1.25N/50mmであった。
【0059】
(比較例1)
転写フィルムとして厚さが50μmのPETフィルムを用いた。転写フィルムを剥離した後の絶縁保護層の表面は艶消し表面となっていた。転写フィルムの絶縁保護層形成面におけるSvは6.8μm、Szは11.4μm、Saは0.48μmであった。Svの変動係数は0.43、Szの変動係数は0.40であった。剥離強度の最小値は7.0N/50mm、最大値は10N/50mmを越えており測定できなかった。
【0060】
(比較例2)
転写フィルムとして厚さが50μmのPETフィルムを用いた。転写フィルムを剥離した後の絶縁保護層の表面は光沢がある表面となっていた。転写フィルムの絶縁保護層形成面におけるSvは0.8μm、Szは1.3μm、Saは0.06μmであった。Svの変動係数は0.23、Szの変動係数は0.13であった。剥離強度の最小値は0.08N/50mm、最大値は0.15N/50mm、平均値は0.10N/50mmであった。
【0061】
表1に各実施例及び比較例の結果をまとめて示す。Sv、Szの他に、尖り度(Sku)、最小自己相関長さ(Sal)、表面性状のアスペクト比(Str)、突出谷部高さ(Svk)及び突出谷部とコア部を分離する負荷面積率(Smr2)についてもデータを記載する。
【0062】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示の電磁波シールドフィルムは、転写フィルムの剥離が容易であり、生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0064】
101 電磁波シールドフィルム
102 プリント配線基板
103 シールド配線基板
111 導電性接着剤層
112 絶縁保護層
113 シールド層
115 転写フィルム
121 絶縁フィルム
122 ベース部材
123 接着剤層
125 グランド回路
図1
図2
図3