特許第6979025号(P6979025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979025
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】手術システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20211125BHJP
【FI】
   A61B34/30
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-544662(P2018-544662)
(86)(22)【出願日】2016年10月14日
(86)【国際出願番号】JP2016080565
(87)【国際公開番号】WO2018070040
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2019年3月19日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業フレキシブル内視鏡手術ロボット」「未来医療を実現する先端医療機器・システムの研究開発/先端医療機器の開発/高い安全性と更なる低侵襲化及び高難度治療を可能にする軟性内視鏡手術システムの研究開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】特許業務法人ワンディーIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】菅 和俊
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 卓也
(72)【発明者】
【氏名】日村 義彦
【審査官】 家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−528946(JP,A)
【文献】 特開2009−183698(JP,A)
【文献】 特開2013−223751(JP,A)
【文献】 特開2013−138965(JP,A)
【文献】 特開2015−077466(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0250546(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、先端側に術具が設けられた可撓性シャフトを含む複数の手術器具と、
前記複数の手術器具を支持する支持台と、
前記手術器具の前記可撓性シャフトを内部に挿入可能であって可撓性を有する複数のインナーチューブと、前記複数のインナーチューブを内部に挿入可能であって体腔に挿入されるアウターチューブとを含む医療用器具と、
前記アウターチューブを把持する把持部と、前記医療用器具の位置および向きを調整可能とする少なくとも1つの関節部を有し且つ前記把持部を一定位置に固定支持する支持部とを含む把持機構と、を備え
前記把持部は、
前記アウターチューブを内部に挿入可能な開口部と、
前記開口部の径の大きさを変更可能な調整機構とを含む、手術システム。
【請求項2】
前記アウターチューブは可撓性を有し、
各前記手術器具は、前記術具を駆動する手術器具駆動機構をさらに含む、請求項1に記載の手術システム。
【請求項3】
前記手術器具駆動機構と連結され、前記手術器具駆動機構を前記可撓性シャフトの軸周りに回転させる第1の外部モータをさらに備える、請求項2に記載の手術システム。
【請求項4】
前記手術器具駆動機構と連結され、前記手術器具駆動機構を前記可撓性シャフトの軸方向に摺動させる第2の外部モータをさらに備える、請求項2または請求項3に記載の手術システム。
【請求項5】
前記手術器具駆動機構は、ワイヤを介して前記術具と連結されて前記術具を駆動するモータを内蔵している、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の手術システム。
【請求項6】
前記調整機構は、前記開口部に対して着脱可能な調整部材であり、前記調整部材の前記開口部への着脱により、前記開口部の径の大きさを変更可能である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の手術システム。
【請求項7】
前記調整機構は、前記開口部の中心へ向かって突出可能に形成され且つ突出量を変更可能な爪部である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の手術システム。
【請求項8】
前記把持部は、互いに結合可能な複数の構成部材を含み、
前記開口部は、前記複数の構成部材が結合されることにより形成され、
前記把持機構は、さらに、前記複数の構成部材が結合された状態を固定するための固定部材を含む、請求項から請求項のいずれか1項に記載の手術システム。
【請求項9】
前記把持部は、環形状である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の手術システム。
【請求項10】
前記支持部は、前記関節部、および前記関節部を介して連結されている複数のアーム部を有する継手を含む、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の手術システム。
【請求項11】
前記支持部は、さらに、前記継手と前記把持部とを接続する接続部を含む、請求項10に記載の手術システム。
【請求項12】
前記接続部は、棒形状であり、前記把持部の外周面から延設されている、請求項11に記載の手術システム。
【請求項13】
前記支持部は、前記関節部、および前記関節部を介して連結されている複数のアーム部を有する継手と、前記継手と前記把持部とを接続する接続部と、を含み、
前記固定部材は、前記開口部を介して前記接続部と対向している、請求項に記載の手術システム。
【請求項14】
前記医療用器具は、腹腔鏡用手術に用いられる器具である、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用器具を把持する把持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡、鉗子またはメス等の処置具を体腔内へ挿入して、体腔内の手術が行われている。このような手術を行うための医療用器具として、内視鏡と、該内視鏡の観察下において使用される前記処置具と、前記内視鏡と前記処置具とを夫々内部に進退自在に挿入可能である複数のインナーチューブと、前記インナーチューブを挿入可能であるアウターチューブとを備える内視鏡治療装置が知られている(たとえば、国際公開第2015/107994号(特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/107994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなインナーチューブを挿入可能なアウターチューブを有する医療用器具を用いて手術を行う場合、当該医療用器具は、体表に留置されたトロカーにアウターチューブが挿入されることにより装着されたり、特許文献1に記載のようにマウスピースを通して装着されたり、助手等の人手により保持されたりしていた。そのため、当該医療用器具の装着または保持には慣れが必要であり、手振れまたは位置ずれ等が生じる可能性があった。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、インナーチューブを挿入可能なアウターチューブを有する医療用器具を用いた処置をより良好に行うことのできる把持機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のある局面に係る把持機構は、手術器具を内部に挿入可能であり、可撓性を有するインナーチューブと、1または複数の前記インナーチューブを内部に挿入可能であり、体腔に挿入されるアウターチューブと、を備える医療用器具を把持する把持機構であって、前記アウターチューブを把持する把持部と、前記把持部を固定支持する支持部とを備え、前記支持部は、前記医療用器具の位置および向きを調整可能とする少なくとも1つの関節部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インナーチューブを挿入可能なアウターチューブを有する医療用器具を用いた処置をより良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る手術システムの構成を示す図である。
図2図1における医療用器具および把持機構の構成を拡大して示した斜視図である。
図3】アウターチューブの内部にインナーチューブが挿入されている状態を示す斜視図である。
図4図3におけるIV−IV線に沿った断面を示す断面斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係るインナーチューブの構成を示す斜視図である。
図6図5におけるVI−VI線に沿った断面を示す断面図である。
図7】手術器具の構成例を概略的に示す図である。
図8】手術器具の先端側の構成を詳細に示す図である。
図9】本発明の実施の形態に係るインナーチューブ駆動機構の構成を示す斜視図である。
図10】制御器の構成例を示すブロック図である。
図11】第1操作部としてのハンドコントロールの構成例を示す図である。
図12】第2操作部の構成例を示す図である。
図13】インナーチューブの傾きの角度を示す図である。
図14】本発明の実施の形態に係る把持機構を示す斜視図である。
図15図14に示す把持機構における把持部の開状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0010】
(1)本発明の実施の形態に係る把持機構は、手術器具を内部に挿入可能であり、可撓性を有するインナーチューブと、1または複数の前記インナーチューブを内部に挿入可能であり、体腔に挿入されるアウターチューブと、を備える医療用器具を把持する把持機構であって、前記アウターチューブを把持する把持部と、前記把持部を固定支持する支持部とを備え、前記支持部は、前記医療用器具の位置および向きを調整可能とする少なくとも1つの関節部を有する。
【0011】
このような構成により、把持部に把持された医療用器具の位置および向きを任意に調整することができる。したがって、インナーチューブを挿入可能なアウターチューブを有する医療用器具を用いた処置をより良好に行うことができる。
【0012】
(2)好ましくは、前記把持部は、前記アウターチューブを内部に挿入可能な開口部が形成され、前記開口部の径の大きさが変更可能な調整機構を含む。
【0013】
このような構成により、たとえば、医療用器具が挿入される場所に応じて外径の大きさの異なるアウターチューブが使用される場合であっても、使用されるアウターチューブに応じて開口部の径の大きさを変更することにより、これらのアウターチューブをそれぞれ把持することができる。
【0014】
(3)より好ましくは、前記調整機構は、前記開口部に対して着脱可能な調整部材であり、前記調整部材の着脱により、前記開口部の径の大きさを変更可能である。
【0015】
このような構成により、多くの種類の開口部の径の大きさに対応することができる。
【0016】
(4)より好ましくは、前記調整機構は、前記開口部の中心へ向かって突出可能に形成され、突出量を変更可能な爪部である。
【0017】
このような構成により、部材を多く用いることなく、開口部の径の大きさを容易に変更することができる。
【0018】
(5)好ましくは、前記医療用器具は、腹腔鏡用手術に用いられる器具である。
【0019】
腹腔鏡用手術の場合、たとえば、医療用器具は、患者の体表に形成された切開部から体腔へ挿入されるため、口腔などの自然孔から挿入される場合と比較して、医療用器具の位置および向きが固定されにくい。このため、医療用器具を上記のように把持する把持機構は、腹腔鏡用手術に用いられる医療用器具を把持する場合に特に有用である。
【0020】
(6)好ましくは、前記アウターチューブの内部には、前記インナーチューブの挿入を案内するガイド部が設けられている。
【0021】
このような構成により、アウターチューブの内部へのインナーチューブの挿入を容易に行うことができる。また、アウターチューブの内部にインナーチューブが挿入された状態において、医療用器具の位置または向きを変更した場合であっても、インナーチューブとアウターチューブとの位置関係を保つことができる。
【0022】
(7)好ましくは、前記把持部は、環形状である。
【0023】
このような構成により、把持部の位置または向きを変更した場合であっても、把持部が他の器具または作業者等と接触する可能性を低く抑えることができる。
【0024】
(8)好ましくは、前記支持部は、複数のアーム部が前記関節部を介して連結されている継手を含む。
【0025】
このような構成により、医療用器具の位置および向きのより細かい調整を行うことができる。
【0026】
(9)より好ましくは、前記支持部は、さらに、前記継手と前記把持部とを接続する接続部を含む。
【0027】
このような構成により、複雑な構成を要することなく、医療用器具を任意の位置および向きに把持する把持機構を実現することができる。
【0028】
(10)より好ましくは、前記接続部は、棒形状であり、前記把持部の外周面から延設されている。
【0029】
このような構成により、接続部の構造体への接続作業を容易に行うことができる。
【0030】
(11)好ましくは、前記把持部は、互いに結合可能な複数の構成部材を有し、前記複数の構成部材が結合されることにより、前記アウターチューブを内部に挿入可能な開口部が形成され、前記把持機構は、さらに、前記複数の構成部材が結合された状態を固定するための固定部材を備える。
【0031】
このような構成により、たとえば、複数の構成部材の結合を解除して開口部の径を大きくすることにより、アウターチューブの着脱を容易に行うことができる。また、上記のように、固定部材により複数の構成部材が結合された状態を固定することができるため、アウターチューブをより確実に把持することができる。
【0032】
(12)好ましくは、前記支持部は、さらに、継手、および前記継手と前記把持部とを接続する接続部を含み、前記固定部材と、前記接続部とは、前記開口部を介して対向している。
【0033】
このような構成により、たとえば、医療用器具の向きを変更するために、接続部を軸として把持部を回転させた場合であっても、固定部材の位置が大きく変化することがない。このため、医療用器具の向きに関わらず、固定部材が他の器具または作業者等と接触する可能性を低く抑えることができる。
【0034】
また、本発明の実施の形態に係る医療用器具は、手術器具を内部に挿入可能であり、操作要素の動作に応じて屈曲するインナーチューブと、1または複数の前記インナーチューブを内部に挿入可能であり、体腔に挿入されるアウターチューブと、前記操作要素を電動制御するインナーチューブ駆動機構とを備える。
【0035】
このような構成により、インナーチューブを直接人手によって屈曲させることなく、インナーチューブ駆動機構の動作によってインナーチューブを屈曲させることができるため、より正確かつ容易にインナーチューブの屈曲を行うことができる。また、たとえば、インナーチューブ内へ手術器具を挿入するために、インナーチューブを直線状に変形させる場合において、インナーチューブを正確に直線状にすることができるため、手術器具の挿入を容易に行うことができる。したがって、インナーチューブを挿入可能なアウターチューブを有する医療用器具を用いた処置をより良好に行うことができる。
【0036】
好ましくは、前記インナーチューブ駆動機構は、駆動指令信号を受信し、受信した前記駆動指令信号に基づいて前記操作要素を電動制御する。
【0037】
このような構成により、遠隔からインナーチューブを屈曲させることが可能であるため、たとえば、患者から離れた場所にいる術者が、手術器具の操作に加えて、さらに、インナーチューブの屈曲を操作可能となり、操作性を向上させることができる。
【0038】
より好ましくは、前記駆動指令信号は、遠隔配置された遠隔操作装置によって与えられる。
【0039】
このような構成により、たとえば術者が、遠隔操作装置を操作することでインナーチューブを屈曲させることができる。
【0040】
より好ましくは、前記駆動指令信号は、前記インナーチューブの傾きを示す。
【0041】
このような構成により、たとえば、駆動指令信号において傾きを指定することにより、インナーチューブを任意の傾きに屈曲させることができる。
【0042】
好ましくは、前記インナーチューブ駆動機構はモータを含み、前記モータにより前記操作要素が電動制御される。
【0043】
このような構成により、モータの回転を利用して、インナーチューブを容易に屈曲させることができる。また、たとえばモータの回転を調整することにより、インナーチューブの傾きを段階的に変更することができる。
【0044】
好ましくは、インナーチューブ駆動機構は、前記操作要素が接続されたギアを含む。
【0045】
このような構成により、ギアを回転させて操作要素を動作させるという簡単な構成により、インナーチューブを正確かつ容易に屈曲させることができる。
【0046】
より好ましくは、前記操作要素はワイヤであり、前記インナーチューブ駆動機構は、駆動指令信号を受信し、受信した前記駆動指令信号に基づいて、前記モータによりギアを駆動させることにより、前記ワイヤの引き込みまたは送り出しを行う。
【0047】
このような構成により、より簡単な構成でインナーチューブを正確かつ容易に屈曲させることができる。
【0048】
好ましくは、前記手術器具は、多関節部を備え、前記多関節部は、前記手術器具が前記インナーチューブに挿入された状態において、前記インナーチューブの屈曲方向とは反対の方向に屈曲可能である。
【0049】
このような構成により、手術器具の可動域を広くすることができるため、当該手術器具の先端に設けられた術具の手術箇所に対する位置および向きを任意に変更することができる。
【0050】
本発明の実施の形態に係る手術システムは、前記医療用器具の前記アウターチューブを把持する把持部、および前記把持部を一定位置に固定支持する支持部を含む把持機構と、前記医療用器具とを備える。
【0051】
インナーチューブ駆動機構を備える医療用器具は、重量が増すため、従来のようなカニューラまたは人手で当該医療用器具を把持することは困難であることから、上記のように、医療用器具のアウターチューブを把持する把持機構を採用することは、特に有用である。
【0052】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0053】
[全体の概略構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る手術システム201の構成を示す図である。
【0054】
図1に示すように、手術システム201は、術者Wが手術器具1および医療用器具101を遠隔的に操作することによって、治療台111上の患者Pの体内に挿入した手術器具1により低侵襲手術を行う遠隔手術システムである。
【0055】
手術器具1は、たとえば治療台111に取り付けられた支持台113に支持される。手術器具1は、細長く形成された可撓性シャフトを備え、先端側に多関節で連結される術具を備える。
【0056】
手術器具1、医療用器具101、および操作部(遠隔操作装置)5は、制御器4に電気的に接続される。操作部5は、術者Wにより操作されると、制御器4を介して手術器具1および医療用器具101に動作指令を与える。これにより、手術器具1および医療用器具101を遠隔操作することができる。
【0057】
図2は、図1における医療用器具101および把持機構102の構成を拡大して示した斜視図である。
【0058】
図2を参照して、医療用器具101は、内視鏡手術等に用いられる器具であって、手術器具1が挿入される1または複数のインナーチューブ11と、アウターチューブ12と、インナーチューブ駆動機構103とを備える。医療用器具101のインナーチューブ11に、手術器具1の先端側に設けられた可撓性シャフト2および術具22が挿入される。
【0059】
医療用器具101は、たとえば腹腔鏡内手術が行われる場合、患者の体表に形成された切開部Xから体腔へ挿入される。なお、医療用器具101は、切開部Xから挿入される代わりに、口腔などの自然孔から患者の体内へ挿入されてもよい。すなわち、医療用器具101は、腹腔鏡内手術に限らず、自然開口部越経管腔的内視鏡手術などに用いられてもよい。
【0060】
インナーチューブ11は、筒形状であり、可撓性を有する。また、インナーチューブ11は、インナーチューブ駆動機構103に含まれる操作要素の動作に応じて屈曲する。アウターチューブ12は、インナーチューブ11の外径よりも内径が大きい筒形状であり、可撓性を有する。また、アウターチューブ12は、内部に1または複数のインナーチューブ11が挿入される。また、アウターチューブ12は、たとえば外径の大きさの異なる複数種類が用意されている。
【0061】
具体的には、腹腔鏡内手術が行われる場合、一般的に外径の大きさが20mm〜40mmであるアウターチューブ12が使用される。また、自然開口部越経管腔的内視鏡手術が行われる場合、一般的に外径の大きさが20mm程度のアウターチューブ12が使用される。
【0062】
インナーチューブ駆動機構103は、インナーチューブ11を屈曲させるための操作要素を電動制御する。
【0063】
把持機構102は、医療用器具101のアウターチューブ12の基端側、すなわち体表に挿入されない側の外径を把持して、当該医療用器具101の位置および向きを固定する。また、把持機構102は、たとえば、治療台111付近に設置された継手105を備える。
【0064】
[医療用器具]
図3は、アウターチューブ12の内部にインナーチューブ11が挿入されている状態を示す斜視図である。また、図4は、図3におけるIV−IV線に沿った断面を示す断面斜視図である。
【0065】
図3および図4を参照して、アウターチューブ12は、インナーチューブ11の挿入を案内する1または複数のガイド部21を有する。ガイド部21は、たとえば、アウターチューブ12の内壁においてアウターチューブ12の軸方向に延設された蟻溝であって、図4に示すように、アウターチューブ12の内周面から外周面へ向かう方向へ徐々に広がった略台形の断面形状を有する。
【0066】
図5は、本発明の実施の形態に係るインナーチューブ11の構成を示す斜視図である。
【0067】
図5を参照して、インナーチューブ11は、ある程度硬質であり可撓性を有する軸部30と、屈曲部31と、先端部32と、基端部33とを含む。また、インナーチューブ11は、軸部30の外周面において軸方向に断続的に延設された係合部34を含む。
【0068】
アウターチューブ12の内部にインナーチューブ11が挿入された状態では、少なくとも屈曲部31の一部および先端部32がアウターチューブ12から露出する。また、アウターチューブ12の内部にインナーチューブ11が挿入された状態において、屈曲部31は、インナーチューブ駆動機構103の動作により屈曲可能である。
【0069】
図6は、図5におけるVI−VI線に沿った断面を示す断面図である。
【0070】
図6を参照して、係合部34は、たとえば、インナーチューブ11の内周面から外周面へ向かう方向へ徐々に広がった略台形の断面形状を有する。
【0071】
係合部34は、アウターチューブ12の内部にインナーチューブ11が挿入される際、アウターチューブ12におけるガイド部21に摺動可能に係合される。これにより、アウターチューブ12の内部にインナーチューブ11が挿入された状態において、医療用器具101の位置または向きが変更された場合であっても、インナーチューブ11とアウターチューブ12との位置関係を保つことができる。
【0072】
係合部34の内部には操作要素としてワイヤ部材51aが挿通しており、図5に示すように、ワイヤ部材51aの一端側はインナーチューブ11の先端部32に固定されている。ワイヤ部材51aの他端側を引き込み動作または送り出し動作させることにより、屈曲部31を屈曲させることができる。
【0073】
また、図5に示すように、断続的に設けられた係合部34は、屈曲したアウターチューブ12にインナーチューブ11を挿抜する場合に好適であるが、係合部34が軸部30の軸方向に連続的に設けられてもよい。
【0074】
なお、医療用器具101の位置または角度の調整時においてアウターチューブ12とインナーチューブ11との位置関係を正確に維持することを要しないような場合は、アウターチューブ12は、上記のようなガイド部21を有さなくてもよく、また、インナーチューブ11は、上記のような係合部34を有さなくてもよい。
【0075】
また、再び図3を参照して、インナーチューブ11を操作する操作要素として、ワイヤ部材51a,51bが設けられているが、ワイヤ部材51a,51bの代わりに、たとえば、屈曲可能に連結された複数のロッド、複数の平板、またはロッドと平板との組み合わせが用いられてもよい。
【0076】
また、操作要素として、ワイヤ部材51aと、複数のロッドまたは複数の平板との組み合わせが用いられてもよい。たとえば、操作要素のうち、係合部34に挿通している部分がワイヤ部材51aであり、係合部34と先端部32とを繋ぐ露出部分が屈曲可能に連結された複数のロッドなどであってもよい。
【0077】
[手術器具]
図7は、手術器具1の構成例を概略的に示す図である。
【0078】
図7に示すように、手術器具1は、先端に位置する鉗子等の術具22と、手首関節部23と、多関節部24と、可撓性シャフト22と、手術器具駆動機構27とを備える。
【0079】
手術器具駆動機構27には、サーボモータなどの複数のモータが内蔵されている。複数のモータは、それぞれ、ワイヤを介して術具22および多関節部24と連結され、トルク伝達チューブを介して手首関節部23と連結されている。これにより、手術器具駆動機構27は、術具22、多関節部24、および手首関節部23を独立して駆動させることができる。
【0080】
また、手術器具駆動機構27は、歯車機構などを介して、外部モータY1およびY2と連結されており、外部モータY1の駆動により手術器具駆動機構27が可撓性シャフト22の軸、すなわち図7に示すZ軸周りに回転し、外部モータY2の駆動により手術器具駆動機構27が可撓性シャフト22の軸方向に摺動する。
【0081】
したがって、本発明の実施の形態に係る手術器具1の先端部分の動作は、図7の矢印で示されるように5自由度を有する。なお、手術器具1の先端部分の動作は、たとえば多関節部24を第1多関節部と第2多関節部とに分割して6自由度にしたり、手術器具駆動機構27の回転を省略して4自由度にしたりしてもよく、手術器具1が5自由であることに限定されない。
【0082】
図8は、手術器具1の先端側の構成を詳細に示す図である。
【0083】
図8に示すように、多関節部24は、ピン28を介して軸線方向に一列に連なった複数のコマ部材29を含む。コマ部材29は、多関節部24の軸線方向に延在する円柱状に形成されている。そして、コマ部材29は、コマ部材29の軸線から両側に離れるに従ってコマ部材29の軸線方向の厚さ寸法が小さくなるテーパー状に形成されている。
【0084】
コマ部材29の軸線から離れた両側にはコマ部材29の軸線と平行して多関節操作ケーブル41が挿通されている。多関節操作ケーブル41の一端は、連続するコマ部材29の先端側固定端45に固定され、多関節操作ケーブル41の他端は、手術器具駆動機構27内のモータに接続されている。コマ部材29の両側に挿通された多関節操作ケーブル41の一方を引き込み、他方を送り出すことにより、術具22を所望の方向へ屈曲させることができる。
【0085】
また、コマ部材29の軸線付近にはトルク伝達チューブ47が挿通されている。トルク伝達チューブ47の一端は手首関節部23に固定され、他端は手術器具駆動機構27内のモータに接続されている。トルク伝達チューブ47により、チューブの他端にかかるトルクを一端に伝達することができ、手首関節部23をコマ部材29の軸線周りに回転させることができる。
【0086】
そして、コマ部材29の軸線付近にはさらに術具操作ケーブル46が挿通されている。術具操作ケーブル46の第1端は図示しない術具操作子に連結され、術具操作ケーブル46の第2端は手術器具駆動機構27内のモータに接続されている。術具操作ケーブル46を引き込む操作、または送り出す操作を行うことにより、たとえば術具22が把持鉗子である場合、把持鉗子の開閉動作を行うことができる。
【0087】
なお、術具22は、鉗子、メス、フック、または内視鏡などであり、開閉動作に限らず、回転動作を行ってもよい。
【0088】
[インナーチューブ駆動機構]
次に、インナーチューブ駆動機構103の詳細な構成について説明する。
【0089】
図9は、本発明の実施の形態に係るインナーチューブ駆動機構103の構成を示す斜視図である。
【0090】
図9を参照して、インナーチューブ駆動機構103は、インナーチューブ駆動用モータ42a,42bと、インナーチューブ11の軸方向に沿って設けられた操作要素としてのワイヤ部材51a,51bと、インナーチューブ11の基端部33に設けられたギア部52a,52bとを含む。
【0091】
ワイヤ部材51a,51bは、第1端がインナーチューブ11の先端部32に固定されている。また、ワイヤ部材51a,51bは、屈曲部31の外側を通り、軸部30を挿通して、第2端がギア部52a,52bに固定されている。
【0092】
インナーチューブ駆動用モータ42a,42bは、たとえば操作部5の操作によって制御器4経由で動作指令が与えられることにより、ギア部52a,52bを回転させる。
【0093】
以上のように、インナーチューブ駆動用モータ42a,42bを有するインナーチューブ駆動機構103を設けることにより、1操作自由度を追加することができる。図7および図8で例示した手術器具1の場合、操作自由度が5であったものを6の操作自由度とすることができる。
【0094】
また、インナーチューブ駆動用モータ42a,42bを有するインナーチューブ駆動機構103を設けることにより、インナーチューブ11の屈曲率を任意に段階的に変更および固定することができる。
【0095】
[手術システムの動作方法]
図10は、制御器4の構成例を示すブロック図である。
【0096】
図10に示すように、制御器4は、たとえばCPU等の演算器を有する。制御器4は、集中制御する単独の制御器で構成されてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御器で構成されてもよい。
【0097】
操作部5は、術者Wが操作して、医療用器具101および手術器具1の動作によって実行されるべき動作命令を入力するためのものである。操作部5は、制御器4と有線または無線で通信可能に構成されている。そして、操作部5は、術者Wによって入力された医療用器具101および手術器具1によって実行されるべき動作命令をデータに変換し、制御器4へ送信する。そして、制御器4は、操作部5から受信した動作命令データに基づいて、有線または無線で遠隔的に医療用器具101および手術器具1の動作を制御する。
【0098】
具体的には、制御器4は、制御部121と、多関節駆動部122と、術具駆動部123と、手首関節駆動部124と、インナーチューブ駆動部125と、外部モータ駆動部126とを含む。制御器4における制御部121は、操作部5から動作命令データを受信すると、受信した動作命令データを、多関節駆動部122、術具駆動部123、手首関節駆動部124、インナーチューブ駆動部125および外部モータ駆動部126のうちの対応する駆動部へ出力する。
【0099】
多関節駆動部122は、制御部121から動作命令データを受けると、当該動作命令データに基づいて、手術器具駆動機構27に動作指令を与えることにより、多関節部24を駆動させる。また、術具駆動部123は、制御部121から動作命令データを受けると、当該動作命令データに基づいて、手術器具駆動機構27に動作指令を与えることにより、術具22を駆動させる。また、手首関節駆動部124は、制御部121から動作命令データを受けると、当該動作命令データに基づいて、手術器具駆動機構27に動作指令を与えることにより、手首関節部23を駆動させる。
【0100】
外部モータ駆動部126は、制御部121から動作命令データを受けると、当該動作命令データに基づいて、外部モータY1,Y2に動作指令を与えることにより、外部モータY1,Y2を駆動させる。
【0101】
インナーチューブ駆動部125は、制御部121から動作命令データを受けると、当該動作命令データに基づいて、インナーチューブ駆動機構103のインナーチューブ駆動用モータ42a,42bに動作指令を与えることにより、インナーチューブ11を屈曲させる。
【0102】
また、制御部121は、たとえば、操作部5から受けた動作命令データの内容を表示装置141に表示する。
【0103】
操作部5は、たとえば、手術器具駆動機構27に動作指令を与えるための第1操作部5Aと、インナーチューブ駆動機構103のインナーチューブ駆動用モータ42a,42bに動作指令を与えるための第2操作部5Bとを備える。
【0104】
図11は、第1操作部5Aとしてのハンドコントロール130の構成例を示す図である。
【0105】
図11に示すように、ハンドコントロール130は、複数のリンク部材131,132,133,134と、昇降ガイド135と、ハンドグリップ136と含み、それぞれが回転または直進ジョイントで連結されている。また、ハンドコントロール130は、さらに、ハンドグリップ136に対して開閉可能に連結されたハンドグリップ137を含む。このような構成により、ハンドコントロール130は、最大8自由度の入力が可能となっている。
【0106】
なお、たとえば、リンク部材131とリンク部材132とを連動して動作させることにより自由度を減らしたり、リンク部材131およびリンク部材132の少なくともいずれか1つを設けないことにより、1または2の自由度を減らしたりしてもよい。
【0107】
図12は、第2操作部5Bの構成例を示す図である。第2操作部5Bは、たとえば第1操作部5Aに隣接して配置される。また、図13は、インナーチューブ11の傾きの角度を示す図である。
【0108】
図12を参照して、第2操作部5Bは、たとえば、回転つまみ61と、表示部62とを含む。インナーチューブ駆動用モータ42a,42bは、たとえば、第2操作部5Bにおける回転つまみ61の回転に連動する。
【0109】
具体的には、術者等が回転つまみ61を回転させると、回転つまみ61の回転角に対応する角度αの値が表示部62に表示される。
【0110】
なお、角度αは、回転つまみ61の回転角と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。また、表示部62には、具体的な数値である角度αの代わりに、たとえば「大」、「中」、「小」など、回転つまみ61の回転角に応じた傾きのレベルが表示されてもよい。
【0111】
回転つまみ61の回転角に対応する角度α、または回転つまみ61の回転角に応じた傾きのレベルを示す駆動指令信号は、制御器4を介して、インナーチューブ駆動機構103におけるインナーチューブ駆動用モータ42aおよび42bへ有線または無線でそれぞれ送信される。
【0112】
インナーチューブ駆動用モータ42bは、たとえば、駆動指令信号の示す角度30°に対応する分だけギア部52aを回転させることにより、ワイヤ部51aを引く。これにより、屈曲部31は、軸部30の中心軸Oに対して図9に示す矢印A2の方向へ角度α、すなわち30°傾く。
【0113】
なお、インナーチューブ11の屈曲方向は、ワイヤ部材51a、ワイヤ部材51b、および軸部30の中心軸Oを包含する面の面内方向であり、角度αは、図13に示すように、インナーチューブ11の先端における屈曲半径の接線の角度である。
【0114】
たとえば、術者等が、回転つまみ61を図12に示す矢印A1の方向へ30°回転させると、表示部62には、角度αとして「30°」が表示され、制御器4は、「30°」を示す駆動指令信号を、インナーチューブ駆動用モータ42aおよび42bへそれぞれ送信する。
【0115】
また、たとえば、術者等が、回転つまみ61を図12に示す矢印B1の方向へ30°回転させると、表示部62には、角度αとして「−30°」が表示され、制御器4は、「−30°」を示す駆動指令信号を、インナーチューブ駆動用モータ42aおよび42bへそれぞれ送信する。
【0116】
インナーチューブ駆動用モータ42bは、たとえば、駆動指令信号の示す角度30°に対応する分だけギア部52bを回転させることにより、ワイヤ部51bを引く。これにより、屈曲部31は、軸部30の中心軸Oに対して図9に示す矢印B2の方向へ角度α、すなわち30°傾く。
【0117】
なお、制御器4は、上記のようなインナーチューブ11の屈曲角度の制御を行うと同時に、手術器具1における多関節部24をインナーチューブ11の屈曲方向とは反対の方向に屈曲させるように制御してもよい。たとえば、制御器4は、多関節部24を、インナーチューブ11の屈曲角度と同じ角度分だけ反対の方向に屈曲させるように制御する。これにより、手術器具1の可動域を広くすることができるため、患者Pの臓器などの手術箇所に対する術具22の位置および向き、すなわちアプローチ角度を任意に変更することができる。
【0118】
再び図10を参照して、意図せず第1操作部5Aを操作して手術器具1を誤作動させてしまうことを防ぐため、第2操作部5Bを操作する場合において第1操作部5Aの操作を無効にするための第1操作部無効化ボタン6が設けられていることが好ましい。また、同様の理由により、第1操作部5Aを操作する場合において第2操作部5Bの操作を無効にするための第2操作部無効化ボタン7が設けられていることが好ましい。
【0119】
また、たとえば、制御器4において動作命令データの出力を制御することにより、第1操作部5Aおよび第2操作部5Bの一方の操作が無効になると他方の操作も無効にするなど、第1操作部5Aの操作と第2操作部5Bの操作とを連動させてもよい。
【0120】
なお、図9に示すインナーチューブ駆動機構103は、ワイヤ部材およびインナーチューブ駆動用モータをそれぞれ2つずつ備えているが、ワイヤ部材およびインナーチューブ駆動用モータを1つずつ備えてもよい。ワイヤ部材およびインナーチューブ駆動用モータを2つずつ備えていると、インナーチューブ11を屈曲状態から直線状態に戻す場合に、それぞれのインナーチューブ駆動用モータでワイヤ部材の引き込みおよび送り出しを同時に行うことにより、インナーチューブ11の屈曲影響が残ることなく、正確かつ迅速にインナーチューブ11を直線状態とすることができる。したがって、手術器具1の交換作業が容易になり、手術時の作業効率が向上する。
【0121】
また、第2操作部5Bを設けることなく、第1操作部5Aによる操作が第2操作部5Bによる操作を兼ねるようにしてもよい。たとえば、図7および図8で例示したような操作自由度が5の手術器具1に、インナーチューブ11の屈曲自由度をプラスした6の自由度で操作できるような演算を行うことにより、図11で示すような単一のハンドコントロール130により手術器具1およびインナーチューブ11を操作することが可能である。
【0122】
また、第2操作部5Bは、回転つまみ61の代わりに、たとえば、インナーチューブ11を屈曲させるための「屈曲ボタン」と、インナーチューブ11を直線状にするための「直線ボタン」とを備えてもよい。
【0123】
具体的には、術者W等により第2操作部5Bの「屈曲ボタン」を選択する操作が行われると、予め設定された角度βを示す駆動指令信号が制御器4へ送信される。そして、制御器4は、受信した駆動指令信号に基づいてインナーチューブ駆動用モータ42aおよび42bを駆動させ、たとえば、屈曲部31の傾きが角度βとなるように制御する。
【0124】
また、術者W等により第2操作部5Bの「直線ボタン」を選択する操作が行われると、角度「0°」を示す駆動指令信号が制御器4へ送信される。そして、制御器4は、受信した駆動指令信号に基づいてインナーチューブ駆動用モータ42aおよび42bを駆動させ、たとえば、屈曲部31の傾きが「0°」となるように制御する。
【0125】
以上のように、本発明の実施の形態においては、インナーチューブ駆動機構103におけるインナーチューブ駆動用モータ42aおよび42bを、操作部5により遠隔操作することが可能である。
【0126】
なお、インナーチューブ駆動用モータ42a,42bに駆動スイッチを設け、遠隔操作ではなく駆動スイッチを直接ON/OFFすることにより、インナーチューブ駆動用モータ42a,42bをアクチュエートすることも可能である。
【0127】
[把持機構]
次に、把持機構102の詳細な構成について説明する。
【0128】
図14は、本発明の実施の形態に係る把持機構102を示す斜視図である。また、図15は、図14に示す把持機構102における把持部71の開状態を示す斜視図である。
【0129】
図14および図15を参照して、把持機構102は、把持部71と、固定部材73と、支持部106とを備える。
【0130】
(a)把持部および固定部材
把持部71は、たとえば環形状の部材であり、第1構成部材81と、第2構成部材82と、ヒンジ部83と、調整部材84とを含む。なお、把持部71の形状は環形状に限定されず、多角形状などであってもよい。
【0131】
第1構成部材81および第2構成部材82は、略C形状であって、これら第1構成部材81と第2構成部材82とが結合することにより、把持部71の内部に開口部85が形成される。
【0132】
第1構成部材81の第1端81aと、第2構成部材82の第1端82aとは、ヒンジ部83を介して結合されている。また、第1構成部材81の第2端81bと、第2構成部材82の第2端82bとは、結合および結合の解除が可能である。
【0133】
第1構成部材81の第2端81bと、第2構成部材82の第2端82bとが結合している状態を、以下「閉状態」と称する。なお、第1構成部材81の第2端81bと、第2構成部材82の第2端82bとが結合している状態において、これら第2端81bと第2端82bとの間に微小な隙間が存在してもよい。
【0134】
また、第1構成部材81の第2端81bと、第2構成部材82の第2端82bとの結合が解除されている状態、すなわち第1構成部材81の第2端81bと、第2構成部材82の第2端82bとが互いに離れている状態を、以下「開状態」と称する。
【0135】
固定部材73は、たとえばネジであり、本体部65と、軸部66と、支点部67とを有する。本体部65および軸部66は、第1構成部材81に設けられた支点部67を支点として、図15に示す矢印A3の方向および矢印B3の方向へ回動可能である。
【0136】
また、第2構成部材82には、軸部66を嵌合可能な嵌合部86が設けられている。把持部71が閉状態である場合に、本体部65および軸部66を矢印B3の方向へ回動させて、軸部66を嵌合部86に嵌合させることにより、把持部71の閉状態を固定することができる。また、本体部65および軸部66を矢印A3の方向へ回動させて、軸部66を嵌合部86から外すことにより、把持部71の閉状態を解除することができる。
【0137】
固定部材73は、把持部71の閉状態の固定および閉状態の解除を行うことのできる部材であれば、ネジに限定されない。
【0138】
なお、把持部71は、開口部が形成されており、当該開口部の内部にアウターチューブ12を把持可能であれば、複数の構成部材、具体的には第1構成部材81および第2構成部材82を含む構成でなくてもよい。また、このように把持部71が複数の構成部材を含まない場合、把持機構102は、固定部材73を備える必要がない。
【0139】
調整部材84は、たとえば環形状であり、開口部85に対して着脱可能である。調整部材84は、略C形状である第1湾曲部材84aと、略C形状である第2湾曲部材84bとを含む。
【0140】
第1湾曲部材84aと、第2湾曲部材84bとは、互いに結合および結合の解除が可能である。第1湾曲部材84aと第2湾曲部材84bとが互いに結合することにより、内部にアウターチューブ12を挿入可能な貫通孔が形成される。なお、第1湾曲部材84aおよび第2湾曲部材84bは、略C形状に限定されず、多角形状などであってもよい。
【0141】
把持機構103に医療用器具101を把持させる際の具体的な作業としては、助手等の作業者は、まず、軸部66を嵌合部86から外して、把持部71の閉状態を解除し、把持部71を開状態にする。
【0142】
そして、作業者は、第1湾曲部材84aまたは第2湾曲部材84bを開口部85から取り外す。ここでは、作業者は、第2湾曲部材84bを開口部85から取り外すとする。そして、作業者は、開口部85に装着された状態である第1湾曲部材84aの内周面にアウターチューブ12の外周面を当接させる。
【0143】
そして、作業者は、第1湾曲部材84aと第2湾曲部材84bとの間にアウターチューブ12が挟持されるように、開口部85から取り外していた第2湾曲部材84bを開口部85に装着して、第1湾曲部材84aと第2湾曲部材84bとを結合させる。
【0144】
そして、作業者は、第1構成部材81の第2端81bと第2構成部材82の第2端81bとを結合させて、把持部71を閉状態にする。そして、作業者は、固定部材73の軸部66を第2構成部材82の嵌合部86に嵌合させて、把持部71の閉状態を固定する。これにより、把持機構103に医療用器具101が把持された状態が保持される。
【0145】
(b)開口部の径の大きさの調整
調整部材84は、たとえば、内径の大きさの異なる複数種類が用意されている。上述のとおり、医療用器具101の挿入される体腔の場所に応じて外径の大きさの異なるアウターチューブ12が使用されるため、作業者は、使用するアウターチューブ12の外径の大きさに応じて、複数種類の調整部材84の中から適切な調整部材84を選択して用いる。
【0146】
なお、調整部材84は、開口部85の径の大きさを変更可能であれば、内径の大きさの異なる複数種類が用意されていなくてもよい。たとえば、調整部材84を開口部85から取り外して、把持部71の内周面にアウターチューブ12の外周面を直接当接することにより、調整部材84が開口部85に装着されている場合と比較して、外径の大きいアウターチューブ12を把持することが可能である。
【0147】
また、たとえば、把持部71は、調整部材84の代わりに、開口部85の中心へ向かって突出可能に構成された爪部を含み、当該爪部の突出量が変更されることにより、開口部85の径の大きさを変更可能に構成されてもよい。
【0148】
(c)支持部
支持部106は、接続部72および継手105を含む。接続部72は、把持部71に接続されている。また、接続部72は、たとえば棒形状であり、把持部71の外周面から延設されている。なお、接続部72は、棒形状に限定されず、把持部71の外周面から突出した突起などであってもよい。
【0149】
また、図14および図15に示す接続部72は、開口部85による開口面に対して平行に設けられているが、接続部72は当該開口面に対して平行でなくてもよい。また、図14に示すように、固定部材73の軸部66が嵌合部86に嵌合されている状態において、接続部72は、たとえば、開口部85を介して固定部材73の本体部65と対向している。
【0150】
また、図14に示すように、接続部72は、継手105に接続される。継手105は、複数のアーム部91を有する。また、継手105は、医療用器具101の位置および向きを調整可能とする1または複数の関節部92を有する。複数のアーム部91は、関節部92を介して連結されている。
【0151】
より詳細には、たとえば、アーム部91は、関節部92を中心に回動可能に構成されている。また、関節部92は、自己に対するアーム部91の位置および向きを固定することが可能である。これにより、関節部92を介して連結された複数のアーム部91のそれぞれの位置および向きを調整することができるため、医療用器具101の位置および向きを任意に調整することができる。
【0152】
手術時においては、作業者は、たとえば、医療用器具101を把持部71に把持させた後、接続部72を継手105に接続する。そして、作業者は、たとえば、継手105における複数のアーム部91の位置および向きを調整することにより、把持部71に把持された医療用器具101が手術箇所に近づくように、医療用器具101の位置および向きを調整する。
【0153】
なお、把持部71を含む環形状等の部材が継手105に対して直接接続されてもよい。この場合、支持部106は継手105で構成され、支持部106が把持部71に直接接続される。
【0154】
ところで、特許文献1に示すようなインナーチューブを挿入可能なアウターチューブを有する内視鏡治療装置等の医療用器具を用いて手術を行う場合、当該医療用器具は、体表に留置されたトロカーにアウターチューブが挿入されることにより装着されたり、特許文献1に記載のようにマウスピースを通して装着されたり、助手等の人手により保持されたりしていた。そのため、当該医療用器具の装着または保持には慣れが必要であり、手振れまたは位置ずれ等が生じる可能性があった。
【0155】
これに対して、本発明の実施の形態に係る把持機構102は、手術器具1を内部に挿入可能であり、可撓性を有するインナーチューブ11と、1または複数のインナーチューブ11を内部に挿入可能であり、体腔に挿入されるアウターチューブ12と、を備える医療用器具101を把持する把持機構である。また、把持機構102は、アウターチューブ12を把持する把持部71と、把持部71を固定支持する支持部106とを備える。また、支持部106は、医療用器具101の位置および向きを調整可能とする少なくとも1つの関節部92を有する。
【0156】
このような構成により、人手による把持を必要とせず、医療用器具101の位置および向きの固定をより確実に行うことができる。また、たとえば、支持部106における複数のアーム部91の位置および向きを調整することにより、把持部71に把持された医療用器具101の位置および向きを任意に調整することができる。したがって、インナーチューブ11を挿入可能なアウターチューブ12を有する医療用器具101を用いた処置をより良好に行うことができる。
【0157】
特に、上述したようなインナーチューブ11の駆動用にモータを設ける場合、医療用器具101の重量が増すため、従来のようなカニューラまたは人手で保持することは困難となるため、本発明の実施の形態に係る把持機構102の採用は有用である。
【0158】
また、上述した把持機構102は、複数のインナーチューブ11を交換可能に挿入するアウターチューブ12の把持に用いられるが、マウスピースなどの支えがなく、処置の際にアウターチューブ12が動きやすい腹腔鏡手術においては特に有用である。
【0159】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0160】
1 手術器具
11 インナーチューブ
12 アウターチューブ
71 把持部
92 関節部
101 医療用器具
102 把持機構
106 支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15